(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082441
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】熱転写受像シート
(51)【国際特許分類】
B41M 5/52 20060101AFI20230607BHJP
C08J 5/12 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B41M5/52 400
C08J5/12 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196217
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英明
(72)【発明者】
【氏名】浅井 滋記
【テーマコード(参考)】
2H111
4F071
【Fターム(参考)】
2H111AA27
2H111CA03
2H111CA25
2H111CA45
4F071AA20B
4F071AA46B
4F071AA53A
4F071AH19
4F071CA01
4F071CB01
(57)【要約】
【課題】優れた画質と、薄くても十分な剛度とを両立することが可能な熱転写受像シートを提供する。
【解決手段】インク受像層11とフィルム基材12とを含む熱転写受像シート10であって、フィルム基材12は空隙を有し、フィルム基材12のインク受像層11側の厚さ方向2分の1の領域12aにおける平均空隙率(A)が26~45%であり、フィルム基材12のインク受像層11とは反対側の厚さ方向2分の1の領域12bにおける平均空隙率(B)が18~40%であり、且つ平均空隙率のA/Bの比率が1.05/1~2.2/1であり、フィルム基材12は、少なくともインク受像層11側に空隙の無いスキン層12cを有し、スキン層12cの厚さが0.5~20μmであり、熱転写受像シート10全体の総厚が、140~280μmである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク受像層とフィルム基材とを含む熱転写受像シートであって、
前記フィルム基材は空隙を有し、前記フィルム基材の前記インク受像層側の厚さ方向2分の1の領域における平均空隙率(A)が26~45%であり、前記フィルム基材の前記インク受像層とは反対側の厚さ方向2分の1の領域における平均空隙率(B)が18~40%であり、且つ前記平均空隙率のA/Bの比率が1.05/1~2.2/1であり、
前記フィルム基材は、少なくとも前記インク受像層側に空隙の無いスキン層を有し、前記スキン層の厚さが0.5~20μmであり、
前記熱転写受像シート全体の総厚が、140~280μmであることを特徴とする熱転写受像シート。
【請求項2】
前記フィルム基材がポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の熱転写受像シート。
【請求項3】
前記フィルム基材は、前記インク受像層とは反対側に空隙の無いスキン層をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
前記熱転写受像シートが、前記フィルム基材の前記インク受像層とは反対側に、接着層を介して、フィルムからなる裏面層をさらに有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の熱転写受像シート。
【請求項5】
前記接着層がポリウレタン系接着剤であることを特徴とする請求項4に記載の熱転写受像シート。
【請求項6】
前記裏面層がポリエステルであることを特徴とする請求項4または5に記載の熱転写受像シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写受像シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱転写受像シートにおいて、インク受像層の下の基材に断熱性、クッション性を持たせることで高画質の印画ができることが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、基材とインク受像層との間に独立気泡を有する空隙率20~60%の発泡PPフィルムまたは独立気泡を有する空隙率20~80%の発泡PETフィルムを設けたことが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、シート状基材の受像層が形成される側の表面が、ボイド構造を有する二軸延伸されたフィルムによって形成され、1000秒以上のベック平滑度と、50%以下の光沢度を有することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-221490号公報
