(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082337
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20230607BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
H01L21/60 301A
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196043
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 知樹
【テーマコード(参考)】
4M109
5F044
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA04
4M109EA02
4M109GA01
5F044AA02
5F044AA07
5F044CC05
5F044FF03
(57)【要約】
【課題】封止樹脂の熱膨張に起因したボンディングワイヤの断線を抑制可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、基板と、半導体チップと、ボンディングワイヤと、封止樹脂とを備えている。基板は、主面を有する基材と、主面上に配置されている第1パッド及び第2パッドとを有している。半導体チップは、第2パッド上に配置されている。半導体チップは、第2パッドと対向している底面と、底面の反対面である上面とを有している。上面には、第3パッドが設けられている。ボンディングワイヤは、第1パッドに接合されている第1端と、第1端の反対側の端であり、かつ、第3パッドに接合されている第2端とを有している。ボンディングワイヤは、第1端にあり、かつ第1パッドに接合されているボール部と、ボール部に接続されている基端部とを有している。基端部は、半導体チップ側又は半導体チップとは反対側に向かって倒れている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、半導体チップと、ボンディングワイヤと、封止樹脂とを備え、
前記基板は、主面を有する基材と、前記主面上に配置されている第1パッド及び第2パッドとを有しており、
前記半導体チップは、前記第2パッド上に配置されており、
前記半導体チップは、前記第2パッドと対向している底面と、前記底面の反対面である上面とを有しており、
前記上面には、第3パッドが設けられており、
前記ボンディングワイヤは、前記第1パッドに接合されている第1端と、前記第1端の反対側の端であり、かつ前記第3パッドに接合されている第2端とを有しており、
前記ボンディングワイヤは、前記第1端にあり、かつ前記第1パッドに接合されているボール部と、前記ボール部に接続されている基端部とを有しており、
前記基端部は、前記半導体チップ側又は前記半導体チップとは反対側に向かって倒れており、
前記封止樹脂は、前記第1パッド、前記第2パッド、前記半導体チップ及び前記ボンディングワイヤを覆うように前記主面上に配置されている、半導体装置。
【請求項2】
平面視における前記半導体チップの面積を前記主面の面積で除した値は、0.4以上である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
平面視における前記半導体チップの面積を前記主面の面積で除した値は、0.5以上である、請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基端部は、前記半導体チップ側に向かって倒れている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記基端部の延在方向と前記主面とがなす角度は、前記第1端が接合されている前記第1パッドの部分及び前記第2端に接合されている前記第3パッドの部分を通る直線と前記主面とがなす角度よりも大きい、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記上面上にある前記封止樹脂の厚さを前記第1パッド上にある前記封止樹脂の厚さで除した値は、0.50以下である、請求項4又は請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記上面上にある前記封止樹脂の厚さを前記第1パッド上にある前記封止樹脂の厚さで除した値は、0.40以下である、請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ボンディングワイヤの25℃における引張強度は、前記ボンディングワイヤの250℃における引張強度の0.9倍以上である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ボンディングワイヤの250℃における引張強度は、120mN以上である、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ボンディングワイヤの250℃における伸びは、前記ボンディングワイヤの25℃における伸びよりも大きい、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-102600号公報(特許文献1)に記載の半導体装置は、基板と、半導体チップと、ボンディングワイヤと、封止樹脂とを有している。半導体チップは、例えば、フォトトランジスタである。
