(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082243
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20230607BHJP
B60T 11/26 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B62D25/08 H
B60T11/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195855
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】山舘 輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 一秀
【テーマコード(参考)】
3D047
3D203
【Fターム(参考)】
3D047BB24
3D047BB35
3D047CC22
3D047FF01
3D203BB38
3D203CA07
3D203DA12
3D203DA14
(57)【要約】
【課題】ブレーキフルード容器の支持構造の剛性を従来よりも向上可能とする。
【解決手段】リザーバタンク80は、エンジンコンパートメント95内の、カウルルーバー10下方に配置され、ブレーキフルードを貯留する。カウルルーバー10は、主面部20、樋本体部30、切欠き部であるサービスホール50、樋延長部60、及び一対の保持片64A,64Bを備える。主面部20は、カウルルーバー10の後端から前方に延設される。樋本体部30は、主面部20の前端に接続され車幅方向に延設される。サービスホール50は平面視コ字状であって、リザーバタンク80の注入口84の上方に設けられ、主面部20及び樋本体部30に亘って形成される。樋延長部60は、サービスホール50の周縁に沿って設けられ、樋本体部30と接続される。一対の保持片64A,64Bは、樋延長部60の内周側壁63から、対向するように張り出される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドガラスの下端に後端が接続され、エンジンコンパートメント上に張り出されるように延設されるカウルルーバーと、
前記エンジンコンパートメント内の、前記カウルルーバー下方に配置され、ブレーキフルードを貯留するリザーバタンクと、
を備える車両前部構造であって、
前記カウルルーバーは、
前記後端から前方に延設される主面部と、
前記主面部の前端に接続され車幅方向に延設される樋本体部と、
前記リザーバタンクの注入口の上方に設けられ、前記主面部及び前記樋本体部に亘って形成された平面視コ字状の切欠き部と、
前記切欠き部の周縁に沿って設けられ、前記樋本体部と接続される樋延長部と、
前記樋延長部の内周側壁から、対向するように張り出される一対の保持片と、
を備える、車両前部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両前部構造であって、
一対の前記保持片には、当該保持片よりも肉薄であって、一方の前記保持片から他方の前記保持片に向かって張り出す延長片が設けられる、車両前部構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両前部構造であって、
一対の前記延長片は、一対の前記保持片よりも張り出し長が長い、車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、カウルルーバーと、ブレーキフルードを貯留するリザーバタンクを備える、車両前部構造が開示される。
【背景技術】
【0002】
車両のブレーキ機構は、車室及びエンジンコンパートメントに亘って設けられる。具体的には、車室前端部分にブレーキペダルが設けられる。さらにエンジンコンパートメントの後端部分には、ブレーキペダルの踏力を増幅するブレーキブースターと、ブレーキブースターの駆動により液圧を生じさせるマスターシリンダーが設けられる。加えて、マスターシリンダー上には、作動油であるブレーキフルードを貯留するリザーバタンクが設けられる。
【0003】
また、エンジンコンパートメントと車室を隔てるダッシュパネルに対して、カウルルーバーが庇のように前方に延設される。カウルルーバーは板状の部材であって、その後端がウインドシールドガラスの下端に接続される。またカウルルーバーの前方部分には、ウインドシールドガラスから流下された雨水を受ける樋部が車幅方向に亘って延設される。
【0004】
