(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082386
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】設計条件計算システム、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/00 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
H01L21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196122
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】末松 知夏
(72)【発明者】
【氏名】須藤 建瑠
(72)【発明者】
【氏名】小林 慶亮
(72)【発明者】
【氏名】毛利 友紀
(72)【発明者】
【氏名】島 明生
(57)【要約】
【課題】パワーデバイスの適切な設計値を迅速かつ低コストで提供する。
【解決手段】モデル構築ユニットが構築したモデルを用いて、所定の条件を満たすように、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを計算する最適化計算ユニットを有し、モデル構築ユニットが構築するモデルのうち、前段に設けられる第1の変換モデルは、第1及び第2のパラメータの少なくとも一方を特性回帰モデルに入力される物性値に変換し、中間に設けられる特性回帰モデルは、観測不可能な物性値を観測不可能な理論特性値に変換し、後段に設けられる第2の変換モデルは、理論特性値を実特性値に変換し、前記構築されたモデルを用いて、第1及び第2のパラメータの一部に設定される固定値を拘束条件として、第3のパラメータの値及び範囲の一つ又は組み合わせによる条件を満たすように、拘束条件でない第1及び第2のパラメータを計算する。
【選択図】
図1B-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計条件計算システムであって、
所定の処理を実行する演算装置と、データが入力される入力部と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、
前記入力部は、半導体装置の材料、作製工程、及び設計の少なくとも一つを表す第1のパラメータと、前記半導体装置を搭載する回路の材料、作製工程、及び設計の少なくとも一つを表す第2のパラメータと、前記半導体装置及び前記半導体装置を搭載する回路の少なくとも一つの特性を表す第3のパラメータとの入力を受け、
前記設計条件計算システムは、前記演算装置が、モデル構築ユニットが構築したモデルを用いて、所定の条件を満たすように、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを計算する最適化計算ユニットを有し、
前記モデル構築ユニットが構築するモデルは、
前段に設けられる第1の変換モデルと、後段に設けられる第2の変換モデルと、前記第1の変換モデルと前記第2の変換モデルとの間に設けられる特性回帰モデルを含み、
前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを入力とし、前記第3のパラメータを出力とすることによって各パラメータを関係付けており、
前記第1の変換モデルは、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータの少なくとも一方を前記特性回帰モデルに入力される物性値に変換し、
前記特性回帰モデルは、観測不可能な物性値を観測不可能な理論特性値に変換し、
前記第2の変換モデルは、理論特性値を実特性値に変換し、
前記最適化計算ユニットは、
前記構築されたモデルを用いて、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータの一部に設定される固定値を拘束条件として、前記第3のパラメータの値及び範囲の一つ又は組み合わせによる条件を満たすように、前記拘束条件でない前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを計算し、
前記計算された第1のパラメータ及び第2のパラメータを出力することを特徴とする設計条件計算システム。
【請求項2】
請求項1に記載の設計条件計算システムであって、
前記最適化計算ユニットは、前記設計条件計算システムの外部に設けられた前記モデル構築ユニットで作成された回帰モデルを用いて、前記拘束条件でない第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを計算することを特徴とする設計条件計算システム。
【請求項3】
請求項1に記載の設計条件計算システムであって、
前記第1のパラメータは、半導体装置の物性値である、移動度、実効的な不純物濃度、界面準位、及び酸化膜中トラップ密度の少なくとも一つを含むことを特徴とする設計条件計算システム。
【請求項4】
請求項1に記載の設計条件計算システムであって、
前記第3のパラメータは、パワー半導体装置又はパワー半導体装置搭載回路に関する特性である、オン抵抗、短絡耐量、閾値電圧、周波数帯域、耐圧、スイッチング損失、及び絶縁膜信頼性の少なくとも一つを含むことを特徴とする設計条件計算システム。
【請求項5】
請求項4に記載の設計条件計算システムであって、
前記第3のパラメータは、オン抵抗及び短絡耐量が含まれ、
前記最適化計算ユニットは、JFET領域の構造とチャネル領域の構造とを独立に設計可能な炭化ケイ素半導体装置において、前記オン抵抗と前記短絡耐量のトレードオフが改善される前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを計算することを特徴とする設計条件計算システム。
【請求項6】
請求項1に記載の設計条件計算システムであって、
前記第1の変換モデルは、1以上の層を含み、
前記第1の変換モデルに含まれる層の1以上は、熱シミュレーションによって学習された熱特性回帰モデルであることを特徴とする設計条件計算システム。
【請求項7】
請求項1に記載の設計条件計算システムであって、
前記第1の変換モデルは、1以上の層を含み、
前記第1の変換モデルに含まれる層の1以上は、前記第1の入力パラメータ及び前記第2の入力パラメータの少なくとも一部の特徴量を抽出して、入力されたパラメータの次元を削減するエンコーダであることを特徴とする設計条件計算システム。
【請求項8】
請求項7に記載の設計条件計算システムであって、
前記エンコーダは、半導体の物理特性を表した物理式を用いて特徴量を抽出することを特徴とする設計条件計算システム。
【請求項9】
請求項7に記載の設計条件計算システムであって、
前記エンコーダは、入力値と出力値に同じ値を用いて学習するオートエンコーダであることを特徴とする設計条件計算システム。
【請求項10】
請求項1に記載の設計条件計算システムであって、
前記モデル構築ユニットの前段は、前記1の変換モデルと第3の変換モデルとを含み、
前記モデル構築ユニットの中間層は、前記特性回帰モデルと前記第2の変換モデルと回路特性モデルとを含み、
前記モデル構築ユニットの後段は、第4の変換モデルを含み、
前記第1の変換モデルは、前記第1の入力パラメータを前記特性回帰モデルに入力される半導体装置の観測不可能な物性値に変換し、
前記回帰モデルは、前記半導体装置の観測不可能な物性値を観測不可能な理論特性値に変換し、
前記第2の変換モデルは、前記半導体装置の観測不可能な理論特性値を実特性値に変換し、
前記回路特性モデルは、前記第2の変換モデルが出力した半導体装置の実特性値と前記第2のパラメータを半導体装置搭載回路の理論特性値に変換し、
