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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082403
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】スイッチング素子とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230607BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230607BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 658F
H01L29/78 654Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196151
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛島 隆志
(57)【要約】
【課題】 窒化ガリウム系スイッチング素子において、チャネルに加わる圧縮応力を抑制する。
【解決手段】 スイッチング素子であって、窒化ガリウム系半導体によって構成されている半導体基板(12)を有する。前記半導体基板が、前記半導体基板の上面(12a)を含む範囲に、n型のソース領域(20)と、p型のボディ領域(22)と、n型のドレイン領域(24)を有する。ゲート絶縁膜(42)が、前記ボディ領域の範囲(22as、22bs)内の前記上面を覆っている。圧縮応力を有する応力膜(44)が、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート絶縁膜の上部に配置されている。ゲート電極(46)が、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記応力膜の上部に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子であって、
窒化ガリウム系半導体によって構成されている半導体基板(12)と、
ゲート絶縁膜(42)と、
ゲート電極(46)と、
圧縮応力を有する応力膜(44)、
を有し、
前記半導体基板が、
前記半導体基板の上面(12a)を含む範囲に設けられているn型のソース領域(20)と、
前記上面を含む範囲に設けられており、前記ソース領域に接するp型のボディ領域(22)と、
前記上面を含む範囲に設けられており、前記ボディ領域に接し、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されているn型のドレイン領域(24)、
を有し、
前記ゲート絶縁膜が、前記ボディ領域の範囲(22as、22bs)内の前記上面を覆っており、
前記応力膜が、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート絶縁膜の上部に配置されており、
前記ゲート電極が、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記応力膜の上部に配置されている、
スイッチング素子。
【請求項2】
前記ボディ領域が、第1ボディ領域(22a)と、前記第1ボディ領域から分離されている第2ボディ領域(22b)を有し、
前記ソース領域が、前記第1ボディ領域に接する第1ソース領域(20a)と、前記第2ボディ領域に接する第2ソース領域(20b)を有し、
前記ドレイン領域が、前記第1ボディ領域と前記第2ボディ領域の間に位置する前記上面を含む範囲に設けられている窓部(24b)を有し、
前記ゲート絶縁膜が、前記第1ボディ領域、前記窓部、及び、前記第2ボディ領域に跨る範囲(22as、24bs、22bs)内の前記上面を覆っており、
前記応力膜が、前記第1ボディ領域の範囲内の前記上面の上部に配置されている第1応力膜(44a)と、前記第2ボディ領域の範囲内の前記上面の上部に配置されるとともに前記第1応力膜から分離されている第2応力膜(44b)、を有し、
前記第1応力膜と前記第2応力膜の間の間隔(44c)の少なくとも一部が、前記窓部の上部に配置されている、
請求項1に記載のスイッチング素子。
【請求項3】
窒化ガリウム系半導体によって構成されている半導体基板(12X)からスイッチング素子を製造する製造方法であって、
前記半導体基板が、
前記半導体基板の上面を含む範囲に設けられているn型のソース領域と、
前記上面を含む範囲に設けられており、前記ソース領域に接するp型のボディ領域と、
前記上面を含む範囲に設けられており、前記ボディ領域に接し、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されているn型のドレイン領域、
を有し、
前記製造方法が、
前記ボディ領域の範囲内の前記上面を覆うゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート絶縁膜の上部に、圧縮応力を有する応力膜を形成する工程と、
前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記応力膜の上部に、ゲート電極を形成する工程、
を有する、製造方法。
【請求項4】
前記半導体基板のうちの前記ソース領域、前記ボディ領域、及び、前記ドレイン領域が形成されている素子領域(12U)を、前記半導体基板のうちの前記素子領域よりも下側の領域(12L)から分割する工程をさらに有する請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
スイッチング素子であって、
窒化ガリウム系半導体によって構成されている半導体基板(12)と、
ゲート絶縁膜(402)と、
ゲート電極(406)と、
圧縮応力を有する応力膜(444)、
を有し、
前記半導体基板が、
前記半導体基板の上面を含む範囲に設けられているn型のソース領域(20)と、
前記上面を含む範囲に設けられており、前記ソース領域に接するp型のボディ領域(22)と、
前記上面を含む範囲に設けられており、前記ボディ領域に接し、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されているn型のドレイン領域(24)、
を有し、
前記ゲート絶縁膜が、前記ボディ領域の範囲(22as、22bs)内の前記上面を覆っており、
前記ゲート電極が、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート絶縁膜の上部に配置されており、