【特許文献2】特開平5-16539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基材フィルムに空隙を持たせると断熱性・クッション性が高まり、高画質の印画が実現できるようになる一方、フィルムの剛度は低下する。これにより、例えばシート端部を手指で把持して画像を見る等に際して、シートが自立することができず、曲がりやすいという難点が生ずる。
【0007】
フィルムの剛度不足を補うため、空隙を有するフィルムの厚みを大きくしたり、紙やフィルムを積層したりすることも考えられる。しかし、フィルムの剛度が小さいほど、剛度不足を補うのに必要な厚みは大きくなりやすい。シート総厚が大きくなる結果、プリンタの給紙トレイに収納できる枚数が少なくなり、給紙頻度が上がるだけでなく、印画物を何枚も積層したり、ノートやアルバムに貼りつけて保管したりするときに嵩張る等の難点が生じる。
【0008】
本発明の課題は、優れた画質と、薄くても十分な剛度とを両立することが可能な熱転写受像シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、インク受像層とフィルム基材とを含む熱転写受像シートであって、前記フィルム基材は空隙を有し、前記フィルム基材の前記インク受像層側の厚さ方向2分の1の領域における平均空隙率(A)が26~45%であり、前記フィルム基材の前記インク受像層とは反対側の厚さ方向2分の1の領域における平均空隙率(B)が18~40%であり、且つ前記平均空隙率のA/Bの比率が1.05/1~2.2/1であり、前記フィルム基材は、少なくとも前記インク受像層側に空隙の無いスキン層を有し、前記スキン層の厚さが0.5~20μmであり、前記熱転写受像シート全体の総厚が、140~280μmであることを特徴とする熱転写受像シートである。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記フィルム基材がポリエステルであることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記フィルム基材は、前記インク受像層とは反対側に空隙の無いスキン層をさらに有することを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記熱転写受像シートが、前記フィルム基材の前記インク受像層とは反対側に、接着層を介して、フィルムからなる裏面層をさらに有することを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記接着層がポリウレタン系接着剤であることを特徴とする。
本発明の第6の態様は、第4または第5の態様において、前記裏面層がポリエステルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた画質と、薄くても十分な剛度とを両立することが可能な熱転写受像シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】熱転写受像シートの概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
図1に、実施形態の熱転写受像シート10の概略を示す。熱転写受像シート10は、インク受像層11とフィルム基材12とを含む。なお、
図1において、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0015】
熱転写受像シート10は、例えば、感熱昇華型転写方式により画像が形成されるシートである。感熱昇華型転写方式では、昇華性染料を色材とし、画像情報に応じて発熱制御されるサーマルヘッドなどの加熱デバイスを用いて、熱転写シート(図示せず)上に形成された昇華性染料層中の染料を熱転写受像シート10に移行させて画像を形成する。
【0016】
熱転写シート(インクリボン)としては、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色、あるいはこれら3色にブラック(K)を加えた4色の昇華性染料をそれぞれフィルム上に塗布して各色の昇華性染料層を備えた熱転写シートが用いられる。サーマルヘッドの加熱エネルギーを制御することで各色の濃度階調が制御される。熱転写シートの各色の染料を順次繰り返し転写することでフルカラー画像が形成される。熱転写シートの色の数、種類等は適宜、設計、変更等が可能である。
【0017】
<インク受像層>
インク受像層11は、例えば、熱転写シートからの染料を受容して画像を形成するための層である。インク受像層11は、染料を染着させるためにバインダー樹脂等の樹脂材料を含むことが好ましい。必要に応じて、インク受像層11は、離型剤等の添加剤を含有してもよい。
【0018】
