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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008240
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】搬送装置及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 7/08 20060101AFI20230112BHJP
   F24F 13/32 20060101ALN20230112BHJP
【FI】
B65G7/08 C
F24F13/32
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111637
(22)【出願日】2021-07-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000191319
【氏名又は名称】新菱冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
(72)【発明者】
【氏名】浜野 明大
(57)【要約】
【課題】天井吊り下げ型の空気調和機を設置現場に搬送する際に好適に用いることができる搬送装置を提供する。
【解決手段】天井吊り下げ型の空気調和機100を設置現場に搬送する搬送装置1は、空気調和機100の左右両側面113,114に取り付けられ、空気調和機を支持する支持部材2と、支持部材2に係合して空気調和機100を保持する保持部を有し、空気調和機100を保持した状態で移動可能な台車3と、を備える。台車3に設けられる保持部は、空気調和機100の左右両側面113,114を支持する支持部材2を回動可能に保持しており、空気調和機100を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井吊り下げ型の空気調和機を設置現場に搬送する搬送装置であって、
前記空気調和機の左右両側面に取り付けられ、前記空気調和機を支持する支持部材と、
前記支持部材に係合して前記空気調和機を保持する保持部を有し、前記空気調和機を保持した状態で移動可能な台車と、
を備え、
前記保持部は、前記支持部材を回動可能に保持しており、前記空気調和機を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能であることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記空気調和機は、空気調和機本体の前後方向にチャンバーが組み付けられていることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記支持部材は、上下方向に配置される第1の空気調和機及び第2の空気調和機のそれぞれの左右両側面に取り付けられ、前記第1の空気調和機及び前記第2の空気調和機を一体的に支持することを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記台車は、前記保持部を上下方向に動作させる昇降駆動部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
天井吊り下げ型の空気調和機を設置現場に搬送する搬送方法であって、
工場において、前記空気調和機の左右両側面に、前記空気調和機を支持する支持部材を取り付ける第1工程と、
前記工場において、前記支持部材に係合して前記空気調和機を保持する保持部を有する搬送装置を準備し、前記保持部を前記支持部材に係合させることにより前記空気調和機を前記搬送装置に積載する第2工程と、
前記空気調和機を積載した前記搬送装置を輸送車両に積載して前記設置現場のある建築物へ運搬する第3工程と、
前記建築物において、前記輸送車両から前記空気調和機を積載した前記搬送装置を降ろし、前記空気調和機を積載した状態で前記搬送装置を移動させることにより前記設置現場へ搬送する第4工程と、
を有し、
前記第4工程では、前記保持部に対して前記支持部材を回動させることにより、前記空気調和機を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能であり、前記水平姿勢と前記起立姿勢のいずれかの姿勢を保持した状態で前記搬送装置を移動させることが可能であることを特徴とする搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井吊り下げ型の空気調和機を設置現場に搬送する搬送装置及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物において、上階床スラブの下面側の下フロアの天井空間には、例えば特許文献1に開示されるような空気調和機が設置される。この空気調和機は、空気調和機本体の前後方向に吹出チャンバーと吸気チャンバーとが組み付けられた構成である。そして空気調和機本体の前後方向に吹出チャンバーと吸気チャンバーとが組み付けられた状態の空気調和機が、天井空間に吊り下げられた状態に設置される。
【0003】
従来、上記のような空気調和機を設置する作業において、空気調和機本体に対して吹出チャンバーや吸気チャンバーを組み付ける作業は、空気調和機の設置現場で行われるのが一般的であった。しかし、チャンバーを組み付ける作業は、煩雑であり、熟練度を要する。そのため、設置現場における作業効率を低下させる要因となっている。例えば、新規に普請される建築現場では、各フロアに空気調和機を設置するための工期が予め定められており、空気調和機本体にチャンバーを組み付ける作業に要する時間が長くなると、予定された工期で作業を終えることが難しくなる。また、近年は、建築現場における労働者の確保が難しい傾向にあるため、設置現場における作業を軽減することが望まれている。
