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特開2023-82328間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤、培地、培養方法、ならびに凍結保存方法
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  • 特開-間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤、培地、培養方法、ならびに凍結保存方法 図1
  • 特開-間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤、培地、培養方法、ならびに凍結保存方法 図2
  • 特開-間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤、培地、培養方法、ならびに凍結保存方法 図3
  • 特開-間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤、培地、培養方法、ならびに凍結保存方法 図4
  • 特開-間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤、培地、培養方法、ならびに凍結保存方法 図5A
  • 特開-間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤、培地、培養方法、ならびに凍結保存方法 図5B
  • 特開-間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤、培地、培養方法、ならびに凍結保存方法 図6A
  • 特開-間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤、培地、培養方法、ならびに凍結保存方法 図6B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082328
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤、培地、培養方法、ならびに凍結保存方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20230607BHJP
   C12N 1/04 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
C12N1/00 G
C12N1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196024
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠山 絹華
(72)【発明者】
【氏名】田畑 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】米田 圭三
(72)【発明者】
【氏名】山口 達哉
(72)【発明者】
【氏名】春日部 芳久
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BB12
4B065BC50
4B065BD09
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】 間葉系幹細胞や骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、骨細胞を賦活化することができる賦活化剤や培地、培養方法、凍結保存方法を提供することである。
【解決手段】 間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤は、スペルミジンおよびスペルミンの少なくとも一方、および/または、それらの少なくとも一方の塩を有効成分として含む。培地は、上記の賦活化剤を含有する。培養方法は、上記の培地で、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種を培養することを含む。凍結保存方法は、上記の培地で、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種を凍結保存することを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペルミジンおよびスペルミンの少なくとも一方、および/または、それらの少なくとも一方の塩を有効成分として含む、
間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤。
【請求項2】
培地添加用である、請求項1に記載の賦活化剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の賦活化剤を含有する培地。
【請求項4】
請求項3に記載の培地で、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種を培養することを含む、培養方法。
【請求項5】
請求項3に記載の培地で、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種を凍結保存することを含む、凍結保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤と、培地と、培養方法と、凍結保存方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、間葉系幹細胞や前骨芽細胞を用いた様々な研究開発、たとえば再生医療の研究開発が活発におこなわれている。間葉系幹細胞は、骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨芽細胞といった中胚葉に由来する組織を構成する細胞、すなわち中胚葉系細胞へ分化することができる。これに加えて、間葉系幹細胞は、外胚葉系細胞たる神経細胞や、内胚葉系細胞たる肝細胞などへも分化することもできる。間葉系幹細胞は、このような分化能を有するため、たとえば、細胞シートやオルガノイドの作製を含めた再生医療関連の研究開発に使用される。これに加えて、間葉系幹細胞は、脳機能障害や運動機能障害、自己免疫疾患の治療およびそれらの研究開発などにも使用される。いっぽう、前骨芽細胞は、骨芽細胞に分化することができる細胞である。このような分化能を前骨芽細胞が有するため、前骨芽細胞は、たとえば、骨再生医療の研究や、骨粗しょう症の研究、インプラント関連の研究などに使用される。また、前骨芽細胞は、これを神経細胞といった他の細胞に分化させる分化転換の研究にも利用されている。