上記のような、ブレーキ機構とカウルルーバーの配置関係に基づき、ブレーキフルードを注入するための、リザーバタンクの注入口が、カウルパネル下方に設けられる場合がある。このような場合、エンジンフードを開けたときに、リザーバタンクの注入口が、カウルパネルに遮られるような配置となる。
【0005】
リザーバタンクへのブレーキフルードの注入を可能とするために、例えば特許文献1では、カウルパネルの、リザーバタンク注入口の上方部分が切り欠かれる。この切欠き開口はサービスホールとも呼ばれる。ブレーキフルードの注入作業時以外は、サービスホールは蓋体で閉塞される。
【0006】
さらに特許文献1では、ブレーキフルード容器を保持する保持機構がサービスホール周辺に設けられる。具体的には、サービスホールの後端から一対の支持腕体が前方に延設される。一対の支持腕体の前端の対向面には容器支持用の突起が設けられる。支持腕体はサービスホールの後端を固定端とする片持ち梁構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、サービスホールの後端から片持ち梁状に一対の支持腕体が延設される場合、その固定端が損傷すると、ブレーキフルード容器の支持が困難になるおそれがある。そこで本明細書では、ブレーキフルード容器の支持構造の剛性を従来よりも向上可能な車両前部構造が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示される車室前部構造は、カウルルーバー及びリザーバタンクを備える。カウルルーバーは、ウインドシールドガラスの下端に後端が接続され、エンジンコンパートメント上に張り出されるように延設される。リザーバタンクは、エンジンコンパートメント内の、カウルルーバー下方に配置され、ブレーキフルードを貯留する。カウルルーバーは、主面部、樋本体部、切欠き部、樋延長部、及び一対の保持片を備える。主面部は、カウルルーバーの後端から前方に延設される。樋本体部は、主面部の前端に接続され車幅方向に延設される。切欠き部は平面視コ字状であって、リザーバタンクの注入口の上方に設けられ、主面部及び樋本体部に亘って形成される。樋延長部は、切欠き部の周縁に沿って設けられ、樋本体部と接続される。一対の保持片は、樋延長部の内周側壁から、対向するように張り出される。
【0010】
上記構成によれば、切欠き部の周縁に沿って設けられた樋延長部が、ブレーキフルード容器支持手段の腕部として利用される。切欠き部の周縁に沿って線的に樋延長部が支持され、さらにその内周側壁から一対の保持片が張り出されるので、ブレーキフルード容器の支持構造の剛性を従来よりも向上可能となる。
【0011】
また上記構成において、一対の保持片には延長片が設けられてもよい。延長片は保持片よりも肉薄であって、一方の保持片から他方の保持片に向かって張り出す。
【0012】
カウルルーバーはウインドシールドガラスと同等の車幅寸法を備える長尺物であり、保持片の寸法管理が困難となる場合がある。このような場合に、肉薄の延長片を設けることで、ブレーキフルード容器が確度良く保持可能となる。
【0013】
また上記構成において、一対の延長片は、一対の保持片よりも張り出し長が長くてもよい。
【0014】
上記構成によれば、ブレーキフルード容器が確度良く保持可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書で開示される車室前部構造によれば、ブレーキフルード容器の支持構造の剛性を従来よりも向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る車室前部構造を例示する斜視図である。
【
図2】カウルルーバーから蓋体を取り去った時の、本実施形態に係る車室前部構造を例示する斜視図である。
【
図3】カウルルーバーから蓋体を取り去った時の、本実施形態に係る車室前部構造を例示する平面図である。
【
図5】ブレーキフルード容器をサービスホールにセットしたときの様子を例示する斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る車室前部構造の別例を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本実施形態に係る車室前部構造が説明される。なお
図1-
図6において、車両前後方向が記号FRで表される軸で示され、車幅方向が記号RWで表される軸で示され、鉛直方向が記号UPで表される軸で示される。
【0018】
記号FRはFrontの略であり、前後方向軸FRは前方を正方向とする。記号RWはRight Widthの略であり、幅方向軸RWは右幅方向を正方向とする。また高さ軸UPは上方向を正方向とする。
