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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082566
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
E02B7/20 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196425
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】594148645
【氏名又は名称】株式会社協和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 道博
【テーマコード(参考)】
2D019
【Fターム(参考)】
2D019AA60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】扉体が開放する場合には抵抗を最小限として円滑に開放作動させることができ、扉体が自重で閉鎖状態となる場合には波浪による扉体のバタツキ等を抑えることができる油圧制御装置を提供し、弁等を操作せずに油圧ポンプを作動させるだけでゲートの強制開操作を開始、終了することのできる油圧制御装置を提供する。
【解決手段】作動油の移動に連動して動くロッド8、前方油口3aと後方油口3bを有する両ロッド式油圧シリンダ3、ロッド8に連動して開閉する扉体1、逆止弁11を有する第1連通管10、フロート弁4bと流量制御弁13を有する第2連通管12、作動油を供給する油圧ポンプ17、油圧ポンプ17と逆止弁11の前方側とを接続し供給用逆止弁15aを有する作動油供給管14及び油圧タンク18と逆止弁11の後方側とを接続し排出用パイロット付逆止弁15bを有する作動油排出管16を備えるゲートの油圧制御装置。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自重により閉鎖状態となるゲートの油圧制御装置であって、
作動油の移動に連動して動くロッド、前方油口及び後方油口を有する両ロッド式油圧シリンダと、
前記ロッドが前記前方油口の有る側に移動すると閉じる方向に動き、前記ロッドが前記後方油口の有る側に移動すると開く方向に動く扉体と、
前記前方油口と前記後方油口とを連通する第1連通管と、
前記第1連通管に設けられ、前記後方油口から前記前方油口の方向にのみ作動油が流れることを許容する逆止弁と、
前記第1連通管における前記逆止弁の前方側と後方側とを連通する第2連通管と、
前記第2連通管に設けられ、前記ゲートより下流側の水位が所定水位以上となった時に開状態となるフロート弁及び作動油の流量が所定流量以上にならないように調整する流量制御弁を備えている
ことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
作動油を貯留する油圧タンクと、
前記油圧タンクから前記両ロッド式油圧シリンダへ作動油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプの作動油出口と前記第1連通管の前記逆止弁より前記前方油口側又は前記作動油出口と前記第2連通管の前記フロート弁及び前記流量制御弁より前記前方油口側を接続する作動油供給管と、
前記作動油供給管に設けられた供給用逆止弁と、
前記油圧タンクと前記第1連通管の前記逆止弁より前記後方油口側又は前記油圧タンクと前記第2連通管の前記フロート弁及び前記流量制御弁より前記後方油口側を接続する作動油排出管と、
前記作動油排出管に設けられた排出用パイロット付逆止弁と、を備え、
前記油圧タンクから前記油圧ポンプ、前記作動油供給管、前記供給用逆止弁、前記第1連通管及び前記前方油口を介して前記両ロッド式油圧シリンダへ作動油が供給されると、前記両ロッド式油圧シリンダから前記後方油口、前記第1連通管、前記作動油排出管及び前記排出用パイロット付逆止弁を介して前記油圧タンクへ作動油が排出される
ことを特徴とする請求項1に記載の油圧制御装置。
【請求項3】
前記油圧タンク、前記油圧ポンプ、前記作動油供給管、前記供給用逆止弁、前記作動油排出管及び前記排出用パイロット付逆止弁が、前記第1連通管又は前記第2連通管に対して着脱自在に接続可能である
