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特開2023-82381硬化性シリコーン組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082381
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/045 20160101AFI20230607BHJP
【FI】
C08G75/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021196115
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520070769
【氏名又は名称】デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヘ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】竹内 絢哉
(72)【発明者】
【氏名】竹内 香須美
【テーマコード(参考)】
4J030
【Fターム(参考)】
4J030BA03
4J030BB07
4J030BC32
4J030BF07
4J030BG08
4J030BG25
(57)【要約】
【課題】迅速に硬化し、低い粘度を有し、十分な保存安定性を有し、高い硬度を有する硬化物を形成できる硬化性シリコーン組成物を提供すること
【解決手段】(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン;
(B)一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つのメルカプト官能性オルガノポリシロキサン;
(C)少なくとも1つの光重合開始剤;及び
(D)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT);を含み、
25℃で200mPa・s未満の粘度を有する、硬化性シリコーン組成物により、上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン;
(B)一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つのメルカプト官能性オルガノポリシロキサン;
(C)少なくとも1つの光重合開始剤;及び
(D)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT);を含み、
25℃で200mPa・s未満の粘度を有する、硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが、少なくとも1つの環状オルガノポリシロキサンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記環状オルガノポリシロキサンは、式(I):(RSiO)(式中、Rは同じか又は異なる、少なくとも1つのハロゲンで置換されていてもよい一価炭化水素基であり、一分子中少なくとも2つのRはアルケニル基を表し、mは4~50の整数である)で表される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合有機基の合計量に対して、20モル%以上80モル%以下の量のアルケニル基を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、成分(A)の総量に対して、50質量%以上の量の一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する環状オルガノポリシロキサンを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、組成物の総量に対して、10質量%以下の量の直鎖状オルガノポリシロキサン、分岐状オルガノポリシロキサン、及び/又はレジン状オルガノポリシロキサンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンが、ケイ素原子結合有機基の合計量に対して、10モル%以上80モル%以下の量のチオール基を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、(メルカプトプロピル)メチルシロキサンホモポリマー及び/又はMTSHQレジンを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、組成物の総質量に対して、10質量%以上70質量%以下の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、組成物の総質量に対して、30質量%以上90質量%以下の量で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物中に含まれるアルケニル基に対するチオール基のモル比が、0.5以上2.0以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記(C)光重合開始剤は、以下:
(c-1)α-ヒドロキシアセトフェノン
(c-2)α-ヒドロキシアセトフェノンとα-アミノアルキルフェノンの組み合わせ、又は
(c-3)α-ヒドロキシアセトフェノンとモノアシルホスフィンオキシドとの組み合わせ
を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物により形成された、封止剤又はシートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性シリコーン組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、撥水性、及び透明性を有する硬化物を形成することから、幅広い産業分野で利用されている。こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物は、他の有機材料と比較し変色しにくく、また、耐久性等の物理的物性の低下が小さいため、発光ダイオード(LED)等の光学材料の封止剤としても適している。
【0003】
硬化性シリコーン組成物の中でも、UV硬化性シリコーン組成物は、硬化性シリコーン組成物の硬化のための加熱に起因する問題を回避できるため、いくつかの製品で用いられている。UV硬化性シリコーン組成物において、硬化物に高い硬度をもたらすことができるため、メルカプト官能性化合物が配合される。
【0004】
これまで、メルカプト官能性化合物を含むUV硬化性シリコーン組成物のいくつかの出願が公開されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、組成物であって、(A)単位式[(CHSiO1/2[(CHSiO][R(CH)SiO]を有し、式中、xは約0.01~約0.1であり、yは約0~約0.94であり、zは約0.05~約0.99であり、Rはそれぞれ独立してメルカプト(C1~30)ヒドロカルビル基である、メルカプト官能性ポリオルガノシロキサン;(B)(B1)少なくとも2個の脂肪族不飽和炭素-炭素結合を含むポリオルガノシロキサン、及び(B2)少なくとも2個の脂肪族不飽和炭素-炭素結合を含む有機分子のうちの少なくとも1つ;(C)充填剤;並びに(D)光開始剤;を含み、前記組成物が剪断薄化性かつUV硬化性である組成物が記載されている。
【0006】
また、引用文献2には、(A)特定の脂肪族不飽和基を含有する直鎖状ポリオルガノシロキサン;(B)23℃における粘度が10~10,000cPである、ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を含有するポリオルガノシロキサン;(C)2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキシド及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキシドからなる群より選ばれるアシルフォスフィンオキシド化合物;(D)3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルベンゼンプロピオン酸のC~Cアルキルエステルからなる群より選ばれるベンゾトリアゾール化合物;並びに(E)ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートからなる群より選ばれるヒンダードアミン化合物を含み、(A)中の脂肪族不飽和基数に対する、(B)中のメルカプトアルキル基の個数の比が、0.1~10、(A)~(E)の合計100重量%中、(C)が0.08~0.25重量%、(D)が0.5~5.0重量%、(E)が0.1~0.5重量%である、紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、(A)23℃における粘度が50~100,000mPa・sであり、一分子中、炭素数2~12のアルケニル基を少なくとも2個有し、メルカプトアルキル基を有さない直鎖状オルガノポリシロキサン、(B)23℃における粘度が10~10,000mPa・sであり、一分子中、メルカプトアルキル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のメルカプトアルキル基が0.2~3モルとなる量}、(C)式:RSiO3/2(式中、Rは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、水酸基、または炭素数1~6のアルコキシ基である。)で表されるシロキサン単位および/または式:SiO4/2で表されるシロキサン単位を含み、(C)成分中の全シロキサン単位に対する式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位および式:SiO4/2で表されるシロキサン単位のモル比が少なくとも0.5であり、アルケニル基およびメルカプトアルキル基を有さない分岐鎖状オルガノポリシロキサン、(D)リン原子を含有する光ラジカル開始剤、および(E)ヒンダードフェノール化合物を含み、(A)成分~(E)成分の合計100質量部に対して、(C)成分の含有量が25~80質量部であり、(D)成分の含有量が0.01~1.0質量部であり、(E)成分の含有量が0.001~1.0質量部である光硬化性液状シリコーン組成物が記載されている。
