(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082445
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】再生樹脂組成物、発泡体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196222
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大西 俊行
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AA18
4F074AA19
4F074AA20
4F074AA21
4F074AA24
4F074AB01
4F074AB05
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA95
4F074CA22
4F074CC04X
4F074CC05Y
4F074CC22X
4F074DA02
4F074DA22
4F074DA24
4F074DA33
(57)【要約】
【課題】再生ポリオレフィン系樹脂を50質量%より多く含有し、押出発泡可能で、外観良好で更にマテリアルリサイクル可能な発泡体を製造可能な再生樹脂組成物と、前記再生樹脂組成物で構成された発泡層を備える発泡体及びその製造方法とを提供する。
【解決手段】再生ポリオレフィン系樹脂を50質量%より多く含み、再生ポリオレフィン系樹脂は、Mwが200×10
3以上で、Mz/Mwが4.0以上で、MFRが0.5g/10min以上2.0g/10min以下である、発泡体成形用の再生樹脂組成物である。前記再生樹脂組成物で構成された発泡層を備え、前記発泡層は、見掛け密度が10kg/m
3以上100kg/m
3以下、坪量が10g/m
2以上200g/m
2以下、及び厚さが0.5mm以上5.0mm以下である、発泡体である。前記再生樹脂組成物で構成された発泡層を形成させる工程を含む、前記発泡層を備える発泡体の製造方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂を50質量%よりも多く含み、
前記少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂は、Mwが200×103以上であり、Mz/Mwが4.0以上であり、MFRが0.5g/10min以上2.0g/10min以下である、
発泡体成形用の再生樹脂組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂は、少なくとも1種の再生ポリエチレン系樹脂である、請求項1に記載された再生樹脂組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂は、少なくとも1種の再生ポリエチレン系樹脂であり、樹脂密度が910kg/m3以上930kg/m3以下である、請求項1に記載された再生樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された再生樹脂組成物で構成された発泡層を備え、
前記発泡層では、見掛け密度が10kg/m3以上100kg/m3以下であり、坪量が10g/m2以上200g/m2以下であり、厚さが0.5mm以上5.0mm以下である、
発泡体。
【請求項5】
前記発泡層は、押出発泡シートで構成され、幅方向に外観が交互に変化する縞が形成されており、幅200mmあたりの縞数が11.0以下である、請求項4に記載された発泡体。
【請求項6】
少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂を50質量%よりも多く含有する再生樹脂組成物から、該再生樹脂組成物で構成された発泡層を形成させる工程を含み、
前記少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂は、Mwが200×103以上であり、Mz/Mwが4.0以上であり、MFRが0.5g/10min以上2.0g/10min以下である、
前記発泡層を備える発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体成形用の再生樹脂組成物と、該再生樹脂組成物で構成された発泡層を備える発泡体と、該発泡体の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック製造に伴う石油資源の枯渇問題や、大気中CO2濃度の増加に関連する地球温暖化への危惧から、廃プラスチックを焼却処分する際にCO2が排出される環境問題が、注目を集めている。これらの問題を少しでも緩和するために、廃プラスチックを再生樹脂として有効活用するマテリアルリサイクルについて、様々な試みがなされてきた。例えば、特許文献1に、再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体用組成物や、この組成物を発泡成形させてなる再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体が、開示されている。この組成物は、ポリオレフィン系樹脂発泡体用組成物100重量部と、当該発泡体用組成物を発泡成形・加工する際に廃棄物を再生した再生樹脂組成物5~40重量部とを含む。この組成物は、発泡体の製造工程で発生する廃棄物を有効に再利用し、ピンホールの少ない発泡体を製造することができる旨、特許文献1で説明されている。
【0003】
特許文献2には、ポリエチレンを含むポリオレフィン系樹脂を主体とする容器包装リサイクル材と、有機過酸化物と、発泡剤と、を含む原料を押出成形機に供給して押出成形を行うことを特徴とする、押出成形発泡体の製造方法が開示されている。この製造方法の前記原料では、ポリエチレン成分が全樹脂成分の50質量%以上となるように、ポリエチレンを付加する場合がある旨、特許文献2に記載されている。この製造方法では、押出成形機のシリンダ内部で、有機過酸化物によりポリエチレンを架橋し、且つ、発泡剤により発泡成長させる。これにより、容器包装リサイクル材を主原料とするにも関わらず、微細な均一の独立気泡を有しており成形性に優れた押出発泡体を製造することができる旨、特許文献2で説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-225571号公報
【特許文献2】特開2010-70624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、仮に、再生樹脂含有ポリオレフィン系樹脂発泡体用組成物が再生材料のみからなる場合には、物性の劣化が大きいため、作製した発泡体を更に再生に供するのは困難である旨、説明されている。特に、成形加工に一度も使用されていないバージン材ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、40重量部を超えて再生樹脂ペレットを配合すると、繰り返し再利用する場合に十分な発泡を達成できない旨、特許文献1で説明されている。
【0006】