ことを特徴とする請求項2に記載の油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樋門又は流水路の出口に逆流防止を目的として設置されるフラップゲート等の開閉を適切に制御するための油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な樋門又は流水路の出口には下流側からの逆流防止を目的としてフラップゲート等が設置されている。
しかしながら、従来のフラップゲートは扉体が吊り金物に懸垂された状態で設置されることから、通常時は通水部を閉鎖しているため排水性能が低い、塵芥等が挟まり易く不完全閉鎖障害が発生するといった問題点や、波浪等により下流側水位が激しく変動した場合に、扉体が水位変動に同調して激しく開閉を繰り返し、扉体と戸当金物との激しい衝突が長時間繰返され、騒音や損傷が発生するといった問題点があった。
【0003】
そこで、本出願人は、特許文献1(特開2019-112860号公報、特に段落0020~0021及び図4、5を参照)に記載されているように、通常は扉体を開放状態に保持して高い排水性能が得られるようにするとともに、下流側が所定水位以上になった時にはフロート弁が閉扉位置に切り換わることで、扉体が自重により閉鎖状態となって確実に止水することのできる強制開放型ゲートの油圧制御装置を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-112860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている強制開放型ゲートの油圧制御装置では、扉体が自動で開閉作動する場合(図5及び図6の状態)においては、作動油の移動速度が流量制御弁(11)によって設定され、扉体の開閉速度は常に所定速度以下となるため、特に上流側からの排水流の水圧のみによって扉体が開放する場合(図6の状態)には、迅速に開放作動しないという問題があった。
さらに、フラップゲートの強制開操作を行う場合には、図6の状態から図7の状態にするため、第1のストップ弁(12)を閉め、第2のストップ弁(13)を開ける操作が必要であり、強制開操作終了後には、その逆の操作をする必要があった。
本発明は、これらの問題点を解決し、上流側からの排水流の水圧等によって扉体が開放する場合には、抵抗を最小限として円滑に開放作動させることができ、下流側が所定水位以上になりフロート弁が閉扉位置に切り換わって扉体が自重で閉鎖状態となる場合等には、閉作動を緩やかな作動速度とすることにより、波浪による扉体のバタツキ等を抑えることができる油圧制御装置を提供することを第1の課題としている。
また、弁やバルブ等を操作することなく、油圧ポンプを作動させるだけでゲートの強制開操作を行うことができ、強制開操作終了後も弁やバルブ等を操作する必要のない油圧制御装置を提供することを第2の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、
自重により閉鎖状態となるゲートの油圧制御装置であって、
作動油の移動に連動して動くロッド(8)、前方油口(3a)及び後方油口(3b)を有する両ロッド式油圧シリンダ(3)と、
前記ロッド(8)が前記前方油口(3a)の有る側に移動すると閉じる方向に動き、前記ロッド(8)が前記後方油口(3b)の有る側に移動すると開く方向に動く扉体(1)と、
前記前方油口(3a)と前記後方油口(3b)とを連通する第1連通管(10)と、
前記第1連通管(10)に設けられ、前記後方油口(3b)から前記前方油口(3a)の方向にのみ作動油が流れることを許容する逆止弁(11)と、
前記第1連通管(10)における前記逆止弁(11)の前方側と後方側とを連通する第2連通管(12)と、
前記第2連通管(12)に設けられ、前記ゲートより下流側の水位(19b)が所定水位以上となった時に開状態となるフロート弁(4b)及び作動油の流量が所定流量以上にならないように調整する流量制御弁(13)を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の油圧制御装置において、
作動油を貯留する油圧タンク(18)と、
前記油圧タンク(18)から前記両ロッド式油圧シリンダ(3)へ作動油を供給する油圧ポンプ(17)と、
前記油圧ポンプ(17)の作動油出口と前記第1連通管(10)の前記逆止弁(11)より前記前方油口(3a)側又は前記作動油出口と前記第2連通管(12)の前記フロート弁(4b)及び前記流量制御弁(13)より前記前方油口(3a)側を接続する作動油供給管(14)と、
