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特開2023-82502ステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082502
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】ステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法
(51)【国際特許分類】
   D05B 23/00 20060101AFI20230607BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
D05B23/00 Z
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196326
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000168115
【氏名又は名称】KTX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】粥川 慶一
(72)【発明者】
【氏名】平泉 功太
【テーマコード(参考)】
3B150
3D023
【Fターム(参考)】
3B150BB07
3D023BA01
3D023BD12
3D023BE31
(57)【要約】
【課題】多数の糸係止部材が連結された糸係止部材ユニットの送り不良を低減でき、縫製作業の生産性を高めることができるステッチ加飾部品の縫製装置を提供する。
【解決手段】挿入針2と押出しピン3と挿入針及び押出しピンを進退させる駆動機構4とを備え、糸係止部材が連結棒14に連結片13を介して連結された糸係止部材ユニット20を送り方向へ移送可能に装着し、挿入針に保持した糸係止部材を、押出しピンが基材と表皮材との間に挿入して、表皮材の表面にステッチ模様SMを連続して縫製するステッチ加飾部品の縫製装置10である。複数の連結片と同時に係合する複数の送り爪71を有して糸係止部材ユニットを送り方向へ移送するユニット送り装置7と、糸係止部材ユニットを移動可能であり直線状に保持するユニット保持装置8とを備え、ユニット保持装置は、糸係止部材ユニットを保持した状態で縫製装置の基台6に対して着脱可能に形成されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を挿通した糸係止部材を上下動可能に保持する挿入針と、当該挿入針の先端部から前記糸係止部材を押し出す押出しピンと、前記挿入針及び前記押出しピンを進退させる駆動機構とを備え、
前記糸係止部材が直線状に形成された連結棒に所定の送りピッチで連結片を介して連結された糸係止部材ユニットを送り方向へ移送可能に装着し、
前記糸係止部材ユニットの先頭に位置し前記挿入針に保持した糸係止部材を、前記押出しピンが基材と表皮材との間に挿入して、前記表皮材の表面にステッチ模様を連続して縫製するステッチ加飾部品の縫製装置であって、
複数の前記連結片と同時に係合する複数の送り爪を有して前記糸係止部材ユニットを送り方向へ前記送りピッチだけ移送するユニット送り装置と、前記ユニット送り装置に供給する前記糸係止部材ユニットを移動可能であり直線状に保持するユニット保持装置とを備え、
前記ユニット保持装置は、複数備え、前記糸係止部材ユニットを保持した状態で前記縫製装置の基台に対して着脱可能に形成されていることを特徴とするステッチ加飾部品の縫製装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたステッチ加飾部品の縫製装置において、
前記ユニット送り装置には、前記送り爪が直線状に複数配列され送り方向へ往復移動する送り歯と、前記送り爪と対向して形成された固定爪が直線状に複数配列され前記基台に固定された固定歯とを、前記ユニット保持装置と隣接した位置に備え、
前記送り爪には、前記連結片の送り方向後端部に当接する立壁部と、前記連結片の上端部に当接し前記立壁部の上端から送り方向前方に配置された次の送り爪の立壁部の下端まで延設された傾斜部とを有し、
前記固定爪には、前記連結片の送り方向後端部に当接する立壁部と、前記連結片の下端部に当接し前記立壁部の下端から送り方向前方に配置された次の固定爪の立壁部の上端まで延設された傾斜部とを有していることを特徴とするステッチ加飾部品の縫製装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたステッチ加飾部品の縫製装置において、
前記駆動機構には、前記挿入針を上下動させる駆動モータを備え、
前記ユニット送り装置は、前記駆動モータの主軸部と同期して回転する駆動軸部に形成されたカム部と、当該カム部に連動して前記糸係止部材ユニットの送り方向へ進退可能に揺動するリンクアーム部とを備え、
前記送り歯は、前記リンクアーム部の一端に連結されていることを特徴とするステッチ加飾部品の縫製装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載されたステッチ加飾部品の縫製装置において、
前記ユニット保持装置は、前記連結片を前記糸係止部材ユニットの送り方向へ直線状に案内するガイド溝部と、前記ガイド溝部と連通され前記連結棒を移動可能に収容する収容部とを備え、前記糸係止部材を前記ガイド溝部の外縁に沿って移動可能に前記糸係止部材ユニットを保持し、
前記ガイド溝部と前記収容部とが、前記ユニット保持装置の上下に分割された長尺状の上部材と下部材とに長手方向で連続状に形成されていることを特徴とするステッチ加飾部品の縫製装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載されたステッチ加飾部品の縫製装置において、
前記ユニット保持装置は、前記基台に対して係合する係合爪と当該係合爪を略90度回動させる操作部とを有するサムターン錠によって装着可能に形成されていることを特徴とするステッチ加飾部品の縫製装置。
【請求項6】
糸を挿通した糸係止部材を上下動可能に保持する挿入針と、当該挿入針の先端部から前記糸係止部材を押し出す押出しピンと、前記挿入針及び前記押出しピンを進退させる駆動機構と、を有する縫製装置を備え、
前記糸係止部材が直線状に形成された連結棒に所定の送りピッチで連結片を介して連結された糸係止部材ユニットを送り方向へ移送可能に装着し、
前記糸係止部材ユニットの先頭に位置し前記挿入針に保持した糸係止部材を、前記押出しピンが基材と表皮材との間に挿入して、前記表皮材の表面にステッチ模様を連続して縫製するステッチ加飾部品の縫製方法であって、
複数の前記連結片と同時に係合する複数の送り爪を有して前記糸係止部材ユニットを送り方向へ前記送りピッチだけ移送するユニット送り装置と、前記ユニット送り装置に供給する前記糸係止部材ユニットを移動可能であり直線状に保持するユニット保持装置とを備え、
前記ユニット保持装置は、複数備え、前記糸係止部材ユニットを保持した状態で前記縫製装置の基台に対して着脱可能に形成されていることを特徴とするステッチ加飾部品の縫製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法に関し、詳しくは、基材と当該基材の表面に接着された表皮材との間に糸が挿通された糸係止部材を所定の縫い目ピッチで挿入することによって、表皮材の表面にステッチ模様を縫製するステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の内装部品においては、硬質の合成樹脂からなる基材の表面を柔らかい表皮材で覆い、その表皮材の表面にシボ模様とステッチ模様とを施すことによって、デザイン上の見栄えを向上し、高級感やソフト感を醸す工夫がなされている。このステッチ模様を上糸のみによって縫製する方法として、基材と当該基材の表面に接着された表皮材との間に糸が挿通された糸係止部材を所定の縫い目ピッチで挿入することによって、表皮材の表面にステッチ模様を縫製するステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法が、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
すなわち、上記特許文献1には、図14図15に示すように、糸係止部材101を保持して基材102と表皮材103との間に挿入する挿入針104と、挿入針104から糸係止部材101を押し出す押出しピン105と、挿入針104及び押出しピン105を進退させる駆動機構106とを有する針駆動装置100aを備え、糸107を係止した糸係止部材101を保持した状態の挿入針104の先端部を、ステッチ模様SMの縫い目の位置で表皮材103の表面側から基材102と表皮材103との間に挿入した後又は挿入すると同時に、押出しピン105を前進させて挿入針104の先端部から糸係止部材101を表皮材103内に押し出して、糸107を係止した状態の糸係止部材101を基材102と表皮材103との間に挿入させるステッチ加飾部品の縫製装置100が記載されている。
【0004】