前記応力膜が、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート電極の上部に配置されており、
前記応力膜が前記ゲート電極の側面に接していない、
スイッチング素子。
【請求項6】
前記ボディ領域が、第1ボディ領域(22a)と、前記第1ボディ領域から分離されている第2ボディ領域(22b)を有し、
前記ソース領域が、前記第1ボディ領域に接する第1ソース領域(20a)と、前記第2ボディ領域に接する第2ソース領域(20b)を有し、
前記ドレイン領域が、前記第1ボディ領域と前記第2ボディ領域の間に位置する前記上面を含む範囲に設けられている窓部(24b)を有し、
前記ゲート絶縁膜が、前記第1ボディ領域、前記窓部、及び、前記第2ボディ領域に跨る範囲(22as、24bs、22bs)内の前記上面を覆っており、
前記応力膜が、前記第1ボディ領域の範囲内の前記上面の上部に配置されている第1応力膜(444a)と、前記第2ボディ領域の範囲内の前記上面の上部に配置されるとともに前記第1応力膜から分離されている第2応力膜(444b)、を有し、
前記第1応力膜と前記第2応力膜の間の間隔(444c)の少なくとも一部が、前記窓部の上部に配置されている、
請求項5に記載のスイッチング素子。
【請求項7】
窒化ガリウム系半導体によって構成されている半導体基板(12X)からスイッチング素子を製造する製造方法であって、
前記半導体基板が、
前記半導体基板の上面を含む範囲に設けられているn型のソース領域と、
前記上面を含む範囲に設けられており、前記ソース領域に接するp型のボディ領域と、
前記上面を含む範囲に設けられており、前記ボディ領域に接し、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されているn型のドレイン領域、
を有し、
前記製造方法が、
前記ボディ領域の範囲内の前記上面を覆うゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート絶縁膜の上部に、ゲート電極を形成する工程と、
前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート電極の上部に、圧縮応力を有するとともに前記ゲート電極の側面に接していない応力膜を形成する工程、
を有する、製造方法。
【請求項8】
前記半導体基板のうちの前記ソース領域、前記ボディ領域、及び、前記ドレイン領域が形成されている素子領域(12U)を、前記半導体基板のうちの前記素子領域よりも下側の領域(12L)から分割する工程をさらに有する請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、スイッチング素子とその製造方法に関する。
【0002】
特許文献1には、nチャネル型のスイッチング素子が開示されている。このスイッチング素子は、半導体基板の上面を覆うように設けられたゲート絶縁膜とゲート電極を有している。ゲート電極にゲート閾値以上の電位を印加すると、p型のボディ領域内に半導体基板の上面に沿ってチャネルが形成され、スイッチング素子がオンする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2017/047284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイッチング素子の製造過程において半導体基板の上面を圧縮する圧縮応力が発生し、圧縮応力がスイッチング素子に残存する場合がある。特許文献1のように半導体基板の上面に沿ってチャネルが形成されるタイプのスイッチング素子では、半導体基板中にその上面を圧縮する圧縮応力が加わると、ボディ領域内のチャネルが形成される領域に圧縮応力が加わる。
【0005】
また、窒化ガリウム系半導体によって構成された半導体基板を有するスイッチング素子(以下、窒化ガリウム系スイッチング素子という場合がある)が知られている。窒化ガリウム系スイッチング素子においても、特許文献1と同様に、半導体基板の上面に沿ってチャネルが形成される構造を採用することができる。したがって、窒化ガリウム系スイッチング素子においても、ボディ領域内のチャネルが形成される領域に圧縮応力が加わる場合がある。窒化ガリウム系スイッチング素子においては、チャネルが形成される領域に圧縮応力が加わると、ゲート閾値の低下及びリーク電流の増加の問題が生じることが実験により判明した。したがって、本明細書では、窒化ガリウム系スイッチング素子において、チャネルに加わる圧縮応力を抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する第1のスイッチング素子は、窒化ガリウム系半導体によって構成されている半導体基板(12)と、ゲート絶縁膜(42)と、ゲート電極(46)と、圧縮応力を有する応力膜(44)、を有する。前記半導体基板が、n型のソース領域(20)と、p型のボディ領域(22)と、n型のドレイン領域(24)を有する。前記ソース領域が、前記半導体基板の上面(12a)を含む範囲に設けられている。前記ボディ領域が、前記上面を含む範囲に設けられており、前記ソース領域に接している。前記ドレイン領域が、前記上面を含む範囲に設けられており、前記ボディ領域に接し、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されている。前記ゲート絶縁膜が、前記ボディ領域の範囲(22as、22bs)内の前記上面を覆っている。前記応力膜が、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート絶縁膜の上部に配置されている。前記ゲート電極が、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記応力膜の上部に配置されている。
【0007】
このスイッチング素子では、ゲート絶縁膜とゲート電極の間に応力膜が設けられている。応力膜が圧縮応力を有するので、応力膜は周囲の部材を拡大させる方向に力を及ぼす。すなわち、応力膜から周囲の部材に対して引張応力が作用する。このため、応力膜は、応力膜の下部のゲート絶縁膜に接するボディ領域(すなわち、チャネルが形成される領域)に対して引張応力を作用させる。その結果、チャネルが形成される領域に加わる圧縮応力が緩和される。したがって、このスイッチング素子の構造によれば、ゲート閾値の低下及びリーク電流の増加を抑制できる。
【0008】