前記作動油供給管(14)に設けられた供給用逆止弁(15a)と、
前記油圧タンク(18)と前記第1連通管(10)の前記逆止弁(11)より前記後方油口(3b)側又は前記油圧タンク(18)と前記第2連通管(12)の前記フロート弁(4b)及び前記流量制御弁(13)より前記後方油口(3b)側を接続する作動油排出管(16)と、
前記作動油排出管(16)に設けられた排出用パイロット付逆止弁(15b)と、を備え、
前記油圧タンク(18)から前記油圧ポンプ(17)、前記作動油供給管(14) 、前記供給用逆止弁(15a)、前記第1連通管(10)及び前記前方油口(3a)を介して前記両ロッド式油圧シリンダ(3)へ作動油が供給されると、前記両ロッド式油圧シリンダ(3)から前記後方油口(3b)、前記第1連通管(10)、前記作動油排出管(16)及び前記排出用パイロット付逆止弁(15b)を介して前記油圧タンク(18)へ作動油が排出されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の油圧制御装置において、
前記油圧タンク(18)、前記油圧ポンプ(17)、前記作動油供給管(14)、前記供給用逆止弁(15a)、前記作動油排出管(16)及び前記排出用パイロット付逆止弁(15b)が、前記第1連通管(10)又は前記第2連通管(12)に対して着脱自在に接続可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、両ロッド式油圧シリンダ(3)の前方油口(3a)と後方油口(3b)とを連通する第1連通管(10)、第1連通管(10)に設けられ後方油口(3b)から前方油口(3a)の方向にのみ作動油が流れることを許容する逆止弁(11)、逆止弁(11)の前方側と後方側とを連通する第2連通管(12)、第2連通管(12)に設けられゲートより下流側の水位(19b)が所定水位以上となった時に開状態となるフロート弁(4b)及び作動油の流量が所定流量以上にならないように調整する流量制御弁(13)を備えているので、フロート弁(4b)が閉状態の時には後方油口(3b)から前方油口(3a)の方向へ抵抗なく作動油が流れ、上流側からの排水流の水圧等によって扉体(1)がスムーズに開放される。そして、前方油口(3a)から後方油口(3b)の方向へは作動油が流れないので、扉体(1)が一旦開放されると、その開放状態を保持することができる。
また、フロート弁(4b)が開状態の時には前方油口(3a)から後方油口(3b)の方向へ流量制御弁(13)を介して作動油が流れるので、扉体(1)は自重で閉鎖方向に移動するが、流量制御弁(13)の作用によって緩やかな作動速度となり、波浪による扉体(1)のバタツキ等を抑えることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明による効果に加えて、扉体(1)を強制的に開放状態とするための、作動油供給管(14)、供給用逆止弁(15a)、作動油排出管(16)、排出用パイロット付逆止弁(15b)、油圧ポンプ(17)及び油圧タンク(18)を備え、油圧タンク(18)から油圧ポンプ(17)、作動油供給管(14) 、供給用逆止弁(15a)、第1連通管(10)及び前方油口(3a)を介して両ロッド式油圧シリンダ(3)へ作動油が供給されると、両ロッド式油圧シリンダ(3)から後方油口(3b)、第1連通管(10)、作動油排出管(16)及び排出用パイロット付逆止弁(15b)を介して油圧タンク(18)へ作動油が排出されるようになっているので、油圧ポンプ(17) を作動させるだけでゲートの強制開操作を行うことができ、強制開操作終了後も弁やバルブ等を操作する必要のない油圧制御装置を提供することができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、請求項2に係る発明による効果に加えて、扉体(1)を強制的に開放状態とするための強制開放装置である油圧タンク(18)、油圧ポンプ(17)、作動油供給管(14)、供給用逆止弁(15a)、作動油排出管(16)及び排出用パイロット付逆止弁(15b)が、第1連通管(10)又は第2連通管(12)に対して着脱自在に接続可能であるので、強制開放装置を常設する必要がなく、強制開放装置が地震、津波、強風、いたずら等によって破壊されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1に係る上ヒンジ式フラップゲートの斜視図。