また、特許文献2に記載された押出成形発泡体の製造方法では、有機過酸化物によりポリエチレンを架橋することを必須としている。しかし、有機過酸化物で架橋されたポリエチレンは、架橋により更に高分子化しているものの、溶融混練するときに分子鎖がせん断され物性劣化を招きやすい。このため、有機過酸化物で架橋されたポリエチレン製の押出成形発泡体を、更にマテリアルリサイクルに供するのは、難しいと考えられる。このように従来技術では、マテリアルリサイクルされたポリオレフィン系樹脂(以下「再生ポリオレフィン系樹脂」ともいう)を主原料として発泡体を製造しようとすると、外観良好であり且つ更にマテリアルリサイクル可能な発泡体を製造するのは、困難であった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、再生ポリオレフィン系樹脂を50質量%よりも多く含有しているにも関わらず押出発泡可能な物性を有する再生樹脂組成物であり、且つ、外観良好であり更にマテリアルリサイクル可能な物性を維持した発泡体を製造可能である、発泡体成形用の再生樹脂組成物を提供することにあり、また、該再生樹脂組成物から構成された発泡層を備える発泡体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明に係る再生樹脂組成物は、少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂を50質量%よりも多く含み、前記少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂は、Mwが200×103以上であり、Mz/Mwが4.0以上であり、MFRが0.5g/10min以上2.0g/10min以下である、発泡体成形用の再生樹脂組成物である。
【0009】
斯かる構成である再生樹脂組成物によれば、50質量%よりも多く含まれる少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂のMw、Mz/Mw、及びMFRの値が上記した一定の範囲内に含まれるものであるため、再生樹脂組成物で構成された発泡層を備える発泡体を例えば押出発泡により形成させる場合に、再生樹脂組成物が適度に引き延ばされやすく、形成される発泡層で裂け目や破泡やピンホールが生じにくく、外観良好な発泡層が形成されやすい。また、同じ理由により、斯かる構成の再生樹脂組成物によれば、マテリアルリサイクルする過程で溶融混練されても劣化しにくい物性を有するため、更にマテリアルリサイクル可能な物性を維持した発泡体を製造可能である。
【0010】
本発明に係る発泡体の製造方法は、少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂を50質量%よりも多く含有する再生樹脂組成物から、該再生樹脂組成物で構成された発泡層を形成させる工程を含み、前記少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂は、Mwが200×103以上であり、Mz/Mwが4.0以上であり、MFRが0.5g/10min以上2.0g/10min以下である、前記発泡層を備える発泡体の製造方法である。
【0011】
斯かる構成である発泡体の製造方法によれば、再生樹脂組成物に50質量%よりも多く含まれる少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂において、Mw、Mz/Mw、及びMFRの値が上記した一定の範囲内に含まれるため、形成される発泡層で裂け目や破泡やピンホールが生じにくく、また、更にマテリアルリサイクル可能な物性を維持した発泡体を製造可能である。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、本発明によれば、再生ポリオレフィン系樹脂組成物を50質量%よりも多く含有しているにも関わらず押出発泡可能な物性を有する再生樹脂組成物であり、且つ、外観良好であり更にマテリアルリサイクル可能な物性を維持した発泡体を製造可能である、発泡体成形用の再生樹脂組成物を提供することができる。また、該再生樹脂組成物から構成された発泡層を備える発泡体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る発泡体の構造を示す概略断面図。
【
図2】他の実施形態に係る発泡体の構造を示す概略断面図。
【
図3】さらに他の実施形態に係る発泡体の構造を示す概略断面図。
【
図4】一実施形態の係る発泡体について、その製造方法の一例を説明するフローチャート。
【
図5】実施例1に係る発泡シートを、平らな面の上に伸ばして置いて、上方から視た外観を示す写真。
【
図6】比較例1に係る発泡シートを、平らな面の上に伸ばして置いて、上方から視た外観を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る発泡体と、該発泡体の成形用である再生樹脂組成物とを説明する。発泡体については、再生樹脂組成物が押出機の内部で溶融混練されて、押出機の先端に装着されたダイに設けられたスリットを通して、大気中へシート状に押し出されて形成される押出発泡シートである場合を、主たる例として説明する。
【0015】
図1に示すように、一実施形態に係る発泡体1aは、再生樹脂組成物を使用して押出発泡法により作製される単一の発泡層2のみを有する、単層構造の押出発泡シートである。このため、発泡層2の気泡膜は、再生樹脂組成物で構成されている。
図2に示すように、本発明の他の実施形態に係る発泡体1bは、発泡層2の片面に非発泡層3を有する押出発泡シートであってもよい。
図3に示すように、本発明の他の実施形態に係る発泡体1cは、発泡層2の両面に非発泡層3を有する押出発泡シートであってもよい。本発明の実施形態に係る発泡体は、必ずしも押出発泡シートでなくてもよい。以下、
図1に示す発泡体1aを例に挙げて説明する。
【0016】
発泡体1aにおける発泡層2の原料として使用される再生樹脂組成物は、少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂を含有してなる樹脂組成物である。再生樹脂組成物は、ベース樹脂だけでなく、更に任意で、少なくとも発泡剤を含む1種以上の添加剤を含有してなる樹脂組成物であってもよい。なお、ベース樹脂を含有しているが発泡剤を含有していない場合の再生樹脂組成物は、発泡体を作製する際、発泡剤と混合された状態で使用される。廃プラスチックのマテリアルリサイクル促進を図る観点から、再生樹脂組成物のベース樹脂における少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂は、マテリアルリサイクルされたポリオレフィン系樹脂(再生ポリオレフィン系樹脂)を少なくとも1種含んでいる。
【0017】
