(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082255
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】軌陸作業車の安全装置
(51)【国際特許分類】
B60F 1/04 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
B60F1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195888
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】川島 延之
(72)【発明者】
【氏名】原口 慶太
(72)【発明者】
【氏名】内海 祐希
(57)【要約】
【課題】軌道上での事故リスクを低減することのできる軌陸作業車の安全装置を提供する。
【解決手段】軌陸作業車の安全装置は、軌道走行姿勢において鉄輪が軌道から受ける接地反力を検出する車輪荷重検出器81~84と、車輪荷重検出器81~84において検出された接地反力に基づき鉄輪に作用する車輪荷重を算出する車輪荷重算出部63と、車輪荷重算出部63において算出された車輪荷重が予め定められた閾値を逸脱する場合に警報作動を実行する車輪荷重判定部65とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に回転自在に設けられて道路上を走行可能な複数の道路走行用車輪と、
前記車体に回転自在に設けられて軌道上を走行可能な複数の軌道走行用車輪とを備え、
前記道路走行用車輪により道路上を走行可能とする道路走行姿勢と、前記軌道走行用車輪により軌道上を走行可能とする軌道走行姿勢とに切換設定可能に構成される軌陸作業車の安全装置において、
前記軌道走行姿勢において前記軌道走行用車輪が軌道から受ける接地反力に基づき、前記軌道走行用車輪に作用する車輪荷重を検出する車輪荷重検出部と、
前記車輪荷重検出部において検出された車輪荷重が予め定められた閾値を逸脱する場合に警報作動を実行する規制部とを備えたことを特徴とする軌陸作業車の安全装置。
【請求項2】
前記軌陸作業車が前記軌道走行姿勢にあるか否かを検出する車両姿勢判別部を備え、
前記規制部は、前記車両姿勢判別部において前記軌陸作業車が前記軌道走行姿勢に切り換えられたことが検出されたときに、前記車輪荷重検出部において複数の前記軌道走行用車輪のうちの少なくともいずれかの前記軌道走行用車輪の車輪荷重が第1閾値未満であることが検出された場合に警報作動を実行することを特徴とする請求項1に記載の軌陸作業車の安全装置。
【請求項3】
前記車体は、積荷を積載する荷台を備えており、
前記規制部は、前記車輪荷重検出部において複数の前記軌道走行用車輪に作用する車輪荷重の総和が第2閾値を超過したことが検出された場合に車両の過積載状態を判定して警報作動を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の軌陸作業車の安全装置。
【請求項4】
前記規制部は、前記車輪荷重検出部において複数の前記軌道走行用車輪に作用する車輪荷重の総和が前記第2閾値よりも小さい第3閾値を超過したことが検出された場合に所定の警報を発し、前記車輪荷重検出部において複数の前記軌道走行用車輪に作用する車輪荷重の総和が前記第2閾値を超過したことが検出された場合に前記軌道走行用車輪による軌道走行を規制することを特徴とする請求項3に記載の軌陸作業車の安全装置。
【請求項5】
複数の前記軌道走行用車輪として、前記車体の左側に設けられた左軌道走行用車輪と、前記車体の右側に設けられた右軌道走行用車輪とを有し、
前記車体上には、少なくとも水平旋回自在に設けられたクレーン装置が設けられており、
前記規制部は、前記車輪荷重検出部において前記軌陸作業車の軌道走行中に前記左軌道走行用車輪および前記右軌道走行用車輪のうちの一方の軌道走行用車輪の車輪荷重が低下していることを検出した場合、前記クレーン装置を前記一方の軌道走行用車輪側へ向けて水平旋回させることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の軌陸作業車の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路走行および軌道走行が可能な軌陸作業車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軌陸作業車は、トラック車両をベースとして構成されており、道路走行用のタイヤ車輪と軌道走行用の鉄輪とを備え、鉄輪を格納してタイヤ車輪により道路上を走行可能とする道路走行姿勢と、鉄輪を軌道上に張り出して該鉄輪により軌道上を走行可能とする軌道走行姿勢とに切換設定可能となっている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構成の軌陸作業車には、左右の鉄輪の車幅方向の間隔を標準軌(軌間距離1435mm)および狭軌(軌間距離1067mm)のそれぞれに対応する間隔に調整可能な機構を備えたものが知られている。しかしながら、軌陸作業車を用いた作業は、電車が軌道上を走行していない夜間での作業(周囲が暗い状態での作業)が多く、作業員が軌間距離を見間違えて、左右の鉄輪の間隔が対象の軌間距離に応じた適正な間隔に調整されなかった場合には、鉄輪が軌道上に正しく載線されず(例えば鉄輪のフランジ部分が軌道上に乗り上げられ)、それにより軌陸作業車が脱線事故を起こすおそれがあった。