【0003】
ところで、ポリアミンは、典型的には、第一級アミノ基を二つ以上もつ直鎖脂肪族炭化水素の総称である。ポリアミンは、さまざまな動物の組織に存在しており、ヒトには、たとえば、プトレスシン、スペルミジン、スペルミンが存在する。
【0004】
ポリアミンは、生理的pHでポリカチオンの状態をなす、すなわち正電荷をもつため、負電荷部をもつ核酸やタンパク質、リン脂質などと結合しやすく、生体内のさまざまな反応に関わると考えられている。たとえば、ポリアミンは、細胞の増殖や成長などに関わるタンパク質の翻訳制御において重要な役割を担うと考えられている。
【0005】
ポリアミンの細胞への作用に関して、特許文献1には、ポリアミンとしてプトレスシン、スペルミジン、またはスペルミンを添加した培地で、正常ヒト皮膚線維芽細胞やヒト毛乳頭細胞を培養することによって、これらの細胞を賦活化できたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5216228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、プトレスシン、スペルミジン、またはスペルミンで、正常ヒト皮膚線維芽細胞やヒト毛乳頭細胞を賦活化できたことが記載されているものの、これらとは分化の状態が異なる細胞、たとえば、間葉系幹細胞や前骨芽細胞をも賦活化できるかどうかまでは特許文献1から明らかではない。
【0008】
本発明は、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種を賦活化することができる賦活化剤や培地、培養方法、凍結保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために本発明者は研究をすすめた結果、間葉系幹細胞において、賦活化の指標として設定した脱水素酵素活性をプトレスシンでは向上することが難しいものの、スペルミジンやスペルミンで脱水素酵素活性、具体的には、細胞一つあたりの脱水素酵素活性を向上できることを見出した。
【0010】
これに加えて、本発明者は、前骨芽細胞において、プトレスシンでは脱水素酵素活性を向上することが難しいものの、スペルミジンやスペルミンで脱水素酵素活性、具体的には、細胞一つあたりの脱水素酵素活性を向上できることも見出した。
【0011】
このような知見に基づき完成された本発明は、次の通りである。
項1
スペルミジンおよびスペルミンの少なくとも一方、および/または、それらの少なくとも一方の塩を有効成分として含む、
間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤。
項2
培地添加用である、項1に記載の賦活化剤。
項3
項1または2に記載の賦活化剤を含有する培地。
項4
項3に記載の培地で、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種を培養することを含む、培養方法。
項5
項3に記載の培地で、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種を凍結保存することを含む、凍結保存方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種を賦活化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】マウス頭蓋冠由来骨芽細胞たるMC3T3-E1を用いた実施例1で測定した脱水素酵素活性を活性化率として示す図である。
図2】MC3T3-E1を用いた実施例2で測定した脱水素酵素活性を活性化率として示す図である。
図3】MC3T3-E1を用いた実施例3で測定した脱水素酵素活性を、細胞一つあたりの活性化率として示す図である。
図4】ヒト脂肪由来間葉系幹細胞たるhADSCを用いた実施例4で測定した脱水素酵素活性を活性化率として示す図である。
図5A】hADSCを用いた実施例5で測定した脱水素酵素活性を活性化率として示す図である。
図5B】hADSCを用いた実施例5で測定した脱水素酵素活性を、細胞一つあたりの活性化率として示す図である。
図6A】hADSCを用いた実施例6で測定した脱水素酵素活性を活性化率として示す図である。
図6B】hADSCを用いた実施例6で測定した脱水素酵素活性を、細胞一つあたりの活性化率として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
<1.賦活化剤>
本実施形態の賦活化剤は、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活化剤であり、スペルミジンおよびスペルミンの少なくとも一方、および/または、それらの少なくとも一方の塩を有効成分として含む。
【0016】
本明細書において、「賦活化」とは、細胞(具体的には、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種)の何らかの代謝活性の向上を意味する。「何らかの代謝活性」は、たとえば、脱水素酵素活性であり得る。具体的には、「何らかの代謝活性」は、細胞一つ当たりの脱水素酵素活性であり得る。これについて説明する。脱水素酵素は、細胞がエネルギーを獲得するうえで重要な酸化還元反応、たとえば、呼吸を構成する酸化還元反応に関わる。これによれば、細胞一つ当たりのエネルギー獲得能力は、細胞一つ当たりの脱水素酵素活性に反映されると考えることができる。したがって、「何らかの代謝活性」は、細胞一つ当たりの脱水素酵素活性であってもよい。
【0017】