また、特許文献1には、複数の糸係止部材101が直線状に形成された連結棒108に所定のピッチPTで連結されている糸係止部材ユニット110を、所定のピッチPTずつ連結棒108の送り方向へ移動可能に縫製装置100に装着させ、針駆動装置100aは、連結棒108に連結された糸係止部材101を切り離し、切り離された糸係止部材101を挿入針104に保持させて表皮材103内に押出し、表皮材103と基材102との間に挿入させるステッチ加飾部品120の縫製方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-64576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたステッチ加飾部品の縫製装置100及び縫製方法には、以下のような問題があった。すなわち、図15に示すように、挿入針104は、針軸方向HJにスリット溝104aが形成された中空針である。また、糸係止部材101は、挿入針104の中空部104b内に挿入される棒状の抜け止め部101aと、当該抜け止め部101aの中央部に連結されスリット溝104aに挿通される糸係り部101bとから成る。そして、糸係止部材101は、直線状に形成された連結棒108に所定の送りピッチPTで連結片109を介して連結された糸係止部材ユニット110の状態で、挿入針104に対して当該挿入針104の針軸芯HJと直交する方向から移送される。また、糸係止部材ユニット110では、抜け止め部101aが針軸芯HJに対して平行に配置され、糸係り部101bには、糸107が挿通されている。
【0007】
そのため、糸係止部材101を連結棒108から切り離して挿入針104に挿入した後、連結棒108に連結された次の糸係止部材101を挿入針104の針軸芯HJの位置に精度よく移送する必要がある。この移送方法として、例えば、図16に示すように、連結片109と係合する複数の係止爪111aが形成された歯車状の送り歯111を備え、当該送り歯111を所定の送りピッチPTに相当する回転角で、軸部111bを中心に回転させる方法が考えられる。
【0008】
ところが、上記歯車状の送り歯111の場合、1つの係止爪111aが1つの連結片109と係合して、糸係止部材ユニット110全体を移送させるので、係止爪111aが連結片109から外れて、糸係止部材ユニット110の送り不良を生じる可能性があった。特に、号口生産において、生産性を高めるため、多くの糸係止部材101を連結した糸係止部材ユニット110を高速で移送する場合、移送時の負荷が高くなり、係止爪111aが連結片109から一層外れ易くなる。そして、送り不良によってステッチ模様SMに欠損(目飛び)が生じてしまうと、そのステッチ加飾部品120を廃棄せざるを得なくなり、大きな損失となる。そのため、複数の糸係止部材101が連結された糸係止部材ユニット110の送り不良を低減させることが求められている。
【0009】
また、上記ステッチ加飾部品120では、ステッチ模様SMの縫い目毎に糸係止部材101を基材102と表皮材103との間に挿入する。そのため、ステッチ模様SMの全長分の縫い目に対応できるように、多くの糸係止部材101を必要とする。しかし、糸係止部材101を連結した糸係止部材ユニット110の長さは、ステッチ加飾部品の縫製装置100に装着可能な大きさに制限されるため、ステッチ加飾部品120の縫製途中に、新たな糸係止部材ユニット110を装着することが必要となる。そのため、ステッチ加飾部品の縫製装置100に対する糸係止部材ユニット110の装着が、簡単かつ迅速にでき、糸係止部材ユニット110の補充に伴う停止時間を短縮して、ステッチ加飾部品120の縫製作業の生産性を高めることが求められている。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、糸を挿通した糸係止部材を基材と表皮材との間に挿入して表皮材の表面にステッチ模様を縫製するステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法において、多数の糸係止部材が連結された糸係止部材ユニットの送り不良を低減でき、糸係止部材ユニットの補充に伴う停止時間を短縮して、縫製作業の生産性を高めることができるステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法は、次のような構成を有している。
(1)糸を挿通した糸係止部材を上下動可能に保持する挿入針と、当該挿入針の先端部から前記糸係止部材を押し出す押出しピンと、前記挿入針及び前記押出しピンを進退させる駆動機構とを備え、
前記糸係止部材が直線状に形成された連結棒に所定の送りピッチで連結片を介して連結された糸係止部材ユニットを送り方向へ移送可能に装着し、
前記糸係止部材ユニットの先頭に位置し前記挿入針に保持した糸係止部材を、前記押出しピンが基材と表皮材との間に挿入して、前記表皮材の表面にステッチ模様を連続して縫製するステッチ加飾部品の縫製装置であって、
複数の前記連結片と同時に係合する複数の送り爪を有して前記糸係止部材ユニットを送り方向へ前記送りピッチだけ移送するユニット送り装置と、前記ユニット送り装置に供給する前記糸係止部材ユニットを移動可能であり直線状に保持するユニット保持装置とを備え、
前記ユニット保持装置は、複数備え、前記糸係止部材ユニットを保持した状態で前記縫製装置の基台に対して着脱可能に形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、複数の連結片と同時に係合する複数の送り爪を有して糸係止部材ユニットを送り方向へ送りピッチだけ移送するユニット送り装置と、ユニット送り装置に供給される糸係止部材ユニットを移動可能であり直線状に保持するユニット保持装置とを備えたので、多くの糸係止部材を連結した糸係止部材ユニットを高速で移送する場合でも、糸係止部材ユニットの垂れ下がりを防止しつつ、1つ1つの送り爪に対して均等な負荷を掛けることができる。そのため、送り爪が連結片から外れにくくなり、糸係止部材ユニットを精度よく安定して移送できる。その結果、挿入針に対する糸係止部材の送り不良を大幅に低減できる。
【0013】
また、ユニット保持装置は、複数備え、糸係止部材ユニットを保持した状態で縫製装置の基台に対して着脱可能に形成されているので、糸係止部材ユニットを保持した一方のユニット保持装置を基台に装着し、縫製装置が縫製作業の稼働中に、縫製装置の基台に装着されていない他方のユニット保持装置に、新たな糸係止部材ユニットを予め保持させておくことができる。そのため、縫製装置の稼働中に糸係止部材ユニットの糸係止部材を全て使用し終わったら、縫製装置を停止させ、新たな糸係止部材ユニットを保持した他方のユニット保持装置を、縫製装置の基台に簡単且つ迅速に装着できる。その結果、ステッチ加飾部品の縫製装置における糸係止部材ユニットの補充に伴う停止時間を短縮して、ステッチ加飾部品の縫製作業の生産性を高めることができる。
【0014】
よって、本発明によれば、糸を挿通した糸係止部材を基材と表皮材との間に挿入して表皮材の表面にステッチ模様を縫製するステッチ加飾部品の縫製装置において、多数の糸係止部材が連結された糸係止部材ユニットの送り不良を低減でき、糸係止部材ユニットの補充に伴う停止時間を短縮して、縫製作業の生産性を高めることができるステッチ加飾部品の縫製装置を提供することができる。
【0015】
(2)(1)に記載されたステッチ加飾部品の縫製装置において、
前記ユニット送り装置には、前記送り爪が直線状に複数配列され送り方向へ往復移動する送り歯と、前記送り爪と対向して形成された固定爪が直線状に複数配列され前記基台に固定された固定歯とを、前記ユニット保持装置と隣接した位置に備え、
前記送り爪には、前記連結片の送り方向後端部に当接する立壁部と、前記連結片の上端部に当接し前記立壁部の上端から送り方向前方に配置された次の送り爪の立壁部の下端まで延設された傾斜部とを有し、
前記固定爪には、前記連結片の送り方向後端部に当接する立壁部と、前記連結片の下端部に当接し前記立壁部の下端から送り方向前方に配置された次の固定爪の立壁部の上端まで延設された傾斜部とを有していることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、ユニット送り装置には、送り爪が直線状に複数配列され送り方向へ往復移動する送り歯と、送り爪と対向して形成された固定爪が直線状に複数配列され基台に固定された固定歯とを、ユニット保持装置と隣接した位置に備え、送り爪には、連結片の送り方向後端部に当接する立壁部と、連結片の上端部に当接し立壁部の上端から送り方向前方に配置された次の送り爪の立壁部の下端まで延設された傾斜部とを有し、固定爪には、連結片の送り方向後端部に当接する立壁部と、連結片の下端部に当接し立壁部の下端から送り方向前方に配置された次の固定爪の立壁部の上端まで延設された傾斜部とを有しているので、送り歯が後退位置から前進位置へ移動する際、送り爪の傾斜部がユニット保持装置から供給される糸係止部材ユニットの連結片の上端部を上方から規制しながら、送り爪の立壁部が連結片の送り方向後端部を送り方向前方へ押し出すことによって、連結片の下端部が固定爪の傾斜部に案内されて、連結片は送り方向斜め前上方へ移動する。そして、送り歯が前進位置に到達すると、送り爪に押された連結片は、次の固定爪の立壁部を乗り越え、下方へ移動して連結片の送り方向後端部が固定爪の立壁部と当接する。これによって、送り歯は、ユニット保持装置から供給される糸係止部材ユニットを所定の送りピッチだけ送り方向へ移送することができる。