前記第3の変換モデルは、前記第2の入力パラメータを前記回路特性モデルに入力される前記半導体装置搭載回路の観測不可能な物性値に変換し、
前記第4の変換モデルは、前記回路特性モデルが出力した半導体装置搭載回路の理論特性値を実特性値に変換することを特徴とする設計条件計算システム。
【請求項11】
請求項1に記載の設計条件計算システムであって、
前記第1の変換モデルは、前記設計条件計算システムに接続された半導体作製装置に実装されており、
前記半導体作製装置は、前記第1の変換モデルを用いて、処理条件を算出することを特徴とする設計条件計算システム。
【請求項12】
請求項1に記載の設計条件計算システムであって、
前記演算装置は、
前記拘束条件でない前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータが計算された後、
前記第3のパラメータを目標値と比較判定し、
前記第3のパラメータが前記目標値に対する所定の条件を満たさない場合、前記最適化計算ユニットの入力値及び出力値をフィードバックして、前記回帰モデルを学習して再構築することを特徴とする設計条件計算システム。
【請求項13】
設計条件計算システムによって出力された第1のパラメータを条件として半導体装置を製造する製造方法であって、
前記設計条件計算システムは、所定の処理を実行する演算装置と、データが入力される入力部と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを有する計算機によって構成され、
前記入力部は、半導体装置の材料、作製工程、及び設計の少なくとも一つを表す第1のパラメータと、前記半導体装置を搭載する回路の材料、作製工程、及び設計の少なくとも一つを表す第2のパラメータと、前記半導体装置及び前記半導体装置を搭載する回路の少なくとも一つの特性を表す第3のパラメータとの入力を受け、
前記設計条件計算システムは、前記演算装置が、モデル構築ユニットが構築したモデルを用いて、所定の条件を満たすように、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを計算する最適化計算ユニットを有し、
前記モデル構築ユニットが構築する回帰モデルは、
前段に設けられる第1の変換モデルと、後段に設けられる第2の変換モデルと、前記第1の変換モデルと前記第2の変換モデルとの間に設けられる特性回帰モデルを含み、
前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを入力とし、前記第3のパラメータを出力とすることによって各パラメータを関係付けており、
前記第1の変換モデルは、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータの少なくとも一方を前記特性回帰モデルに入力される物性値に変換し、
前記回帰モデルは、観測不可能な物性値を観測不可能な理論特性値に変換し、
前記第2の変換モデルは、理論特性値を実特性値に変換し、
前記最適化計算ユニットは、
前記構築されたモデルを用いて、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータの一部に設定される固定値を拘束条件として、前記第3のパラメータの値及び範囲の一つ又は組み合わせによる条件を満たすように、前記拘束条件でない前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを計算し、
前記計算された第1のパラメータ及び第2のパラメータを出力することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の設計を支援する設計条件計算システムに関し、特に、パワー半導体装置の製造パラメータの設計を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体装置には、高耐圧、低オン抵抗、低スイッチング損失が要求されるが、現在の主流であるケイ素(Si)パワー素子は理論的な性能限界に近づいている。炭化ケイ素(SiC)はSiと比較して絶縁破壊電界強度が約1桁大きいため、耐圧を保持するドリフト層を約1/10に薄く、不純物濃度を約100倍高くすることで、理論上、素子抵抗を3桁以上低減できる。また、バンドギャップがSiより約3倍大きいことから、高温動作も可能である。このように、SiC半導体素子は、Si半導体装置を超える性能が期待され、SiCパワー半導体装置の開発が進められている。
【0003】
本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(特開2020-184123号公報)には、回路設計装置は、設計対象回路の回路構成と設計対象回路の回路特性項目名及び設計対象回路を構成する素子名とを入力する操作部及び記憶部と、各回路素子の素子値を変えながら設計対象回路のシミュレーションを行うことにより各回路素子の素子値とそれに対応する各回路特性項目の特性値を生成するシミュレーション部と、学習モードにおいて回路素子の素子値及び対応する回路特性項目の特性値を用いてディープラーニングを行うと共に、設計モードにおいて、特性値に対応する素子値と素子値に対応する特性値の少なくとも一方を回帰分析により生成する設計処理部とを備える回路設計装置が記載されている。
【0004】
特許文献2(特開2012-150574号公報)には、シミュレーション連携を行う為に、少なくとも回路シミュレーションで用いる半導体デバイス等価回路モデルのために必要となるデバイス特性を、半導体デバイスシミュレーションの出力からデバイス特性を得る半導体デバイス等価回路モデル設定工程と、回路シミュレーションの出力を評価し製品としての性能に問題がある場合には回路シミュレーションの出力から少なくとも半導体デバイス構造を最適化するための情報を推定して半導体デバイスシミュレーションへフィードバックするための知識データベースを備えた情報フィードバック工程を含むシミュレーション連携方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-184123号公報
【特許文献2】特開2012-150574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パワー半導体装置は、大電力を制御するため、オン抵抗の他、短絡時間、閾値電圧、耐圧、スイッチング損失、絶縁膜信頼性などの多くの性能を満たす必要性がある。これらのパラメータの多くはトレードオフの関係にあり、トレードオフの中で使用するアプリケーションに適した設計を求める必要がある。さらに、近年、デバイス構造、プロセス、及び回路構造は複雑化しており、多数のパラメータが設計に関係する。従って、オン抵抗、短絡時間、閾値電圧、耐圧、スイッチング損失、絶縁膜信頼性などの半導体装置及び半導体装置を搭載したアプリケーションの特性に対して、デバイスの設計、材料、及び作製条件、さらに、システムを統合的に考慮して、デバイスを搭載する回路の設計、材料、及び作製条件を最適化する設計が必要となる。このような最適化システムの確立には、シミュレーションによってデバイス及び回路の高精度な回帰モデルの作成が必要である。
【0007】
一方で、本発明が対象とするパワー半導体装置は、既存のシミュレーションだけでは高精度な特性の予測ができない。なぜならば、Siは多くのデータが蓄積されてきたため手動計算による物性値の予測が可能であるが、SiCは歴史が浅く散乱断面積や移動度などの物性値の予想が困難なためである。また、回帰モデルで用いられるシミュレーションは観測不可能なパラメータの関係が計算されるため、観測可能なデータで計算可能なモデルを構築する必要がある。
【0008】