【0008】
しかしながら、メルカプト官能性化合物を含む従来の硬化性シリコーン組成物において、組成物の粘度が高すぎし、組成物の硬化物の硬度が不十分であるという問題点がある。また、メルカプト官能性化合物は一般的に反応性が高いため、メルカプト官能性化合物を含む従来の硬化性シリコーン組成物は十分に安定ではなく、重合反応プロセスを開始する前の保管中に組成物のゲル化が起こるか、粘度が上昇してしまう問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公報第9,732,239号
【特許文献2】特許公開公報第2016-060782号
【特許文献3】米国特許公開公報第2020/0032111号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、迅速に硬化し、低い粘度を有し、十分な保存安定性を有し、高い硬度を有する硬化物を形成できる硬化性シリコーン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記本発明の目的は、
(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン;
(B)一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つのメルカプト官能性オルガノポリシロキサン;
(C)少なくとも1つの光重合開始剤;及び
(D)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT);を含み、
25℃で200mPa・s未満の粘度を有する、硬化性シリコーン組成物により、達成できる。
【0012】
前記(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、少なくとも1つの環状オルガノポリシロキサンを含み得る。
【0013】
前記環状オルガノポリシロキサンは、以下の式(I):(RSiO)(式中、Rは同じか又は異なる、少なくとも1つのハロゲンで置換されていてもよい一価炭化水素基であり、一分子中少なくとも2つのRはアルケニル基を表し、mは4~50の整数である)で表され得る。
【0014】
前記(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合有機基の合計量に対して、20モル%以上80モル%以下の量のアルケニル基を有し得る。
【0015】
前記(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、成分(A)の総量に対して、50質量%以上の量の一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する環状オルガノポリシロキサンを含み得る。
【0016】
前記(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、組成物の総量に対して、10質量%以下の量の直鎖状オルガノポリシロキサン、分岐状オルガノポリシロキサン、及び/又はレジン状オルガノポリシロキサンを含んでもよく、又は、前記(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、直鎖状オルガノポリシロキサン、分岐鎖状オルガノポリシロキサン、及び/又はレジン状オルガノポリシロキサンを含まない。
【0017】
前記(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合有機基の合計量に対して、10モル%以上80モル%以下の量のチオール基を有し得る。
【0018】
前記(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、(メルカプトプロピル)メチルシロキサンホモポリマー及び/又はMTSHQレジンを含み得る。
【0019】
前記(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、組成物の総質量に対して、10質量%以上70質量%以下の量で存在し得る。
【0020】
前記(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、組成物の総質量に対して、30質量%以上90質量%以下の量で存在し得る。
【0021】
組成物中に含まれるアルケニル基に対するチオール基のモル比が、0.5以上2.0以下であり得る。
【0022】
前記(C)光重合開始剤は、以下:
(c-1)α-ヒドロキシアセトフェノン
(c-2)α-ヒドロキシアセトフェノンとα-アミノアルキルフェノンの組み合わせ、又は
(c-3)α-ヒドロキシアセトフェノンとモノアシルホスフィンオキシドとの組み合わせ
を含み得る。
【0023】
本発明はまた、本発明の硬化性シリコーン組成物により形成された、封止剤又はシートフィルムに関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、迅速に硬化し、低い粘度を示し、硬化した場合に高い硬度を有する速硬性シリコーン組成物を提供できる。さらに、本発明の硬化性シリコーン組成物は、十分な保存安定性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
鋭意検討した結果、本発明者らは、驚くべきことに、上記成分(A)~(D)の組み合わせにより、速硬性で、低粘性で、保存安定性が良好なシリコーン組成物が得られることを見出した。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、上記組成物が、高い硬度を有する硬化物を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0026】
そのため、本発明に係る組成物は、
(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン;
(B)一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つのメルカプト官能性オルガノポリシロキサン;
(C)少なくとも1つの光重合開始剤;及び
(D)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT);を含み、
25℃で200mPa・s未満の粘度を有する、硬化性シリコーン組成物である。
【0027】
以下、本発明の組成物、方法、及び使用をより詳細に説明する。
【0028】
[硬化性シリコーン組成物]
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン、(B)一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つのメルカプト官能性オルガノポリシロキサン、(C)少なくとも1つの光重合開始剤、及び、(D)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含む。
【0029】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、低い粘度を有する。特に、硬化性シリコーン組成物は、25℃で200mPa・s未満の粘度を有する。好ましくは、硬化性シリコーン組成物は、25℃で175mPa・s未満の粘度を有し、より好ましくは、150mPa・s未満の粘度を有する。本明細書において、粘度は、Antonpaar社製のレオメータを用いて、2度の角度の40mmコーンプレートを用いて、20/sのせん断速度で測定できる。
【0030】
以下に各成分をより詳細に説明する。
【0031】
(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、成分(A)として、一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンを含む。本発明に係る組成物は、1種類の(A)オルガノポリシロキサンを含んでもよいし、2種類以上の(A)オルガノポリシロキサンを組み合わせて含んでもよい。
【0032】
