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  • -抵抗材料およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082556
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】抵抗材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 17/30 20060101AFI20230607BHJP
   H01C 17/00 20060101ALI20230607BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20230607BHJP
   H01C 13/00 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
H01C17/30
H01C17/00 100
H01C7/00 500
H01C13/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196407
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 周平
(72)【発明者】
【氏名】粂田 賢孝
(72)【発明者】
【氏名】溝上 利文
(72)【発明者】
【氏名】仲村 圭史
【テーマコード(参考)】
5E032
5E033
【Fターム(参考)】
5E032BA23
5E032BB01
5E032CA02
5E032CC06
5E033AA42
5E033BC01
5E033BG08
5E033BH01
(57)【要約】
【課題】抵抗材料およびその製造方法において、高温でのプレス工程を不要とする。
【解決手段】抵抗材料の製造方法において、前記抵抗材料は、絶縁粉と、前記絶縁粉を囲む三次元網目状の金属体とを含み、前記製造方法は、前記絶縁粉に金属膜を被覆して、金属被覆粉を作製する工程と、前記金属被覆粉と、導電性を有する金属粉とを混合して、混合粉体を得る工程と、前記混合粉体を、前記金属膜の融点および前記金属粉の融点よりも低い温度にて焼結する工程と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗材料の製造方法であって、
前記抵抗材料は、絶縁粉と、前記絶縁粉を囲む三次元網目状の金属体とを含み、
前記製造方法は、
前記絶縁粉に金属膜を被覆して、金属被覆粉を作製する工程と、
前記金属被覆粉と、導電性を有する金属粉とを混合して、混合粉体を得る工程と、
前記混合粉体を、前記金属膜の融点および前記金属粉の融点よりも低い温度にて焼結する工程と、
を有する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記絶縁粉と前記金属粉との割合は、体積比で7:3から2:8の範囲内である、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
前記金属体は、ニクロム、銅マンガン、及び銅ニッケルからなる群から選択される少なくとも一つを含む、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法であって、
前記絶縁粉は、アルミナ、窒化アルミ、窒化ケイ素、及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法であって、
前記金属膜は、ニッケルまたはニッケル合金により形成されている、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記抵抗材料の抵抗温度係数が100ppm/℃以下である、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法であって、
前記抵抗材料の比抵抗は、160μΩ・cm以上24000μΩ・cm以下である、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法であって、