また、作業に必要な積荷(機材や工具など)を軌陸作業車に積込む際に、所定の積載量を超える積荷が積載されると、この過積載により鉄輪が破損する事態や軌道走行が不安定となる事態が生じるおそれがあった。そのため、このような軌道上での事故リスクを低減して、軌陸作業車の安全性の向上を図ることが求められている。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、軌道上での事故リスクを低減することのできる軌陸作業車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る軌陸作業車の安全装置は、車体と、前記車体に回転自在に設けられて道路上を走行可能な複数の道路走行用車輪と、前記車体に回転自在に設けられて軌道上を走行可能な複数の軌道走行用車輪とを備え、前記道路走行用車輪により道路上を走行可能とする道路走行姿勢と、前記軌道走行用車輪により軌道上を走行可能とする軌道走行姿勢とに切換設定可能に構成される軌陸作業車の安全装置において、前記軌道走行姿勢において前記軌道走行用車輪が軌道から受ける接地反力に基づき、前記軌道走行用車輪に作用する車輪荷重を検出する車輪荷重検出部と、前記車輪荷重検出部において検出された車輪荷重が予め定められた閾値を逸脱する場合に警報作動を実行する規制部とを備えたことを特徴とする。本明細書において、警報作動とは、例えば警報ブザー、警報ランプ等を使用して警報を発する作動や、車両の走行を規制(軌道走行装置の作動を規制)する作動、車体に搭載される作業装置の作動を規制する作動を含めた意味で用いている。
【0007】
上記構成の軌陸作業車の安全装置において、前記軌陸作業車が前記軌道走行姿勢にあるか否かを検出する車両姿勢判別部を備え、前記規制部は、前記車両姿勢判別部において前記軌陸作業車が前記軌道走行姿勢に切り換えられたことが検出されたときに、前記車輪荷
重検出部において複数の前記軌道走行用車輪のうちの少なくともいずれかの前記軌道走行用車輪の車輪荷重が第1閾値未満であることが検出された場合に警報作動を実行することが好ましい。
【0008】
また、上記構成の軌陸作業車の安全装置において、前記車体は、積荷を積載する荷台を備えており、前記規制部は、前記車輪荷重検出部において複数の前記軌道走行用車輪に作用する車輪荷重の総和が第2閾値を超過したことが検出された場合に車両の過積載状態を判定して警報作動を実行することが好ましい。
【0009】
さらに、上記構成の軌陸作業車の安全装置において、前記規制部は、前記車輪荷重検出部において複数の前記軌道走行用車輪に作用する車輪荷重の総和が前記第2閾値よりも小さい第3閾値を超過したことが検出された場合に所定の警報を発し、前記車輪荷重検出部において複数の前記軌道走行用車輪に作用する車輪荷重の総和が前記第2閾値を超過したことが検出された場合に前記軌道走行用車輪による軌道走行を規制することが好ましい。
【0010】
また、上記構成の軌陸作業車の安全装置において、複数の前記軌道走行用車輪として、前記車体の左側に設けられた左軌道走行用車輪と、前記車体の右側に設けられた右軌道走行用車輪とを有し、前記車体上には、少なくとも水平旋回自在に設けられたクレーン装置が設けられており、前記規制部は、前記車輪荷重検出部において前記軌陸作業車の軌道走行中に前記左軌道走行用車輪および前記右軌道走行用車輪のうちの一方の軌道走行用車輪の車輪荷重が低下していることを検出した場合、前記クレーン装置を前記一方の軌道走行用車輪側へ向けて水平旋回させることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る軌陸作業車の安全装置によれば、車両の軌道走行姿勢において軌道走行用車輪が軌道から受ける接地反力に基づき軌道走行用車輪に作用する車輪荷重を検出して、この車輪荷重が所定の閾値を逸脱した場合に警報作動を実行することで、車両の状態(軌道載線状態、過積載状態、偏積載状態、重心移動状態など)を的確に管理して、載線作業時や積載作業時、軌道走行時の事故リスクを低減させ、軌陸作業車の安全性を向上させることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る軌陸作業車の安全装置によれば、軌陸作業車の載線作業時において、車両が軌道走行姿勢に切り換えられたときの各軌道走行用車輪の車輪荷重を検出して、いずれかの軌道走行用車輪の車輪荷重が第1閾値未満である場合に軌陸作業車が軌道上に正しく載線されていないこと(載線不良が発生していること)を判定して警報作動を実行するため、軌陸作業車の脱線を未然に防止して、軌道走行時の安全性を向上させることが可能となる。
【0013】
さらに、本発明に係る軌陸作業車の安全装置によれば、軌陸作業車の荷台への積載作業時において、複数の軌道走行用車輪の車輪荷重の総和が第2閾値を超過した場合に車両の過積載状態を判定して警報作動を実行するため、この過積載により軌道走行用車輪が破損する事態や軌道走行が不安定となる事態を未然に防止することが可能となる。
【0014】