(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、直鎖状、分岐状、一部分岐状、環状、又はレジン状構造を有し得る。用語「直鎖状」は、本明細書において、オルガノポリシロキサンが分子において直鎖構造を有し、分岐鎖又は分岐構造有さないことを意味する。本明細書において、レジン状とは、オルガノポリシロキサンが分子中に分岐状または三次元網状構造を有することを意味する。好ましくは、(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、環状構造を有する
【0033】
(A)成分に含まれるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。
【0034】
(A)成分に含まれるアルケニル基以外のケイ素原子結合基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等のC1~12アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のC6~12アリール基;ベンジル基;フェネチル基及びフェニルプロピル基等のC7~12アラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。なお、(A)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が結合してもよい。アルケニル基以外のケイ素原子に結合する基は、好ましくは、C1~12アルキル基、特にメチル基を含む。成分(A)は、如何なるチオール基も含まなくてよい。
【0035】
本発明の好適な一実施形態において、(A)一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、以下の式(I)
平均構造式(I):(RSiO)
(式中、Rは同じか又は異なる、少なくとも1つのハロゲンで置換されていてもよい一価炭化水素基であり、一分子中少なくとも2つのRはアルケニル基を表し、mは、環状オルガノポリシロキサンが25℃で100mPa・s未満の粘度を有するような整数である)で表され得る環状オルガノポリシロキサンを含む。
【0036】
式(I)において、Rの少なくとも1個のハロゲンで置換されていてもよい一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等のC1~12アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のC6~12アリール基;ベンジル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基等の炭素数がC2~12アルケニル基;フェネチル基及びフェニルプロピル基等のC7~12アラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。Rにおける一価炭化水素基は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を含んでいてもよい。Rにおける一価炭化水素基は、好ましくは、C1~12アルキル基、特にメチル基、C2~12アルケニル基、特にビニル基を表す。
【0037】
式(I)において、mは、4~50、好ましくは4~30、より好ましくは4~20、さらにより好ましくは4~10、特に4~8の整数であり得る。
【0038】
成分(A)は、低い重量平均分子量(g/mol)を有する。例えば、成分(A)の重量平均分子量は、好ましくは3,000以下、より好ましくは2,000以下、さらに好ましくは1,000以下であり、特に500以下である。成分(A)の重量平均分子の下限値は、特に限定されないが、例えば100以上である。重量平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により測定可能である。
【0039】
(A)オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基の合計量に対するアルケニル基の量は、特に限定されないが、ケイ素原子結合有機基の合計量に対して、例えば、20モル%以上、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、特に45モル%以上であり、通常80モル%以下、好ましくは70モル%以下、より好ましくは60モル%以下、特に55モル%以下である。アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析法、または以下の滴定法等の測定法によって測定することができる。
【0040】
滴定法により各成分中のアルケニル基量を定量する方法について説明する。オルガノポリシロキサン成分中のアルケニル基含有量は、ウイス法として一般的に知られる滴定方法により精度よく定量することができる。原理を下記に述べる。まずオルガノポリシロキサン原料中のアルケニル基と一塩化ヨウ素とを式(1)に示すように付加反応させる。次に式(2)に示される反応により、過剰の一塩化ヨウ素をヨウ化カリウムと反応させヨウ素として遊離させる。次に遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。
式(1)CH=CH- + 2ICl → CHI-CHCl- + ICl(過剰)
式(2)ICl+KI → I + KCl
滴定に要したチオ硫酸ナトリウムの量と、別途作成したブランク液との滴定量の差から、成分中のアルケニル基量を定量することができる。
【0041】
本発明の一実施形態において、(A)成分は、成分(A)の総量に基づいて、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、優先的に90質量%以上、特に95質量%以上の量の一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する環状オルガノポリシロキサンを含む。
【0042】
本発明の一実施形態において、(A)成分は、組成物の総量に基づいて、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に1質量%以下の量の直鎖状オルガノポリシロキサン、分岐状オルガノポリシロキサン、及び/又はレジン状オルガノポリシロキサンを含む。
【0043】
本発明の別の実施形態において、(A)成分は、直鎖状オルガノポリシロキサン、分岐鎖状オルガノポリシロキサン、及び/又はレジン状オルガノポリシロキサンを含まない。この実施形態において、(A)成分は、一分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する環状オルガノポリシロキサンのみからなる。
【0044】
(A)オルガノポリシロキサンは、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上の量で存在することができ、また、70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下の量で存在し得る。
【0045】
(B)一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有するメルカプト官能性オルガノポリシロキサン
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、成分(B)として、一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する、少なくとも1つのメルカプト官能性オルガノポリシロキサンを含む。本発明に係る組成物は、1種類の(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンを含んでもよいし、2種類以上の(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンを組み合わせて含んでもよい。
【0046】
メルカプト官能性オルガノポリシロキサンの構造は、直鎖状、分岐状、一部分岐状、環状、又はレジン状であり得る。本発明の好適な一態様において、メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、直鎖状又は分岐状の構造を有する。
【0047】
メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、一分子当たり少なくとも2つのチオール基を有する。メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、ポリマー鎖の末端にチオール基を有してもよいし、ポリマー鎖の末端以外のケイ素原子、すなわち、ペンダント基としてチオール基を有してもよい。本発明の好適な一実施形態において、メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、ポリマー鎖の末端以外のケイ素原子、すなわち、ペンダント基としてチオール基を有し、ポリマー鎖の末端にチオール基を有さない。
【0048】
