(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082476
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】センサ制御システム及びセンサ制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196284
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 雄飛
(72)【発明者】
【氏名】前川 景示
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181FF04
5H181FF07
5H181FF14
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】
要求されるセンサ設定範囲への変更を遅延なく実現する。
【解決手段】
予め決められたルートを走行する車両に備わるセンサを制御するセンサ制御システムにおいて、前記センサの設定を変更する地点を路線条件または目標速度パタンから決定するセンサ設定決定部と、前記車両が前記地点に到達時に、前記センサの設定変更を行うセンサ設定変更部と、を備えることを特徴とするセンサ制御システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められたルートを走行する車両に備わるセンサを制御するセンサ制御システムにおいて、
前記センサの設定を変更する地点を路線条件または目標速度パタンから決定するセンサ設定決定部と、
前記車両が前記地点に到達時に、前記センサの設定変更を行うセンサ設定変更部と、
を備えることを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記センサは障害物を検知するセンサであって、
前記センサ設定決定部は、前記センサの障害物検知範囲を変更する地点を路線条件または目標速度パタンから決定し、
前記センサ設定変更部は、前記車両が前記地点に到達時に、前記障害物検知範囲の変更を行う
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記路線条件は、制限速度情報、カーブ曲率情報、及び前記ルートの沿線に設置された設備情報を示す沿線設備情報を含む
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項4】
請求項2に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記路線条件は、制限速度情報を含む
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項5】
請求項2に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記路線条件は、カーブ曲率情報を含む
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項6】
請求項2に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記路線条件は、前記ルートの沿線に設置された設備情報を示す沿線設備情報を含む
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項7】
請求項3または5に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記センサ設定決定部は、前記カーブ曲率情報から推定されるルートへの侵入リスクを用いて、前記障害物検知範囲の変更を決定する
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項8】
請求項3または6に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記センサ設定決定部は、前記沿線設備情報から推定されるルートへの侵入リスクを用いて、前記障害物検知範囲の変更を決定する
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記ルートへの侵入リスクは、前記車両の乗客数人数に応じて高く設定される
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項10】
請求項3または4に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記センサ設定決定部は、前記車両の所定の地点における速度から算出される前記車両の制動距離を用いて、前記障害物検知範囲の変更を決定する
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項11】
請求項10に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記制限速度情報または前記目標速度パタンから前記制動距離を算出する
