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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082249
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】地上子の検査装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/00 20150101AFI20230607BHJP
   B61L 25/06 20060101ALI20230607BHJP
   B61L 3/12 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
H04B17/00
B61L25/06 Z
B61L3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195873
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399039719
【氏名又は名称】東日本電気エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 理
(72)【発明者】
【氏名】橋本 佳亮
(72)【発明者】
【氏名】市倉 庸宏
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB02
5H161DD23
5H161FF05
5H161FF07
(57)【要約】
【課題】地上子が劣化してきているかについての検知が可能な地上子の検査装置を提供すること。
【解決手段】地上子の検査装置100は、地上子GRから送信された電文についての受信レベルを測定するレベル測定部60と、レベル測定部60での測定結果に基づいて、地上子GRの劣化傾向を判定する判定部JDとを備える。つまり、地上子GRからの電文について、レベル測定部60において測定された受信レベルに基づいて、地上子GRの劣化傾向を判定部JDで判定することにより、地上子GRの送信能力の程度を反映した判定が可能とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上子から送信された電文についての受信レベルを測定するレベル測定部と、
前記レベル測定部での測定結果に基づいて、地上子の劣化傾向を判定する判定部と
を備える地上子の検査装置。
【請求項2】
前記判定部は、受信レベルについて予め定めた閾値に基づき劣化傾向を判定する、請求項1に記載の地上子の検査装置。
【請求項3】
前記判定部における判定結果を表示する表示部を備える、請求項1及び2のいずれか一項に記載の地上子の検査装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記レベル測定部での測定結果としての測定値を表示する、請求項3に記載の地上子の検査装置。
【請求項5】
地上子から送信された電文について受信する受信部と、
無電源地上子に対して電文を送信させるための発信を行う発信部と、
有電源地上子についての測定を行う有電源地上子モードと、無電源地上子についての測定を行う無電源地上子モードとの選択を受け付ける選択受付部と、
前記選択受付部での受付結果に応じて前記受信部と前記発信部とを動作させる受信発信制御部と
を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の地上子の検査装置。
【請求項6】
前記判定部は、地上子から複数回送信された同一の電文のうち、受信内容が一致したものについての前記レベル測定部での受信レベルの測定結果に基づいて、地上子の状態を判定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の地上子の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上子の動作状況を検査するための地上子の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上子の検査に関する技術として、例えば信号レベルが最小動作レベル以上である時間が予め設定した時間以下であるか否かにより、地上子の健全性の診断を行う自動列車制御装置(特許文献1)や、複数並ぶ地上子について地上子識別符号の一致性を確認することで、地上子の故障を列車で検出する列車情報伝送装置(特許文献2)が知られている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載された技術では、信号レベルが所定値以上であるか否かで信号の有無を判定しているため、例えば、地上子の能力が劣化してきている(しつつある)か、といったことが分かるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-178230号公報