【0004】
そこで、従来は設置現場で行われていたチャンバーの組み付け作業を予め工場で行い、チャンバーが組み付けられた空気調和機を工場から設置現場へ搬送することが提案されている。例えば特許文献2には、工場において、空気調和機本体の前後方向に吹出チャンバーと吸気チャンバーとを組み付け、更に空気調和機本体とチャンバーとを一体的に保持するフレームを組み付けた空気調和機を作成し、工場から設置現場へ搬送することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6709485号公報
【特許文献2】特開2021-76367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、空気調和機本体の前後方向に吹出チャンバーと吸気チャンバーとが組み付けられると、空気調和機の平面サイズが大きくなる。一方、建築現場に設置される資材搬入用の仮設エレベーターには、その幅が1メートル程度しかない狭いタイプのものがある。また、各フロアの通路の中にも、通路幅が1メートル程度しかない狭い通路が存在することもある。そのため、工場で空気調和機本体にチャンバーを組み付けてしまうと、上記のような狭小箇所を如何にして搬送するかが課題となる。
【0007】
この課題に対し、特許文献2では、前後方向にチャンバーが組み付けられた空気調和機を、水平姿勢ではなく、左右の側面を上下に向けた縦置き姿勢で台車に載せることが提案されている。空気調和機を縦置き姿勢とすることにより、空気調和機が占有する平面サイズを小さくすることが可能である。それ故、上記のような狭小箇所であっても空気調和機を搬送することができるようになる。
【0008】
一方、空気調和機を工場から建築現場へ搬送する際に、空気調和機を縦置き姿勢で輸送車両に積載すると、搬送時の振動によって内部の冷媒配管や熱交換器等を破損してしまう可能性がある。これを防止するためには、工場から建築現場へ搬送する際に、空気調和機を水平姿勢のままで輸送車両に積載することが望まれる。
【0009】
したがって、特許文献2のような台車を用いて建築現場の狭小箇所を搬送しようとすると、水平姿勢で搬入される空気調和機を建築現場において台車に載せ替える作業を行わなければならない。この場合、空気調和機を台車に載せ替える作業には、少なくとも水平姿勢の空気調和機の平面サイズと台車の平面サイズとを合わせた作業スペースが必要となる。しかし、建築現場によっては、輸送車両の積み荷を仮置きしておくスペースの他に十分な作業スペースを確保することが困難なことがある。そのような場合、建築現場において、輸送車両から降ろされる水平姿勢の空気調和機を縦置き姿勢に変換して台車に載せ替える作業を行うことは極めて難しいという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、上述した載せ替え作業を不要とし、天井吊り下げ型の空気調和機を設置現場に搬送する際に好適に用いることができる搬送装置及び搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、天井吊り下げ型の空気調和機を設置現場に搬送する搬送装置であって、前記空気調和機の左右両側面に取り付けられ、前記空気調和機を支持する支持部材と、前記支持部材に係合して前記空気調和機を保持する保持部を有し、前記空気調和機を保持した状態で移動可能な台車と、を備え、前記保持部は、前記支持部材を回動可能に保持しており、前記空気調和機を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能であることを特徴とする構成である。
【0012】
第2に、本発明は、上記第1の構成を有する搬送装置において、前記空気調和機は、空気調和機本体の前後方向にチャンバーが組み付けられていることを特徴とする構成である。
【0013】
第3に、本発明は、上記第1又は第2の構成を有する搬送装置において、前記支持部材は、上下方向に配置される第1の空気調和機及び第2の空気調和機のそれぞれの左右両側面に取り付けられ、前記第1の空気調和機及び前記第2の空気調和機を一体的に支持することを特徴とする構成である。
【0014】
第4に、本発明は、上記第1乃至第3のいずれかの構成を有する搬送装置において、前記台車は、前記保持部を上下方向に動作させる昇降駆動部を有することを特徴とする構成である。
【0015】
第5に、本発明は、天井吊り下げ型の空気調和機を設置現場に搬送する搬送方法であって、工場において、前記空気調和機の左右両側面に、前記空気調和機を支持する支持部材を取り付ける第1工程と、前記工場において、前記支持部材に係合して前記空気調和機を保持する保持部を有する搬送装置を準備し、前記保持部を前記支持部材に係合させることにより前記空気調和機を前記搬送装置に積載する第2工程と、前記空気調和機を積載した前記搬送装置を輸送車両に積載して前記設置現場のある建築物へ運搬する第3工程と、前記建築物において、前記輸送車両から前記空気調和機を積載した前記搬送装置を降ろし、前記空気調和機を積載した状態で前記搬送装置を移動させることにより前記設置現場へ搬送する第4工程と、を有し、前記第4工程では、前記保持部に対して前記支持部材を回動させることにより、前記空気調和機を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能であり、前記水平姿勢と前記起立姿勢のいずれかの姿勢を保持した状態で前記搬送装置を移動させることが可能であることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、搬送装置の保持部が支持部材を回動可能に保持しており、空気調和機を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能である。そのため、搬送装置は、空気調和機を水平姿勢と起立姿勢との間で適宜姿勢変化させつつ、空気調和機を搬送することが可能であり、従来のような載せ替え作業が不要である。特に、搬送装置は、空気調和機の前後の面を上下に向けた起立姿勢とした状態で空気調和機を搬送することができるため、空気調和機を破損させることなく、狭小箇所を搬送することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】空気調和機を搬送する搬送装置を示す斜視図である。