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項12】
請求項1に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記センサは位置推定を行うセンサであり、
前記センサ設定決定部は、前記センサの感度の設定を変更する地点を路線条件または目標速度パタンから決定し、
前記センサ設定変更部は、前記車両が前記地点に到達時に、前記センサの感度の変更を行う
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項13】
請求項12に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記路線条件は、前記ルート上の各地点での周辺環境に関する情報と、制限速度情報、カーブ曲率情報、または前記ルートの沿線に設置された設備情報を示す沿線設備情報の少なくともいずれか1つと、を含む
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項14】
請求項13に記載のセンサ制御システムにおいて、
前記センサ設定決定部は、前記周辺環境に関する情報を用いて、前記センサの感度の変更を決定する
ことを特徴とするセンサ制御システム。
【請求項15】
予め決められたルートを走行する車両に備わるセンサを制御するセンサ制御システムによるセンサ制御方法において、
前記センサ制御システムが、前記センサの設定を変更する地点を路線条件または目標速度パタンから決定し、
前記センサ制御システムが、前記車両が前記地点に到達するまでに前記センサの設定変更を行う
ことを特徴とするセンサ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ制御システム及びセンサ制御方法に関し、走行する車両に搭載されたセンサの制御を行うセンサ制御システム及びセンサ制御方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「車両の走行状況に応じた処理ができる情報の処理装置及び処理方法を提供すること」(特許文献1[0005]段落参照)を課題とし、その解決手段として「車両の走行状況に基づき処理、実行すべき処理の対象、あるいは処理の必要性の有無や処理の優先度、あるいは処理の周期などの処理条件を変えるようにしたこと」(特許文献1[0006]段落参照)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、処理条件の変更にかかる時間は考慮されておらず、処理条件の変更直後は走行状況に応じた処理ができない可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一実施の態様は、予め決められたルートを走行する車両に備わるセンサを制御するセンサ制御システムにおいて、前記センサの設定を変更する地点を路線条件または目標速度パタンから決定するセンサ設定決定部と、前記車両が前記地点に到達時に、前記センサの設定変更を行うセンサ設定変更部と、を備えることを特徴とするセンサ制御システムである。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本発明の一実施の態様は、予め決められたルートを走行する車両に備わるセンサを制御するセンサ制御システムによるセンサ制御方法において、前記センサ制御システムが、前記センサの設定を変更する地点を路線条件または目標速度パタンから決定し、前記センサ制御システムが、前記車両が前記地点に到達時に、前記センサの設定変更を行うことを特徴とするセンサ制御方法である。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によれば、要求されるセンサ設定範囲への変更を遅延なく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態におけるセンサ制御システムの構成例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態における路線条件のデータフォーマットの一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態における各速度と制動距離の関係、および、各地点の速度から算出した制動距離の例を説明するための図である。
【
図4】第1の実施形態における各条件とその際の検知範囲の設定の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態における検知範囲の変更手順の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態におけるセンサ制御システムの構成例を示す図である。
【
図7】第2の実施形態における周辺環境のデータフォーマットの一例を示す図である。
【
