(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082252
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20230607BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230607BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230607BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230607BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/04 Z
H01M4/13
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195882
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】池沼 達也
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028HH01
5H028HH03
5H028HH05
5H028HH10
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL07
5H029HJ01
5H029HJ07
5H029HJ08
5H029HJ18
5H029HJ19
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050HA01
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
【課題】二次電池の過充電を抑制可能な二次電池の製造方法及び二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法は、対象の二次電池について負極の電位変化量が大きいSOC領域である負極電位高変化SOC領域を特定する第1の工程S1と、対象の二次電池について、二次電池の過充電を検知するための過充電検知電圧に対応する検知電圧対応SOCを算出する第2の工程S2と、特定された負極電位高変化SOC領域と、算出された検知電圧対応SOCと、対象の二次電池の正極の単位面積当たりの合材重量に対する負極の単位面積当たりの合材重量の割合である合材目付比とに基づき、検知電圧対応SOCが負極電位高変化SOC領域内となる合材目付比を決定する第3の工程S3と、決定された合材目付比に従って電極を製造する第4の工程S4とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の二次電池について負極の電位変化量が大きいSOC(State Of Charge)領域である負極電位高変化SOC領域を特定する第1の工程と、
前記対象の二次電池について、前記二次電池の過充電を検知するための過充電検知電圧に対応する検知電圧対応SOCを算出する第2の工程と、
特定された負極電位高変化SOC領域と、算出された検知電圧対応SOCと、前記対象の二次電池の正極の単位面積当たりの合材重量に対する負極の単位面積当たりの合材重量の割合である合材目付比とに基づき、前記検知電圧対応SOCが前記負極電位高変化SOC領域内となる合材目付比を決定する第3の工程と、
決定された合材目付比に従って電極を製造する第4の工程と
を含む、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記負極電位高変化SOC領域は、前記対象の二次電池の正極OCP(Open Circuit Potential)の電気量変化を電位量変化で微分して得られた第1の微分値と、前記対象の二次電池のOCV(Open Circuit Voltage)の電気量変化を電位量変化で微分して得られた第2の微分値の差に基づいて特定される、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記検知電圧対応SOCは、正極活物質の比表面積と、正極活物質内のリチウム以外の金属に対するリチウムの比と、正極密度に基づいて算出される、請求項1又は2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記第3の工程で決定された合材目付比は、0.58~0.66のうちのいずれかであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記第4の工程で製造された電極は、前記過充電検知電圧が4.75~4.85[V]のうちのいずれかであり、正極活物質の比表面積が1.0~4.0[cm2/g]のうちのいずれかであり、正極活物質中におけるリチウム以外の金属に対するリチウムの比が1.10~1.25のうちのいずれかであり、正極密度が2.3~3.2[g/cm3]のうちのいずれかであることを特徴とする、請求項4に記載の二次電池の製造方法。
【請求項6】
合材を有する正極及び負極を備えた二次電池であって、
前記正極の単位面積当たりの合材重量に対する前記負極の単位面積当たりの合材重量の割合である合材目付比が、0.58~0.66のうちのいずれかであり、
前記二次電池の過充電を検知するための過充電検知電圧が、4.75~4.85[V]のうちのいずれかであり、
