(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082257
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】ワーク押圧装置、工作機械及びワーク押圧方法
(51)【国際特許分類】
B23B 15/00 20060101AFI20230607BHJP
B23B 23/00 20060101ALI20230607BHJP
B23B 29/24 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B23B15/00 Z
B23B23/00 A
B23B29/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195891
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野 裕也
(72)【発明者】
【氏名】福永 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
(72)【発明者】
【氏名】二村 洋輔
【テーマコード(参考)】
3C045
3C046
【Fターム(参考)】
3C045FB07
3C045FE01
3C045FE16
3C046NN27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ワークを適切に押圧することができるワーク押圧装置、工作機械及びワーク押圧方法を提供すること。
【解決手段】ワーク押圧装置40は、ベッド11に対して所定軸線方向に相対移動可能に設けられ、所定軸線方向に沿って軸体に仮装着されたワークを軸体に向けて押圧するプッシャー41と、ベッド11に対して所定軸線方向に相対移動可能に設けられ、所定軸線方向に沿ってプッシャー41が押圧したワークを軸体に向けて押圧する補助押圧装置42と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに対して所定軸線方向に相対移動可能に設けられ、前記所定軸線方向に沿って軸体に仮装着されたワークを前記軸体に向けて押圧するプッシャーと、
前記ベッドに対して前記所定軸線方向に相対移動可能に設けられ、前記所定軸線方向に沿って前記プッシャーが押圧した前記ワークを前記軸体に向けて押圧する補助押圧装置と、を備えた、ワーク押圧装置。
【請求項2】
前記補助押圧装置は、前記ワークを押圧している前記プッシャーを前記所定軸線方向に沿って押圧することにより、前記ワークを前記軸体に向けて押圧する、請求項1に記載のワーク押圧装置。
【請求項3】
前記プッシャー及び前記補助押圧装置は、互いに連結した状態で、前記軸体に向けて前記ワークを押圧する、請求項1又は2に記載のワーク押圧装置。
【請求項4】
前記プッシャーは第一押圧力で前記ワークを押圧し、
前記補助押圧装置は前記第一押圧力よりも大きな第二押圧力により、前記ワークを前記軸体に向けて押圧する、請求項1-3の何れか一項に記載のワーク押圧装置。
【請求項5】
前記プッシャーは、前記補助押圧装置によって押圧される被押圧部に前記補助押圧装置の軸状の押圧部を収容する収容凹部を有する、請求項2-4の何れか一項に記載のワーク押圧装置。
【請求項6】
前記収容凹部は、前記プッシャーの軸線と同軸に配置される、請求項5に記載のワーク押圧装置。
【請求項7】
前記プッシャーは、前記ワークに形成された凸部を収容して前記ワークを前記軸体の軸心に案内する案内部を有する、請求項1-6の何れか一項に記載のワーク押圧装置。
【請求項8】
請求項1-7の何れか一項に記載の前記ワーク押圧装置を備え、
前記ワーク押圧装置により前記軸体である主軸の所定位置に位置決めされた前記ワークに機械加工を施す工作機械。
【請求項9】
前記プッシャーが、前記ワークに前記機械加工を施す複数の工具のうちの1つの前記工具を旋回割出しによって選択可能な工具台に設けられ、
前記補助押圧装置が、前記主軸に仮装着された前記ワークの心出しを行う心押台である、請求項8に記載の工作機械。
【請求項10】
前記心押台は、前記ワークを押圧している前記プッシャーを前記所定軸線方向に沿って押圧することにより、前記ワークを前記主軸に向けて押圧する、請求項9に記載の工作機械。
【請求項11】
前記プッシャー及び前記心押台は、互いに連結した状態で、前記主軸に向けて前記ワークを押圧する、請求項9又は10に記載の工作機械。
【請求項12】