【特許文献2】特開2007-331558号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、地上子が劣化してきているかについての検知が可能な地上子の検査装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための地上子の検査装置は、地上子から送信された電文についての受信レベルを測定するレベル測定部と、レベル測定部での測定結果に基づいて、地上子の劣化傾向を判定する判定部とを備える。
【0007】
上記地上子の検査装置では、レベル測定部において地上子から送信された電文についての受信レベルが測定され、測定された受信レベルに基づいて、判定部において地上子の劣化傾向を判定する態様となっている。これにより、地上子の送信能力の程度を反映した判定が可能となるので、地上子の劣化傾向を的確に捉えることができる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、判定部は、受信レベルについて予め定めた閾値に基づき劣化傾向を判定する。この場合、測定された受信レベルの大きさを閾値と比較することで、地上子の劣化傾向を捉えることができる。
【0009】
本発明の別の側面では、判定部における判定結果を表示する表示部を備える。この場合、地上子の劣化傾向を、視認によって装置の使用者(利用者)に認識させることができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、表示部は、レベル測定部での測定結果としての測定値を表示する。地上子の劣化傾向を、測定値から使用者に判断させることができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、地上子から送信された電文について受信する受信部と、無電源地上子に対して電文を送信させるための発信を行う発信部と、有電源地上子についての測定を行う有電源地上子モードと、無電源地上子についての測定を行う無電源地上子モードとの選択を受け付ける選択受付部と、選択受付部での受付結果に応じて受信部と発信部とを動作させる受信発信制御部とを備える。この場合、有電源地上子と、無電源地上子との双方に対応した検査が可能になる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、判定部は、地上子から複数回送信された同一の電文のうち、受信内容が一致したものについてのレベル測定部での受信レベルの測定結果に基づいて、地上子の状態を判定する。この場合、より確実な検査が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は、実施形態に係る地上子の検査装置に関して説明するための概念的な斜視図であり、(B)は、ブロック図である。
図2】(A)及び(B)は、地上子の検査装置における表示態様について、一例を説明するための図である。
図3】地上子の検査装置におけるレベルの強さを示す測定値とその表示態様について一例を説明するための概念図である。
図4】地上子の検査装置の概要を示す概念図である。
図5】(A)及び(B)は、地上子の検査装置の動作について一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1等を参照して、一実施形態に係る地上子の検査装置について、一例を説明する。本実施形態に係る地上子の検査装置100(以下、単に検査装置100ともする。)は、地上子GRの動作の健全性を検査する地上子試験器である。図1(A)として概念的に示す斜視図にあるように、検査装置100は、持ち運び可能なものとなっており、足FTを地上子GR上に設置した状態で、地上子GRからの電波(信号)を受け、これに基づき地上子GRの発信状態を測定することで、地上子GRの検査を行う態様となっている。これにより、現場に設置されている地上子GRの検査を迅速かつ確実に行うことができる。
【0015】
図1(B)においてブロック図として示すように、検査装置100は、送受信コイル10と、電文管理部20と、操作部30と、データ記憶部40と、主制御部50と、表示部70とを備える。また、主制御部50は、レベル測定部60や、判定部JDを有する、あるいはこれらとして機能する。
【0016】
送受信コイル10は、検査装置100における信号の受信及び発信を行うべく、例えばループアンテナを構成する。すなわち、地上子GRから送信された電文について受信する受信部の一部として機能するとともに、必要に応じて、主制御部50からの指令に従って生成される電文を地上子GRに対して送信させるための発信を行う発信部の一部として機能する。ここでは、送受信コイル10が、少なくとも地上子GRから送信された電文について受信する受信部として機能することで、受信した電文の状況に基づいた検査が可能となっている。
【0017】
電文管理部20は、各種回路等で構成され、送受信コイル10を介して地上子GRからの電文(電気信号)を受け付けて、当該電文を主制御部50に対して出力する。つまり、電文管理部20は、電文受付部として機能する。また、電文管理部20は、主制御部50から地上子GRに対して電文を送信する指令を受けた場合、これに応じた地上子GRへの信号の送信(発信)を、送受信コイル10を介して行う電文受付部としても機能する。
【0018】