図2】空気調和機の一構成例を示す図である。
図3】搬送装置の一構成例を示す図である。
図4】支持部材を拡大して示す図である。
図5】支柱部に設けられる保持部を拡大して示す図である。
図6】空気調和機の左右両側面に支持部材を取り付けた状態を示す図である。
図7】搬送装置に空気調和機を積載する例を示す図である。
図8】保持部と支持部材との係合状態を例示する図である。
図9】空気調和機が水平姿勢で搬送装置に積載された状態を示す図である。
図10】空気調和機を起立姿勢とした状態を示す図である。
図11】搬送装置から空気調和機を降ろす作業工程の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の好ましい一実施形態における搬送装置1を示す斜視図である。図1に示すXYZ三次元座標系は、XY平面を水平面とし、Z方向を鉛直方向とする座標系であり、他の図においても共通する座標系である。この搬送装置1は、天井吊り下げ型の空気調和機100を設置現場へ搬送するためのものである。また、搬送装置1は、複数の空気調和機100A,100Bを積載して搬送することが可能な構成である。尚、本実施形態では、図1に示すX軸に平行な方向を空気調和機100A,100Bの左右方向とし、Y軸に平行な方向を空気調和機100A,100Bの前後方向と定義する。
【0020】
図2は、搬送装置1によって搬送される空気調和機100(100A,100B)の一構成例を示す図である。空気調和機100は、空気調和機本体110と、吹出チャンバー120と、吸気チャンバー130とを備えている。すなわち、空気調和機100は、空気調和機本体110の前後方向(Y方向)に吹出チャンバー120と吸気チャンバー130とが組み付けられることによって構成される。
【0021】
空気調和機本体110の前面側には、吹出チャンバー120を装着するための装着部111が設けられている。例えば、装着部111は、空気調和機本体110の前面側に形成される吹出口の周縁部を前方側に向かってスリーブ状に突出させた形態を有している。一方、吹出チャンバー120の空気調和機本体110と対向する面(後面)には、同様の装着部が設けられている。そして吹出チャンバー120の装着部を空気調和機本体110の装着部111に嵌め込み、装着部111の周囲に多数のビスを打ち付けることにより、吹出チャンバー120が空気調和機本体110の前方側に組み付けられる。この吹出チャンバー120には、温度調整された空気を室内に導くダクトを接続するための複数のダクト接続部121が設けられている。
【0022】
また、空気調和機本体110の後面側には、吸気チャンバー130を装着するための装着部112が設けられている。例えば、装着部112は、装着部111と同様、空気調和機本体110の後面側に形成される吸気口の周縁部を後方側に向かってスリーブ状に突出させた形態を有している。一方、吸気チャンバー130の空気調和機本体110と対向する面(前面)には、同様の装着部が設けられている。そして吸気チャンバー130の装着部を空気調和機本体110の装着部112に嵌め込み、装着部112の周囲に多数のビスを打ち付けることにより、吸気チャンバー130が空気調和機本体110の後方側に組み付けられる。
【0023】
また、空気調和機本体110は、右側面113及び左側面114のそれぞれに吊りボルトなどのボルト部材を接続するための接続部115を有している。例えば、左側面114には、前後方向(Y方向)に所定間隔離れた2箇所の位置に2つの接続部115,115が設けられている。また、図示を省略しているが、右側面113においても、左側面114と同じ2箇所の位置に2つの接続部115,115が設けられている。また、空気調和機本体110は、左側面114に、冷媒配管やドレン配管などを接続するための管継手部116が設けられている。
【0024】
そして空気調和機本体110は、上述のように前後方向に吹出チャンバー120及び吸気チャンバー130が組み付けられることにより、吹出チャンバー120及び吸気チャンバー130が一体となった空気調和機100を構成する。空気調和機本体110に吹出チャンバー120及び吸気チャンバー130を組み付ける作業は煩雑であり、一定の熟練度を要する。そのため、本実施形態では、空気調和機本体110に吹出チャンバー120及び吸気チャンバー130を組み付けて空気調和機100を作成する作業を工場で行う。尚、空気調和機100は、空気調和機本体110の後面側に吸気チャンバー130が組み付けられないこともある。そして工場において作成した空気調和機100を、図1に示すように搬送装置1に積載し、設置現場へと搬送する。以下、搬送装置1について詳しく説明する。
【0025】
図3は、搬送装置1の構成例を示す図である。図3に示すように、搬送装置1は、支持部材2と、台車3とを備えている。この搬送装置1は、2つの空気調和機100A,100Bの左右両側面113,114を支持部材2で支持し、台車3がその支持部材2を保持するように構成される。