間葉系幹細胞(MSC)は、少なくとも、骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨芽細胞に分化することができる能力(すなわち分化能)を有する幹細胞であり得る。間葉系幹細胞は、これら以外の中胚葉系細胞、たとえば心筋細胞や腱細胞、骨格筋細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞などに分化することができる能力(すなわち分化能)を有していてもよい。間葉系幹細胞は、中胚葉系細胞以外の細胞、たとえば、神経細胞や肝細胞などへの分化能を有していてもよい。なお、間葉系幹細胞は、典型的には、標準的な培養条件でプラスチックに接着性を有し得る。間葉系幹細胞は、たとえば、CD73、CD90、およびCD105を発現し得る。
【0018】
間葉系幹細胞は、たとえば、動物から取り出した細胞そのものであってもよく、動物から取り出した後に培養(たとえば初代培養や継代培養)を経た細胞(これは細胞株であり得る。)であってもよい。間葉系幹細胞は、iPS細胞やES細胞などから分化誘導で作製された細胞であってもよい。
【0019】
間葉系幹細胞は、ヒト、チンパンジー、ラット、マウス、モルモット、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタといった哺乳類、すなわち脊椎動物門の哺乳網に属する動物に由来してもよく、それ以外の動物に由来してもよい。つまり、間葉系幹細胞は哺乳類に由来してもよく、それ以外の動物に由来してもよい。なお、間葉系幹細胞は、上述の通り、iPS細胞やES細胞から分化誘導で作製された細胞であってもよいところ、本明細書では、間葉系幹細胞の元となるiPS細胞やES細胞が哺乳類に由来する場合、その間葉系幹細胞は哺乳類に由来することとされる。
【0020】
間葉系幹細胞が、動物から取り出した細胞そのもの、または、動物から取り出した後に培養を経た細胞である場合、間葉系幹細胞は、たとえば、脂肪組織、骨髄、歯髄、臍帯、胎盤羊膜、羊水に由来してもよい。なお、脂肪組織由来の間葉系幹細胞は、ヒトの脂肪吸引手術で吸引される脂肪から入手できる、つまり、比較的容易に入手できるため好ましい。
【0021】
前骨芽細胞(preosteoblast)は、典型的には、間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化の過程で生じる細胞である。この分化において、間葉系幹細胞は、典型的には、骨前駆細胞(osteoprogenitor cell)、前骨芽細胞(preosteoblast)、骨芽細胞(osteoblast)の順に分化していく。そして、成熟した骨芽細胞が、最終的に骨細胞(osteocyte)へと変化することができる。
【0022】
骨前駆細胞や、前骨芽細胞、骨芽細胞、骨細胞は、たとえば、動物から取り出した細胞そのものであってもよく、動物から取り出した後に培養(たとえば初代培養や継代培養)を経た細胞(これは細胞株であり得る。)であってもよい。前骨芽細胞は、iPS細胞やES細胞などから分化誘導で作製された細胞であってもよい。
【0023】
これらの細胞(具体的には、骨前駆細胞や、前骨芽細胞、骨芽細胞、骨細胞)は、ヒト、チンパンジー、ラット、マウス、モルモット、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタといった哺乳類、すなわち脊椎動物門の哺乳網に属する動物に由来してもよく、それ以外の動物に由来してもよい。つまり、これらの細胞は哺乳類に由来してもよく、それ以外の動物に由来してもよい。なお、これらの細胞は、上述の通り、iPS細胞やES細胞から分化誘導で作製された細胞であってもよいところ、本明細書では、これらの細胞の元となるiPS細胞やES細胞が哺乳類に由来する場合、それらの細胞は哺乳類に由来することとされる。
【0024】
これらの細胞(具体的には、骨前駆細胞や、前骨芽細胞、骨芽細胞、骨細胞)が、動物から取り出した細胞そのもの、または、動物から取り出した後に培養を経た細胞である場合、これらの細胞は、たとえば、頭蓋冠に由来してもよい。とりわけ、前骨芽細胞(preosteoblast)は、頭蓋冠に由来してもよい。
【0025】
これらの細胞(具体的には、骨前駆細胞や、前骨芽細胞、骨芽細胞、骨細胞)のなかでは、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞が好ましく、骨前駆細胞、前骨芽細胞がより好ましい。前骨芽細胞が好ましい理由は、後述の実施例で、前骨芽細胞の賦活化が実証されているためである。骨前駆細胞が好ましい理由は、後述の実施例で賦活化が実証されている間葉系幹細胞から、賦活化が実証されている前骨芽細胞までの分化の過程に骨前駆細胞があるので、骨前駆細胞の賦活化も十分になし得ると考えられるためである。なかでも、後述の実施例で、前骨芽細胞の賦活化が実証されていることから、前骨芽細胞がさらに好ましい。
【0026】
本実施形態の賦活化剤は、スペルミジンおよびスペルミンの少なくとも一方、および/または、それらの少なくとも一方の塩を有効成分として含む。このため、細胞の代謝活性、たとえば、脱水素酵素活性を向上することができる。より具体的には、細胞一つ当たりの脱水素酵素活性を向上することができる。なかでも、本実施形態の賦活化剤は、スペルミジンおよびスペルミンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0027】
スペルミジンは、代表的なポリアミンの一つであり、HN(CHNH(CHNHで表される構造を有する化合物である。スペルミジンは、たとえば、化学合成されてもよく、生体(たとえば植物)から抽出されてもよい。ケミカリーディファインドな賦活化剤を得やすいことから、化学合成されたスペルミジンが好ましい。すなわち、スペルミジンは、植物由来よりも、化学合成品が好ましい。つまり、スペルミジンは、植物由来でないことが好ましい。なお、スペルミジンは、単純な構造を有するため、比較的安価に化学合成品を入手し得る。
【0028】
スペルミンも、代表的なポリアミンの一つであり、HN(CHNH(CHNH(CHNHで表される構造を有する化合物である。スペルミンは、たとえば、化学合成されてもよく、生体(たとえば植物)から抽出されてもよい。ケミカリーディファインドな賦活化剤を得やすいことから、化学合成されたスペルミンが好ましい。すなわち、スペルミンは、植物由来よりも、化学合成品が好ましい。つまり、スペルミンは、植物由来でないことが好ましい。なお、スペルミンは、単純な構造を有するため、比較的安価に化学合成品を入手し得る。
