(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082523
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196354
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 輝男
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴之
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB27
5H730DD04
5H730DD41
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD11
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】入力側回路の循環電流を抑制できる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置は、第1ブリッジ回路と、第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、変圧器の第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して負荷に出力する、第2ブリッジ回路と、第1ブリッジ回路の内のスイッチ素子に出力する第1駆動パルスと第2ブリッジ回路の内のスイッチ素子に出力する第2駆動パルスとの間の位相差を制御することにより、第2ブリッジ回路から出力される直流電圧を制御する、制御部と、を備える。制御部は、第1ブリッジ回路に入力される第1電圧及び負荷の第2電圧に基づいて、第1駆動パルスのデューティ比を標準値よりも小さくする又は大きくする制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がハイサイドのスイッチ素子及びローサイドのスイッチ素子を有する複数のアームを含み、直流電圧を交流電圧に変換して出力する、第1ブリッジ回路と、
第1巻線及び第2巻線を含み、前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が前記第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を前記第2巻線から出力する、変圧器と、
各々がハイサイドのスイッチ素子及びローサイドのスイッチ素子を有する複数のアームを含み、前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して負荷に出力する、第2ブリッジ回路と、
複数の第1駆動パルスを前記第1ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子に出力して、前記第1ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子をスイッチング動作させ、複数の第2駆動パルスを前記第2ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子に出力して、前記第2ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子をスイッチング動作させ、前記複数の第1駆動パルスと前記複数の第2駆動パルスとの間の位相差を制御することにより、前記第2ブリッジ回路から出力される直流電圧を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1ブリッジ回路に入力される第1電圧及び前記負荷の第2電圧に基づいて、前記複数の第1駆動パルスのデューティ比を標準値よりも小さくする又は大きくする制御を行う、
ことを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1電圧に対する前記第2電圧の比の値に基づいて、前記デューティ比を前記標準値よりも小さくする又は大きくする制御を行う、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記比の値が小さくなるほど、前記デューティ比を前記標準値よりも小さくする又は大きくする制御を行う、
ことを特徴とする、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記比の値が1を含む予め定められた範囲内である場合には、前記デューティ比を前記標準値に維持する制御を行う、
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記位相差に応じて、前記デューティ比を調整する制御を行う、
ことを特徴とする、請求項2から4のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路の各々は、3相ブリッジ回路であり、
前記変圧器は、3相変圧器であり、
前記制御部は、
前記第1ブリッジ回路の内の3個のアーム間及び前記第2ブリッジ回路の内の3個のアーム間の位相差を120°固定とする制御を行う、
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、DAB(Dual Active Bridge)方式のDC-DCコンバータが記載されている。DABは、絶縁が可能であり、昇降圧動作、双方向電力変換が容易に可能である。