図2】実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図(自動開放作動時)。
図3】実施例1における作動油の流れを説明する図(自動開放作動時)。
図4】実施例1における作動油の流れを説明する図(自動閉作動時)。
図5】実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図(閉鎖時)。
図6】実施例2に係る油圧操作装置等の状態を示す図(自動開放作動時)。
図7】実施例2における作動油の流れを説明する図(強制開放時)。
図8】実施例3に係る油圧操作装置等の状態を示す図(強制開放時)。
図9】実施例2に係る油圧操作装置等の変形例を示す図(自動開放作動時)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例0014】
図1は実施例1に係る上ヒンジ式フラップゲートの斜視図である。
実施例1に係る上ヒンジ式フラップゲートは、図1に示すように、扉体1が上流側水路と下流側水路との境界部にヒンジ金物6によって回動自在に懸垂されており、外力が働かない状態においては、自重により上流側水路の出口を閉鎖するようになっている。
また、扉体1の上部には扉体駆動アーム1aが設けてあり、両ロッド式油圧シリンダ3のロッド8の先端に設けてある先端金物9とヒンジ接続されており、扉体1の開閉作動と両ロッド式油圧シリンダ3のロッド伸縮作動が常に同調する。
そして、両ロッド式油圧シリンダ3はトラニオン式軸受7に揺動自在に取り付けられ、扉体1が開放作動するとロッド8は縮作動し、扉体1が閉鎖作動するとロッド8は伸作動する。反対にロッド8が縮作動をすると扉体1は開放作動し、ロッド8が伸作動をすると扉体1は閉鎖作動する。
さらに、フロート装置収納箱4cの内部には、後述するフロート4a及びフロート弁4bが収納されており、上流側水路の出口の周囲には戸当金物5が設けてある。
【0015】
図2は自動開放作動時における実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図であり、図3はその状態における作動油の流れを説明する図である。
両ロッド式油圧シリンダ3の前方油口3aと後方油口3bは、第1連通管10によって連通されており、第1連通管10には後方油口3bから前方油口3aの方向にのみ作動油が流れることを許容する逆止弁11が設けられている。
また、第1連通管10における逆止弁11の前方側(前方油口3aに近い側)と後方側(後方油口3bに近い側)は、第2連通管12によって連通されており、第2連通管12には、ゲートより下流側の水路2bにおける下流側水位19bが所定水位以上となった時に開状態となるフロート弁4b及び作動油の流量が所定流量以上にならないように調整する流量制御弁13が設けられている。
ここで、両ロッド式油圧シリンダ3は、ロッド8が伸縮作動してもシリンダ内部の作動油量が変化しない特性により、前方油口3aと後方油口3b間を作動油が自由に流れる状態とすることで、外力によってロッド8を自在に伸縮作動できる特性を有している。
そのため、下流側水位19bが所定水位より低く、フロート4aが下がっていて、フロート弁4bが閉鎖している図2の状態においては、第2連通管12が閉鎖された状態となり、作動油は後方油口3bから前方油口3aの方向にのみ流れることが可能であるので、両ロッド式油圧シリンダ3のロッド8の縮作動のみが可能なゲート開放保持状態となる。
ゲート開放保持状態においては、図3に示すように、扉体1は上流側水位19aの水圧力によって排水方向へ開こうとし、ロッド8は黒い矢印の方向へ移動しようとする。
そうすると、作動油は第1連通管10内を白い矢印で示すように後方油口3bから前方油口3aの方向に流れ、自動開放作動を行うことができる。
そして、その後上流側水位19aが下がり、水圧力が小さくなっても、作動油は第1連通管10内を前方油口3aから後方油口3bの方向には流れることができないため、両ロッド式油圧シリンダ3のロッド8は伸作動できず扉体1の開放状態が保持される。
【0016】
図4は自動閉作動時の実施例1における作動油の流れを説明する図であり、図5は扉体1が閉鎖した状態における実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図である。
図3の状態から下流側水位19bが上昇し、フロート4aが上昇してフロート弁4bが開いた状態となると、ゲート開放保持状態が解除された図4の状態となり、両ロッド式油圧シリンダ3のロッド8は、伸作動・縮作動ともに可能となる。