加えて、本発明に係る軌陸作業車の安全装置によれば、車両の積載状態を判定するための二段階の閾値(第2閾値>第3閾値)を設定して、第3閾値を超過した場合には警報を発して車両が過積載状態に近づいていることを注意喚起し、第2閾値を超過した場合には過積載状態に達したことを判定して軌道走行を規制することができるため、この過積載による事故リスクを一層低減して、軌陸作業車の安全性および信頼性を向上させることが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る軌陸作業車の安全装置によれば、軌陸作業車の軌道走行中において左軌道走行用車輪および右軌道走行用車輪のうちの一方の軌道走行用車輪の車輪荷重が低下していることを検出した場合に、クレーン装置を一方の軌道走行用車輪側へ向けて水平旋回させることで、軌道からの軌道走行用車輪の浮き上がり(駆動力および制動力の低下)を防止して、常に安定した軌道走行を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の安全装置を備えた軌陸作業車の側面図である。
【
図3】上記安全装置による載線判定処理のフローチャートである。
【
図4】上記安全装置による過積載判定処理のフローチャートである。
【
図5】上記軌陸作業車の重心位置の補正制御を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る軌陸作業車1を
図1に示しており、まず、この図を参照して軌陸作業車1の全体構成について説明する。
【0018】
軌陸作業車1は、車体2の前部に運転キャビン2aを有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪3(道路走行用車輪)により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2における運転キャビン2a後方の架装領域には、保守や点検などの作業に用いる機材等を積載するための荷台5が配設されている。
【0019】
車体2の前後には、各タイヤ車輪3の後側に位置して、左右一対の鉄輪支持部材(鉄輪支持ブラケット)11が上下方向に揺動自在に配設されている。前側の鉄輪支持部材11の先端部には、左右一対の前鉄輪(軌道走行用車輪)12fが回転自在に取り付けられている。後側の鉄輪支持部材11の先端部には、左右一対の後鉄輪(軌道走行用車輪)12rが回転自在に取り付けられている。なお、以下の説明では、前鉄輪12fおよび後鉄輪12rを特に区別する必要がない場合は、単に「鉄輪12」とも呼称する。また、本明細書では、軌陸作業車1または鉄輪12を軌道上に載せることを「載線」と呼称する。
【0020】
鉄輪支持部材11は、鉄輪揺動シリンダ13(
図2を参照)の伸縮駆動により、上方に揺動して鉄輪12を車体2に格納する格納位置(鉄輪格納位置)と、下方に揺動して鉄輪12を軌道(レール)上に張り出す張出位置(鉄輪張出位置)との間で揺動作動する。左右の前鉄輪12fは、それぞれ鉄輪走行モータ14(
図2を参照)の出力軸に接続されており、この鉄輪走行モータ14の出力(駆動力)が不図示の減速機を介して伝達されることにより回転駆動される。なお、以下では、鉄輪支持部材11、鉄輪12、鉄輪揺動シリンダ13および鉄輪走行モータ14などをまとめて「軌道走行装置10」とも呼称する。
【0021】
運転キャビン2a内には、運転席内操作装置20が搭載されている。運転席内操作装置20には、軌道走行スイッチ21(
図2を参照)と、走行規制解除スイッチ22(
図2を参照)とが設けられている。
【0022】
この軌道走行スイッチ21は、軌道走行を行う際に、運転キャビン2a内に配設されたアクセルペダル(図示せず)の踏み込み操作によって鉄輪走行モータ14を駆動するためのものである。なお、アクセルペダルの踏み込み量は、アクセル開度センサ23(
図2を参照)によって検出される。この軌道走行スイッチ21は、中立位置を基準に前後いずれかの位置に傾動させておくことが可能なトグルスイッチから構成されており、前進走行可能位置(前方傾倒位置)と後進走行可能位置(後方傾倒位置)と走行不能位置(中立位置)とのいずれかに選択可能である。軌道走行スイッチ21が前進走行可能位置に選択され
ると、アクセルペダルの踏み込み量に応じたアクセル開度で鉄輪走行モータ14が前進方向に回転駆動し、軌道走行スイッチ21が後進走行可能位置に選択されると、アクセルペダルの踏み込み量に応じたアクセル開度で鉄輪走行モータ14が後進方向に回転駆動する。一方、軌道走行スイッチ21が走行不能位置に選択されると、アクセルペダルが踏み込まれても、鉄輪走行モータ14は駆動しない。
【0023】
走行規制解除スイッチ22は、後述の安全装置(車輪荷重検出器81~84)等の故障により、軌陸作業車1が正常な状態であるにも関わらず軌道走行が規制された場合に、その規制を解除して軌道走行を可能とするためのモーメンタリ型のスイッチである。
【0024】
車体2の下部中央には、軌陸作業車1を軌道上に載せ替えるため(鉄輪12を下方に張り出したり上方に格納したりするため)の転車台15が設けられている。転車台15は、転車台シリンダ16(
図2を参照)の伸縮駆動により、上方に移動して車体2に格納される格納位置(転車台格納位置)と、下方に移動して地面に接地される張出位置(転車台張出位置)との間で昇降作動する。また、転車台15は、作業者の手動(作業者の人力)により、車体2を転車台15に対して水平旋回することができるようになっている。なお、作業者の手動(作業者の人力)に代えて、車体旋回モータ(油圧モータ)により、車体2を転車台15に対して水平旋回することができるように構成してもよい。