【0003】
しかし、DABは、入力側(1次側)と出力側(2次側)との間の電圧差が大きい場合、入力側回路内に循環する電流が増大する特性がある。この特性は、出力電流の指令値である、入力側と出力側との間の位相差を0°にしても低下しない。
【0004】
そのため、出力側垂下(短絡)等の著しい入出力電圧差が発生する条件では、電流が流れているほぼ全ての素子において、通常動作範囲時以上の電流増大が発生する。これにより、回路のストレスや損失の著しい増大が発生する問題がある。
【0005】
特許文献2には、アーム内のスイッチ素子の位相(相間の位相)を制御することで上記問題を解決する、スイッチング電源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5027264号明細書
【特許文献2】特開2018-26961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
3相の電源装置では、3相間の位相差が120°固定である。従って、特許文献2記載のスイッチング電源装置は、3相の場合に適用できない。
【0008】
本発明は、入力側回路の循環電流を抑制できる、電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の電源装置は、
各々がハイサイドのスイッチ素子及びローサイドのスイッチ素子を有する複数のアームを含み、直流電圧を交流電圧に変換して出力する、第1ブリッジ回路と、
第1巻線及び第2巻線を含み、前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が前記第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を前記第2巻線から出力する、変圧器と、
各々がハイサイドのスイッチ素子及びローサイドのスイッチ素子を有する複数のアームを含み、前記変圧器の前記第2巻線から出力される交流電圧を直流電圧に変換して負荷に出力する、第2ブリッジ回路と、
複数の第1駆動パルスを前記第1ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子に出力して、前記第1ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子をスイッチング動作させ、複数の第2駆動パルスを前記第2ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子に出力して、前記第2ブリッジ回路の内の前記スイッチ素子をスイッチング動作させ、前記複数の第1駆動パルスと前記複数の第2駆動パルスとの間の位相差を制御することにより、前記第2ブリッジ回路から出力される直流電圧を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1ブリッジ回路に入力される第1電圧及び前記負荷の第2電圧に基づいて、前記複数の第1駆動パルスのデューティ比を標準値よりも小さくする又は大きくする制御を行う、
ことを特徴とする。
【0010】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記第1電圧に対する前記第2電圧の比の値に基づいて、前記デューティ比を前記標準値よりも小さくする又は大きくする制御を行う、
ことを特徴とする。
【0011】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記比の値が小さくなるほど、前記デューティ比を前記標準値よりも小さくする又は大きくする制御を行う、
ことを特徴とする。
【0012】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記比の値が1を含む予め定められた範囲内である場合には、前記デューティ比を前記標準値に維持する制御を行う、
ことを特徴とする。
【0013】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記位相差に応じて、前記デューティ比を調整する制御を行う、
ことを特徴とする。
【0014】
前記電源装置において、
前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路の各々は、3相ブリッジ回路であり、
前記変圧器は、3相変圧器であり、
前記制御部は、
前記第1ブリッジ回路の内の3個のアーム間及び前記第2ブリッジ回路の内の3個のアーム間の位相差を120°固定とする制御を行う、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様の電源装置は、入力側回路の循環電流を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、比較例の電源装置の1次側の各部の波形を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態の電源装置の制御部の機能ブロックを示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態の電源装置の、位相差が0°の場合のデューティ比の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態の電源装置の、位相差が0°の場合のデューティ比の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態の電源装置の1次側の各部の波形を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態の、デューティ比と第1ブリッジ回路の出力交流電圧の実効値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の電源装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0018】