【0029】
本実施形態の賦活化剤は、スペルミジンおよびスペルミン以外のポリアミンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。そのようなポリアミンとして、たとえば、プトレスシンを挙げることができる。なお、本実施形態の賦活化剤は、プトレスシンを含まないことが好ましい。
【0030】
本実施形態の賦活化剤が含有するポリアミン100質量%中、スペルミジンおよびスペルミンの合計含有量は、たとえば50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、100質量%がさらに好ましい。スペルミジンの含有量の好適範囲や、スペルミンの含有量の好適範囲も同様である。すなわち、スペルミジンおよびスペルミンの合計含有量の説明を、スペルミジンの含有量やスペルミンの含有量の説明としても扱うことができる。
【0031】
本実施形態の賦活化剤は、上述の成分に加えて、一種または二種以上の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分として、たとえば、賦形剤、担体、希釈剤などを挙げることができる。他の成分として、スペルミジンの塩およびスペルミンの塩以外のポリアミンの塩を挙げることもできる。
【0032】
本実施形態の賦活化剤100質量%中、スペルミジンおよびスペルミンの合計含有量は、たとえば10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、100質量%がさらに好ましい。スペルミジンの含有量の好適範囲や、スペルミンの含有量の好適範囲も同様である。すなわち、スペルミジンおよびスペルミンの合計含有量の説明を、スペルミジンの含有量やスペルミンの含有量の説明としても扱うことができる。
【0033】
本実施形態の賦活化剤は、上述の細胞(具体的には、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種)に使用する限り、その使用方法は特に限定されない。本実施形態の賦活化剤は、たとえば、上述の細胞を培養する際に、これらを培養するための培地に添加する、という方法で使用されることができる。これに加えて、本実施形態の賦活化剤は、たとえば、上述の細胞を凍結保存する際に、これらを凍結保存するための培地に添加する、という方法で使用されることができる。このように、本実施形態の賦活化剤は、培地(たとえば培養用の培地や、凍結保存用の培地)添加用の賦活化剤、すなわち培地添加剤であることができる。
【0034】
<2.培地>
本実施形態の培地は、上述の賦活化剤を含有する。すなわち、本実施形態の培地は、上述の賦活化剤が添加された培地である。
【0035】
本実施形態の培地は、上述の細胞(具体的には、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種)を培養するための培地であってもよく、凍結保存するための培地、すなわち凍結保存液であってもよい。
【0036】
本実施形態の培地が、上述の細胞(具体的には、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種)を培養するための培地である場合、賦活化剤が添加される培地として、たとえば、Alpha-MEM、D-MEM(たとえば、Poweredby10(株式会社グライコテクニカ))、Plusoid-M(株式会社グライコテクニカ)、G031101(株式会社グライコテクニカ)、M061101(株式会社グライコテクニカ)などを挙げることができる。培地には、必要に応じて、ウシ胎児血清(FCS)や抗生物質、細胞増殖因子などを添加してもよい。
【0037】
本実施形態の培地が、上述の細胞(具体的には、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種)を凍結保存するための培地、すなわち凍結保存液である場合、凍結保護剤を含有することができる。凍結保護剤として、たとえば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロールを挙げることができる。本実施形態の培地が凍結保存液である場合、必要に応じて、ウシ胎児血清などを含有していてもよい。
【0038】
なお、本実施形態の培地が、培養用の培地である場合でも、凍結保存用の培地(すなわち凍結保存液)である場合でも、ケミカリーディファインドという観点を踏まえるとウシ胎児血清を含有しないことが好ましい。
【0039】
培地中のスペルミジンおよびスペルミンの合計濃度は、0.1μM以上が好ましく、0.5μM以上がより好ましく、1.0μM以上がさらに好ましく、5.0μM以上がさらに好ましく、10μM以上がさらに好ましい。合計濃度は、20μM以上であってもよく、50μM以上であってもよく、100μM以上であってもよい。いっぽう、培地中のスペルミジンおよびスペルミンの合計濃度は、5000μM以下が好ましく、3000μM以下がより好ましく、1500μM以下がさらに好ましく、1000μM以下がさらに好ましく、800μM以下がさらに好ましく、500μM以下がさらに好ましい。合計濃度は、300μM以下であってもよく、200μM以下であってもよい。スペルミジンの濃度の好適範囲や、スペルミンの濃度の好適範囲も同様である。すなわち、スペルミジンおよびスペルミンの合計濃度の説明を、スペルミジンの濃度やスペルミンの濃度の説明としても扱うことができる。
【0040】
<3.培養方法および凍結保存方法>
本実施形態の培養方法は、上述の培地で、上述の細胞(具体的には、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種)を培養することを含む。たとえば、上述の培地で、上述の細胞を含む懸濁液を調製したうえで、その懸濁液を、細胞培養フラスコや細胞培養ディッシュなどの培養容器に入れ、37℃、5%CO2雰囲気下でインキュベートすることができる。必要に応じて、上述の培地を用いて継代培養をおこなうことができる。なお、上述の細胞を培養する際に、これら以外の細胞が、培養対象の細胞集団に含まれていてもよい。