【0026】
図3に示すように、支持部材2は、空気調和機100の右側面113及び左側面114のそれぞれを支持する2つの支持部材2a,2bを備えている。すなわち、支持部材2aが空気調和機100の左側面114を支持し、支持部材2bが空気調和機100の右側面113を支持する。これら2つの支持部材2a,2bは、台車3の左右方向(X方向)における中心線Mを基準として左右対称な構造を有している。また、これらの支持部材2a,2bは、2つの空気調和機100A,100Bの左右両側面113,114を一括支持できるように構成される。
【0027】
図4は、支持部材2aを拡大して示す図である。支持部材2aは、上下方向に配置される2つの空気調和機100A,100Bの左側面114に対向するように配置され、それら2つの空気調和機100A,100Bの左側面114を一括支持する。支持部材2aは、所定間隔離れた位置で互いに平行に配置される支持部11,11と、それら支持部11,11を相互に連結する連結部12とを有する概略H型の構造体として形成される。
【0028】
支持部11,11は、形鋼又は鋼管によって形成され、その両端に、空気調和機100A,100Bに取り付けられる取付部13a,13bを有している。例えば、取付部13a,13bは、支持部11の長手方向に対して直交する方向に延設された平板部と、その平板部に設けられるボルト部材を挿通可能な挿通部とによって構成される。尚、図4では、取付部13a,13bに設けられる挿通部をU字状の切り欠きとして設けた例を示している。また、互いに平行な2つの支持部11,11の一端側に設けられる取付部13a,13aの間隔は、空気調和機100Aの左側面114に設けられている接続部115,115の間隔に一致する。更に、2つの支持部11,11の他端側に設けられる取付部13b,13bの間隔は、空気調和機100Bの左側面114に設けられている接続部115,115の間隔に一致する。そして取付部13a,13aは、上側に配置される空気調和機100Aの接続部115,115に接合した状態に配置され、ボルトとナットが締結されることによって接続部115,115に固定される。また、取付部13b,13bは、下側に配置される空気調和機100Bの接続部115,115に接合した状態に配置され、ボルトとナットが締結されることによって接続部115,115に固定される。
【0029】
連結部12は、形鋼又は鋼管によって形成され、2つの支持部11,11間を横断するように配置され、その両端が2つの支持部11,11に接続されている。また、連結部12は、空気調和機100A,100Bに対向する面の反対側の面に、回転軸14が突出した状態に設けられている。この回転軸14は、所定の外径を有する軸部14aと、軸部14aよりも大径の頭部14bとを有している。また、連結部12は、回転軸14から後方側(+Y方向側)に向かって所定間隔離れた位置に、第1の回動規制部16が設けられている。例えば、第1の回動規制部16は、後述する姿勢保持部34の棒状体37と嵌合する孔16aによって構成される。更に、連結部12は、回転軸14から前方側(-Y方向側)に向かって所定間隔離れた位置に支持部材2aの回転を規制するストッパー18が設けられている。
【0030】
また、連結部12には、金属板15が取り付けられており、その金属板15の先端には第2の回動規制部17が設けられている。例えば、第2の回動規制部17は、第1の回動規制部16と同様に、後述する姿勢保持部34の棒状体37と嵌合する孔17aによって構成される。そして、第1の回動規制部16及び第2の回動規制部17は、回転軸14を中心とする同心円上に設けられ、互いに約90度の角度を成す位置に設けられている。尚、ここでは、支持部材2aについて説明したが、支持部材2bについてもこれと同様の構成である。
【0031】
図3に戻り、台車3は、基台20と、その基台20から立設する一対の支柱部24a,24bとを備えている。基台20は、下面に車輪22が取り付けられた一対の移動基台21,21と、それら一対の移動基台21,21を所定間隔離れた位置で互いに平行な状態に連結する一対の連結基台23,23とを備えている。基台20は、一対の移動基台21,21と、一対の連結基台23,23とが組み付けられることにより、平面視略矩形状に形成されている。また、基台20に設けられる2つの連結基台23,23のうち、1つの連結基台23は、基台20から取り外し可能である。1つの連結基台23を台車3から取り外すと、基台20は、平面視略コ字状の形態となる。
【0032】
支柱部24a,24bは、移動基台21,21の長手方向中央の位置に設けられている。支柱部24a,24bの内部には、滑車によって支持された金属製のチェーン25が配置されている。このチェーン25は、昇降部材26を支柱部24a,24bに沿って上下方向に昇降可能に支持している。また、チェーン25は、回転操作可能な操作ハンドル27によって回転する巻取部(図示省略)に係止した状態に接続されている。そのため、例えば操作ハンドル27を所定方向に回転させることにより、巻取部がチェーン25を所定方向に巻き取り、昇降部材26を支柱部24a,24bに沿って上昇させることができる。また、操作ハンドル27を所定方向と反対方向に回転させることにより、巻取部がチェーン25を反対方向に巻き取り、昇降部材26を支柱部24a,24bに沿って下降させることができる。つまり、操作ハンドル27及びチェーン25は、昇降部材26を上下方向に昇降動作させる昇降駆動部として設けられている。尚、本実施形態の昇降駆動部は、手動式の駆動部として構成される例を示しているが、これに限られるものではなく、電動式の駆動部として構成されるものであっても構わない。
【0033】
