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特開2023-82501有価元素の回収方法、有価元素の水酸化物の製造方法および有価元素の酸化物の製造方法
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  • 特開-有価元素の回収方法、有価元素の水酸化物の製造方法および有価元素の酸化物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082501
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】有価元素の回収方法、有価元素の水酸化物の製造方法および有価元素の酸化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 23/00 20060101AFI20230607BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20230607BHJP
   C22B 34/34 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
C22B23/00 102
C22B7/00 B
C22B34/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196325
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500103236
【氏名又は名称】JFEマテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】山口 東洋司
(72)【発明者】
【氏名】小澤 純仁
(72)【発明者】
【氏名】木島 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】篠田 万里子
(72)【発明者】
【氏名】杉森 博一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 晋弘
(72)【発明者】
【氏名】春日 健男
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA17
4K001AA19
4K001BA22
4K001CA01
4K001DB01
4K001DB23
(57)【要約】
【課題】廃触媒からコバルト等の有価元素を回収できる新規な方法を提供する。
【解決手段】少なくともモリブデンおよびコバルトを含有する物質を過酸化水素水に接触させて、上記物質から少なくともコバルトが浸出した浸出液を得る。上記浸出液をろ過して上記物質を分離することにより、ろ液を得る。上記ろ液にアルカリ処理を施し、生成したコバルト沈殿物をろ過によって分離する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともモリブデンおよびコバルトを含有する物質を過酸化水素水に接触させて、前記物質から少なくともコバルトが浸出した浸出液を得て、
前記浸出液をろ過して前記物質を分離することにより、ろ液を得て、
前記ろ液にアルカリ処理を施し、生成したコバルト沈殿物をろ過によって分離する、有価元素の回収方法。
【請求項2】
前記過酸化水素水は、過酸化水素を含有し、
前記物質の量に対する前記過酸化水素の量が、40質量%以下である、請求項1に記載の有価元素の回収方法。
【請求項3】
前記物質の量に対する前記過酸化水素の量が、5質量%以上である、請求項2に記載の有価元素の回収方法。
【請求項4】
前記物質を、前記過酸化水素水に接触させるに先立って、粉砕する、請求項1~3のいずれか1項に記載の有価元素の回収方法。
【請求項5】
前記過酸化水素水と前記物質との質量比(過酸化水素水/物質)が、2/1以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の有価元素の回収方法。
【請求項6】
前記ろ液に前記アルカリ処理を施すことにより、前記ろ液のpHを7以上にする、請求項1~5のいずれか1項に記載の有価元素の回収方法。
【請求項7】
前記物質が、廃触媒である、請求項1~6のいずれか1項に記載の有価元素の回収方法。
【請求項8】
前記廃触媒が、使用済み脱硫触媒である、請求項7に記載の有価元素の回収方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の有価元素の回収方法を用いて、有価元素の水酸化物を得る、有価元素の水酸化物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の有価元素の回収方法を用いて、有価元素の酸化物を得る、有価元素の酸化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともモリブデンおよびコバルトを含有する物質(例えば、石油精製に用いられた使用済み脱硫触媒などの廃触媒)から有価元素を回収する方法、ならびに、有価元素の水酸化物の製造方法および有価元素の酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油精製において、脱硫触媒を用いた脱硫が行なわれる。より詳細には、石油と高圧水素とを脱硫触媒上で反応させ、石油に含まれる硫黄分を硫化水素として除去する水素化脱硫が行なわれる。