メルカプト官能性オルガノポリシロキサンに含まれるチオール基以外の他のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等のC1~12アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のC6~12アリール基;ベンジル基;フェネチル基及びフェニルプロピル基等のC7~12アラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられ得る。チオール基以外のケイ素原子結合有機基は、好ましくは、C1~12アルキル基、特にメチル基を含む。
【0049】
(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基の合計量に対するチオール基の量は、特に限定されないが、ケイ素原子結合有機基の合計量に対して、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、通常80モル%以下、好ましくは65モル%である。チオール基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)又は核磁気共鳴(NMR)等の分析法によって測定することができる。
【0050】
(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、25℃で、30cSt以上、好ましくは50cSt以上、より好ましくは70cSt以上の粘度を有してもよく、20,000cSt以下、好ましくは17,500cSt以下、より好ましくは15,000cSt以下の粘度を有し得る。当該シリコーンの粘度は、標準ASTM D-445に従って測定できる。
【0051】
メルカプト官能性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量(Mw,g/mol)は、特に限定されないが、通常500以上、好ましくは1,000以上であり、通常30,000以下、好ましく20,000以下、より好ましくは15,000以下、さらに好ましくは10,000以下である。重量平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)により測定可能である。
【0052】
本発明の好適な一実施形態において、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは架橋構造又は3次元網目構造を含まない、分岐状ポリマーである。(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンの分岐状ポリマーの好ましい例として、(メルカプトプロピル)メチルシロキサンホモポリマーに言及でき、この化合物は以下の式(II)で表され得る:
【化1】
【0053】
式中、nは5~200、好ましくは10~150、より好ましくは15~100、さらにより好ましくは20~85の整数である。
【0054】
(メルカプトプロピル)メチルシロキサンホモポリマーの市販製品として、Gelest社から販売されているSMS-992が挙げられる。
【0055】
本発明の特定の実施形態において、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンが分岐状ポリマーである場合、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基の合計量に対するチオール基の量は、15モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、通常80モル%以下、好ましくは65モル%以下である。
【0056】
本発明の別の実施形態において、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、レジン状であり得る。
【0057】
本発明の一実施形態において、(B)レジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、以下の式(III)で表され得る:
平均単位式(III):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
式中、Rは、場合により少なくとも1つのハロゲンで置換されていてもよい同じか又は異なる一価炭化水素基又はチオール基であり、ただし、一分子当たり少なくとも2つのRはチオール基であり;Xは水素原子又はアルキル基を表し;0≦a<1、0≦b<1、0≦c<0.95、0≦d<0.9、0≦e<0.4、a+b+c+d=1.0及びc+d>0を満たす。
【0058】
式(III)において、Rの少なくとも1個のハロゲンで置換されていてもよい一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等のC1~12アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のC6~12アリール基;ベンジル基;フェネチル基及びフェニルプロピル基等のC7~12アラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。好ましくは、一価炭化水素基は、C1~12アルキル基、特にメチル基を含む。
【0059】
式(III)において、Xはハロゲン原子又はアルキル基を表す。Xにおけるアルキル基は、好ましくは、C1~3アルキル基、例えばメチル基、エチル基、又はプロピル基を表す。
【0060】
本発明の一実施形態において、式(III)において、aは、好ましくは0.1≦a≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.2≦a≦0.65の範囲であり、さらにより好ましくは0.3≦a≦0.5の範囲である。上記式(III)において、bは、好ましくは0≦b≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.3の範囲であり、さらにより好ましくは0≦b≦0.1の範囲である。上記式(III)において、cは、好ましくは0.1≦c≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.2≦c≦0.65の範囲であり、さらにより好ましくは0.3≦c≦0.5の範囲である。上記式(III)において、dは、好ましくは0.05≦d≦0.5の範囲であり、より好ましくは0.1≦d≦0.4の範囲であり、さらにより好ましくは0.1≦d≦0.3の範囲である。上記式(III)において、eは、好ましくは0≦e≦0.2の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.1の範囲であり、さらにより好ましくは0≦e≦0.05の範囲である。
【0061】
本発明の別の実施形態において、(B)レジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、以下の式(III’)で表され得る:
平均単位式(III’):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
式中、Rは、場合により少なくとも1つのハロゲンで置換されていてもよい同じか又は異なる一価炭化水素基であり;Rはチオール基であり;Xは水素原子又はアルキル基を表し;0≦a<1、0≦b<1、0<c<0.95、0≦d<0.9、0≦e<0.4、及びa+b+c+d=1.0を満たし、前記オルガノポリシロキサンは、一分子当たり少なくとも2つのR基を有する。
【0062】
式(III)中の一価炭化水素、X、a、b、c、d、及びeについての説明は、式(III’)に適用できる。
【0063】
一実施形態において、式(III)又は式(III’)により表されるレジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、(SiO2/2)で表されるD単位を含まない。別の実施形態において、式(III’)により表されるレジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、MTSHQレジンであり得る。
【0064】
レジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサンの市販の製品としては、以下が挙げられる:
式M42SH 4117で表される、レジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサン、及び
式M44SH 4212で表される、レジン状メルカプト官能性オルガノポリシロキサン。
【0065】
本発明の特定の実施形態において、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンがレジン状である場合、(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基の合計量に対するチオール基の量は、5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、通常35モル%以下、好ましくは25モル%以下である。
【0066】
(B)メルカプト官能性オルガノポリシロキサンは、組成物の総質量に対して、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらにより好ましくは50質量%以上、特に60質量%以上の量で存在することができ、また、90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらにより好ましくは75質量%以下の量で存在し得る。