図8】第2の実施形態における位置推定に関わる感度の変更手順の処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述する。
【0010】
(1)第1の実施形態
走行する車両に搭載されたセンサでは、状況に応じた適切なセンサ設定を行うことが重要である。
【0011】
例えば、カメラやLiDAR(Light Detection and Ranging)を用いた障害物検知機能においては、障害物を遠方まで検知するためには、ズーム倍率や焦点距離などを上げて検知距離を伸ばす必要がある。特に鉄道のように移動体(車両)の制動距離が長い場合には、自動車など他移動体と比べて、より長い検知距離が必要となる。
【0012】
しかし、検知距離を伸ばす程、センサの視野角すなわち検知エリアは狭くなり、また、LiDARでは点群密度が下がることとなり、この結果、検知精度が低下して未検知や誤検知が生じやすいという問題が発生する。
【0013】
この課題に対する対策の一つとして、視野角は狭いが検知距離が長いセンサと、検知距離は短いが視野角が広いセンサの両方を搭載し、検知距離と視野角の両方を向上する方法が考えられる。また、特許文献1では、単一のセンサにおいて、車両の検知距離を一般道と高速道とで異なる値に変更する方法が記載されている。
【0014】
しかし、検知距離変更の際にはピント調整やキャリブレーションなど変更完了までの遅れ時間が発生するため、検知範囲の変更直後は要求される検知範囲を満たせない可能性がある。このため、要求されるセンサ設定への変更を遅延なく、適切なタイミングで行うことができない可能性がある。
【0015】
第1の実施形態では、センサの検知範囲を変更する地点を、路線条件または目標速度パタンから決定し、変更する地点に到達するまでに検知範囲の変更を完了させる方法について説明する。本実施形態における検知範囲の変更には、検知エリアの変更を行うことと検知距離の変更を行うことの双方を含み、少なくともどちらか一方の変更が行われればよい。本実施形態における検知距離とは、どの程度遠方の障害物検知を行うのかを示す長さの指標であり、検知エリアとは、障害物検知を行うセンサの視野角の指標である。検知距離及び検知エリアは、基本的には背反の関係であり、ズーム倍率を上げれば、検知距離を伸ばせるが、その代わりに検知エリアは狭まる。
【0016】
まず、
図1を用いて、センサ制御システムの構成と各構成要素の役割を説明する。なお、障害物検知部101、路線条件記憶部102、検知設定決定部104、及び検知設定変更部105は、車両103の内部もしくは外部のどちらに設置しても構わない。外部に設置した場合は、無線などを用いて情報伝送すればよい。
【0017】
障害物検知部101は、周辺の障害物を検知する機能を有する。障害物検知部101としては、例えば、カメラやLiDAR、超音波センサが挙げられる。ただし、それらに限らず、周辺の障害物を検知する機能を有するものであれば、他のセンサでもよい。
【0018】
また、障害物検知部101は、ズーム倍率や焦点距離などの検知設定を変更することによって、障害物検知機能の検知範囲を変更することができる。この変更は、焦点距離変更などハードウェア上での処理、または画像処理上での対象領域変更などソフトウェア上での処理のどちらによるものでも構わない。ハードウェア上での処理の場合は、検知範囲の変更に際して、遅れ時間が発生することがある。
【0019】
路線条件記憶部102は、所定の路線条件を記憶する機能を有する。路線条件としては、制限速度情報、カーブの曲率情報、駅位置や踏切位置などの沿線に設置された設備情報を示す沿線設備情報、または、各地点における側方からの侵入リスク情報等の少なくとも何れかが含まれる。路線条件のデータフォーマットの一例を
図2に示す。
【0020】
車両103は、鉄道車両やバス、LRT(Light Rail Transit)など予め決められたルートを走行する、もしくは専用軌道を走行する車両である。
【0021】
検知設定決定部104は、路線条件記憶部102から出力された制限速度情報やカーブの曲率情報、駅位置や踏切位置などの沿線設備情報から、障害物検知部101の検知範囲、および、検知範囲の変更を開始する地点(以下、検知変更点とよぶ)を決定する機能を有する。
【0022】
検知範囲を変更する際に検知設定決定部104が決定し得る検知範囲の値は、車両103の各地点の速度から算出した制動距離に応じて設定する方法が考えられる。なお、同じ速度でも、車両条件や天候などによっては、制動距離が変動する可能性があるので、車両条件や天候を考慮して制動距離を算出する。
【0023】
各速度と制動距離の関係、各地点の速度から算出した制動距離のイメージ図を、
図3に示す。
【0024】
ここでは、一例として、各地点での制限速度を基に制動距離を算出した場合のイメージ図を示す。
図3(a)では、横軸を車両103の速度とし、縦軸を制動距離としている。この時、速度が増加するにつれて、2次関数的に制動距離も増加する。
図3(b)上段は、予め決められたルートにおける位置を横軸に示し、各位置において設定されている制限速度を縦軸に示している。このとき、