また、以上から、送受信コイル10と電文管理部20とは、合せて電文に関する送受信を行う送受信部(受信部及び送信部)として機能しているとも言える。
【0019】
操作部30は、検査装置100の使用者による入力操作を受け付けるインターフェース部であり、ここでは、例えば図1(A)あるいは図2等に示すように、操作ボタン等で構成されており、ボタン選択による選択を受け付ける選択受付部となっている。なお、詳しくは後述するが、ここでの一例では、地上子GRが有電源地上子である場合と無電源地上子である場合とで、検査装置100の動作モードの選択(動作態様の切替)が可能となっている。
【0020】
データ記憶部40は、各種ストレージデバイスで構成され、地上子GRの検査を行う際に必要となる各種データ(例えば予め設定された閾値等)を格納している。また、データ記憶部40には、検査対象となっている地上子GRからの電文やこれを解析した結果等の検査時に取得されたデータの一時保管にも利用される。さらに、データ記憶部40において、過去の検査内容を蓄積しておき、検査結果について、過去のデータと今回のデータとを比較可能な態様としてもよい。
【0021】
主制御部50は、例えばCPUや電子回路等で構成され、検査装置100による検査に際して、各種演算処理等を行う。すなわち、地上子GRから送信された電文について受信し、受信状況を解析して、地上子GRの発信動作の状況すなわち地上子GRの動作が健全な状態にあると言えるか否かについて判定を行う。特に、ここでは、レベル測定部60において、地上子GRから送信された電文についての受信レベルを測定し、判定部JDにおいて、レベル測定部60での測定結果に基づいて、判定を行うことで、例えば地上子GRの劣化傾向を判定することが可能となっている。
【0022】
主制御部50のうち、レベル測定部60は、電文管理部20からの電文(電気信号)について、その大きさ(強度)を測定する。地上子GRからの電文に関する受信レベルの測定については、例えば既定の測定手法から標準値を算出することをもって受信レベルを測定したものとすること、すなわち当該標準値を受信レベルに相当するものと捉えることが可能である。ここでは、レベル測定部60において、電文(電気信号)の相対電圧の値が既定の手法により標準値として算出されるものとする。なお、上記標準値の算出については、例えばRMS-DCコンバータを使用した回路をレベル測定部60に設けることで実現可能である。
【0023】
主制御部50のうち、判定部JDは、レベル測定部60での測定結果に基づいて、判定を行うが、ここでは、一例として、レベル測定部60での測定値(標準値)に関する閾値を予め段階的に定めておき、レベル測定部60での測定値を閾値と比較することで、地上子GRの発信状況(動作状況)についての判定を行うものとする。つまり、判定部JDは、受信レベルについて予め定めた閾値に基づき劣化傾向を判定する。なお、上記閾値等に関しては、図3を参照して一例を後述する。
【0024】
表示部70は、電文内容や測定結果(判定部JDにおける判定結果)を表示する表示パネルである。表示部70の構成態様については、種々のものが想定されるが、ここでの一例では、図2に示すように、セグメント表示を行う態様となっているものとしている。
【0025】
検査装置100の外観構造としては、例えば図2(A)に示すように、上記した各部を収納する筐体CSに持ち手HAを取り付けた携帯型(持ち運び可能型)の装置とすることが想定される。図示の例では、筐体CSの表面部(設置時に上面となる部分)SUに、操作部30や表示部70が設けられている。つまり、図1(A)に例示した設置状態において、使用者は、操作部30についての各種操作をすることや、表示部70についての視認をすることが可能となっている。特に、図示の一例では、操作部30に、第1選択ボタンBT1と、第2選択ボタンBT2とが設けられ、使用者は、これらにより各種動作の選択が可能になっている。
【0026】
例えば、使用者により、第1選択ボタンBT1が押されると、地上子GRが有電源地上子である場合について、すなわち地上子GRが自ら電文を発信し続ける態様のものである場合について、測定を行う有電源地上子モードが選択されたことになる。つまり、検査装置100において、主制御部50は、有電源地上子モードでの設定に応じた動作を行う。
【0027】
一方、第2選択ボタンBT2が押されると、地上子GRが無電源地上子である場合について、すなわち地上子GRが自らは発信せず電文を受けるとこれに応答する態様のものである場合について、測定を行う無電源地上子モードが選択されたことになる。つまり、検査装置100において、主制御部50は、無電源地上子モードでの設定に応じた動作を行う。
【0028】
有電源地上子モードが選択された場合、主制御部50は、送受信コイル10及び電文管理部20を介して地上子GRから継続的に発信される電文を受信することで、地上子GRの動作状況(動作の健全性)について検査を行う。一方、無電源地上子モードが選択された場合、主制御部50は、送受信コイル10及び電文管理部20を介して、まず、地上子GRに対して、電文を送信し、送信した電文に対する応答としての電文を受信することで、地上子GRの動作状況(動作の健全性)について検査を行う。