また、本明細書は、窒化ガリウム系半導体によって構成されている半導体基板(12X)からスイッチング素子を製造する第1の製造方法を開示する。前記半導体基板が、n型のソース領域と、p型のボディ領域と、n型のドレイン領域、を有する。前記ソース領域が、前記半導体基板の上面を含む範囲に設けられている。前記ボディ領域が、前記上面を含む範囲に設けられており、前記ソース領域に接する。前記ドレイン領域が、前記上面を含む範囲に設けられており、前記ボディ領域に接し、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されている。第1の前記製造方法が、前記ボディ領域の範囲内の前記上面を覆うゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート絶縁膜の上部に圧縮応力を有する応力膜を形成する工程と、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記応力膜の上部にゲート電極を形成する工程、を有する。
【0009】
この製造方法によれば、ゲート閾値の低下及びリーク電流の増加を抑制できる。
【0010】
本明細書が開示する第2のスイッチング素子は、窒化ガリウム系半導体によって構成されている半導体基板(12)と、ゲート絶縁膜(402)と、ゲート電極(406)と、圧縮応力を有する応力膜(444)、を有する。前記半導体基板が、n型のソース領域(20)と、p型のボディ領域(22)と、n型のドレイン領域(24)を有する。前記ソース領域が、前記半導体基板の上面を含む範囲に設けられている。前記ボディ領域が、前記上面を含む範囲に設けられており、前記ソース領域に接する。前記ドレイン領域が、前記上面を含む範囲に設けられており、前記ボディ領域に接し、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されている。前記ゲート絶縁膜が、前記ボディ領域の範囲(22as、22bs)内の前記上面を覆っている。前記ゲート電極が、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート絶縁膜の上部に配置されている。前記応力膜が、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート電極の上部に配置されている。前記応力膜が前記ゲート電極の側面に接していない。
【0011】
このスイッチング素子では、ゲート電極の上部に応力膜が設けられている。応力膜が圧縮応力を有するので、応力膜は周囲の部材を拡大させる方向に力を及ぼす。すなわち、応力膜から周囲の部材に対して引張応力が作用する。このため、応力膜は、応力膜の下部のゲート絶縁膜に接するボディ領域(すなわち、チャネルが形成される領域)に対して引張応力を作用させる。その結果、チャネルが形成される領域に加わる圧縮応力が緩和される。したがって、このスイッチング素子の構造によれば、ゲート閾値の低下及びリーク電流の増加を抑制できる。また、このスイッチング素子では、応力膜がゲート電極の側面に接していない。したがって、小型なスイッチング素子を実現できる。
【0012】
また、本明細書は、窒化ガリウム系半導体によって構成されている半導体基板(12X)からスイッチング素子を製造する第2の製造方法を開示する。前記半導体基板が、n型のソース領域と、p型のボディ領域と、n型のドレイン領域を有する。前記ソース領域は、前記半導体基板の上面を含む範囲に設けられている。前記ボディ領域は、前記上面を含む範囲に設けられており、前記ソース領域に接する。前記ドレイン領域は、前記上面を含む範囲に設けられており、前記ボディ領域に接し、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されている。前記製造方法が、前記ボディ領域の範囲内の前記上面を覆うゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート絶縁膜の上部に、ゲート電極を形成する工程と、前記ボディ領域の範囲内の前記上面の上部であって前記ゲート電極の上部に、圧縮応力を有するとともに前記ゲート電極の側面に接していない応力膜を形成する工程、を有する。
【0013】
この製造方法によれば、ゲート閾値の低下及びリーク電流の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1のスイッチング素子の断面図。
図2】実施例1のスイッチング素子の拡大断面図。
図3】実施例1のスイッチング素子の拡大断面図(電子の経路を示す図)。
図4】実施例1の製造方法の説明図。
図5】実施例1の製造方法の説明図。
図6】実施例1の製造方法の説明図。
図7】実施例1の製造方法の説明図。
図8】窒化シリコン膜の成膜工程において、成膜工程中における気圧と窒化シリコン膜中に生じる応力の関係を示すグラフ。
図9】実施例1の製造方法の説明図。
図10】実施例1の製造方法の説明図。
図11】実施例1の製造方法の説明図。
図12】実施例1の製造方法の説明図。
図13】実施例1の製造方法の説明図。
図14】実施例2のスイッチング素子の拡大断面図。
図15】実施例2の変形例のスイッチング素子の拡大断面図。
図16】実施例2の変形例のスイッチング素子の拡大断面図。
図17】実施例3のスイッチング素子の断面図。
図18】実施例3のスイッチング素子の拡大断面図。
図19】実施例3のスイッチング素子の拡大断面図(電子の経路を示す図)。
図20】実施例3の製造方法の説明図。
図21】実施例4のスイッチング素子の拡大断面図。
図22】実施例4の変形例のスイッチング素子の拡大断面図。
図23】実施例4の変形例のスイッチング素子の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述した第1のスイッチング素子においては、前記ボディ領域が、第1ボディ領域(22a)と、前記第1ボディ領域から分離されている第2ボディ領域(22b)を有していてもよい。前記ソース領域が、前記第1ボディ領域に接する第1ソース領域(20a)と、前記第2ボディ領域に接する第2ソース領域(20b)を有していてもよい。前記ドレイン領域が、前記第1ボディ領域と前記第2ボディ領域の間に位置する前記上面を含む範囲に設けられている窓部(24b)を有していてもよい。前記ゲート絶縁膜が、前記第1ボディ領域、前記窓部、及び、前記第2ボディ領域に跨る範囲(22as、24bs、22bs)内の前記上面を覆っていてもよい。前記応力膜が、前記第1ボディ領域の範囲内の前記上面の上部に配置されている第1応力膜(44a)と、前記第2ボディ領域の範囲内の前記上面の上部に配置されるとともに前記第1応力膜から分離されている第2応力膜(44b)、を有していてもよい。前記第1応力膜と前記第2応力膜の間の間隔(44c)の少なくとも一部が、前記窓部の上部に配置されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、応力膜から窓部に引張応力が作用し難くなる。その結果、窓部の抵抗を低くすることができ、スイッチング素子のオン抵抗を低減できる。