前記心押台が前記プッシャーと共に前記ワークを前記主軸に向けて押圧して、前記ワークが前記主軸の前記所定位置に位置決めされた後、前記ワークを前記主軸に対して固定して装着する、請求項9-11の何れか一項に記載の工作機械。
【請求項13】
請求項1-7の何れか一項に記載の前記ワーク押圧装置に適用され、
前記プッシャーが、前記所定軸線方向に沿って、前記軸体に仮装着された前記ワークを前記軸体に向けて押圧する第一工程と、
前記補助押圧装置が、前記所定軸線方向に沿って、前記プッシャーが押圧した前記ワークを前記軸体に向けて押圧する第二工程と、を有する、ワーク押圧方法。
【請求項14】
前記第二工程において、
前記補助押圧装置は、前記第一工程にて前記ワークを押圧している前記プッシャーを前記所定軸線方向に沿って押圧することにより、前記ワークを前記軸体に向けて押圧する、請求項13に記載のワーク押圧方法。
【請求項15】
請求項1-7の何れか一項に記載の前記ワーク押圧装置に適用され、
前記プッシャーに対して、前記補助押圧装置を連結する第一工程と、
前記プッシャーと前記補助押圧装置とが連結した状態で、前記軸体に仮装着された前記ワークを前記軸体に向けて押圧する第二工程と、を有する、ワーク押圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、制御装置及び工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に開示されたNC旋盤におけるセンタ押し具(以下、単に、「押し具」と称呼する。)が知られている。この従来の押し具は、タレット装置の工具台に着脱可能とされてワークをセンタ位置に修正するプッシャーであり、テールストック(心押台)を備えたNC旋盤に設けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の押し具では、タレット装置の工具台にプッシャーが装着される。このため、プッシャーがワークを押圧して押し込む際には、タレット装置に過大な負荷を与える可能性がある。従って、従来の押し具では、タレット装置への負荷を軽減する必要があり、その結果、プッシャーによるワークの押し込みが不足する場合がある。
【0005】
本明細書は、ワークを適切に押圧することができるワーク押圧装置、工作機械及びワーク押圧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、ベッドに対して所定軸線方向に相対移動可能に設けられ、所定軸線方向に沿って軸体に仮装着されたワークを軸体に向けて押圧するプッシャーと、ベッドに対して所定軸線方向に相対移動可能に設けられ、所定軸線方向に沿ってプッシャーが押圧したワークを軸体に向けて押圧する補助押圧装置と、を備えたワーク押圧装置を開示する。
【0007】
これによれば、プッシャーが軸体に仮装着されたワークを軸体に向けて押圧し、更に、補助押圧装置がプッシャーによって押圧されたワークを軸体に向けて押圧することができる。従って、ワーク押圧装置は、補助押圧装置がプッシャーによるワークの押し込み不足を解消してワークを軸体に向けて押圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】工作機械の全体を示す概略的な斜視図である。
【
図3】ワーク押圧装置の構成を説明するための一部断面図である。
【
図4】
図3のプッシャーがワークを押圧する状態を説明するための一部断面図である。
【
図5】
図3の補助押圧装置がワークを押圧する状態を説明するための一部断面図である。
【
図6】第一変形例に係り、ワーク押圧装置がワークを押圧する状態を説明するための一部断面図である。
【
図7】第二変形例に係り、ワーク押圧装置がワークを押圧する状態を説明するための一部断面図である。
【
図8】第三変形例に係り、ワーク押圧装置の補助押圧装置がワークを押圧する状態を説明するための一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ワーク押圧装置、工作機械及びワーク押圧方法について、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、NC旋盤である工作機械がワーク押圧装置によって押圧されて位置決めされたワークに対して切削加工を施す場合を例示して説明する。
【0010】
1.工作機械10
工作機械10は、
図1及び