<実施の形態>
(全体構成)
図1は、実施の形態の電源装置の構成を示す図である。電源装置1は、DAB(Dual Active Bridge)方式であり、双方向のDC-DCコンバータである。実施の形態では、電源装置1は、電源2から出力されコンデンサ3で平滑化後の直流の電圧Vinの供給を受けて、直流の電圧Voutを負荷4に出力するものとする。
【0019】
電圧Vinが、本開示の「第1電圧」の一例に相当する。電圧Voutが、本開示の「第2電圧」の一例に相当する。
【0020】
電源装置1は、第1電圧センサ11と、1次側の第1ブリッジ回路12と、リアクトル13と、トランス14と、2次側の第2ブリッジ回路15と、コンデンサ16と、第2電圧センサ17と、制御部18と、を含む。
【0021】
第1電圧センサ11は、電圧Vinを検出して、制御部18に出力する。
【0022】
第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1からTr4までを含む単相フルブリッジ回路である。
【0023】
なお、実施の形態では、第1ブリッジ回路12は単相フルブリッジ回路としたが、本開示はこれに限定されない。第1ブリッジ回路12は、3個のアームを含む3相ブリッジ回路であっても良い。
【0024】
本開示では、各トランジスタがMOSFETであることとしたが、これに限定されない。各トランジスタは、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイス(例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))などでも良い。
【0025】
各トランジスタは、積極的に電流を流すことができる寄生ダイオード(ボディダイオード)を有する、又は、逆並列にダイオードが接続されている。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。
【0026】
トランジスタTr1のソースは、トランジスタTr2のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr1のドレインは、トランジスタTr3のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr3のソースは、トランジスタTr4のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr2のソースは、トランジスタTr4のソースに電気的に接続されている。
【0027】
トランジスタTr1からTr4までの各々が、本開示の「スイッチ素子」の一例に相当する。
【0028】
トランジスタTr1及びTr3の各々が、本開示の「ハイサイドのスイッチ素子」の一例に相当する。トランジスタTr2及びTr4の各々が、本開示の「ローサイドのスイッチ素子」の一例に相当する。
【0029】
トランジスタTr1及びTr2が、本開示の「アーム」の一例に相当する。同様に、トランジスタTr3及びTr4が、本開示の「アーム」の一例に相当する。
【0030】
トランジスタTr1のドレインとトランジスタTr3のドレインとの接続点が、第1ブリッジ回路12の一方の入力端子12aである。トランジスタTr2のソースとトランジスタTr4のソースとの接続点が、第1ブリッジ回路12の他方の入力端子12bである。
【0031】
トランジスタTr1のソースとトランジスタTr2のドレインとの接続点が、第1ブリッジ回路12の一方の出力端子12cである。トランジスタTr3のソースとトランジスタTr4のドレインとの接続点が、第1ブリッジ回路12の他方の出力端子12dである。
【0032】
入力端子12aは、コンデンサ3の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。入力端子12bは、コンデンサ3の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0033】
入力端子12aと入力端子12bとの間には、電圧Vinが供給される。
【0034】
リアクトル13の一端は、出力端子12cに電気的に接続されている。なお、実施の形態では、リアクトル13を1次側に配置したが、本開示はこれに限定されない。リアクトル13は、2次側に配置しても良いし、1次側及び2次側の両方に配置しても良い。
【0035】
トランス14は、第1巻線14aと、第2巻線14bと、コア14cと、を含む。第1巻線14a及び第2巻線14bは、コア14cに巻回されている。
【0036】
トランス14が、本開示の「変圧器」の一例に相当する。
【0037】
なお、実施の形態では、トランス14は単相トランスとしたが、本開示はこれに限定されない。トランス14は、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路15が3相ブリッジ回路である場合には、3相トランスとすると良い。