本発明は、SiC半導体装置でも、アプリケーションの要請に合わせた多数の特性を満たすパワーデバイスの適切な設計値を迅速かつ低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、設計条件計算システムであって、所定の処理を実行する演算装置と、データが入力される入力部と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、前記入力部は、半導体装置の材料、作製工程、及び設計の少なくとも一つを表す第1のパラメータと、前記半導体装置を搭載する回路の材料、作製工程、及び設計の少なくとも一つを表す第2のパラメータと、前記半導体装置及び前記半導体装置を搭載する回路の少なくとも一つの特性を表す第3のパラメータとの入力を受け、前記設計条件計算システムは、前記演算装置が、モデル構築ユニットが構築したモデルを用いて、所定の条件を満たすように、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを計算する最適化計算ユニットを有し、前記モデル構築ユニットが構築するモデルは、前段に設けられる第1の変換モデルと、後段に設けられる第2の変換モデルと、前記第1の変換モデルと前記第2の変換モデルとの間に設けられる特性回帰モデルを含み、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを入力とし、前記第3のパラメータを出力とすることによって各パラメータを関係付けており、前記第1の変換モデルは、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータの少なくとも一方を前記特性回帰モデルに入力される物性値に変換し、前記特性回帰モデルは、観測不可能な物性値を観測不可能な理論特性値に変換し、前記第2の変換モデルは、理論特性値を実特性値に変換し、前記最適化計算ユニットは、前記構築されたモデルを用いて、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータの一部に設定される固定値を拘束条件として、前記第3のパラメータの値及び範囲の一つ又は組み合わせによる条件を満たすように、前記拘束条件でない前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを計算し、前記計算された第1のパラメータ及び第2のパラメータを出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、アプリケーションの要請に合わせた多数の特性を満たすパワーデバイスの適切な設計値を迅速かつ低コストで提供できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明の実施形態の設計条件計算システムの構成を示す図である。
【
図1B-1】本発明の実施形態の設計条件計算システムが設計条件を計算する処理のフローチャートである。
【
図1B-2】本発明の実施形態の設計条件計算システムが設計条件を計算する処理のフローチャートである。
【
図1C-1】本発明の実施形態の設計条件計算システムが設計条件を計算する処理のフローチャートである。
【
図1C-2】本発明の実施形態の設計条件計算システムが設計条件を計算する処理のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施形態の入力画面の例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態のモデル構築ユニットの構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態の最適化計算ユニットで実行される計算方法を示す図である。
【
図5】トレンチMIS FETの作製工程のフローチャートである。
【
図6A】実施例1の入力画面の一例を示す図である。
【
図6B】実施例1の入力画面の一例を示す図である。
【
図7】実施例2のモデル構築ユニットの前段の構成する補正機1の一例を示す図である。
【
図8】実施例3のモデル構築ユニットの前段の構成する補正機1の一例を示す図である。
【
図9】実施例3のモデル構築ユニットの前段の構成する補正機1の一例を示す図である。
【
図10】実施例4のモデル構築ユニットの一例を示す図である。
【
図11】実施例5の設計条件計算システムと半導体作製装置との連携を示す図である。
【
図12A】実施例6の設計条件計算システムが設計条件を計算する処理のフローチャートである。
【
図12B】実施例6の設計条件計算システムが設計条件を計算する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態のパワー半導体装置の設計条件計算システム100について詳細に説明する。
【0013】
図1Aは、設計条件計算システム100の構成を示す図である。
【0014】
本実施形態の設計条件計算システム100は、シミュレーションによって構築された特性回帰モデルを中間層に持ち、その前段に物性値計算モデル(補正機1)と、後段に物理量計算モデル(補正機2)を設けたモデル構築ユニット102によって、高精度な回帰モデルを構築する。
【0015】
設計条件計算システム100は、計算ユニット101、データ保存ユニット104、通信部105、操作部106、出力部107、及び入出力ユニット108を有する計算機によって構成される。計算ユニット101、データ保存ユニット104、通信部105、及び入出力ユニット108はバスを介して接続される。
【0016】
計算ユニット101は、メモリ(図示省略)に格納されたプログラムを実行する演算装置(CPU)である。計算ユニット101が、各種プログラムを実行することによって、設計条件計算システム100の各機能部(例えば、モデル構築ユニット102、最適化計算ユニット103など)による機能が実現される。なお、計算ユニット101がプログラムを実行して行う処理の一部を、ASIC、FPGA等のハードウェアによる演算装置で実行してもよい。
【0017】
メモリは、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、計算ユニット101が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
【0018】
データ保存ユニット104は、例えば、磁気記憶装置(HDD)、フラッシュメモリ(SSD)等で構成される大容量かつ不揮発性の記憶装置である。また、データ保存ユニット104は、計算ユニット101がプログラムの実行時に使用するデータ、及び計算ユニット101が実行するプログラムを格納する。すなわち、プログラムは、データ保存ユニット104から読み出されて、メモリにロードされて、計算ユニット101によって実行されることによって、設計条件計算システム100の各機能を実現する。
【0019】
通信部105は、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御するネットワークインターフェース装置である。
【0020】
操作部106は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置によって構成され、オペレータの操作を受ける入力インターフェースを提供する。出力部107は、ディスプレイ装置やプリンタなどの出力装置によって構成され、プログラムの実行結果をオペレータが視認可能な形式で出力する出力インターフェースを提供する。入出力ユニット108は、操作部106に入力されたデータをバスに渡すインターフェースである。なお、設計条件計算システム100にネットワークを介して接続されたユーザ端末が操作部及び出力部を提供してもよい。この場合、設計条件計算システム100がウェブサーバの機能を有し、ユーザ端末が設計条件計算システム100に所定のプロトコル(例えばhttp)でアクセスしてもよい。