【0025】
また、荷台5の近傍には、鉄輪転車台操作装置40(
図2を参照)が配設されており、この鉄輪転車台操作装置40が操作されることに応じて、鉄輪12の揺動作動(鉄輪揺動シリンダ13の伸縮駆動)、転車台15の昇降作動(転車台シリンダ16の伸縮駆動)などの各作動操作が行われるように構成されている。
【0026】
車体2の前後左右の四箇所には、軌陸作業車1を持ち上げ支持するためのジャッキ17が配設されている。各ジャッキ17は、その内部に設けられたジャッキシリンダ18(
図2を参照)を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、それにより車体2全体を安定させた状態とする。なお、車体2上には、ジャッキ操作装置41が配設されており、このジャッキ操作装置41が操作されることに応じて、各ジャッキ17の伸縮作動(ジャッキシリンダ18の伸縮駆動)が行われるように構成されている。
【0027】
車体2上において運転キャブ2aと荷台5との間には、クレーン装置(ブーム装置)30が搭載されている。クレーン装置30は、車体2上に旋回自在に設けられた旋回ポスト31と、旋回ポスト31の上端部に上下方向に揺動自在(起伏自在)に枢結されたブーム32と、ブーム32の軸方向の先端部に設けられたフック33とを備えて構成される。旋回ポスト31は、車体2に設けられた旋回モータ35(
図2を参照)により駆動されて上下軸回りに水平旋回自在に構成されている。
【0028】
ブーム32は、旋回ポスト31側から順に、基端ブーム32a、中間ブーム32b及び先端ブーム32cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ36の伸縮駆動により、ブーム32を軸方向(長手方向)に伸縮動させることができる。基端ブーム32aと旋回ポスト31との間には起伏シリンダ37が跨設されており、この起伏シリンダ37を伸縮駆動させることにより、ブーム32全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。フック33は、旋回ポスト31に設けられたウインチから繰り出されるワイヤの先端に取り付けられている。なお、先端ブーム32cの先端には、ワイヤを掛け回すためのシーブ(滑車)が取り付けられている。
【0029】
旋回ポスト31の近傍には、クレーン操作装置42が配設されており、このクレーン操作装置42が操作されることに応じて、旋回ポスト31およびブーム32の旋回作動(旋回モータ35の回転駆動)、ブーム32の伸縮作動(伸縮シリンダ36の伸縮駆動)、ブ
ーム32の起伏作動(起伏シリンダ37の伸縮駆動)などの各作動操作が行われるように構成されている。
【0030】
車体2に設けられた軌道走行装置10、転車台15、ジャッキ17、クレーン装置30などの作動機構は、
図2に示すように、各操作装置20,40,41,42からの操作信号を受けて、鉄輪揺動シリンダ13、鉄輪走行モータ14、転車台シリンダ16、ジャッキシリンダ18、旋回モータ35、伸縮シリンダ36、起伏シリンダ37(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも呼称する)を制御するコントローラ60と、この油圧アクチュエータを駆動するための作動油を供給する油圧ユニット50とを備えて構成される。
【0031】
各操作装置20,40,41,42の操作により出力された操作信号は、コントローラ60に入力される。コントローラ60の作動制御部61は、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット50(制御バルブ52)に出力する。
【0032】
油圧ユニット50は、作動油を吐出する油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ52とを有して構成される。油圧ポンプ51は、車両のエンジンからPTO機構(図示せず)を介して取り出した動力により駆動される。制御バルブ52は、鉄輪揺動シリンダ13に対応する電磁比例制御バルブV1、鉄輪走行モータ14に対応する電磁比例制御バルブV2、転車台シリンダ16に対応する電磁比例制御バルブV3、ジャッキシリンダ18に対応する電磁比例制御バルブV4、旋回モータ35に対応する電磁比例制御バルブV5、伸縮シリンダ36に対応する電磁比例制御バルブV6、起伏シリンダ37に対応する電磁比例制御バルブV7を有している。この制御バルブ52は、コントローラ60の作動制御部61からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V7のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの作動方向及び作動速度を制御する(軌道走行装置10、転車台15、ジャッキ17及びクレーン装置30の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0033】