このような脱硫触媒は、使用されるに従い、石油に含まれる重金属やタール分などで次第に被毒されて触媒活性が低下するため、定期的に交換される。この際、使用済み脱硫触媒(廃触媒)が発生する。
従来、資源循環の点から、廃触媒に含まれる種々の元素を回収する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-133233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脱硫触媒は、例えば、アルミナなどの担体上に、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)等の金属元素を担持する。
モリブデンは、鋼に添加すると機械的強度や剛性が高まるため、特殊鋼やステンレス鋼に使用され、更に、高温で展性や延性に富むため、グリス等にも使用される。
近年、使用済み脱硫触媒などの廃触媒から、これらの元素(有価元素)を回収することが強く望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、廃触媒などの物質からコバルト等の有価元素を回収できる新規な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を提供する。
[1]少なくともモリブデンおよびコバルトを含有する物質を過酸化水素水に接触させて、上記物質から少なくともコバルトが浸出した浸出液を得て、上記浸出液をろ過して上記物質を分離することにより、ろ液を得て、上記ろ液にアルカリ処理を施し、生成したコバルト沈殿物をろ過によって分離する、有価元素の回収方法。
[2]上記過酸化水素水は、過酸化水素を含有し、上記物質の量に対する上記過酸化水素の量が、40質量%以下である、上記[1]に記載の有価元素の回収方法。
[3]上記物質の量に対する上記過酸化水素の量が、5質量%以上である、上記[2]に記載の有価元素の回収方法。
[4]上記物質を、上記過酸化水素水に接触させるに先立って、粉砕する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の有価元素の回収方法。
[5]上記過酸化水素水と上記物質との質量比(過酸化水素水/物質)が、2/1以上である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の有価元素の回収方法。
[6]上記ろ液に上記アルカリ処理を施すことにより、上記ろ液のpHを7以上にする、上記[1]~[5]のいずれかに記載の有価元素の回収方法。
[7]上記物質が、廃触媒である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の有価元素の回収方法。
[8]上記廃触媒が、使用済み脱硫触媒である、上記[7]に記載の有価元素の回収方法。
[9]上記[1]~[8]のいずれかに記載の有価元素の回収方法を用いて、有価元素の水酸化物を得る、有価元素の水酸化物の製造方法。
[10]上記[1]~[8]のいずれかに記載の有価元素の回収方法を用いて、有価元素の酸化物を得る、有価元素の酸化物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、廃触媒などの物質からコバルト等の有価元素を回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】有価元素の回収方法の流れを示すフローチャートである。
図2】粉砕後の廃触媒の粒度分布である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の有価元素の回収方法は、少なくともモリブデンおよびコバルトを含有する物質を過酸化水素水に接触させて、上記物質から少なくともコバルトが浸出した浸出液を得て、上記浸出液をろ過して上記物質を分離することにより、ろ液を得て、上記ろ液にアルカリ処理を施し、生成したコバルト沈殿物をろ過によって分離する。
本発明によれば、少なくともモリブデンおよびコバルトを含有する物質から、簡便に、コバルトをコバルト沈殿物として回収できる。
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を、図1に基づいて説明する。
図1は、有価元素の回収方法の流れを示すフローチャートである。
【0012】
少なくともモリブデンおよびコバルトを含有する物質としては、特に限定されないが、以下では、廃触媒を例に説明する。
【0013】
〈廃触媒の準備〉
廃触媒は、少なくともモリブデンおよびコバルトを含有する、例えば、使用済み脱硫触媒である。脱硫触媒は、例えば、アルミナ(Al)などの担体上に、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの金属元素を担持する。
【0014】
〈粉砕〉
廃触媒は、後述するように、過酸化水素水に接触させるが、これに先立って、粉砕することが好ましい。これにより、高効率な浸出が期待できる。廃触媒がアルミナ担体を有する(アルミナ骨格を有する)脱硫触媒である場合は、特に有用である。
廃触媒を粉砕する方法としては、特に限定されず、ボールミル、ジェットミル等を用いる公知の方法によって、簡便に粉砕できる。
粉砕後における廃触媒の粒度としては、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
【0015】
〈過酸化水素水との接触:浸出液の取得〉