バインダー樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合樹脂等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、スチレンと他のオレフィンとの共重合体等のポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;エチレン、プロピレン等のオレフィンと他のビニル系モノマーとの共重合体;アイオノマー;セルロース誘導体等が挙げられる。1種のバインダー樹脂を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。バインダー樹脂の含有量は、インク受像層11の全質量に対して90質量%以上が好ましく、100質量%であってもよい。
【0019】
離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系可塑剤、フッ素系化合物等が挙げられる。シリコーンオイルは、ストレートシリコーンオイルであってもよく、変性シリコーンオイルであってもよい。離型剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して0.01~20質量部が好ましい。
【0020】
インク受像層11が必要に応じて含有してもよい、他の添加剤としては、例えば蛍光増白剤、顔料、染料、帯電防止剤などの1種または2種以上が挙げられる。インク受像層11の坪量は、例えば固形分で0.5~6.0g/m2としてもよい。
【0021】
インク受像層11を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、バインダー樹脂、液状媒体、及び必要に応じて離型剤や他の成分を含むインク受像層11形成用塗料をフィルム基材12等の支持体の面上に塗工し、乾燥することにより形成できる。液状媒体としては、水、有機溶剤等が挙げられる。
【0022】
インク受像層11形成用塗料の塗工方法は、公知の塗工方法で行うことができる。例えばバーコーター、ワイヤーバーコーター、マイクログラビアコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ダイコーター等の公知の塗工装置を用いて行うことができる。塗工後の乾燥工程は、ロールサポート方式やフローティング方式など、公知の乾燥方法を用いて行うことができる。
【0023】
<フィルム基材>
フィルム基材12は、内部に空隙を有するフィルムを用いた基材であり、インク受像層11を支持することができる。フィルム基材12は、単層でも複層でもよい。フィルム基材12としては、マトリクス樹脂の内部に空隙を形成した樹脂フィルムを使用してもよい。マトリクス樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂等が好ましい。
【0024】
フィルム基材12のマトリクス樹脂がインク受像層11のバインダー樹脂と同種の樹脂でもよく、異なる樹脂でもよい。好適なマトリクス樹脂の具体例としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。
【0025】
マトリクス樹脂として、ヤング率が高く、剛性に優れ、耐熱性や汎用性が優れる点では、ポリエステル系樹脂が好ましく、芳香族カルボン酸成分と脂肪族ポリオール成分とを縮合させた化学構造を有する半芳香族ポリエステルがより好ましい。芳香族カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸等の1種または2種以上が挙げられる。脂肪族ポリオール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の1種または2種以上が挙げられる。
【0026】
フィルム基材12の製造方法は特に限定されず、公知の方法の中から適宜選択することができる。フィルムの成形方法としては、キャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形などが挙げられる。
【0027】
キャスト成形では、例えばスクリュー型押出機に接続された単層または多層のTダイ、Iダイ等を使用して溶融樹脂をシート状に押し出してもよい。インフレーション成形では、例えば単層または多層のインフレーションダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出してもよい。また、フィルムを成形する際、例えば熱可塑性樹脂と有機溶媒やオイルとの混合物をキャスト成形、カレンダー成形等でフィルム状に成形した後に、溶剤やオイルを除去する方法を用いてもよい。熱可塑性樹脂の溶液からフィルムを成形した後に溶媒を除去してもよい。
【0028】
フィルム基材12に空隙を形成する方法は特に限定されないが、マトリクス樹脂に非相溶性の材料を添加し、非相溶性の材料の周囲に空隙を形成する方法が好ましい。非相溶性の材料としては、非相溶性ポリマー、フィラー(粒子)等が挙げられる。熱分解によりガスを発生させる物質を樹脂に添加する方法に比べると、非相溶性の材料の周囲に形成される空隙は厚さ方向に膨張しにくく、空隙の分布を形成しやすい。また、非相溶性の材料を含有するマトリクス樹脂を延伸する方法によれば、フィルム基材12の厚さ方向の少なくとも片面にスキン層12c,12dを形成しやすい。