廃プラスチックのマテリアルリサイクル促進を図る観点から、再生樹脂組成物における少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂の含有量は、50質量%よりも多い。本明細書で「含有量」とは、例えば再生樹脂組成物が2種以上の再生ポリオレフィン系樹脂を含む場合などのように、含有量を考慮すべき対象となる化合物が2種以上ある場合には、2種以上の化合物の合計含有量を意味する。同様にマテリアルリサイクル促進の観点から、再生樹脂組成物における少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂の含有量は、例えば51質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上でもよい。同様の観点から、再生樹脂組成物が実質的にベース樹脂からなるものである場合、再生樹脂組成物における少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂の含有量は、90質量%以上でもよく、好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更により好ましくは99.5質量%以上である。または、再生樹脂組成物がベース樹脂の他に1種以上の添加剤も含んでなるものである場合には、再生樹脂組成物で1種以上の添加剤を除外したベース樹脂の部分において、少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂の含有量が、90質量%以上でもよく、好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更により好ましくは99.5質量%以上である。繰り返しマテリアルリサイクル可能な物性を維持しやすい観点から、2種以上のポリオレフィン系樹脂を含む場合のベース樹脂は、少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂と、少なくとも1種のバージン材ポリオレフィン系樹脂と、を含む樹脂であるのが好ましい。
【0018】
再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂は、例えばポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれた1種以上の樹脂でもよいが、繰り返しマテリアルリサイクルされる度に溶融混練されても物性劣化しにくい観点から、ポリエチレン系樹脂であるのが好ましい。本明細書で「ポリエチレン系樹脂」とは、高密度ポリエチレン樹脂(PE-HD)、直鎖低密度ポリエチレン樹脂(PE-LLD)、中密度ポリエチレン樹脂(PE-MD)、極低密度ポリエチレン樹脂(PE-VLD)、及び低密度ポリエチレン樹脂(PE-LD)から選ばれた1種以上のポリエチレン樹脂である。また、本明細書で以下、マテリアルリサイクルされたポリエチレン系樹脂を「再生ポリエチレン系樹脂」ともいう。なお、高密度ポリエチレン樹脂(PE-HD)は、例えば触媒法(中低圧重合法)により、分子構造中に殆ど分岐がなくて942kg/m3以上の高い樹脂密度を有する状態に作製されたポリエチレン樹脂である。直鎖低密度ポリエチレン樹脂(PE-LLD)は、例えばコモノマー導入により、樹脂密度910kg/m3以上925kg/m3以下となるように作製されたポリエチレン樹脂である。中密度ポリエチレン樹脂(PE-MD)は、高密度ポリエチレン樹脂(PE-HD)と直鎖低密度ポリエチレン樹脂(PE-LLD)との間の樹脂密度となるように作製されたポリエチレン樹脂である。低密度ポリエチレン(PE-LD)は、高圧重合法による重合品であるポリエチレン樹脂である。
【0019】
再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂は、繰り返しマテリアルリサイクルされる度に溶融混練されても物性劣化しにくい観点から、高圧重合法による低密度ポリエチレン(PE-LD)、及び触媒法による直鎖低密度ポリエチレン(PE-LLD)から選ばれた1種以上の樹脂の含有量が、90質量%以上又は95質量%以上であるポリエチレン系樹脂であるのが更に好ましい。なお、高圧重合法による低密度ポリエチレン(PE-LD)は、通常、炭素数6を超える長さの長鎖分岐を一分子中に1又は2以上有する。このため、高圧重合法による低密度ポリエチレン(PE-LD)は、ポリエチレン系樹脂に高い溶融張力を付与するのに有用である。ポリエチレンが長鎖分岐を有していることは、例えば13C-NMRによって確認することができる。ヘキシル基以上の長さのアルキル基が存在することが確認できれば、ポリエチレンに長鎖分岐が存在していると判断することができる。ポリエチレン系樹脂において、高圧重合法による低密度ポリエチレン(PE-LD)の含有量は、例えば90質量%以上、95質量%以上、又は98質量%以上であってもよい。
【0020】
再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂は、高圧重合法による低密度ポリエチレン(PE-LD)を2種以上含むポリエチレン系樹脂であるのが好ましい。2種以上の高圧法低密度ポリエチレン(PE-LD)が含まれることで、ポリエチレン系樹脂では、ポリエチレンの分子量分布がブロードになり、温度変化によって溶融張力が大きく変化することを抑制できる。つまり、2種以上の低密度ポリエチレン(PE-LD)を含むことで、溶融混練された再生樹脂組成物により発泡層2が形成された後に発泡層2が冷却される過程で、ポリエチレン系樹脂の全体的な結晶化の挙動を緩慢なものにすることができ、発泡層2に形成される高分子結晶化のモルフォロジーが冷却条件によって変化してしまうのを抑制可能という点で、なるべく外観良好な発泡体1aを製造する観点から有利になると考えられる。
【0021】
外観良好であり更にマテリアルリサイクル可能な物性を維持した発泡体1aを製造しやすい観点から、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、200×103以上であり、例えば230×103以上、好ましくは250×103以上である。マテリアルリサイクルに供される再生樹脂組成物が溶融混練されるときに、分子鎖のせん断による再生樹脂組成物の物性劣化をなるべく少なく抑える観点と、発泡性の低下や生産性の低下を抑える観点とから、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂のMwは、例えば400×103以下でもよく、好ましくは350×103以下、更に好ましくは300×103以下である。
【0022】
外観良好であり更にマテリアルリサイクル可能な物性を維持した発泡体1aを製造しやすい観点から、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂において、Z平均分子量(Mz)の重量平均分子量に対する比(Mz/Mw)は、4.0以上であり、例えば4.3以上でもよく、好ましくは4.5以上である。マテリアルリサイクルに供される再生樹脂組成物が溶融混練されるときに、分子鎖のせん断による再生樹脂組成物の物性劣化をなるべく少なく抑える観点と、発泡性の低下や生産性の低下を抑える観点とから、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂のMz/Mwは、6.0以下でもよく、好ましくは5.0以下である。本明細書において、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)、Mw、Mz、及びMz/Mwの各々の値は、次に説明する測定方法に従って算出された値である。