【0017】
次に、送り歯が前進位置から後退位置へ移動する際、連結片の送り方向後端部が固定爪の立壁部と当接しているので、糸係止部材ユニットは、その位置に保持される。また、送り歯は、前進位置から後退位置へ移動する際、送り爪の傾斜部が連結片の上端部に摺接して送り方向斜め後上方へ移動する。そして、送り歯は、後退位置に到達すると、送り爪の傾斜部が連結片の上端部を乗り越えて下方へ移動し、送り爪の立壁部が連結片の送り方向後端部と当接する。これによって、送り歯は、移送した糸係止部材ユニットを固定歯に保持させ、移送した糸係止部材ユニットの位置ズレを回避しながら、後退位置に帰還することができる。その結果、糸係止部材ユニットの連結棒に所定の送りピッチで連結された糸係止部材を、より一層精度よく、確実に挿入針へ移送できる。
【0018】
(3)(1)又は(2)に記載されたステッチ加飾部品の縫製装置において、
前記駆動機構には、前記挿入針を上下動させる駆動モータを備え、
前記ユニット送り装置は、前記駆動モータの主軸部と同期して回転する駆動軸部に形成されたカム部と、当該カム部に連動して前記糸係止部材ユニットの送り方向へ進退可能に揺動するリンクアーム部とを備え、
前記送り歯は、前記リンクアーム部の一端に連結されていることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、駆動機構には、挿入針を上下動させる駆動モータを備え、ユニット送り装置は、駆動モータの主軸部と同期して回転する駆動軸部に形成されたカム部と、当該カム部に連動して糸係止部材ユニットの送り方向へ進退可能に揺動するリンクアーム部とを備え、送り歯は、リンクアーム部の一端に連結されているので、挿入針の上下動に対してカム部及びリンクアーム部を介して機械的に連動して、送り歯を糸係止部材ユニットの送り方向へ進退させることができる。そのため、駆動機構が挿入針を高速で上下動させる場合において、より一層安定して糸係止部材ユニットを送り方向へ移送でき、ステッチ模様に欠損(目飛び)が生じるのを回避して高品質のステッチ加飾部品を縫製することができる。
【0020】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載されたステッチ加飾部品の縫製装置において、
前記ユニット保持装置は、前記連結片を前記糸係止部材ユニットの送り方向へ直線状に案内するガイド溝部と、前記ガイド溝部と連通され前記連結棒を移動可能に収容する収容部とを備え、前記糸係止部材を前記ガイド溝部の外縁に沿って移動可能に前記糸係止部材ユニットを保持し、
前記ガイド溝部と前記収容部とが、前記ユニット保持装置の上下に分割された長尺状の上部材と下部材とに長手方向で連続状に形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、ユニット保持装置は、連結片を糸係止部材ユニットの送り方向へ直線状に案内するガイド溝部と、ガイド溝部と連通され連結棒を移動可能に収容する収容部とを備え、糸係止部材をガイド溝部の外縁に沿って移動可能に糸係止部材ユニットを保持しているので、多くの糸係止部材が連結された糸係止部材ユニットを安定した姿勢で送り方向へ移動可能に保持することができる。また、ガイド溝部と収容部とが、ユニット保持装置の上下に分割された長尺状の上部材と下部材とに長手方向で連続状に形成されているので、ガイド溝部と収容部とを、上部材と下部材とを上下に分割した状態で機械加工等することによって形成することができ、長尺状のユニット保持装置を簡単に形成することができる。そのため、多くの糸係止部材が連結された糸係止部材ユニットを、長尺状のユニット保持装置によって、安定した姿勢で送り方向へ移動可能に保持させることができる。その結果、ステッチ加飾部品の縫製装置における長時間の連続した縫製作業を可能とし、糸係止部材ユニットの補充頻度を低減して、ステッチ加飾部品の縫製作業の生産性を高めることができる。
【0022】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載されたステッチ加飾部品の縫製装置において、
前記ユニット保持装置は、前記基台に対して係合する係合爪と当該係合爪を90度回動させる操作部とを有するサムターン錠によって装着可能に形成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、ユニット保持装置は、基台に対して係合する係合爪と当該係合爪を略90度回動させる操作部とを有するサムターン錠によって装着可能に形成されているので、新たな糸係止部材ユニットを保持したユニット保持装置を、縫製装置の基台に簡単且つ迅速に装着できる。その結果、ステッチ加飾部品の縫製装置における糸係止部材ユニットの補充に伴う停止時間を短縮して、ステッチ加飾部品の縫製作業の生産性を高めることができる。
【0024】
(6)糸を挿通した糸係止部材を上下動可能に保持する挿入針と、当該挿入針の先端部から前記糸係止部材を押し出す押出しピンと、前記挿入針及び前記押出しピンを進退させる駆動機構と、を有する縫製装置を備え、
前記糸係止部材が直線状に形成された連結棒に所定の送りピッチで連結片を介して連結された糸係止部材ユニットを送り方向へ移送可能に装着し、
前記糸係止部材ユニットの先頭に位置し前記挿入針に保持した糸係止部材を、前記押出しピンが基材と表皮材との間に挿入して、前記表皮材の表面にステッチ模様を連続して縫製するステッチ加飾部品の縫製方法であって、
複数の前記連結片と同時に係合する複数の送り爪を有して前記糸係止部材ユニットを送り方向へ前記送りピッチだけ移送するユニット送り装置と、前記ユニット送り装置に供給する前記糸係止部材ユニットを移動可能であり直線状に保持するユニット保持装置とを備え、
前記ユニット保持装置は、複数備え、前記糸係止部材ユニットを保持した状態で前記縫製装置の基台に対して着脱可能に形成されていることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、複数の連結片と同時に係合する複数の送り爪を有して糸係止部材ユニットを送り方向へ送りピッチだけ移送するユニット送り装置と、ユニット送り装置に供給される糸係止部材ユニットを移動可能であり直線状に保持するユニット保持装置とを備えたので、多くの糸係止部材を連結した糸係止部材ユニットを高速で移送する場合でも、糸係止部材ユニットの垂れ下がりを防止しつつ、1つ1つの送り爪に対して均等な負荷を掛けることができる。そのため、送り爪が連結片から外れにくくなり、糸係止部材ユニットを精度よく安定して移送できる。その結果、挿入針に対する糸係止部材の送り不良を大幅に低減できる。
【0026】
また、ユニット保持装置は、複数備え、糸係止部材ユニットを保持した状態で縫製装置の基台に対して着脱可能に形成されているので、糸係止部材ユニットを保持した一方のユニット保持装置を基台に装着し、縫製装置が縫製作業の稼働中に、縫製装置の基台に装着されていない他方のユニット保持装置に、新たな糸係止部材ユニットを予め保持させておくことができる。そのため、縫製装置の稼働中に糸係止部材ユニットの糸係止部材を全て使用し終わったら、縫製装置を停止させ、新たな糸係止部材ユニットを保持した他方のユニット保持装置を、縫製装置の基台に簡単且つ迅速に装着できる。その結果、ステッチ加飾部品の縫製方法における糸係止部材ユニットの補充に伴う停止時間を短縮して、ステッチ加飾部品の縫製作業の生産性を高めることができる。
【0027】
よって、本発明によれば、糸を挿通した糸係止部材を基材と表皮材との間に挿入して表皮材の表面にステッチ模様を縫製するステッチ加飾部品の縫製方法において、多数の糸係止部材が連結された糸係止部材ユニットの送り不良を低減でき、糸係止部材ユニットの補充に伴う停止時間を短縮して、縫製作業の生産性を高めることができるステッチ加飾部品の縫製方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、糸を挿通した糸係止部材を基材と表皮材との間に挿入して表皮材の表面にステッチ模様を縫製するステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法において、多数の糸係止部材が連結された糸係止部材ユニットの送り不良を低減でき、糸係止部材ユニットの補充に伴う停止時間を短縮して、縫製作業の生産性を高めることができるステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法によって縫製したステッチ加飾部品の概略斜視図である。
図2】本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製途中のステッチ加飾部品の概略部分断面図である。
図3図2に示す縫製装置におけるA部の斜視概略図である。
図4図3に示すB矢視図である。
図5図4に示すC矢視図である。
図6図5に示すD-D断面図である。
図7図5に示すE-E断面図である。
図8図3に示すユニット送り装置及びユニット保持装置の全体構成図である。
図9図8に示すユニット送り装置における動作の概念図であって、(A)は送り歯が後退位置にて連結片と係合した状態の概念図を示し、(B)は送り歯が後退位置から前進位置へ移動中の概念図を示し、(C)は送り歯が前進位置へ到達した時の概念図を示す。