【0067】
本発明の硬化性シリコーン組成物中に含まれるアルケニル基に対するチオール基のモル比は、0.5以上、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.8以上、さらにより好ましくは0.85以上であることができ、また、5.0以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、さらにより好ましくは1.5以下、特に1.2以下であり得る。
【0068】
(C)光重合開始剤
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、成分(C)として、少なくとも1つの光重合開始剤を含む。本発明に係る組成物は、1種類の(C)光重合開始剤を含んでもよいし、2種類以上の(C)光重合開始剤を組み合わせて含んでもよい。
【0069】
(C)光重合開始剤の種類は、光重合開始剤が本発明のオルガノポリシロキサン成分中に溶解する限り、特に限定されない。(C)光重合開始剤は、アルキルフェノン型光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤、分子内水素引き抜き型光重合開始剤、及びオキシムエステル型光重合開始剤から選択され得る。
【0070】
アルキルフェノン型光重合開始剤は、例えば、Omnirad 184の名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン等のヒドロキシアルキルフェノン;Omnirad 1173の名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、Omnirad 2959の名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、オリゴ-[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)-フェニル]-プロパノン]、Omnirad 127の名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、1,1’-(メチレン-ジ-4,1-フェニレン)ビス[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン]等のヒドロキシアセトフェノン;Omnirad 907の名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-プロパン-1-オン、Omnirad 379EGの名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、Omnirad 369の名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、及び2-メチル-1-(4-メチルスルファニル-フェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン等のアミノアセトフェノン;2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチルジクロロアセトフェノン、4-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
アシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤は、例えば、Omnirad TPO-Hの名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、Omnirad TPO-Lの名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、フェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-リン酸エチルエステル、Omnirad 819の名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、及びそれらの組み合わせから選択され得る。
【0072】
分子内水素引き抜き型光重合開始剤は、例えば、Omnirad MBFの名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、メチルベンゾイルホルメート等のオキシフェニル型光重合開始剤から選択され得る。また、分子内水素引き抜き型光重合開始剤として、オキシエトキシフェニルアセチル誘導体、例えば、Omnirad 754の名称でIGM RESINS B.V.社により販売されている、オキシ-フェニル-酢酸2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルとオキシ-フェニル-酢酸2 -[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルのブレンド、及びその混合物に言及することができる。
【0073】
本発明の特定の一実施形態において、(C)光重合開始剤は、好ましくは、アルキルフェノン型光重合開始剤及び/又はアシルフォスフィンオキサイド型光重合開始剤を含む。
【0074】
本発明の別の実施形態において、(C)光重合開始剤は、以下:
(C-1)α-ヒドロキシアセトフェノン
(C-2)α-ヒドロキシアセトフェノンとα-アミノアルキルフェノンの組み合わせ、又は
(C-3)α-ヒドロキシアセトフェノンとモノアシルホスフィンオキシドの組み合わせ
を含み得る。
【0075】
α-ヒドロキシアセトフェノンの例としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(IGM Resins B.V.社製、製品名:Omnirad 1173)、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(IGM Resins B.V.社製、製品名:Omnirad 2959)、オリゴ-[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)-フェニル]-プロパノン]、1,1’-(メチレン-ジ-4,1-フェニレン)ビス[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン](IGM Resins B.V.社製、製品名:Omnirad 127D)、及び1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(IGM Resins B.V.社製、製品名:Omnirad 184)が挙げられる。
【0076】
(C-1)の光重合開始剤は、α-ヒドロキシアセトフェノンに加えて、α-ヒドロキシアセトフェノン以外のアセトフェノン構造を有する化合物をさらに含んでもよい。こうしたアセトフェノン構造を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチルジクロロアセトフェノン、4-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、及びジエトキシアセトフェノン等が挙げられる。
【0077】
特に好ましい実施形態において、(C-1)α-ヒドロキシアセトフェノンを含む光開始剤は、α-ヒドロキシアセトフェノンのみを含み、他の光開始剤を含まないか、または、他の光開始剤の量が(C)成分の総質量に基づいて10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下である。
【0078】
(C-2)α-ヒドロキシアセトフェノンとα-アミノアルキルフェノンの組み合わせにおける、α-アミノアルキルフェノンの例としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-プロパン-1-オン(IGM Resins B.V.社製、製品名:Omnirad 907)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(IGM Resins B.V.社製、製品名:Omnirad 379EG)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン(IGM Resins B.V.社製、製品名:Omnirad 369)、及び2-メチル-1-(4-メチルスルファニル-フェニル)-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オンが挙げられる。
【0079】
(C-2)α-ヒドロキシアセトフェノンとα-アミノアルキルフェノンの組み合わせにおいて、(C-2)α-ヒドロキシアセトフェノンとα-アミノアルキルフェノンの質量比は特に限定されないが、例えば、α-アミノアルキルフェノンに対するα-ヒドロキシアセトフェノンの質量比は、0.1~100であり、好ましくは0.5~50であり、より好ましくは1~20であり得る。
【0080】