【0038】
第1巻線14aと第2巻線14bとの巻数比は、1:1が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0039】
第1巻線14aの一端は、リアクトル13の他端に電気的に接続されている。第1巻線14aの他端は、出力端子12dに電気的に接続されている。
【0040】
第1ブリッジ回路12は、電圧Vin、又は、電圧-Vinを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0041】
例えば、第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1及びトランジスタTr4がオン状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr3がオフ状態に制御されている場合、電圧Vinを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0042】
また例えば、第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1及びトランジスタTr4がオフ状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr3がオン状態に制御されている場合、電圧-Vinを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0043】
第2ブリッジ回路15は、トランジスタTr5からTr8までを含む単相フルブリッジ回路である。
【0044】
なお、実施の形態では、第2ブリッジ回路15は単相フルブリッジ回路としたが、本開示はこれに限定されない。第2ブリッジ回路15は、3個のアームを含む3相ブリッジ回路であっても良い。
【0045】
トランジスタTr5のソースは、トランジスタTr6のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr5のドレインは、トランジスタTr7のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr7のソースは、トランジスタTr8のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr6のソースは、トランジスタTr8のソースに電気的に接続されている。
【0046】
トランジスタTr5からTr8までの各々が、本開示の「スイッチ素子」の一例に相当する。
【0047】
トランジスタTr5及びTr7の各々が、本開示の「ハイサイドのスイッチ素子」の一例に相当する。トランジスタTr6及びTr8の各々が、本開示の「ローサイドのスイッチ素子」の一例に相当する。
【0048】
トランジスタTr5及びTr6が、本開示の「アーム」の一例に相当する。同様に、トランジスタTr7及びTr8が、本開示の「アーム」の一例に相当する。
【0049】
トランジスタTr5のソースとトランジスタTr6のドレインとの接続点が、第2ブリッジ回路15の一方の入力端子15aである。トランジスタTr7のソースとトランジスタTr8のドレインとの接続点が、第2ブリッジ回路15の他方の入力端子15bである。
【0050】
トランジスタTr5のドレインとトランジスタTr7のドレインとの接続点が、第2ブリッジ回路15の一方の出力端子15cである。トランジスタTr6のソースとトランジスタTr8のソースとの接続点が、第2ブリッジ回路15の他方の出力端子15dである。
【0051】
入力端子15aは、第2巻線14bの一端に電気的に接続されている。入力端子15bは、第2巻線14bの他端に電気的に接続されている。
【0052】
出力端子15cは、コンデンサ16の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。出力端子15dは、コンデンサ16の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0053】
コンデンサ16の電圧が、電圧Voutである。コンデンサ16の一端(高電位側端)は、負荷4の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。コンデンサ16の他端(低電位側端)は、負荷4の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0054】
第2電圧センサ17は、電圧Voutを検出して、制御部18に出力する。
【0055】
制御部18は、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路15を制御する。
【0056】
例えば、制御部18は、トランジスタTr1からTr8までのスイッチング周波数を同一、且つ、デューティ比を0.5に制御することが例示される。
【0057】
デューティ比は、制御の1周期に対するスイッチ素子のオン時間(又はオフ時間)の比率である。本開示では、デューティ比は、制御の1周期に対するハイサイドのトランジスタTr1及びTr3のオン時間(ローサイドのトランジスタTr2及びTr4のオフ時間)とする。
【0058】
また、DABでは、入力側ブリッジ回路と出力側ブリッジ回路との間の位相差が出力電流の指令値である。従って、制御部18は、第1ブリッジ回路12と第2ブリッジ回路15との間の位相差を制御することにより、出力電流(電力)を制御する。