【0023】
少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂のMn、Mw、Mz、及びMz/Mwの各々は、約6mgの測定試料樹脂を収容した焼結体フィルター(10μmポアサイズ)に6mLのO-ジクロロベンゼンを加えて密閉し、高温GPC溶解専用装置(東ソー株式会社製、DF-8020)にて160℃で1時間加熱溶融させて、焼結体フィルターから溶け出た溶液を測定試料とし、次の測定条件でクロマトグラフを用いて測定する。
使用機器:TOSO H HLC-8121GPC/HT(高温GPC装置)
カラム :東ソー株式会社製TSKgelGMHhr-H(S)HT(7.8mmI.D.×30cm)×2本
試験数 :2
(測定条件)
カラム温度:145℃、移動相:O-ジクロロベンゼン、流量:1.0mL/min、注入温度:145℃、検出器温度:145℃、測定時間(注入間隔):40min、注入量:300μL、検出器:RI(極性:マイナス)。
(PS換算用検量線試料)
昭和電工株式会社製、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)用標準試料「STANDARDSM-105」及び「STANDARDSH-75」を使用した。
再生樹脂組成物が実質的に少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂からなるものである場合、
図1に示す発泡体1aの発泡層2から切り出した試料片を測定試料樹脂としてもよいし、または、
図2や
図3に示す発泡層2の少なくとも片面に非発泡層3を有する発泡シート(1b、1c)から非発泡層3を除去し、発泡層2のみから切り出した試験片を測定試料樹脂としてもよい。どちらの場合も、切り出した試験片から上記した方法により算出される、少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂におけるMn、Mw、Mz、及びMz/Mwの値は、それぞれ同等の値となる。
【0024】
再生樹脂組成物を溶融させて発泡層2を形成させる際、再生樹脂組成物に含有されているベース樹脂の粘度が高すぎなければ、ベース樹脂がある程度に引き延ばされやすくなり、形成される発泡層2で裂け目が生じにくくなる。このため、外観良好であり更にマテリアルリサイクル可能な物性を維持した発泡体1aを製造しやすい観点から、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂の190℃でのMFRは、0.5g/10min以上である。また、再生樹脂組成物を溶融させて発泡層2を形成させる際、再生樹脂組成物に含有されているベース樹脂の粘度が低すぎなければ、ベース樹脂がある程度に引き延ばされやすくなり、形成される発泡層2において再生樹脂組成物(ベース樹脂)で構成された気泡が破泡しにくいため、発泡体1aは良好な外観となり、緩衝作用を発揮して例えば梱包材としての使用に適した物性を有する。この観点から、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂の190℃でのMFRは、2.0g/10min以下であり、好ましくは1.5g/10min以下、更に好ましくは1.0g/10min以下である。本明細書において、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂の190℃でのMFRの値は、次に説明する測定方法に従って算出された値である。
【0025】
少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂のMFR(g/10min)は、JIS K 7210:1999「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のB法に基づいて、測定試料樹脂をシリンダ内に投入し、温度190℃、荷重21.18N(公称荷重2.16kg)の条件にて測定する。より詳しくは、ポリオレフィン系樹脂のMFRは、株式会社東洋精機製作所製のセミオートメルト・インデックサを用いて、下記条件にて求めることができる。
試験数:3
ピストン移動距離(インターバル):4mm
予熱時間:5min
【0026】
再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂における樹脂密度(kg/m3)は、発泡層2に適度な剛性を付与する観点では、例えば910kg/m3以上でもよく、好ましくは919kg/m3以上である。再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂における樹脂密度は、発泡層2に柔軟性を付与する観点では、例えば930kg/m3未満でもよく、923kg/m3よりも小さいのが好ましい。ポリオレフィン系樹脂として前述したポリエチレン系樹脂を用いる場合、当業者であれば、ポリエチレン系樹脂に含まれるそれぞれ樹脂密度の異なる2種以上のポリエチレンの配合比を調整することにより、ポリエチレン系樹脂がここで挙げた一定範囲内の樹脂密度を有するように調整可能である。本明細書で、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂における樹脂密度の値は、JIS K 7112「プラスチック-非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」のD法(密度こうばい管)により測定され算出された値である。
【0027】
少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂の樹脂密度(kg/m3)を測定するときは、少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂製である厚さ2mmの樹脂プレートを熱プレスにより作製し、JIS K 7100:1999「プラスチック-状態調節及び試験のための標準雰囲気」の記号「23/50」2級の標準雰囲気(空気温度23℃±2℃、相対湿度50%±10%)下で24時間かけて状態調整したものを、測定試料樹脂として、JIS K 7112「プラスチック-非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」のD法(密度こうばい管)により樹脂密度を測定し算出する。
【0028】