支柱部24a,24bは、基台20上において昇降部材26,26を互いに対向させた状態に配置されている。そして支柱部24aの昇降部材26には、支持部材2aに係合して空気調和機100A,100Bを保持する保持部30aが設けられている。また、支柱部24bの昇降部材26には、支持部材2bに係合して空気調和機100A,100Bを保持する保持部30bが設けられている。これら2つの保持部30a,30bは、台車3の左右方向(X方向)における中心線Mを基準として左右対称な構造を有している。
【0034】
図5は、支柱部24aに設けられる保持部30aを拡大して示す図である。図5(a)に示すように、保持部30aは、昇降部材26の上部に固定され、昇降部材26と一体的に昇降移動する。保持部30aは、台車3の前後方向(Y方向)に沿って立設した係止板32を有している。係止板32の中央には、支持部材2aの回転軸14を保持する軸受け部31が設けられる。例えば、軸受け部31は、係止板32をU字状に切り欠いた切欠部として形成される。この切欠部の幅は、回転軸14の軸部14aの外径よりも大きく、頭部14bの外径よりも小さい。そのため、軸受け部31は、回転軸14の軸部14aを保持することが可能である。
【0035】
また、係止板32は、軸受け部31から空気調和機100の後方側(+Y方向側)に向かって所定間隔離れた位置に、姿勢保持部34が設けられている。姿勢保持部34は、係止板32と平行なレバー保持板36を有している。そして姿勢保持部34は、係止板32に形成した孔35と、レバー保持板36に形成した孔とに挿通される棒状体37を有している。この棒状体37にはフランジ部38が設けられ、フランジ部38とレバー保持板36との間にはコイルバネ39が配置されている。そしてレバー保持板36から外側に突出する棒状体37の基端部には操作レバー40が装着されている。このように構成される姿勢保持部34は、コイルバネ39の付勢力によって棒状体37の先端を係止板32の孔35から突出させた状態に配置される。この姿勢保持部34は、図5(b)に示すように、操作レバー40がコイルバネ39の付勢力に抗して矢印F1方向に引っ張られると、棒状体37の先端を係止板32とレバー保持板36との間に引き込んだ状態となる。このような構成を有する姿勢保持部34は、棒状体37の先端を支持部材2aにおける第1の回動規制部16又は第2の回動規制部17に係合させることにより、支持部材2aが回転軸14を中心に回転することを規制し、空気調和機100A,100Bの姿勢を保持する。
【0036】
次に、搬送装置1に空気調和機100A,100Bを積載する例について説明する。搬送装置1に空気調和機100A,100Bを積載する際には、まず、空気調和機100A,100Bを上下方向に配置し、空気調和機100A,100Bの左右両側面113,114に支持部材2を取り付ける。図6は、空気調和機100A,100Bの左右両側面113,114に支持部材2を取り付けた状態を示す図である。工場において、空気調和機本体110に吹出チャンバー120及び吸気チャンバー130が組み付けられることによって作成された空気調和機100A,100Bは、フォークリフトなどの昇降機を用いて上下方向に配置される。図6では、空気調和機100Aが昇降機によって持ち上げられ、床面に載置されている空気調和機100Bの上方に配置された例を示している。その状態で、2つの空気調和機100A,100Bの左右両側面113,114に、支持部材2a,2bが取り付けられる。すなわち、支持部材2a,2bの支持部11,11の一端側に設けられている取付部13a,13aを空気調和機100Aの接続部115,115に接合させ、ボルトとナットを用いて締結し、他端側に設けられている取付部13b,13bを空気調和機100Bの接続部115,115に接合させ、ボルトとナットを用いて締結する。2つの空気調和機100A,100Bの左右両側面113,114に支持部材2a,2bが取り付けられると、2つの空気調和機100A,100Bは、所定間隔を隔てて上下方向に配置された状態に固定される。すなわち、2つの空気調和機100A,100Bは、支持部材2a,2bによって一体的に支持された状態となる。そして空気調和機100Aを持ち上げている昇降機を撤去することができる。
【0037】
次に、支持部材2a,2bによって一体的に支持された空気調和機100A,100Bを台車3に積載する。図7は、台車3に空気調和機100A,100Bを積載する例を示す図である。図7(a)に示すように、支持部材2a,2bによって一体化された空気調和機100A,100Bをフォークリフトなどの昇降機を用いて持ち上げ、台車3の上方位置に配置する。このとき、支柱部24a,24bの保持部30a,30bは同じ高さ位置となるように、予め支柱部24a,24bの操作ハンドル27を操作して高さ位置を調整しておく。そして図7(a)において矢印で示すように、空気調和機100A,100Bを、一対の支柱部24a,24bの間に下降させていき、支柱部24a,24bに設けられた保持部30a,30bを支持部材2a,2bに係合させる。このとき、支持部材2a,2bの回転軸14の直下に、保持部30a,30bの軸受け部31が位置するように調整を行い、空気調和機100A,100Bを下降させる。そして、支持部材2a,2bの回転軸14を保持部30a,30bの軸受け部31に差し込むことによって保持部30a,30bと支持部材2a,2bとを互いに係合させる。
【0038】
図8は、保持部30aと支持部材2aとの係合状態を例示する図である。図8に示すように、支持部材2aの回転軸14を保持部30aに設けられているU字状の軸受け部31に差し込むことによって、軸受け部31が回転軸14の軸部14aを保持した状態となる。このとき、軸受け部31は、回転軸14の頭部14bと連結部12との間に差し込まれる。そのため、回転軸14は、保持部30aから離脱しない状態で保持部30aによって保持される。