【0041】
上述の細胞(具体的には、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種)を培養する際、スペルミジンおよびスペルミンの合計終濃度は、0.1μM以上が好ましく、0.5μM以上がより好ましく、1.0μM以上がさらに好ましく、5.0μM以上がさらに好ましく、10μM以上がさらに好ましい。合計終濃度は、20μM以上であってもよく、50μM以上であってもよく、100μM以上であってもよい。いっぽう、スペルミジンおよびスペルミンの合計終濃度は、5000μM以下が好ましく、3000μM以下がより好ましく、1500μM以下がさらに好ましく、1000μM以下がさらに好ましく、800μM以下がさらに好ましく、500μM以下がさらに好ましい。合計終濃度は、300μM以下であってもよく、200μM以下であってもよい。ここで、「合計終濃度」とは、スペルミジンの終濃度とスペルミンの終濃度との合計を指す。スペルミジンの終濃度の好適範囲や、スペルミンの終濃度の好適範囲も同様である。すなわち、スペルミジンおよびスペルミンの合計終濃度の説明を、スペルミジンの終濃度やスペルミンの終濃度の説明としても扱うことができる。
【0042】
本実施形態の凍結保存方法は、上述の培地で、上述の細胞(具体的には、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種)を凍結保存することを含む。たとえば、上述の培地で、上述の細胞を含む懸濁液を調製したうえで、その懸濁液を、チューブやバイアルなどの凍結保存容器に入れ、これを凍結したうえで保存することができる。この際、たとえば、ディープフリーザーで凍結したうえで、液体窒素下で保存してもよい。なお、上述の細胞を凍結保存する際に、これら以外の細胞が、凍結保存対象の細胞集団に含まれていてもよい。
【0043】
上述の細胞(具体的には、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種)を凍結保存する際の合計終濃度(すなわち、スペルミジンおよびスペルミンの合計終濃度)の説明は、これらを培養する際の合計終濃度の説明と重複するため省略する。よって、これらを培養する際の合計終濃度の説明を、これらを凍結保存する際の合計終濃度の説明としても扱うことができる。
【実施例0044】
以下、本発明を実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
<実施例1>
<1.1.使用した細胞や試薬など>
細胞:マウス頭蓋冠由来骨芽細胞 MC3T3-E1(10cmディッシュ、60%コンフル)
培地:MEM Alpha basic (1x) (gibco)(断り書きがない限り、10%FCS、および1%Penicillin-Streptmycin(以下、「P-S」と言う。)含有)
細胞賦活化測定試薬:生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク株式会社製)
【0046】
<1.2.前培養>
MC3T3-E1の培養上清をアスピレート除去してPBS5mLで2回洗浄後、トリプシン-EDTA溶液を2mL添加して37℃で3~5分間インキュベートした。培地を等量添加したのち細胞を50mL遠心チューブへ合一し、遠心により細胞を回収した。上清除去後、1%FCSおよび1%P-S含有培地適量で懸濁し、細胞計数を行った。細胞計数結果をもとに、1%FCSおよび1%P-S含有培地で4×10cells/mL細胞懸濁液を調製し、48ウェルプレートへ250μLずつ播種(1×10cells/well)し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で一晩培養した。
【0047】
<1.3.試料添加および培養>
1.2で用意した細胞培養液中へ、プトレスシン、スペルミジン、スペルミンをそれぞれ単独で終濃度1μM~1000μMとなるように添加(各条件n=2)し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で3日間培養した。ポリアミンを何も添加しない条件をコントロールとした。すなわち、プトレスシンもスペルミジンもスペルミンも添加しない条件をコントロールとした。
【0048】
<1.4.脱水素酵素の活性測定>
3日間培養したプレートを取り出して顕微鏡観察したのち、空ウェル3ウェルへ、1%FCSおよび1%P-S含有培地を250μLずつ添加した(Blank)。各ウェルへ生細胞数測定試薬SFを20μLずつ添加し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で2時間インキュベート後、450nmと600nmとの吸光度を測定した。
【0049】
<1.5.データの整理_活性化率の算出>
細胞賦活化作用、すなわち活性化率を以下の式で算出した。
活性化率=(As-Ab)/(Ac-Ab)×100
この式において、Ab、Ac、およびAsは、次を表す。
Ab: Blankの吸光度差(すなわちAbs450-Abs600)
Ac: コントロールの吸光度差
As: 各種サンプルの吸光度差
ここで、「吸光度差」は、波長450nmの吸光度と波長600nmの吸光度との差(すなわち、波長450nmの吸光度-波長600nmの吸光度)を意味する。
コントロールの活性化率を100%として、ポリアミン添加条件の活性化率を図1に示す。
【0050】
<1.6.コメント>
図1に示すように、プトレスシンでは、前骨芽細胞たるMC3T3-E1の脱水素酵素活性を向上できなかったのに対して、スペルミジンやスペルミンでは脱水素酵素活性を向上することができた。
【0051】
<実施例2>
<2.1.使用した細胞や試薬など>
細胞:マウス頭蓋冠由来骨芽細胞 MC3T3-E1(10cmディッシュ、70%コンフル)
培地:MEM Alpha basic (1x)(gibco)(断り書きがない限り、10%FCS、および1%P-S含有)
細胞賦活化測定試薬:生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク株式会社製)
【0052】
<2.2.前培養>