【0029】
マトリクス樹脂に非相溶性ポリマーを添加する場合は、溶融混練してマトリクス樹脂中で非相溶性ポリマーを分散させることにより、非相溶性ポリマーが微粒子状となる。例えばポリエステル系樹脂をマトリクス樹脂として用いる場合は、ポリエステルに対する非相溶性ポリマーとして、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などの1種または2種以上が挙げられる。特にポリスチレン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0030】
マトリクス樹脂にフィラー(粒子)を添加する場合は、無機系フィラーでも有機系フィラーでもよい。無機系フィラーとしては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ゼオライト、水酸化アルミニウム等が挙げられる。有機系フィラーとしては、ポリメチルアクリレート、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。特に炭酸カルシウムが好ましい。フィラーの表面には各種の表面処理を施すことも可能である。1種類のフィラーを単独で使用してもよく、2種以上のフィラーを併用することも可能である。
【0031】
PET等のポリエステルをマトリクス樹脂とする場合は、非相溶性ポリマーを添加して溶融混練する方法が好ましい。PP等のポリオレフィンをマトリクス樹脂とする場合は、無機系または有機系のフィラーを発泡剤として添加することが好ましい。空隙率のコントロール方法は、マトリクス樹脂と非相溶性材料の配合比、非相溶性材料の粒子径、フィルムの延伸温度等により調整することができる。
【0032】
実施形態に用いられるフィルム基材12は、フィルム基材12のインク受像層11側の厚さ方向2分の1の領域12aにおける平均空隙率(A)が26~45%であり、フィルム基材12のインク受像層11とは反対側の厚さ方向2分の1の領域12bにおける平均空隙率(B)が18~40%であり、且つ平均空隙率のA/Bの比率が1.05/1~2.2/1である。
【0033】
以下の説明では、インク受像層11側の厚さ方向2分の1の領域12aを受像側の領域12aといい、反対側の厚さ方向2分の1の領域12bを反対側の領域12bという場合がある。受像側の領域12aの平均空隙率Aと、反対側の領域12bの平均空隙率Bとの比率が1より大きいことから、平均空隙率Aは平均空隙率Bより大きい。
【0034】
受像側の領域12aの平均空隙率(A)は、26~45%であることが好ましく、31~40%であることがより好ましい。平均空隙率(A)が前記下限値以上であると、空隙による断熱性が効果的に発揮されて、発色が鮮明な画像が得られやすくなる。平均空隙率(A)が前記上限値以下であると、フィルム基材12の層間強度が十分強くなり、層間剥離が抑制され、剛性も高まる。
【0035】
反対側の領域12bの平均空隙率(B)は、18~40%であることが好ましく、24~34%であることがより好ましい。平均空隙率(B)が前記下限値以上であると、空隙による断熱性が効果的に発揮されて、発色が鮮明な画像が得られやすくなる。平均空隙率(B)が前記上限値以下であると、フィルム基材12の剛性が高まり、熱転写受像シート10全体の剛度も高くなる。また、フィルム基材12の層間強度が十分強くなり、層間剥離の発生を抑制することができる。
【0036】
前記平均空隙率のA/Bの比率は、1.05/1~2.2/1であることが好ましく、1.1/1~1.67/1であることがより好ましい。前記平均空隙率のA/Bの比率が前記下限値以上であると、空隙による断熱性が効果的に発揮されて、発色が鮮明な画像が得られやすくなる。また、フィルム基材12の剛性が高まり、熱転写受像シート10全体の剛度も高くなる。前記平均空隙率のA/Bの比率が前記上限値以下であると、フィルム基材12の層間強度が十分強くなり、層間剥離の発生を抑制することができる。また、フィルム基材12の剛性が十分あり、熱転写受像シート10全体の剛度も十分となる。
【0037】
空隙率は、以下のようにして測定することができる。まず、フィルム基材12の厚さ方向の断面を電子顕微鏡で撮影する。次いで、画像処理ソフトを用いて得られた画像を二値化処理する。二値化処理した画像について、フィルム基材12の所定の領域に対する空隙部分の面積割合を算出する。平均空隙率は、フィルム基材12の同一のサンプルから任意の2箇所またはそれ以上の箇所について空隙部分の面積割合を算出し、その平均値として求めることができる。
【0038】
フィルム基材12は、少なくともインク受像層11側に、空隙の無いスキン層12cを有することが好ましい。以下の説明では、インク受像層11側のスキン層12cを、受像側スキン層12cという場合がある。受像側スキン層12cは、フィルム基材12のうち、厚さ方向のインク受像層11側で実質的に空隙を有しない領域である。受像側スキン層12cは、フィルム基材12のマトリクス樹脂と同一の樹脂材料から連続的に形成することができる。フィルム基材12の空隙含有層12eは、スキン層12c,12d以外の領域である。インク受像層11とは反対側のスキン層12dについては後述する。