正極活物質の比表面積が、1.0~4.0[cm2/g]のうちのいずれかであり、
正極活物質中におけるリチウム以外の金属に対するリチウムの比が、1.10~1.25のうちのいずれかであり、
正極密度が、2.3~3.2[g/cm3]のうちのいずれかであることを特徴とする、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の製造方法及び二次電池に関する。
【0002】
従来、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、電気自動車等の車両で二次電池が利用されている。二次電池では、充電率を示すSOC(State Of Charge)が100%を超えて充電される過充電が起こることがあり、劣化の加速及び二次電池の発煙や発火等に繋がる恐れがある。そのため、二次電池の過充電を素早く検知して過充電を抑制することが重要である。
【0003】
この点に関し、特許文献1は、負極にチタン酸リチウムを使用し、正極の電位変化量に対する負極の電位変化量が1以上となるように設計された非水電解質電池を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1が開示する非水電解質電池のように、正極の電位変化量に対する負極の電位変化量が1以上となる二次電池はかなり限定される。例えば、負極に黒鉛、正極にニッケルコバルトマンガン等を用いた二次電池では、正極と比べて負極の電位変化量が小さいため、正極の電位変化量に対する負極の電位変化量が1以上とする技術的思想を応用できない。そのため、様々な二次電池について過充電を抑制できないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、二次電池の過充電を抑制可能な二次電池の製造方法及び二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法は、
対象の二次電池について負極の電位変化量が大きいSOC領域である負極電位高変化SOC領域を特定する第1の工程と、
対象の二次電池について、二次電池の過充電を検知するための過充電検知電圧に対応する検知電圧対応SOCを算出する第2の工程と、
特定された負極電位高変化SOC領域と、算出された検知電圧対応SOCと、対象の二次電池の正極の単位面積当たりの合材重量に対する負極の単位面積当たりの合材重量の割合である合材目付比とに基づき、検知電圧対応SOCが負極電位高変化SOC領域内となる合材目付比を決定する第3の工程と、
決定された合材目付比に従って電極を製造する第4の工程とを含む。
【0008】
負極電位高変化SOC領域は、対象の二次電池の正極OCP(Open Circuit Potential)の電気量変化を電位量変化で微分して得られた第1の微分値と、対象の二次電池のOCV(Open Circuit Voltage)の電気量変化を電位量変化で微分して得られた第2の微分値の差に基づいて特定され得る。
【0009】
検知電圧対応SOCは、正極活物質の比表面積と、正極活物質内のリチウム以外の金属に対するリチウムの比と、正極密度に基づいて算出され得る。
【0010】
第3の工程で決定された合材目付比は、0.58~0.66のうちのいずれかとし得る。
【0011】
第4の工程で製造された電極は、過充電検知電圧が4.75~4.85[V]のうちのいずれかであり、正極活物質の比表面積が1.0~4.0[cm2/g]のうちのいずれかであり、正極活物質中におけるリチウム以外の金属に対するリチウムの比が1.10~1.25のうちのいずれかであり、正極密度が2.3~3.2[g/cm3]のうちのいずれかとし得る。
【0012】
本発明の一実施形態に係る合材を有する正極及び負極を備えた二次電池は、
正極の単位面積当たりの合材重量に対する負極の単位面積当たりの合材重量の割合である合材目付比が、0.58~0.66のうちのいずれかであり、
二次電池の過充電を検知するための過充電検知電圧が、4.75~4.85[V]のうちのいずれかであり、
正極活物質の比表面積が、1.0~4.0[cm2/g]のうちのいずれかであり、
正極活物質中におけるリチウム以外の金属に対するリチウムの比が、1.10~1.25のうちのいずれかであり、
正極密度が、2.3~3.2[g/cm3]のうちのいずれかとし得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、二次電池の過充電を抑制可能な二次電池の製造方法及び二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に二次電池の正極OCPの微分値dQ/dVと、OCVの微分値dQ/dVとの傾向を示す図である。
【
図3】合材目付比の異なる2種類の二次電池の正極OCP、負極OCP及びOCVを示す図である。
【
図4】二次電池の過充電評価に基づく重回帰分析の結果の一例を示す図である。
【
図5】合材目付比の異なる二次電池の負極電位高変化SOC領域を示す図である。
【
図6】合材目付比の異なる別の二次電池の検知電圧対応SOC(SOC
y)と上限SOC(SOC
x2)の差と、検知電圧対応SOC(SOC