再生樹脂組成物を適度に引き伸ばされやすくすることにより、再生樹脂組成物で構成された発泡層2でピンホール発生を避けやすい観点から、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂において190℃での溶融張力測定における破断点での溶融張力が、例えば2.0cN以上でもよく、好ましくは5.0cN以上、更に好ましくは8.0cN以上である。再生樹脂組成物から発泡層2を形成させる際、発泡層2の気泡膜を破泡しにくくする観点から、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂において190℃での溶融張力測定における破断点での溶融張力が、例えば20cN以下でもよく、好ましくは15cN以下、更に好ましくは13cN以下である。本明細書において、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂における190℃での溶融張力の値は、次に説明する測定方法に従って算出された値である。
【0029】
少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂における190℃での溶融張力(cN)は、ツインボアキャピラリーレオメーターRheologic5000T(イタリア チアスト社製)を用いて測定する。つまり、試験温度190℃に加熱された径15mmのバレルに測定試料樹脂を充填後、5分間予熱したのち、上記測定装置のキャピラリーダイ(ダイ径2.095mm、ダイ長さ8mm、流入角度90度(コニカル))から溶融したポリオレフィン系樹脂を紐状に押出し、この紐状物を上記キャピラリーダイの下方27cmに位置する張力検出のプーリーに通過させた後、巻取りロールを用いて巻き取り、且つ、その巻取り速度を紐状物が切断するまで徐々に増加させつつ巻き取って測定することができる。破断点速度は、紐状物が切断した時点の巻取り速度として求められる。破断点に近付くと、溶融張力に極大値と極小値とが繰り返して現れる場合があるが、その場合、破断点での溶融張力とは、破断直前の極大値と極小値との平均として求められる。なお、破断直前に極大値が1つのみしか現れない場合は、その極大値を破断点での溶融張力として求める。紐状物の押出条件や巻き取り条件は、原則的に下記のとおりとする。
押出速度:0.0773mm/s(4.6mm/min)
巻取速度:初速4mm/sからで12mm/s2加速
【0030】
本実施形態での発泡体1aが再びマテリアルリサイクルされる可能性を勘案すると、発泡後の再生樹脂組成物(発泡層2)も、発泡層2の原料として使用される少なくとも1種の再生ポリエチレン系樹脂と同様の190℃でのMFR、樹脂密度、平均分子量(Mn、Mw、Mz、及びMz/Mw)、並びに190℃での溶融張力を示すことが好ましい。発泡後の再生樹脂組成物でのそれら特性値は、発泡層2から採取した試料を脱泡して測定することができる。
【0031】
再生樹脂組成物で構成された発泡層2にある程度の剛性を付与しやすい観点から、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂の結晶化度は、例えば40.0%以上又は42.0%以上でもよく、好ましくは44.0%以上、更に好ましくは45.0%以上である。生樹脂組成物で構成された発泡層2にある程度の柔軟性を付与しやすい観点から、再生ポリオレフィン系樹脂及び/又はバージン材ポリオレフィン系樹脂の結晶化度は、例えば58.0%以下又は51.0%以下でもよく、好ましくは47.0%以下である。例えば、再生樹脂組成物に2種以上のポリオレフィン系樹脂が含まれる場合、その2種以上のポリオレフィン系樹脂を再生樹脂組成物に含有させる質量割合でブレンドした混合物を調製し、この混合物を溶融混練して得られる溶融混練物で試料を作製し、この試料の結晶化度を測定することにより求めることができる。
【0032】
少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂の結晶化度は、JIS K7122:1987、JIS K7122:2012「プラスチックの転移熱測定方法」に記載されている方法で測定することができる。即ち、少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂の結晶化度は、示差走査熱量分析(DSC)を行って測定することができる。サンプリング方法・温度条件に関しては、以下の通りとすることができる。
アルミニウム製測定容器の底に隙間のないように測定試料樹脂を5.5±0.5mg充てんした後、アルミニウム製の蓋をする。次いで株式会社日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS-3」示差走査熱量計を用い、示差走査熱量分析を実施する。窒素ガス流量20mL/minのもと、以下のようなステップで試料の加熱、冷却を実施し、DSC曲線を得る。
ステップ1:30℃から-40℃まで降温した後10分間保持。
ステップ2:-40℃から220℃まで昇温(1回目昇温)、10分間保持。
ステップ3:220℃から-40℃まで降温(冷却)、10分間保持。
ステップ4:-40℃から220℃まで昇温(2回目昇温)。
なお、全ての昇温・降温は、速度10℃/minで行う。基準物質はアルミナを用いる。冷却過程(ステップ3)にみられる結晶化ピークの面積から、結晶化熱量(J/g)を求める。この結晶化熱量をポリエチレン完全結晶の理論融解熱量285.7J/gで除して求められる割合を、結晶化度とする。
結晶化熱量は装置付属の解析ソフトを用い、高温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び低温側のベースラインへ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から算出する。結晶化度は次式より求めることができる。
結晶化度(%)=(結晶化熱量(J/g)/285.7(J/g))×100(%)
【0033】
図1に示す発泡体1aの発泡層2で、ピンホール発生を抑え、且つ、縞数をなるべく少なく抑えることにより、発泡層2を外観良好なシート状に形成させる観点から、発泡層2の厚さは、例えば0.5mm以上または1.0mm以上でもよく、好ましくは2.0mm以上、更に好ましくは3.0mm以上である。発泡層2を厚さ略均一で外観良好なシート状に形成させる観点から、発泡層2の厚さは、例えば5.0mm以下でもよく、好ましくは4.0mm以下である。本明細書において、発泡層2の厚さの値は、次に説明する測定方法に従って算出された値である。
【0034】
発泡層2の厚さは、Teclock社製の定圧厚み測定機(型式SCM-627)を用いて測定可能である。具体的には、円筒状の重りを用いて、半径4.4cmの円形状の面(面積60.8cm2)に、発泡体1aの自重も含めて95gfの荷重を発泡体1aにかけたときの厚さを、定圧厚み測定機械で測定して求めること可能である。発泡体1aの厚さは、通常、その幅方向50mmごとに50点観測し、得られた測定値の平均値とする。発泡体1aの幅が狭く50点分の測定箇所を確保できない場合、可能な限り多くの測定箇所を確保した上で得られた全ての測定値の平均値を厚さとする。
【0035】
発泡層2の見掛け密度(kg/m3)は、発泡層2に適度な剛性を付与する観点では、例えば10kg/m3以上でもよく、好ましくは15kg/m3以上、更に好ましくは20kg/m3以上である。発泡層2の見掛け密度は、発泡層2に柔軟性を付与する観点では、例えば100kg/m3以下でもよく、好ましくは80kg/m3以下である。本明細書において、発泡層2の見掛け密度の値は、次に説明する測定方法に従って算出された値である。