【0017】
上述した第1の製造方法は、前記半導体基板のうちの前記ソース領域、前記ボディ領域、及び、前記ドレイン領域が形成されている素子領域(12U)を、前記半導体基板のうちの前記素子領域よりも下側の領域(12L)から分割する工程をさらに有していてもよい。
【0018】
このように半導体基板を分割すると、チャネルが形成される領域に圧縮応力が加わり易い。しかしながら、応力膜から作用する引張応力によって、チャネルが形成される領域に加わる圧縮応力を低減することができる。
【0019】
上述した第2のスイッチング素子においては、前記ボディ領域が、第1ボディ領域(22a)と、前記第1ボディ領域から分離されている第2ボディ領域(22b)を有していてもよい。前記ソース領域が、前記第1ボディ領域に接する第1ソース領域(20a)と、前記第2ボディ領域に接する第2ソース領域(20b)を有していてもよい。前記ドレイン領域が、前記第1ボディ領域と前記第2ボディ領域の間に位置する前記上面を含む範囲に設けられている窓部(24b)を有していてもよい。前記ゲート絶縁膜が、前記第1ボディ領域、前記窓部、及び、前記第2ボディ領域に跨る範囲(22as、24bs、22bs)内の前記上面を覆っていてもよい。前記応力膜が、前記第1ボディ領域の範囲内の前記上面の上部に配置されている第1応力膜(444a)と、前記第2ボディ領域の範囲内の前記上面の上部に配置されるとともに前記第1応力膜から分離されている第2応力膜(444b)、を有していてもよい。前記第1応力膜と前記第2応力膜の間の間隔(444c)の少なくとも一部が、前記窓部の上部に配置されていてもよい。
【0020】
この構成によれば、応力膜から窓部に引張応力が作用し難くなる。その結果、窓部の抵抗を低くすることができ、スイッチング素子のオン抵抗を低減できる。
【0021】
上述した第2の製造方法は、前記半導体基板のうちの前記ソース領域、前記ボディ領域、及び、前記ドレイン領域が形成されている素子領域(12U)を、前記半導体基板のうちの前記素子領域よりも下側の領域(12L)から分割する工程をさらに有していてもよい。
【0022】
このように半導体基板を分割すると、チャネルが形成される領域に圧縮応力が加わり易い。しかしながら、応力膜から作用する引張応力によって、チャネルが形成される領域に加わる圧縮応力を低減することができる。
【実施例0023】
図1に示す実施例1のスイッチング素子10は、半導体基板12と、複数のゲート構造部40と、ソース電極50と、ドレイン電極52を有している。半導体基板12は、窒化ガリウム系半導体によって構成されている。なお、窒化ガリウム系半導体は、窒化ガリウムを主成分とする半導体である。窒化ガリウム半導体には、例えば、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN等が含まれる。複数のゲート構造部40は、半導体基板12の上面12aに設けられている。複数のゲート構造部40は、半導体基板12の上面においてx方向に間隔を開けて設けられている。各ゲート構造部40は、半導体基板12の上面において、y方向(すなわち、x方向に直交する方向)に長く伸びている。各ゲート構造部40の間の間隔は、コンタクトホール49として機能する。ソース電極50は、金属により構成されている。ソース電極50は、各ゲート構造部40を覆っている。ソース電極50は、各コンタクトホール49内まで伸びている。ソース電極50は、各コンタクトホール49内で半導体基板12の上面12aに接している。ドレイン電極52は、半導体基板12の下面12bに設けられている。ドレイン電極52は、半導体基板12の下面12bの略全域に接している。
【0024】
半導体基板12は、複数のソース領域20、複数のボディ領域22、及び、ドレイン領域24を有している。
【0025】
各ソース領域20は、n型領域である。各ソース領域20は、半導体基板12の上面12aを含む範囲に設けられている。各ソース領域20は、x方向に間隔を開けて配置されている。各ソース領域20は、y方向に長く伸びている。各ソース領域20は、対応するコンタクトホール49の下部とその周辺に設けられている。各ソース領域20は、対応するコンタクトホール49においてソース電極50に接している。
【0026】
各ボディ領域22は、p型領域である。各ボディ領域22は、対応するソース領域20の周囲に設けられている。各ボディ領域22は、対応するソース領域20に沿ってy方向に長く伸びている。各ボディ領域22は、x方向に間隔を開けて配置されている。各ボディ領域22は、対応するソース領域20の下面と側面を覆っている。各ボディ領域22は、対応するソース領域20の側方において半導体基板12の上面12aに露出している。すなわち、各ボディ領域22は、半導体基板12の上面12aを含む範囲に設けられている。
【0027】
ドレイン領域24は、n型領域である。ドレイン領域24は、メイン部24aと複数の窓部24bを有している。メイン部24aは、各ドレイン領域24よりも下側に配置されている。メイン部24aは、各ドレイン領域24の下面に接している。各窓部24bは、各ボディ領域22の間の間隔(すなわち、x方向における間隔)内に配置されている部分である。各窓部24bは、JFET部と呼ばれる場合がある。各窓部24bは、メイン部24aから上側に突出している。各窓部24bは、その両側に位置する2つのボディ領域22の側面に接している。各窓部24bは、2つのボディ領域22の間において、半導体基板12の上面12aに露出している。すなわち、窓部24bは、2つのボディ領域22の間に位置する上面12aを含む範囲に設けられている。各ボディ領域22は、ドレイン領域24によって互いから分離されている。また、各ソース領域20は、対応するボディ領域22によってドレイン領域24から分離されている。
【0028】