y)の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法の一例を示す図である。工程S1では、対象の二次電池について、負極の電位変化量が大きいSOC領域(以下、「負極電位高変化SOC領域」とする。)を特定する。負極電位高変化SOC領域は、対象の二次電池の正極OCPとOCVのそれぞれについて電気量変化dQを電位量変化dVで微分して得られた微分値dQ/dVの差に基づいて特定することができる。対象の二次電池は、負極活物質として黒鉛、正極活物質としてニッケルコバルトマンガン等を使用することができる。
【0016】
図2は、二次電池の正極OCPの微分値dQ/dVと、OCVの微分値dQ/dVとの傾向を示す図である。正極OCPの微分値dQ/dVは、第1の微分値に相当する。OCVの微分値dQ/dVは、第2の微分値に相当する。
【0017】
図2に示すように、これらの微分値dQ/dVは2つのピークを有する。負極電位高変化SOC領域の特定では、電圧の高いピークに着目する。このピークの近くにおいて、正極OCPの微分値dQ/dVとOCVの微分値dQ/dVとの差(以下、「微分値差」とする。)が存在するOCV及び正極OCPに対応するSOCの範囲が、負極電位高変化SOC領域に相当する。負極電位高変化SOC領域は、下限SOC及び上限SOCで規定される。
図2に示すように、微分値差が大きくなるOCV及び正極OCPが下限SOC(SOC
x1)に対応する。また、微分値dQ/dVの極小値が上限SOC(SOC
x2)に対応する。
【0018】
正極の単位面積当たりの合材重量に対する負極の単位面積当たりの合材重量の割合である合材目付比が0.68の二次電池の微分値dQ/dVを調べた結果、当該二次電池の負極電位高変化SOC領域は、154~194%の範囲であることが判明した。
【0019】
図3は、合材目付比が0.809の二次電池の正極OCP、負極OCP及びOCVと、合材目付比が0.688の二次電池の正極OCP、負極OCP及びOCVの一例を示す図である。
図3に示すように、合材目付比が小さい二次電池は、合材目付比が大きい二次電池に比べ、負極電位高変化SOC領域が低SOC側に位置する。したがって、負極電位高変化SOC領域は、合材目付比を変えることによって変更できる。例えば、合材目付比を0.809から0.688に変更、すなわち、合材目付比を小さくすると、負極電位高変化SOC領域は、低SOC側へシフトする。すなわち、下限SOC及び上限SOCが小さくなる。なお、合材目付比を大きくすると、負極電位高変化SOC領域は高SOC側へシフトする。すなわち、下限SOC及び上限SOCが大きくなる。
【0020】
このような負極電位高変化SOC領域のシフトの程度は、合材目付比の変更の程度に依存する。例えば、合材目付比を15%小さくすると、上限SOC及び下限SOCも15%小さくなる。また、合材目付比を3%小さくすると、上限SOC及び下限SOCも3%小さくなる。したがって、合材目付比が0.68の二次電池の負極電位高変化SOC領域が154~194%であるとの知見に基づき、他の合材目付比の二次電池の負極電位高変化SOC領域を導出できる。例えば、
図5に示すように、合材目付比が0.58(=0.68×0.85)~0.66(=0.68×0.97)の二次電池の負極電位高変化SOC領域は、149(=154×0.97)~169(=194×0.85)%であることが導出できる。
【0021】
工程S2では、対象の二次電池について、当該二次電池の過充電を検知するための過充電検知電圧に対応するSOC(以下、「検知電圧対応SOC」とする。)を算出する。検知電圧対応SOCは、数式1に基づき算出することができる。
【数1】
正極活物質比表面積は、正極活物質の重量に対する表面積の割合を表す。正極活物質Li/M比は、正極活物質内のリチウム以外の金属のモル量に対するリチウムのモル量の比を表す。正極密度は、正極の合材の密度を表す。a1~a3は定数項を表し、設計因子が異なる複数の二次電池について重回帰分析を行うことにより導出できる。
【0022】
具体的には、正極活物質比表面積、正極活物質Li/M比、及び正極密度を設計因子とし、各設計因子が異なる複数の二次電池を用意する。これらの二次電池について過充電評価を行い、それぞれの二次電池の検知電圧対応SOCを算出する。次いで、正極活物質比表面積、正極活物質Li/M比、及び正極密度を説明因子とし、検知電圧対応SOCを目的因子として、数式1の関係式が成立すると仮定し、これらの二次電池の過充電評価の結果を用いて重回帰分析を行うことにより、a1~a3を導出できる。
【0023】
図4は、二次電池の過充電評価に基づく重回帰分析の結果の一例を示す図である。
図4には、検知電圧対応SOCの予測値と、検知電圧対応SOCの実測値が示されている。
図4に示す黒丸が検知電圧対応SOCの予測値と実測値の関係性を示し、点線がこの近似線を表す。重回帰分析の結果、モデル式はy=0.9985xであり、決定係数R
2は0.8298であった。これらの結果から、検知電圧対応SOCは、数式1に基づき、正極Li/M比と、正極活物質比表面積と、正極密度を用いて予測できることが判明した。
【0024】
合材目付比が0.58~0.66の二次電池の場合、当該二次電池の過充電検知電圧を4.75~4.85[V]とすると、正極Li/M比は1.10~1.25、正極活物質比表面積は1.0~4.0[cm2/g]、正極密度は2.3~3.2[g/cm3]となる。なお、これらの数値は、正極活物質としてニッケルコバルトマンガンを使用した場合の値である。
【0025】