図1に示されているように、これらFR軸、RW軸、UP軸は互いに直交する。以下適宜、これら3軸を基準に、本実施形態に係る車室前部構造が説明される。
【0019】
<車室前部の構造概要>
図1には、本実施形態に係る車室前部構造が例示される。この車室前部構造は、カウルルーバー10及びリザーバタンク80を備える。
【0020】
リザーバタンク80は車両のブレーキ機構の一部品である。リザーバタンク80の他にブレーキ機構はブレーキペダル(図示せず)、ブレーキブースター90、マスターシリンダー92、及びブレーキライン94を備える。
【0021】
ブレーキペダルは車室の前端に設けられる。リザーバタンク80、ブレーキブースター90、マスターシリンダー92、及びブレーキライン94はエンジンコンパートメント95の後端に設けられる。
【0022】
車室とエンジンコンパートメント95はダッシュパネル96に隔てられる。言い換えると、ダッシュパネル96はエンジンコンパートメント95の後壁及び車室の前壁として機能する。ブレーキペダルと、リザーバタンク80、ブレーキブースター90、マスターシリンダー92、及びブレーキライン94との間に、ダッシュパネル96が立設される。
【0023】
ブレーキペダルの踏力がブレーキブースター90で増幅される。ブレーキブースター90の駆動によりマスターシリンダー92で液圧が生じる。この液圧は各ブレーキライン94に伝搬される。ブレーキライン94は例えば前輪及び後輪用に4本設けられる。
【0024】
図1、
図2に例示されるように、マスターシリンダー92の上にリザーバタンク80が配置される。リザーバタンク80は作動液であるブレーキフルードを貯留する。リザーバタンク80の上面に注入口84が設けられる。ブレーキフルードの注入作業時を除いて、注入口84はタンクキャップ82により閉止される。
【0025】
後述されるように、リザーバタンク80の注入口84はその上方のカウルルーバー10に覆われる。そこでカウルルーバー10の、注入口84上方には切欠き部であるサービスホール50が形成される。
図1に例示される蓋体40を取り外すことで、サービスホール50から注入口84へのアクセスが可能となる。
【0026】
<カウルルーバーの構造>
図1を参照して、カウルルーバー10は、ウインドシールドガラス100の下端に後端が接続される。またカウルルーバー10は、その後端から略水平面上(RW-FR面上)に延設され、その前端は、ダッシュパネル96よりも前方まで延設される。つまりカウルルーバー10は、エンジンコンパートメント95上に庇状に張り出されるように延設される。カウルルーバー10は、例えばABS樹脂やポリプロピレン等の樹脂材料から構成される。
【0027】
カウルルーバー10は、主面部20、樋本体部30、切り欠き部であるサービスホール50(
図2参照)、樋延長部60、及び一対の保持片64A,64Bを備える。主面部20は、カウルルーバー10の後端から前方に延設される板状部である。主面部20には、車室内空調空気として利用される外気の取込口である吸気グリル21が形成される。また主面部20の後端では、ワイパーブレード102及びワイパーアーム104が着座する。
【0028】
樋本体部30は、主面部20の前端にその後端が接続される。樋本体部30は車幅方向に延設する雨樋である。より詳細には、意匠上の観点から、カウルルーバー10の前端である樋本体部30は、車幅方向に沿って円弧状に延設される。
【0029】
ウインドシールドガラス100から流下した雨水を樋本体部30が受けることで、エンジンコンパートメント95内への水入りが抑制される。
図2を参照して、樋本体部30は立設壁である前壁34及び後壁36と、両壁の下端同士を繋ぐ底壁32を備える。
【0030】
また前壁34の下端には、前方に延設されるフランジ35が設けられる。例えばフランジ35は車幅方向に間隔を空けて複数設けられる。フランジ35にはその厚さ方向に係合孔35Aが穿孔される。この係合孔35Aと、図示しないカウルパネルのフランジの係合孔とが軸合わせされ、両者はクリップやボルト等の締結部材で締結される。
【0031】
また前壁34の上端にはカウルシール38が装着される。カウルシール38は前壁34の全幅に亘って取り付けられる。カウルシール38は樹脂材料から構成されるシール部材であって、エンジンフード(図示せず)のインナパネルと当接される。
【0032】
なおカウルシール38は、例えば前壁34に差し込まれるための溝が形成されている。後述する、リザーバタンクへの注入作業時には、蓋体40からカウルシール38が外され、その後に蓋体40がカウルルーバー10から外される。