図3(a)における各速度と制動距離の関係から、
図3(b)上段に示す各位置の制限速度に対応する制動距離を計算することが可能となる。計算した結果を示したのが、
図3(b)下段である。
図3(b)下段では、予め決められたルートにおける位置を横軸に示し、各位置において計算された制動距離を縦軸に示している。このような制動距離の算出は、例えば検知設定決定部104が行うが、
図1には不図示の他の処理部が実行する等であってもよい。そして検知設定決定部104は、このようにして算出された制動距離に応じて、検知範囲の変更を決定する。
【0025】
なお、上記の例では、制動距離を算出する際の速度を制限速度としたが、ブレーキの応答遅れなどの安全上のマージンを見込んで、制動距離を算出する際の速度を制限速度よりも大きい値に設定してもよい。また制動距離を算出する際の速度を、制限速度より正確な速度情報である目標速度パタンとしてもよい。目標速度パタンを用いることによって、検知距離に余分なマージンを持たず、検知エリアをより広く確保でき、その結果、検知精度を高めることができる。
【0026】
なお、上記説明では、検知範囲を、制限速度情報や目標速度パタンのみから算出する方法を記載したが、検知設定決定部104による検知範囲の変更の決定(地点及び変更内容)においては、これら情報に加えて、曲率情報や沿線設備情報から推定される侵入リスクも考慮して、設定してもよい。これら条件を考慮して設定することによって、検知範囲を状況に応じたより適切な値とすることが期待される。
【0027】
具体的には、曲率の大きい区間において、遠方まで見渡せる直線区間と異なり、カーブによって遠方まで見渡せない場合は、検知距離を近方および検知エリアを広角とする設定が考えられる。また、沿線設備情報において駅や踏切や車両基地など側方から進行レーンへの侵入リスクが高い区間では、検知距離を近方および検知エリアを広角とする設定が考えられる。各条件とその際の検知距離および検知エリアの設定例を、
図4に示す。
【0028】
なお、検知範囲の設定のために用いる条件は、
図4で示した条件に限るものではなく、時間帯や天候条件、季節条件など他条件も考慮してもよい。例えば、ある地点での側方からの侵入リスクを、全時間帯で一律の値にするのではなく、乗客数人数に応じて高く設定することが考えられる。この場合、具体的には、通学や通勤時間帯など移動量の多い時間帯は、侵入リスクを高く設定する。このような侵入リスクの設定は、検知範囲の設定を行う前に予め管理者等によって行われるとしてもよいし、センサ制御システム内の何れかの処理部(検知設定決定部104や不図示の設定部等)が適宜、設定するとしてもよい。
【0029】
検知変更点は、路線条件記憶部102から出力された制限速度情報やカーブの曲率情報など路線条件が変化する地点から、変更に要する処理時間の分だけ目標速度パタンを逆引きして、処理時間前の車両103が走行する地点に決定する。すなわち、検知設定決定部104は、路線条件が変化する地点に車両103が到達するまでに障害物検知部101の検知範囲の変更が終了するように、当該変更の処理を開始する検知変更点を決定する。
【0030】
なお、変更回数の増大化を低減することを目的として、検知範囲の変更が小さい、もしくは変更する区間長が短く、かつ安全上変更が必須でない地点においては、検知変更点とせず、変更を実施しなくてもよい。
【0031】
検知設定変更部105は、車両103から出力された位置や速度を参照し、検知設定決定部104で決定した検知変更点に車両103が到達した時点で、検知設定決定部104で決定した検知範囲への変更を開始する機能を有する。
【0032】
以上が、センサ制御システムの構成と各構成要素の役割の説明である。
【0033】
次に、本実施形態の方法を用いた時の、センサ制御システムにおける検知範囲の変更手順を、
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0034】
検知設定決定部104は、路線条件記憶部102から出力された路線条件を用いて、障害物検知部101における検知範囲、及び、検知変更点を決定する(ステップS11)。検知変更点は一個でなく、複数個となる場合もある。
【0035】
なお、ステップS11の処理を実施するタイミングは、車両が出発する前に実施することが考えられるが、変更に際する処理時間が短い場合には、車両出発後すなわち車両走行中に実施しても構わない。
【0036】
ステップS12では、検知設定変更部105は、車両103から出力された位置や速度を参照し、車両103の現在の位置が検知変更点にまだ達しない場合はステップS13に、現在の位置が検知変更点に達した場合は、ステップS14に進む。
【0037】
ステップS13では、車両103は、検知範囲の変更は実施せず、センサ制御システムの動作周期分進行し、その後ステップS12に戻る。
【0038】
ステップS14では、検知設定変更部105は、障害物検知部101において、検知設定決定部104で決定した検知範囲への変更を開始し、変更の終了を確認後、ステップS15に進む。
【0039】