【0039】
また、回転軸14を軸受け部31に差し込む際には、図8に示すように操作レバー40を矢印F1方向に引き込んでおく。これにより、姿勢保持部34に設けられている棒状体37の先端が矢印F1方向に引き込まれるため、棒状体37の先端が支持部材2aに当たることなく、スムーズに回転軸14を軸受け部31に差し込むことができる。そして回転軸14を軸受け部31に差し込むことができると、操作レバー40を矢印F1方向に引き込む操作を止める。これにより、棒状体37は、コイルバネ39の付勢力によって係止板32から支持部材2aに向かって突出する。そして、支持部材2aの連結部12に設けられている第1の回動規制部16の孔16aの位置が棒状体37の先端の位置に下降すると、棒状体37の先端が孔16aに嵌入する。これにより、支持部材2aは、回転軸14と第1の回動規制部16との2箇所の位置が保持部30aと係止した状態となり、回転軸14を中心に回動することが規制される。また、このとき、ストッパー18も係止板32に接合した状態となり、支持部材2aの姿勢が保持される。尚、図8では、保持部30aと支持部材2aとの関係を示しているが、保持部30bと支持部材2bとの関係もこれと同様である。
【0040】
図9は、支持部材2a,2bが保持部30a,30bによって支持され、空気調和機100A,100Bが搬送装置1に積載された状態(水平姿勢)を示す図である。上記のようにして支持部材2a,2bが保持部30a,30bによって支持された状態になると、図9に示すように、空気調和機100A,100Bは、水平姿勢で支柱部24a,24bの所定高さ位置に保持される。このとき、姿勢保持部34の棒状体37が第1の回動規制部16の孔16aに係合しているため、支持部材2a,2bは回転軸14周りに回転しないようになっており、空気調和機100A,100Bの水平姿勢が保持される。
【0041】
そして空気調和機100A,100Bを水平姿勢に保持した状態で搬送装置1を移動させるときには、支柱部24a,24bに設けられている操作ハンドル27を回転させることにより、空気調和機100A,100Bを下降させる。つまり、図1に示すように、空気調和機100A,100Bを台車3に近接する位置まで下降させることにより、搬送装置1の重心位置を下げる。これにより、搬送装置1は、空気調和機100A,100Bを安定して保持できるようになる。また、搬送装置1の重心位置を下げることにより、車輪22を転がして搬送装置1を移動させる際、空気調和機100A,100Bの振動を抑制することもできる。このように空気調和機100A,100Bを搬送装置1に積載する作業は、工場において行われる。
【0042】
そして図1に示すように、水平姿勢の空気調和機100A,100Bを保持した状態の搬送装置1を輸送車両に積載し、工場から設置現場のある建築物へ搬送する。このとき、搬送装置1は、空気調和機100A,100Bを水平姿勢で保持しているため、搬送時に比較的大きな振動が作用したとしても、空気調和機100A,100Bを破損させることがない。また、空気調和機100A,100Bを保持する搬送装置1の重心位置が低いため、輸送車両に積載して搬送しても搬送装置1が横転することはない。したがって、搬送装置1は、2つの空気調和機100A,100Bを、同時に、且つ、安全に、工場から接地現場のある建築物へ搬送することができる。
【0043】
輸送車両が設置現場のある建築物へ到着すると、空気調和機100A,100Bを水平姿勢で保持した状態の搬送装置1を輸送車両から降ろす。そして搬送装置1の台車3に設けられている車輪22を接地させ、台車3を移動させることによって、搬送装置1を設置現場へと搬送する。
【0044】
建築現場において、空気調和機100A,100Bを保持した状態の搬送装置1を設置現場へ搬送する際には、搬送装置1を、資材搬入用の仮設エレベーターに載せて設置現場があるフロアへ搬送することがある。また、搬送装置1を、幅の狭い通路を通過させなければならないこともある。したがって、輸送車両から降ろした搬送装置1を設置現場へ搬送する際には、上記のような狭小箇所を正常に通過させる必要がある。
【0045】
本実施形態の搬送装置1は、保持部30a,30bが回転軸14を中心に支持部材2a,2bを回動可能に軸支している。そのため、搬送装置1は、保持部30a,30bに対して支持部材2a,2bを回動させることにより、空気調和機100A,100Bを水平姿勢から起立姿勢へと姿勢変化させることが可能である。そのような姿勢変化を行うためには、まず、図1に示すように水平姿勢の空気調和機100A,100Bを台車3に近接する位置まで下降させた状態から持ち上げる。すなわち、支柱部24a,24bに設けられている操作ハンドル27を回転させることにより、空気調和機100A,100Bを、図9に示すように所定の高さ位置まで持ち上げる。そして、操作レバー40を引き込む操作を行うことで、姿勢保持部34が第1の回動規制部16に係合している状態を解除する。これにより、空気調和機100A,100Bが水平姿勢で保持された状態が解除される。すると、支持部材2a,2bによって支持される空気調和機100A,100Bは、回転軸14を中心にして矢印R方向に回動可能となり、水平姿勢から起立姿勢へと姿勢変化する。
【0046】