【0033】
図2、
図3を参照して、カウルルーバー10は、主面部20及び樋本体部30に亘って切欠き部であるサービスホール50が形成される。サービスホール50はリザーバタンク80の注入口84の上方に設けられ、平面視コ字状に形成され、その前端は開放端となる。
【0034】
サービスホール50は、リザーバタンク80にブレーキフルードを注入する注入作業時を除いて、蓋体40(
図1参照)に閉止される。蓋体40の前端には、樋延長部60(
図2参照)に設けられた係合孔65に係合される係合爪22が設けられる。また蓋体40の後端には、サービスホール50の後壁54に設けられた係合孔53に係合される係合爪(図示せず)が設けられる。
【0035】
図2、
図3を参照して、カウルルーバー10には、サービスホール50の周縁に沿って樋延長部60が形成される。樋延長部60は正面視で馬蹄形状であって、その前端は樋本体部30に接続される。
【0036】
ここで、蓋体40の樋部42(
図1参照)と樋本体部30とが接続される。すなわち樋本体部30の底壁32(
図2参照)と蓋体40の樋底壁42A(
図1参照)の上面同士が同一高さ、言い換えるといわゆる面一(つらいち)になる。したがって蓋体40に覆われる樋延長部60の底壁61は、樋本体部30よりも低位置に設けられる。
【0037】
また
図2、
図3を参照して、樋延長部60は外周側壁62、内周側壁63、及び両壁の下端同士を繋ぐ底壁61を備える、断面コ字形状となっている。外周側壁62は主面部20及び樋本体部30に接続される。つまり樋延長部60はその外周縁が線的に主面部20及び樋本体部30に支持される。例えば樋延長部60、樋本体部30、及び主面部20は、後述される保持片64A,64Bとともに一体成形される。
【0038】
樋本体部30に樋延長部60が接続されることで、樋本体部30に滞留していた雨水の、エンジンコンパートメント内への滴下が抑制される。またブレーキフルードの注入作業時に、ブレーキフルード容器110(
図5参照)からこぼれたブレーキフルードを、樋延長部60で受けることが可能となる。
【0039】
また、樋延長部60の底壁61にはその厚さ方向に係合孔65が穿孔される。樋延長部60に流れ込んだ液体(雨水やブレーキフルード)が係合孔65からエンジンコンパートメント内に漏れることを抑制するため、係合孔65の後方に傾斜部66が設けられてもよい。傾斜部66は樋延長部60の溝幅に亘って、つまり内周側壁63及び外周側壁62に亘って設けられる。傾斜部66により樋延長部60の底面が隆起されることで、樋延長部60に滞留する液体の、係合孔65への流れ込みが抑制される。
【0040】
図3を参照して、樋延長部60の内周側壁63は、例えばその後方部分から順に、曲線部63A、傾斜部63B,63B、及び直線部63C,63Cを備える。曲線部63Aの曲率半径は、例えばブレーキフルード容器110(
図5参照)の半径以上となるように定められる。なお、一般的にブレーキフルードは、車両メーカーにより純正品が指定されており、当該純正品の容器の直径R1をもとに、曲線部63Aの曲率半径が定められる。
【0041】
曲線部63Aの車幅方向両端に傾斜部63B,63Bの後端が接続される。傾斜部63B,63Bは互いに離隔するようにして(すなわち末広がりに)前方に延設される。傾斜部63B,63Bの前端に直線部63C,63Cが接続される。直線部63C,63Cは互いに平行に前方に延設される。
【0042】
なお
図2、
図3の例では、樋延長部60の内周側壁63の曲線部63Aが、平面視でリザーバタンク80の注入口84の一部を覆うようなレイアウトとなっている。
図5に例示されるように、ブレーキフルードの注入作業時には、ブレーキフルード容器110が車両前方に傾斜された状態に保持される。この傾斜角度に基づいて、注入口84に対する曲線部63Aの位置が定められる。
【0043】
また、樋延長部60の内周側壁63から、保持片64A,64Bが対向するようにして、つまり一方の保持片64A,64Bから他方の保持片64B,64Aに向かって、張り出される。保持片64A,64Bは例えばどちらも内周側壁63の直線部63C,63Cから内側に張り出される。
【0044】
図4には
図3のA-A断面図が例示される。例えば保持片64A,64Bは非対称の形状であってよく、例えば保持片64Aは保持片64Bに対して張出幅が長くなるように定められる。
【0045】
また、保持片64A及び保持片64Bの張り出し幅が最大である側端64A1,64B1間の離隔距離L1は、