この状態においては、扉体1は上流側水位19aと下流側水位19bの変動に対応した自動開閉作動を行うことができる。
すなわち、上流側水位19aの方が下流側水位19bより高く、上流側水位19aの排水方向への水圧力が下流側水位19bによる水圧力と扉体1の自重による圧力より大きい場合には、自動開作動が行われゲート上流側から下流方向へ排水される。
逆に、上流側水位19aが下流側水位19bより低いか同程度で、上流側水位19aの排水方向への水圧力が下流側水位19bによる水圧力と扉体1の自重による圧力より小さい場合には、図4に示すように、扉体1は下流側水位19bによる水圧力と扉体1の自重によってゲート方向へ閉じようとし、ロッド8は黒い矢印の方向へ移動しようとする。
そうすると、作動油は第1連通管10内及び第2連通管12内を白い矢印で示すように前方油口3aから後方油口3bの方向に流れるので、扉体1は閉鎖方向に移動して自動閉作動が行われ、最終的に図5の状態となる。
このとき、第2の連通管12内を流れる作動油の流量は、流量制御弁13の作用によって所定流量以上にはならないため、ロッド8の伸作動速度が制限され、扉体1の自動閉作動速度は緩やかなものとなる。そのため、扉体1が高速で閉作動して戸当金物5と激しい衝突を起こすことを回避でき、騒音の発生や損傷の発生を防止することができる。
【実施例0017】
図6は自動開放作動時における実施例2に係る油圧操作装置等の状態を示す図である。
実施例2に係る上ヒンジ式フラップゲートと実施例1に係る上ヒンジ式フラップゲートは全く同じ構造であり、油圧操作装置も、第1連通管10、逆止弁11、第2連通管12、フロート4a、フロート弁4b及び流量制御弁13については、全く同じ構成である。
実施例2が実施例1と相違しているのは、作動油供給管14、供給用逆止弁15a、作動油排出管16、排出用パイロット付逆止弁15b、油圧ポンプ17及び油圧タンク18が設けてある点である。そのため、実施例1と共通する部材等には同じ番号を付し、以下では、主として実施例1と異なる点について説明する。
【0018】
図6に示すとおり、実施例2の油圧操作装置は、実施例1の油圧操作装置に、作動油を貯留する油圧タンク18、油圧タンク18から両ロッド式油圧シリンダ3へ作動油を供給する油圧ポンプ17、油圧ポンプ17の作動油出口と第1連通管10の逆止弁11より前方油口3a側とを接続する作動油供給管14、作動油供給管14に設けられた供給用逆止弁15a、油圧タンク18と第1連通管10の逆止弁11より後方油口3b側とを接続する作動油排出管16及び作動油排出管16に設けられた排出用パイロット付逆止弁15bを追加したものである。
そして、油圧ポンプ17を作動させなければ、供給用逆止弁15a及び排出用パイロット付逆止弁15bにより、作動油が作動油供給管14内及び作動油排出管16内を流れることはないので、フロート弁4bが閉鎖している状態においては、実施例1の図3と同様に、扉体1が上流側水位の水圧力によって排水方向へ押されると、作動油は第1連通管10内を後方油口3bから前方油口3aの方向に流れて自動開放作動が行われ、その後上流側水位の水圧力が小さくなっても、作動油が第1連通管10内を前方油口3aから後方油口3bの方向に流れることはないため、両ロッド式油圧シリンダ3のロッド8は伸作動できず扉体1の開放状態が保持される。
また、フロート弁4bが開いた状態においては、実施例1と同様に両ロッド式油圧シリンダ3のロッド8は伸作動・縮作動ともに可能となり、扉体1は上流側水位19aと下流側水位19bの変動に対応した自動開閉作動が行われる。
【0019】
図7は強制開放時の実施例2における作動油の流れを説明する図である。
強制開放時には油圧ポンプ17を作動させ、油圧タンク18から作動油を供給する。
油圧タンク18から供給された作動油は白い矢印で示すように、油圧ポンプ17の作動油出口、作動油供給管14、供給用逆止弁15a、作動油供給管14、第1連通管10及び前方油口3aを経由して前方油室に供給される。
作動油が前方油室に供給されるとロッド8が縮作動するので、後方油室の作動油は白い矢印で示すように、後方油口3b、第1連通管10、作動油排出管16、排出用パイロット付逆止弁15b及び作動油排出管16を経由して油圧タンク18に排出される。
そうすると、先端金物9は両ロッド式油圧シリンダ3の方向に移動するので、扉体1は強制的に開放状態となる。