図2に示すように、ベッド11上に設けられており、主軸台20、加工ヘッド30及びワーク押圧装置40を備えている。そして、工作機械10は、主軸台20、加工ヘッド30及びワーク押圧装置40の各々の作動を制御する制御装置12を備えている。ここで、制御装置12は、コンピュータ装置を主要構成部品とするものであり、図示を省略する各種プログラムを実行することにより、主軸台20、加工ヘッド30及びワーク押圧装置40の各々の作動を制御する
【0011】
尚、本実施形態において、ベッド11は、案内面111がX軸線方向(機体前後方向)にて機体前側に傾斜するスラントベッド構造を採用する。しかしながら、ベッド11の構造に関しては、傾斜した案内面111を有していないフラットベッド構造を採用可能であることは言うまでもない。
【0012】
主軸台20は、所定軸線方向であるZ軸線方向(機体幅方向)に沿った軸心Oを有する軸体である主軸21を回転可能に支持する。主軸21は、例えば、スピンドルモータ等によって回転駆動される。主軸台20は、主軸21の先端部においてワークWを把持する主軸チャック22が設けられている。又、本実施形態においては、
図2に示すように、シャフト形状のワークWを保持するため、主軸21に挿通孔211が設けられている。そして、主軸21の内部には、押出しシャフトをアクチュエータによって軸心Oに沿って進退させる押出し装置23が組み込まれている。尚、ワークWの形状に応じて、挿通孔211及び押出し装置23を省略することが可能である。
【0013】
加工ヘッド30は、
図1及び
図2に示すように、ベッド11の案内面111上にてZ軸線方向に延設されたガイド31と、ガイド31に摺動可能に組み付けられてZ軸線方向にて案内されるZ軸スライド32とを備えている。又、加工ヘッド30は、Z軸スライド32においてX軸線方向に延設された一対のガイドレール33と、ガイドレール33によりX軸線方向にて案内されるX軸スライド34とを備える。尚、Z軸スライド32及びX軸スライド34は、各々、図示省略のサーボモータ及びボールねじ機構等により、ガイド31及びガイドレール33に沿って往復移動するようになっている。
【0014】
又、加工ヘッド30は、
図1に示すように、X軸スライド34上に支持されたタレット装置35を備えている。タレット装置35は、多角形の工具台36がZ軸線に平行な回転軸を中心として旋回可能である。タレット装置35は、工具台36の各辺に取り付けられた各種工具37及び後述するワーク押圧装置40を形成するプッシャー41のうち、ワークWの加工に応じた所定の工具37又はプッシャー41を旋回割出しにより選択する。
【0015】
ここで、加工ヘッド30は、X軸スライド34に支持されている。又、X軸スライド34は、Z軸スライド32に支持されている。これにより、加工ヘッド30は、Z軸スライド32及びX軸スライド34の移動により、案内面111に沿った方向、即ち、所定軸線方向であるZ軸方向(機体幅方向)と、X軸線方向(機体前後方向)及びY軸線方向(機体上下方向)とに移動することができる。そして、加工ヘッド30は、移動したZ軸スライド32及びX軸スライド34により、工具37がワークWを加工する加工位置、又は、後述するワーク押圧装置40がワークWを押圧する押圧位置に位置決めされる。
【0016】
2.ワーク押圧装置40
ワーク押圧装置40は、
図1及び
図2に示すように、加工ヘッド30においてタレット装置35の工具台36に取り付けられたプッシャー41と、ベッド11に対して相対移動可能に設けられた補助押圧装置としての心押台42とを備える。ここで、心押台42は工作機械10を形成する一装置であり、本実施形態においては心押台42を補助押圧装置として利用する。
【0017】
2-1.プッシャー41
プッシャー41は、
図3に示すように、ベースプレート411、案内部412、被押圧部としてのシャフト413、スプリング414、及び、プレート部材415を有する。ベースプレート411は、プッシャー41をタレット装置35の工具台36に取り付けるための部材である。
【0018】
案内部412は、ワークWに設けられた凸部W1を収容して案内すると共にワークWを押圧するものである。このため、案内部412は、内径がワークWの凸部W1から離間する程に徐々に小さくなる円錐状の凹部を有する。これにより、案内部412は、ワークWの凸部W1を収容することにより、ワークWを軸体である主軸21の軸心Oに向けて案内する。
【0019】
ここで、ワークWを主軸台20に装着する際、
図2に示すように、加工ヘッド30は、ワーク押圧装置40によるワークWの押圧位置として、プッシャー41の軸線が主軸台20の主軸21の軸心Oと同軸となる位置に位置決めされる。これにより、案内部412は、ワークW(凸部W1)を主軸台20の主軸21の軸心Oに案内する。
【0020】