【0036】
発泡層2の見掛け密度(kg/m
3)は、JIS K 7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」記載の方法で測定することができる。具体的には、見掛け上の体積が100cm
3以上の試験片を用意し、その質量を測定する。発泡層2から試験片を切り出す際は、できるだけ元のセル構造を変えないようにする。100cm
3以上の試験片を用意できない場合は、できるだけ大きな体積の試験片を用意する。見掛け密度は、次の式で算出する。
見掛け密度(kg/m
3)=試験片の質量(g)/試験片の体積(mm
3)×10
6
試験片は、原則的にポリオレフィン系樹脂から発泡層2を形成させた後、72時間以上経過した後に発泡層2から採取し、温度23℃±2℃、相対湿度50%±10%の雰囲気条件で16時間以上放置して状態調節を行った後に、同様の条件で質量及び体積を測定する。
図1に示す発泡体1aの発泡層2から試験片を切り出してもよいし、または、
図2や
図3に示す発泡層2の少なくとも片面に非発泡層3を有する発泡シート(1b、1c)から非発泡層3を除去し、発泡層2のみから試験片を切り出してもよい。どちらの場合も、切り出した試験片から上記した方法により算出される見掛け密度は、同等の値となる。
【0037】
発泡層2に適度な剛性と厚さを付与する観点から、発泡層2の坪量(単位面積あたりの質量)は、例えば10g/m2以上でもよく、好ましくは20g/m2以上、更に好ましくは25g/m2以上である。発泡層2に適度な柔軟性を付与する観点から、発泡層2の坪量は、例えば、200g/m2以下、150g/m2以下、又は100g/m2以下でもよく、好ましくは90g/m2以下、更に好ましくは80g/m2以下である。本明細書において、発泡層2が押出発泡法により形成されたものである場合、発泡層2の坪量の値は、次に説明する測定方法に従って算出された値である。
【0038】
押出発泡法により形成された発泡層2の坪量(単位面積あたりの質量)は、発泡層2の押出方向と直交する方向に沿った第1の線と、この第1の線と平行であり第1の線に対して押出方向に20cmの距離を隔てた第2の線とを想定し、この2本の線に沿って発泡層2を切断することにより、坪量の測定用試料を得る。この測定用試料において、質量をW(g)とし、面積をS(cm
2)とするときに、下記の計算式から坪量を算出可能である。
坪量(g/m
2)=W/S×10
4
発泡層2が20cm幅で測定用試料を切り取れるほど大きくない場合、可能な限り大きく矩形状に切り取った切片を得て、その切片の質量W(g)と面積S(cm
2)とから、上記した計算式により発泡層2の坪量を算出可能である。
図1に示す発泡体1aでは、そのまま上記した方法で坪量を算出可能である。
図2や
図3に示す発泡体(1b、1c)では、発泡層2から非発泡層3を除去すれば、上記した方法で坪量を算出可能である。どちらの場合も、上記した方法により算出される坪量は、同等の値となる。
【0039】
一般的に、押出発泡シートでは、押出方向と直交する幅方向において、外観が交互に変化する縞が形成されている。この縞は、押出発泡シートの製造過程で、溶融樹脂を押出機のサーキュラーダイに設けられた円環状のスリットから大気中へ押し出してシート状にする際、溶融樹脂が3次元(互いに直交する、押出方向、厚さ方向、及び幅方向)に発泡して気泡を成長させるにあたり、スリットから押出方向や厚さ方向へは気泡を成長させる空間的な余裕が十分にあることに対して、スリットから幅方向へは気泡を成長させる空間的な余裕が十分にないため、幅方向では成長する気泡同士が圧迫し合うように干渉して、幅方向では押出発泡シートが波うつように形成されやすい現象により生じた縞である。良好な外観を得る観点から、発泡層2が押出発泡シートで構成されている場合に、発泡層2の幅200mmあたりの縞数が、例えば11.0以下又は9.0以下でもよく、好ましくは8.0以下、更に好ましくは4.0以下、更により好ましくは3.0以下である。本明細書での縞数は、例えば
図5に示すように、発泡層2を平らな面の上に伸ばして置いた状態で発泡層2を上方から肉眼で眺めて観察したときに、外観上で平らな面から浮いている山部分7(隣接する谷部分8よりも明るく見えやすい部分)と、平らな面に接地している谷部分8(隣接する山部分7よりも暗く見えやすい部分)とが交互に見られるため、幅200mmあたりで平らな面から浮いている山部分7の本数を数えることにより求めることができる。
【0040】
再生樹脂組成物が1種以上の添加剤を含有するものである場合、添加剤としては、発泡剤や添加剤などといった一般的な発泡シートの作製に用いられているものが挙げられる。発泡剤として例えば、プロパン、n-ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタン、シクロペンタン等の炭化水素、これら炭化水素のハロゲン化物、炭酸ガス、及び窒素からなる群より選ばれた1種以上の化合物が挙げられる。添加剤として例えば、耐候性安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、消臭剤、光安定剤、顔料、滑材、すべり性の付与又はアンチブロッキング性の付与を目的とした界面活性剤、又は無機充填剤などが挙げられる。
【0041】
発泡層2に良好な発泡状態を備えさせる観点から、再生樹脂組成物には、添加剤の1種として気泡調整剤が含有されていてもよい。気泡調整剤として例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、若しくはガラスビーズ等の無機化合物粒子、又はポリテトラフルオロエチレン等の有機化合物粒子が挙げられる。さらに、加熱分解型の発泡剤としても機能するアゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、または、炭酸水素ナトリウムとクエン酸との混合物なども、気泡調整剤として用いることができる。
【0042】
再生樹脂組成物が1種以上の添加剤を含有する場合、再生樹脂における1種以上の添加剤の含有量は、通常20質量%以下であり、例えば17質量%以下でもよく、好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下、更により好ましくは10質量%以下である。再生樹脂組成物から発泡層2を形成させる際、樹脂同士の架橋をなるべく避ければ、得られる発泡層2で更にマテリアルリサイクル可能な物性を維持しやすい観点から、再生樹脂組成物は、ラジカル開始剤を含有していないものが好ましい。再生樹脂組成物がごく微量にラジカル開始剤を含有する場合があったとしても、同様の観点から、再生樹脂組成物におけるラジカル開始剤の含有量が0.0010質量%未満であれば許容され、0.00010質量%未満であるのがよい。ラジカル開始剤は例えば、ジハロゲン、アゾ化合物、トリエチルボラン、又はジエチル亜鉛などのような、穏和な反応条件下でラジカルを発生させる化合物である。
【0043】
