(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082475
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】モータ駆動装置、モータシステム、及び電気機器
(51)【国際特許分類】
H02P 8/12 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
H02P8/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196283
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 貴重
【テーマコード(参考)】
5H580
【Fターム(参考)】
5H580AA05
5H580BB09
5H580EE02
5H580FA02
5H580FA13
5H580FB01
5H580GG03
5H580HH22
(57)【要約】
【課題】モータコイルを流れる電流のリミット値の設定値が小さい場合でも、高い電流検出精度を実現できるモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】モータ駆動装置は、モータコイルに流れるモータ電流(IM)に応じたセンス電流(IS)を生成するように構成される生成部(Q5、Q6、AMP1)と、前記センス電流に、前記モータ電流のリミット値に応じたゲインを持たせるように構成される調整部(CM1、CM2、CM3)と、前記ゲインを持った前記センス電流をI/V変換するように構成される変換部(R1)と、基準電圧と前記変換部の出力電圧とを比較するように構成される比較部(COMP1)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータコイルに流れるモータ電流に応じたセンス電流を生成するように構成される生成部と、
前記センス電流に、前記モータ電流のリミット値に応じたゲインを持たせるように構成される調整部と、
前記ゲインを持った前記センス電流をI/V変換するように構成される変換部と、
基準電圧と前記変換部の出力電圧とを比較するように構成される比較部と、
を備える、モータ駆動装置。
【請求項2】
前記モータコイルは、第1端が電源電圧の印加端に接続可能に構成される第1トランジスタの第2端と、第2端が前記電源電圧よりも低い電圧の印加端に接続可能に構成される第2トランジスタの第1端とに接続可能に構成され、
前記生成部は、前記第2トランジスタと対をなしてカレントミラー回路を構成する第3トランジスタを含む、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記生成部は、
前記第3トランジスタに直列接続可能に構成される第4トランジスタと、
前記第3トランジスタと前記第4トランジスタとの接続ノードに印加される電圧と、前記第2トランジスタの第1端に印加される電圧とに応じて前記第4トランジスタを制御するように構成されるアンプと、
を備える、請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記調整部は、
前記センス電流を受け取るように構成される電流ソース型カレントミラー回路と、
前記電流ソース型カレントミラー回路の出力電流を受け取るように構成される電流シンク型カレントミラー回路と、
を備え、
前記電流シンク型カレントミラー回路は、前記リミット値の設定値に応じてカレントミラー比を可変するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記電流ソース型カレントミラー回路は、カレントミラー比を可変するように構成される、請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記リミット値の設定値にかかわらず、前記モータ電流が前記リミット値であるときに前記変換部の出力電圧は一定である、請求項1~5のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
モータと、
前記モータを駆動するように構成される請求項1~6のいずれか一項に記載のモータ駆動装置と、を備える、モータシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のモータシステムを備える、電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、モータ駆動装置、モータシステム、及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、ステッピングモータを駆動するモータ駆動装置に用いられるHブリッジ回路の構成例を示す図である。