前記抵抗材料の相対密度が70%以上である、方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって製造された抵抗材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗材料の構成例が、特許文献1に記載される。特許文献1では、抵抗体の上下方向に電極を形成して、プリント基板パターン上に製品下面の電極を実装し、上面電極からワイヤーボンディングにて電流を導通させる構造が記載されている。この様な構造はプリント基板上に効率良く抵抗器の発熱を逃がすことができるため、パワーモジュールなどの高電力で使用される用途にはメリットがある。
【0003】
この構造を実現するためには、抵抗体の比抵抗を高くする必要がある。特許文献2には、ニクロムのマトリクス中にアルミナがフィラーとして分散されている抵抗体を作ることで、比抵抗の高い抵抗体を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-170478号公報
【特許文献2】特開2020-035851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、抵抗材料の製造過程で、高温でのプレス工程が必要であるという課題があった。
【0006】
たとえばニクロム等の抵抗合金とアルミナとを用いる場合には、これらの間の濡れ性が悪く、これらの混合焼結体を得るためには、圧力のエネルギーが必要である。このため、外部から圧力を加えて焼結性を補助することで、高密度の焼結体を得る方法であるHP(ホットプレス)法で作製されている。
【0007】
HP法では、プレスによる加圧を行いながら高温で加熱する必要があり、装置が特殊かつ複雑であるため、高コストとなる。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、抵抗材料およびその製造方法において、高温でのプレス工程を不要とするものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る、抵抗材料の製造方法の一例において、
前記抵抗材料は、絶縁粉と、前記絶縁粉を囲む三次元網目状の金属体とを含み、
前記製造方法は、
前記絶縁粉に金属膜を被覆して、金属被覆粉を作製する工程と、
前記金属被覆粉と、導電性を有する金属粉とを混合して、混合粉体を得る工程と、
前記混合粉体を、前記金属膜の融点および前記金属粉の融点よりも低い温度にて焼結する工程と、
を有する。
一例において、前記絶縁粉と前記金属粉との割合は、体積比で7:3から2:8の範囲内である。
一例において、前記金属体は、ニクロム、銅マンガン、及び銅ニッケルからなる群から選択される少なくとも一つを含む。
一例において、前記絶縁粉は、アルミナ、窒化アルミ、窒化ケイ素、及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも一つにより形成されている。
一例において、前記金属膜は、ニッケルまたはニッケル合金により形成されている。
一例において、前記抵抗材料の抵抗温度係数が100ppm/℃以下である。
一例において、前記抵抗材料の比抵抗は、160μΩ・cm以上24000μΩ・cm以下である。
一例において、前記抵抗材料の相対密度が70%以上である。
【0010】
本発明に係る抵抗材料の一例は、上述の方法のいずれかによって製造される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る抵抗材料およびその製造方法によれば、高温でのプレス工程が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る抵抗器の構成例を示す斜視図。
図2】実施形態1に係る抵抗材料の製造方法の例を示す図。
図3】被覆前の絶縁粉の写真。
図4】めっきにより絶縁粉に金属膜を被覆した後の金属被覆粉の写真。
図5図4の金属被覆粉の断面写真。
図6】NiP合金に含まれるPの濃度とNiP合金の融点との関係を示すグラフ。
図7】P濃度が高い場合において、1200℃で焼結を行った結果を示す写真。
図8】P濃度が適切な場合において、1200℃で焼結を行った結果を示す写真。
図9】Ni-0.17P-W合金に含まれるWの濃度と、Ni-0.17P-W合金の融点との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る抵抗器10の構成例を示す斜視図である。抵抗器10は、抵抗体11と、抵抗体11を挟む二つの電極(電極12及び電極13)と、を備える。抵抗器10は、たとえば電流検出用の抵抗器であり、またはシャント抵抗器である。図1の例では抵抗体11は円板状に形成されるが、形状は任意に設計可能である。