【0059】
(比較例の制御)
特許文献1では、駆動パルス(ゲート信号)のデューティ比が0.5(以降、「標準値」と称する)とされている。
【0060】
図2は、比較例の電源装置の1次側の各部の波形を示す図である。
図2は、負荷4が短絡状態(電圧Voutが0V)、且つ、トランジスタTr1からTr8までのデューティ比が標準値の場合の、電源装置1の1次側の各部の波形を示す図である。なお、負荷4が短絡状態であり、トランジスタTr5からTr8までのゲート信号は、どのようになっていても結果に差異が発生しない(入力端子15a及び入力端子15b側に電圧が発生しない)ので、図示及び説明を省略する。
【0061】
波形101は、トランジスタTr1のゲートに入力される駆動パルスを示す。波形102は、トランジスタTr2のゲートに入力される駆動パルスを示す。波形103は、トランジスタTr3のゲートに入力される駆動パルスを示す。波形104は、トランジスタTr4のゲートに入力される駆動パルスを示す。波形105は、リアクトル13に印加される電圧を示す。波形106は、リアクトル13に流れる電流を示す。
【0062】
なお、
図2では、デッドタイムの記載を省略している。
【0063】
タイミングt0からタイミングt2までの期間が、制御の1周期である。トランジスタTr1からTr8までのデューティ比が標準値の場合であるので、タイミングt0からタイミングt1までの期間と、タイミングt1からタイミングt2までの期間と、は同じ長さである。
【0064】
タイミングt0において、波形101で示すように、トランジスタTr1のゲートにハイレベルの駆動パルスが入力される。波形102で示すように、トランジスタTr2のゲートにローレベルの駆動パルスが入力される。波形103で示すように、トランジスタTr3のゲートにローレベルの駆動パルスが入力される。波形104で示すように、トランジスタTr4のゲートにハイレベルの駆動パルスが入力される。
【0065】
このとき、波形105で示すように、リアクトル13には、電圧Vinが印加される。従って、波形106で示すように、リアクトル13に流れるリアクトル電流は、直線状に増加する。
【0066】
タイミングt1において、波形101で示すように、トランジスタTr1のゲートにローレベルの駆動パルスが入力される。波形102で示すように、トランジスタTr2のゲートにハイレベルの駆動パルスが入力される。波形103で示すように、トランジスタTr3のゲートにハイレベルの駆動パルスが入力される。波形104で示すように、トランジスタTr4のゲートにローレベルの駆動パルスが入力される。
【0067】
このとき、波形105で示すように、リアクトル13には、電圧-Vinが印加される。従って、波形106で示すように、リアクトル13に流れるリアクトル電流は、直線状に減少する。
【0068】
比較例は、電圧Vinに対する電圧Voutの比の値が小さい場合(或いは、電圧Vinと電圧Voutとの間の電圧差が大きい場合)に、波形105で示すように、1周期の全体にわたって、リアクトル13に電圧を印加する。従って、比較例では、波形106で示すように、リアクトル13に大きなリアクトル電流(循環電流)が流れる。
【0069】
(実施の形態の制御)
実施の形態では、制御部18は、電圧Vinに対する電圧Voutの比の値(以降、「入出力電圧比」と称する場合がある)に基づいて、1次側のトランジスタTr1からTr4までに与える駆動パルスのデューティ比を標準値よりも小さく、或いは、大きくする。
【0070】
なお、リアクトル13に電圧が印加される期間の観点では、駆動パルスのデューティ比を標準値よりも小さくすることと、大きくすることとは、等価である。例えば、駆動パルスのデューティ比を0.9にする場合と、駆動パルスのデューティ比を0.1にする場合とは、リアクトル13に電圧が印加される期間が同じになるので、等価である。
【0071】
図3は、実施の形態の電源装置の制御部の機能ブロックを示す図である。
【0072】
制御部18は、偏差算出部21と、位相差算出部22と、デューティ比算出部23と、信号出力部24と、パルス生成部25と、1次側パルス駆動部26と、2次側パルス駆動部27と、を含む。
【0073】
偏差算出部21は、電圧指令値Vcomから電圧Voutを減算することにより、電圧指令値Vcomと電圧Voutとの間の偏差εを算出する。
【0074】
位相差算出部22は、偏差εに基づいて、1次側の第1ブリッジ回路12と2次側の第2ブリッジ回路15との間の位相差φを算出する。先に説明したように、DABでは、1次側の第1ブリッジ回路12と2次側の第2ブリッジ回路15との間の位相差φによって、電圧Vout及び出力電流Ioutが制御される。
【0075】
デューティ比算出部23は、電圧Vin及び電圧Voutに基づき、位相差φを加味し、デューティ比を算出する。
【0076】
図4及び
図5は、実施の形態の電源装置の、位相差が0°の場合のデューティ比の一例を示す図である。
【0077】
図4において、波形111は、1次側のトランジスタTr1からTr4までに入力される駆動パルスのデューティ比を標準値よりも小さくする場合の、入出力電圧比とデューティ比との関係の一例を示す。波形112は、1次側のトランジスタTr1からTr4までに入力される駆動パルスのデューティ比を標準値よりも大きくする場合の、入出力電圧比とデューティ比との関係の一例を示す。