図10図8に示すユニット送り装置における動作の概念図であって、(A)は送り歯が前進位置にて連結片と係合した状態の概念図を示し、(B)は送り歯が前進位置から後退位置へ移動中の概念図を示し、(C)は送り歯が後退位置へ到達した時の概念図を示す。
図11図8に示すユニット送り装置に装着するユニット保持装置の概略斜視図であって、(A)は糸係止部材ユニットを保持した状態のユニット保持装置を表す概略斜視図を示し、(B)は(A)に示すF部の詳細斜視図を示す。
図12図11に示すユニット保持装置における変形例を表す図面であって、(A)は分割された上部材の側面図を示し、(B)は(A)に示すG-G断面図を示す。
図13図2に示す縫製装置の挿入針と糸戻し装置の糸戻し部とユニット送り装置の送り歯との相関関係を表す動作線図である。
図14】特許文献1に記載されたステッチ加飾部品の縫製装置の要部断面図であって、(a)は挿入針を縫い目の位置に挿入する前の断面図を示し、(b)は押出しピンを前進させて糸係止部材を表皮材内に押し出す断面図を示す。
図15図14に記載されたステッチ加飾部品の縫製装置において、糸係止部材ユニットと挿入針との配置関係を表わす概略斜視図である。
図16図15に記載された糸係止部材ユニットの送り手段における一例を表す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法によって縫製したステッチ加飾部品の構成及び作用を説明する。次に、本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法の構成及び作用について詳細に説明する。
【0031】
<本ステッチ加飾部品>
まず、本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法によって縫製したステッチ加飾部品の構成及び作用を、図1図2を用いて説明する。図1に、本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法によって縫製したステッチ加飾部品の概略斜視図を示す。図2に、本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製途中のステッチ加飾部品の概略部分断面図を示す。
【0032】
図1図2に示すように、本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法によって縫製したステッチ加飾部品SKBは、基材KZと、基材KZの表面KZ1に接着された表皮材HZとを備え、表皮材HZの表面HZ1側から挿入した糸S1によって表皮材HZの表面側に形成したステッチ模様SMを有するステッチ加飾部品SKBである。また、ステッチ模様SMを形成する糸S1は、ステッチ模様SMの縫い目S2の位置で、基材KZと表皮材HZとの間に挿入された糸係止部材1によって、係止されている。
【0033】
上記構成によって、基材KZの裏面KZ2側における補強リブKZ3等に影響されずに、表皮材HZの表面HZ1側にステッチ模様SMを形成することができる。すなわち、ステッチ模様SMの縫い目S2の位置で糸S1を係止する糸係止部材1は、基材KZと表皮材HZとの間に挿入されているので、基材KZの裏面KZ2側まで糸S1を挿通させる必要がなく、基材KZの裏面KZ2側に、例えば、補強リブKZ3が形成されている場合においても、補強リブKZ3の上方又は補強リブKZ3に隣接した位置にも、ステッチ模様SMを容易に形成することができる。
【0034】
ここでは、本ステッチ加飾部品SKBは、例えば、車両の運転席及び助手席の前方に配置するインストルメントパネルに適用されるが、必ずしもこれに限る必要はなく、様々な内装部品等に適用できる。また、本ステッチ加飾部品SKBは、所要の形状に形成された硬質の合成樹脂からなる基材KZと、基材KZの表面KZ1に接着された軟質の表皮材HZとから構成されている。基材KZは、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂を金型に射出成形することで形成する。
【0035】
また、表皮材HZは、例えば、真空成形によって基材KZに接着することができる。表皮材HZは、表面側の延性に優れた表皮HZ11と基材側の発泡層HZ12とで構成されている。表皮HZ11には、高級感やソフト感を醸すため、革調のシボ模様が形成されている。表皮HZ11は、例えば、0.5~0.8mm程度の厚さを有するオレフィン系エラストマ(TPO)樹脂で形成されている。発泡層HZ12は、例えば、3~4mm程度の厚さを有するポリプロピレンフォーム(PPF)樹脂で形成されている。
【0036】
また、表皮材HZの表面HZ1には、例えば、車両左右方向に延びるステッチ模様SMが形成されている。ステッチ模様SMの糸S1は、例えば、外径が0.5~0.8mm程度の合成繊維等で形成されている。また、糸係止部材1は、ステッチ模様SMの縫い目S2の位置で糸S1を係止する部材であって、例えば、強度上優れたポリアミド系合成樹脂(例えば、ナイロン(登録商標)など)、又はコスト上優れたポリプロピレン(PP)樹脂等で形成されている。糸係止部材1は、基材KZの表面KZ1に当接し、表皮材HZの発泡層HZ12によって周囲が覆われている。
【0037】
また、糸係止部材1は、基材KZに沿って延びる抜け止め部11と、抜け止め部11の反基材側に形成され糸S1を係止する糸係り部12とから成る。抜け止め部11は、棒状体(例えば、円柱体)でその長手方向の大きさが、糸係り部12より大きく形成されている。そのため、糸係り部12に係止した糸S1に外力が掛かった場合にも、抜け止め部11を覆う表皮材HZによって外力を受け止め、糸係止部材1が表皮材HZから抜けるのを回避できる。なお、糸係り部12は、糸挿通孔121に係止した糸S1から掛かる負荷が、抜け止め部11の長手方向における両端部に略均等に作用するよう、抜け止め部11の長手方向の中央部に形成されていることが好ましい。
【0038】
また、糸係り部12は、底辺が抜け止め部11に連結された略三角形又は略半円形の板状体に形成され、頂点近傍に糸S1が挿通される糸挿通孔121が形成されている。糸係り部12の糸挿通孔121は、円形状又は楕円形状、長円形状等に形成されている。なお、糸挿通孔121を、楕円形状又は長円形状に形成することによって、糸係止部材ユニット20を形成する成形金型において、糸挿通孔121を形成するスライド型の強度を確保し易いと共に、高速で縫製する場合でも、糸S1に対する摩擦力を低減でき、スムーズな縫製作業が可能となる。
【0039】
ここでは、基材KZの表面KZ1に、ステッチ模様SMの縫製方向(矢印Fの方向)に沿って凹溝KZ12が形成され、抜け止め部11は、凹溝KZ12内に縫製方向Fに沿って配置されているが、凹溝KZ12は、必ずしも必要としない。また、ステッチ模様SMの縫い目ピッチSPは、任意の長さに設定できるが、縫い目ピッチSPを抜け止め部11の長さより短く設定した場合には、隣接する抜け止め部11同士を縫製方向Fでラップさせて略平行に配置することが好ましい。
【0040】
<ステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法>
次に、本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法について、図2図13を用いて詳細に説明する。図2に、本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製途中のステッチ加飾部品の概略部分断面図を示す。図3に、図2に示す縫製装置におけるA部の斜視概略図を示す。図4に、図3に示すB矢視図を示す。図5に、図4に示すC矢視図を示す。図6に、図5に示すD-D断面図を示す。図7に、図5に示すE-E断面図を示す。図8に、図3に示すユニット送り装置及びユニット保持装置の全体構成図を示す。図9に、図8に示すユニット送り装置における動作の概念図を示し、図9(A)に、送り歯が後退位置にて連結片と係合した状態の概念図を示し、図9(B)に、送り歯が後退位置から前進位置へ移動中の概念図を示し、図9(C)に、送り歯が前進位置へ到達した時の概念図を示す。図10に、図8に示すユニット送り装置における動作の概念図を示し、図10(A)に、送り歯が前進位置にて連結片と係合した状態の概念図を示し、図10(B)に、送り歯が前進位置から後退位置へ移動中の概念図を示し、図10(C)に、送り歯が後退位置へ到達した時の概念図を示す。図11に、図8に示すユニット送り装置に装着するユニット保持装置の概略斜視図を示し、図11(A)に、糸係止部材ユニットを保持した状態のユニット保持装置を表す概略斜視図を示し、図11(B)に、図11(A)に示すF部の詳細斜視図を示す。図12に、図11に示すユニット保持装置における変形例を表す図面を示し、図12(A)に、分割された上部材の側面図を示し、図12(B)に、図12(A)に示すG-G断面図を示す。図13に、図2に示す縫製装置の挿入針と糸戻し装置の糸戻し部とユニット送り装置の送り歯との相関関係を表す動作線図を示す。
【0041】
(ステッチ加飾部品の縫製装置)