図1に示すように、各ゲート構造部40は、2つのソース領域の表面に跨るように設けられている。図2は、1つのゲート構造部40の拡大図を示している。図2に示すように、ゲート構造部40は、2つのコンタクトホール49a、49bの間に配置されている。以下では、コンタクトホール49aの下部のソース領域20及びボディ領域22を、第1ソース領域20a、第1ボディ領域22aという。また、以下では、コンタクトホール49bの下部のソース領域20及びボディ領域22を、第2ソース領域20b、第2ボディ領域22bという。また、以下では、上面12aのうち、第1ソース領域20aに含まれる範囲を範囲20asといい、第1ボディ領域22aに含まれる範囲を範囲22asといい、窓部24bに含まれる範囲を範囲24bsといい、第2ボディ領域22bに含まれる範囲を範囲22bsといい、第2ソース領域20bに含まれる範囲を範囲20bsという。
【0029】
図1に示すように、各ゲート構造部40は、ゲート絶縁膜42、応力膜44、ゲート電極46、及び、層間絶縁膜48を有している。
【0030】
図1に示すように、各ゲート絶縁膜42は、半導体基板12の上面12aにおいて、x方向に間隔を開けて配置されている。各ゲート絶縁膜42は、半導体基板12の上面12aにおいて、y方向に長く伸びている。各ゲート絶縁膜42は、酸化シリコン等の絶縁体によって構成されている。図2に示すように、ゲート絶縁膜42は、上面12aのうち、第1ソース領域20aの表面から第2ソース領域20bの表面まで伸びている。言い換えると、ゲート絶縁膜42は、範囲20as、範囲22as、範囲24bs、範囲22bs、及び、範囲20bsに跨る範囲で上面12aを覆っている。
【0031】
図1に示すように、各応力膜44は、対応するゲート絶縁膜42上に設けられている。各応力膜44は、窒化シリコン等の絶縁体によって構成されている。各応力膜44は、対応するゲート絶縁膜42の上面の略全体を覆っている。したがって、図2に示すように、応力膜44は、範囲20as、範囲22as、範囲24bs、範囲22bs、及び、範囲20bsの上部でゲート絶縁膜42の上面を覆っている。応力膜44は、圧縮応力を有している。このため、応力膜44からその周囲の絶縁層、導体層、及び、半導体層に対して引張応力が作用している。
【0032】
図1に示すように、各ゲート電極46は、対応する応力膜44上に設けられている。各ゲート電極46は、ポリシリコン等の導体によって構成されている。各ゲート電極46は、対応する応力膜44の上面の縁部を除く部分を覆っている。図2に示すように、ゲート電極46は、範囲20as、範囲22as、範囲24bs、範囲22bs、及び、範囲20bsの上部で応力膜44の上面を覆っている。
【0033】
図1に示すように、各層間絶縁膜48は、対応するゲート電極46上に設けられている。各層間絶縁膜48は、対応するゲート電極46の上面と側面を覆っている。各層間絶縁膜48は、酸化シリコン等の絶縁体によって構成されている。各層間絶縁膜48の間の間隔によって、コンタクトホール49が形成されている。各層間絶縁膜48の上面は、ソース電極50によって覆われている。また、各層間絶縁膜48の側面は、コンタクトホール49内のソース電極50によって覆われている。
【0034】
次に、スイッチング素子10の動作について説明する。スイッチング素子10は、いわゆるMOSFET(metal-oxide-semiconductor field effect transistor)である。ドレイン電極52には、ソース電極50よりも高い電位が印加される。ゲート電極46にゲート閾値よりも高い電位を印加すると、図3に示すように、ボディ領域22のうちのゲート絶縁膜42近傍の範囲に電子が引き寄せられることでチャネル23が形成される。すると、図3の矢印100に示すように、電子が、ソース電極50からソース領域20とチャネル23を通って窓部24b内に流入する。窓部24b内に流入した電子は、ドレイン領域24内を下方向に向かってドレイン電極52まで流れる。このように電子が流れることで、スイッチング素子10がオンする。なお、スイッチング素子10がオンしている状態では、窓部24bのうちのゲート絶縁膜42近傍の範囲に電子が引き寄せられる。これによって、窓部24bのうちのゲート絶縁膜42の近傍の範囲に、電子濃度が高い高電子濃度層25が形成される。高電子濃度層25の電気抵抗は、高電子濃度層25の外部のドレイン領域24の電気抵抗よりも低い。このように、スイッチング素子10がオンしているときに窓部24bに高電子濃度層25が形成されることで、窓部24bにおける電流経路(すなわち、電子が流れる経路)の抵抗が低下する。したがって、スイッチング素子10のオン抵抗が低くなる。ゲート電極の電位をゲート閾値以下の電位に低下させると、チャネル23が消失し、電子の流れが停止する。すなわち、スイッチング素子10がオフする。
【0035】
次に、スイッチング素子10の製造方法について説明する。スイッチング素子10は、図4に示す加工前の半導体基板12Xから製造される。加工前の半導体基板12Xは、その全体がドレイン領域24と略同じn型不純物濃度を有するn型領域によって構成されている。また、加工前の半導体基板12Xの厚みは、図1に示す加工後の半導体基板12の厚みよりも厚い。
【0036】
まず、図5に示すように、半導体基板12Xに対してイオン注入、エピタキシャル成長等を実施することで、半導体基板12X内にソース領域20、ボディ領域22を形成する。次に、図6に示すように、半導体基板12Xの上面12a上にゲート絶縁膜42を形成する。さらに、図7に示すように、ゲート絶縁膜42上に応力膜44を形成する。ここで、窒化シリコン(すなわち、応力膜44)の内部で生じる応力は、窒化シリコンの成膜条件によって変化する。図8は、窒化シリコンを気相成長によって成長させるときの気圧と、形成される窒化シリコン膜中で生じる内部応力の関係を示している。図8に示すように、成膜時の気圧が高い場合には窒化シリコン膜中で引張応力が生じ、成膜時の気圧が低い場合には窒化シリコン膜中で圧縮応力が生じる。応力膜44の形成工程では、成膜時の気圧を調整することで、内部応力として圧縮応力を有する応力膜44を形成する。応力膜44の形成が完了すると、応力膜44が圧縮応力を有するので、応力膜44は膨張しようとする。このため、応力膜44の下部のゲート絶縁膜42及び半導体基板12Xの上面12a近傍の部分に、引張応力が作用する。
【0037】
次に、図9に示すように、ゲート絶縁膜42と応力膜44を部分的にエッチングすることによって、各ソース領域20上にコンタクトホール49を形成する。ここでは、図2に示すように、範囲20as、範囲22as、範囲24bs、範囲22bs、及び、範囲20bsに跨る範囲の上部にゲート絶縁膜42と応力膜44を残存させる。したがって、コンタクトホール49の形成後においても、応力膜44から範囲20as、範囲22as、範囲24bs、範囲22bs、及び、範囲20bs内の上面12a近傍の半導体層に引張応力が作用している。なお、ゲート絶縁膜42と応力膜44は、共通のマスクを用いてエッチングすることができる。