【0021】
計算ユニット101が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介して設計条件計算システム100に提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性のデータ保存ユニット104に格納される。このため、設計条件計算システム100は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
【0022】
設計条件計算システム100は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。例えば、モデル構築ユニット102、最適化計算ユニット103は、各々別個の物理的又は論理的計算機上で動作するものでも、複数が組み合わされて一つの物理的又は論理的計算機上で動作するものでもよい。
【0023】
図1B-1、
図1B-2、
図1C-1、
図1C-2は、設計条件計算システム100が設計条件を計算する処理のフローチャートである。
図1B-1、
図1C-1はモデル構築ユニット102が設計条件計算システム100の内部にある場合の処理を、
図1B-2、
図1C-2は、モデル構築ユニット102が設計条件計算システム100の外部にある場合の処理を示す。
【0024】
まず、ステップ1で、説明変数及び目的変数が操作部106に入力されると、ステップ2で操作内容が出力部107に表示される。入力される説明変数は、デバイス材料、デバイス作製条件、デバイス構造、回路材料、回路作製条件、及び回路構造の値又は値の範囲などである。目的変数は、デバイス特性、回路特性の値又は値の範囲などである。そして、ステップ3で、データ保存ユニット104は、入力されたデータを保存する。
【0025】
次に、ステップ4で、モデル構築ユニット102は、データ保存ユニット104に保存されたデータに基づいて、説明変数と目的変数によるパワー半導体装置及びパワー半導体装置搭載回路に関する回帰モデルを作成する。
図1B-1、
図1C-1は、に示す例では、モデル構築ユニット102は、設計条件計算システム100内に設けられる。モデル構築ユニット102は、入力の内容に合わせて操作部106への入力の都度、回帰モデルを作成し、作成した回帰モデルをデータ保存ユニット104に保存する。作成された回帰モデルをデータ保存ユニット104に保存せず、計算ユニット101に直接入力してもよい。
【0026】
次に、ステップ5で、計算ユニット101は、回帰モデルを用いて、データ保存ユニット104に保存された説明変数の値を拘束条件とし、目的変数の値を目標として、データ保存ユニット104に保存された説明変数の中で値が指定されていない変数と目的変数との関係を複数回計算し、目的変数の条件を満たすような値が指定されていない説明変数の最適値を求める。そして、ステップ6で、計算ユニット101は、説明変数の最適値及びその時の目的変数の値をデータ保存ユニット104に保存する。ステップ5~6の処理は、所定の終了条件を満たすまで繰り返し実行される。終了条件は、目的変数がターゲット値に到達したことがよいが、計算回数や計算時間が上限に到達したことを終了条件にしてもよい。そして、ステップ7で、出力部107は、データ保存ユニット104に保存された説明変数の最適値及びその時の目的変数の値を出力する。
【0027】
また、
図1B-2、
図1C-2に示す例では、設計条件計算システム100の外部に設けられたモデル構築ユニット102によって予め作成された1以上の回帰モデルが、設計条件計算システム100の外部、例えばクラウドなどのデータベースに登録されている。回帰モデルはデバイス種類によって異なることから、複数の回帰モデルを予め作成しておき、設計条件計算システム100の外部に格納するとよい。ステップ5で、計算ユニット101は、通信部105を介してデータベースから回帰モデルを取得し、データ保存ユニット104に保存する。計算ユニット101は、データ保存ユニット104に保存された回帰モデルを用いて、目的変数の条件を満たす説明変数の最適値を求める。計算ユニット101は、データベースから取得した回帰モデルをデータ保存ユニット104に保存せず、直接データベースから取得してもよい。設計条件計算システム100は、ネットワークを介して外部と通信が可能である。
【0028】
前述したように、回帰モデル及び最適計算結果は、計算の都度データ保存ユニット104に保存されてもよいが、計算量が多くなるとデータ量が膨大となるので、その都度データ保存ユニット104に保存しなくてもよい。一方、通信部105を介してデータベースから回帰モデルを毎回取得すると、通信量が増加し、速度が低減するので、データ保存ユニット104へのアクセスは取り扱うデータ量によって決めるとよい。
【0029】
図2は、ステップ1~2において、説明変数及び目的変数を操作部106に入力させるために出力部に表示される入力画面の例を示す図である。
【0030】
図2に示す入力画面では、入力セクションにおけるプルダウン入力欄8で指定する説明変数の種類を選択でき、更に条件を絞る必要がある場合はプルダウン入力欄8の下に設けられるプルダウン入力欄9において、下位の条件を指定できる。説明変数の種類を指定するプルダウン入力欄の数は、3段階以上でもよい。プルダウン入力欄8、9は、半導体装置のデバイス材料、デバイス作製条件、デバイス構造、回路材料、回路作製条件、回路構造など、及び半導体装置を搭載する回路のデバイス材料、デバイス作製条件、デバイス構造、回路材料、回路作製条件、回路構造から選択可能であるとよい。例えば、デバイス作製条件が説明変数に選択された場合、デバイス作製工程の中で指定する工程を選択でき、デバイス構造が説明変数に選択された場合、構造の種類を指定できる。このように、プルダウン入力欄8又はプルダウン入力欄8及び9で条件を指定すると、予め登録された変数が入力画面に表示され、固定チェックボックスの操作によって、変数の固定値の値又は範囲を指定できる。固定値又は値の範囲(最大化、最小化の両方又は一方)が指定された変数は、最適化の際に拘束条件となる。一方、変数は必ずしも値を記入する必要がなく、値を入力しない場合は最適化計算において目的変数にあった最適値が求められる。
【0031】
また、出力セクションにおけるプルダウン入力欄11で指定する目的変数の種類を選択でき、目標値又は目標値の範囲(最大化、最小化の両方又は一方)それらの組み合わせを入力画面に入力できる。プルダウン入力欄11は、デバイス特性、回路特性などから選択可能であるとよい。目標値又は範囲又は最大・最小などの条件又はそれらの組み合わせを記入しない場合、その変数は最適化計算において任意の値で算出され、目標値又は範囲又は最大・最小などの条件又はそれらの組み合わせを記入した場合、入力セクションで固定値が指定されていない目的変数を導出する際の条件となる。
【0032】
パラメータが入力されると、最適化計算ユニット103は、入力されたパラメータの値又は範囲を拘束条件として、出力セクションに入力されたパラメータの値及び範囲を目的変数として、入力セクションに入力されたパラメータのうち、値が指定されていないパラメータを最適化計算により求める。例えば、
図2に示すように値が指定された場合、最適化計算ユニット103は、入力セクションにおけるドリフト層濃度を1×10
16に維持しつつ、出力セクションにおける耐圧を1200V以上に、閾値電圧を3V~8Vに、ゲート耐圧を25V以上にして、オン抵抗を最小化するJFET長とチャネル長の最適値を求める。
【0033】
入力画面の左領域には、プルダウン入力欄8又はプルダウン入力欄8及び9で指定された条件に関する情報を表示するとよい。例えば、図示する入力画面では、デバイス構造のTED-MOSが選択されているので、TED-MOS FETの構造が表示される。
【0034】
