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  • 特開-養生の管理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082585
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】養生の管理システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
E04G21/02 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196458
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 稔
(72)【発明者】
【氏名】畑 信次
(72)【発明者】
【氏名】佐々 嘉宣
(72)【発明者】
【氏名】原 靖宗
(72)【発明者】
【氏名】小島 正朗
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172EA06
2E172EA13
2E172HA03
(57)【要約】
【課題】温度コントローラーやその一部が故障し、養生温度の管理ができなくなった場合に、労力をかけずにコンクリートやモルタルが異常に高い温度や加温不足になることを防ぎ、これらに起因するコンクリートやモルタルの品質低下を抑制することができる養生の管理システムを得る。
【解決手段】養生の管理システムは、一対のコンクリート部材の内少なくとも一方がプレキャストコンクリート部材であるコンクリート部材間の目地部用のモルタル又はコンクリートを加温するヒーターと、モルタル又はコンクリートの温度を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて前記ヒーターを制御し、モルタル又はコンクリートの温度を閾値温度以内とする制御部と、検出部での検出結果によって前記モルタル又はコンクリートの温度の異常を検知し、管理者に異常を知らせる機能と遠隔で確認できる機能を有し、ヒーターの稼働を停止させる検知部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のコンクリート部材の内少なくとも一方がプレキャストコンクリート部材である前記コンクリート部材間の目地部用のモルタル又はコンクリートを加温するヒーターと、
前記モルタル又はコンクリートの温度を検出する検出部と、
前記検出部での検出結果によって前記モルタル又はコンクリートの温度の異常を検知し、前記ヒーターの稼働を停止させる検知部と、
を備える養生の管理システム。
【請求項2】
前記検知部が異常時に管理者に異常を知らせる機能と外部から状況を確認できる機能を有しており前記ヒーターの稼働を停止させるのは、前記検知部が前記モルタル又はコンクリートの温度の異常を検知してから閾値時間を経過したときである、
請求項1に記載の養生の管理システム。
【請求項3】
前記モルタル又はコンクリートの温度を閾値温度以内とする制御部は、ネットワークに繋がれており外部から操作可能とされている、
請求項1又は2に記載の養生の管理システム。
【請求項4】
前記検出部は、少なくとも前記モルタル又はコンクリートの中央部分の温度と、外側部分の温度とを検出し、
前記検知部は、前記モルタル又はコンクリートの中央部分の温度と外側部分の温度との差が閾値差以上となると、前記モルタル又はコンクリートの温度の異常として検知する、
請求項1~3の何れか1項記載の養生の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モルタル又はコンクリートの養生の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートもしくはモルタルの強度発現は温度の影響を大きく受ける。早期に効率的に強度を発現させる目的で、40℃から最大200℃程度の温度で蒸気養生もしくはオートクレーブ養生を実施されることが頻繁に行われる。