特に好ましい実施形態において、(C-2)α-ヒドロキシアセトフェノンとα-アミノアルキルフェノンの組み合わせを含む光開始剤は、α-ヒドロキシアセトフェノンとα-アミノアルキルフェノンのみからなり、他の光開始剤を含まないか、または、他の光開始剤の量が(C)成分の総質量に基づいて10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下である。
【0081】
(C-3)α-ヒドロキシアセトフェノンとモノアシルホスフィンオキシドの組み合わせにおける、モノアシルホスフィンオキシドの例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニル-ホスフィンオキシド(IGM Resins B.V.社製、製品名:Omnirad TPO-H)及びフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィン酸エチルエステル(IGM Resins B.V.社製、製品名:Omnirad TPO-L)が挙げられる。
【0082】
(C-3)α-ヒドロキシアセトフェノンとモノアシルホスフィンオキシドの組み合わせにおいて、α-ヒドロキシアセトフェノンとモノアシルホスフィンオキシドの質量比は特に限定されないが、例えば、モノアシルホスフィンオキシドに対するα-ヒドロキシアセトフェノンの質量比は、0.1~100であり、好ましくは0.5~50であり、より好ましくは0.8~20であり得る。
【0083】
特に好ましい実施形態において、(C-3)α-ヒドロキシアセトフェノンとモノアシルホスフィンオキシドの組み合わせを含む光重合開始剤は、α-ヒドロキシアセトフェノンとモノアシルホスフィンオキシドのみからなり、他の光開始剤を含まないか、または、他の光開始剤の量が(C)成分の総質量に基づいて10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下である。
【0084】
本明細書において、「他の光開始剤」の例としては、特に限定されないが、ビスアシルホスフィンオキシド、トリスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキサレート、チオキサントン、ベンゾインエーテル、オキシムエステル等の、上記(C-1)~(C-3)成分として列挙した光開始剤以外の光重合開始剤が挙げられる。本発明の(C)光重合開始剤は、α-ヒドロキシアセトフェノン、α-アミノアルキルフェノン、及びモノアシルホスフィンオキシド以外の光重合開始剤を含まないか、または、(C)成分の総質量に基づいて10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下で含んでもよい。
【0085】
(C)光重合開始剤の含有量は、組成物の総質量に基づいて、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらにより好ましくは0.05質量%以上で含まれてもよく、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下で含まれてもよい。
【0086】
(D)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)
本発明の硬化性シリコーン組成物は、必須成分である(D)成分として、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含む。
【0087】
(D)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールは、組成物の総質量に基づいて、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらにより好ましくは1質量%以上で含まれてもよく、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下で含まれてもよい。
【0088】
(他の成分)
(E)ゲル化防止剤
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、成分(E)として、(D)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)以外の少なくとも1つのゲル化防止剤を含んでもよい。本発明に係る組成物は、1種類の(E)ゲル化防し剤を含んでもよいし、2種類以上の(E)ゲル化防止剤を組み合わせて含んでもよい。
【0089】
本発明の(E)ゲル化防止剤は、(e-1)光重合阻害剤及び(e-2)酸化防止剤から選択できる。
【0090】
(e-1)光重合阻害剤
(e-1)光重合阻害剤は、1種の光重合阻害剤を含んでもよいし、2種以上の光重合阻害剤を組み合わせて含んでもよい。
【0091】
本発明の(e-1)光重合阻害剤は、少なく1つのアルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレート又は少なくとも1つのキノン誘導体化合物を含み得る。
【0092】
アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートは、単官能性、2官能性、3官能性、又は4官能性であり得る。
【0093】
アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートのポリオール部分は、2価から8価のポリオールから選択され得る。2価から8価のポリオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、及びネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセロール、トリオキシイソブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4 -ペンタントリオール、ペンタメチルグリセロール、ペンタグリセロール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、1,2,3,4-ペンタンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、及び1,3,4,5-ヘキサンテトロール等の4価アルコールが挙げられる。
【0094】
アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートのアルコキシル化部分は、メトキシ化部分、エトキシ化部分、ブトキシ化部分、及びプロポキシ化部分から選択され得る。アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートのアルコキシル化部分の繰り返し数は、特に限定されないが、通常、1~30、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、及びさらに好ましくは1~5である。
【0095】
単官能アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、及びネオペンチルグリコールプロポキシレートメチルエーテルモノアクリレートが言及できる。
【0096】
2官能アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートとしては、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、例えば、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート及びプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートが言及できる。
【0097】
3官能アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートとしては、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びプロポキシ化グリセロールトリアクリレートが言及できる。プロポキシ化グリセロールトリアクリレートの市販製品としては、Rahn社により販売されているGenorad16に言及できる。
【0098】
4官能アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートとしては、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートが言及できる。
【0099】
キノン誘導体化合物は、キノンメチド化合物であってもよい。キノンメチド化合物の特定の実施形態としては、BASF社によりIrgastab(登録商標)UV22の名称で販売されている、2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-(フェニレンメチレン)シクロヘキサ-2,5-ジエン-1-オンが言及できる。
【0100】
本発明の好適な実施形態において、(e-1)光重合阻害剤は、3官能アルコキシル化ポリオール由来(メタ)アクリレートから選択できる。
【0101】
(e-1)光重合阻害剤は、組成物の総質量に基づいて、0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上で含まれてもよく、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下で含まれ得る。