【0003】
基板は、基材と、第1パッド及び第2パッドとを有している。基材は、主面を有している。第1パッド及び第2パッドは、基材の主面上に配置されている。半導体チップは、底面と、上面とを有している。半導体チップは、底面が第2パッドと対向するように、第2パッド上に配置されている。半導体チップの上面には、第3パッドが設けられている。ボンディングワイヤは、第1端と第2端とを有しており、かつ第1端において第1パッドに接合されているとともに第2端において第3パッドに接合されている。封止樹脂は、第1パッド、第2パッド、半導体チップ及びボンディングワイヤを覆うように、基材の主面上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の半導体装置では、封止樹脂の熱膨張に起因して、ボンディングワイヤに断線が生じるおそれがある。本開示は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、封止樹脂の熱膨張に起因したボンディングワイヤの断線を抑制可能な半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体装置は、基板と、半導体チップと、ボンディングワイヤと、封止樹脂とを備えている。基板は、主面を有する基材と、主面上に配置されている第1パッド及び第2パッドとを有している。半導体チップは、第2パッド上に配置されている。半導体チップは、第2パッドと対向している底面と、底面の反対面である上面とを有している。上面には、第3パッドが設けられている。ボンディングワイヤは、第1パッドに接合されている第1端と、第1端の反対側の端であり、かつ、第3パッドに接合されている第2端とを有している。ボンディングワイヤは、第1端にあり、かつ第1パッドに接合されているボール部と、ボール部に接続されている基端部とを有している。基端部は、半導体チップ側又は半導体チップとは反対側に向かって倒れている。封止樹脂は、第1パッド、第2パッド、半導体チップ及びボンディングワイヤを覆うように主面上に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の半導体装置によると、封止樹脂の熱膨張に起因したボンディングワイヤの断線を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】
図4は、半導体装置100Aの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る半導体装置を説明する。第1実施形態に係る半導体装置を、半導体装置100とする。
【0011】
<半導体装置100の構成>
図1は、半導体装置100の平面図である。
図1中では、封止樹脂40の図示が省略されている。
図2は、
図1中のII-IIにおける断面図である。
図3は、
図2の部分的な拡大図である。
図1から
図3に示されるように、半導体装置100は、基板10と、半導体チップ20と、ボンディングワイヤ30と、封止樹脂40とを有している。
【0012】
基板10は、基材11と、パッド12、パッド13、パッド14及びパッド15と、導体層16及び導体層17とを有している。基材11は、主面11aと、主面11bとを有している。主面11a及び主面11bは、厚さ方向における基材11の端面である。主面11bは、主面11aの反対面である。基材11は、例えば、BT(Bismaleimide Triazine)レジンにより形成されている。基材11は、平面視において、矩形状である。
【0013】
パッド12及びパッド13は、主面11a上に配置されている。パッド12及びパッド13は、例えば、平面視において基材11の長手方向に沿って並んでいる。パッド14及びパッド15は、主面11b上に配置されている。パッド14及びパッド15は、それぞれ、平面視においてパッド12及びパッド13と重なるように配置されている。パッド12、パッド13、パッド14及びパッド15は、例えば、銅又は銅合金により形成されている。
【0014】
基材11には、貫通穴11c及び貫通穴11dが形成されている。貫通穴11c及び貫通穴11dは、基材11を厚さ方向に沿って貫通している。貫通穴11cは平面視においてパッド12及びパッド14と重なるように配置されており、貫通穴11dは平面視においてパッド13及びパッド15と重なるように配置されている。導体層16及び導体層17は、それぞれ、貫通穴11c及び貫通穴11dに埋め込まれている。導体層16は、パッド12とパッド14とを電気的に接続している。導体層17は、パッド13とパッド15とを電気的に接続している。導体層16及び導体層17は、例えば、銅又は銅合金により形成されている。
【0015】