【0003】
図7に示すHブリッジ回路は、ハイサイドトランジスタであるNチャネル型電界効果トランジスタQ1及びQ3と、ローサイドトランジスタであるNチャネル型電界効果トランジスタQ2及びQ4と、を備える。以下、Nチャネル型電界効果トランジスタを適宜トランジスタと略す。
【0004】
トランジスタQ1及びQ3の各ドレインに電源電圧VCCが印加される。
【0005】
トランジスタQ2のドレインにトランジスタQ1のソース及びバックゲートが接続される。トランジスタQ4のドレインにトランジスタQ3のソース及びバックゲートが接続される。トランジスタQ2のソース及びバックゲート並びにNチャネル型電界効果トランジスタQ4のソース及びバックゲートにグラウンド電圧が印加される。グラウンド電圧は、電源電圧VCCより低い電圧である。
【0006】
モータコイルL1は、接続ノードN1と接続ノードN2との間に接続される。接続ノードN1は、トランジスタQ1のソースとトランジスタQ2のドレインとの接続ノードである。接続ノードN2は、トランジスタQ3のソースとトランジスタQ4のドレインとの接続ノードである。
【0007】
なお、モータコイルL1は1つの相を示しているが2相、3相の場合は、モータコイルL1はそれぞれ2つ、3つ用意される。本明細書では説明の便宜上1つの相のみを示す。本明細書では1相のみを説明するが、他の相の駆動動作部についても同様に説明できるので省略する。
【0008】
ステッピングモータの起動、回転方向の切替、停止の制御は、Hブリッジ回路に流す電流経路を切り替えて行われる。すなわちモータコイルL1に流す電流経路によって給電モードと電流減衰モードとに区別される。
【0009】
電流減衰モードから給電モードに切り替わってから一定時間が経過するまでの期間である最小オン時間の間は必ず給電モードである。最小オン時間の終了時にモータコイルL1を流れる電流がリミット値以上であれば、直ちに給電モードから電流減衰モードに切り替わる。一方、最小オン時間の終了時にモータコイルL1を流れる電流がリミット値に達していない場合、モータコイルL1を流れる電流がリミット値に達するまで、給電モードを継続し、モータコイルL1を流れる電流がリミット値に達した時点で給電モードから電流減衰モードに切り替わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016-208727号公報(段落0044)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
モータ駆動装置に用いられるコンパレータは、モータコイルL1を流れる電流に応じた電圧と基準電圧とを比較して、モータコイルL1を流れる電流がリミット値に達したか否かを判定する。
【0012】
ここで、上述したリミット値の設定値が小さい場合、コンパレータに供給されるモータコイルL1を流れる電流に応じた電圧及び基準電圧も小さくなり、コンパレータにおける判定精度、言い換えると電流検出精度が低くなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書中に開示されているモータ駆動装置は、モータコイルに流れるモータ電流に応じたセンス電流を生成するように構成される生成部と、前記センス電流に、前記モータ電流のリミット値に応じたゲインを持たせるように構成される調整部と、前記ゲインを持った前記センス電流をI/V変換するように構成される変換部と、基準電圧と前記変換部の出力電圧とを比較するように構成される比較部と、を備える。
【0014】
本明細書中に開示されているモータシステムは、モータと、前記モータを駆動するように構成される上記構成のモータ駆動装置と、を備える。
【0015】
本明細書中に開示されている電気機器は、上記構成のモータシステムを備える。
【発明の効果】
【0016】
本明細書中に開示されているモータ駆動装置、モータシステム、及び電気機器によれば、モータコイルを流れる電流のリミット値の設定値が小さい場合でも、高い電流検出精度を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係るモータシステムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、電流検出部の一構成例に示す図である。
【
図3】
図3は、温度特性が平坦である抵抗の一構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、温度特性が平坦である抵抗のレイアウト例を示す図である。
【
図6】
図6は、電流検出部の他の構成例に示す図である。
【
図7】