なお、排出用パイロット付逆止弁15bは、油圧ポンプ17によって油圧タンク18から作動油を供給するとき以外は、後方油口3bから油圧タンク18への作動油の流れを阻止するように動作する。
【実施例0020】
図8は強制開放時における実施例3に係る油圧操作装置等の状態を示す図である。
実施例3に係る上ヒンジ式フラップゲートは実施例2と同様、実施例1に係る上ヒンジ式フラップゲートと全く同じ構造であり、強制開放時における油圧操作装置は、作動油供給管14及び作動油排出管16が、それぞれ供給用接続口14a及び排出用接続口16aに接続されている点以外は、実施例2と同じ構成である。
そのため、実施例1及び2と共通する部材等には同じ番号を付し、以下では、主として実施例2と異なる点について説明する。
【0021】
通常時(自動開放作動時、自動閉作動時及び閉鎖時)において、実施例3の油圧操作装置には、作動油供給管14、供給用逆止弁15a、作動油排出管16、排出用パイロット付逆止弁15b、油圧ポンプ17及び油圧タンク18からなる強制開放装置は接続されておらず、上流側水位の水圧力が小さい等の原因によって、開放角度が小さくなり排水能力が低い状態となってしまった場合に、第1連通管10の逆止弁11より前方油口3a側に設置されている供給用接続口14a及び第1連通管10の逆止弁11より後方油口3b側に設置されている排出用接続口16aに対して、それぞれ強制開放装置の作動油供給管14及び作動油排出管16を接続してから油圧ポンプ17を作動させる。
そうすると、実施例2の図7に示したと同様の作動油の流れによって、油圧タンク18の作動油が前方油室に供給され、後方油室の作動油が油圧タンク18に排出されて、扉体1は強制的に開放状態となるので、全開状態となったら油圧ポンプ17を停止させる。
そして、扉体1が全開状態となった後に、強制開放装置の作動油供給管14及び作動油排出管16を、供給用接続口14a及び排出用接続口16aから外しても、作動油が第1連通管10内を前方油口3aから後方油口3bの方向に流れることはないため、両ロッド式油圧シリンダ3のロッド8は伸作動できず扉体1の開放状態が保持される。
なお、ごく微量の作動油漏れによって、上ヒンジ式フラップゲートの開放角度は1か月間に1~2°程度小さくなっていくが、強制開放によって開放角度を20°とした場合には、概ね6か月程度は上流からの排水に対して十分な開放状態を保持することができる。
【0022】
実施例1~3の変形例を列記する。
(1)実施例1~3では、第2連通管12のフロート弁4bよりも後方油口3b側に流量制御弁13を設けたが、第2連通管12のフロート弁4bよりも前方油口3a側に流量制御弁13を設けても良い。
(2)実施例1~3では上ヒンジ式フラップゲートを用いたが、いずれの実施例においても自重により閉鎖状態となり、上流側水位又は下流側水位の水圧力によってゲートが開く方向又は閉じる方向に移動するタイプのゲートであればマイターゲート等どのようなゲートを用いても良い。
【0023】
(3)実施例2及び3の作動油供給管14は、油圧ポンプ17の作動油出口と第1連通管10の逆止弁11より前方油口3a側とを接続しているが、図9に示すように、油圧ポンプ17の作動油出口と第2連通管12のフロート弁4b及び流量制御弁13より前方油口3a側とを接続しても良い。
また、作動油排出管16は、油圧タンク18と第1連通管10の逆止弁11より後方油口3b側とを接続しているが、図9に示すように、油圧タンク18と第2連通管12のフロート弁4b及び流量制御弁13より後方油口3b側とを接続しても良い。
さらに、作動油供給管14は図6のように接続し、作動油排出管16は図9のように接続する態様としても良く、逆に作動油供給管14は図9のように接続し、作動油排出管16は図6のように接続する態様としても良い。
【符号の説明】
【0024】
1 扉体 1a 扉体駆動アーム
2a 上流側の水路 2b 下流側の水路
3 両ロッド式油圧シリンダ 3a 前方油口 3b 後方油口
4a フロート 4b フロート弁 4c フロート装置収納箱
5 戸当金物 6 ヒンジ金物 7 トラニオン式軸受
8 ロッド 9 先端金物 10 第1連通管
11 逆止弁 12 第2連通管 13 流量制御弁
14 作動油供給管 14a 供給用接続口
15a 供給用逆止弁 15b 排出用パイロット付逆止弁
16 作動油排出管 16a 排出用接続口 17 油圧ポンプ
18 油圧タンク 19a 上流側水位 19b 下流側水位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9