これらの高温養生を効率的に実施することを目的に従来から検討がなされており、特許文献1に記載のコンクリート養生システムでは、ヒーター部分(ボイラー部分)と温度測定装置と温度制御装置と管理装置とを備え、温度測定装置からのコンクリートの温度の測定信号を電話回線で管理装置に送信し、管理装置から温度制御装置を制御する制御信号を電話回線で送信して、コンクリートの温度を管理するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-322470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の養生システムは、20年以上前のシステムであり、今では当たり前のものとなっており、ヒーターは含まないが、温度測定装置と温度制御装置と管理装置が一体となった温調装置(温度コントローラー)が市販されている。小型の温度コントローラーとして、例えば、アズワン製 デジタル温度調節器 TC-3000Aなどが市販されている。これらの温度コントローラーは、コンクリートの温度の上がり方に応じて、ヒーターの出力の大小を変化させて、所定の温度を保持するように養生温度を管理するようになっている。しかし、現場では、温度コントローラー自体が不慮の事故(雨に濡れる、ぶつかるなど)により故障したり、温度コントローラーの電源が他業者に抜かれたり、他業者が分電盤を急に使用して容量オーバーとなったりする事象が生じ、場合によっては養生温度を管理することが難しくなる。
【0005】
このような事故が発生すると、例えばコンクリートやモルタルが異常に高い温度になったり、急に低温になったりして、コンクリートやモルタルの品質が低下する。これらに対応するため従来、加温養生業者は、加温中は常に現場に常駐して加温状況を見守る労務が発生し現場から離れることができない。常に、加温するコンクリートのその場所にいる必要があり、現場事務所にすら居ることができない。
【0006】
本開示の課題は、温度コントローラーやその一部が故障し、養生温度の管理ができなくなった場合に、コンクリートやモルタルが異常に高い温度や加温不足になることを防ぎ、これらに起因するコンクリートやモルタルの品質低下を抑制することである。また、加温養生業者の労務を低減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る養生の管理システムは、一対のコンクリート部材の内少なくとも一方がプレキャストコンクリート部材である前記コンクリート部材間の目地部用のモルタル又はコンクリートを加温するヒーターと、前記モルタル又はコンクリートの温度を検出する検出部と、前記検出部での検出結果によって前記モルタル又はコンクリートの温度の異常を検知し、前記ヒーターの稼働を停止させる検知部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
第1態様に係る構成によれば、例えば、制御部による温度制御が不能になった場合に、検知部が、検出部での検出結果によってモルタル又はコンクリートの温度の異常を検知し、ヒーターの稼働を停止させる。このように、養生温度の管理が不能となった場合でも、モルタル又はコンクリートが異常に高い温度なることに起因してモルタル又はコンクリートの品質が低下するのを抑制することができる。
【0009】
第2態様に係る養生の管理システムは、第1態様に記載の養生の管理システムにおいて、異常時に管理者に異常を知らせる機能を有し、外部からヒーターの状況が確認できる機能を有しており、前記検知部が前記ヒーターの稼働を停止させるのは、前記検知部が前記モルタル又はコンクリートの温度の異常を検知してから閾値時間を経過したときであることを特徴とする。
【0010】
第2態様に係る構成によれば、検知部は、モルタル又はコンクリートの温度の異常を検知した直後にヒーターの稼働を停止することなく、管理者が現場作業員に異常を知らせる。検知部がモルタル又はコンクリートの温度の異常を検知してから閾値時間を経過したときに、検知部は、ヒーターの稼働を停止する。つまり、発報に気づき管理者もしくは現場員が遠隔で状況を確認し閾値時間内に異常事態を解消した場合には、ヒーターの稼働を継続させる。このように、閾値時間内に異常事態が解消された場合には、ヒーターの稼働を停止させないことでモルタル又はコンクリートの温度が低下するのを抑制し、工期が長くなるのを防止することができる。
【0011】
第3態様に係る養生の管理システムは、第1又は第2態様に記載の養生の管理システムにおいて、モルタル又はコンクリートの温度を閾値温度以内とする制御部は、ネットワークに繋がれており外部から操作可能とされていることを特徴とする。
【0012】
第3態様に係る構成によれば、遠隔地に管理者がいた場合に、遠隔地から、加温方法(ヒーター出力や加温時間)などを調整でき、加温を停止させないことが可能になる。閾値時間内に異常事態が解消された場合には、ヒーターの稼働を停止させないことでモルタル又はコンクリートの温度が低下するのを抑制し、工期が長くなるのを防止することができる。