図10は、空気調和機100A,100Bを起立姿勢とした状態を示す図である。図10に示すように、空気調和機100A,100Bは、水平姿勢から回転軸14を中心に約90度回転することにより、吹出チャンバー120及び吸気チャンバー130を上下方向に配置した起立姿勢となる。また、支持部材2a,2bが約90度回転することにより、金属板15に設けられている第2の回動規制部17が姿勢保持部34の位置へと回転する。その結果、姿勢保持部34の棒状体37の先端が第2の回動規制部17に設けられている孔17aに嵌入する。これにより、支持部材2a,2bは、回転軸14と第2の回動規制部17との2箇所の位置で保持部30a,30bと係合した状態となり、回転軸14を中心に回動することが規制される。つまり、搬送装置1は、空気調和機100A,100Bを起立姿勢とした状態で保持することができる。そして、搬送装置1は、空気調和機100A,100Bを起立姿勢で保持した状態で移動することができる。
【0047】
図10に示す起立姿勢は、吹出チャンバー120等が組み付けられる空気調和機本体110の前後の面を上下に向けた縦置き姿勢である。例えば、空気調和機本体110には、左右の側面を上下に向けた縦置き姿勢とすると、内部の冷媒配管や熱交換器等が破損してしまう機種が存在する。これに対し、本実施形態の搬送装置1は、空気調和機本体110の左右の側面を上下に向けるのではなく、空気調和機本体110の前後の面を上下に向けた起立姿勢とする。そのため、図10に示す起立姿勢のままで搬送装置1を移動させたとしても、搬送時の振動によって空気調和機本体110の内部に設けられている冷媒配管や熱交換器等を破損してしまうことがない。それ故、図10に示した状態で搬送装置1を移動させることにより、空気調和機100A,100Bに損傷を与えることなく、上述した狭小箇所を正常に通過させることが可能である。
【0048】
また、図10に示す起立姿勢では、吹出チャンバー120及び吸気チャンバー130が床面から浮いた状態に保持される。そのため、吹出チャンバー120及び吸気チャンバー130のそれぞれに過度な荷重が加わることを抑制することができる。それ故、脆弱な吹出チャンバー120や吸気チャンバー130が変形して破損してしまうことを防止することができる。
【0049】
このように搬送装置1は、空気調和機100A,100Bを保持した状態で空気調和機100A,100Bを水平姿勢から起立姿勢に簡単に姿勢変化させ、仮設エレベーターや通路などの狭小箇所を通過させることが可能である。そのため、狭小箇所を通過させる際に、空気調和機100A,100Bを搬送装置1から降ろす必要がなく、搬送効率に優れている。そして狭小箇所を通過した後、空気調和機100A,100Bを保持する姿勢を起立姿勢から再び水平姿勢に戻し、図1に示すように重心位置を下げた状態で搬送装置1を移動させるようにしても良い。
【0050】
また、搬送装置1は、輸送車両が設置現場のある建築物へ到着し、輸送車両から降ろす際にも空気調和機100A,100Bを水平姿勢から起立姿勢に姿勢変化させることで輸送車両から降ろす作業を行い易くできるという利点もある。上述したように輸送車両によって搬送される搬送装置1は、空気調和機100A,100Bを水平姿勢で保持している。そのため、空気調和機100A,100Bを保持する搬送装置1の平面サイズが大きくなっており、フォークリフトを用いて搬送装置1を輸送車両から降ろそうとすると、フォークリフトによって搬送装置1を安定させた状態に支持することが難しい。そのような場合、搬送装置1による空気調和機100A,100Bの保持姿勢を水平姿勢から起立姿勢に変化させることにより、搬送装置1の平面サイズを小さくすることができるため、フォークリフトが搬送装置1を安定した状態で支持し、輸送車両から正常に降ろすことができるようになる。また、輸送車両にパワーゲート(登録商標)などの昇降装置が搭載されている場合にも、空気調和機100A,100Bを起立姿勢に変化させることにより、搬送装置1を昇降装置に載せることができるようになり、安全かつ効率的に搬送装置1を輸送車両から降ろすことができるという利点もある。したがって、搬送装置1を輸送車両から降ろす際にも、空気調和機100A,100Bの姿勢を水平姿勢から起立姿勢に変化させるようにしても良い。そして、空気調和機100A,100Bを起立姿勢にした状態で搬送装置1を輸送車両から降ろした後には、設置現場へ到着するまで空気調和機100A,100Bの姿勢を起立姿勢のままで搬送するようにしても良い。
【0051】
そして、搬送装置1が設置現場に到着すると、搬送装置1から空気調和機100A,100Bを降ろす作業が行われる。ただし、建築現場において空気調和機100A,100Bを設置する各フロアには、フォークリフトなどの昇降機が存在しないことがある。その場合、搬送装置1とは別に、もう1つの台車5を用意することで空気調和機100A,100Bを搬送装置1から降ろすことができる。
【0052】
図11は、別の台車5を用いて搬送装置1から空気調和機100A,100Bを降ろす例を示す図である。まず、搬送装置1から空気調和機100A,100Bを降ろす際には、図11(a)に示すように、空気調和機100A,100Bを水平姿勢とし、空気調和機100A,100Bを所定の高さ位置まで上昇させる。また、このとき、台車3から1つの連結基台23を取り外し、基台20を平面視略コ字状の形態とする。そして図11(b)に示すように、台車5を、搬送装置1の支柱部24a,24bの間に挿入する。これにより、台車5は、空気調和機100Bの下方に位置する。そして支柱部24a,24bに設けられている操作ハンドル27,27を同時に回転させつつ、空気調和機100A,100Bを下降させていく。これにより、図11(c)に示すように、台車5が空気調和機100Bの下面を支持した状態とすることができる。台車5が空気調和機100Bの下面を支持した状態になると、空気調和機100Bの左右両側面113,114の接続部115,115と、支持部材2a,2bの取付部13b,13bとを固定しているボルトとナットを外し、空気調和機100Bが支持部材2a,2bによって支持されている状態を解除する。その後、操作ハンドル27を回転させ、支持部材2a,2bを上昇させると、図11(d)に示すように、空気調和機100Aのみが上昇し、空気調和機100Bが台車5に載置された状態で残る。そのため、図11(e)に示すように、支柱部24a,24bの間に差し込まれた台車5を引き出せば、空気調和機100Bを取り出すことが可能であり、搬送装置1から空気調和機100Bを降ろすことができる。続いて、空気調和機100Aを搬送装置1から取り外す際には、上記と同様の作業を繰り返し行えば良い。