シャフト413は、
図3に示すように、先端側に案内部412を同軸に固定する固定部413aを有すると共に、基端側に後述する心押台42の押圧部421を収容する収容凹部416を有する。収容凹部416は、シャフト413と同軸、換言すれば、案内部412を含むプッシャー41の軸線と同軸になるように形成されている。尚、本実施形態においては、
図3に示すように、プッシャー41が押圧位置に配置された状態、即ち、プッシャー41が主軸21の軸心Oと同軸に配置された状態で、収容凹部416が軸心Oと同軸になる。又、シャフト413は、ほぼ中央部分に大径のフランジ部413bを有し、フランジ部413bよりも先端側の外周面が滑り軸受417によって摺動可能に支持され、フランジ部413bよりも基端側にスプリング414が配置される。
【0021】
スプリング414は、シャフト413のフランジ部413bとベースプレート411に固定されるプレート部材415との間に収容され、カラー418によって径方向が支持されている。スプリング414は、フランジ部413bとプレート部材415との間において圧縮状態とされている。これにより、シャフト413は、スプリング414による第一押圧力F1(例えば、
図4を参照)により、常に、フランジ部413bがベースプレート411の内部に形成された段部に当接する方向に付勢されている。従って、シャフト413は、ワークWの凸部W1を収容した案内部412がワークWを押圧する方向、即ち、所定軸線方向であるZ軸線方向に一致する軸心Oに沿った方向に付勢されている。
【0022】
更に、プッシャー41は、ベースプレート411と案内部412との間の距離に応じた信号を出力する近接スイッチ419を備えている。近接スイッチ419は、例えば、ベースプレート411と案内部412との間の距離が予め設定された閾値未満になるとオン信号を制御装置12に出力し、閾値以上の場合にはオフ信号を制御装置12に出力する。ここで、閾値は、例えば、タレット装置35の工具台36に作用する負荷の大きさに基づいて決定される値である。尚、ベースプレート411と案内部412との位置関係を検出可能であれば、近接スイッチ419以外の検出器を用いることが可能であることは言うまでもない。
【0023】
2-2.心押台42
心押台42は、主軸21に仮装着されたワークWの心出しを行うものである。心押台42は、旋盤に用いられる場合には、所謂、テールストックとも呼ばれ、Z軸線方向において主軸台20の主軸21の軸心Oと同軸に配置される。心押台42は、
図2及び
図3に示すように、軸状の押圧部421と、押圧部421を支持する支持部422とを備えている。軸状の押圧部421は、先端が尖頭状に形成されており、
図3にて一点鎖線により示すように、所定軸線方向であるZ軸線方向(軸心Oの方向)にてベッド11に対して相対移動することによってプッシャー41のシャフト413に形成された収容凹部416に収容される。
【0024】
又、心押台42は、
図2に示すように、ベッド11上にてZ軸線方向に延設された一対のガイドレール423と、ガイドレール423に案内されて押圧部421及び支持部422をZ軸線方向に沿って往復移動させる駆動装置424とを備えている。ここで、駆動装置424は、図示省略のサーボモータ及びボールねじ機構等により、押圧部421及び支持部422をガイドレール423に沿って、即ち、主軸台20の主軸21の軸心Oと同軸に往復移動させるようになっている。尚、駆動装置424は、工作機械10の制御装置12によって作動が制御される。
【0025】
そして、駆動装置424は、押圧部421がシャフト413に設けられた収容凹部416に収容された状態でプッシャー41を押圧する場合、例えば、サーボモータの駆動力を用いて、押圧部421を第一押圧力F1よりも大きな第二押圧力F2(例えば、
図5を参照)によって押圧することができる。ところで、心押台42は、主軸台20の主軸21の軸心Oと同軸になるようにベッド11上に設けられ、プッシャー41は、上述したように、押圧位置に配置された場合には主軸台20の主軸21の軸心Oと同軸になる。従って、心押台42の押圧部421がプッシャー41を押圧する場合には、心押台42は、第二押圧力F2により、プッシャー41を介してワークWを主軸台20(主軸21)に向けて、即ち、主軸21の軸心Oの方向に押圧する。
【0026】
3.ワーク押圧装置40の作動
次に、上述したワーク押圧装置40の作動を説明する。工作機械10において、ワークWに対する切削加工が施される場合、タレット装置35の旋回割出しによって所定の工具37が選択され、加工ヘッド30が加工位置に位置決めされる。そして、主軸チャック22に保持されたワークWは、主軸台20の回転駆動によって回転され、ワークWに工具37の刃が当てられることによって外径切削等の機械加工が施される。