【0013】
第4態様に係る養生の管理システムは、請求項1~3の何れか1項に記載の養生の管理システムにおいて、前記検出部は、少なくとも前記モルタル又はコンクリートの中央部分の温度と、外側部分の温度とを検出し、前記検知部は、前記モルタルの中央部分の温度と外側部分の温度との差が閾値差以上となると、前記モルタルの温度の異常として検知することを特徴とする。
【0014】
第4態様に係る構成によれば、モルタル又はコンクリートの中央部分と外側部分とで品質差が生じるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、温度コントローラーやその一部が故障し、養生温度の管理ができなくなった場合に、コンクリートやモルタルが異常に高い温度や加温不足になることを防ぎ、これらに起因するコンクリートやモルタルの品質低下を抑制することができる。また、加温養生業者の労務を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の実施形態に係る養生の管理システムを示した概略構成図である。
図2】本開示の実施形態に係る養生の管理システムに用いられた熱電対の配置を示した図面である。
図3】本開示の実施形態に係る養生の管理システムを用いて養生を管理する管理の流れを示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施形態に係る養生の管理システムについて図1図3に従って説明する。
(養生の管理システム100)
養生の管理システム100(以下単に「管理システム100」)は、図1に示されるように、一対のプレキャストコンクリート部材である柱部材110の目地部(接合部)の目地モルタル112(以下単に「モルタル112」)の養生温度を管理するものである。柱部材110は、コンクリート部材の一例である。なお、本発明の管理システム100は目地部だけではなく、現場でコンクリート部材単体に対して行う蒸気養生などにも使用する事が出来る。
【0018】
管理システム100は、柱部材110の接合が行われる現場(コンクリートを加熱する箇所)に配置される機材と、現場から離れた遠隔地に配置される機材と、現場もしくは遠隔地のどちらにあっても良い機材を備えている。
【0019】
現場において管理システム100は、熱電対18(図2参照)、ヒーター20、温調器24、スイッチ28、温度取得器32、制御パソコン36、警報器62を備えている。
また、現地もしくは遠隔地において管理システム100は、検知管理パソコン56を備えている。さらに、遠隔地において管理システム100は、遠隔操作パソコン150、及びスマホ130、警報器62を備えている。また、管理システム100は、各地を無線で繋ぐWIFIアダプタ40を備えている。
なお、管理者は、加温機器のセットやトラブル対応は現地で実施するが、加温中は遠隔地を職場とする。
【0020】
〔熱電対18、ヒーター20〕
熱電対18は、モルタル112の温度を検出する部材であって、図2に示されるように、複数設けられている。そして、熱電対18は、外側からモルタル112を臨む部分と、モルタル112の中央部分とに配置されている。熱電対18は、検出部の一例である。
ヒーター20は、モルタル112を加温する部材であって、ヒーター20には、面状発熱体であるラバーヒーターが用いられている。このヒーター20は、図1に示されるように、一対の柱部材110が対向する部分に柱部材110の側面からモルタル112を覆うように柱部材110の側面に貼り付けられている。さらに、ヒーター20を外側から覆う断熱部材(図示省略)が設けられている。
【0021】
この構成において、ヒーター20に電力が供給されることで、ヒーター20の温度が上昇し、ヒーター20がモルタル112を加温する。
【0022】
なお、本実施形態では、ヒーター20としてラバーヒーターを用いたが、モルタル112を加温すればよく、モルタル112の内部に電熱線などの加熱線を配置することで、モルタル112を加温してもよい。
また、外側からモルタル112を臨む部分に配置された熱電対18については、ヒーター20に取り付けられてもよい。さらに、蒸気養生に用いられるボイラー形式のヒーターであってもよい。
【0023】
〔温調器24〕
温調器24は、ヒーター20の温度を制御する部材であって、ヒーター20に接続されている。そして、温調器24は、制御パソコン36からヒーター20の温度制御用のプログラムを受け取りヒーター20の温度を制御する。制御パソコン36には温度制御ソフト36aがインストールされている。温調器24は、制御部の一例である。