【0014】
抵抗体11は、少なくとも一部が抵抗材料から構成され、とくに本実施形態では全体が抵抗材料から構成される。抵抗材料は、絶縁粉と、絶縁粉を囲む三次元網目状の金属体とを含む。このような抵抗材料は、たとえば以下の製造方法によって製造することができる。
【0015】
図2に、本実施形態に係る抵抗材料の製造方法の例を示す。本製造方法は、絶縁粉に導電性の金属膜を被覆して、金属被覆粉を作製する工程(ステップS1)を含む。
【0016】
絶縁粉は、セラミックス材料を用いると、絶縁性および耐熱性の点から好適である。また、絶縁粉は、アルミナ(酸化アルミニウム(Al))、窒化アルミ(窒化アルミニウム(AlN))、窒化ケイ素(Si)及びジルコニア(ZrO)からなる群から選択される少なくとも一つにより形成されると、耐熱性が高く、加工時に付加される高温においても、安定しているため、好適である。たとえば、粒径が0.1μm以上10μm以下の範囲内である絶縁粉を用いることができる。
【0017】
金属膜は、たとえばNi(ニッケル)またはNi合金(ニッケル合金)により形成される。この工程の具体例を、図3図5を用いて説明する。
【0018】
図3は、被覆前(めっき前)の絶縁粉の写真であり、この例ではアルミナが用いられている。
【0019】
図4は、めっきにより絶縁粉に金属膜を被覆した後の金属被覆粉の写真である。図4の例ではNiによるめっきが用いられており、膜厚は0.26μmである。この例では無電解めっきによって被覆を行ったが、他の方法を用いてもよく、たとえば、メカノフュージョン、金属アルコキシドの加水分解法、電解めっき、等の方法を用いてもよい。
【0020】
めっきが厚くなると、抵抗材料の抵抗温度係数(TCR:Temperature Coefficient of Resistance)が大きくなる。めっきの厚さが1μmを超えると、たとえばTCRが従来品の3倍程度となる可能性があるため、めっきの厚さは1μm以下とすることが好ましい。また、めっきの厚さが0.01μmより薄いと適切にめっきができない場合があるため、めっきの厚さは0.01μm以上とすることが好ましい。以上より、めっきの厚さはたとえば0.01μm~1μmとすることが好ましい。
【0021】
図5はこの金属被覆粉の断面写真である。
【0022】
本製造方法は、このような金属被覆粉と、導電性を有する金属粉とを混合して、混合粉体を得る工程(ステップS2)を含む。金属粉は、たとえば、ニクロム、銅マンガン、及び銅ニッケルからなる群から選択される少なくとも一つとすると、抵抗材料として適切な抵抗値を得ることができる。
【0023】
なお、本明細書にいうニクロムは、Ni-Cr系合金であるか、又はこれを主成分とする合金であり、銅マンガンは、Cu-Mn系合金であるか、又はこれを主成分とする合金であり、銅ニッケルは、Cu-Ni系合金であるか、又はこれを主成分とする合金である。マンガニン(登録商標)またはゼラニン(登録商標)を用いてもよい。マンガニンは、Cu-Mn-Ni系合金であるか、またはこれを主成分とする合金であり、ゼラニンは、Cu-Mn-Sn系合金であるか、またはこれを主成分とする合金である。
【0024】
ここで、ステップS1において絶縁粉に金属膜が被覆されているので、金属粉との濡れ性が改善される。とくに、アルミナに金属膜をニッケルまたはニッケル合金により形成すると、ニクロム粉との濡れ性が改善される。
【0025】
絶縁粉(めっき部分を含まず)と金属粉との体積比は、7:3から2:8の範囲内とすることができる。すなわち、絶縁粉(めっき部分を含まず)と金属粉との体積比は、金属粉が30vol%~80vol%となるようにすることができる。金属粉の割合が30vol%未満になると、抵抗材料に電流経路が確保できなくなる可能性があり、抵抗材料としての機能が低下する。一方、金属粉の割合が80vol%を超えると、抵抗材料の比抵抗が金属粉材料単体の比抵抗とほぼ同じ値まで低下してしまい、用途に適合しない可能性がある。
【0026】
金属粉粒子のアスペクト比(すなわち長辺と短辺との比)は任意の値とすることができるが、たとえば1~2の範囲内である。また、金属粉粒子の粒径は任意の値とすることができるが、たとえば0.5μm以上20μm以下の範囲内である。