【0027】
ところで、工作機械10がワークWに自動加工を施す場合には、例えば、図示を省略するワーク自動搬送装置等が設けられ、ワークストッカからワークWが順番に搬送される。この場合、工作機械10がワークWに施す機械加工の加工精度を維持又は向上させるためには、ワークWは、常に、主軸台20(主軸21)の所定位置に配置された状態で主軸チャック22に適切に保持されて装着される必要がある。
【0028】
従って、工作機械10においては、制御装置12が、先ず、タレット装置35の旋回割出しによって、工具台36に取り付けられたワーク押圧装置40のプッシャー41を選択する。そして、本実施形態においては、ワーク押圧装置40を作動させて、搬送されて軸体である主軸21に仮装着されたワークWを押圧することにより、主軸21(主軸台20)の所定位置にワークWを押し込んで配置する。以下、プッシャー41がワークWを主軸21(主軸台20)に向けて押圧する第一工程と、補助押圧装置としての心押台42がプッシャー41によって押圧されたワークWを押圧する第二工程とについて、具体的に説明する。
【0029】
3-1.第一工程
第一工程においては、制御装置12は、
図2に示すように、Z軸スライド32及びX軸スライド34を駆動させることにより、加工ヘッド30、より詳しくは、タレット装置35の旋回割出しによって選択されたプッシャー41を押圧位置に位置決めする。これにより、プッシャー41は、
図4に示すように、主軸21の軸心Oに対して同軸に配置される。
【0030】
続いて、制御装置12は、Z軸スライド32を主軸台20に向けて前進(相対移動)させることにより、
図4にて太破線矢印で示すように、タレット装置35(加工ヘッド30)と共にプッシャー41をベッド11に対して所定軸線方向であるZ軸線方向に相対移動させる。これにより、プッシャー41の案内部412は、ワークWの凸部W1を収容し、ワークWを軸心Oに向けて案内しながらワークWを主軸21に向けて押圧する。これにより、主軸21に仮装着されたワークWは、軸心Oと同軸となるように、主軸21(より詳しくは、主軸チャック22)に対して相対移動する。
【0031】
3-2.第二工程
ところで、Z軸スライド32の前進に伴ってプッシャー41がワークWを押圧する場合、例えば、ワークWの大きさや形状等に依存して、スプリング414による第一押圧力F1ではワークWを押圧できない状況が生じ得る。即ち、この場合には、プッシャー41の案内部412及びシャフト413が、スプリング414の第一押圧力F1に抗して、ベースプレート411に対してZ軸線方向にて後方に相対移動する。その結果、プッシャー41を支持するタレット装置35(工具台36)においては、ワークWの押圧に伴う負荷が大きくなる。
【0032】
そこで、本実施形態においては、制御装置12は、近接スイッチ419からオン信号を取得する状況、換言すれば、タレット装置35の工具台36に対する負荷が大きくなった状況において、心押台42の駆動装置424を駆動させる。即ち、本実施形態においては、第一工程にてプッシャー41によるワークWの押圧に際してアシストが必要になった状況にて、第二工程にて補助押圧装置としての心押台42を作動させてワークWを押圧する。
【0033】
具体的に、第二工程において、心押台42は、
図5にて太破線矢印で示すように、Z軸線方向にて主軸台20、即ち、ワークWを押圧しているプッシャー41に向けて前進する。これにより、
図5に示すように、押圧部421がシャフト413の収容凹部416に収容される。そして、継続して駆動装置424が駆動することにより、押圧部421が第二押圧力F2によって収容凹部416を介して被押圧部であるシャフト413を押圧する。
【0034】
ここで、本実施形態においては、制御装置12は、近接スイッチ419からオン信号を取得した場合、Z軸スライド32即ち加工ヘッド30のZ軸線方向への前進(移動)を停止させる。これにより、加工ヘッド30を形成するタレット装置35の工具台36に過大な負荷をかけることなく、プッシャー41は、スプリング414による第一押圧力F1に心押台42による第二押圧力F2を加えて、ワークWを押圧することができる。
【0035】
尚、この場合、タレット装置35(加工ヘッド30)の前進が停止するため、心押台42によって押圧されているシャフト413(及び案内部412)は、ベースプレート411に対してZ軸線方向に相対的に前進する。従って、フランジ部413bとプレート部材415との間に配置されたスプリング414の圧縮が徐々に解除されるため、第一押圧力F1は徐々に小さくなる。