図3は、モデル構築ユニット102の構成を示す図である。
【0035】
モデル構築ユニット102は、操作部106に入力された説明変数と目的変数を用いて回帰モデルを構築する。モデル構築ユニット102は多層で構成されており、前段、中間層、及び後段に大別される。なお、
図3には、前段、中間層、及び後段の3層で構成されるモデル構築ユニット102を図示するが、モデル構築ユニット102を4層以上で構成してもよい。モデル構築ユニット102は、入力セクションに入力されたパラメータ(半導体装置のパラメータ、半導体装置搭載回路のパラメータ)を入力とし、出力セクションで選択可能なパラメータを出力とすることによって各パラメータを関係付ける。
【0036】
前段は、物性値計算モデル(補正機1)で、入力セクションに入力されたパラメータをシミュレーションで用いる物性値に変換する。例えば、シミュレーションで用いられる物性値は、入力値として酸化膜作製条件である酸化膜の膜質、膜厚等やアニール量に対して酸化膜界面のトラップ量や移動度など観測不可能な物性値である。物性値計算モデルによって変換される観測不可能な物性値は、前述以外に、ホールや電子の移動度、散乱断面積、酸化膜中トラップ密度、界面準位、オージェ・SRH再結合率、ライフタイム、飽和ドリフト速度、熱伝導率、欠陥密度、活性化率を考慮した不純物濃度、マスクずれを考慮した設計値、作製条件によって変化する形状(トレンチ角の形状、酸化膜厚など)、材質(ソースコンタクト部分の材質)などがある。特に、SiCでは移動度や界面トラップや活性化率に対する理論式での予測が不可能なので、前段における補正機1による物性値計算モデルが非常に有効となる。また、補正される入力値は必ずしも観測不可能な物性値でなくても、観測可能な物性値でもよい。例えば設計値を入力した場合、実際にホトグラフィ工程でマスクを用いて作成された開口幅を補正後の変数としてもよい。
【0037】
また、Siでない化合物を用いたパワー半導体装置では、酸化膜との界面にトラップが形成され、閾値電圧が変動したり、スイッチング速度が低下する原因となる。パワー半導体装置では高電圧を制御するため、閾値電圧の変動は、スイッチング速度を低下させ、安全や損失の観点からも問題となる。また、損失を減らすために抵抗の低減が必要であるため、移動度が重要となるが、デバイス内の移動度がバルク移動度より低下し、理論的特性による移動度の予測は困難である。また、パワー半導体装置はデバイス内の電界が高くなりやすく、酸化膜中のトラップが存在すれば酸化膜の信頼性の低下が顕著となる。また、デバイスに不純物を注入したときの拡散のメカニズムについて、確立されたモデルが存在せず、特にパワーデバイスではオン抵抗を下げるために不純物濃度を高くするため、実際の不純物濃度と活性化された不純物濃度の違いが顕著に表れる。
【0038】
前段の物性値計算モデルで補正された変数は、中間層で理論特性と関係づけられる。例えば、中間層は物理シミュレーションを多数行うことでデータを作成しながら、作成されたデータを用いてスパイラル学習することで効率的に特性回帰モデルを構築する。中間層が単なるシミュレーションではなくモデル化されることによって、前段における入力から後段における出力までのバックプロパゲーションを可能とし、物性値計算モデルの学習を可能とする。
【0039】
中間層で得られた理論特性は、後段の物理量計算モデル(補正機2)で測定可能な物理量に変換される。例えば、補正機2は、以下のような変換を行い、観測可能な物理量を計算する。
・半導体の内部温度を短絡耐量に変換
・オン抵抗に測定におけるオフセット抵抗を加算
・理論的に導出される半導体装置のオン抵抗に、測定起因の接触抵抗の効果を補正
・特にトレンチを有するMIS FET(Metal-Insulator-Semiconductor FET)の場合、トレンチの角部にかかる電界強度から、ゲート絶縁膜の信頼性を計算
・半導体装置搭載回路における外部抵抗及び半導体装置内部の容量から、スイッチング損失やスイッチング時間を計算
・短絡時の飽和電流特性から短絡時間を計算
【0040】
特に、測定可能な物理量は、パワー半導体装置特性の出力としてオン抵抗、閾値、耐圧、絶縁膜信頼性を含み、半導体装置搭載回路の特性として短絡耐量、スイッチング損失を含むとよい。これらの測定可能な物理量は、中段の特性回帰モデルから導出してもよいが、補正機2によって導出することで、より高速な回帰モデルを構築できる。
【0041】
このように、補正機2は、ある物理量から同じ物理量である実際の物理量へ変換も、ある物理量から異なる物理量の導出も可能である。特に、酸化膜を有するMIS FET構造においては、SiCの絶縁破壊強度がSiと比べ約1桁高いため、酸化膜における電界強度が高く、酸化膜の信頼性が重要となる。一方、酸化膜の信頼性の指標は様々であり、歩留にも影響するため、理論的な計算では導出が困難であり、補正機2による導出が必須となる。また、絶縁膜質によって、閾値がシフトする現象である負バイアス温度不安定性(PBTI)やPositive Bias-Temperature. Instability(NBTI)も起こるが、これらの現象の原因は正確には解明されておらず、正確な理論モデルがないため補正機2による導出が必要となる。
【0042】
前段(物性値計算モデルによる補正機1)、中間層(特性回帰モデル)、後段(物理量計算モデルによる補正機2)は、いずれも学習によって構築された学習モデルとするとよい。
【0043】
モデル構築ユニット102の中間層の回帰モデルで用いられるシミュレーションは観測不可能なパラメータを用いて関係するものであるが、前段の補正機1と後段の補正機2によって観測可能なデータを入出力可能なモデルを高精度に構築できる。
【0044】
なお、
図3は、モデル構築ユニット102の構成を示す図として記載したが、モデル構築ユニット102とモデル構築ユニット102が構築するモデルとは、同じ入出力を実現するものであるため、モデル構築ユニット102が構築するモデルをニューラルネットワークで構成する場合、このニューラルネットワークの構成を示す図とも言える。この点は、後述する
図7から
図10も同様に、モデルの構成を表す図とも言える。
【0045】
図4は、最適化計算ユニット103で実行される計算方法を示す図である。
【0046】
最適化計算ユニット103は、モデル構築ユニット102が構築した回帰モデルを用いて、入力画面の出力セクションでして力されたパラメータを目的変数として、目的変数の条件を満たすような、入力セクションに入力されたパラメータのうち、値が指定されていないパラメータの最適値を求める最適化計算を行う。最適化計算では、前記複数の入力セクションに入力されたパラメータを出力セクションで指定された複数のパラメータの条件を満たすように、回帰モデルから説明変数と目的変数の関係を複数回計算し、目的変数が最適な値となる説明変数を求める。このような繰り返し計算によって、人間は思いつかないような半導体装置及び半導体装置搭載回路の設計や材料や作製条件を複合的な条件を導出できる。
【0047】
最適化計算ユニット103が採用しうる最適化計算方法は多種あり、本発明では特に最適化方法を限定する必要がない。そこで、一般的な最適化計算方法であり、
図12A、
図12Bで後述するニュートン法を採用した例を説明する。
【0048】
例えば、
図12A、
図12Bでは、ステップ2において、任意の目的変数を最小値として入力画面(
図2)で指定して、ニュートン法で最小値を計算している。目的変数と説明変数は、モデル構築ユニット102で作成された回帰モデルで関係付けられており、
図12A、
図12Bでは、
図3における入力α1,α2,…に対応する説明変数をx(x多変数のベクトルでもよい)、