半導体チップ20は、例えば、フォトトランジスタが形成されている半導体チップである。但し、半導体チップ20は、これに限られるものではない。半導体チップ20の半導体基板は、例えば、単結晶シリコンにより形成されている。半導体チップ20の半導体基板は、シリコンよりも熱膨張率が低い材料(例えば、ガリウムヒ素)により形成されていてもよい。
【0016】
半導体チップ20は、底面20aと、上面20bとを有している。底面20a及び上面20bは、厚さ方向における半導体チップ20の端面である。上面20bは、底面20aの反対面である。半導体チップ20は、底面20aがパッド13と対向するように、パッド13上に配置されている。半導体チップ20は、パッド21を有している。パッド21は、上面20bに設けられている。パッド21は、例えば銅又は銅合金により形成されている。図示されていないが、半導体チップ20は、裏面に設けられている裏面電極をさらに有している。
【0017】
半導体チップ20とパッド13との間には、接続層22が配置されている。接続層22により、半導体チップ20が、基板10(パッド13)に電気的及び機械的に接続されている。接続層22は、例えば、導電性接着剤により形成されている。
【0018】
平面視における半導体チップ20の面積を、面積S1とする。主面11aの面積を、面積S2とする。面積S1を面積S2で除した値は、0.4以上であることが好ましい。面積S1を面積S2で除した値は、0.5以上であることがさらに好ましい。
【0019】
ボンディングワイヤ30は、第1端30aと、第2端30bとを有している。ボンディングワイヤ30は、第1端30aにおいて、パッド12に接合されている。第2端30bは、第1端30aの反対側の端である。ボンディングワイヤ30は、第2端30bにおいて、パッド21に接合されている。なお、ボンディングワイヤ30は、第1端30aにおいてパッド12に接合された後に、第2端30bにおいてパッド21に接合される。
【0020】
ボンディングワイヤ30は、ボール部31と、ワイヤ部32とを有している。ボール部31は、第1端30aにある。ボンディングワイヤ30は、ボール部31において、パッド12に接合されている。ワイヤ部32は、ボール部31から延在しているボンディングワイヤ30の部分である。ボール部31側にあるワイヤ部32の端部が、基端部33である。なお、ボール部31と基端部33との境界を、ボンディングワイヤ30のネック部ということがある。
【0021】
基材11の幅方向(基材11の長手方向に直交する方向)における断面視において、基端部33の延在方向と主面11aとのなす角度を、角度θ1とする。角度θ1は、鋭角である(90°未満である)。このことを別の観点から言えば、基端部33は、半導体チップ20側へと倒れている。基材11の幅方向に直交する断面視において、第1端30aが接合されているパッド12の部分及び第2端30bが接合されているパッド21の部分を通る直線を、直線Lとする。基材11の幅方向に直交する断面視において、直線Lと主面11aとのなす角度を、角度θ2とする。角度θ1は、角度θ2よりも大きいことが好ましい。
【0022】
ボンディングワイヤ30は、例えば、金又は金合金により形成されている。250℃におけるボンディングワイヤ30の引張強度は、120mN以上であることが好ましい。250℃におけるボンディングワイヤ30の引張強度は、室温(25℃)におけるボンディングワイヤ30の引張強度の0.9倍以上であることが好ましい。ボンディングワイヤ30の引張強度は、引張試験機により測定される。250℃におけるボンディングワイヤ30の伸びは、室温におけるボンディングワイヤ30の伸びよりも大きいことが好ましい。ボンディングワイヤ30の伸びは、引張試験機により測定される。
【0023】
封止樹脂40は、パッド12、パッド13、半導体チップ20及びボンディングワイヤ30を覆うように、主面11a上に配置されている。封止樹脂40は、例えば、透明樹脂により形成されている。封止樹脂40の具体例としては、エポキシ樹脂が挙げられる。封止樹脂40の熱膨張率は、例えば、基材11の熱膨張率よりも大きい。
【0024】
パッド12上にある封止樹脂40の厚さを、厚さT1とする。上面20b上にある封止樹脂40の厚さを、厚さT2とする。厚さT2を厚さT1で除した値は、0.5以下であることが好ましい。厚さT2を厚さT1で除した値は、0.4以下であることがさらに好ましい。
【0025】
<半導体装置100の効果>
以下に、半導体装置100の効果を説明する。
【0026】
半導体装置100は、使用中に、温度サイクルを受けることがある。封止樹脂40の熱膨張率は、基材11の熱膨張率よりも大きい。そのため、半導体装置100では、温度サイクルを受けた際に、封止樹脂40の熱膨張と基材11の熱膨張との差に起因して、ボンディングワイヤ30が、ボンディングワイヤ30と半導体チップ20との間(以下「ポケット部」ということがある)にある封止樹脂40の部分から、半導体チップ20とは反対側に向く応力を受ける。
【0027】
封止樹脂40の多くの部分がボンディングワイヤ30の周囲に集中している場合(より具体的には、面積S1を面積S2で除した値が0.4又は0.5以上である場合、厚さT2を厚さT1で除した値が0.5以下又は0.4以下である場合)には、封止樹脂40の熱膨張の多くがボンディングワイヤ30の周囲に集中してしまうため、上記の応力が特に大きくなる。