このように構成された軌陸作業車1は、それぞれ左右一対の前鉄輪12fおよび後鉄輪12rを車体2の下部に格納してタイヤ車輪3により道路上を走行可能とする道路走行姿勢と、それぞれ左右一対の前鉄輪12fおよび後鉄輪12rを車体2から下方に張り出して各鉄輪12f,12rにより軌道(レール)上を走行可能とする軌道走行姿勢とに切換設定可能に構成されている。この車両姿勢の切り替え、すなわち、道路走行姿勢から軌道走行姿勢への切替えもしくは逆の切替えを行うときに転車台15が用いられる。
【0034】
車両姿勢を道路走行姿勢から軌道走行姿勢へ切り換えるときは、まず、軌陸作業車1を道路走行させて作業現場最寄りの踏切まで移動して、軌道(レール)を跨ぐようにして停車させる。続いて、鉄輪転車台操作装置40を操作して、転車台シリンダ16を作動させて転車台15を下方へ張り出し、車体2を転車台15により持ち上げ支持する。続いて、作業者の手動(作業者の人力)により、車体2を転車台15に対して約90度水平旋回させて、車体2の前後方向を軌道(レール)の延びる方向と一致させる。
【0035】
続いて、鉄輪転車台操作装置40により、鉄輪揺動シリンダ13の駆動により前鉄輪12fおよび後鉄輪12rを下方に張り出すとともに、転車台シリンダ16の駆動により転車台15を上方に格納しながら、4つの鉄輪12(前鉄輪12fおよび後鉄輪12r)を軌道上に接地させる。それにより、軌陸作業車1は、道路上から軌道上に載せ替え移動された状態、すなわち、軌道上に載線された状態(軌道走行姿勢)となる。なお、本実施形態では、軌陸作業車1の軌道上への載線時に、各鉄輪12に作用する車輪荷重に基づき、軌陸作業車1が正しく載線されたか否かを判定する載線判定処理(詳細後述)が行われる。
【0036】
また、このように軌陸作業車1が軌道上に載線された後、作業(例えば保守点検作業)に必要な機材や工具等を軌陸作業車1の荷台5上に積込む作業が行われる。本実施形態では、この軌陸作業車1への機材・工具等の積込み時に、各鉄輪12に作用する車輪荷重に基づき、軌陸作業車1が過積載であるか否かを判定する過積載判定処理(詳細後述)が行われる。そして、この軌陸作業車1への機材や工具等の積込みが完了したら、作業者は運転キャビン2a内から軌道走行操作を行い(軌道走行スイッチ21により走行可能位置を選択した状態でアクセルペダルを踏み込み)、左右の前鉄輪12fを駆動して4つの鉄輪12を同方向に回転させて軌道上を走行する。
【0037】
次に、本実施形態の軌陸作業車1に設けられた安全装置について説明する。本実施形態の安全装置は、鉄輪張出検出器71と、転車台格納検出器72と、車輪荷重検出装置80と、警報装置85と、コントローラ60とを主体に構成される。
【0038】
鉄輪張出検出器71は、各鉄輪12が張出位置(鉄輪張出位置)にあるか否かを検出する。鉄輪張出検出器71は、各鉄輪12が張出位置にあることを検出した場合にはオン状態となり、コントローラ60に向けてオン信号を出力する。一方、鉄輪張出検出器71は、各鉄輪12が張出位置にあることを検出していない場合にはオフ状態となり、コントローラ60に向けてオフ信号を出力する。なお、この鉄輪張出検出器71は、各鉄輪12が張出位置にあるのか格納位置にあるのかを検出するものでもよい。
【0039】
転車台格納検出器72は、転車台15が格納位置(転車台格納位置)にあるか否かを検出する。転車台格納検出器72は、転車台15が格納位置にあることを検出した場合にはオン状態となり、コントローラ60に向けてオン信号を出力する。一方、転車台格納検出器72は、転車台15が格納位置にあることを検出していない場合にはオフ状態となり、コントローラ60に向けてオフ信号を出力する。なお、この転車台格納検出器72は、転車台15が格納位置にあるのか張出位置にあるのかを検出するものでもよい。
【0040】
車輪荷重検出装置80は、左側の前鉄輪12fに作用する車輪荷重(接地反力)を検出する左前輪荷重検出器81と、右側の前鉄輪12fに作用する車輪荷重(接地反力)を検出する右前輪荷重検出器82と、左側の後鉄輪12rに作用する車輪荷重(接地反力)を検出する左後輪荷重検出器83と、右側の後鉄輪12rに作用する車輪荷重(接地反力)を検出する右後輪荷重検出器84とを備えている。この車輪荷重とは、鉄輪12と軌道との間に作用する力のうち、軌道方向(レール方向)と直交する面内にある鉛直方向に作用する力である。すなわち、軌陸作業車1の鉄輪12が軌道上に載線(接地)された場合、軌陸作業車1の自重が鉄輪12から軌道に対して鉛直方向に作用する一方で、その接地反力が軌道から鉄輪12に対して鉛直方向に作用する。この軌道から鉄輪12に作用する鉛直方向の接地反力(接地荷重)が車輪荷重となる。各車輪荷重検出器81~84は、各鉄輪12が軌道から受ける接地反力を、車体2から各鉄輪12に作用する車輪荷重として検出する。各車輪荷重検出器81~84は、例えば、車体2側部材である鉄輪サポート(図示せず)と鉄輪支持部材11とを連結する揺動軸部に取り付けられるピン型ロードセル等により構成される。各車輪荷重検出器81~84は、鉄輪12に作用する車輪荷重(接地反力)を検出して、その検出した車輪荷重に応じた電圧信号(検出信号)をコントローラ60に出力する。例えば、各車輪荷重検出器81~84は、検出した車輪荷重が大きいほど高いレベルの電圧信号(検出信号)を出力し、検出した車輪荷重が小さいほど低いレベルの電圧信号(検出信号)を出力する。なお、各車輪荷重検出器81~84は、ロードセル以外の他の検出手段であってもよく、例えば鉄輪12に作用する車輪荷重を間接的に検出する圧力検出器や歪ゲージなどであってもよい。
【0041】