【0039】
受像側スキン層12cの厚さは、0.5~20μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましい。受像側スキン層12cの厚さが前記下限値以上であると、フィルム基材12中の空隙が表面に露出しにくく、平滑性が損なわれにくいため、画像の濃淡ムラやカスレがより発生しにくい。受像側スキン層12cの厚さが前記上限値以下であると、昇華型プリンタのサーマルヘッドからフィルム基材12の空隙を有する層までの距離が十分に近く、断熱性がより効果的に発揮されて、発色が鮮明な画像が得られやすくなる。
【0040】
受像側スキン層12cが実質的に空隙を有しないという場合は、例えば空隙率が1%未満であることを意味する。空隙率の測定方法と同様にして二値化処理した画像を作成し、フィルム基材12のインク受像層11側の面を含んで、これと平行な境界線との間に空隙率の測定対象領域を設定したとき、空隙率が1%未満となる範囲であれば、当該測定対象領域は受像側スキン層12cと判断される。受像側スキン層12cの厚さは、インク受像層11側の面と測定対象領域の境界線との距離として求められる。このとき、測定対象領域の境界線は、受像側スキン層12cと空隙含有層12eとの境界線となる。
【0041】
熱転写受像シート10全体の総厚は、140~280μmであることが好ましく、180~240μmであることがより好ましい。熱転写受像シート10全体の総厚が前記下限値以上であると、熱転写受像シート10全体の剛性が十分に確保しやすい。熱転写受像シート10全体の総厚が上限値以下であると、給紙カセットにセットできる熱転写受像シート10の枚数が従来とほぼ同等かそれ以上であり、給紙頻度が煩わしくならず、取り扱い(ハンドリング)が容易になる。
【0042】
熱転写受像シート10全体の総厚は、例えば常温(5~35℃)において、測定器を用いて測定してもよい。熱転写受像シート10全体の総厚が、熱転写受像シート10に含まれる各層の厚さを合計した厚さであってもよい。例えば、熱転写受像シート10が裏面層14を有する場合は、インク受像層11から裏面層14までの厚さの合計であってもよい。熱転写受像シート10が裏面層14を有しない場合は、インク受像層11とフィルム基材12との厚さの合計であってもよい。
【0043】
フィルム基材12は、インク受像層11とは反対側に、空隙の無いスキン層12dをさらに有してもよい。以下の説明では、インク受像層11とは反対側のスキン層12dを、反対側スキン層12dという場合がある。反対側スキン層12dは、フィルム基材12のうち、厚さ方向のインク受像層11とは反対側で実質的に空隙を有しない領域である。反対側スキン層12dは、フィルム基材12のマトリクス樹脂と同一の樹脂材料から連続的に形成することができる。
【0044】
反対側スキン層12dの厚さは、0.5~20μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましい。反対側スキン層12dの厚さが前記下限値以上であると、フィルム基材12中の空隙が表面に露出しにくく、平滑性が損なわれにくいため、接着層13のラミネートがしやすくなる。反対側スキン層12dの厚さが前記上限値以下であると、接着層13をラミネートするために必要な平滑性を十分に備えることができる。
【0045】
反対側スキン層12dが実質的に空隙を有しないという場合は、例えば空隙率が1%未満であることを意味する。反対側スキン層12dの厚さは、反対側スキン層12dがインク受像層11とは反対側の面を含む領域であることを除いて、受像側スキン層12cの厚さと同様に測定することができる。このとき、測定対象領域の境界線は、反対側スキン層12dと空隙含有層12eとの境界線となる。フィルム基材12が反対側スキン層12dを有しない場合は、空隙含有層12eがインク受像層11とは反対側の面に露出されてもよい。
【0046】
厚さ方向に空隙率の異なるフィルム基材12を形成する方法は、特に限定されず、適宜の方法を採用することができる。1層の樹脂層から空隙率の異なる分布を有するフィルム基材12としてもよい。空隙率の異なる2層以上の樹脂層からフィルム基材12を形成してもよい。
【0047】
1層のフィルム基材12で厚さ方向に空隙率の異なる分布を形成するには、非相溶性ポリマー、発泡剤等の非相溶性の材料を添加したマトリクス樹脂を混練溶融し、押出成形した後、厚さ方向に温度分布を有する状態で延伸工程を実施してもよい。押出成形した樹脂フィルムを原反冷却装置に通すことでフィルム材料が冷却される。例えば押し出されたフィルム材料の片面が冷却ロールと接触して冷却されるとき、冷却ロールの外周長や冷却ロールへの通紙方法(抱き角度)を調整することにより、フィルムの厚さ方向に意図的に温度勾配を作ることができる。このようにして、厚さ方向に温度勾配がある状態で延伸する工程を行うことにより、厚さ方向に空隙率が異なる調整が可能になる。