【0053】
その後、搬送装置1から取り外した空気調和機100A,100Bのそれぞれを上階床スラブの下面近傍位置まで持ち上げ、左右両側面113,114の接続部115,115に吊りボルトを接続固定することにより、空気調和機100A,100Bは、天井空間に吊り下げ足られた状態に設置される。以上で、空気調和機100A,100Bを設置作業が完了する。
【0054】
このように本実施形態の搬送装置1は、天井吊り下げ型の空気調和機100を設置現場に搬送する際に好適に用いることができる。特に、この搬送装置1は、空気調和機100の左右両側面113,114に取り付けられ、空気調和機100を支持する支持部材2a,2bと、支持部材2a,2bに係合して空気調和機100を保持する保持部30a,30bを有し、空気調和機100を保持した状態で移動可能な台車3とを備えている。そして、保持部30a,30bは、支持部材2a,2bを、空気調和機100の左右両側面113,114に直交する回転軸14を中心に回動可能に保持しており、空気調和機100を水平姿勢と起立姿勢との間で姿勢変化させることが可能な構成である。このような構成によれば、搬送装置1は、空気調和機本体110に対して吹出チャンバー120及び吸気チャンバー130が組み付けられた空気調和機100を、水平姿勢と起立姿勢との間で適宜姿勢変化させることが可能である。そのため、建築現場の狭い仮設エレベーターに載せて搬送することが必要な場合には、空気調和機100を起立姿勢に保持して搬送することができる。また、設置現場に至るまでに狭い通路を搬送することが必要な場合にも、空気調和機100を起立姿勢に保持して搬送することができる。
【0055】
また、空気調和機100の起立姿勢は、上述のように、空気調和機本体110の前後の面を上下に向けた姿勢であるため、起立姿勢のままで搬送装置1を移動させたとしても、搬送時の振動によって空気調和機本体110の内部に設けられている冷媒配管や熱交換器等を破損してしまうことがない。つまり、本実施形態の搬送装置1は、空気調和機100を破損することなく、工場から設置現場へ空気調和機100を適切に搬送することが可能である。したがって、空気調和機本体110に対して吹出チャンバー120や吸気チャンバー130を組み付ける作業を予め工場で行っておき、それによって作成された空気調和機100を適切に設置現場へ搬送することが可能であり、設置現場における作業負担を軽減することができるという利点がある。
【0056】
特に、本実施形態の搬送装置1は、工場において空気調和機100を水平姿勢で載せると、その後は設置現場に到着するまで空気調和機100を載せたままで空気調和機100を搬送することができる。それ故、工場から設置現場に至るまでの間に空気調和機100の載せ替え作業は必要でなく、搬送効率に優れている。
【0057】
以上、本発明に関する好ましい一実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものが含まれる。
【0058】
例えば、上記実施形態では、搬送装置1が2つの空気調和機100A,100Bを積載可能な構成例を説明したが、搬送装置1は、1つの空気調和機100のみを搬送する溜めに用いられても構わない。また、上述した支持部材2a,2bの改良し、3つ以上の空気調和機100を積載可能な構成を採用しても構わない。
【0059】
また、上記実施形態では、一例として、空気調和機本体110の前後方向に吹出チャンバー120及び吸気チャンバー130を組み付ける作業を工場で行う場合を例示した。しかし、工場で行う作業はこれに限られるものではない。例えば、近年の建設現場では、環境問題対策として廃棄物の削減が求められており、建築現場に空気調和機本体を搬入する際には段ボールなどの梱包材を撤去した状態での搬入が求められることがある。この場合、工場において梱包された空気調和機本体から梱包材を取り外す作業が行われ、空気調和機本体のみが工場から建築現場へと搬送されることがある。そのような場合にも、上述した搬送装置1を好適に利用することが可能である。すなわち、搬送装置1は、吹出チャンバー120や吸気チャンバー130が組み付けられていない空気調和機本体110のみを工場から設置現場へ搬送する際にも用いることが可能である。
【0060】
また、この他にも、例えば特許文献1に開示されているようなフレーム部材を空気調和機100に取り付ける作業を工場で行うようにしても良い。この場合、搬送装置1は、フレーム部材が取り付けられた空気調和機100を保持した状態で工場から設置現場へ搬送する際に用いられる。
【0061】
また、上記においては、搬送装置1が、工場から設置現場への搬送に利用される場合を例示した。しかし、上述した搬送装置1は、工場から設置現場への搬送に限られず、建築現場内で空気調和機100を搬送する場合にも好適に利用し得るものである。
【符号の説明】
【0062】
1…搬送装置、2(2a,2b)…支持部材、3…台車、100(100A,100B)…空気調和機、110…空気調和機本体、120…吹出チャンバー(チャンバー)、130…吸気チャンバー(チャンバー)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11