図7は、Hブリッジ回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、実施形態に係るモータシステムの概略構成を示す図である。実施形態に係るモータシステム10は、ステッピングモータ20と、ステッピングモータ20を駆動するように構成されるモータ駆動装置30と、を備える。
【0019】
モータ駆動装置30は、制御部31と、Hブリッジ回路32と、電流検出部33及び34と、を備える。Hブリッジ回路32並びに電流検出部33及び34は、ステッピングモータ20の1つの相に対応している。ステッピングモータ20が2相、3相の場合は、Hブリッジ回路32並びに電流検出部33及び34はそれぞれ2組、3組設けられる。本明細書では説明の便宜上1つの相のみを示す。本明細書では1相のみを説明するが、他の相の駆動動作部についても同様に説明できるので省略する。なお、2つの電流検出部33及び34の代わりに1つの電流検出部が用いられてもよい。当該1つの電流検出部が用いられる場合、接続ノードN1の電圧の読み取りタイミング及び接続ノードN2の電圧の読み取りタイミングが、例えば接続ノードN1の電圧と接続ノードN2の電圧とを択一的に選択して当該1つの電流検出部に供給する切替スイッチ等によって制御されるようにすればよい。
【0020】
Hブリッジ回路32は、
図7に示すHブリッジ回路と同様の構成である。なお、例えば、Nチャネル型電界効果トランジスタQ1及びQ3の代わりにPチャネル型電界効果トランジスタを用いることもできる。
【0021】
制御部31は、Hブリッジ回路32の各トランジスタをスイッチング制御することで、各サイクルにおいて、給電モード、電流減衰モード等を実行する。制御部31は、モータコイルL1を流れる電流の値をマイクロステップ制御によって細かく変えていくことによって、ステッピングモータ20の回転子を回転させる。
【0022】
図2は、電流検出部33の一構成例に示す図である。電流検出部33は、Nチャネル型電界効果トランジスタQ5と、Nチャネル型電界効果トランジスタQ6と、アンプAMP1と、電流ソース型カレントミラー回路CM1と、電流シンク型カレントミラー回路CM2と、電流ソース型カレントミラー回路CM3と、抵抗R1と、コンデンサC1と、D/AコンバータDAC1と、コンパレータCOMP1と、を備える。
【0023】
トランジスタQ5、トランジスタQ6、及びアンプAMP1は、モータコイルL1に流れるモータ電流IMに応じたセンス電流ISを生成するように構成される生成部の一例である。
【0024】
トランジスタQ5は、トランジスタQ2と対をなしてカレントミラー回路を構成する。トランジスタQ2とトランジスタQ5とのサイズ比は特に限定されないが、例えば1000:1の設定を挙げることができる。トランジスタQ2とトランジスタQ5とのサイズ比が1000:1の場合、カレントミラー比が1000:1となる。トランジスタQ2及びトランジスタQ5によってカレントミラー回路を構成することで、モータ電流IMに対するセンス電流ISの比を調整することが容易になる。
【0025】
トランジスタQ6は、トランジスタQ5に直列接続される。アンプAMP1の非反転入力端子は接続ノードN1に接続され、アンプAMP1の反転入力端子はトランジスタQ5のドレイン及びトランジスタQ6のソースに接続される。アンプAMP1の出力端子はトランジスタQ6のゲートに接続される。アンプAMP1は、トランジスタQ2のドレイン電圧とトランジスタQ5のドレイン電圧とを等しくするためのバッファアンプである。
【0026】
アンプAMP1のオフセット電圧をトリミングすることによって、トランジスタQ2のドレイン電圧とトランジスタQ5のドレイン電圧との一致度合いを向上させることができ、ひいてはモータ電流IMとセンス電流ISとの対応関係の精度を向上させることができる。
【0027】
電流ソース型カレントミラー回路CM1、電流シンク型カレントミラー回路CM2、及び電流ソース型カレントミラー回路CM3は、センス電流ISにモータ電流IMのリミット値に応じたゲインを持たせるように構成される調整部の一例である。
【0028】
電流ソース型カレントミラー回路CM1は、Pチャネル型電界効果トランジスタQ10~Q12と、スイッチS11及びS12と、を備える。以下、Pチャネル型電界効果トランジスタを適宜トランジスタと略す。
【0029】
トランジスタQ10のドレイン及びトランジスタQ10~Q12の各ゲートは、トランジスタQ6のドレインに接続される。トランジスタQ10~Q12の各ソース及び各バックゲートには電源電圧VCCが印加される。トランジスタQ11のドレインは、スイッチS11の第1端に接続される。トランジスタQ12のドレインは、スイッチS12の第1端に接続される。スイッチS11の第2端及びスイッチS12の第2端は互いに接続される。
【0030】