【0048】
空隙率の異なる2層以上の樹脂層からフィルム基材12を形成する場合は、例えば非相溶性ポリマー、発泡剤等の非相溶性の材料の添加量、その後の処理条件等を調整することにより、層ごとに空隙率を調整することができる。2層以上の樹脂層からフィルム基材12を形成する場合にも、厚さ方向に温度勾配がある状態で延伸する工程を実施してもよい。2層以上の樹脂層が同種のマトリクス樹脂を含有することにより、層間剥離を生じにくく積層することができるので好ましい。例えば共押出用の多層のTダイ、インフレーションダイ等を用いて、2層以上を同時に成形し、積層してもよい。
【0049】
受像側の領域12aと反対側の領域12bとが同じ樹脂層から形成されてもよい。空隙率の異なる樹脂層から受像側の領域12aと反対側の領域12bとを形成して一体化してもよい。スキン層12c,12dの少なくともいずれかが、空隙含有層12eと同じ樹脂層から形成されてもよい。異なる樹脂層からスキン層12c,12dと空隙含有層12eとを形成して一体化してもよい。空隙含有層12eのうち受像側の領域12aと反対側の領域12bとが、同じ樹脂層でもよく、異なる樹脂層でもよい。
【0050】
空隙含有層12eにおける空隙の分布は、上述の上限を満足する限り、特に限定されるものでない。インク受像層11側から反対側まで略均等に空隙が分散していてもよい。空隙率が傾斜的に変化してもよく、段階的に変化してもよい。空隙含有層12eのうち、スキン層12c,12dに近接する領域は、スキン層12c,12dより空隙率が高くなっている(例えば1%以上)。スキン層12c,12dから離れた位置では、実質的に空隙を有しない領域が部分的に空隙含有層12eに含まれていてもよい。
【0051】
得られたフィルム基材12は、ロール延伸、テンター延伸、インフレーション延伸法等によって公知の条件により少なくとも1軸、好ましくは2軸に延伸、配向し、その後、熱処理することが好ましい。
【0052】
<熱転写受像シートのその他の構成>
実施形態の熱転写受像シート10は、少なくともインク受像層11とフィルム基材12とを含めばよい。熱転写受像シート10が、フィルム基材12のインク受像層11とは反対側に、接着層13を介して、フィルムからなる裏面層14をさらに有してもよい。
【0053】
接着層13は、フィルム基材12と裏面層14とを接着する層である。接着層13としては、特に限定されず、種々の公知の接着剤を用いて形成できる。接着剤としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、α-オレフィン-無水マレイン酸共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウリア系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シアノアクリレート系樹脂等が挙げられる。接着層13は、ドライラミネート適性に優れ、また少ない塗布量で接着できる点でポリウレタン系樹脂が好ましい。
【0054】
接着層13は、上述の接着剤(樹脂)を主剤とし、さらに硬化剤を添加して硬化されてもよい。硬化剤としては、主剤に応じて適宜選択可能であるが、例えばイソシアネート系化合物、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物等を使用することもできる。
【0055】
接着層13の形成は、公知の塗工方法で行うことができる。例えばバーコーター、ワイヤーバーコーター、マイクログラビアコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ダイコーター等の公知の塗工装置を用いて行うことができる。塗工後の乾燥工程は、ロールサポート方式やフローティング方式など、公知の乾燥方法を用いて行うことができる。
【0056】
裏面層14には、樹脂フィルムを使用してもよい。樹脂フィルムとしては、ポリエステル、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂等のフィルムが好ましい。裏面層14の材料に好適な樹脂の具体例としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。裏面層14の樹脂は、フィルム基材12のマトリクス樹脂と同一または類似の樹脂であってもよい。
【0057】
裏面層14は実質的に空隙を有しない樹脂フィルムであってもよい。裏面層14が実質的に空隙を有しないという場合は、例えば空隙率が1%未満であることを意味する。裏面層14は透明でもよく、着色されていてもよい。裏面層14が帯電防止剤を含有してもよく、帯電防止剤を含有していなくても構わない。
【0058】