【0027】
また、本製造方法は、この混合粉体を、型などによって所定の形に成形する工程(ステップ3)と、金属被覆粉の金属膜の融点および金属粉の融点よりも低い温度にて焼結する工程(ステップS4)と、を含む。この焼結する工程(ステップS4)において、絶縁粉を被覆している金属膜と、金属粉とにより、絶縁粉を囲む三次元網目状の金属体が形成される。金属体は、金属粉の材料(たとえば、ニクロム、銅マンガン、及び銅ニッケルからなる群から選択される少なくとも一つ)を含む。
【0028】
ここで、無電解めっきによるNiめっきではP(リン)が含まれるが、P濃度が高いと融点が下がり焼結時に融解しやすくなるため、P濃度を低くするのが好適である。
【0029】
図6は、NiP合金に含まれるPの濃度と、NiP合金の融点との関係を示すグラフである。このグラフは、統合型熱力学計算ソフトウェアであるThermo-Calcを用いて作成した。
【0030】
P濃度が0.18wt%の場合には、合金の融点が1114℃である。また、P濃度が0.19wt%の場合には、合金の融点が885℃である。ここで、ニクロム粉とアルミナ粉を用いる場合に、抵抗材料として好適な比抵抗を得るためのニクロム粉の割合範囲、すなわち30vol%~80vol%の範囲では、焼結温度を1000℃~1300℃とすると好適である。この焼結温度を考慮すると、P濃度は0.18wt%以下とすることが好適である。このため、Niめっきには、0~0.18wt%のPを含有させると好適である(Pを含有しない場合を含む)。
【0031】
図7は、P濃度が高い(0.19wt%以上)場合において、1200℃で焼結を行った結果を示す写真である。この例では、P濃度を6.6wt%とし、膜厚を0.84μmとした。焼結温度よりも融点が低いため、焼結時にNiが溶けて染み出し、焼結体表面に球状となって現れ、好ましくない。
【0032】
図8は、P濃度が適切な場合において、1200℃で焼結を行った結果を示す写真である。図8(a)は円板の軸方向から撮影した写真であり、図8(b)は円板の径方向から撮影した写真である。この例では、P濃度を0.1wt%とし、膜厚を0.26μmとした。焼結温度よりも融点が高いため、焼結時にNiの溶けだしがない。
【0033】
抵抗材料として好適な比抵抗を得るために、NiめっきにはW(タングステン)を含んでもよい。P濃度と同様に、W濃度が高いと融点が下がり焼結時に融解しやすくなるため、W濃度を低くするのが好適である。
【0034】
図9は、Ni-0.17P-W合金(P濃度が0.17wt%である)に含まれるWの濃度と、Ni-0.17P-W合金の融点との関係を示すグラフである。このグラフもThermo-Calcを用いて作成した。W濃度が1.4wt%以下の場合には、合金の融点は1100℃以上である。このため、Niめっきには、0~1.4wt%のWを含有させると好適である(Wを含有しない場合を含む)。
【0035】
焼結条件は、たとえば次のようにすることができる。
・雰囲気:20Pa以下
・プレス圧:なし(従来技術では、3.0kN~3.9kNで加圧したHP法を用いる場合があるが、本実施形態ではプレスを行わない)
・焼成温度:1000~1300℃
・保持時間:30~180分
【0036】
上述のように、本実施形態に係る抵抗材料によれば、絶縁粉(たとえばアルミナ)に、金属膜を被覆する(たとえばNiめっきを施す)ことにより、金属粉(たとえばニクロム)との濡れ性が改善される。
【0037】
たとえば、比較例として、アルミナ粉体(Niめっきなし)とニクロム粉体とを1200℃でプレスの加圧無しに焼結した場合、得られる焼結体の相対密度はたとえば60%と低い。これは、アルミナとニクロムの濡れ性が悪く、焼結体内部に空隙が生まれるためである。このため、相対密度を高めるために高温でのプレス工程が必要となる。
【0038】
これに対して、本実施形態のようにNiめっき皮膜を施したアルミナ粉体を用いると、ニクロムとの濡れ性が改善し、抵抗材料の相対密度は70%以上(たとえば74%)に向上する。したがって、抵抗材料の製造過程において、高温でのプレス工程は不要となる。このため、たとえばHP法で用いるような装置が不要となり、コストが低減される。
【0039】