電流ソース型カレントミラー回路CM1は、センス電流ISを受け取るように構成される。制御部31(
図1参照)は、スイッチS11及びS12のいずれか一方をオンにし、他方をオフにする。これにより、電流ソース型カレントミラー回路CM1のカレントミラー比は、2段階で可変する。
【0031】
例えば、スイッチS11がオンのときにモータ電流IMの検出可能範囲の最大値が2Aとなり、スイッチS12がオンのときにモータ電流IMの検出可能範囲の最大値が1Aとなる。そして、電流ソース型カレントミラー回路CM1は、モータ電流IMが検出可能範囲の最大値であるときに一定の電流(例えば100μAの電流)を出力する。
【0032】
電流ソース型カレントミラー回路CM1がカレントミラー比を可変するように構成されることにより、モータ電流IMの検出可能範囲の最大値の設定変更が可能となる。したがって、モータ駆動装置30は、多様なステッピングモータ20に対応可能である。
【0033】
電流シンク型カレントミラー回路CM2は、Nチャネル型電界効果トランジスタQ20~Q27と、スイッチS21~S26と、を備える。
【0034】
トランジスタQ20のドレイン、トランジスタQ20~Q27の各ゲート、及びスイッチS21~S26の各第1端は、スイッチS11及びS12の各第2端に接続される。スイッチS21~S26の第2端それぞれは、トランジスタQ21~Q26のドレインそれぞれに接続される。トランジスタQ20~Q26の各ソース及び各バックゲートは、グラウンド電位に接続される。
【0035】
電流シンク型カレントミラー回路CM2は、電流ソース型カレントミラー回路CM1の出力電流を受け取るように構成される。制御部31(
図1参照)は、スイッチS21~S26のオン/オフを制御する。電流シンク型カレントミラー回路CM2は、モータ電流IMのリミット値の設定値に応じてカレントミラー比を可変するように構成される。つまり、制御部31(
図1参照)は、モータ電流IMのリミット値の設定値に応じてスイッチS21~S26のオン/オフを制御する。
【0036】
トランジスタQ20~Q27のサイズ比は特に限定されないが、例えば1:1:2:4:8:16:32:64の設定を挙げることができる。トランジスタQ20~Q27のサイズ比が1:1:2:4:8:16:32:64の設定である場合、例えばスイッチS21~S26全てをオフにすると、電流シンク型カレントミラー回路CM2のカレントミラー比は1:64になる。また、トランジスタQ20~Q27のサイズ比が1:1:2:4:8:16:32:64の設定である場合、例えばスイッチS21をオフにし、スイッチS22~S26をオンにすると、電流シンク型カレントミラー回路CM2のカレントミラー比は63:64になる。
【0037】
電流シンク型カレントミラー回路CM2はモータ電流IMのリミット値の設定値に応じてカレントミラー比を可変するように構成されるため部品点数が多くなる。しかしながら、電流シンク型のカレントミラー回路であるため、トランジスタQ20のドレイン電圧がトランジスタQ20の閾値電圧でクランプされる。したがって、スイッチS21~S26がオンのとき、スイッチS21~S26の各第1端に印加される電圧、スイッチS21~S26の各第2端に印加される電圧、及びトランジスタQ21~Q27の各ドレイン電圧もトランジスタQ20の閾値電圧でクランプされる。このようにトランジスタQ20~Q26及びスイッチS21~S26に高電圧が印加されるおそれがないため、トランジスタQ20~Q26及びスイッチS21~S26には低耐圧の部品を用いることができる。これにより、モータ駆動装置30の低コスト化及び小型化を図ることができる。
【0038】
電流ソース型カレントミラー回路CM3は、Pチャネル型電界効果トランジスタQ30及びQ31を備える。
【0039】
トランジスタQ30のドレイン並びにトランジスタQ30及びQ31の各ゲートは、トランジスタQ27のドレインに接続される。トランジスタQ30及びQ31の各ソース及び各バックゲートには電源電圧VCCが印加される。トランジスタQ31のドレインは、抵抗R1の第1端、コンデンサC1の第1端、コンパレータCOMP1の非反転入力端子に接続される。なお、抵抗R1の第1端及びコンデンサC1の第1端は、グラウンド電位に接続される。
【0040】
電流ソース型カレントミラー回路CM3は、電流シンク型カレントミラー回路CM2の出力電流を受け取るように構成される。
【0041】
電流ソース型カレントミラー回路CM3の出力電流は、モータ電流IMのリミット値に応じたゲインを持ったセンス電流ISである。すなわち、電流ソース型カレントミラー回路CM3の出力電流の値は、モータ電流IMのリミット値に応じたゲインと、センス電流ISとの乗算値である。
【0042】