【0028】
しかしながら、半導体装置100では、基端部33が半導体チップ20側に倒れているため、ポケット部にある封止樹脂40の部分が小さくなる。その結果、半導体装置100によると、ポケット部にある封止樹脂40の部分からボンディングワイヤ30に作用する応力が小さくなり、封止樹脂40の熱膨張に起因したボンディングワイヤ30の断線を抑制可能である。
【0029】
半導体装置100では、基端部33が半導体チップ20側に倒れているため、ボンディングワイヤ30のループ高さ(ボンディングワイヤの30のループの頂点とパッド12の上面との間の距離)が小さくなり、厚さT1を小さくしてもボンディングワイヤ30が封止樹脂40から露出しにくくなる。すなわち、半導体装置100によると、半導体装置100を低背化しつつ、封止樹脂40の熱膨張に起因したボンディングワイヤ30の断線を抑制可能である。
【0030】
250℃におけるボンディングワイヤ30の引張強度が室温におけるボンディングワイヤ30の引張強度の0.9倍以上である場合、封止樹脂40が熱膨張した際でもボンディングワイヤ30の引張強度が維持されているため、半導体装置100が温度サイクルを受けた際にボンディングワイヤ30の断線をさらに抑制可能である。250℃におけるボンディングワイヤ30の伸びが室温におけるボンディングワイヤ30の伸びよりも大きい場合、封止樹脂40が熱膨張した際でもボンディングワイヤ30の変形能が維持されているため、封止樹脂40の膨張に追従してボンディングワイヤ30が変形可能であり、封止樹脂40の熱膨張に起因したボンディングワイヤ30の断線をさらに抑制可能である。
【0031】
角度θ1が角度θ2以下である場合、ボンディングワイヤ30のネック部に負荷が加わりやすい。そのため、角度θ1を角度θ2よりも大きくすることにより、ボンディングワイヤ30のネック部において断線が生じることを抑制可能である。
【0032】
<第1温度サイクル試験>
半導体装置100の効果を確認するため、第1温度サイクル試験を行った。第1温度サイクル試験には、サンプル1及びサンプル2が供された。サンプル1では、基端部33が半導体チップ20側に倒れている。すなわち、サンプル1は、半導体装置100に対応している。サンプル2は、角度θ1が90°になっている点を除き、サンプル1と同一の構成になっている。
【0033】
第1温度サイクル試験の温度サイクルは、-40℃で30分間の保持、25℃で10分間の保持、100℃で30分間の保持及び25℃で10分間の保持を順次行うことが、1サイクルとされた。また、第1温度サイクル試験の前処理として、100℃で24時間のベーキングが行われ、湿度60パーセントの環境下における60℃で40時間の保持が行われ、基板への実装リフローが行われた。第1温度サイクル試験には、25個のサンプル1及び25個のサンプル2が用いられた。
【0034】
表1には、第1温度サイクル試験の結果が示されている。表1に示されるように、第1温度サイクル試験では、300サイクルの温度サイクルが加えられた時点で、5個のサンプル2にボンディングワイヤ30の細りが確認された。500サイクルの温度サイクルが加えられた時点で、3個のサンプル2にボンディングワイヤ30の細りが確認され、3個のサンプル2にボンディングワイヤ30の断線が確認された。
【0035】
他方で、500サイクルの温度サイクルが加えられた時点でも、ボンディングワイヤ30に細り又は断線が確認されたサンプル1の数は、0個であった。この比較から、基端部33を半導体チップ20側に倒すことにより封止樹脂40の熱膨張に起因したボンディングワイヤ30の断線を抑制可能であることが、明らかになった。
【0036】
【0037】
<第2温度サイクル試験>
250℃におけるボンディングワイヤ30の引張強度が室温におけるボンディングワイヤ30の引張強度の0.9倍以上であることを、条件Aとする。250℃におけるボンディングワイヤ30の伸びが室温におけるボンディングワイヤ30の伸びよりも大きいことを、条件Bとする。条件A又は条件Bを満たすことによる効果を確認するため、第2温度サイクル試験が行われた。第2温度サイクル試験には、サンプル3からサンプル5が供された。サンプル3からサンプル5は、半導体装置100に対応している。なお、第2温度サイクル試験は、第1温度サイクル試験と同様の方法により行われた。
【0038】
サンプル3のボンディングワイヤ30は、室温における引張強度が80mNであり、250℃における引張強度が38mNである。サンプル3のボンディングワイヤは、室温における伸びが4.1パーセントであり、250℃における伸びが4.6パーセントである。そのため、サンプル3のボンディングワイヤ30は、条件Bを満たしているが、条件Aを満たしていない。
【0039】
サンプル4のボンディングワイヤ30は、室温における引張強度が136mNであり、250℃における引張強度が124mNである。サンプル4のボンディングワイヤは、室温における伸びが4.6パーセントであり、250℃における伸びが1.7パーセントである。そのため、サンプル4のボンディングワイヤ30は、条件Aを満たしているが、条件Bを満たしていない。