図3における出力βに対応する目的変数をyと記載しており、モデル構築ユニット102で作成された回帰モデルの一つをy=g(x)としている。つまり、回帰モデルを用いると任意の説明変数xに対する目的変数yが計算可能であり、逐次的な計算によって、あるxに対するyを計算し、入力画面に入力された目的変数の条件に目的変数yがより適合する説明変数xを導出できる。目的変数yを最小とする説明変数xをニュートン法で求める場合、回帰モデルy=g(x)に対して、ある探索点xkにおける関数の接線を求め、接線の傾きからyが小さくなる方向を探索方向として、次に接線がx軸と交わる点xk+1におけるyの値を回帰モデルy=g(x)から導出し、さらにxk+1における関数の接線を求め探索方向を決定し、yの条件が一致するまでこれを繰り返す。
図4に示す例では接線の傾きが正から負に変化する点が目的変数yの値が最小となる点であり、この時のxの値が最適計算結果となり、求めたいパワー半導体装置及びパワー半導体装置搭載回路の材料・作製条件・設計となる。
【0049】
次に、
図5を参照して、トレンチMIS FETの作製工程を説明する。
【0050】
まず、ステップAで、SiCバルク基板(例えば、4H-SiC、1e18、Si面、4°オフ)を準備する。SiCバルク基板は、昇華法を用いて作製した基板でも、溶液法を用いた基板でも、ガス成長法を用いた基板でも、既にエピタキシャル成長層を積層した基板でもよい。エピタキシャル層の成長前に、化学的機械研磨(CMP)を行ってもよい。基板濃度は、1e18~1e21でよい。結晶型は、4H-SiCでも、6Hでも、3Cでもよい。面は、Si面でも、C面でも、その他面方位でもよい。好ましくは、オフ角が存在する基板を用いるとよいが、ジャスト基板を用いてもよい。ステップAで準備される基板の種類、濃度、面、オフ角等などは、本実施形態の設計条件計算システム100で半導体材料に関して最適化された条件を適用してもよい。
【0051】
次に、ステップBで、エピタキシャル成長層を形成する。例えば、キャリアガスにH2を用いてSiH4とC3H8を1500℃以上の温度で加熱し、エピタキシャル成長を行い、エピタキシャル層を形成する。形成されるエピタキシャル層の濃度や膜厚は作製するデバイスによって異なるが、濃度は1e14~1e18程度、膜厚は数μmから数十μmとするとよい。また、エピタキシャル層形成前に高濃度のバッファ層を形成してもよい。バッファ層の濃度は1e18程度であるとよい。なお、エピタキシャル層をドリフト層とも称する。エピタキシャル層やバッファ層の成長条件(温度、キャリアガス、パージガス、その他装置条件)、濃度、膜厚などは、本実施形態の設計条件計算システム100で半導体材料に関して最適化された条件を適用してもよい。
【0052】
次に、ステップCで、イオン注入領域を形成する。ステップCは、実施例5で後述するSiCパワー半導体装置において必要なステップである。例えば、P型の注入イオンはアルミニウム、ボロンでよく、N型の注入イオンは窒素、リンでよい。ドリフト層に、P型のボディ領域(p)と電位固定領域(p++)とガード領域(p)を、N型のソース領域(n++)と電流拡散領域(n+)とJFET領域(n-~n+)を、それぞれイオン注入によって形成する。ボディ領域はP型のエピタキシャル成長で形成してもよい。なお、極性は、P型N型反転してもよい。「-」及び「+」は導電型がn型又はp型の相対的な不純物濃度を表す符号であり、例えば「n--」、「n-」、「n」、「n+」、「n++」の順にn型不純物の濃度が高くなる。
【0053】
ソース領域と電位固定領域はウェハ表面に接するように形成される。ボディ領域は、ソース領域と接しており、ソース領域より深い箇所に形成される。さらに、ボディ領域は、電位固定領域と電気的に接続されている。電流拡散領域は、ボディ領域と接しており、ボディ領域より深い箇所に形成される。ガード領域は、電流拡散領域と接しており、電流拡散領域より深い箇所に形成される。さらに、ガード領域は、電位固定領域と電気的に接続されている。JFET領域は、電流拡散領域とドリフト領域を繋ぐ、ガード領域に挟まれる領域であり、抵抗を低くするためにイオン注入を行ってもよい。なお、
図5に示す例では、MOSが動作する最小限の構成としているため、例えばターミネーション領域等の機能を付加する構造を作製してもよい。
【0054】
イオン注入時に用いるマスク条件(種類、厚さ、作製条件、マスク除去条件など)及び注入条件(イオン種、注入エネルギー、注入段数、注入角度など)は、本発明のシステムで作製条件に関して最適化された条件を適用してもよく、注入深さ、注入領域、不純物濃度等は、本実施形態の設計条件計算システム100で設計及び構造に関して最適化された条件を適用してもよい。
【0055】
次に、ステップDで、炭化珪素基板及び炭化珪素エピタキシャル層の周囲に不純物活性化アニールのキャップ材の炭素膜を堆積させ、不純物活性化アニールを、例えば1600~1800℃の温度で不純物活性化アニールを行う。その後、キャップ材の炭素層を酸素プラズマアッシングにより除去する。その後、熱酸化膜を形成し、希釈フッ酸溶液を用いて熱酸化膜を除去して、表面を清浄化してもよい。キャップ材の種類、アニール温度、アニール時間、キャップ材の除去方法における条件や、熱酸化膜の種類、形、厚さ、その他形成条件、及び除去条件等は、本実施形態の設計条件計算システム100で作製条件に関して最適化された条件を適用してもよい。
【0056】
次に、ステップEで、トレンチを形成する。例えば、ソース領域とボディ領域と電流拡散領域を貫通してガード領域内に底が収まるトレンチをエッチングによって形成する。
その後、熱酸化膜を形成し、希釈フッ酸溶液を用いて熱酸化膜を除去して、エッチングした表面を清浄化してもよい。エッチングに用いるマスク条件(種類、厚さ、作製条件、マスク除去条件)、及びエッチング条件(エッチング時間、エッチングガス種、印加電圧など)、及びエッチング後処理(熱酸化膜の種類、形、厚さ、その他形成条件及び除去条件など)は、本実施形態の設計条件計算システム100で作製条件に関して最適化された条件を適用してもよい。また、トレンチの深さ・幅・形状等は、本実施形態の設計条件計算システム100で設計や構造に関して最適化された条件を適用してもよい。
【0057】
次に、ステップFで、半導体にゲート絶縁膜を形成する。例えば、ゲート絶縁膜は、熱CVD法によってSiO2膜から形成される。ゲート絶縁膜の厚さは、例えば0.005~0.15μm程度である。厚さ100~300nm程度のn型多結晶シリコン膜からなるゲート電極を堆積した後、ゲート電極を覆うように層間膜を形成するとよい。ゲート絶縁膜及びゲート電極及び層間膜の種類、作製条件(作製方法など)、アニール温度、アニール時間、キャップ材の除去方法における条件、熱酸化膜の種類、その他形成条件、除去条件などは、本実施形態の設計条件計算システム100で作製条件に関して最適化された条件を適用してもよく、ゲート絶縁膜及び熱酸化膜の形、厚さなどは、本実施形態の設計条件計算システム100で設計や構造に関して最適化された条件を適用してもよい。
【0058】
次に、ステップGで、各種電極を形成する。例えば、ソース領域と電位固定領域とコンタクトを取るために、レジストをマスクにして層間膜をエッチングし、コンタクトホールを形成し、シリサイド用メタルを堆積させた後、700℃~1000℃のアニール処理によりシリサイド化して、ソースベース共通コンタクトを形成する。その後、ゲート電極とコンタクトを取るために、層間膜をエッチングし、ゲートコンタクトホールを形成する。
【0059】
さらに、ソース電極を形成する。併せて、裏面のドレイン領域上をシリサイド化して、ドレインコンタクトを形成し、更にドレインコンタクト電極を形成する。シリサイドメタルやソース電極とドレインコンタクト電極には、例えばNi、Alなどの金属材料を用いるとよい。その後、デバイス保護のために、絶縁体からなる表面全体を覆う表面保護膜を形成する工程、電極へ配線する工程を経て、半導体装置が完成する。
【0060】