抵抗R1は、電流ソース型カレントミラー回路CM3の出力電流をI/V変換するように構成される変換部の一例である。抵抗R1の第1端に印加される電圧、すなわち変換部の出力電圧は、コンデンサC1によって平滑化される。
【0043】
I/V変換後の電圧が温度依存性を持たないようにするために抵抗R1の温度特性は平坦であることが望ましい。
図3は、温度特性が平坦である抵抗R1の一構成例を示す図である。
【0044】
図3に示す構成例の抵抗R1は、正の温度特性を有する抵抗素子PS_1~PS_nと、負の温度特性を有する抵抗素子XS_1~XS_nと、スイッチSW1~SWnと、を備える。
【0045】
正の温度特性を有する抵抗素子PS_1~PS_n及び負の温度特性を有する抵抗素子XS_1~XS_nは、正の温度特性を有する抵抗素子と負の温度特性を有する抵抗素子とが交互に並びながら直列接続される。スイッチSWk(kは1以上n以下の任意の自然数)は、正の温度特性を有する抵抗素子PS_k及び負の温度特性を有する抵抗素子XS_kによって構成される直列接続体に対して並列接続される。正の温度特性を有する抵抗素子PS_kの抵抗値と負の温度特性を有する抵抗素子XS_kの抵抗値との比率が調整されることで、正の温度特性を有する抵抗素子PS_k及び負の温度特性を有する抵抗素子XS_kによって構成される直列接続体の抵抗値の温度特性が平坦化される。
【0046】
例えばスイッチSW1がオンであるとき、正の温度特性を有する抵抗素子PS_1及び負の温度特性を有する抵抗素子XS_1は短絡する。したがって、スイッチSW1~SWnのうちオンにするスイッチが選択されることによって、抵抗R1の抵抗値のトリミングが行われる。
【0047】
抵抗R1の抵抗値のトリミングを行うことで、電流検出精度をより一層高めることができる。
図3に示す構成例の抵抗R1では、個々のモータ駆動装置30において、スイッチSW1~SWnのうちオンにするスイッチを決定することで、抵抗R1の抵抗値のトリミングが実行される。
【0048】
図4は、
図3に示す構成例の抵抗R1のレイアウト例を示す図である。正の温度特性を有する抵抗素子PS_1~PS_nは第1領域RN1に配置され、負の温度特性を有する抵抗素子XS_1~XS_nは第2領域RN2に配置され、スイッチSW1~SWnは第3領域RN3に配置される。
【0049】
コンパレータCOMP1は、基準電圧と上述した変換部の出力電圧とを比較するように構成される比較部の一例である。基準電圧は、D/AコンバータDAC1から出力される。制御部31(
図1参照)は、基準電圧の設定値となるデジタル信号をD/AコンバータDAC1に供給する。
【0050】
上述した調整部がセンス電流ISにモータ電流IMのリミット値に応じたゲインを持たせるので、モータ電流IMがリミット値であるときの上述した変換部の出力電圧が、モータ電流IMのリミット値の設定値が小さい場合に低下することを抑制することができる。これにより、モータ電流IMのリミット値の設定値が小さい場合でも、高い電流検出精度を実現できる。
【0051】
なお、モータ電流IMのリミット値の設定値にかかわらず、モータ電流IMがリミット値であるときに上述した変換部の出力電圧は一定であることが望ましい。これにより、モータ電流IMのリミット値の設定値にかかわらず、マイクロステップ制御のための基準電圧の設定を常に一定にすることができ、マイクロステップ制御が容易になる。
【0052】
実施形態に係るモータシステム10は、例えば
図5に示すプリンタ40に内蔵され、用紙送り機構の一部として用いられる。なお、当然の事ながら、実施形態に係るモータシステム10は、プリンタ以外の電気機器に搭載されてもよい。
【0053】
本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0054】
例えば、電界効果トランジスタの代わりにバイポーラトランジスタを用いてもよい。
【0055】
例えば、モータ電流IMの検出可能範囲の最大値の設定変更が不要である場合は、電流検出部33を
図6に示す構成にすればよい。
図6に示す構成例の電流検出部33では、電流ソース型カレントミラー回路CM1のカレントミラー比が固定である。
【0056】
以上説明したモータ駆動装置(30)は、モータコイル(L1)に流れるモータ電流に応じたセンス電流を生成するように構成される生成部(Q5、Q6、AMP1)と、前記センス電流に、前記モータ電流のリミット値に応じたゲインを持たせるように構成される調整部(CM1、CM2、CM3)と、前記ゲインを持った前記センス電流をI/V変換するように構成される変換部(R1)と、基準電圧と前記変換部の出力電圧とを比較するように構成される比較部(COMP1)と、を備える構成(第1の構成)である。
【0057】