実施形態の熱転写受像シート10は、インク受像層11側のフィルム基材12において、インク受像層11側の空隙率を高くすることで、断熱性、クッション性を持たせ、優れた画質を得ることができる。また、フィルム基材12のインク受像層11とは反対側の空隙率を低くすること、空隙の無いスキン層12c,12dをインク受像層11側または両側に設けることで、薄くても十分な剛度を有する熱転写受像シート10を提供することができる。
【0059】
実施形態の熱転写受像シート10は、必要に応じて、上記以外の他の層をさらに備えていてもよい。例えば、熱転写受像シート10の裏面に、接着層、粘着層、離型層、裏印刷層、帯電防止層、カバー層、艶消し層(マット層)、滑り止め層、易接着層、あるいはフィルム、紙等の基材が、単層あるいは任意の組合せで2層以上、積層されていても構わない。帯電防止層(図示せず)は、例えば帯電防止剤を含有する塗料を塗工することで形成することができる。帯電防止層は、バインダー樹脂等の樹脂材料を含有してもよい。
【0060】
また、熱転写受像シート10の裏面に離型シートを積層してもよい。例えば、裏面層14の接着層13とは反対側の面に、少なくとも粘着層が積層され、さらに離型シートが貼着されていても構わない。フィルム基材12を第一基材、裏面層14を第二基材としたとき、離型シートが第三基材を有してもよい。フィルム基材12のインク受像層11とは反対側の面に、少なくとも粘着層が積層され、さらに離型シートが貼着されていても構わない。より具体的には、例えば、熱転写受像シート10の裏面に易接着層、粘着層をこの順番で積層して粘着シート(シール)とし、さらに、離型層、離型基材(第三基材)、易接着層、裏印刷層、帯電防止層がこの順番で積層された離型シートを貼着して、粘着層と離型層の境界で剥離可能であっても構わない。
【0061】
離型シートを有する熱転写受像シート10の総厚には、離型シートの厚さが含まれる。離型基材は離型シートの基材である。離型基材の片面に離型層を積層し、反対側の面に、任意に他の層を積層することができる。離型基材の材質は特に限定されないが、空隙を有する樹脂フィルム、空隙を有しない樹脂フィルム、紙等を用いることができる。
【0062】
実施形態の熱転写受像シート10は、印画物の製造に用いることができる。印画物は、インク受像層11に画像を形成して製造することができる。必要に応じて、画像の上に画像保護層を設けてもよい。画像保護層は、例えば、透明性または透光性を有する樹脂のコート、ラミネート等から形成することができる。印画物は、例えばカード類、遊戯物等であってもよい。
【0063】
実施形態の熱転写受像シート10または、これを用いて製造した印画物は、さらに裏面に意匠性を有してもよい。例えば熱転写受像シート10の裏面に、裏印刷層、カバー層等を備えてもよい。裏印刷層(図示せず)は、例えば公知の印刷法により形成された印刷層である。カバー層(図示せず)は、例えば裏印刷層を保護するために、透明性または透光性を有する樹脂のコート、ラミネート等から形成することができる。
【0064】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【実施例0065】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
<フィルム基材の作製>
ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリプロピレン(PP)を用いて空隙を有する単層または複層のフィルム基材を作製した。材質がPETの場合は、PETに非相溶性ポリマーを添加し、溶融混練して分散させた後でフィルムを延伸することにより、厚さ方向に分布を有する空隙を形成した。材質がPPの場合は、PPに炭酸カルシウム等のフィラーを添加し、溶融混練して分散させた後でフィルムを延伸することにより、厚さ方向に分布を有する空隙を形成した。
【0067】
<熱転写受像シートの作製>
フィルム基材の片面に、インク受像層形成用塗料を塗工して、インク受像層を形成した。実施例12では裏面層を省略したが、それ以外の熱転写受像シートでは、フィルム基材のインク受像層とは反対側の面に接着剤を塗工した後、空隙を有しない樹脂フィルムをラミネートした。接着剤にはウレタン系接着剤またはアクリル系接着剤を用いた。裏面層の空隙を有しない樹脂フィルムには、PETまたはPPを用いた。
【0068】
<平均空隙率の測定>
熱転写受像シートを厚さ方向に切断し、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-6460LV)を用い、倍率2000倍でフィルム基材を含む切断面を撮影した。次いで、画像処理ソフト(三谷商事株式会社製、商品名WinROOF)を用いて、撮影で得られた画像を二値化処理した。二値化処理した画像について、画像中の空隙部分の面積割合を算出した。
【0069】
インク受像層側の厚さ方向2分の1の領域と、インク受像層とは反対側の厚さ方向2分の1の領域とを区分して、インク受像層側の領域の平均空隙率を「受像側の平均空隙率A」、インク受像層とは反対側の領域の平均空隙率を「反対側の平均空隙率B」とした。両者の比率を計算して、「A/Bの比率」を求めた。
【0070】