廃触媒を、任意で粉砕した後、過酸化水素水(過酸化水素の水溶液)に接触させる。接触の方法は、特に限定されず、例えば、廃触媒を過酸化水素水に浸漬させることにより両者を接触させる方法が挙げられる。
これにより、廃触媒に含まれるモリブデンおよびコバルトのうち、少なくともコバルトを、過酸化水素水に浸出させる。
すなわち、得られる浸出液は、廃触媒、ならびに、この廃触媒から溶け出した成分であるコバルトを含有するスラリーである。このスラリーは、後述するように、例えば、強酸性である。
【0016】
ところで、浸出液にコバルトだけでなく、モリブデンも多量に浸出している場合、後述するアルカリ処理を実施すると、一定量のモリブデンも共沈するため、得られるコバルト沈殿物の品位が低下しやすい。
また、モリブデンは、一般には、アルカリ側のpHで沈殿する元素ではないため、廃液に多くのモリブデンが残留して廃棄されることとなり、モリブデンのロスが増加する。
【0017】
そこで、本発明者らが検討した結果、高濃度の過酸化水素水を廃触媒に接触させると、モリブデン、コバルト等の各種金属が多量に浸出すること、および、過酸化水素水の濃度を低下させると、主としてコバルトのみが選択的に浸出することを見出した。
これは、コバルトが他の金属元素より過酸化水素による酸化を受けやすいためと考えられる。このため、希薄な過酸化水素水を廃触媒に接触させることにより、他の金属元素(例えばモリブデン)と比較して、コバルトが多く浸出した浸出液が得られる。
【0018】
以上の点から、本実施形態においては、廃触媒に接触する過酸化水素水が含有する過酸化水素の量を、廃触媒の量(乾燥質量)に対して、一定値以下にすることが好ましい。
具体的には、廃触媒の量に対する過酸化水素の量(以下、便宜的に、「過酸化水素量p」ともいう)は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。これにより、廃触媒からコバルトのみを選択的に浸出させやすくなる。
【0019】
一方、過酸化水素量pが低すぎると、コバルトが十分な浸出されないおそれがある。
このため、過酸化水素量pは、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。
【0020】
なお、例えば、後述する質量比(過酸化水素水/廃触媒)が10/1である場合、過酸化水素水の濃度(過酸化水素水における過酸化水素の含有量)が4質量%であれば、過酸化水素量pは40質量%になる。
【0021】
過酸化水素水と廃触媒との質量比(過酸化水素水/廃触媒)は、効率良く浸出できるという理由から、2/1以上が好ましく、3/1以上がより好ましい。
一方、使用する過酸化水素水が適量となり、反応容器の増大およびコスト増を抑制できるという理由から、質量比(過酸化水素水/廃触媒)は、50/1以下が好ましく、30/1以下がより好ましい。
【0022】
廃触媒を過酸化水素水に接触させる時間(接触時間)は、廃触媒内部の有価元素を十分に浸出できるという理由から、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。
一方で、接触時間を過剰に長くしても、浸出は定常状態に達し、浸出率の向上は望めない。このため、接触時間は、180分以下が好ましく、120分以下がより好ましい。
通常、事前に廃触媒を粉砕した場合は、1時間あれば廃触媒内部の有価元素を十分に浸出できる。
【0023】
過酸化水素水を酸性にすることにより、廃触媒から有価元素を効率的に浸出できる。
もっとも、廃触媒が使用済み脱硫触媒である場合、酸を過酸化水素水に添加しなくてもよい。廃触媒中の硫化物が、過酸化水素によって硫酸体となり、硫酸イオンとなって過酸化水素水中に溶解することで、硫酸添加と同様の効果を発現するからである。実際に、過酸化水素水中に廃触媒(使用済み脱硫触媒)を入れると、pHは速やかに低下する。
【0024】
〈ろ過による廃触媒の分離:ろ液の取得〉
次に、浸出液をろ過する。これにより、固形分である廃触媒を浸出液から分離して、ろ液を得る。ろ液は、廃触媒から溶け出した成分であるコバルトを、少なくとも含有する。
ろ過の方法は、対象とする固形分を分離して所望のろ液を取得できれば、特に限定されず、従来公知の方法を適宜採用できる。これは、後述するろ過においても、同様である。
【0025】
ろ過の残渣である廃触媒については、モリブデンは浸出せずに残留している一方で、コバルトは浸出しており除去されている。すなわち、乾式などの従来の方法では、廃触媒からコバルトを除去することは困難であったが、本実施形態によれば、これが実現できる。
このため、ろ過の残渣である廃触媒を、フェロモリブデン等の生産に供することができ、簡便に、モリブデンをリサイクルできる。
【0026】
〈アルカリ処理:コバルト沈殿物の生成〉
次に、ろ液にアルカリ処理を施して、コバルト沈殿物を生成させる。すなわち、ろ液に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリを添加することにより、ろ液中のコバルトが水酸化コバルトとして沈殿する。
ろ液にアルカリ処理を施すことにより、ろ液のpHを調整するが、このpHは、十分なコバルト回収率を得る目的から、7以上が好ましく、8以上がより好ましく、9以上が更に好ましい。
一方、中和のための酸が少量となり経済的であるという理由から、このpHは、13.5以下が好ましい。
【0027】
〈ろ過によるコバルト沈殿物の回収〉
次に、コバルト沈殿物が生成したろ液をろ過する。これにより、固形分であるコバルト沈殿物を、ろ液から分離する。こうして、廃触媒からコバルトをコバルト沈殿物として回収できる。