再生樹脂組成物を用いて製造する発泡体1aについて、例えば家電製品の梱包材の様に、静電気の発生をなるべく避けるべき用途での使用を予定している場合、前述した1種以上の添加剤として、再生樹脂組成物に少なくとも1種の帯電防止剤が含まれているのが好ましい。帯電防止剤として、高分子型帯電防止剤、及び低分子型帯電防止剤(界面活性剤)から選ばれた一種以上の添加剤が挙げられる。
【0044】
添加剤の一種として上記した高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、エチレン-メタクリル酸共重合体などのアイオノマー、ポリエチレングリコールメタクリレート系共重合体等の第四級アンモニウム塩、又は、オレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体などが挙げられる。高分子型帯電防止剤は、オレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体が好ましい。前記オレフィン系ブロックは、例えば、炭素数が2以上8以下のアルケンのうち1又は2以上のアルケンを構成単位としたポリオレフィンによって構成されていてもよい。前記親水性ブロックは、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどの炭素数が2以上8以下のアルキレンオキサイドを構成単位としたポリオキシアルキレンによって構成されていてもよい。
【0045】
添加剤の一種として前述した低分子型帯電防止剤(界面活性剤)としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、又は両性界面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、グリセリンや糖類などの多価アルコールと脂肪酸とがエステル結合したエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル型界面活性剤;脂肪酸や多価アルコール脂肪酸エステルにアルキレンオキサイドを付加させたエステル・エーテル型界面活性剤;疎水基と親水基とがアミド結合を介している脂肪酸アルカノールアミド等のアミド型界面活性剤などが挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリン塩等のスルホン酸塩型界面活性剤;脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン酸塩、N-アシルグルタミン酸塩等のカルボン酸塩型界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、油脂硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩型界面活性剤;アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩型界面活性剤などが挙げられる。塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、又はリチウム等のアルカリ金属や、カルシウム又はマグネシウム等のアルカリ土類金属等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩型界面活性剤;N-メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル・塩酸塩などのアミン塩型界面活性剤が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルベタイン等のベタイン型界面活性剤;アルキルアミノ脂肪酸塩等のアミノ酸型界面活性剤;アルキルアミンオキシド等のアミンオキシド型界面活性剤などが挙げられる。再生樹脂組成物に含有させる少なくとも1種の低分子型帯電防止剤は、アニオン系界面活性剤及び/又はノニオン系界面活性剤であるのが好ましく、この場合にノニオン界面活性剤の含有量に対してアニオン界面活性剤の含有量の質量比(アニオン界面活性剤の質量/ノニオン界面活性剤の質量)が、好ましくは1.0以上、更に好ましくは3.0以上、更により好ましくは9.0以上である。
【0046】
再生樹脂組成物が添加剤として少なくとも1種の帯電防止剤を含有するものである場合、静電気の発生を抑制する観点では、再生樹脂組成物における少なくとも1種の帯電防止剤の含有量は、例えば0.5質量%以上又は1.0質量%以上でもよく、好ましくは2.0質量%以上である。同様の場合に、帯電防止剤の含有量を、ベース樹脂の機能性を損なわない程度に留めておく観点では、再生樹脂組成物における少なくとも1種の帯電防止剤の含有量は、例えば10質量%以下又は8.0質量%以下でもよく、好ましくは6.0質量%以下である。
【0047】
例えば発泡体1aは、上記した再生樹脂組成物を、押出機の内部で溶融混練し、押出機の出口に装着されたサーキュラーダイ又はフラットダイから押出しつつ発泡させることで、押出発泡シートとして作製可能である。本実施形態において、Mw、Mz/Mw、及びMFRが適度な範囲内にある再生ポリオレフィン系樹脂を50質量%よりも多く含む再生樹脂組成物は、発泡層2を形成させるときに、適度な粘度を有しており引き延ばされやすいため、目視でピンホール等が見当たらない外観美麗な発泡層2が形成されやすく、また、物性劣化しにくい分子量の分布を有しているため、繰り返しマテリアルリサイクル可能な物性を維持しやすい。また、この再生樹脂組成物で構成された発泡層2を備える発泡体1aを形成させているため、押出発泡法などの簡便な方法を採用しても発泡体1aを製造可能である。
【0048】
押出発泡シートに非発泡層を備えさせる場合、共押出ラミネート法や熱ラミネート法を採用することができる。非発泡層は、発泡剤を含まない場合の再生樹脂組成物で構成されていてもよい。また、本実施形態における発泡体は、押出発泡法によらず各種の方法で作製可能なため、押出発泡シートに限定されない。
【0049】
図4に示すように、本発明の一実施形態に係る発泡体の製造方法は、前述した再生樹脂組成物を準備する準備工程S1と、準備した再生樹脂組成物から、該再生樹脂組成物で構成された発泡層を備える発泡体を形成させる発泡工程S2と、を含む。例えば
図1に示す発泡体1aを製造する場合、準備工程S1では、少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂の含有量が50質量%よりも多くなるように、少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂を押出機の内部へ投入して、溶融混練させる(ドライブレンドする)ことにより、押出機の内部で再生樹脂組成物を調製してもよい。再生樹脂組成物が1種の再生ポリオレフィン系樹脂からなる場合には、その1種の再生ポリオレフィン系樹脂を押出機の内部へ投入して溶融混練すればよい。または、再生樹脂組成物が、少なくとも1種の再生ポリオレフィン系樹脂を含めた2種以上のポリオレフィン系樹脂を有するものである場合には、この2種以上のポリオレフィン系樹脂を予め混合させた再生樹脂組成物を調製してから、調製した再生樹脂組成物を押出機の内部へ投入して溶融混練させてもよい。発泡体1aを製造する場合の発泡工程S2では、例えば、押出機の内部で溶融混練させた再生樹脂組成物を、前述した発泡剤の存在下でダイを通して大気中へ押出発泡することにより、発泡体1aを製造してもよい。再生樹脂組成物が発泡剤を含まないものである場合の発泡工程S2では、押出機の内部で溶融混練させた再生樹脂組成物に、発泡剤を混合させてから、押出発泡すればよい。