<スキン層の厚さの測定>
平均空隙率の測定で得られた二値化処理画像について、フィルム基材のうち、インク受像層に接して空隙率が1%未満となる領域の厚さを算出して「受像側スキン層の厚さ」とした。これと同様にして、フィルム基材のうち、インク受像層とは反対側の面(もしあれば接着層)に接して空隙率が1%未満となる領域の厚さを算出して「反対側スキン層の厚さ」とした。
【0071】
<画質の評価>
熱転写受像シートを幅(短辺)100mm、長さ(長辺)177mmにカットし、評価シートとした。評価シートを、昇華型熱転写方式のプリンタ(キヤノン株式会社製、SELPHY CP1300)にセットし、人物画像・風景画像を印画した。印画後の評価シートの画像を目視で確認し、以下の基準で画質を判定した。
【0072】
◎:濃淡ムラ、カスレ、発色が不鮮明な部分が全くないレベルであった。
○:注意深く観察しなければ濃淡ムラ、カスレまたは発色が不鮮明な部分が確認できないレベルであった。
△:濃淡ムラ、カスレまたは発色が不鮮明な部分が目立ち、画像品質を損なうレベルであった。
×:明らかな濃淡ムラ、カスレまたは発色が不鮮明な部分が確認され、画像品質を著しく損なうレベルであった。
【0073】
<剛度の評価>
画質の評価に用いた熱転写受像シートを水平にし、短辺(100mm)が縦、長辺(177mm)が横になる向きで、右下隅を親指と人差し指で挟んで持ったときに画像が見やすいか、熱転写受像シートの湾曲の程度を目視で確認し、以下の基準で判定した。
【0074】
◎:自重による湾曲がほとんど見られず、画像が見やすいレベルであった。
○:自重による湾曲がわずかに見られるが、画像を見るには支障のないレベルであった。
△:自重による湾曲が見られ、画像が見にくいレベルであった。
×:自重により著しく湾曲してしまい、画像が極めて見にくいレベルであった。
【0075】
<ハンドリングの評価>
給紙カセットに一度にセットできる熱転写受像シートの枚数が従来と比べて変わることによる給紙の煩雑性を以下の基準で判定した。従来の評価シートには、厚さ210μmの熱転写受像シートを用いた。
【0076】
◎:従来よりも給紙頻度が減り、煩雑性は軽減した。
○:従来と比べて給紙頻度は変わらない。
△:従来と比べて給紙頻度が増え、やや煩雑になった。
×:従来と比べて給紙頻度が大幅に増え、著しく煩雑になった。
【0077】
<層間強度の評価>
熱転写受像シートのインク受像層側の面に、ポリエステル粘着テープ(日東電工株式会社製、No.31B 75ハイ、厚み25μm、幅25mm)を50mmの長さとなるように貼り付けた後、インク受像層側の面に対して、真上方向に90°の角度で、貼り付けた粘着テープを素早く引き剥がした(引き剥がし操作)。インク受像層側の面の同じ位置に対して最大10回まで繰り返し引き剥がし操作を実施し、以下の基準で判定した。
【0078】
◎:引き剥がし操作10回を実施した後に層間剥離は見られず、層間強度は十分なレベルであった。
○:引き剥がし操作10回目までに層間剥離が見られたが、実使用上支障を及ぼす可能性が低い層間強度レベルであった。
△:引き剥がし操作3回目までに層間剥離が見られ、実使用上支障を及ぼす可能性のある層間強度レベルであった。
×:引き剥がし操作1回目に層間剥離が見られ、実使用に耐えられない層間強度レベルであった。
【0079】
<総合評価の基準>
画質、剛度、ハンドリング、層間強度の4項目の評価結果から、総合評価を求めた。
◎:4項目の評価が全て◎または○の場合。
○:4項目の評価に×は含まず、△を含み、残りが◎または○のみの場合。
×:4項目の評価に×を1つでも含む場合。
【0080】
以上の結果を表1~4に示す。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
実施例1~19の熱転写受像シートは、画質、剛度、ハンドリングがいずれも良好で、層間強度も優れていた。
【0086】
総厚が薄い比較例1の熱転写受像シートは、剛度に劣っていた。
受像側スキン層の厚さが薄い比較例2の熱転写受像シートは、画質に劣っていた。
反対側の平均空隙率Bが小さく、A/Bの比率が大きい比較例3の熱転写受像シートは、画質に劣っていた。
受像側の平均空隙率A及びA/Bの比率が小さい比較例4の熱転写受像シートは、画質に劣っていた。
【0087】
受像側の平均空隙率Aが大きい比較例5の熱転写受像シートは、層間強度に劣っていた。
反対側の平均空隙率Bが大きく、A/Bの比率が小さい比較例6の熱転写受像シートは、剛度に劣っていた。
受像側の平均空隙率A及びA/Bの比率が大きい比較例7の熱転写受像シートは、層間強度に劣っていた。
受像側スキン層の厚さが厚い比較例8の熱転写受像シートは、画質に劣っていた。
総厚が厚い比較例9の熱転写受像シートは、ハンドリングに劣っていた。
10…熱転写受像シート、11…インク受像層、12…フィルム基材、12a…受像側の領域、12b…反対側の領域、12c…受像側スキン層、12d…反対側スキン層、12e…空隙含有層、13…接着層、14…裏面層。