【0029】
以上のように、操作部30は、有電源地上子モードと無電源地上子モードとの選択を受け付ける選択受付部となっている。また、主制御部50は、選択受付部としての操作部30での受付結果に応じて受信部及び発信部として機能する送受信コイル10及び電文管理部20を動作させる受信発信制御部となっている。
【0030】
表示部70は、既述のように、また、図示のように、地上子GRとの間で、送受信される電文について、その電文内容を表示する。図2(A)に示す一例では、セグメント表示により、送信電文や受信電文の内容を示すものとなっており、使用者は、視認により、これらの内容確認を行う。
【0031】
ここでは、図2(B)に示すように、電文内容をセグメント表示する表示部70において、さらに、測定した電文についての受信レベルに関する表示を行うものとなっている。図2(B)では、一例として、表示領域DS1において、相対電圧を数値で表示したものにより受信レベルの大きさ(強さ)を示している。つまり、表示部70は、表示領域DS1において、レベル測定部60での測定結果としての測定値(標準値)を表示している。また、表示領域DS2において、棒状の点灯表示により、受信レベルを本数(0~3本までの4段階)で段階的に表示している。なお、これは、判定部JDでの閾値に基づく判定結果に対応するものとなっている。
【0032】
表示部70における表示態様としては、種々の態様が考えられるが、例えば、測定結果や、測定に基づく判定結果を示すべく、電文内容の表示と、受信レベルの表示とを、数秒ごとに切り替えて交互に表示する、といった態様とすることが考えられる。また、操作ボタン等を設けて、使用者側で表示の切り替えが可能なようにする、といった態様も考えられる。あるいは、表示部70において、電文内容の表示箇所と、受信レベルの表示箇所とを個別に設けておく等としてもよい。
【0033】
以下、図3として示す概念図を参照して、レベル測定部60において測定する受信レベルの大きさ(強さ)を示す指標としての標準値(相対電圧の値)に対して予め設定された閾値について一例を示す。図示の一例では、値の低い順に3つの閾値SH1~SH3を定めることで、判定部JDにおいて、地上子GRの劣化傾向について、4段階で評価が行われるものなっている。
【0034】
具体的には、まず、最も低い第1閾値SH1より低い値である場合には、受信が検知されないもの(不検知)として扱い、第1閾値SH1から第2閾値SH1までの間にある時は、受信が検知されるもののかなり弱くなっていることを示すもの(発信能力:低)として扱い、第2閾値SH2から第3閾値SH3までの間にある時は、弱くなりつつあることを示すもの(発信能力:中)として扱い、第3閾値SH3よりも高い場合には、十分な発信状態にあるもの(発信能力:高)として扱う。なお、図示のように、表示領域DS2における点灯表示の本数は、以上の4段階に応じたものとなっている。
【0035】
図4は、上述した検査装置100の構成や動作についての概要を示す概念図である。図示のように、また、既述のように、上述した検査装置100では、地上子GRからの電文送信を受け、この際の受信レベルの測定を、レベル測定部60において行う。次に、レベル測定部60での測定結果に基づいて、判定部JDにおいて、地上子GRの劣化傾向を判定する態様となっている。以上により、検査装置100は、地上子GRの送信能力の程度を反映した判定が可能となるので、地上子GRの劣化傾向を的確に捉えることができる。
【0036】
従来においては、例えば複数回受信した電文についてCRCチェック結果を確認することで、地上子の不具合発生の有無を検査する等がなされているが、各回においては、受信が正常になされたか否かを確認するに過ぎなかったため、地上子の故障発生の予兆を捉える、といったことが必ずしも十分にできるとは限らなかった。この結果として、例えば、地上子の故障発生に起因する列車の輸送障害が発生してしまうおそれがあった。これに対して、本実施形態では、上記のように、レベル測定部60での測定結果に基づいて、地上子GRからの電文送信レベルの劣化傾向を判定部JDにおいて判定することで、かかる事態を回避又は抑制できるものとしている。
【0037】
以下、図5(A)及び図5(B)に示すフローチャートを参照して、地上子の検査装置100の動作について一例を説明する。なお、図5(A)は、検査装置100の全体動作について示すフローチャートであり、図5(B)は、検査装置100の動作のうち、特に、地上子GRからの電文受信についてのより具体的な処理内容について一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、図1(A)に例示したように、検査対象となる地上子GRに対して検査装置100が設置された状態にあるものとする。また、ここでの一例では、地上子GRが有電源地上子であれ、無電源地上子であれ、地上子GRから同じ内容の電文が複数回(4回)送信され、検査装置100は、4回の受信及びこれに対する解析処理をひとまとまりの測定処理として取り扱っているものとする。
【0038】