【0102】
(e-2)酸化防止剤
(e-2)酸化防止剤は、1種の酸化防止剤を含んでもよいし、2種以上の酸化防止剤を組み合わせて含んでもよい。
【0103】
こうした酸化防止剤は、特に限定されないが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤、および硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
【0104】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、IRGANOX 245の名称でBASFから入手可能なトリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、IRGANOX 259の名称でBASFから入手可能な1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、IRGANOX 565の名称でBASFから入手可能な4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、IRGANOX 1010の名称でBASFから入手可能なペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、IRGANOX 1035の名称でBASFから入手可能な2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、IRGANOX 1076の名称でBASFから入手可能なオクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、IRGANOX 1098の名称でBASFから入手可能なN,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、IRGAMOD 295の名称でBASFから入手可能な3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、IRGANOX 1330の名称でBASFから入手可能な1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、IRGANOX 3114の名称でBASFから入手可能なトリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、IRGANOX 5057の名称でBASFから入手可能なオクチル化ジフェニルアミン、IRGANOX 1520L の名称でBASFから入手可能な2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル)-o-クレゾール、IRGANOX 1135の名称でBASFから入手可能なイソオクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオネート、IRGANOX 1726の名称でBASFから入手可能な2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、IRGANOX E201の名称でBASFから入手可能な2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)クロマン-6-オール、及びIRGANOX HP-136の名称でBASFから入手可能な5,7-ジ-tert-ブチル-3-(3,4-ジメチルフェニル)ベンゾフラン-2(3H)-オン、並びにそれらの組み合わせが言及できる。
【0105】
リン系酸化防止剤として、トリフェニルホスフィン、トリス(ノニルフェニル)ホスフィン、RGAFOS 168の名称でBASFから入手可能なトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジブチル-5-メチルフェニル)ホスファイト、トリ(デシル)ホスファイト、IRGAFOS 12の名称でBASFから入手可能なトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、IRGAFOS 38の名称でBASFから入手可能なビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、及び大崎工業社からGSY-P1O1の名称で入手可能なビフェニル-4,4'-ジイル-ビス[ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェノキシ)ホスフィン]、並びにそれらの組み合わせが言及できる。
【0106】
ラクトン系酸化防止剤として、3-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンの反応生成物(CAS番号181314-48-7)が言及できる。
【0107】
ヒドロキシルアミン系酸化防止剤として、例えば、還元型牛脂を原料としたアルキルアミンの酸化生成物等が言及できる。
【0108】
ビタミンE系酸化防止剤として、例えば、3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)-2H-ベンゾピラン-6-オールが言及できる。
【0109】
硫黄系酸化防止剤としては、IRGANOX PS800の名称でBASFから入手可能なジドデシル3,3-チオビスプロピオネート、及びIRGANOX PS802の名称でBASFから入手可能なジオクタデシル3,3-チオビスプロピオネートが言及できる。
【0110】
本発明の好ましい一実施形態において、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール型酸化防止剤から選択される。本発明の別の好ましい実施形態において、ヒンダードフェノール型酸化防止剤は、以下の式(III)で表され得る:
【0111】
【化2】
【0112】
式中、
R1及びR3は、互いに独立して、O、S、及びN等の少なくとも1つのヘテロ原子によって中断されていてもよい、好ましくは炭素数4以上、より好ましくは炭素数5~16、さらに好ましくは炭素数6~12の直鎖又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和のアルキル基を表し;
はアルキル基、好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基を表す。
【0113】
式(III)において、R1及びR3は好ましくは直鎖状の飽和アルキル基を表す。好ましくは、式(III)中のR1及びR3は、少なくとも1つのカルボニル基(-OC-)、カルボニルオキシ基(-OC-O-)及び/又は硫黄原子(-S-)によって中断されたアルキル基を表す。
【0114】
(e-2)酸化防止剤の他の例として、以下の通常使用される酸化防止剤も挙げられる:4-メトキシフェノール、4-tert-ブチルカテコール等のフェノール類;1,4-ジヒドロキシベンゼン又は3,5-ジ-tert-ブチルベンゼン-1,2-ジオール等のハイドロキノン類;1,4-ベンゾキノン又はナフタレン-1,2-ジオン等のキノン類;1,3-ジニトロベンゼン又は1,4-ジニトロベンゼン等の芳香族ニトロ化合物;2-(sec-ブチル)-4,6-ジニトロフェノール、4-メチル-2-ニトロフェノール、又は4-メチル-2,6-ジニトロフェノール等のニトロフェノール類;フェノチアジン、N1-フェニル-N4-プロピルベンゼン-1,4-ジアミン、N-(1,4-ジメチルペンチル)-N'フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、又は2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のアミン類;N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩等のニトロソ化合物;ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-オキシル-2,2,6、6-テトラメチルピペリジン-4-オール、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-n-ブトキシピペリジン等のニトロキシド化合物;及びそれらの混合物。
【0115】
本発明の好適な実施形態において、(e-2)酸化防止剤は、リン系酸化防止剤から選択できる。
【0116】
(e-2)酸化防止剤は、組成物の総質量に基づいて、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらにより好ましくは0.2質量%以上、特に0.5質量%以上で含まれてもよく、8質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以下で含まれ得る。
【0117】
(任意の添加剤)
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、本発明の分野で通常用いられる任意の添加剤を含んでもよい。こうした添加剤は、例えば、上記成分(A)及び(B)以外のオルガノポリシロキサン、有機又は無機充填剤、顔料、粘着性付与剤、耐性付与剤、離型剤、耐熱性付与剤、着色剤、難燃性付与剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0118】