警報装置85は、警報ランプや警報ブザー、シグナルランプ、表示モニタ、音声スピー
カ等を備え、コントローラ60からの指令信号に応じて警報を発して、作業者に注意喚起を図るようになっている。なお、この警報装置85は、視覚および聴覚などを通じて作業者に注意を喚起し得るあらゆる手段を含む。
【0042】
コントローラ60は、作動制御部61と、車両姿勢判別部62と、車輪荷重算出部63と、重量算出部64と、車輪荷重判定部65とを有している。
【0043】
作動制御部61は、前述したように、各操作装置20,40,41,42からの操作信号に基づいて、制御バルブ52を電磁駆動して各油圧アクチュエータを作動させることで、軌道走行装置10、転車台15、ジャッキ17、クレーン装置30などの作動を制御する。
【0044】
車両姿勢判別部62は、鉄輪張出検出器71からの検出情報と、転車台格納検出器72の検出情報とに基づき、軌陸作業車1の姿勢(道路走行姿勢、軌道走行姿勢)を判別する。ここで、車両姿勢判別部62は、鉄輪張出検出器71において鉄輪12が格納位置にあることが検出され、且つ、転車台格納検出器72において転車台15が格納位置にあることが検出されている場合に、軌陸作業車1が道路走行姿勢にあると判定する。また、車両姿勢判別部62は、鉄輪張出検出器71において鉄輪12が張出位置にあることが検出され、転車台格納検出器72において転車台15が格納位置にあることが検出されている場合に、軌陸作業車1が軌道走行姿勢にあると判定する。
【0045】
車輪荷重算出部63は、各車輪荷重検出器81~84からの検出情報(検出信号)に基づき、各鉄輪12に作用する車輪荷重(車輪荷重の値)を算出する。すなわち、車輪荷重算出部63は、左前輪荷重検出器81からの検出情報に基づき左側の前鉄輪12fの車輪荷重(車輪荷重の値)を算出し、右前輪荷重検出器82からの検出情報に基づき右側の前鉄輪12fの車輪荷重(車輪荷重の値)を算出し、左後輪荷重検出器83からの検出情報に基づき左側の後鉄輪12rの車輪荷重(車輪荷重の値)を算出し、右後輪荷重検出器84からの検出情報に基づき右側の後鉄輪12fの車輪荷重(車輪荷重の値)を算出する。
【0046】
重量算出部64は、車輪荷重算出部63において算出された各鉄輪12の車輪荷重を合算して、この車輪荷重の総和を軌陸作業車1の実重量(車両の実重量)として算出する。すなわち、重量算出部64は、各鉄輪12にかかる車輪荷重の総和と車両の実重量とが等価の関係となることを利用して、車輪荷重算出部63において算出された各鉄輪12の車輪荷重の総和を車両の実重量として算出する。
【0047】
車輪荷重判定部65は、車輪荷重算出部63において算出された軌道載線時の車輪荷重に基づき、車両が正しく載線されているか否か判定する。また、車輪荷重判定部65は、車輪荷重算出部63において算出された積載物の積込み時の車輪荷重に基づき、車両が過積載状態であるか否かを判定する。そして、輪荷重判定部65は、その判定結果に応じて、所定の警報作動(軌道走行を規制する作動や、警報装置85による警報報知の作動)を実行する。
【0048】
かかる構成の安全装置は、軌陸作業車1の載線不良の有無を判定する載線判定処理と、軌陸作業車1の過積載の有無を判定する過積載判定処理とを実行する。以下において、「車両総重量」とは、道路運送車両の保安基準に規定される車両総重量であり、詳しくは、車両重量と、最大積載重量と、乗車定員(最大乗車定員)の重量とを合計した重量である。「車両重量」とは、積載物を積載していない状態(空車状態)の車両の重量である。
【0049】
<載線判定処理>
次に、本実施形態の安全装置において実行される載線判定処理の手順について説明する
。
図3は、本実施形態の載線判定処理のフローチャートである。
【0050】
まず、軌陸作業車1を軌道上に載せる載線作業が行われる。この載線作業では、前述したように、転車台15を下方に張り出して地面に接地させるとともに、鉄輪12を下方に張り出した状態で、転車台15に持ち上げられた車体2を水平旋回させて、前後左右の鉄輪12と2本の軌道(レール)との位置合わせを行う。鉄輪12の載線位置が決まると、転車台15を徐々に格納作動させて、下方に張り出した鉄輪12を徐々に軌道上に載線し、車両の姿勢を軌道走行姿勢にする。
【0051】
この載線作業において、車両姿勢判別部62は、車両の姿勢が軌道走行姿勢に切り換えられたか否かを判定する(ステップS101)。すなわち、車両姿勢判別部62は、鉄輪張出検出器71から出力される信号がオン信号である状態で、転車台格納検出器72から出力される信号がオフ信号からオン信号に切り換ったか否かを判定する。
【0052】
続いて、車輪荷重算出部63は、車両姿勢判別部62において車両の姿勢が軌道走行姿勢に切り換えられたことが判定された場合(ステップS101:YES)、各輪荷重検出器81~84からの検出情報に基づき、各鉄輪12に作用する車輪荷重を算出する(ステップS102)。
【0053】
続いて、車輪荷重判定部65は、車輪荷重算出部63において算出された各鉄輪12の車輪荷重と予め定められた規定値(規定荷重値)とをそれぞれ比較して、全ての鉄輪12の車輪荷重が規定値以上であるか否かを判定する(ステップS103)。この規定値とは、各鉄輪12が軌道上に正常に載線しているか否かを判定するための閾値である。その一例としては、空車状態の軌陸作業車1が前後傾斜なし且つカント50mm以下の軌道上に正しく載線された場合に、前鉄輪12fに作用する車輪荷重が3250kgf、後鉄輪12rに作用する車輪荷重が2100kgfとした場合、規定値(規定荷重値)として1800kgfが設定される。