図2図13に示すように、本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置10は、糸S1を挿通した糸係止部材1を上下動可能に保持する挿入針2と、当該挿入針2の先端部21から糸係止部材1を押し出す押出しピン3と、挿入針2及び押出しピン3を進退させる駆動機構4とを備え、糸係止部材1が直線状に形成された連結棒14に所定の送りピッチPTで連結片13を介して連結された糸係止部材ユニット20を送り方向H3へ移送可能に装着し、糸係止部材ユニット20の先頭に位置し挿入針2に保持した糸係止部材1aを、押出しピン3が基材KZと表皮材HZとの間に挿入して、表皮材HZの表面HZ1にステッチ模様SMを連続して縫製するステッチ加飾部品の縫製装置10である。
【0042】
また、本ステッチ加飾部品の縫製装置10では、複数の連結片13と同時に係合する複数の送り爪71を有して糸係止部材ユニット20を送り方向H3へ送りピッチPTだけ移送するユニット送り装置7と、ユニット送り装置7に供給される糸係止部材ユニット20を移動可能であり直線状に保持するユニット保持装置8とを備えている。
【0043】
これによって、多くの糸係止部材1を連結した糸係止部材ユニット20を高速で移送する場合でも、糸係止部材ユニット20の垂れ下がりを防止しつつ、1つ1つの送り爪71に対して均等な負荷を掛けることができる。そのため、送り爪71が連結片13から外れにくくなり、糸係止部材ユニット20を精度よく安定して移送できる。その結果、挿入針2に対する糸係止部材1の送り不良を大幅に低減できる。
【0044】
また、ユニット保持装置8は、複数備え、糸係止部材ユニット20を保持した状態で縫製装置10の基台6に対して着脱可能に形成されている。したがって、糸係止部材ユニット20を保持した一方のユニット保持装置8を基台6に装着し、縫製装置10が縫製作業の稼働中に、縫製装置10の基台6に装着されていない他方のユニット保持装置8に、新たな糸係止部材ユニット20を予め保持させておくことができる。そのため、縫製装置10の稼働中に糸係止部材ユニット20の糸係止部材1を全て使用し終わったら、縫製装置10を停止させ、新たな糸係止部材ユニット20を保持した他方のユニット保持装置8を、縫製装置10の基台6に簡単且つ迅速に装着できる。その結果、ステッチ加飾部品の縫製装置10における糸係止部材ユニット20の補充に伴う停止時間を短縮して、ステッチ加飾部品SKBの縫製作業の生産性を高めることができる。
【0045】
よって、本ステッチ加飾部品の縫製装置10によれば、糸S1を挿通した糸係止部材1を基材KZと表皮材HZとの間に挿入して表皮材HZの表面HZ1にステッチ模様SMを縫製するステッチ加飾部品の縫製装置10において、多数の糸係止部材1が連結された糸係止部材ユニット20の送り不良を低減でき、糸係止部材ユニット20の補充に伴う停止時間を短縮して、縫製作業の生産性を高めることができる。
【0046】
なお、図2図7に示すように、挿入針2は、針軸方向H1にスリット溝22が形成された中空針であって、糸係止部材1は、挿入針2の中空部2T内に挿入される棒状の抜け止め部11と当該抜け止め部11の中央部に連結されスリット溝22に挿通される糸係り部12とから成り、直線状に形成された連結棒14に所定の送りピッチPTで連結片13を介して連結された糸係止部材ユニット20の状態で、挿入針2に対して当該挿入針2の針軸方向H1と直交する方向(送り方向H3)から移送される。
【0047】
そして、糸係り部12に糸S1を係止した送り方向先頭の糸係止部材1aを連結棒14から切り離して保持した状態の挿入針2の先端部21を、所定の縫い目S2の位置で、基材KZの表面KZ1に接着された表皮材HZの表面HZ1側から基材KZと表皮材HZとの間に挿入した後又は挿入すると同時に、押出しピン3を前進させて挿入針2の先端部21から糸係止部材1を表皮材HZ内に押し出して、抜け止め部11を基材KZと表皮材HZとの間に挿入し、糸係り部12に係止した糸S1によって表皮材HZの表面HZ1にステッチ模様SMを連続して縫製する。
【0048】
また、糸係止部材ユニット20では、各抜け止め部11が略矩形状断面に形成された連結片13を介して連結棒14に連結されている。また、各抜け止め部11は、連結棒14に対して直交する針軸方向H1へ向いて平行に配置されている。連結片13は、送り方向後端部131が針軸方向H1へ向いて平行に形成され、上端部132と下端部133とが送り方向H3と平行に形成され、糸係り部12の反対側で抜け止め部11における長手方向の中央部に連結されている。連結片13の抜け止め部11に対する接続部13aは、抜け止め部11が押出しピン3によって押圧されたとき、切り離しが簡単に行えるように薄肉化されている。
【0049】
また、挿入針2及び押出しピン3は、駆動機構4の針保持部412に装着され、連結棒14から切り離される送り方向先頭の糸係止部材1aの抜け止め部11と同一位置の針軸芯HJ上に、進退可能に配置されている。針保持部412は、駆動機構4の主軸部41とクランクアーム部411を介して連結され、主軸部41の回転に同期して上下動する。挿入針2は、先端部21が傾斜状にカットされた略円筒状の中空針である。押出しピン3は、挿入針2の中空部2T内で上下動する。挿入針2には、先端部21から基端部23まで針軸方向H1に沿ってスリット溝22が形成されている。挿入針2の内径は、円柱体に形成された抜け止め部11の外径と略同一径に形成されている。また、スリット溝22の溝幅は、板状に形成された糸係り部12の板厚と略同一幅に形成されている。挿入針2の基端部23には、スリット溝22と直交する方向(糸係止部材1の送り方向H3)に、送り方向先頭の糸係止部材1aの抜け止め部11の下部を挿入可能に形成された挿入溝231が形成されている。縫製装置10の基台6には、挿入針2の針軸芯HJ上に移送した送り方向先頭の糸係止部材1aの上部1asと当接するストッパブロック63を備えている。
【0050】
また、連結棒14を送り方向H3に移動させて、挿入針2の基端部23に挿入溝231から抜け止め部11の下部を挿入後、押出しピン3を針軸方向H2へ移動させると、連結片13の接続部13aが切り離されて、挿入針2の中空部2T内に抜け止め部11が挿入され、スリット溝22内に糸係り部12が挿入される。この状態で、抜け止め部11の上端面と押出しピン3とが当接し、糸係止部材1が挿入針2に保持される。また、糸係止部材1が挿入針2に保持された状態では、糸係り部12の糸挿通孔121は、挿入針2の外周側へ突出している。
【0051】
また、図3図10に示すように、本ステッチ加飾部品の縫製装置10において、ユニット送り装置7には、送り爪71が直線状に複数配列され送り方向H3へ往復移動する送り歯71Hと、送り爪71と対向して形成された固定爪72が直線状に複数配列され基台6に固定された固定歯72Hとを、ユニット保持装置8と隣接した位置に備え、送り爪71には、連結片13の送り方向後端部131に当接する立壁部71aと、連結片13の上端部132に当接し立壁部71aの上端から送り方向前方に配置された次の送り爪71の立壁部71aの下端まで延設された傾斜部71bとを有し、固定爪72には、連結片13の送り方向後端部131に当接する立壁部72aと、連結片13の下端部133に当接し立壁部72aの下端から送り方向前方に配置された次の固定爪72の立壁部72aの上端まで延設された傾斜部72bとを有していることが好ましい。
【0052】
この場合、送り歯71Hが後退位置X1から前進位置X2へ移動する際、送り爪71の傾斜部71bがユニット保持装置8から供給される糸係止部材ユニット20の連結片13の上端部132を上方から規制しながら、送り爪71の立壁部71aが連結片13の送り方向後端部131を送り方向前方へ押し出すことによって、連結片13の下端部133が固定爪72の傾斜部72bに案内されて、連結片13は送り方向斜め前上方(H31の方向)へ移動する。そして、送り歯71Hが前進位置X2に到達すると、送り爪71に押された連結片13は、次の固定爪72の立壁部72aを乗り越え、下方(H32の方向)へ移動して連結片13の送り方向後端部131が固定爪72の立壁部72aと当接する。これによって、送り歯71Hは、ユニット保持装置8から供給される糸係止部材ユニット20を所定の送りピッチPTだけ送り方向へ移送することができる。
【0053】
次に、送り歯71Hが前進位置X2から後退位置X1へ移動する際、連結片13の送り方向後端部131が固定爪72の立壁部72aと当接しているので、糸係止部材ユニット20は、その位置に保持される。また、送り歯71Hは、前進位置X2から後退位置X1へ移動する際、送り爪71の傾斜部71bが連結片13の上端部132に摺接して送り方向斜め後上方(H33の方向)へ移動する。そして、送り歯71Hは、後退位置X1に到達すると、送り爪71の傾斜部71bが連結片13の上端部132を乗り越えて下方(H34の方向)へ移動し、送り爪71の立壁部71aが連結片13の送り方向後端部131と当接する。これによって、送り歯71Hは、移送した糸係止部材ユニット20を固定歯72Hに保持させ、移送した糸係止部材ユニット20の位置ズレを回避しながら、後退位置X1に帰還することができる。その結果、糸係止部材ユニット20の連結棒14に所定の送りピッチPTで連結された糸係止部材1を、より一層精度よく、確実に挿入針2へ移送できる。
【0054】