【0038】
コンタクトホール49を形成したら、図10に示すように、応力膜44上にゲート電極46を形成する。ここでは、図2に示すように、範囲20as、範囲22as、範囲24bs、範囲22bs、及び、範囲20bsに跨る範囲の上部にゲート電極46が残存するように、ゲート電極46をパターニングする。次に、図11に示すように、ゲート電極46を覆うように層間絶縁膜48を形成し、層間絶縁膜48にコンタクトホールを再度形成する。なお、他の実施例においては、ゲート絶縁膜42と応力膜44を成膜し、ゲート電極46をパターン形成し、更に層間絶縁膜48を成膜した後に、ゲート絶縁膜42と応力膜44と層間絶縁膜48を一括してエッチングしてコンタクトホールを形成しても構わない。その後、層間絶縁膜48を覆うようにソース電極50を形成する。ソース電極50は、コンタクトホール49内でソース領域20に接続される。
【0039】
次に、図12に示すように、各ボディ領域22よりも下側のドレイン領域24内で焦点が形成されるように、半導体基板12Xに対してレーザ90を照射する。このようにレーザ90を照射すると、レーザ90の焦点の位置に結晶欠陥が形成される。ここでは、レーザ90の焦点を半導体基板12Xの上面12aに平行に移動させることで、ドレイン領域24内に上面12aに沿って伸びる結晶欠陥領域92を形成する。結晶欠陥領域92では、半導体基板12Xの強度が低下する。
【0040】
次に、図13に示すように、結晶欠陥領域92に沿って半導体基板12Xを上側部分12Uと下側部分12Lに分割する。なお、上側部分12Uは、ソース領域20、ボディ領域22、及び、ドレイン領域24を含む素子構造を有する素子領域である。上側部分12Uが図1に示す半導体基板12となる。このように半導体基板12Xを分割することで、厚みが薄い半導体基板12を得ることができる。下側部分12Lは、その後、スイッチング素子の製造工程に再利用することができる。その後、半導体基板12(すなわち、上側部分12U)の下面12bにドレイン電極52を形成することで、図1に示すスイッチング素子10が完成する。
【0041】
上述したように、実施例1の製造方法では、図13のように半導体基板12Xを分割することで半導体基板12を得る。半導体基板12Xを分割するときに、分割時の界面である半導体基板12の下面12bに微小な凹凸が形成される。このように下面12bに微小な凹凸が形成されると、トワイマン効果によって上面12aが凹となるように半導体基板12が反る。その結果、上面12a近傍の半導体層に圧縮応力が加わる。すなわち、ソース領域20の上面12a近傍の部分、ボディ領域22の上面12a近傍の部分、及び、窓部24bの上面12a近傍の部分に圧縮応力が加わる。窒化ガリウム系半導体では、半導体層に圧縮応力が加わると、半導体層の特性がn型の側にシフトする。例えば、p型半導体層に圧縮応力が加わると、p型半導体層の実効的なp型キャリア濃度が低下する。また、n型半導体層に圧縮応力が加わると、n型半導体層の実効的なn型キャリア濃度が上昇する。したがって、上面12a近傍の半導体層に圧縮応力が加わると、n型のソース領域20の上面12a近傍の部分では実効的なn型キャリア濃度が上昇し、p型のボディ領域22の上面12a近傍の部分では実効的なp型キャリア濃度が低下し、n型の窓部24bの上面12a近傍の部分では実効的なn型キャリア濃度が上昇する。p型のボディ領域22の上面12a近傍の部分(すなわち、チャネル23が形成される部分)で実効的なp型キャリア濃度が低下すると、スイッチング素子10のゲート閾値の低下、及び、ドレイン-ソース間の漏れ電流増加の問題が生じる。しかしながら、実施例1の製造方法では、上面12aのうちのボディ領域22の範囲(すなわち、図2の範囲22as、22bs)の上部に、応力膜44が設けられている。上述したように、応力膜44からその下部の半導体層に引張応力が作用する。したがって、応力膜44から範囲22as、22bsに作用する引張応力によって、範囲22as、22bsに作用する圧縮応力(すなわち、半導体基板12の反りによって生じる圧縮応力)が緩和される。すなわち、ボディ領域22のうちのチャネル23が形成される部分に作用する圧縮応力が緩和される。さらに、応力膜44を設けることで、チャネル23が形成される部分が引張応力を有するようにして、チャネル23の特性を制御することもできる。また、窒化シリコンによって構成された応力膜44は、酸化シリコンよりも機械的強度が高い。機械的強度が高い応力膜44がゲート電極46とゲート絶縁膜42の間に配置されていることで、半導体基板12の変形が抑制される。これによっても、ボディ領域22のうちのチャネル23が形成される部分に作用する圧縮応力が緩和される。したがって、この製造方法によれば、ゲート閾値が高く、ドレイン-ソース間の漏れ電流が少ないスイッチング素子10を製造することができる。
【実施例0042】
次に、実施例2のスイッチング素子とその製造方法について説明する。図14に示す実施例2のスイッチング素子は、応力膜44が、第1応力膜44aと第2応力膜44bを有している。第1応力膜44aは、範囲22asの上部に配置されている。第2応力膜44bは、範囲22bsの上部に配置されている。第1応力膜44aは第2応力膜44bから分離されている。第1応力膜44aと第2応力膜44bの間の間隔部44cは、窓部24bの上部(すなわち、範囲24bsの上部)に配置されている。実施例2のスイッチング素子のその他の構成は、実施例1のスイッチング素子10と等しい。
【0043】
実施例2のスイッチング素子の製造方法は、応力膜44を第1応力膜44aと第2応力膜44bに分離して形成する点を除いて、実施例1のスイッチング素子10の製造方法と等しい。実施例2のスイッチング素子では、範囲22as、22bsの上部に応力膜44a、44bが設けられているので、実施例1と同様にしてボディ領域22a、22bの上面12a近傍の部分(すなわち、チャネル23が形成される部分)に加わる圧縮応力を緩和できる。したがって、ゲート閾値が高く、ドレイン-ソース間の漏れ電流が少ないスイッチング素子を実現することができる。また、実施例2のスイッチング素子では、窓部24bの上部に間隔部44cが設けられている。したがって、応力膜44から窓部24bに加わる引張応力が小さい。したがって、半導体基板12の反りによって生じる圧縮応力が窓部24bの上面12a近傍の部分に加わり易い。窓部24bの上面12a近傍の部分に圧縮応力が加わると、当該部分の実効的なn型不純物濃度が高くなる。したがって、スイッチング素子10がオンするときに、図3に示す高電子濃度層25のn型不純物濃度が高くなり易く、高電子濃度層25の電気抵抗が低くなり易い。したがって、スイッチング素子がオンするときのオン抵抗がより低くなる。実施例2によれば、よりオン抵抗が低いスイッチング素子を得ることができる。