【0050】
本発明は、以上に説明した実施形態などに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施することができる。本発明は、同一の作用または効果を生じる範囲内で、いずれかの特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよい。
【実施例0051】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
再生ポリエチレン系樹脂として、次の表1に示す樹脂A、樹脂B、樹脂C、及び樹脂Dを準備した。バージン材ポリエチレン系樹脂として、表1に示す樹脂Eを準備した。表1に記載された数値は、それぞれ本明細書で前述した測定法で算出された値である。
【0053】
【0054】
(実施例1)
表1に示した100質量部の再生ポリエチレン系樹脂A(再生ポリエチレン系樹脂からなる再生樹脂組成物)を、タンデム押出機の第一押出機(上流側、口径φ90mm)に供給し、第一押出機内で加熱溶融させた後、第一押出機の途中から、発泡剤としてイソブタンとノルマルブタンとを70:30のmol比で18質量部を圧入し、溶融混合させた。得られた溶融混合物を、タンデム押出機の第二押出機(下流側、口径φ115mm)内へ移送し、第二押出機内で発泡に適した110℃まで均一に冷却し、出口口径φ145mmの環状ダイスから、ポリエチレン系樹脂組成物を大気中に押出発泡させた。押出発泡された筒状の発泡体を、引き取って、内部が約20℃の水で冷却されている直径560mmのマンドレル上に沿って通過させる過程で冷却した。冷却された筒状の発泡体を、その円周上の一点において押出方向に沿ってカッターで切り開くことにより、帯状の発泡シート(
図1に示すように単一の発泡層2からなる発泡体1a)を作製した。
【0055】
(実施例2乃至5)
実施例2乃至4では、上記した実施例1と比べて、次の表2に示すように、樹脂の配合、発泡シートの厚さ、及び発泡シートの幅を変更した他は、同様にして帯状の発泡シートを作製した。実施例5では、上記した実施例1と比べて、出口口径φ120mmの環状ダイスと直径430mmのマンドレルとを用いるように変更した他は、同様にして帯状の発泡シートを作製した。
【0056】
【0057】
(比較例1乃至6)
比較例1乃至3、及び比較例5では、前述した実施例1と比べて、次の表3に示すように樹脂の配合を変更した他は、同様にして帯状の発泡シートを作製した。比較例4及び6では、前述した実施例2と比べて、次の表3に示すように樹脂の配合を変更した他は、同様にして帯状の発泡シートを作製した。なお、再生ポリエチレン系樹脂を使用した他の例とは異なり、比較例5及び6は、それぞれ、ベース樹脂としてバージン材ポリエチレン系樹脂Eのみを使用した例である。
【0058】
【0059】
上記した表2及び表3で、「見掛け密度」と「坪量」とは、本明細書で前述した方法で測定した。「発泡層を構成している再生樹脂組成物の平均分子量」は、発泡層から採取した試験片を測定試料樹脂として、本明細書で前述した方法で測定した。「幅200mmあたりの縞数」は、本明細書で前述した方法により観察し評価した。「ピンホールの有無」は、発泡シートを平らな面の上に伸ばして置いて、発泡シートを上方から肉眼で眺めて観察し、ピンホールを1つでも発見できれば「あり」、1つも発見できなければ「なし」と評価した。「収縮皺の有無」は、発泡シートを平らな面の上に伸ばして置いて、発泡シートを上方から肉眼で眺めて観察し、シワのように見える部分(収縮皺)を1つでも発見できれば「あり」、1つも発見できなければ「なし」と評価した。なお、収縮皺は、溶融混練した再生樹脂組成物を押出発泡する際、再生樹脂組成物を構成しているベース樹脂のMFRが高すぎるため、形成される気泡膜の強度が十分でなく、破泡が多く生じて形成された部分である。
【0060】
次の評価基準により「外観の良好さの総合評価」をした。
×× 発泡シートがシート状に形成されていないため、到底、実用に耐える得る外観ではない。
× 発泡シートにピンホールが有り、収縮皺がみられるため、実用に耐え得る外観ではない。
△ ピンホールは無く、幅200mmあたりの縞数が11未満であるが、収縮皺がみられるため、実用にあたり良好な外観とはいえない。
〇 ピンホールは無く、幅200mmあたりの縞数が11未満であり、収縮皺がみられないため、実用可能な程度には良好な外観である。
◎ ピンホールは無く、幅200mmあたりの縞数が8以下であり、収縮皺がみられないため、実用する上で更に良好な外観である。
◎◎ ピンホールは無く、幅200mmあたりの縞数が3未満であり、収縮皺がみられないため、実用する上で更に非常に良好な外観である。
【0061】
表1で示したように、再生ポリエチレン系樹脂C及び再生ポリエチレン系樹脂Dは、それぞれ190℃でのMFRが2.0g/10minよりも高値であり、押出発泡の際に伸びにくかった。このため、表3で示したように、ベース樹脂として再生ポリエチレン系樹脂Cのみ又は再生ポリエチレン系樹脂Dのみを使用した比較例2乃至4では、発泡体をシート状に成形することができないか、又は成形できてもピンホールや収縮皺が数多く生じており、実用に際して問題が生じかねないものであった。また、表3で示したように、比較例1では、ベース樹脂として再生ポリエチレン系樹脂Cとバージン材ポリエチレン系樹脂Eとを溶融混練させて、得られた再生樹脂組成物を押出発泡して発泡シートを作製した。しかし、比較例1の再生樹脂組成物のMz/Mwは4.0未満であり、
図1に示すように、比較例1に係る発泡シートでは発泡層で数多くの収縮皺9が認められた。比較例1のようにMz/Mwが4.0未満であると、押出発泡の際に再生樹脂組成物が伸びやすかったとしても、形成される気泡膜の強度が十分でなく、破泡を招きやすい(つまり、収縮皺が生じやすい)ものと考えられる。
【0062】
発泡シートの厚さが1.2mmである場合、ベース樹脂としてバージン材ポリエチレン系樹脂E(190℃でのMFR:0.3g/10min、Mz/Mw:3.76)のみを用いた比較例6と比べて、ベース樹脂として再生ポリエチレン系樹脂A(190℃でのMFR:0.8g/10min、Mz/Mw:4.73)からなる実施例5では、幅200mmあたりの縞数が少ないため、より良好な外観であった。また、発泡シートの厚さが3.2mmである場合、ベース樹脂の配合がバージン材ポリエチレン系樹脂Eからなる比較例5と比べて、ベース樹脂として再生ポリエチレン系樹脂A又は再生ポリエチレン系樹脂B(190℃でのMFR:0.5g/10min、Mz/Mw:4.54)を含む実施例1乃至4では、それぞれ、幅200mmあたりの縞数が少ないため、より良好な外観であった。