【0036】
一方、心押台42はサーボモータ等を有する駆動装置424によって駆動されてZ軸線方向に前進するため、例えば、第一押圧力F1の減少に対応して第二押圧力F2を増加させる、即ち、第二押圧力F2を第一押圧力F1よりも大きくすることができる。従って、プッシャー41は、心押台42によって押圧される(アシストされる)ことにより、案内部412がワークWを軸心Oに案内しつつ、ワークWを主軸21の所定位置に向けて押圧して押し込むことができる。
【0037】
そして、制御装置12は、例えば、主軸台20の内部に組み込まれた押出し装置23を介して把握されるワークWのZ軸線方向における位置が所定位置になると、主軸チャック22を作動させてワークWを保持し、主軸台20に対するワークWの装着を完了する。これに伴い、心押台42及びZ軸スライド32がZ軸線方向にて後退することにより、プッシャー41がワークWから離間する。そして、制御装置12は、タレット装置35の旋回割出しによってワークWを切削するための工具37を選択し、ワークWに機械加工(切削加工)を施す。
【0038】
以上の説明からも理解できるように、ワーク押圧装置40は、ベッド11に対して所定軸線方向であるZ軸線方向に相対移動可能に設けられ、Z軸線方向に沿って軸体としての主軸21に仮装着されたワークWを主軸21に向けて押圧するプッシャー41と、ベッド11に対してZ軸線方向に相対移動可能に設けられ、Z軸線方向に沿ってプッシャー41が押圧したワークWを主軸21に向けて押圧する補助押圧装置としての心押台42と、を備える。
【0039】
これによれば、第一工程としてプッシャー41が主軸21に仮装着されたワークWを主軸21に向けて押圧し、更に、第二工程として心押台42がプッシャー41によって押圧されたワークWを主軸21に向けて押圧することができる。従って、ワーク押圧装置40は、第一工程及び第二工程を経ることにより、心押台42がプッシャー41によるワークWの押し込み不足を解消してワークWを主軸21に向けて押圧することができる。
【0040】
そして、押し込み不足を解消することにより、ワークWを主軸21の所定位置に位置決めすることができ、主軸チャック22によってワークWを主軸21に最終的に装着することができる。これにより、常に、ワークWを適切に装着することができるため、例えば、工作機械10がワークWに施す機械加工の加工精度の維持及び向上を図ることができる。
【0041】
更に、補助押圧装置として、工作機械10に設けられている既存の心押台42(テールストック)を利用することができる。これにより、別途、補助押圧装置を設ける必要がなく、例えば、設備コストの低減を実現することができる。
【0042】
4.変形例
4-1.第一変形例
上述した実施形態においては、第二工程にて心押台42がプッシャー41を押圧する際に、タレット装置35(加工ヘッド30)の前進を停止するようにした。これにより、タレット装置35の工具台36に対する負荷を軽減しつつ、ワークWを主軸21の所定位置に位置決めできるようにした。これに代えて、心押台42の前進に同期させて、タレット装置35(加工ヘッド30)を前進させることも可能である。
【0043】
即ち、制御装置12は、第二工程において、
図6にて太破線矢印で示すように、例えば、心押台42が前進する速度に合わせて(同期させて)、Z軸スライド32即ちタレット装置35(加工ヘッド30)をZ軸線方向に継続して前進させる。これにより、プッシャー41は、スプリング414による第一押圧力F1に心押台42による第二押圧力F2を加えて、ワークWを押圧することができる。従って、第一変形例においては、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0044】
尚、この場合、第二工程にて、タレット装置35(加工ヘッド30)が心押台42と共に同期して前進を継続するため、スプリング414はシャフト413のフランジ部413bによって圧縮された状態が継続する。従って、案内部412及びシャフト413には、スプリング414による第一押圧力F1が作用した状態が継続している。つまり、第一変形例においては、上述した実施形態の第二工程と異なり、プッシャー41が、例えば、最大の第一押圧力F1によってワークWを押圧しながら、心押台42がプッシャー41を第二押圧力F2によって押圧する(アシストする)ことができる。
【0045】
4-2.第二変形例