工程S3では、工程S1で特定した対象の二次電池の負極電位高変化SOC領域と、工程S2で算出した対象の二次電池の検知電圧対応SOCと、対象の二次電池の合材目付比に基づき、検知電圧対応SOCが負極電位高変化SOC領域内となる合材目付比を決定する。すなわち、下限SOC≦検知電圧対応SOC≦上限SOCとなる合材目付比を決定する。工程S2で算出した対象の二次電池の検知電圧対応SOCが、工程S1で特定した対象の二次電池の負極電位高変化SOC領域内である場合、対象の二次電池の合材目付比を、求める合材目付比として採用する。一方、工程S2で算出した対象の二次電池の検知電圧対応SOCが、工程S1で特定した対象の二次電池の負極電位高変化SOC領域内から外れている場合、下限SOC≦合材目付比変更後の検知電圧対応SOC≦上限SOCとなる合材目付比を決定する。
【0026】
例えば、工程S2で算出した対象の二次電池の検知電圧対応SOCが、工程S1で特定した対象の二次電池の負極電位高変化SOC領域よりも大きい場合、対象の二次電池の合材目付比よりも小さい合材目付比を採用する。例えば、二次電池の過充電検知電圧が4.75~4.85[V]の場合、合材目付比を0.58~0.66のうちのいずれかとし得る。二次電池の合材目付比は、正極の単位面積当たりの合材重量及び/又は負極の単位面積当たりの合材重量を増減させることよって調整できる。二次電池の合材目付比を小さくする場合、二次電池の合材目付比は、負極の合材の重量を小さくして合材目付比を小さくしてもよく。また、正極の合材の重量を大きくして合材目付比を小さくしてもよい。さらに、負極の合材の重量を小さくし、かつ、正極の合材の重量を大きくすることにより、合材目付比を小さくしてもよい。
【0027】
図6は、合材目付比の異なる別の二次電池の検知電圧対応SOC(SOC
y)と上限SOC(SOC
x2)の差と、検知電圧対応SOC(SOC
y)の関係を示す図である。
図6において、検知電圧対応SOCと上限SOCの差(SOC
y-SOC
x2)が0以下である場合、検知電圧対応SOCが上限SOC以下であることを意味する。
【0028】
図6に示すように、合材目付比が0.809の二次電池の検知電圧対応SOCと上限SOCの差が0であることから、この二次電池の検知電圧対応SOCと上限SOCが実質的に同じであることが分かる。一方、合材目付比が0.688の二次電池の検知電圧対応SOCと上限SOCの差が-38%であることから、この二次電池の検知電圧対応SOCは、上限SOCよりも38%小さいことが分かる。
【0029】
また、
図6から、検知電圧対応SOCが上限SOC以下の範囲に存在する二次電池では、合材目付比が小さい二次電池ほど、検知電圧対応SOCが小さくなることが分かる。なお、合材目付比の変更に伴う負極電位高変化SOC領域の変化の度合いは、検知電圧対応SOCの変化の度合いよりも大きいため、合材目付比を調整することにより、下限SOC≦合材目付比変更後の検知電圧対応SOC≦上限SOCとなる電極を製造することができる。
【0030】
工程S4では、工程S3で決定した合材目付比に従って電極を製造する。
【0031】
工程S2で算出した対象の二次電池の検知電圧対応SOCが、工程S1で特定した対象の二次電池の負極電位高変化SOC領域から外れる場合、合材目付比が変更された二次電池に対し、工程S1及び工程S2を実施する。これにより、合材目付比が変更された二次電池の検知電圧対応SOCが、当該二次電池の負極電位高変化SOC領域内であるか否か判断できる。そして、合材目付比が変更された二次電池の検知電圧対応SOCが、当該二次電池の負極電位高変化SOC領域内になるまで、工程S1~S4を繰り返し実行する。
【0032】
上述した実施形態では、第1の工程において、対象の二次電池の負極電位高変化SOC領域を特定する。第2の工程では、対象の二次電池の検知電圧対応SOCを算出する。第3の工程では、特定された負極電位高変化SOC領域と、算出された検知電圧対応SOCと、対象の二次電池の合材目付比とに基づき、検知電圧対応SOCが負極電位高変化SOC領域内となる合材目付比を決定する。第4の工程では、決定された合材目付比に従って電極を製造する。
【0033】
負極の電位変化量の大きい負極電位高変化SOC領域では、二次電池の充電に伴いOCVの値が急激に増加する。したがって、検知電圧対応SOCが負極電位高変化SOC領域内となるように二次電池の合材目付比を構成することにより、二次電池のOCVが素早く過充電検知電圧に到達する。そのため、二次電池の充電に伴ってOCVが緩やかに増加する構成と比べ、OCVが過充電検知電圧に到達したことを検知し易くなり、二次電池の過充電を素早く抑制することができる。
【0034】
本発明は、上述した実施形態に限られたものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、他の実施形態では、合材目付比を調整するだけでなく、数式1に示す正極活物質比表面積、正極活物質Li/M比、及び/又は正極密度を変更して検知電圧対応SOCを調整することにより、検知電圧対応SOCが負極電位高変化SOC領域内となる二次電池を製造してもよい。
【0035】
また、他の実施形態では、合材目付比を調整することなく、数式1に示す正極活物質比表面積、正極活物質Li/M比、及び/又は正極密度を変更して検知電圧対応SOCを調整することにより、検知電圧対応SOCが負極電位高変化SOC領域内となる二次電池を製造してもよい。
【符号の説明】
【0036】
S1 第1の工程
S2 第2の工程
S3 第3の工程
S4 第4の工程