層間膜エッチング条件(エッチング時間、エッチングガス種、印加電圧など)及びコンタクト、電極条件(金属材料、シリサイドアニール温度等条件など)及び絶縁膜、配線作製条件などは、本実施形態の設計条件計算システム100で作製条件に関して最適化された条件を適用してもよく、電極及びコンタクト領域、範囲などは、本実施形態の設計条件計算システム100で設計や構造に関して最適化された条件を適用してもよい。
【0061】
次に、前述した実施形態の設計条件計算システム100を適用した具体的な実施例を説明する。
【0062】
<実施例1>
本実施例の設計条件計算システム100は、パワー半導体装置として、チャネルの構造とJFETの構造を独立に設計可能な構造を持つトレンチMIS FET、及びトレンチMIS FETを搭載したインバーター回路について最適条件を計算する。
【0063】
本実施例の入力画面の一例を
図6A、
図6Bを用いて説明する。本実施例で最適化する半導体装置はトレンチMIS FET構造を有する炭化ケイ素半導体装置である。例えば、入力画面では、トレンチ深さやドリフト濃度など、その設計において変化させたくない0又は1以上の変数を固定値として指定できる。一方、例えばトレンチ間のn-型のエピタキシャル層のJFET領域の設計やトレンチの幅や深さに対応するチャネル設計などの固定値として設定されない変数は最適化される。特に、本実施例で最適化されるトレンチMIS FET構造はトレンチをチャネルとして使用して、JFET領域がトレンチと離間して形成されるため、チャネルとJFETを独立して設計でき、一般的に問題となるオン抵抗と短絡耐量のトレードオフを回避する設計が可能となる。そこで、
図6A、
図6Bに示す例では、オン抵抗を最小とし、短絡耐量を適用回路に対して十分な時間(3μs)以上となるように目的変数の値を設定した。変数の種類、数などの条件は、
図6A、
図6Bに示すものに限らない。
【0064】
以上に説明したように、実施例1の設計条件計算システム100によると、実施例1に示すように、最適化される半導体装置のトレンチMIS FET構造を最適化設計でき、短絡時間とオン抵抗の両方の要求を満たす設計を容易に可能となる。
【0065】
<実施例2>
本実施例の設計条件計算システム100は、材料がSiCに限らないパワー半導体装置が電力変換用途であるために特有な問題となる熱やノイズに対する最適条件を計算する。
【0066】
本実施例では、Si又はSiC又は他の材料で作製されたパワー半導体装置を最適化する。パワー半導体装置は、電力変換を用途としており、大電力を扱うため、熱やノイズが誤動作などの安全面や動作寿命の観点から重要である。特に、ノイズの発生元がは、デバイスか回路かの特定が困難であり、発生原因の特定が技術者の経験知に依存する。従って、パワー半導体装置の設計や、パワー半導体装置搭載アプリケーションの設計において本発明は大きな効果を奏する。
【0067】
図7は、本実施例のモデル構築ユニット102の前段の構成する補正機1の一例を示す図である。補正機1は、1以上の多層で構成されている。
図7では、4層の構成を図示するが、層の数はこれ以外でもよい。これらの層のうち、本実施例では1以上の層が熱シミュレーションを用いたスパイラル学習で作成された熱特性回帰モデルを含む。例えば、入力における半導体装置搭載回路の設計や構造にモジュールの構造を規定する変数を入力すると、熱特性回帰モデルの層によって、モジュールの構造を規定する変数は熱容量や熱抵抗などの回路の成分として変換される。本実施例では
図7に示すパラメータだけでなく、熱やノイズを引き起こすパラメータ、及び熱やノイズの影響を受けるパラメータが入力又は出力されるとよい。
【0068】
<実施例3>
本実施例では、補正機1は、1以上の多層で構成されており、少なくとも一つの層が、半導体の物理特性を表した物理式を用いて特徴量を抽出し、次元を削減するエンコーダによって構成される。これにより、物理式に基づいた補正が可能となり、過学習を回避できる。
【0069】
図8は、本実施例のモデル構築ユニット102の前段の構成する補正機1の一例を示す図である。エンコーダで次元削減される入力の例として、デバイス構造の設計値への適用を説明する。MOS FETにおけるドレイン電流式において、チャネル幅Wとチャネル長Lはホトグラフィ工程におけるマスク合わせずれによって設計値と相違していることがあるが、下式で電流に寄与するため、チャネル幅Wとチャネル長Lは出力のオン抵抗と特徴量W/Lが相関する。
I
ds=μ
effC
oxW/L(V
g-V
th)V
ds
【0070】
従って、前段の補正機1の1以上の層に存在するエンコーダで上式を計算することによって、特徴量W/Lを抽出し、特徴量W/Lを補正することで正しい出力が得られる。このようなエンコーダは、物理式に限らず、
図9に示すように、入力と出力に同じ値を入れて学習を行うオートエンコーダによっても抽出できる。また、前述と同様に、物理式を用いたエンコーダ、及び学習によって構築されたエンコーダは後段の補正機2にも適用できる。
【0071】
<実施例4>
本実施例では、補正機2で補正された半導体装置の実特性を中間層として扱う。
【0072】
図10は、本実施例のモデル構築ユニット102の一例を示す図である。
【0073】
実施例4において、中間層は、特性回帰モデルと補正機2Aと回路特性モデルで構成される。
【0074】
入力画面に入力された半導体装置のパラメータと半導体装置を搭載する回路のパラメータは、各々補正機1A、補正機1Bに別に入力される。補正機1Aは、半導体装置の材料、作製工程、及び設計の少なくとも一つを表すパラメータを観測不可能な物性値に変換する。
図3に示すと同様に、特性回帰モデルは、半導体装置の観測不可能な物性値を観測不可能な理論特性値に変換し、補正機2Aは、半導体装置の観測不可能な理論特性値を測定可能な物理量に変換する。
【0075】
補正機2で補正された半導体装置の実特性が中間層として扱われるので、デバイス特性は搭載回路の材料、作製工程、設計、構造と相関関係を有さず、デバイス特性に明らかに関連するデバイスの入力値から変換される変数にのみ関係付けられる。さらに、回路特性は、デバイスに関する変数と直接的には関係付けられず、搭載している半導体装置の特性β1,β2,…と関連付けられる。従って、特性回帰モデルは主にデバイスシミュレーションによる学習によって作成され、回路特性モデルは、主にデバイス特性を等価回路に置き換えた回路シミュレーションによる学習によって作成され、半導体装置を搭載した回路の材料、作製工程、及び設計の少なくとも一つを表すパラメータを、半導体装置を搭載した回路の理論特性値に変換する。回路特性モデルは、特性回帰モデルの出力値を半導体装置の特性の観測量との相関付けてもよい。例えば、半導体装置の特性の観測量としてオン抵抗を考えた場合、半導体装置搭載回路の設計や構造の条件として入力した値を補正機1で変換して求められた半導体装置の特性をオン抵抗や、モジュール構造によって生じる抵抗や、回路の抵抗を、補正機2Bによって半導体装置搭載回路の特性に変換し、回路特性モデルによって半導体装置搭載回路の実測値に変換する。
【0076】
補正機2Bは、半導体装置を搭載した回路の理論特性値を、当該回路の観測可能な特性値に変換する。
【0077】
このように、予め直接相関がない相関は考慮せず、一部の相関だけを考慮して推論することで、より学習しやすく過学習を回避したモデルが作成できる。
【0078】
<実施例5>
本実施の形態では、SiCパワー半導体装置及びSiCパワー半導体装置搭載回路の作製方法を説明する。
図5を参照してトレンチMIS FETの作製工程を前述したように、本実施例の半導体装置の製造方法は、前述した実施形態の設計条件計算システム100で設計や構造に関して最適化された作製条件を用いて半導体装置を製造する。
【0079】