10cmディッシュで60~70%コンフルエントまで培養したMC3T3-E1の培養上清をアスピレート除去してPBS5mLで2回洗浄後、トリプシン-EDTA溶液を2mL添加して37℃で3~5分間インキュベートした。培地を等量添加したのち細胞を50mL遠心チューブへ合一し、遠心により細胞を回収した。上清除去後、培地適量で懸濁し、細胞計数を行った。細胞計数結果をもとに、培地で8×10cells/mL細胞懸濁液を調製し、48ウェルプレートへ250μLずつ播種(2×10cells/well)し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で一晩培養した。
【0053】
<2.3.試料添加および培養>
2.2.で前培養したプレートをCOインキュベーターから取り出し、1%FCSおよび1%P-S含有培地で置換した。そこへ、プトレスシン、スペルミジン、スペルミンをそれぞれ単独で終濃度10μMおよび100μMとなるように添加(各条件n=3)し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で2日間培養した。ポリアミンを何も添加しない条件をコントロールとした。すなわち、プトレスシンもスペルミジンもスペルミンも添加しない条件をコントロールとした。
【0054】
<2.4.脱水素酵素の活性測定>
2日間培養したプレートを取り出して顕微鏡観察したのち、空ウェル3ウェルへ、1%FCSおよび1%P-S含有培地を250μLずつ添加した(Blank)。各ウェルへ生細胞数測定試薬SFを20μLずつ添加し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で2時間インキュベート後、450nmと600nmとの吸光度を測定した。
【0055】
<2.5.データの整理_活性化率の算出>
細胞賦活化作用、すなわち活性化率を実施例1に記載の方法(すなわち、1.5.に記載の方法)で算出した。コントロールの活性化率を100%として、ポリアミン添加条件の活性化率を図2に示す。
【0056】
<2.6.コメント>
図2に示すように、プトレスシンでは、前骨芽細胞たるMC3T3-E1の脱水素酵素活性を向上できなかったのに対して、スペルミジンやスペルミンでは脱水素酵素活性を向上することができた。
【0057】
<実施例3>
スペルミジン添加やスペルミン添加による脱水素酵素活性の増加が、細胞一つ当たりの脱水素酵素活性の増加であることを厳密に評価するために、実施例3では、脱水素酵素の活性測定だけでなく、細胞数を求めるためのDNAアッセイも行い、それらの結果から細胞一つ当たりの脱水素酵素活性を求めた。
<3.1.使用した細胞や試薬など>
細胞:マウス頭蓋冠由来骨芽細胞 MC3T3-E1(10cmディッシュ、70%コンフル)
培地:MEM Alpha basic (1x)(gibco)(断り書きがない限り、10%FCS、および1%P-S含有)
細胞賦活化測定試薬:生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク株式会社製)
【0058】
<3.2.前培養>
MC3T3-E1の培養上清をアスピレート除去してPBS5mLで2回洗浄後、トリプシン-EDTA溶液を2mL添加して37℃で3~5分間インキュベートした。培地を等量添加したのち細胞を50mL遠心チューブへ合一し、遠心により細胞を回収した。上清除去後、培地適量で懸濁し、細胞計数を行った。細胞計数結果をもとに培地で8×10cells/mL細胞懸濁液を調製し、48ウェルプレートへ250μLずつ播種(2×10cells/well)し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で一晩培養した。
【0059】
<3.3.試料添加および培養>
3.2.で前培養したプレートをCOインキュベーターから取り出し、1%FCSおよび1%P-S含有培地で置換した。そこへ、スペルミジン、スペルミンをそれぞれ単独で終濃度1μM、10μMおよび100μMとなるように添加(各条件n=2)し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で2日間培養した。ポリアミンを何も添加しない条件をコントロールとした。すなわち、スペルミジンもスペルミンも添加しない条件をコントロールとした。また、アスコルビン酸を終濃度1μM、10μM、100μMおよび1000μMとなるように添加した条件をポジティブコントロールとした。
【0060】
<3.4.脱水素酵素の活性測定>
2日間培養したプレートを取り出して顕微鏡観察したのち、空ウェル3ウェルへ、1%FCSおよび1%P-S含有培地を250μLずつ添加した(Blank)。各ウェルへ生細胞数測定試薬SFを20μLずつ添加し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で2時間インキュベート後、450nmと600nmとの吸光度を測定した。
なお、吸光度の測定後、上清除去し、各ウェル中の細胞数をDNAアッセイにより見積もった(下記3.5.参照)。
【0061】
<3.5.DNAアッセイ>
(a)各種溶液調製
20×SSC:塩化ナトリウム18g、クエン酸三ナトリウム二水和物8.8g/MilliQ100mL(20×SSCをMilliQで希釈することによって1×SSCを調製した)
2mM SDS:(ドデシル硫酸ナトリウム57.6mg)/(1×SSC 100mL)
ヘキスト溶液:(Hoechst 33258水溶液(1mg/mL)(ナカライテスク株式会社製)5μL)/(1×SSC 4mL)
(b)検量線用の細胞の準備
1×10cellsの細胞懸濁液を調製後、遠心(1,000rpm、5min)して上清を除去し、2mM SDSを1mL添加し、37℃で24時間インキュベートした。その後遠心(10,000rpm、10min)して上清を採取し、検量線用の細胞(1×10cells/mL)とした。これを-20℃で冷凍保存した。使用時は2mM SDSで希釈して希釈系列を作成した。
(c)測定サンプルの準備
3.4.で上清を除去したプレート中の細胞を、PBS300μL/wellで細胞をはがさないようにやさしく1回洗浄し、2mM SDSを200μL/wellで添加し、37℃で24時間インキュベートした。