ステップS15では、検知設定変更部105は、車両103の現在位置から停車駅や停留所など目標地点までの区間において、前ステップS14の開始段階の地点以外の検知変更点が存在するかを判定し、他に検知変更点が存在する場合はステップS12に戻り、他に検知変更点が存在しない場合は処理を終了させる。
【0040】
なお、ステップS15の判定において、一度処理を終了した場合でも、運行状況による制限速度の変動など路線条件が変化した場合は、再度本フローチャートの処理をステップS11から実施するようにしてもよい。
【0041】
以上がセンサ制御システムにおける検知範囲の変更手順の説明である。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、センサの検知範囲を変更する地点を、路線条件または目標速度パタンから決定し、変更する地点に到達するまでに検知範囲の変更を完了することによって、要求される検知範囲を満たしつつ、要求される検知範囲への変更を遅延なく実現することができる。
【0043】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態は、第1の実施形態に係るセンサ制御システムの構成に対して、新たに、障害物検知部101の代わりに位置推定部201を、検知設定決定部104の代わりに感度決定部204を、検知設定変更部105の代わりに感度変更部205を追加したセンサ制御システムである。第1の実施形態では、障害物検知機能を対象として本発明の適用例を説明したが、本発明は障害物検知機能だけでなく、位置推定機能にも適用可能であることから、その適用例について第2の実施形態にて説明する。
【0044】
位置推定機能を実現するセンサの一例として、GNSS(Global Navigation Satellite System)など衛星観測を用いた位置推定センサが挙げられる。例えば、GNSSは、アンテナの感度を高く変更すると、ノイズが増える代わりに位置推定に使用できるGNSS衛星数が増加する、一方で、アンテナの感度を低く変更すると、位置推定に使用できるGNSS衛星数が減少する代わりにノイズが減る、といった性質を持つ。
【0045】
具体的には、田んぼ付近など周辺建造物が少なく上空が開けた区間では、観測できるGNSS衛星数は多くなることから、感度を低めに変更することによって、ノイズを低減し位置推定の精度を向上させることができる。一方で、都心や工場付近など周辺建造物が多く上空が遮蔽された区間では、位置推定に使用できるGNSS衛星数が減少し、すなわち位置推定不可になる確率が上がってしまう。この場合、感度を高めに変更することによって、位置推定に使用できるGNSS衛星数を増やし、位置推定不可になる確率を低減させることができる。そのため、車両状況に応じたアンテナ感度の変更は、位置推定機能の向上に寄与する。
【0046】
従って、第2の実施形態では、センサ感度の変更地点やタイミングを事前に正確に把握することを課題とし、センサの感度設定を変更する地点を、路線条件または目標速度パタンから決定し、変更する地点に到達するまでにセンサ感度設定の変更を完了させる方法について説明する。
【0047】
図6は、第2の実施形態に係るセンサ制御システムの構成例を示す図である。ただし、第2の実施形態に係るセンサ制御システムの中で第1の実施形態と同一の構成要素は、同一の符号を付してあり、その説明については先に記したとおりであるので省略する。
【0048】
第2の実施形態に係るセンサ制御システムは、
図1に示した第1の実施形態に係るセンサ制御システムの構成に対して、新たに、障害物検知部101の代わりに位置推定部201を、検知設定決定部104の代わりに感度決定部204を、検知設定変更部105の代わりに感度変更部205を追加したセンサ制御システムである。以下では、追加した位置推定部201、感度決定部204、及び感度変更部205を中心に説明する。
【0049】
位置推定部201は、センサを用いることによって車両103の現在位置を推定する機能を有する。本実施形態では、位置推定部201としては、GNSSを用いた例で説明する。ただし、それに限らず、LiDARやカメラなどマップマッチングなど、位置を推定する機能を有するものであれば、他のセンサでもよい。また、位置推定部201は、GNSSであればアンテナ感度を変更する機能を有する。
【0050】
路線条件記憶部102は、路線条件として、第1の実施形態に記載の情報に加えて、ルート上の各地点での周辺環境に関する情報を記憶する。周辺環境のデータフォーマットの一例を
図7に示す。
図7では、各地点における周辺建造物の数を「かなり多い」、「多い」、「少ない」、「かなり少ない」の4段階で示している。例えば、地点0mにおいては、周辺建造物は「かなり多い」とされる一方で、地点1002mにおいては「かなり少ない」と示されている。
図7はあくまで一例であり、センサ感度の設定に影響を与える周辺環境を記した情報であればよい。
【0051】
感度決定部204は、路線条件記憶部102から出力された制限速度情報やカーブの曲率情報、駅位置や踏切位置などの沿線設備情報から、位置推定部201の感度および感度の変更を開始する地点(以下、感度変更点とよぶ)を決定する機能を有する。