【0044】
また、実施例2の構成によれば、応力膜44の幅が実施例1に比べて狭くなるので、応力膜44がより変形し難くなる。したがって、応力膜44の下部で半導体基板12がより変形し難くなる。このため、実施例2によれば、チャネル23が形成される部分に作用する圧縮応力をより効果的に緩和することができる。
【0045】
なお、実施例2では、間隔部44cの幅が範囲24bsの幅と略一致していた。しかしながら、図15に示すように間隔部44cの幅が範囲24bsの幅より狭くてもよいし、図16に示すように間隔部44cの幅が範囲24bsの幅より広くてもよい。
【0046】
また、上述した実施例1、2では、応力膜44がゲート絶縁膜42に接していた。しかしながら、応力膜44とゲート絶縁膜42の間に他の膜(例えば、絶縁膜)が介在していてもよい。また、上述した実施例1、2では、応力膜44がゲート電極46に接していた。しかしながら、応力膜44とゲート電極46の間に他の膜(例えば、絶縁膜または導電膜)が介在していてもよい。
【実施例0047】
図17に示す実施例3のスイッチング素子300は、半導体基板12と、複数のゲート構造部400と、ソース電極50と、ドレイン電極52を有している。実施例3のスイッチング素子300のゲート構造部400の構造は、実施例1のスイッチング素子10のゲート構造部40の構造とは異なる。ゲート構造部を除いて、実施例3のスイッチング素子300は実施例1のスイッチング素子10と等しい構造を有している。
【0048】
図17に示すように、複数のゲート構造部400は、半導体基板12の上面12aに設けられている。図18は、1つのゲート構造部400の拡大図を示している。図17、18に示すように、ゲート構造部400は、ゲート絶縁膜402、ゲート電極406、応力膜444、及び、層間絶縁膜408を有している。図17に示すように、複数のゲート構造部400は、半導体基板12の上面においてx方向に間隔を開けて設けられている。各ゲート構造部400は、半導体基板12の上面において、y方向に長く伸びている。各ゲート構造部400の間の間隔は、コンタクトホール49として機能する。
【0049】
図17に示すように、各ゲート絶縁膜402は、半導体基板12の上面12aにおいて、x方向に間隔を開けて配置されている。各ゲート絶縁膜402は、半導体基板12の上面12aにおいて、y方向に長く伸びている。各ゲート絶縁膜402は、酸化シリコン等の絶縁体によって構成されている。図18に示すように、ゲート絶縁膜402は、上面12aのうち、第1ソース領域20aの表面から第2ソース領域20bの表面まで伸びている。言い換えると、ゲート絶縁膜402は、範囲20as、範囲22as、範囲24bs、範囲22bs、及び、範囲20bsに跨る範囲で上面12aを覆っている。
【0050】
図17に示すように、各ゲート電極406は、対応するゲート絶縁膜402上に設けられている。各ゲート電極406は、ポリシリコン等の導体によって構成されている。各ゲート電極406は、対応するゲート絶縁膜402の上面の縁部を除く部分を覆っている。図18に示すように、ゲート電極406は、範囲20as、範囲22as、範囲24bs、範囲22bs、及び、範囲20bsの上部でゲート絶縁膜402の上面を覆っている。
【0051】
図17に示すように、各応力膜444は、対応するゲート電極406上に設けられている。各応力膜444は、窒化シリコン等の絶縁体によって構成されている。各応力膜444は、対応するゲート電極406の上面の略全体を覆っている。したがって、図18に示すように、応力膜444は、範囲20as、範囲22as、範囲24bs、範囲22bs、及び、範囲20bsの上部でゲート電極406の上面を覆っている。応力膜444は、ゲート電極406の側面に接していない。応力膜444は、圧縮応力を有している。このため、応力膜444からその周囲の絶縁層、導体層、及び、半導体層に対して引張応力が作用している。
【0052】
図17に示すように、各層間絶縁膜408は、対応する応力膜444上に設けられている。各層間絶縁膜408は、対応する応力膜444の上面を覆っている。また、各層間絶縁膜408は、対応する応力膜444及びゲート電極406の側面を覆っている。各層間絶縁膜408は、酸化シリコン等の絶縁体によって構成されている。
【0053】
次に、スイッチング素子300の動作について説明する。ドレイン電極52には、ソース電極50よりも高い電位が印加される。ゲート電極406にゲート閾値よりも高い電位を印加すると、図19に示すように、ボディ領域22のうちのゲート絶縁膜402近傍の範囲にチャネル423が形成される。また、窓部24bのうちのゲート絶縁膜402近傍の範囲に高電子濃度層425が形成される。すると、図19の矢印500に示すように、電子が、ソース電極50からソース領域20、チャネル423、及び、ドレイン領域24を通ってドレイン電極52へ流れる。このように電子が流れることで、スイッチング素子10がオンする。ゲート電極の電位をゲート閾値以下の電位に低下させると、チャネル423が消失し、電子の流れが停止する。すなわち、スイッチング素子10がオフする。
【0054】
次に、実施例3のスイッチング素子300の製造方法について説明する。実施例3の製造方法では、図6に示す状態まで、実施例1の製造方法と同様に加工が行われる。次に、図20に示すように、ゲート絶縁膜402上にゲート電極406を形成し、ゲート電極406上に応力膜444を形成し、応力膜444、ゲート電極406、及び、ゲート絶縁膜402をパターニングする。これによって、図18に示すように、範囲20as、範囲22as、範囲24bs、範囲22bs、及び、範囲20bsに跨る範囲の上部にゲート絶縁膜402、ゲート電極406、及び、応力膜444が形成される。なお、応力膜444を形成する工程では、成膜時の気圧を調整することで、内部応力として圧縮応力を有する応力膜444を形成する。応力膜444の形成が完了すると、応力膜444が圧縮応力を有するので、応力膜444は膨張しようとする。このため、応力膜444の下部のゲート電極406、ゲート絶縁膜402及び半導体基板12Xの上面12a近傍の部分に、引張応力が作用する。また、応力膜444のパターニングにおいては、応力膜444がゲート電極406の側面に接しないように応力膜444をパターニングする。応力膜444とゲート電極406のパターニングでは、応力膜444とゲート電極406を、共通のマスクを用いてエッチングすることができる。次に、応力膜444とゲート電極406を覆うように層間絶縁膜408を形成する。次に、層間絶縁膜408を覆うようにソース電極50を形成する。