なお、連結棒14の一方の送り方向端部14Tに円柱状の係合ピン141が形成され、他方の送り方向端部14Sに係合ピン141を下方から挿入する係合孔142が形成されている。また、係合ピン141と係合孔142とによって連結された複数の糸係止部材ユニット20では、各糸係止部材1が所定の送りピッチPTで連結されている。これによって、1つの糸係止部材ユニット20に連結する糸係止部材1の個数を少量に制限しつつ、連続的に挿入針2に移送する糸係止部材1の個数を増加させることができる。そして、1つの糸係止部材ユニット20に連結する糸係止部材1の個数を少量に制限することによって、糸係止部材ユニット20を形成する成形金型の強度を確保しつつ小型化することができ、型費の低減を図ることができる。また、連続的に挿入針2に移送する糸係止部材1の個数を増加させることによって、ユニット保持装置8を縫製装置10に着脱する周期を増加でき、縫製装置10の稼働率を向上させて、縫製作業の生産性を高めることができる。
【0055】
また、図2図8に示すように、本ステッチ加飾部品の縫製装置10において、駆動機構4には、挿入針2を上下動させる駆動モータ4Mを備え、ユニット送り装置7は、駆動モータ4Mの主軸部41と同期して回転する駆動軸部42に形成されたカム部77と、当該カム部77に連動して糸係止部材ユニット20の送り方向H3へ進退可能に揺動するリンクアーム部73とを備え、送り歯71Hは、リンクアーム部73の一端に連結されていることが好ましい。
【0056】
この場合、挿入針2の上下動に対してカム部77及びリンクアーム部73を介して機械的に連動して、送り歯71Hを糸係止部材ユニット20の送り方向H3へ進退させることができる。そのため、駆動機構4が挿入針2を高速で上下動させる場合において、より一層安定して糸係止部材ユニット20を送り方向へ移送でき、ステッチ模様SMに欠損(目飛び)が生じるのを回避して高品質のステッチ加飾部品SKBを縫製することができる。
【0057】
ここでは、ユニット送り装置7は、カム部77と、カム部77によって作動する受動アーム部76と、受動アーム部76と後端部733が連結されて前端部731が送り方向に進退するリンクアーム部73と、リンクアーム部73の前端側に固定された送り歯71とを備えて、以下のように作動するように構成されている。
【0058】
すなわち、挿入針2を上下動させる駆動モータ4Mの出力軸(主軸部41)にベルト等で連結された駆動軸部42には、円盤面に凸部771が形成された円盤状のカム部77が連結されている。また、受動アーム部76は、上端部のカムフォロワ761がカム部77の凸部771に当接して、中間部の支持部762を支点に下端部763が送り方向H3へ回動する。リンクアーム部73は、後端部733が受動アーム部76の下端部763と連結ピンを介して連結されている。また、リンクアーム部73の後端部733には、後退方向へ付勢する戻しバネ75が装着されている。また、リンクアーム部73の前端側には、送り歯71Hが固定されている。リンクアーム部73の前端部731には、下方へ付勢する押えバネ74が装着され、上下方向の長孔732が形成されている。そして、当該長孔732には、補助アーム61部の上端部に形成された支持ピン612が挿通されている。補助アーム61部の下端部は、基台6に形成された軸部611に回動可能に支持されている。
【0059】
これによって、駆動モータ4Mが回転して挿入針2が上下動する動作に連動して、駆動軸部42に連結された円盤状のカム部77が回転し、カム部77の凸部771が受動アーム部76を送り方向H3へ揺動させ、受動アーム部76に連結されたリンクアーム部73を送り方向H3へ進退させ、送り歯71Hを糸係止部材ユニット20の送り方向H3へ進退させることができる。
【0060】
ここで、図3図4図8図10に示すように、送り歯71Hの送り爪71と固定歯72Hの固定爪72は、前述のように、立壁部71a、72aと傾斜部71b、72bとを有して、それぞれ鋸刃状に形成されているので、カムフォロワ761がカム部77の凸部771に当接して、送り歯71Hが後退位置X1から前進位置X2へ移動するときには、送り歯71Hの送り爪71が連結片13と係合して、糸係止部材ユニット20を送りピッチPTだけ前進させる。また、カムフォロワ761がカム部77の凸部771から離間し、戻しバネ75に引っ張られて、送り歯71Hが前進位置X2から後退位置X1へ移動するときには、固定歯72Hの固定爪72が連結片13と係合した状態であるため、糸係止部材ユニット20はその位置に保持される。そして、送り歯71Hの送り爪71は、その傾斜部71bが連結片13の上端部132に摺接して上方へ移動しながら後退した後、押えバネ74によって下方へ押圧されて、後退位置X1にて次の連結片13と係合する。
【0061】
これによって、挿入針2の上下動に対してカム部77及びリンクアーム部73を介して機械的に連動させ、送り歯71Hを糸係止部材ユニット20の送り方向H3へ進退させることができる。そのため、駆動機構4が挿入針2を高速で上下動させる場合において、より一層安定して糸係止部材1を挿入針2に移送でき、ステッチ模様SMの欠損(目飛び)を生じさせることなく、高品質のステッチ加飾部品SKBを縫製することができる。
【0062】
また、図3図7図8図11に示すように、本ステッチ加飾部品の縫製装置10において、ユニット保持装置8は、連結片13を糸係止部材ユニット20の送り方向H3へ直線状に案内するガイド溝部83と、ガイド溝部83と連通され連結棒14を移動可能に収容する収容部84とを備え、糸係止部材1をガイド溝部83の外縁831に沿って移動可能に糸係止部材ユニット20を保持し、ガイド溝部83と収容部84とが、ユニット保持装置8の上下に分割された長尺状の上部材82と下部材81とに長手方向で連続状に形成されていることが好ましい。
【0063】
この場合、ガイド溝部83が連結片13を糸係止部材ユニット20の送り方向H3へ直線状に案内し、ガイド溝部83の外縁831に沿って糸係止部材1を移動させることによって、多くの糸係止部材1が連結された糸係止部材ユニット20を安定した姿勢で送り方向H3へ移動可能に保持することができる。また、ガイド溝部83と収容部84とが、ユニット保持装置8の上下に分割された長尺状の上部材82と下部材81とに長手方向で連続状に形成されたことによって、ガイド溝部83と収容部84とを、上部材82と下部材81とを上下に分割した状態で機械加工等することができ、長尺状のユニット保持装置8を簡単に形成することができる。
【0064】
そのため、多くの糸係止部材1が連結された糸係止部材ユニット20を、長尺状のユニット保持装置8によって、安定した姿勢で送り方向H3へ移動可能に保持させることができる。その結果、ステッチ加飾部品の縫製装置10における長時間の連続した縫製作業を可能とし、糸係止部材ユニット20の補充頻度を低減して、ステッチ加飾部品SKBの縫製作業の生産性を高めることができる。
【0065】
ここでは、図7図8図11に示すように、ユニット保持装置8は、上下に分割された長尺状の上部材82と下部材81とによって略直方体状に構成され、上部材82と下部材81の長手方向に沿って延びる側縁部には、ガイド溝部83の溝幅で略平行に離間する凸壁部821、811が対向して形成されている。凸壁部821、811は、ユニット保持装置8の後端側にてガイド溝部83の溝幅が徐々に拡大するように形成されている。そのため、糸係止部材ユニット20の連結片13と連結棒14とをユニット保持装置8の後端側からガイド溝部83と収容部84とに簡単に挿入して、糸係止部材ユニット20をユニット保持装置8に速やかに保持させることができる。
【0066】
また、上部材82と下部材81の中央側には、収容部84を構成する凹壁部822、812が対向して形成されている。上部材82と下部材81のガイド溝部83の反対側には、凹壁部822、812同士が当接する当接面86が形成され、当該当接面86にて上部材82と下部材81とがネジ締結されている。また、下部材81の長手方向の前端部と後端部には、基台6に対して締結具85にて締結する締結孔851、813が形成されている。また、基台6には、下部材81の下端部を支持する支持ピン62が複数(2つ)固定されている。
【0067】
なお、図12に示すように、ユニット保持装置8の変形例として、上部材82Bは、基台6に対して係合する係合爪851Bと係合爪851Bを略90度回動させる操作部852Bとを有するサムターン錠85Bによって装着可能に形成されていても良い。この場合、上部材82Bの後端側に上方へ突出する鍔部823Bを形成し、当該鍔部823Bにサムターン錠85Bの取付座824Bを形成しても良い。また、上部材82Bの基台6と当接する当接面には、位置決めキーを挿入するキー溝825Bを形成しても良い。これによって、新たな糸係止部材ユニット20を保持したユニット保持装置8Bを、縫製装置10の基台6に簡単且つ迅速に装着できる。その結果、ステッチ加飾部品の縫製装置10における糸係止部材ユニット20の補充に伴う停止時間を短縮して、ステッチ加飾部品SKBの縫製作業の生産性をより一層高めることができる。
【0068】
また、図2図13に示すように、連結棒14から切り離された送り方向先頭の糸係止部材1aを表皮材HZ内に押し出した後、挿入針2を針上昇点P1へ上昇させる間に、糸S1を引き戻して糸係り部12を縫い目S2の位置に移動させる糸引き戻し装置5を備えていることが好ましい。この場合、抜け止め部11と挿入針2の先端部21との干渉を回避しながら、糸係り部12を縫い目S2の位置に移動させることよって、糸係止部材1を基材KZと表皮材HZとの間に挿入させる際の糸S1の弛みを除去できる。