上述した実施形態及び第一変形例においては、第一工程としてワーク押圧装置40のプッシャー41がワークWを押圧するようにした。そして、上述した実施形態及び第一変形例においては、近接スイッチ419からオン信号を取得、即ち、タレット装置35の工具台36に対する負荷が大きくなった時点で、第二工程として心押台42がプッシャー41を介してワークWを押圧するようにした。これに代えて、例えば、ワークWの形状や大きさに基づいて、タレット装置35の工具台36に対する負荷が大きくなることが事前に把握されている場合には、
図7に示すように、予めプッシャー41と心押台42とを連結しておき、同時にワークWを押圧するようにしても良い。
【0046】
第二変形例においては、第一工程として、上述した実施形態と同様にプッシャー41を主軸台20(主軸21)の軸心Oと同軸になるように押圧位置に配置する。そして、
図7に示すように、例えば、制御装置12が心押台42の駆動装置424を駆動させ、押圧部421をZ軸線方向に前進させてプッシャー41の収容凹部416に収容させることにより、プッシャー41と心押台42とを連結する。
【0047】
そして、第二変形例においては、第二工程として、例えば、制御装置12が、
図7にて太破線矢印で示すように、Z軸スライド32及び駆動装置424を同期させて駆動させる。これにより、プッシャー41と心押台42とが互いに連結した状態で、プッシャー41の案内部412がワークWを主軸21に向けて押圧する。この場合、
図7に示すように、プッシャー41においては案内部412及びシャフト413がワークWの押圧に伴って若干後退することによって第一押圧力F1を発生し、ワークWを押圧する。又、心押台42は、駆動装置424の駆動により、第一押圧力F1よりも大きな第二押圧力F2を発生し、プッシャー41を介してワークWを主軸21に向けて押圧する。従って、第二変形例においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0048】
4-3.第三変形例
上述した実施形態及び第一変形例においては、第一工程にてプッシャー41がワークWを押圧した後、第二工程にて心押台42がプッシャー41を介してワークWを押圧するようにした。即ち、上述した実施形態及び第一変形例においては、
図5及び
図6に示したように、プッシャー41がワークWを押圧している状態で、心押台42は、プッシャー41を押圧することによってワークWを押圧するようにした。
【0049】
これに代えて、例えば、
図4に示したように、第一工程にてプッシャー41がワークWを押圧した後、制御装置12がタレット装置35(加工ヘッド30)に取り付けられたプッシャー41を退避させ、第二工程にて、
図8に示すように、心押台42がプッシャー41によって押圧された後のワークWを直接押圧することも可能である。この場合、
図8に示すように、ワークWの凸部W1において、心押台42の押圧部421の先端を収容する凹部W2が設けられていることが好ましい。
【0050】
これにより、第三変形例においては、第一工程にて、プッシャー41がワークWを押圧することにより、ワークWは、主軸21の軸心Oに向けてある程度案内され、且つ、主軸21の所定位置近傍に配置される。そして、第三変形例においては、第二工程にて、心押台42の押圧部421の先端が直接ワークWの凸部W1に形成された凹部W2に収容され、押圧部421がワークWを直接押圧する。これにより、ワークWは、軸心Oに対して同軸になると共に、主軸21の所定位置に押し込まれて配置される。従って、第三変形例においても、上述した実施形態及び第一変形例と同様の効果が得られる。
【0051】
4-4.第四変形例
上述した実施形態及び上述した各変形例においては、近接スイッチ419を備えるようにした。そして、制御装置12が近接スイッチ419から出力されるオン信号を取得した場合、タレット装置35の工具台36に対する負荷が大きいために心押台42を自動的に作動させるようにした。ところで、例えば、オペレータが手動により工作機械10を作動させる場合には、近接スイッチ419を省略し、オペレータの判断に基づく手動操作によって、上述した実施形態及び各変形例と同様に、心押台42を作動させることも可能である。従って、第四変形例の場合であっても、上述した実施形態及び各変形例と同様の効果が得られる。
【0052】
4-5.第五変形例