(d)測定
96穴ブラックプレート中に希釈系列またはサンプルを40μL/wellで添加したのち、ヘキスト溶液160μL/wellを添加し、励起光355nm、蛍光460nmの蛍光スペクトルを測定した。希釈系列により縦軸:蛍光スペクトル測定値、横軸:細胞密度にとった直線の検量線を得た。検量線をもとに各ウェル中の細胞密度を算出した。測定の際、プレートとプレートリーダーは以下を使用した。
プレート:Assay Plate 96 Well No Lid Black flat bottom(Costar)
プレートリーダー:SpectraMax i3 (Molecular Devices)
【0062】
<3.6.データの整理_細胞一つあたりの活性化率の算出>
まず、細胞賦活化作用、すなわち活性化率を実施例1に記載の方法(すなわち、1.5.に記載の方法)で算出した。次いで、3.5.より算出した細胞数で活性化率を割り、細胞一つあたりの活性化率を求めた。なお、この活性化率(すなわち、細胞一つあたりの活性化率)は、ミトコンドリア活性を反映すると考えられるため、以下では、この活性化率をミトコンドリア活性と呼ぶことがある。コントロールの活性化率(すなわち、細胞一つあたりの活性化率)を100とした指数で、ポリアミン添加条件の活性化率やアスコルビン酸添加条件の活性化率を図3に示す。なお、指数が大きい程、細胞一つあたりの活性化率が高い。
【0063】
<3.7.コメント>
図3に示すように、スペルミジンやスペルミンで、細胞一つあたりの脱水素酵素活性(すなわちミトコンドリア活性)を向上することができた。また、スペルミジンやスペルミンによって、アスコルビン酸よりも、細胞一つあたりの脱水素酵素活性(すなわちミトコンドリア活性)を向上することができた。
【0064】
<実施例4>
<4.1.使用した細胞や試薬など>
細胞:ヒト脂肪由来間葉系幹細胞 hADSC(継代数:P13、10cmディッシュ、70%コンフル)
培地:MEM Alpha basic (1x)(gibco)(断り書きがない限り、10%FCS、および1%P-S含有)
細胞賦活化測定試薬:生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク株式会社製)
【0065】
<4.2.前培養>
hADSCの培養上清をアスピレート除去してPBS5mLで2回洗浄後、トリプシン-EDTA溶液を2mL添加して細胞をディッシュ底面からはがした。培地を等量添加したのち細胞を50mL遠心チューブへ合一し、遠心により細胞を回収した。上清除去後、1%FCSおよび1%P-S含有培地適量で懸濁し、細胞計数を行った。細胞計数結果をもとに、1%FCSおよび1%P-S含有培地で4×10cells/mL細胞懸濁液を調製し、48ウェルプレートへ250μLずつ播種(1×10cells/well)し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で一晩培養した。
【0066】
<4.3.試料添加および培養>
4.2.で前培養したプレートをCOインキュベーターから取り出し、プトレスシン、スペルミジン、スペルミンをそれぞれ単独で終濃度10μMおよび100μMとなるように添加(各条件n=4)し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で7日間培養した。ポリアミンを何も添加しない条件をコントロールとした。すなわち、プトレスシンもスペルミジンもスペルミンも添加しない条件をコントロールとした。
【0067】
<4.4.脱水素酵素の活性測定>
7日間培養したプレートを取り出して顕微鏡観察したのち、空ウェル3ウェルへ、1%FCSおよび1%P-S含有培地を250μLずつ添加した(Blank)。各ウェルへ生細胞数測定試薬SFを20μLずつ添加し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で3時間インキュベート後、450nmと600nmとの吸光度を測定した。
【0068】
<4.5.データの整理_活性化率の算出>
細胞賦活化作用、すなわち活性化率を実施例1に記載の方法(すなわち、1.5.に記載の方法)で算出した。コントロールの活性化率を100%として、ポリアミン添加条件の活性化率を図4に示す。
【0069】
<4.6.コメント>
図4に示すように、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞たるhADSCにおいて、プトレスシンでは、脱水素酵素活性を向上できなかったのに対して、スペルミジンやスペルミンでは、脱水素酵素活性を向上することができた。
【0070】
<実施例5>
<5.1.使用した細胞や試薬など>
細胞:ヒト脂肪由来間葉系幹細胞 hADSC(継代数:P17、10cmディッシュ、70%コンフル)
培地:MEM Alpha basic (1x)(gibco)(断り書きがない限り、10%FCS、および1%P-S含有)
細胞賦活化測定試薬:生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク株式会社製)
【0071】
<5.2.前培養>
hADSCの培養上清をアスピレート除去してPBS5mLで2回洗浄後、トリプシン-EDTA溶液を2mL添加して細胞をディッシュ底面からはがした。培地を等量添加したのち細胞を50mL遠心チューブへ合一し、遠心により細胞を回収した。上清除去後、1%FCSおよび1%P-S含有培地適量で懸濁し、細胞計数を行った。細胞計数結果をもとに、1%FCSおよび1%P-S含有培地で4×10cells/mL細胞懸濁液を調製し、48ウェルプレートへ250μLずつ播種(1×10cells/well)し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で一晩培養した。
【0072】
<5.3.試料添加および培養>
5.2.で前培養したプレートをCOインキュベーターから取り出し、プトレスシン、スペルミジン、スペルミンをそれぞれ単独で終濃度10μMおよび100μMとなるように添加(各条件n=3)し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で7日間培養した。ポリアミンを何も添加しない条件をコントロールとした。すなわち、プトレスシンもスペルミジンもスペルミンも添加しない条件をコントロールとした。また、アスコルビン酸を終濃度100μMとなるように添加した条件をポジティブコントロールとした。