図5(A)において、まず、検査装置100が起動すると、主制御部50は、インターフェース部としての操作部30において、入力受付を開始し(ステップS101)、使用者の操作により操作部30の第1選択ボタンBT1が押されて有電源地上子モードが選択されたか(ステップS102)、あるいは、第2選択ボタンBT2が押されて無電源地上子モードが選択されたか(ステップS103)、を確認する。
【0039】
ステップS102において、有電源地上子モードが選択された場合(ステップS102:Yes)、主制御部50は、地上子GRから自発的に発信される電文の受信を開始する(ステップS104)。
【0040】
一方、ステップS102において、有電源地上子モードが選択されず(ステップS102:No)、無電源地上子モードが選択された場合(ステップS103:Yes)、主制御部50は、まず、地上子GRに対して、電文を発信し(ステップS105)、発信した電文に対する応答として、地上子GRから発信される電文を受信する(ステップS106)。
【0041】
ステップS104又はステップS106による受信確認がなされると、主制御部50は、受信した電文について、受信レベルの測定を、レベル測定部60において行い(ステップS107)、さらに、レベル測定部60での測定結果に基づく地上子GRの劣化傾向の判定を、判定部JDにおいて行う(ステップS108)。その後、ステップS107での測定結果や、ステップS108での判定結果に応じた表示動作がなされ(ステップS109)、一連の処理が終了する。以上のようにして、検査装置100による地上子GRの検査がなされる。
【0042】
なお、ステップS103において、無電源地上子モードが選択されない場合(ステップS103:No)、すなわち有電源地上子モードも無電源地上子モードも選択されていない状態においては、主制御部50は、いずれかが選択されるまで、ステップS101に示す入力受付を待つ状態に戻ることになる。
【0043】
以下、図5(B)を参照して、地上子GRからの電文についてのレベル測定からこれに対応した結果表示に至るまでの動作についてより具体的な一例を説明する。すなわち、図5(B)は、図5(A)で示した各種動作のうち、ステップS104又はステップS106において受信が確認された電文についてのレベル測定からステップS109における表示に相当する内容までについて、詳しい一例を示している。
【0044】
ここでの一例における電文については、既述のように、地上子GRから同一内容の電文が4回送信されるものとする。したがって、受信側である検査装置100は、主制御部50において、4回の送信に応じた4回の受信及びレベル測定が行われることになる。このため、主制御部50は、まず、4回の受信電文の全てについてレベル測定がなされたか否かを確認し(ステップS201)、確認がなされていないもの(未測定のもの)が存在する場合(ステップS201:No)、レベル測定部60において未測定の受信電文についてレベル測定を行い(ステップS202)、測定値(標準値)が所定値以上であるか否か、すなわち第1閾値SH1以上であるか否かを確認する(ステップS203)。
【0045】
ステップS203において、所定値(第1閾値SH1)以上であると判定された場合(ステップS203:Yes)、主制御部50(例えば判定部JD)は、レベル測定の対象となっている電文を構成するデータについて、例えばCRC処理等により、誤り検知を行い(ステップS204)、データそのものに異常がないかを確認する(ステップS205)。
【0046】
ステップS205において異常が確認されなければ(ステップS205:No)、主制御部50は、レベル測定についての測定結果としての標準値の情報を、電文内容等とともにデータ記憶部40に記録する(ステップS206)。
【0047】
一方、ステップS205において異常が確認された場合(ステップS205:Yes)には、該当回における受信についてはエラーとしてデータ記憶部40に記録される(ステップS207)。なお、ステップS203において、所定値(第1閾値SH1)以上でないと判定された場合も、エラーとしてデータ記憶部40に記録される(ステップS207)。
【0048】
ステップS201において、4回の受信電文の全てについてレベル測定がなされたと判断されるまで、上記動作が繰り返され、4回の受信電文の全てについてレベル測定がなされたと判断されると(ステップS201:Yes)、主制御部50は、データ記憶部40から、4回の受信のうち、エラーとならず、正常に検知されたものについて取り出し、電文内容が一致するものが2つ以上存在するか否かを判定する(ステップS208)。
【0049】
ステップS208において、電文内容が一致するものが2つ以上存在すると判定された場合(ステップS208:Yes)、主制御部50は、レベル測定部60として、電文内容が一致するものに基づいて測定値を算出し(ステップS209)、さらに、判定部JDとして、ステップS209で算出した測定値に基づき地上子GRの劣化傾向の判定を行う(ステップS210)。
【0050】