回収されるコバルト沈殿物は、例えば、コバルトの水酸化物である。更に、このコバルトの水酸化物を乾燥すれば、コバルトを酸化物の形態(つまり、コバルトの酸化物)にできる。乾燥の方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。
コバルト沈殿物が分離されたろ液(残液)は、廃液として廃棄される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、廃触媒からコバルトを選択的に浸出させてコバルト沈殿物として回収でき、一方で、モリブデンは廃触媒に残留させて回収できる。
このため、本実施形態によれば、例えば、廃触媒からモリブデンおよびコバルトを共に浸出させ、個別に回収する方法と比べて、工程を簡略化できる。
一般的には、多段階の工程が必要な場合、設備が複雑になり、建設費などのコストが増大する(実用的には、ある程度の大きさの設備規模で実施し、スケールメリットを享受することが求められる)。このため、本実施形態においては、コスト面でも優位性がある。
また、本実施形態においては、熱効率等の面から設備を大型化せざるを得ない焙焼等の熱処理を実施しないため、この点からも、設備を簡素化できる。
【実施例0029】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
【0030】
〈実施例1〉
図1に基づいて説明した流れに沿って、少なくともモリブデンおよびコバルトを含有する物質である廃触媒から有価元素を回収した。
【0031】
《廃触媒の準備》
廃触媒として、石油精製プラントより供試された、使用済み間接脱硫触媒を用いた。
この廃触媒は、直径2~3mmおよび長さ3~5mm前後の円筒形であり、アルミナ担体に種々の元素が担持されていた。
廃触媒の組成をICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析法によって求めた。廃触媒の組成を下記表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
《粉砕》
準備した廃触媒10kgを、100Lの純水と混合し、湿式ボールミルを用いて、120分間粉砕した。粉砕後の廃触媒のメジアン径は、12μmであった。粉砕後の廃触媒の粒度分布を図2に示す。
【0034】
《過酸化水素水との接触およびろ過》
次に、粉砕後の廃触媒と純水との混合物に、過酸化水素水(濃度:35質量%)を、上述した過酸化水素量pが15質量%となる量で添加し、その後、15分撹拌して、浸出液を得た。
得られた浸出液をろ過することにより、廃触媒を分離して、ろ液を得た。ろ過(吸引ろ過)には、5Cろ紙(保持粒子径:1μm)を用いた(以下同様)。
【0035】
《アルカリ処理およびろ過》
ろ液にアルカリ処理を施した。すなわち、ろ液に水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより、ろ液のpHを12に調整し、1時間経過させた。これにより、ろ液中にコバルト沈殿物を生成させた。
コバルト沈殿物が生成したろ液をろ過することにより、コバルト沈殿物を分離して、回収し、乾燥した。乾燥したコバルト沈殿物の組成をICP発光分光分析法によって求めた。コバルト沈殿物の組成を下記表2に示す。
【0036】
なお、金属元素は水酸化物の形態で沈殿しており、例えば、コバルト沈殿物は、Co(OH)・HOの式で表されると仮定する。
【0037】
《評価》
下記式に基づいて、コバルト歩留り(単位:質量%)を求めた。結果を下記表2に示す。コバルト歩留りの値が大きいほど、廃触媒から多くのコバルトをコバルト沈殿物として回収できたと評価できる。
コバルト歩留り=100×(コバルト沈殿物中のコバルト量/準備した時点での廃触媒中のコバルト量)
【0038】
更に、下記式に基づいて、モリブデンロス(単位:質量%)を求めた。結果を下記表2に示す。モリブデンロスの値が小さいほど、多くのモリブデンを廃触媒から浸出させないで、廃触媒に残留させたまま回収できたと評価できる。
モリブデンロス=100×{1-(浸出液から分離した時点での廃触媒中のモリブデン量/準備した時点での廃触媒中のモリブデン量)}
【0039】
〈実施例2〉
過酸化水素量pを40質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、コバルト沈殿物を回収し、コバルト沈殿物の組成、コバルトの歩留りおよびモリブデンロスを求めた。結果を下記表2に示す。
【0040】
〈実施例3〉
過酸化水素量pを50質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、コバルト沈殿物を回収し、コバルト沈殿物の組成、コバルトの歩留りおよびモリブデンロスを求めた。結果を下記表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
〈評価結果まとめ〉
上記表2に示すように、実施例1(過酸化水素量p:15質量%)では、コバルト歩留りは71質量%であり、得られたコバルト沈殿物は、良質なコバルト原料として精錬メーカー等においてリサイクル可能な品質であった。
実施例2(過酸化水素量p:40質量%)では、実施例1と比較して、コバルト歩留りが大きく増加した。
実施例3(過酸化水素量p:50質量%)では、実施例1~2と比較して、モリブデンロスが増加していた。
図1
図2