上記第1の構成であるモータ駆動装置は、調整部がセンス電流にモータ電流のリミット値に応じたゲインを持たせるので、モータ電流がリミット値であるときの変換部の出力電圧が、モータ電流のリミット値の設定値が小さい場合に低下することを抑制することができる。これにより、モータ電流のリミット値の設定値が小さい場合でも、高い電流検出精度を実現できる。
【0058】
上記第1の構成であるモータ駆動装置において、前記モータコイルは、第1端が電源電圧の印加端に接続可能に構成される第1トランジスタ(Q1)の第2端と、 第2端が前記電源電圧よりも低い電圧の印加端に接続可能に構成される第2トランジスタ(Q2)の第1端とに接続可能に構成され、前記生成部は、前記第2トランジスタと対をなしてカレントミラー回路を構成する第3トランジスタ(Q5)を含む構成(第2の構成)であってもよい。
【0059】
上記第2の構成であるモータ駆動装置は、第2トランジスタ及び第3トランジスタによってカレントミラー回路を構成しているので、モータ電流に対するセンス電流の比を調整することが容易になる。
【0060】
上記第2の構成であるモータ駆動装置において、前記生成部は、前記第3トランジスタに直列接続可能に構成される第4トランジスタ(Q6)と、前記第3トランジスタと前記第4トランジスタとの接続ノードに印加される電圧と、前記第2トランジスタの第1端に印加される電圧とに応じて前記第4トランジスタを制御するように構成されるアンプ(AMP1)と、を備える構成(第3の構成)であってもよい。
【0061】
上記第3の構成であるモータ駆動装置は、アンプのオフセット電圧をトリミングすることによって、モータ電流とセンス電流との対応関係の精度を向上させることができる。
【0062】
上記第1~第3いずれかの構成であるモータ駆動装置において、前記調整部は、前記センス電流を受け取るように構成される電流ソース型カレントミラー回路(CM1)と、前記電流ソース型カレントミラー回路の出力電流を受け取るように構成される電流シンク型カレントミラー回路(CM2)と、を備え、前記電流シンク型カレントミラー回路は、前記リミット値の設定値に応じてカレントミラー比を可変するように構成される構成(第4の構成)であってもよい。
【0063】
上記第4の構成であるモータ駆動装置では、電流シンク型カレントミラー回路はモータ電流のリミット値の設定値に応じてカレントミラー比を可変するように構成されるため部品点数が多くなるが、電流シンク型であるため低耐圧の部品を用いることができる。これにより、低コスト化及び小型化を図ることができる。
【0064】
上記第4の構成であるモータ駆動装置において、前記電流ソース型カレントミラー回路は、カレントミラー比を可変するように構成される構成(第5の構成)であってもよい。
【0065】
上記第5の構成であるモータ駆動装置は、モータ電流の検出可能範囲の最大値の設定変更が可能となるので、多様なステッピングモータに対応することができる。
【0066】
上記第1~第5いずれかの構成であるモータ駆動装置において、前記リミット値の設定値にかかわらず、前記モータ電流が前記リミット値であるときに前記変換部の出力電圧は一定である構成(第6の構成)であってもよい。
【0067】
上記第6の構成であるモータ駆動装置は、モータ電流のリミット値の設定値にかかわらず、マイクロステップ制御のための基準電圧の設定を常に一定にすることができる。
【0068】
以上説明したモータシステム(10)は、モータ(20)と、前記モータを駆動するように構成される上記第1~第6いずれかの構成であるモータ駆動装置と、を備える構成(第7の構成)である。
【0069】
上記第7の構成であるモータシステムは、モータコイルを流れる電流のリミット値の設定値が小さい場合でも、高い電流検出精度を実現できる。
【0070】
以上説明した電気機器(40)は、上記第7の構成であるモータシステムを備える構成(第8の構成)である。
【0071】
上記第8の構成である電気機器は、モータコイルを流れる電流のリミット値の設定値が小さい場合でも、高い電流検出精度を実現できる。
【符号の説明】
【0072】
10 実施形態に係るモータシステム
20 ステッピングモータ
30 モータ駆動装置
31 制御部
32 Hブリッジ回路
33、34 電流検出部
40 プリンタ
AMP1 アンプ
C1 コンデンサ
CM1、CM3 電流ソース型カレントミラー回路
CM2 電流シンク型カレントミラー回路
COMP1 コンパレータ
DAC1 D/Aコンバータ
L1 モータコイル
PS_1~PS_n 正の温度特性を有する抵抗素子
Q1~Q6、Q20~Q27 Nチャネル型電界効果トランジスタ
Q10~Q12、Q30、Q31 Pチャネル型電界効果トランジスタ
R1 抵抗
PN1~PN3 第1~第3領域
S11、S12、S21~S27、SW1~SWn スイッチ
XS_1~XS_n 負の温度特性を有する抵抗素子