ここで、ステップS209における測定値(受信レベル)の算出手法については、種々の態様が考えられるが、例えば、電文内容が一致する全てのものの測定値の平均値をもって算出すべき測定値とすることが考えられる。また、ステップS210の判定においても、当該平均値を閾値と比較することで、劣化傾向の判定を行うことができる。なお、この場合、判定部JDは、地上子GRから複数回(4回)送信された同一の電文のうち、受信内容が一致したものについてのレベル測定部60での受信レベルの測定結果に基づいて、地上子GRの状態を判定していることになる。
【0051】
ステップS210における判定処理の後、ステップS209やステップS210での結果が、表示部70に表示され(ステップS211)、一連の処理が終了する。
【0052】
一方、ステップS208において、電文内容が一致するものが2つ以上存在しないと判定された場合(ステップS208:No)、測定時における通信状態等、検査装置100による検査に際して、何らかの異常が発生しているとし、その旨を通知し(ステップS212)、一連の処理を終える。なお、ステップS212における通知の手法としては、表示部70に異常発生時の表示を行う等が考えられる。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る地上子の検査装置100は、地上子GRから送信された電文についての受信レベルを測定するレベル測定部60と、レベル測定部60での測定結果に基づいて、地上子GRの劣化傾向を判定する判定部JDとを備える。上記のような地上子の検査装置100では、レベル測定部60において地上子GRから送信された電文についての受信レベルが測定され、測定された受信レベルに基づいて、判定部JDにおいて地上子GRの劣化傾向を判定する態様となっている。これにより、地上子GRの送信能力の程度を反映した判定が可能となるので、地上子GRの劣化傾向を的確に捉えることができる。
【0054】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0055】
まず、上記において、測定結果や判定結果を、表示部70に表示する態様としているが、これに限らず、例えば各結果に対応するデータを、有線あるいは無線により外部へ出力する態様とし、表示部を設けないものとしてもよい。あるいは、各結果について、外部への出力を行いつつ、その場での表示も行う、という態様としてもよい。
【0056】
また、上記では、閾値すなわち判定基準を3つ設けて4段階で評価を行うものとしているが、閾値の設定数や設定については、種々変更可能であり、例えば検査装置100を構成する各部の特性や、対象となる地上子GRの特性に応じて、種々変更可能である。例えば、検査の対象となる地上子GRが有電源地上子であるか無電源地上子であるかによって、閾値(判定基準)を変更することも考えられる。
【0057】
さらに、劣化傾向の判定に際して、データ記憶部40に蓄積されたデータを加味してもよい。すなわち、対象となる地上子GRを一定期間ごと(例えば半年ごと)に検査するものとし、前回あるいは前々回での測定結果と比較することで、判定を行う態様とする、といったことも考えられる。また、データを記憶(記録)する手法については、種々の態様が考えられ、例えばクラウド化することで、データを蓄積し、必要に応じてアクセスするものとしてもよい。
【0058】
また、上記において、データの誤り検出等のデータをチェックする手法については、一例を示したものであり、データの適性を判定するに際しては、これに限らず、データの属性等に応じて、種々の方法が適用できる。
【0059】
また、上記一例では、検査装置100を、持ち手HAを取り付けた携帯型としている。しかし、これに限らず、検査装置100は、種々の態様とすることができ、例えば、台車や軌陸車等に設置され、移動可能型とする態様も考えられる。
【0060】
また、操作部30におけるモード選択や表示部70やこれ以外のものによる表示態様等についても、種々の態様とすることができる。例えば、モード選択については、常に有電源地上子または無電源地上子のいずれか一方のみを対象とする場合には、選択肢を設けない構成とすることも考えられる。例えば、有電源地上子のみを対象とし、発信を行わない態様とすることも考えられる。あるいは、地上子GRの種類や属性等に応じて、受信感度が異なるモードを設定可能にする、といったことも考えられる。また、表示態様についても、表示部70をセグメント表示により行う態様以外にも、液晶パネルや有機ELパネルを利用すること等種々の態様が可能である。また、モード選択を行った場合に、現在どちらのモードで動作をしているかを示すランプを設ける態様とすることも考えられる。また、誤り検知(CRC処理)等による異常等があった場合に、これを示すランプ等を設ける態様も考えられる。さらに、表示に加え、音声による通知を行うものとしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…送受信コイル、20…電文管理部、30…操作部、40…データ記憶部、50…主制御部、60…レベル測定部、70…表示部、100…検査装置、BT1…第1選択ボタン、BT2…第2選択ボタン、CS…筐体、DS1…表示領域、DS2…表示領域、FT…足、GR…地上子、HA…持ち手、JD…判定部、SH1~SH3…閾値、SU…表面部
図1
図2
図3
図4
図5