【0078】
デューティ比算出部23は、波形111及び112に示すように、入出力電圧比が1.0から0.9までの間は、不感帯113としても良い。
【0079】
デューティ比算出部23は、入出力電圧比が1.0から0.9までの間は、デューティ比を0.5(標準値)とすることが、例示される。
【0080】
波形111で示すように、デューティ比算出部23は、入出力電圧比が0.9よりも小さくなるほど、デューティ比を小さくすることが、例示される。
【0081】
波形111で示すように、デューティ比算出部23は、デューティ比を直線状に減少させているが、本開示はこれに限定されない。デューティ比算出部23は、デューティ比を単調減少させると良い。
【0082】
波形112で示すように、デューティ比算出部23は、入出力電圧比が0.9よりも小さくなるほど、デューティ比を大きくすることが、例示される。
【0083】
波形112で示すように、デューティ比算出部23は、デューティ比を直線状に増加させているが、本開示はこれに限定されない。デューティ比算出部23は、デューティ比を単調増加させると良い。
【0084】
図5において、波形116は、1次側のトランジスタTr1からTr4までに入力される駆動パルスのデューティ比を標準値よりも小さくする場合の、入出力電圧比とデューティ比との関係の一例を示す。波形117は、1次側のトランジスタTr1からTr4までに入力される駆動パルスのデューティ比を標準値よりも大きくする場合の、入出力電圧比とデューティ比との関係の一例を示す。
【0085】
波形116で示すように、デューティ比算出部23は、入出力電圧比が1.0よりも小さくなるほど、デューティ比を小さくすることが、例示される。
【0086】
波形116で示すように、デューティ比算出部23は、デューティ比を直線状に減少させているが、本開示はこれに限定されない。デューティ比算出部23は、デューティ比を単調減少させると良い。
【0087】
波形117で示すように、デューティ比算出部23は、入出力電圧比が1.0よりも小さくなるほど、デューティ比を大きくすることが、例示される。
【0088】
波形117で示すように、デューティ比算出部23は、デューティ比を直線状に増加させているが、本開示はこれに限定されない。デューティ比算出部23は、デューティ比を単調増加させると良い。
【0089】
デューティ比算出部23は、波形116及び117に示すように、不感帯113(
図4参照)を無くしても良い。
【0090】
ところで、位相差φが0°でない場合というのは、負荷4側に電力を出力することが要求されている場合である。
【0091】
そこで、デューティ比算出部23は、位相差φに応じた値を波形111又は116に加算し、デューティ比を標準値に近づける方向に調整(
図4の矢印114及び
図5の矢印118参照)しても良い。
【0092】
また、デューティ比算出部23は、位相差φに応じた値を波形112又は117から減算し、デューティ比を標準値に近づける方向に調整(
図4の矢印115及び
図5の矢印119参照)しても良い。
【0093】
再び
図3を参照すると、信号出力部24は、デューティ比算出部23によって算出されたデューティ比を夫々有するとともに、互いの間に位相差φを有する、第1信号S1及び第2信号S2を出力する。第1信号S1は、1次側のトランジスタTr1からTr4までのゲートに入力される駆動パルスの基になる基準信号である。第2信号S2は、2次側のトランジスタTr5からTr8までのゲートに入力される駆動パルスの基になる基準信号である。
【0094】
パルス生成部25は、第1信号S1に基づいて、1次側のトランジスタTr1からTr4までのゲートに入力される波形を夫々有する4つのパルスを含む第1パルス群S3を生成する。パルス生成部25は、第2信号S2に基づいて、2次側のトランジスタTr5からTr8までのゲートに入力される波形を夫々有する4つのパルスを含む第2パルス群S4を生成する。
【0095】
1次側パルス駆動部26は、第1パルス群S3の電圧レベルを変換した第1駆動パルス群S5を、トランジスタTr1からTr4までのゲートに出力する。
【0096】
2次側パルス駆動部27は、第2パルス群S4の電圧レベルを変換した第2駆動パルス群S6を、トランジスタTr5からTr8までのゲートに出力する。
【0097】
図6は、実施の形態の電源装置の1次側の各部の波形を示す図である。
図6は、負荷4が短絡状態(電圧Voutが0V)、且つ、トランジスタTr1からTr8までのデューティ比が0.9(0.1と等価)の場合の、電源装置の1次側の各部の波形を示す図である。なお、負荷4が短絡状態であり、トランジスタTr5からTr8までのゲート信号は、どのようになっていても結果に差異が発生しない(入力端子15a及び入力端子15b側に電圧が発生しない)ので、図示及び説明を省略する。
【0098】
波形121は、トランジスタTr1のゲートに入力される駆動パルスを示す。波形122は、トランジスタTr2のゲートに入力される駆動パルスを示す。波形123は、トランジスタTr3のゲートに入力される駆動パルスを示す。波形124は、トランジスタTr4のゲートに入力される駆動パルスを示す。波形125は、リアクトル13に印加される電圧を示す。波形126は、リアクトル13に流れる電流を示す。
【0099】
なお、
図6では、デッドタイムの記載を省略している。
【0100】
タイミングt10からタイミングt14までの期間が、制御の1周期である。