なお、「相対密度」とは、たとえば、物質が隙間なく充填された場合の密度に対する、実際の密度の比をいう。一例として、焼結体に空隙がまったく存在しない場合には、焼結体の相対密度は100%となる。
【0040】
また、本実施形態によれば、抵抗体として十分な性能を得ることができる。たとえば、比抵抗が160μΩ・cm以上24,000μΩ・cm以下であり、TCRが100ppm/℃以下であるような抵抗材料を得ることが可能である。とくに、比抵抗を160μΩ・cm以上24,000μΩ・cm以下とすると、抵抗体の用途に適合した抵抗値を得ることができる。また、TCRを100ppm/℃以下とすると、電流値の検出精度低下を抑制することが可能となる。
【0041】
なお、抵抗材料の具体的な用途については、特許文献1、特許文献2、その他の公知技術、等に基づき、当業者が適宜決定することができる。たとえば、図1のシャント抵抗器は、大電流を測定する用途に用いることができる。
【0042】
[実験例]
本実施形態における抵抗材料に基づく供試体を作製し、各種測定を行って抵抗材料として抵抗特性の評価を行った。以下、供試体の作製方法及びその評価について説明する。
【0043】
抵抗材料を作製するための絶縁粉としてアルミナの粉末(DAW-07:デンカ株式会社製)を用いた。また、三次元網目状の金属体を作製するための金属粉として、ニクロムの粉末(ニクロムをマトマイズ法で生成した粒径(D50)5.8μmの粉末)を用いた。
【0044】
<混合・造粒>
まず、上述した双方の粉末を、体積比で5:5となるよう秤量し、乳鉢と乳棒を用いて、それぞれの粉末を造粒した。
【0045】
造粒したそれぞれの粉末の平均粒径は下記のとおりである。
・アルミナ粉:平均粒径8.2μm
・ニクロム粉:平均粒径5.8μm
【0046】
<めっき>
無電解めっきによって絶縁粉にNi-P-Wめっきを施した。
・組成:Ni(99.8wt%)、P(0.1wt%)、W(0.1wt%)
・平均膜厚:0.26μm
【0047】
<混合・焼結>
本実験例では、それぞれの粉末を混合し、金型で直径φ15mmに成形した。そして、カーボン製ダイス内の混合粉体を、Ni-P-Wめっき膜およびニクロム粉の融点よりも低い所定の温度まで加熱し、焼結した。これによって、絶縁粉を被覆しているNi-P-Wめっきと、金属粉とにより、絶縁粉を囲む三次元網目状の金属体が形成される。焼結した供試体は、直径15mm、厚さ1.8mmの円板状の焼結体である。
【0048】
本実験例での焼結条件は下記のとおりである。
・雰囲気:20Pa以下
・焼結温度:1200℃
・保持時間:120分
【0049】
[評価方法]
上述のようにして得られた供試体について、以下の評価試験を行った。
【0050】
<焼結前の金属粉の形状>
・金属粉のアスペクト比の算出
走査電子顕微鏡(JSM-7000F:日本電子株式会社製)を用いて、1,800倍でニクロム粉の粒子(ニクロム粒子)を撮像し、撮像したニクロム粒子のアスペクト比を算出した。
【0051】
ニクロム粒子のアスペクト比は、撮像したSEM画像内のニクロム粒子の中から、任意に20個を選択し、選択したニクロム粒子ごとに長辺の長さを短辺の長さで除して求める。
【0052】
<抵抗特性>
・比抵抗の算出
供試体の温度が25℃であるときの供試体の抵抗値を測定し、この抵抗値に基づいて比抵抗を算出した。
【0053】
比抵抗(μΩ・cm)=抵抗値(μΩ)×面積(cm)/厚さ(cm)
ここで、面積は0.75π(cm)であり、厚さは0.18(cm)である。本実験例による供試体では、比抵抗は620μΩ・cmとなった。
【0054】
・抵抗温度係数の測定
抵抗温度係数(TCR)とは、供試体の温度変化による抵抗値の変化の割合を表すものである。シャント抵抗器においては、抵抗温度係数の絶対値が小さくなるほど、電流の検出誤差が小さくなる傾向を有する。抵抗温度係数は、下記式により表される。
【0055】
抵抗温度係数(ppm/℃)=
[{(R-Ra)/Ra}/(T-Ta)]×1,000,000
ここで、Taは基準温度であり、Raは基準温度における抵抗値であり、Tは試験温度であり、Rは試験温度における抵抗値である。本実験例による供試体では、基準温度25℃且つ試験温度155℃におけるTCRは32ppm/℃となった。
【符号の説明】
【0056】
10 抵抗器
11 抵抗体
12 電極
13 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9