本発明の一実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、成分(A)及び(B)以外の直鎖状オルガノポリシロキサン、分岐状オルガノポリシロキサン、及び/又はレジン状オルガノポリシロキサンを、組成物の総量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に1質量%以下の量で含む。
【0119】
本発明の別の実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、成分(A)及び(B)以外の直鎖状オルガノポリシロキサン、分岐状オルガノポリシロキサン、及び/又はレジン状オルガノポリシロキサンを含まない。
【0120】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、硬化により硬い硬化物を形成できる。硬化物は、25℃で、タイプDデュロメータでD40以上の硬度を有することができる。こうしたタイプDデュロメータの硬さは、JIS K 6253-1997に従って測定できる。
【0121】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、高エネルギー線(例えば紫外線等)の照射により、非常に短時間で硬化することができる。そのため、一実施形態において、本発明の硬化性シリコーン組成物は、UV硬化性シリコーン組成物である。例えば、硬化性シリコーン組成物は、メタルハライドランプによる紫外線の照射(波長:365nm、200mW/cm)により、60秒以下、好ましくは30秒以下、より好ましくは15秒以下、さらに好ましくは5秒以下、特に1.5秒以下で硬化させることができる。
【0122】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、上記した必須成分及び任意成分を従来の方法で混合することにより調製できる。各成分の混合方法は、従来公知の方法でよく、特に限定されない。例えば、混合は、単なる撹拌により行うか、又は、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、及びヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて行うことができる。
【0123】
[封止剤及びシートフィルム]
本発明は、本発明に係る硬化性シリコーン組成物を硬化して得られる封止剤又はシートフィルムにも関する。本発明の封止剤は、光半導体を含む半導体素子を封止するのに好適に用いられる。本発明のシートフィルムは、封止材層又はマストランスファー用粘着性シートフィルムとして好適に用いられる。
【0124】
半導体素子の例としては、SiC、GaN等が挙げられる。光半導体素子の例としては、発光ダイオード(LED)、フォトダイオード、フォトトランジスタ、レーザダイオード等の半導体素子が挙げられる。
【0125】
本発明の封剤剤又はシートフィルムは、例えば、フィルム状、テープ状、又はシート状基材に本発明の硬化性シリコーン組成物を塗工した後、紫外線を照射して硬化させ、前記基材の表面に硬化皮膜を形成することで得られる。硬化皮膜の膜厚は特に限定されないが、好ましくは、1μm~10mmの範囲内、または5μm~5mmの範囲内である。
【0126】
本明細書において、用語「紫外線(UV)」は、約10nm~約400nmの波長の電磁放射線であり、紫外線硬化においては、波長は、例えば、280nm~400nmの波長が採用される。紫外線を発生する装置としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、中圧水銀灯、紫外線LEDが例示される。紫外線の照射量は、特に限定されないが、365nmにおいて、1~1,000mW/cmが好ましく、より好ましくは5~500mW/cmであり、更に好ましくは10~200mW/cmである。
【実施例0127】
本発明を以下の実施例でより詳細に説明するが、本発明の範囲を制限するものとして解釈するべきではない。
【0128】
本発明の硬化性シリコーン組成物を実施例及び比較例により詳細に説明する。実施例及び比較例において、以下の成分を硬化性シリコーン組成物を調製するのに用いた。式において、Viはビニル基を表し、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。また、簡略化して示しており、括弧内はM、D、T、又はQ単位中のMe以外の官能基を示している。表中の量を表す数値は、原材料の活性成分の「質量部」に基づく。
【0129】
(成分)
(a-1) 式:(MeViSiO)4で表される環状オルガノポリシロキサン
(a-2) 平均単位式:(Me3SiO1/2)0.05(Me2ViSiO1/2)0.17(MeSiO3/2)0.39 (PhSiO3/2)0.39で表されるオルガノポリシロキサンレジン
(a-3) 平均単位式:(Me2ViSiO1/2)0.04(Me3SiO1/2)0.4(SiO4/2)0.56で表されるオルガノポリシロキサンレジン
(a-4) 式:ViMe2SiO(Me2SiO2/2)310SiMe2Viで表される直鎖状オルガノポリシロキサン
(b-1) (メルカプトプロピル)メチルシロキサンホモポリマー(製品名:SMS-992、Gelest社製)
(b-2) [(メルカプトプロピル)メチルシロキサン]-ジメチルシロキサン共重合体(製品名:SMS-142、Gelest社製)
(b-3) 1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(製品名:Karenz MT(登録商標) BD1、昭和電工社製)
(b-4) M42TSH 41Q17レジン(SH含有量:14.2%)
(b-5) M44TSH 42Q12レジン(SH含有量:14.6%)
(c) 2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(製品名:Omnirad 1173、IGM RESINS B.V.社製)
(d) 2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)
(e-1) プロポキシル化グリセロール(1PO/OH)トリアクリレート(製品名:Genorad 16、Rahn社製)
(e-2) トリフェニルホスフィン
【0130】
[評価]
(粘度)
調製した各試験例の硬化性シリコーン組成物の粘度を、2度のコーン角度を有する40mmコーンプレートを用いるAntonpaar社製のレオメータを用いて、25℃、20/sのせん断速度で測定した。
【0131】
(ポットライフ)
得られた各試験例の硬化性シリコーン組成物を、明るい場所で、大気条件、25℃で24時間保持し、その後組成物の粘度を測定した。粘度の増加が10%未満であった組成物を「OK」と示した。
【0132】
(硬化性)
得られた硬化性シリコーン組成物をメタルハライドランプによる紫外線(波長:365nm、200mW/cm)を1秒間照射した。硬化物が得られた組成物を「OK」と示した。
【0133】
(硬度)
得られた硬化性シリコーン組成物を用いて、1mmの厚さを有するシート状の硬化物を得た。シート状硬化物の硬度を、25℃で、タイプDデュロメータを用いて、JIS K 6253-1997に従って測定した。
【0134】
(ダイシェア強度)
得られた各試験例の硬化性組成物をガラスプレート上に均一に塗布した。次いで、組成物上に別のガラスプレートをラミネートし、メタルハライドランプからの紫外線(波長:365nm、200mW/cm)照射により組成物を硬化し、1mm厚の層を得た。ダイシェアテスター(Nordson DAGE社製DAGE4000ボンドテスター)を用いてダイシェア強度を測定した。ダイシェア強度が2MPaを超えるものを「OK」と示した。
【0135】
(着色)
硬化性シリコーン組成物を所定形状の凹部を有する型に充填し、上部の液面からメタルハライドランプによる紫外線(波長:365nm、200mW/cm)照射した。得られた厚さ2mmのプレート状硬化物について、25℃、450nmにおける透過率を測定した。次いで、硬化物を260℃で10分間加熱した。加熱処理後の硬化物の25℃、450nmにおける透過率を同様に測定した。透過率の変化が10%以下であった試料を「OK」と示した。
【0136】
結果を以下の表に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
表1の結果から分かるように、本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、UV照射により迅速に硬化することができ、低い粘度を示し、メルカプト官能性シリコーンを含んでいても長いポットライフによる良好な貯蔵安定性を有し、高い硬度を有する硬化物を形成できる。
【0139】
そのため、本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、半導体パッケージ、特にLEDパッケージの製造における封止用途に特に好適に利用できる。
【外国語明細書】