【0040】
サンプル5のボンディングワイヤ30は、室温における引張強度が106mNであり、250℃における引張強度が83mNである。サンプル5のボンディングワイヤは、室温における伸びが4.6パーセントであり、250℃における伸びが1.8パーセントである。そのため、サンプル5のボンディングワイヤ30は、条件A及び条件Bのいずれも満たしていない。
【0041】
第2温度サイクル試験の結果が、表2に示されている。表2に示されるように、サンプル3及びサンプル4では、細りの確認されたボンディングワイヤ30の数及び断線の確認されたボンディングワイヤ30の数が、サンプル5よりも少なかった。この比較から、条件A及び条件Bのいずれかが満たされることにより封止樹脂40の熱膨張に起因したボンディングワイヤ30の断線を抑制可能であることが、明らかになった。
【0042】
また、サンプル4では、細りの確認されたボンディングワイヤ30の数及び断線の確認されたボンディングワイヤ30の数が、サンプル3よりも少なかった。この比較から、条件Aが満たされることにより封止樹脂40の熱膨張に起因したボンディングワイヤ30の断線を抑制可能であることが、明らかになった。
【0043】
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る半導体装置を説明する。第2実施形態に係る半導体装置を、半導体装置100Aとする。ここでは、半導体装置100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0045】
<半導体装置100Aの構成>
以下に、半導体装置100Aの構成を説明する。
【0046】
図4は、半導体装置100Aの断面図である。
図4には、
図3に対応する位置における断面が示されている。
図5は、
図4の部分的な拡大図である。
図4及び
図5に示されるように、半導体装置100Aは、基板10と、半導体チップ20と、ボンディングワイヤ30と、封止樹脂40とを有している。この点に関して、半導体装置100Aの構成は、半導体装置100の構成と共通している。
【0047】
半導体装置100Aでは、角度θ1が鈍角になっている。すなわち、半導体装置100Aでは、基材11の幅方向に直交する断面視において、基端部33が、半導体チップ20とは反対側に倒れている。この点に関して、半導体装置100Aの構成は、半導体装置100の構成と共通している。なお、半導体装置100Aでは、ボンディングワイヤ30が封止樹脂40から露出することを避けるため、厚さT2を厚さT1で除した値が0.5を超えていてもよい。
【0048】
<半導体装置100Aの効果>
以下に、半導体装置100Aの効果を説明する。
【0049】
半導体装置100Aでは、基端部33が半導体チップ20とは反対側に倒れていることにより、ボンディングワイヤ30のループ高さが高くなっているとともに、ボンディングワイヤ30が長くなっている。そのため、半導体装置100Aによると、封止樹脂40の膨張に追従してボンディングワイヤ30が変形しやすく、封止樹脂40の熱膨張に起因したボンディングワイヤ30の断線を抑制可能である。
【0050】
<第3温度サイクル試験>
半導体装置100Aの効果を確認するため、第3温度サイクル試験が行われた。第3温度サイクル試験には、サンプル6及びサンプル7が供された。サンプル6では、基端部33が半導体チップ20とは反対側に倒れている。すなわち、サンプル6は、半導体装置100Aに対応している。サンプル7は、角度θ1が90°になっている点を除き、サンプル6と同一の構成になっている。サンプル7は、第1温度サイクル試験におけるサンプル2と同一のサンプルである。なお、第3温度サイクル試験は、第1温度サイクル試験と同様の方法により行われた。
【0051】
表3には、第3温度サイクル試験の結果が示されている。表3に示されるように、第3温度サイクル試験では、300サイクルの温度サイクルが加えられた時点で、5個のサンプル7にボンディングワイヤ30の細りが確認された。500サイクルの温度サイクルが加えられた時点で、3個のサンプル7にボンディングワイヤ30の細りが確認され、3個のサンプル2にボンディングワイヤ30の断線が確認された。
【0052】
他方で、500サイクルの温度サイクルが加えられた時点でも、ボンディングワイヤ30に細り又は断線が確認されたサンプル6の数は、0個であった。この比較から、基端部33を半導体チップ20とは反対側に倒すことにより封止樹脂40の熱膨張に起因したボンディングワイヤ30の断線を抑制可能であることが、明らかになった。
【0053】
【0054】
以上のように本開示の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0055】
100,100A 半導体装置、10 基板、11 基材、11a,11b 主面、11c,11d 貫通穴、12,13,14,15 パッド、16,17 導体層、20 半導体チップ、20a 底面、20b 上面、21 パッド、22 接続層、30 ボンディングワイヤ、30a 第1端、30b 第2端、31 ボール部、32 ワイヤ部、33 基端部、40 封止樹脂、L 直線、T1,T2 厚さ。