【0073】
<5.4.脱水素酵素の活性測定、およびDNAアッセイ>
7日間培養したプレートを取り出して顕微鏡観察したのち、空ウェル3ウェルへ1%FCSおよび1%P-S含有培地を250μLずつ添加した(Blank)。各ウェルへ生細胞数測定試薬SFを20μLずつ添加し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で2時間インキュベート後、450nmと600nmとの吸光度を測定した。吸光度の測定後、上清除去し、各ウェル中の細胞数を、実施例3に記載の方法(すなわち、3.5.に記載のDNAアッセイ)により見積もった。
【0074】
<5.5.データの整理_活性化率、および細胞一つあたりの活性化率の算出>
まず、細胞賦活化作用、すなわち活性化率を実施例1に記載の方法(すなわち、1.5.に記載の方法)で算出した。コントロールの活性化率を100%として、ポリアミン添加条件の活性化率やアスコルビン酸添加条件の活性化率を図5Aに示す。次いで、5.4.より算出した細胞数で活性化率を割り、細胞一つあたりの活性化率を求めた。コントロールの活性化率(すなわち、細胞一つあたりの活性化率)を100とした指数で、ポリアミン添加条件の活性化率やアスコルビン酸添加条件の活性化率を図5Bに示す。なお、指数が大きい程、細胞一つあたりの活性化率が高い。
【0075】
<5.6.コメント>
図5Aおよび図5Bに示すように、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞たるhADSCにおいて、プトレスシンでは、脱水素酵素活性を向上できなかったのに対して、スペルミジンやスペルミンでは、脱水素酵素活性を向上することができた。また、スペルミジンやスペルミンによって、アスコルビン酸よりも脱水素酵素活性を向上することができた。
【0076】
<実施例6>
<6.1.使用した細胞や試薬など>
細胞:ヒト脂肪由来間葉系幹細胞 hADSC(継代数:P16、10cmディッシュ、70%コンフル)
培地:MEM Alpha basic (1x)(gibco)(断り書きがない限り、10%FCS、および1%P-S含有)
細胞賦活化測定試薬:生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク株式会社製)
【0077】
<6.2.前培養>
hADSCの培養上清をアスピレート除去してPBS5mLで2回洗浄後、トリプシン-EDTA溶液を2mL添加したうえで、37℃で3~5分間インキュベートし、細胞をディッシュ底面からはがした。培地を等量添加したのち細胞を50mL遠心チューブへ合一し、遠心により細胞を回収した。上清除去後、培地適量で懸濁し、細胞計数を行った。細胞計数結果をもとに培地で8×10cells/mL細胞懸濁液を調製し、48ウェルプレートへ250μLずつ播種(2×10cells/well)し、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で一晩培養した。
【0078】
<6.3.試料添加および培養>
6.2.で前培養したプレートをCOインキュベーターから取り出し、プトレスシン、スペルミジン、スペルミンがそれぞれ単独で終濃度1μM、10μMおよび100μMとなるように添加済みの1%FCSおよび1%P-S含有培地で250μL/wellで置換した(各条件n=3)。その後、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で3日間培養した。ポリアミンを何も添加しない条件をコントロールとした。すなわち、プトレスシンもスペルミジンもスペルミンも添加しない条件をコントロールとした。
【0079】
<6.4.活性化率の算出>
3日間培養したプレートを取り出して上清除去後、10v/v% WST-8含有培地に250μL/wellで置換した。また、空ウェル3ウェルにも、10v/v% WST-8含有培地を250μLずつ添加した(Blank)。このプレートを、COインキュベーター(37℃、5.0%)内で2時間インキュベート後、450nmと600nmとの吸光度を測定した。その結果に基づいて、細胞賦活化作用、すなわち活性化率を実施例1に記載の方法(すなわち、1.5.に記載の方法)で算出した。コントロールの活性化率を100%として、ポリアミン添加条件の活性化率を図6Aに示す。
【0080】
<6.5.細胞一つあたりの活性化率の算出>
6.4.で吸光度の測定後、上清除去し、各ウェル中の細胞数を、実施例3に記載の方法(すなわち、3.5.に記載のDNAアッセイ)により見積もった。これにより算出した細胞数で活性化率を割り、細胞一つあたりの活性化率を求めた。コントロールの活性化率(すなわち、細胞一つあたりの活性化率)を100とした指数で、ポリアミン添加条件の活性化率を図6Bに示す。なお、指数が大きい程、細胞一つあたりの活性化率が高い。
【0081】
<6.6.コメント>
図6Aに示すように、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞たるhADSCにおいて、プトレスシンでは、脱水素酵素活性を向上できなかったのに対して、スペルミジンやスペルミンでは脱水素酵素活性を向上することができた。
図6Bに示すように、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞たるhADSCにおいて、プトレスシンでは、細胞一つあたりの活性化率を向上できなかったのに対して、スペルミジンやスペルミンでは、細胞一つあたりの活性化率を向上することができた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、間葉系幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、および骨細胞からなる群より選ばれる少なくとも一種を賦活化することができるため、産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B