【0052】
具体的には、周辺建造物が少なく上空が開けた区間では、感度を低めに変更することによって、ノイズを低減し位置推定の精度を向上させ、一方で、周辺建造物が多く上空が遮蔽された区間では、感度を高めに変更することによって、位置推定に使用できるGNSS衛星数を増やし、位置推定不可になる確率を低減させる。
【0053】
感度変更点は、路線条件記憶部102から出力された周辺環境が変化する地点から、変更に要する処理時間の分だけ目標速度パタンを逆引きして、処理時間前の車両103が走行する地点に決定する。すなわち、感度決定部204は、路線条件が変化する地点に車両103が到達するまでに位置推定部201の感度の変更が終了するように、当該変更の処理を開始する感度変更点を決定する。
【0054】
なお、変更回数の増大化を低減することを目的として、感度の変更が小さい、もしくは変更する区間長が短く、かつ安全上変更が必須でない地点においては、感度変更点とせず、変更を実施しなくてもよい。
【0055】
感度変更部205は、車両103から出力された位置や速度を参照し、感度決定部204で決定した感度変更点に車両103が到達した時点で、感度決定部204で決定した感度への変更を開始する機能を有する。
【0056】
以上が、本実施形態で新たに追加した構成と各構成要素の役割の説明である。
【0057】
次に、本実施形態の方法を用いた時の、センサ制御システムにおける位置推定に関わる感度の変更手順を、
図8のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
ステップS21では、感度決定部204は、路線条件記憶部102から出力された周辺環境情報を含む路線条件または目標速度パタンを用いて、位置推定部201における感度、および、感度変更点を決定する。感度変更点は一個でなく、複数個となる場合もある。
【0059】
なお、ステップS21の処理を実施するタイミングは、車両が出発する前に実施することが考えられるが、変更に際する処理時間が短い場合には、車両出発後すなわち車両走行中に実施しても構わない。
【0060】
ステップS22では、感度変更部205は、車両103から出力された位置や速度を参照し、車両103の現在の位置が感度変更点にまだ達しない場合はステップS23に、現在の位置が感度変更点に達した場合は、ステップS24に進む。
【0061】
ステップS23では、車両103は、感度の変更は実施せず、センサ制御システムの動作周期分進行し、その後ステップS22に戻る。
【0062】
ステップS24では、感度変更部205は、位置推定部201において、感度決定部204で決定した感度への変更を開始し、変更の終了を確認後、ステップS25に進む。
【0063】
ステップS25では、感度変更部205は、車両103の現在位置から停車駅や停留所など目標地点までの区間において、前ステップS24の開始段階の地点以外の感度変更点が存在するかを判定し、他に感度変更点が存在する場合はステップS22に戻り、他に感度変更点が存在しない場合は処理を終了させる。
【0064】
なお、ステップS25の判定において、一度処理を終了した場合でも、運行状況による制限速度の変動など路線条件が変化した場合は、再度本フローチャートの処理をステップS21から実施するようにしてもよい。
【0065】
以上がセンサ制御システムにおける位置推定に関わる感度の変更手順の説明である。
【0066】
以上で説明したとおり、本実施形態によれば、周辺建造物が少ない区間では、センサの感度を低めることによって位置推定の精度を向上し、周辺建造物が多い区間では、センサの感度を高めることによって位置推定不可になる確率を低減させることができる。従って、車両状況に応じたセンサ感度の適切な設定が可能となり、位置推定機能の向上が可能となる。
【0067】
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えたり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えたりすることも可能である。また、各実施形態の構成の一部において、他の構成の追加、削除、または置換をすることが可能である。
【0068】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手順等は、それらの一部または全てを、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい、また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0069】
また、図面において制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0070】
101 障害物検知部
102 路線条件記憶部
103 車両
104 検知設定決定部
105 検知設定変更部
201 位置推定部
204 感度決定部
205 感度変更部