【0069】
なお、糸引き戻し装置5は、糸駒(図示しない)から供給される糸S1を糸ガイド孔511に通過可能にガイドする複数の糸ガイド部51と、糸ガイド部51の間で、上下動可能に形成された糸戻し部52とを備えている。また、糸戻し部52には、糸戻し上昇点P2では糸S1が接触せずに通過する中空部521が形成されている。ここでは、糸戻し部52は、上下方向に長く形成された略長方形状の環状体に形成されている。そして、糸戻し部52は、下降するときに、下降途中から中空部521の外縁部521Gの上端が糸S1と当接して、糸S1を引き戻すように形成されている。
【0070】
これによって、糸戻し部52が下降するときに、下降途中から、中空部521の外縁部521Gが、糸ガイド孔511との間で糸S1を長手方向に引っ張ることになるが、中空部521の外縁部521G1と糸S1とが接触する時間は僅かな時間である。また、糸戻し部52の糸戻し上昇点P2では、中空部521の外縁部521Gが糸S1に対して接触しないので、外縁部521Gと糸S1との接触は、僅かな間であり、接触による負荷(引張力、摩擦力等)も少ない。したがって、糸戻し部52による糸S1に対する負荷及び接触する機会が減り、糸S1が切断される可能性を大幅に低減できる。その結果、糸S1の切断を回避しながら、縫製に伴う糸S1の弛みを除去できる。
【0071】
次に、縫製装置10における挿入針2と糸戻し部52と送り歯71Hとに関する、具体的な動作方法を、図13を用いて説明する。図2に示す駆動機構4の主軸部41の回転動作に伴って、挿入針2が実線で示す動作軌跡(サイン曲線)に従って上下動し、糸戻し部52が点線で示す動作軌跡(サイン曲線)に従って上下動する。また、挿入針2及び糸戻し部52の動作に同期して、送り歯71Hが前進位置X2と後退位置X1との間を進退する。図13では、横軸が駆動モータ4Mの主軸部41の回転角を示し、縦軸が挿入針2と糸戻し部52の上下方向への昇降位置を示すと共に、送り歯71Hの前進位置X2及び後退位置X1を示す。
【0072】
ここでは、糸戻し部52による糸S1の引き戻しは、挿入針2が針下降点P4から針上昇点P1へ移動する間に行い、送り歯71Hによる糸係止部材ユニット20の移送は、糸S1の引き戻し期間RRを除き、挿入針2の下降により糸係止部材ユニット20から糸係止部材1を切り離した時から、次の糸係止部材1の切り離し時までの間に行うように構成されている。
【0073】
具体的には、駆動モータ4Mの主軸部41が回転角0度から回転開始すると、挿入針2が針上昇点P1から下降開始し、糸戻し上昇点P2付近(Q1)にて押出しピン3が送り方向先頭の糸係止部材1aを押圧して、連結棒14から分離させる。糸係止部材1aを分離した後、糸戻し部52が糸戻し上昇点P2から下降開始する。糸戻し部52が下降開始する回転角αは、挿入針2が針下降点P4に到達する回転角(180度)より数十度手前である。糸戻し部52の下降開始と略同じタイミングで、送り歯71Hが後退位置X1から前進位置X2へ移動する。そして、挿入針2が針下降点P4に到達する回転角(180度)より以前には、送り歯71Hが前進位置X2から後退位置X1へ移動する。また、挿入針2が針下降点P4に到達する回転角(180度)付近(Q2)にて、糸戻し部52は糸S1と当接する。挿入針2が針下降点P4から針上昇点P1に向けて上昇する期間中に、糸戻し部52は糸戻し下降点P3に到達し、糸戻しを完了する。糸S1の引き戻し期間RRは、挿入針2が針上昇点P1に到達する以前に終了する。なお、仮想線で示す送り歯71Hの変形例のように、糸戻し部52による糸S1の引き戻し期間RRの経過後に、送り歯71Hが後退位置X1から前進位置X2へ移動し、次に糸係止部材1を分離するまでに、送り歯71Hが前進位置X2から後退位置X1へ移動しても良い。
【0074】
その結果、挿入針2と糸戻し部52の位相の異なる上下動に対して機械的に連動して、送り歯71Hを進退させることができる。そのため、挿入針2を高速で上下動させる場合において、より一層安定して糸係止部材ユニット20の移送を連続して行うことができ、糸係止部材ユニット20の送り不良を回避しつつ、糸S1の弛みを除去して高品質のステッチ加飾部品SKBを縫製することができる。
【0075】
(ステッチ加飾部品の縫製方法)
図2図13に示すように、本実施形態に係るステッチ加飾部品SKBの縫製方法は、糸S1を挿通した糸係止部材1を上下動可能に保持する挿入針2と、当該挿入針2の先端部21から糸係止部材1を押し出す押出しピン3と、挿入針2及び押出しピン3を進退させる駆動機構4と、を有する縫製装置10を備え、糸係止部材1が直線状に形成された連結棒14に所定の送りピッチPTで連結片13を介して連結された糸係止部材ユニット20を送り方向H3へ移送可能に装着し、糸係止部材ユニット20の先頭に位置し挿入針2に保持した糸係止部材1aを、押出しピン3が基材KZと表皮材HZとの間に挿入して、表皮材HZの表面HZ1にステッチ模様SMを連続して縫製するステッチ加飾部品SKBの縫製方法である。
【0076】
また、本ステッチ加飾部品SKBの縫製方法では、複数の連結片13と同時に係合する複数の送り爪71を有して糸係止部材ユニット20を送り方向H3へ送りピッチPTだけ移送するユニット送り装置7と、ユニット送り装置7に供給される糸係止部材ユニット20を移動可能であり直線状に保持するユニット保持装置8とを備えている。
【0077】
これによって、多くの糸係止部材1を連結した糸係止部材ユニット20を高速で移送する場合でも、糸係止部材ユニット20の垂れ下がりを防止しつつ、1つ1つの送り爪71に対して均等な負荷を掛けることができる。そのため、送り爪71が連結片13から外れにくくなり、糸係止部材ユニット20を精度よく安定して移送できる。その結果、挿入針2に対する糸係止部材1の送り不良を大幅に低減できる。
【0078】
また、ユニット保持装置8は、複数備え、糸係止部材ユニット20を保持した状態で縫製装置10の基台6に対して着脱可能に形成されている。したがって、糸係止部材ユニット20を保持した一方のユニット保持装置8を基台6に装着し、縫製装置10が縫製作業の稼働中に、縫製装置10の基台6に装着されていない他方のユニット保持装置8に、新たな糸係止部材ユニット20を予め保持させておくことができる。そのため、縫製装置10の稼働中に糸係止部材ユニット20の糸係止部材1を全て使用し終わったら、縫製装置10を停止させ、新たな糸係止部材ユニット20を保持した他方のユニット保持装置8を、縫製装置10の基台6に簡単且つ迅速に装着できる。その結果、ステッチ加飾部品SKBの縫製方法において、糸係止部材ユニット20の補充に伴う停止時間を短縮して、ステッチ加飾部品SKBの縫製作業の生産性を高めることができる。
【0079】
よって、本ステッチ加飾部品SKBの縫製方法によれば、糸S1を挿通した糸係止部材1を基材KZと表皮材HZとの間に挿入して表皮材HZの表面HZ1にステッチ模様SMを縫製するステッチ加飾部品SKBの縫製方法において、多数の糸係止部材1が連結された糸係止部材ユニット20の送り不良を低減でき、糸係止部材ユニット20の補充に伴う停止時間を短縮して、縫製作業の生産性を高めることができる。なお、前述したステッチ加飾部品の縫製装置10にて説明した事項の内容は、本ステッチ加飾部品SKBの縫製方法にも適用できる。
【0080】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るステッチ加飾部品の縫製装置10によれば、複数の連結片13と同時に係合する複数の送り爪71を有して糸係止部材ユニット20を送り方向H3へ送りピッチPTだけ移送するユニット送り装置7と、ユニット送り装置7に供給される糸係止部材ユニット20を移動可能であり直線状に保持するユニット保持装置8、8Bとを備えたので、多くの糸係止部材1を連結した糸係止部材ユニット20を高速で移送する場合でも、糸係止部材ユニット20の垂れ下がりを防止しつつ、1つ1つの送り爪71に対して均等な負荷を掛けることができる。そのため、送り爪71が連結片13から外れにくくなり、糸係止部材ユニット20を精度よく安定して移送できる。その結果、挿入針2に対する糸係止部材1の送り不良を大幅に低減できる。
【0081】
また、ユニット保持装置8、8Bは、複数備え、糸係止部材ユニット20を保持した状態で縫製装置10の基台6に対して着脱可能に形成されているので、糸係止部材ユニット20を保持した一方のユニット保持装置8、8Bを基台6に装着し、縫製装置10が縫製作業の稼働中に、縫製装置10の基台6に装着されていない他方のユニット保持装置8、8Bに、新たな糸係止部材ユニット20を予め保持させておくことができる。そのため、縫製装置10の稼働中に糸係止部材ユニット20の糸係止部材1を全て使用し終わったら、縫製装置10を停止させ、新たな糸係止部材ユニット20を保持した他方のユニット保持装置8、8Bを、縫製装置10の基台6に簡単且つ迅速に装着できる。その結果、ステッチ加飾部品の縫製装置10における糸係止部材ユニット20の補充に伴う停止時間を短縮して、ステッチ加飾部品SKBの縫製作業の生産性を高めることができる。
【0082】