入力画面における入力値には、例えばトレンチを作製するためのエッチング時間や電圧、酸化膜の種類や酸化膜作製中の圧力など、プロセス中の条件を入力し最適化できる。また、学習によって作成されたモデル構築ユニット102の補正機1を半導体製造装置に搭載すれば、例えば、ホトグラフィ工程におけるマスクのずれ量や、酸化膜作製工程の条件などの作製条件から移動度などの物性値を計算でき、補正機1の学習結果を半導体装置を作製する製造装置にフィードバックできる。
【0080】
このように、本実施形態の設計条件計算システム100を用いれば、
図11に示すように、半導体作製装置を設計条件計算システム100と連携することで、諸々のデバイス条件に対して最適な条件で製造が可能となる。
【0081】
<実施例6>
前述した実施例1~5では、モデル構築ユニット102が、事前学習された学習モデルに基づいて回帰モデルが予め構築される。一方、本実施例では、事前学習によって構築された回帰モデルが十分な精度を有さなくても、最適化計算の結果をフィードバックして、回帰モデルを再構築し、回帰モデルの精度を上げつつ、最適化計算を繰り返す。
【0082】
図12A、
図12Bは、本実施例の設計条件計算システム100が設計条件を計算する処理のフローチャートである。
【0083】
本実施例では、最適化計算の終了後、求められた目的変数がある一定の基準を満たさない場合に、最適化設計周りの物理シミュレーションをやり直し、モデル構築ユニット102の中間層の特性回帰モデルにフィードバックして再度学習することで、より精度の高い回帰モデルを構築し、最適化計算を行う。
図12A、
図12Bに示す例では、目的変数βiと入力画面に入力された目的変数の条件となる目標値ansとの差が所定の閾値εより小さくなるように最適化する。すなわち、ステップ8で、目的変数βiと目標値ansとの差が所定の閾値εより大きいかを判定し、目的変数βiと目標値ansとの差が所定の閾値εより大きい場合、最適化計算で最適化した入力値をモデル構築ユニット102にフィードバックし、フィードバックされた入力値をモデル構築ユニット102の前段の補正機1で変換し、フィードバックされた入力値が変換された物性値付近での物理シミュレーションを行って、当該物性値と物理シミュレーションで得られた理論特性値を、モデル構築ユニット102の特性回帰モデルにフィードバックして、新しい特性回帰モデルを構築する。その後、新しい特性回帰モデルを用いて再度最適化計算を行う。最適化計算の結果は再度ステップ8で判定され、目的変数βiと目標値ansとの差が所定の閾値εより大きい場合は、再計算処理を繰り返す。計算された目的変数βiと目標値ansとの差が所定の閾値εより小さい場合、繰り返し処理を終了し、最適計算結果を表示する。
【0084】
図12Bに示すシーケンス図のように、最適化計算と物理シミュレーションとモデル構築が同じ回数で繰り返してもよいが、最適化計算を1回以上行えば、最適化計算のための回帰モデルと条件の取り出しは複数回行ってもよい。例えば、予め最適化計算の回数又は時間を指定し、その回数又は時間の範囲内で目標値ansとの差がεより小さい目的変数βiを導出できる説明変数を見つけられない場合、モデルを再構築するとよい。また、本実施例の場合も、実施例1と同様、データ保存ユニット104へのデータの保存回数は前述に限らない、また、モデル構築ユニット102の処理(ステップ4)及び物理シミュレーション(ステップ9)は設計条件計算システム100の外部(例えばクラウドなど)で行ってもよい。
【0085】
以上に説明した、最適化計算のモデル構築へのフィードバックによって、事前学習されたモデル構築ユニット102の中間層の特性回帰モデルにおいて、事前学習のシミュレーションデータ数が少なく、かつ特性回帰モデルの精度が低くても、求めたい設計に近い範囲のシミュレーションデータがフィードバックによって追加されるため、最適化計算結果に近い範囲で回帰モデルの精度を向上し、所望の目的変数を導出する説明変数の計算精度も向上できる。
図12Aでは、目的変数βiと目標値ansとの差が所定の閾値εより小さいことを繰り返し計算の条件としたが、繰り返し計算の条件はこれに限らず、入力画面で最小、最大、一つの値、値の範囲を指定できる。
【0086】
以上に説明したように、本発明の実施例の設計条件計算システム100は、所定の処理を実行する演算装置(計算ユニット101)と、データが入力される入力部(入出力ユニット108)と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置(データ保存ユニット104)とを備え、前記入力部は、半導体装置の材料、作製工程、及び設計の少なくとも一つを表す第1のパラメータと、前記半導体装置を搭載する回路の材料、作製工程、及び設計の少なくとも一つを表す第2のパラメータと、前記半導体装置及び前記半導体装置を搭載する回路の少なくとも一つの特性を表す第3のパラメータとの入力を受け、設計条件計算システム100は、前記演算装置が、モデル構築ユニットが構築したモデルを用いて、所定の条件を満たすように、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを計算する最適化計算ユニット103を有し、モデル構築ユニット102が構築するモデルは、前段に設けられる第1の変換モデル(物性値計算モデルである補正機1)と、後段に設けられる第2の変換モデル(物理量計算モデルである補正機2)と、前記第1の変換モデルと前記第2の変換モデルとの間に設けられる特性回帰モデルを含み、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを入力とし、前記第3のパラメータを出力とすることによって各パラメータを関係付けており、前記第1の変換モデルは、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータの少なくとも一方を前記特性回帰モデルに入力される物性値に変換し、前記特性回帰モデルは、観測不可能な物性値を観測不可能な理論特性値に変換し、前記第2の変換モデルは、理論特性値を実特性値に変換し、最適化計算ユニット103は、構築されたモデルを用いて、前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータの一部に設定される固定値を拘束条件として、前記第3のパラメータの値及び範囲の一つ又は組み合わせによる条件を満たすように、前記拘束条件でない前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを計算し、前記計算された第1のパラメータ及び第2のパラメータを出力するので、アプリケーションの要請に合わせたパワーデバイスにおける多数の特性を満たす最適化設計を迅速かつ低コストで提供できる。また、特性回帰モデルで用いられるシミュレーションは観測不可能なパラメータの関係しか計算できないのに対し、前段の補正機1と後段の補正機2によって観測可能なデータのモデルを高精度に構築できる。また、モデルを作成することで、毎回時間のかかるシミュレーションをせずに、高精度に特性を予測できる。
【0087】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0088】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0089】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0090】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0091】
100 設計条件計算システム
101 計算ユニット
102 モデル構築ユニット
103 最適化計算ユニット
104 データ保存ユニット
105 通信部
106 操作部
107 出力部
108 入出力ユニット