【0101】
図6では、波形121から波形124までの位相は、比較例のままで変更していない。但し、本開示はこれに限定されない。波形121から波形124までの位相は、変更しても良い。
【0102】
タイミングt10において、波形121で示すように、トランジスタTr1のゲートにハイレベルの駆動パルスが入力される。波形122で示すように、トランジスタTr2のゲートにローレベルの駆動パルスが入力される。波形123で示すように、トランジスタTr3のゲートにハイレベルの駆動パルスが入力される。波形124で示すように、トランジスタTr4のゲートにローレベルの駆動パルスが入力される。
【0103】
このとき、波形125で示すように、リアクトル13には、電圧が印加されない。従って、波形126で示すように、リアクトル13に流れるリアクトル電流は、増加も減少もしない。
【0104】
タイミングt11において、波形121で示すように、トランジスタTr1のゲートにハイレベルの駆動パルスが入力される。波形122で示すように、トランジスタTr2のゲートにローレベルの駆動パルスが入力される。波形123で示すように、トランジスタTr3のゲートにローレベルの駆動パルスが入力される。波形124で示すように、トランジスタTr4のゲートにハイレベルの駆動パルスが入力される。
【0105】
このとき、波形125で示すように、リアクトル13には、電圧Vinが印加される。従って、波形126で示すように、リアクトル13に流れるリアクトル電流は、直線状に増加する。
【0106】
タイミングt12において、波形121で示すように、トランジスタTr1のゲートにハイレベルの駆動パルスが入力される。波形122で示すように、トランジスタTr2のゲートにローレベルの駆動パルスが入力される。波形123で示すように、トランジスタTr3のゲートにハイレベルの駆動パルスが入力される。波形124で示すように、トランジスタTr4のゲートにローレベルの駆動パルスが入力される。
【0107】
このとき、波形125で示すように、リアクトル13には、電圧が印加されない。従って、波形126で示すように、リアクトル13に流れるリアクトル電流は、増加も減少もしない。
【0108】
タイミングt13において、波形121で示すように、トランジスタTr1のゲートにローレベルの駆動パルスが入力される。波形122で示すように、トランジスタTr2のゲートにハイレベルの駆動パルスが入力される。波形123で示すように、トランジスタTr3のゲートにハイレベルの駆動パルスが入力される。波形124で示すように、トランジスタTr4のゲートにローレベルの駆動パルスが入力される。
【0109】
このとき、波形125で示すように、リアクトル13には、電圧-Vinが印加される。従って、波形126で示すように、リアクトル13に流れるリアクトル電流は、直線状に減少する。
【0110】
実施の形態の電源装置1は、波形125で示すように、1周期の10分の2の期間だけ、リアクトル13に電圧を印加する。つまり、実施の形態の電源装置1は、比較例(
図2の波形106参照)と比較して、リアクトル13に電圧が印加される期間を抑制できる。従って、実施の形態の電源装置1は、波形126で示すように、比較例と比較して、リアクトル13に流れるリアクトル電流を抑制できる。
【0111】
図7は、実施の形態の、デューティ比と第1ブリッジ回路の出力交流電圧の実効値との関係を示す図である。1次側の第1ブリッジ回路12の出力交流電圧の実効値は、デューティ比が標準値(0.5)の場合の出力交流電圧の値を1として、正規化している。
【0112】
波形131に示すように、デューティ比が標準値から大きくなるほど又は小さくなるほど、1次側の第1ブリッジ回路12の出力交流電圧の実効値は、小さくなる。つまり、デューティ比が標準値から大きくなるほど又は小さくなるほど、リアクトル13に印加される電圧の実効値が、抑制される。従って、リアクトル13に流れるリアクトル電流が、抑制される。
【0113】
以上説明したように、実施の形態の電源装置1は、入出力電圧比が小さい場合の、1次側回路の循環電流を抑制できる。
【0114】
これにより、実施の形態の電源装置1は、1次側の回路のストレスや損失の著しい増大を抑制することができる。
【0115】
なお、制御部18は、入出力電圧比に代えて、電圧Vinと電圧Voutとの差である入出力電圧差に基づいて、デューティ比を標準値よりも小さくする又は大きくすることとしても良い。つまり、制御部18は、入出力電圧差が大きくなるほど、デューティ比を標準値よりも小さくする又は大きくすることとしても良い。
【0116】
また、本開示は、トランジスタTr1からTr4までに入力される駆動パルスの位相の変更を必要とせず、デューティ比だけを変更すれば足りる。従って、本開示は、第1ブリッジ回路12の内の3個のアーム間及び第2ブリッジ回路15の内の3個のアーム間の位相差が120°固定である3相DABにも、適用可能である。
【0117】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0118】
1 電源装置
2 電源
3、16 コンデンサ
4 負荷
11 第1電圧センサ
12 第1ブリッジ回路
13 リアクトル
14 トランス
15 第2ブリッジ回路
17 第2電圧センサ
18 制御部
21 偏差算出部
22 位相差算出部
23 デューティ比算出部
24 信号出力部
25 パルス生成部
26 1次側パルス駆動部
27 2次側パルス駆動部