よって、本実施形態によれば、糸S1を挿通した糸係止部材1を基材KZと表皮材HZとの間に挿入して表皮材HZの表面HZ1にステッチ模様SMを縫製するステッチ加飾部品の縫製装置10において、多数の糸係止部材1が連結された糸係止部材ユニット20の送り不良を低減でき、糸係止部材ユニット20の補充に伴う停止時間を短縮して、縫製作業の生産性を高めることができるステッチ加飾部品の縫製装置10を提供することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、ユニット送り装置7には、送り爪71が直線状に複数配列され送り方向へ往復移動する送り歯71Hと、送り爪71と対向して形成された固定爪72が直線状に複数配列され基台6に固定された固定歯72Hとを、ユニット保持装置8、8Bと隣接した位置に備え、送り爪71には、連結片13の送り方向後端部131に当接する立壁部71aと、連結片13の上端部132に当接し立壁部71aの上端から送り方向前方に配置された次の送り爪71の立壁部71aの下端まで延設された傾斜部71bとを有し、固定爪72には、連結片13の送り方向後端部131に当接する立壁部72aと、連結片13の下端部133に当接し立壁部72aの下端から送り方向前方に配置された次の固定爪72の立壁部72aの上端まで延設された傾斜部72bとを有しているので、送り歯71Hが後退位置X1から前進位置X2へ移動する際、送り爪71の傾斜部71bがユニット保持装置8、8Bから供給される糸係止部材ユニット20の連結片13の上端部132を上方から規制しながら、送り爪71の立壁部71aが連結片13の送り方向後端部131を送り方向前方へ押し出すことによって、連結片13の下端部133が固定爪72の傾斜部72bに案内されて、連結片13は送り方向斜め前上方へ移動する。そして、送り歯71Hが前進位置X2に到達すると、送り爪71に押された連結片13は、次の固定爪72の立壁部72aを乗り越え、下方へ移動して連結片13の送り方向後端部131が固定爪72の立壁部72aと当接する。これによって、送り歯71Hは、ユニット保持装置8、8Bから供給される糸係止部材ユニット20を所定の送りピッチPTだけ送り方向へ移送することができる。
【0084】
次に、送り歯71Hが前進位置X2から後退位置X1へ移動する際、連結片13の送り方向後端部131が固定爪72の立壁部72aと当接しているので、糸係止部材ユニット20は、その位置に保持される。また、送り歯71Hは、前進位置X2から後退位置X1へ移動する際、送り爪71の傾斜部71bが連結片13の上端部132に摺接して送り方向斜め後上方へ移動する。そして、送り歯71Hは、後退位置X1に到達すると、送り爪71の傾斜部71bが連結片13の上端部132を乗り越えて下方へ移動し、送り爪71の立壁部71aが連結片13の送り方向後端部131と当接する。これによって、送り歯71Hは、移送した糸係止部材ユニット20を固定歯72Hに保持させ、移送した糸係止部材ユニット20の位置ズレを回避しながら、後退位置X1に帰還することができる。その結果、糸係止部材ユニット20の連結棒14に所定の送りピッチPTで連結された糸係止部材1を、より一層精度よく、確実に挿入針2へ移送できる。
【0085】
また、本実施形態によれば、駆動機構4には、挿入針2を上下動させる駆動モータ4Mを備え、ユニット送り装置7は、駆動モータ4Mの主軸部41と同期して回転する駆動軸部42に形成されたカム部77と、当該カム部77に連動して糸係止部材ユニット20の送り方向H3へ進退可能に揺動するリンクアーム部73とを備え、送り歯71Hは、リンクアーム部73の一端に連結されているので、挿入針2の上下動に対してカム部77及びリンクアーム部73を介して機械的に連動して、送り歯71Hを糸係止部材ユニット20の送り方向H3へ進退させることができる。そのため、駆動機構4が挿入針2を高速で上下動させる場合において、より一層安定して糸係止部材ユニット20を送り方向H3へ移送でき、ステッチ模様SMに欠損(目飛び)が生じるのを回避して高品質のステッチ加飾部品SKBを縫製することができる。
【0086】
また、本実施形態によれば、ユニット保持装置8、8Bは、連結片13を糸係止部材ユニット20の送り方向H3へ直線状に案内するガイド溝部83と、ガイド溝部83と連通され連結棒14を移動可能に収容する収容部84とを備え、糸係止部材1をガイド溝部83の外縁831に沿って移動可能に糸係止部材ユニット20を保持しているので、多くの糸係止部材1が連結された糸係止部材ユニット20を安定した姿勢で送り方向H3へ移動可能に保持することができる。また、ガイド溝部83と収容部84とが、ユニット保持装置8、8Bの上下に分割された長尺状の上部材82、82Bと下部材81とに長手方向で連続状に形成されているので、ガイド溝部83と収容部84とを、上部材82、82Bと下部材81とを上下に分割した状態で機械加工等することによって形成することができ、長尺状のユニット保持装置8、8Bを簡単に形成することができる。そのため、多くの糸係止部材1が連結された糸係止部材ユニット20を、長尺状のユニット保持装置8、8Bによって、安定した姿勢で送り方向へ移動可能に保持させることができる。その結果、ステッチ加飾部品の縫製装置10における長時間の連続した縫製作業を可能とし、糸係止部材ユニット20の補充頻度を低減して、ステッチ加飾部品SKBの縫製作業の生産性を高めることができる。
【0087】
また、本実施形態によれば、ユニット保持装置8Bは、基台6に対して係合する係合爪851Bと当該係合爪851Bを略90度回動させる操作部852Bとを有するサムターン錠85Bによって装着可能に形成されているので、新たな糸係止部材ユニット20を保持したユニット保持装置8Bを、縫製装置10の基台6に簡単且つ迅速に装着できる。その結果、ステッチ加飾部品の縫製装置10における糸係止部材ユニット20の補充に伴う停止時間を短縮して、ステッチ加飾部品SKBの縫製作業の生産性を高めることができる。
【0088】
また、本他の実施形態に係るステッチ加飾部品SKBの縫製方法によれば、複数の連結片13と同時に係合する複数の送り爪71を有して糸係止部材ユニット20を送り方向へ送りピッチPTだけ移送するユニット送り装置7と、ユニット送り装置7に供給される糸係止部材ユニット20を移動可能であり直線状に保持するユニット保持装置8、8Bとを備えたので、多くの糸係止部材1を連結した糸係止部材ユニット20を高速で移送する場合でも、糸係止部材ユニット20の垂れ下がりを防止しつつ、1つ1つの送り爪71に対して均等な負荷を掛けることができる。そのため、送り爪71が連結片13から外れにくくなり、糸係止部材ユニット20を精度よく安定して移送できる。その結果、挿入針2に対する糸係止部材1の送り不良を大幅に低減できる。
【0089】
また、ユニット保持装置8、8Bは、複数備え、糸係止部材ユニット20を保持した状態で縫製装置10の基台6に対して着脱可能に形成されているので、糸係止部材ユニット20を保持した一方のユニット保持装置8、8Bを基台6に装着し、縫製装置10が縫製作業の稼働中に、縫製装置10の基台6に装着されていない他方のユニット保持装置8、8Bに、新たな糸係止部材ユニット20を予め保持させておくことができる。そのため、縫製装置10の稼働中に糸係止部材ユニット20の糸係止部材1を全て使用し終わったら、縫製装置10を停止させ、新たな糸係止部材ユニット20を保持した他方のユニット保持装置8、8Bを、縫製装置10の基台6に簡単且つ迅速に装着できる。その結果、ステッチ加飾部品SKBの縫製方法において、糸係止部材ユニット20の補充に伴う停止時間を短縮して、ステッチ加飾部品SKBの縫製作業の生産性を高めることができる。
【0090】
よって、本他の実施形態によれば、糸S1を挿通した糸係止部材1を基材KZと表皮材HZとの間に挿入して表皮材HZの表面HZ1にステッチ模様SMを縫製するステッチ加飾部品SKBの縫製方法において、多数の糸係止部材1が連結された糸係止部材ユニット20の送り不良を低減でき、糸係止部材ユニット20の補充に伴う停止時間を短縮して、縫製作業の生産性を高めることができるステッチ加飾部品SKBの縫製方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、基材と当該基材の表面に接着された表皮材との間に糸が挿通された糸係止部材を所定の縫い目ピッチで挿入することによって、表皮材の表面にステッチ模様を縫製するステッチ加飾部品の縫製装置及び縫製方法として利用できる。
【符号の説明】
【0092】
1、1a 糸係止部材
2 挿入針
3 押出しピン
4 駆動機構
4M 駆動モータ
6 基台
7 ユニット送り装置
8、8B ユニット保持装置
10 ステッチ加飾部品の縫製装置
11 抜け止め部
12 糸係り部
13 連結片
14 連結棒
20 糸係止部材ユニット
21 先端部
22 スリット溝
41 主軸部
42 駆動軸部
71 送り爪
71H 送り歯
71a、72a 立壁部
71b、72b 傾斜部
72 固定爪
72H 固定歯
73 リンクアーム部
77 カム部
81 下部材
82 上部材
83 ガイド溝部
84 収容部
85B サムターン錠
131 送り方向後端部
132 上端部
133 下端部
831 外縁
851B 係合爪
852B 操作部
KZ 基材
HZ 表皮材
HZ1 表面
PT 送りピッチ
S1 糸
SKB ステッチ加飾部品
SM ステッチ模様
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16