上述した実施形態及び上述した各変形例においては、プッシャー41がタレット装置35(加工ヘッド30)の前進に伴ってスプリング414が発生する第一押圧力F1によってワークWを押圧し、心押台42がサーボモータ等を有する駆動装置424が発生する第二押圧力F2によってワークWを押圧するようにした。つまり、上述した実施形態及び各変形例においては、第二押圧力F2が第一押圧力F1よりも大きい場合を例示して説明した。
【0053】
しかしながら、第一押圧力F1及び第二押圧力F2の大きさについては、第二押圧力F2が第一押圧力F1よりも大きいことに限られない。即ち、ワークWを主軸21の所定位置に押し込んで配置することができれば、プッシャー41がワークWに付与する第一押圧力F1よりも、心押台42がワークWに付与する第二押圧力F2が小さくても良い。このように、第一押圧力F1と第二押圧力F2の大きさを限定しない第五変形例においても、上述した実施形態及び上述した各変形例と同様の効果が期待できる。
【0054】
4-6.第六変形例
上述した実施形態及び上述した各変形例においては、プッシャー41がタレット装置35の工具台36に組み付けられるようにした。これにより、プッシャー41が、ベッド11に対して所定軸線方向であるZ軸線方向に相対移動可能に設けられ、Z軸線方向に沿って主軸21に仮装着されたワークWを主軸21に向けて押圧するようにした。しかしながら、プッシャー41の取り付け対象については、タレット装置35の工具台36に限られず、主軸21に仮装着されたワークWを押圧可能であれば、如何なる場所に設けても良い。このように、プッシャー41の組み付け対象を限定しない第六変形例においても、上述した実施形態及び上述した各変形例と同様の効果が期待できる。
【0055】
但し、タレット装置35の工具台36以外にプッシャー41を設ける場合、ベッド11に対して所定軸線方向であるZ軸線方向に相対移動可能とし、主軸21に仮装着されたワークWを主軸21に向けて押圧させるように、プッシャー41にZ軸スライド32に相当する駆動装置を設けることが好ましい。尚、例えば、主軸台20が所定軸線方向であるZ軸線方向にてベッド11に対して相対移動可能に構成された工作機械においては、プッシャー41を移動させる必要がないため駆動装置を省略することも可能である。
【0056】
4-7.第七変形例
上述した実施形態及び上述した各変形例においては、心押台42が一対のガイドレール423によってZ軸線方向にて案内される駆動装置424を備え、駆動装置424が駆動することによって押圧部421をベッド11に対して相対移動させるようにした。これに代えて、又は、加えて、
図2にて二点鎖線により示すように、押圧部421及び支持部422を所定軸線方向であるZ軸線方向にて相対移動させるアクチュエータ425を備えることも可能である。
【0057】
この場合においても、アクチュエータ425の駆動によって押圧部421がプッシャー41を介して又は直接にワークWを押圧することができる。従って、第七変形例においても、上述した実施形態及び上述した各変形例と同様の効果が得られる。
【0058】
4-8.第八変形例
上述した実施形態及び上述した各変形例においては、プッシャー41のシャフト413に収容凹部416を設け、心押台42の押圧部421が収容凹部416に収容されるようにした。これにより、プッシャー41と心押台42の押圧部421とが確実に軸心Oと同軸になるようにした。ところで、心押台42は、主軸台20の主軸21の軸心Oと同軸になるようにベッド11に設けられる。従って、押圧部421がプッシャー41を押圧する際には、若干のバラつきが生じる可能性があるものの、プッシャー41及び押圧部421が軸心Oにほぼ同軸となる状態を実現することができる。従って、収容凹部416を省略することが可能であり、この場合であっても、上述した実施形態及び各変形例と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0059】
10…工作機械、11…ベッド、111…案内面、12…制御装置、20…主軸台、21…主軸(軸体)、211…挿通孔、22…主軸チャック、23…押出し装置、30…加工ヘッド、31…ガイド、32…Z軸スライド、33…ガイドレール、34…X軸スライド、35…タレット装置、36…工具台、37…工具、40…ワーク押圧装置、41…プッシャー、411…ベースプレート、412…案内部、413…シャフト、413a…固定部、413b…フランジ部、414…スプリング、415…プレート部材、416…収容凹部、417…滑り軸受、418…カラー、419…近接スイッチ、42…心押台(補助押圧装置)、421…押圧部、422…支持部、423…ガイドレール、424…駆動装置、425…アクチュエータ、W…ワーク、W1…凸部、W2…凹部、O…軸心