【0054】
車輪荷重判定部65は、全ての鉄輪12の車輪荷重が規定値以上であると判定した場合(ステップS103:YES)、軌陸作業車1が軌道上に正常に載線されたと判断する(ステップS104)。そして、車輪荷重判定部65は、軌陸作業車1の軌道走行(鉄輪走行モータ14の駆動)を許可する(ステップS105)。その後、コントローラ60は載線判定処理を終了する。
【0055】
一方、車輪荷重判定部65は、4つの鉄輪12のうちのいずれか1つでも鉄輪12の車輪荷重が規定値未満であると判定した場合(ステップS103:NO)、軌陸作業車1が軌道上に正常に載線されていないと判断する(ステップS106)。そして、車輪荷重判定部65は、軌陸作業車1の軌道走行(鉄輪走行モータ14の駆動)を規制する(ステップS107)。なお、このステップS107に移行した場合には、最初の処理に戻り、これまでの処理を繰り返す(処理をやり直す)。
【0056】
<過積載判定処理>
次に、本実施形態の安全装置において実行される過積載判定処理の手順について説明する。
図4は、本実施形態の過積載判定処理のフローチャートである。なお、この過積載判定処理は、前述の載線判定処理が正常に完了した後(軌陸作業車1が軌道上に正しく載線された後)に行われる。
【0057】
まず、作業に必要な機材や工具などを軌陸作業車1の荷台に積み込む積載作業が行われる。この積載作業は、軌陸作業車1が軌道上に正しく載線された状態において、軌道走行を開始する前に行われる。なお、軌陸作業車1が軌道上で走行停止状態(停車状態)であ
ることが一定時間以上継続して検出された場合に、積載作業が行われていることを判定して、この過積載判定処理を実行するように構成してもよい。軌陸作業車1が軌道上で走行停止状態であることは、(1)車両が軌道走行姿勢であり、(2)転車台が格納状態であり、(3)鉄輪が張出状態であり、(4)鉄輪走行モータ14が駆動停止状態であることが全て検出された場合などに検出される。
【0058】
この積載作業において、車輪荷重算出部63は、各車輪荷重検出器81~84からの検出情報に基づき、各鉄輪12に作用する車輪荷重を算出する(ステップS201)。続いて、重量算出部64は、車輪荷重算出部63において算出された全ての鉄輪12の車輪荷重を合算して、この4つの車輪荷重12の総和を車両の実重量として算出する(ステップS202)。
【0059】
続いて、車輪荷重判定部65は、重量算出部64において算出された車両の実重量と、予め定められた第1判定値とを比較して、車両の実重量が第1判定値を超過しているか否かを判定する(ステップS203)。この第1判定値は、軌陸作業車1の車両総重量よりも所定重量(例えば250kgf)だけ小さい値(閾値)である。
【0060】
車輪荷重判定部65は、車両の実重量が第1判定値を超過していないと判定した場合(ステップS203:NO)、車両が正常積載状態であると判定する(S204)。そして、車輪荷重判定部65は、軌陸作業車1の軌道走行(鉄輪走行モータ14の駆動)を許可する(ステップS205)。その後、コントローラ60は過積載判定処理を終了する。
【0061】
一方、車輪荷重判定部65は、車両の実重量が第1判定値を超過していると判定した場合(ステップS203:YES)、車両の実重量と予め定められた第2判定値とを比較して、車両の実重量が第2判定値を超過しているか否かを判定する(ステップS206)。この第2判定値は、軌陸作業車1の車両総重量に相当する値(閾値)である。
【0062】
車輪荷重判定部65は、車両の実重量が第2判定値を超過していないと判定した場合(ステップS206:NO)、車両が正常載線状態(注意状態)であると判定する(ステップS207)。続いて、車輪荷重判定部65は、車両が過積載に近い状態であることを注意喚起するため警報装置85を作動させる(ステップS208)。そして、車輪荷重判定部65は、軌陸作業車1の軌道走行(鉄輪走行モータ14の駆動)を許可する(ステップS205)。その後、コントローラ60は過積載判定処理を終了する。
【0063】
一方、車輪荷重判定部65は、車両の実重量が第2判定値を超過していると判定した場合(ステップS206:YES)、車両が過積載状態であると判断する(ステップS209)。そして、車輪荷重判定部65は、警報装置85を作動させるとともに(ステップS210)、軌陸作業車1の軌道走行(鉄輪走行モータ14の駆動)を規制する(ステップS211)。なお、このステップS211に移行した場合には、最初の処理に戻り、これまでの処理を繰り返す(処理をやり直す)。
【0064】
以上、本実施形態の安全装置によれば、車両の軌道走行姿勢において各鉄輪12が軌道から受ける接地反力に基づき各鉄輪12に作用する車輪荷重を検出して、この車輪荷重が所定の閾値を逸脱した場合に警報作動を実行することで、車両の状態(軌道載線状態、過積載状態、偏積載状態、重心移動状態など)を的確に管理して、載線作業時や積載作業時、軌道走行時の事故リスクを低減させ、軌陸作業車1の安全性を向上させることが可能となる。
【0065】
また、本実施形態の安全装置によれば、軌陸作業車1の載線作業時において、車両が軌道走行姿勢に切り換えられたときの各鉄輪12の車輪荷重を検出して、いずれかの鉄輪1