【0055】
次に、図12、13(すなわち、実施例1の基板分割工程)と同様にして、半導体基板12を上側部分12Uと下側部分12Lに分割する。上側部分12Uが図17に示す半導体基板12となる。その後、半導体基板12(すなわち、上側部分12U)の下面12bにドレイン電極52を形成することで、図17に示すスイッチング素子300が完成する。
【0056】
上述したように、実施例3の製造方法では、半導体基板12Xを分割することで半導体基板12を得る。半導体基板12Xを分割するときに、分割時の界面である半導体基板12の下面12bに微小な凹凸が形成される。したがって、トワイマン効果によって上面12aが凹となるように半導体基板12が反る。その結果、上面12a近傍の半導体層に圧縮応力が加わる。実施例3の製造方法では、上面12aのうちのボディ領域22の範囲(すなわち、図18の範囲22as、22bs)の上部に、応力膜444が設けられている。上述したように、応力膜444からその下部の半導体層に引張応力が作用する。したがって、応力膜444から範囲22as、22bsに作用する引張応力によって、範囲22as、22bsに作用する圧縮応力(すなわち、半導体基板12の反りによって生じる圧縮応力)が緩和される。すなわち、ボディ領域22のうちのチャネル423が形成される部分に作用する圧縮応力が緩和される。また、窒化シリコンによって構成された応力膜444は、酸化シリコンよりも機械的強度が高い。機械的強度が高い応力膜444がゲート電極406の上部に配置されていることで、半導体基板12の変形が抑制される。これによっても、ボディ領域22のうちのチャネル423が形成される部分に作用する圧縮応力が緩和される。したがって、この製造方法によれば、ゲート閾値が高く、ドレイン-ソース間の漏れ電流が少ないスイッチング素子10を製造することができる。
【0057】
また、実施例3によれば、応力膜444がゲート電極406の側面を覆っていないので、応力膜444を設けても、スイッチング素子300のx方向のサイズが大きくならない。このように、この構成によれば、応力膜444を設けることによるスイッチング素子300の大型化を抑制できる。
【実施例0058】
次に、実施例4のスイッチング素子とその製造方法について説明する。図21に示す実施例4のスイッチング素子は、応力膜444が、第1応力膜444aと第2応力膜444bを有している。第1応力膜444aは、範囲22asの上部に配置されている。第2応力膜444bは、範囲22bsの上部に配置されている。第1応力膜444aは第2応力膜444bから分離されている。第1応力膜444aと第2応力膜444bの間の間隔部444cは、窓部24bの上部(すなわち、範囲24bsの上部)に配置されている。実施例4のスイッチング素子のその他の構成は、実施例3のスイッチング素子10と等しい。
【0059】
実施例4のスイッチング素子の製造方法は、応力膜444を第1応力膜444aと第2応力膜444bに分離して形成する点を除いて、実施例3のスイッチング素子300の製造方法と等しい。実施例4のスイッチング素子では、範囲22as、22bsの上部に応力膜444a、444bが設けられているので、実施例3と同様にしてボディ領域22a、22bの上面12a近傍の部分(すなわち、チャネル423が形成される部分)に加わる圧縮応力を緩和できる。したがって、ゲート閾値が高く、ドレイン-ソース間の漏れ電流が少ないスイッチング素子を実現することができる。また、実施例4のスイッチング素子では、窓部24bの上部に間隔部444cが設けられている。したがって、応力膜444から窓部24bに加わる引張応力が小さい。したがって、半導体基板12の反りによって生じる圧縮応力が窓部24bの上面12a近傍の部分に加わり易い。したがって、スイッチング素子10がオンするときに、図19に示す高電子濃度層425のn型不純物濃度が高くなり易く、高電子濃度層425の電気抵抗が低くなり易い。したがって、スイッチング素子がオンするときのオン抵抗がより低くなる。実施例4によれば、よりオン抵抗が低いスイッチング素子を得ることができる。
【0060】
また、実施例4の構成によれば、応力膜444の幅が実施例3に比べて狭くなるので、応力膜444がより変形し難くなる。したがって、応力膜444の下部で半導体基板12がより変形し難くなる。このため、実施例4によれば、チャネル423が形成される部分に作用する圧縮応力をより効果的に緩和することができる。
【0061】
なお、実施例4では、間隔部444cの幅が範囲24bsの幅と略一致していた。しかしながら、図22に示すように間隔部444cの幅が範囲24bsの幅より狭くてもよいし、図23に示すように間隔部444cの幅が範囲24bsの幅より広くてもよい。
【0062】
また、上述した実施例3、4では、応力膜444がゲート電極406に接していた。しかしながら、応力膜444とゲート電極406の間に他の膜(例えば、絶縁膜または導電膜)が介在していてもよい。
【0063】
なお、上述した実施例1~4では、半導体基板12Xを上側部分12Uと下側部分12Lに分割するときに、チャネルが形成される半導体層に圧縮応力が発生した。しかしながら、他の理由によってチャネルが形成される半導体層に圧縮応力が発生する場合がある。例えば、半導体基板12の上面12a上に電極層、絶縁層等を形成することによって、チャネルが形成される半導体層に圧縮応力が発生する場合がある。したがって、本明細書に開示の技術(すなわち、チャネルが形成される半導体層における圧縮応力を応力膜によって緩和する技術)を、半導体基板の分割によって圧縮応力が発生する場合だけでなく、他の理由によって圧縮応力が発生する場合に使用してもよい。
【0064】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0065】
10:スイッチング素子、12:半導体基板、20:ソース領域、2:ボディ領域、24:ドレイン領域、42:ゲート絶縁膜、44:応力膜、46:ゲート電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23