図5に例示されるブレーキフルード容器110の直径R1より僅かに短くなるように定められる。例えばブレーキフルード容器110の直径R1に対して90%以上100%未満となるような値に離隔距離L1が定められる。
【0046】
また
図3を参照して、内周側壁63の曲線部63Aの底、つまり最も後方位置となる点と、保持片64A,64Bの側端64A1,64B1との離隔距離L2は、ブレーキフルード容器110の直径R1及び注入作業時の傾斜角度を基準に定められる。
【0047】
例えば
図5を参照して、注入作業時にはブレーキフルード容器110は注入口84に対して(又は高さ軸UPに対して)傾斜姿勢となる。このことから、ブレーキフルード容器110を円柱としたとき、注入作業時における傾斜角度に基づく斜切円柱の切断面における長軸が、離隔距離L2として定められてよい。
【0048】
注入作業時には、作業者により蓋体40(
図1参照)がカウルルーバー10から取り外される。さらに作業者はサービスホール50(
図2参照)から手を差し入れてタンクキャップ82を取り外す。さらに作業者はブレーキフルード容器110のキャップを取り外して、同容器の注ぎ口をリザーバタンク80の注入口84に挿入する。
【0049】
この状態で作業者がブレーキフルード容器110をサービスホール50内に押し込むと、保持片64A,64Bが外側に弾性変形される。ブレーキフルード容器110が樋延長部60の内周側壁63の曲線部63A(
図3参照)に当接されると、保持片64A,64Bの弾性力によってブレーキフルード容器110が挟持される。
【0050】
ここで、ブレーキフルード容器110を垂直に立てた場合、リザーバタンク80内の空気が抜けにくくなることから、ブレーキフルード容器110は傾斜状態で保持片64A,64B及び曲線部63Aに支持される。
【0051】
ブレーキフルード容器110が保持片64A,64Bに挟持され、さらに曲線部63Aに線的に支持されることから、作業者はブレーキフルード容器110を保持する必要がなくなる。例えばブレーキフルードの交換作業時には、古いブレーキフルードを排出するためにブレーキペダルの操作が必要となる。本実施形態に係る車両前部構造によれば、ブレーキフルード容器110を保持するための作業者が不要となり、例えば作業者一人でブレーキフルードの交換が可能となる。
【0052】
<保持片の別例>
図6には、本実施形態に係る車両の前部構造の別例が示される。この例では、保持片64A,64Bに加えて延長片68A,68Bが設けられる。
【0053】
カウルルーバー10はウインドシールドガラス100の全幅に亘って延設される長尺物であり、またカウルルーバー10が樹脂成形で製作される場合に成形時の収縮を考慮すると、保持片64A,64Bの離隔距離L1(
図4参照)の寸法管理が困難となる。
【0054】
そこで、保持片64A,64Bによるブレーキフルード容器110の挟持を補助する部材として延長片68A,68Bがカウルルーバー10に設けられる。例えば延長片68A,68Bは保持片64A,64Bや樋延長部60、樋本体部30,主面部20とともに一体成形される。
【0055】
延長片68A,68Bは例えば保持片64A,64Bの下方に設けられ、樋延長部60の内周側壁63の直線部63C,63Cから対向するように、つまり一方の延長片68A,68Bから他方の延長片68B,68Aに向かって張り出される。保持片64A,64Bと比較して延長片68A,68Bは肉薄に形成され、撓み易くなっている。また延長片68Aは保持片64Aよりも、また延長片68Bは保持片64Bよりも、張り出し長が長くなるように形成される。つまり延長片68A,68Bは保持片64A,64Bから更に突出する。
【0056】
延長片68A,68Bを撓み易い薄片とすることで、その離隔距離が設計値より小さくなった場合(言い換えると張り出し長さが設計値より長くなった場合)であっても、ブレーキフルード容器110のサービスホール50への差し入れを干渉することが抑制される。また、延長片68A,68Bが保持片64A,64Bよりも張り出し長が長くなることで、確実にブレーキフルード容器110を挟持可能となる。
【符号の説明】
【0057】
10 カウルルーバー、20 主面部、30 樋本体部、40 蓋体、50 サービスホール(切り欠き部)、60 樋延長部、61 樋延長部の底壁、62 樋延長部の外周側壁、63 樋延長部の内周側壁、63A 樋延長部の曲線部、63B 樋延長部の傾斜部、63C 樋延長部の直線部、64A,64B 保持片、64A1,64B1 保持片の側端、68A,68B 延長片、80 リザーバタンク、82 タンクキャップ、84 注入口、95 エンジンコンパートメント、100 ウインドシールドガラス、110 ブレーキフルード容器。