2の車輪荷重が規定値未満である場合に軌陸作業車1が軌道上に正しく載線されていないこと(載線不良が発生していること)を判定して警報作動を実行するため、軌陸作業車1の脱線を未然に防止して、軌道走行時の安全性を向上させることが可能となる。
【0066】
さらに、本実施形態の安全装置によれば、軌陸作業車1の荷台5への積載作業時において、複数の鉄輪12の車輪荷重の総和が第2判定値を超過した場合に車両の過積載状態を判定して警報作動を実行するため、この過積載により鉄輪12が破損する事態や軌道走行が不安定となる事態を未然に防止することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態の安全装置によれば、車両の積載状態を判定するための二段階の閾値(第1判定値<第2判定値)を設定して、第1判定値を超過した場合には警報を発して車両が過積載状態に近づいていることを注意喚起し、第2判定値を超過した場合には過積載状態に達したことを判定して軌道走行を規制することができるため、この過積載による事故リスクを一層低減して、軌陸作業車1の安全性および信頼性を向上させることが可能となる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0069】
上記実施形態において、軌道走行中の各鉄輪12に作用する車輪荷重を検出して、この車輪荷重に基づき軌陸作業車1の重心位置を制御するように構成してもよい。例えば、
図5に示すように、軌道走行中の軌陸作業車1がカント(傾斜)に進入する際に、左右の鉄輪12のうち一方の鉄輪12(山側の鉄輪12)の車輪荷重が低下したことを検出した場合、車両の左右方向の重心位置が他方の鉄輪12(谷側の鉄輪12)側に移動したことを判定して、クレーン装置30を格納位置(左右方向の中心位置)にある状態から一方の鉄輪12(山側の鉄輪12)側に旋回させることで、車両の重心位置を一方の鉄輪12(山側の鉄輪12)側に向けて補正するようにしてもよい。このような構成によれば、軌道からの鉄輪12の浮き上がり(駆動力および制動力の低下)を防止して、常に安定した軌道走行を実現することができる。なお、この構成においては、山側の前鉄輪12fおよび後鉄輪12rの車輪荷重の合計値が一定値以上低下したときに車両の重心位置を補正してもよいし、山側の前鉄輪12fおよび後鉄輪12rのうちの少なくとも一方の鉄輪12の車輪荷重が一定値以上低下したときに車両の重心位置を補正してもよい。また、山側の鉄輪12の車輪荷重の低下量に応じて、クレーン装置30(旋回ポスト31およびブーム32)の旋回角を決めてもよい(例えば、車輪荷重の低下量が大きいほどクレーン装置30の旋回角を大きくしてもよい)。
【0070】
また、上記実施形態では、各鉄輪12の車輪荷重に基づき車両の過積載を判定していたが、各鉄輪12の車輪荷重に基づき車両の偏積載を判定するように構成してもよい。例えば、前後左右の鉄輪12のそれぞれの車輪荷重が所定の中央値(例えば所定の積荷を荷台5の中心位置に積載した場合の車輪荷重を中央値とする)に対してどれだけ差があるかを検出することで、積荷が荷台5の前後左右のいずれの方向に偏積載されているかを判定することができる。そして、この偏積載の判定を軌陸作業車1の退線作業の前に行うことで、事前に積荷の偏積載を確認して当該積載位置を修正(調整)することができるため、その退線作業において転車バランス(転車時の車両バランス)が崩れるのを防止することが可能となる。
【0071】
上記実施形態では、前後の鉄輪12f,12rのうち前鉄輪12fが駆動輪として構成されているが、この構成に限定されるものではなく、後鉄輪12rが駆動輪として構成されても、前鉄輪12fおよび後鉄輪12rの両方が駆動輪として構成されてもよい。また、上記実施形態では、前鉄輪12fを油圧モータにより回転駆動する構成であったが、前
鉄輪12fを電気モータにより回転駆動する構成としてもよい。
【0072】
上記実施形態では、本発明に係る軌陸作業車として、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の軌陸作業車を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、例えば電気駆動型(バッテリ駆動型)の軌陸作業車や、その両者を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の軌陸作業車であってもよい。また、この軌陸作業車としては、ブーム32の先端に作業者搭乗用の作業台を設けた構成を適用してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 軌陸作業車
2 車体
3 タイヤ車輪(道路走行用車輪)
5 荷台
11 鉄輪支持部材
12 鉄輪(軌道走行用車輪)
15 転車台
30 クレーン装置
60 コントローラ
61 作動制御部
62 車両姿勢判別部
63 車輪荷重算出部(車輪荷重検出部)
64 重量算出部
65 車輪荷重判定部(規制部)
71 鉄輪張出検出器
72 転車台格納検出器
80 車輪荷重検出装置(車輪荷重検出部)
81 左前輪荷重検出器(車輪荷重検出部)
82 右前輪荷重検出器(車輪荷重検出部)
83 左後輪荷重検出器(車輪荷重検出部)
84 右後輪荷重検出器(車輪荷重検出器)
85 警報装置