【0024】
この構成において、温調器24は、外側からモルタル112を臨む部分に配置された熱電対18から受け取るヒーター20の温度データと、温度制御用の加温プログラムに基づいて、ヒーター20の温度を上昇、維持、低下させる。そして、温調器24は、モルタル112の温度を閾値以内とする。
【0025】
〔スイッチ28〕
スイッチ28は、温調器24への電力の供給を停止又は継続することができる部材である。
【0026】
この構成において、スイッチ28は、検知管理パソコン56からの指示により、電力が供給されている温調器24への電力の供給を停止する。これにより、ヒーター20によるモルタル112に対する加温が停止する。ヒーターの電力供給が温調器を介さない場合は、ヒーターの電力供給を直接停止する。
【0027】
〔制御パソコン36、温度制御ソフト36a〕
制御パソコン36は、温調器24に接続されている。制御パソコン36には、モルタル112の温度を制御する温度制御ソフト36aがインストールされている。
【0028】
〔検知管理パソコン56、温度監視ソフト56a〕
検知管理パソコン56は、温度取得器32と接続され、また、スイッチ28を介して温調器24に接続されている。検知管理パソコン56には、ヒーター20及びモルタル112の温度を監視する温度監視ソフト56aがインストールされている。また、検知管理パソコン56は、有線もしくは無線にて警報器62に接続されており、さらに、有線もしくは無線にてスマホ130に接続されており、スマホ130にメールの送信、着信を鳴らす機能を有する。また、検知管理PC56はネットワークに接続され後述の遠隔操作PC・スマホから監視ソフトを閲覧できる機能を有する。検知管理パソコン56及び温度監視ソフト56aは、検知部の一例である。
【0029】
なお、検知管理パソコン56は、制御パソコン36、又は後述する遠隔操作パソコン150に温度監視ソフト56aがインストールされている場合は省略することができる。ただし、制御パソコン36と兼務する場合は、制御パソコン36はバッテリー式の電源を有するものとする。また、監視機能を持続させるため、検知管理パソコン56として、制御パソコン36もしくは、後述する遠隔操作パソコン150を使用する場合は、継続的に運転しつづけた状態とする。
【0030】
この構成において、制御パソコン36が、モルタル112に対する加温を温調器24に指示することで、温調器24は、モルタル112を加温する。さらに、検知管理パソコン56は、熱電対18が検出したモルタル112の温度データを温度取得器32から受け取り、モルタル112の温度を監視する。なお、検知管理パソコン56の具体的構成については、後述する作用と共に説明する。
【0031】
〔温度取得器32〕
温度取得器32は、ヒーター20の温度データとモルタルの内部温度を所定時間毎に記録する部材であって、外側からモルタル112を臨む部分と、モルタル112の中央部分とに配置された熱電対18(図2参照)に接続されている。
【0032】
この構成において、温度取得器32は、各熱電対18が検出した温度データを所定時間毎にオンラインサーバー(以下単に「サーバ」と記載することがある)にアップロードする。さらに、温度取得器32によってアップロードされた温度データは、WEBスクロール機能を有する温度監視ソフト56aがインストールされた検知管理パソコン56によって監視される。前述の通り、温度監視ソフト56aを現場の制御パソコン36に入れている場合は、制御パソコン36が監視する。上記は温度取得器32から温度監視ソフト56aへのアップロードの一例を示しているが、直接、温度監視ソフト56aに送るものでも良い。オンラインサーバーを介することで、オンライン上の記録媒体が増え、監視ソフトが故障した場合も、温度が確認できるメリットがある。
【0033】
〔遠隔操作パソコン150〕
遠隔操作パソコン150は、現場から離れた遠隔地に配置されており、オンライン通信によって、検知管理パソコン56および現場の制御パソコンとの間で通信可能となっている。
【0034】
この構成において、制御パソコン36は、検知管理パソコン56および温度監視ソフト56aから現場の状況を遠隔地から確認し、異常時に遠隔地から制御パソコン36を操作する。
【0035】
〔警報器62〕
警報器62は、点滅及びアラーム音によって警報を発する部材であって、現場及び現場から離れた遠隔地に配置されており、それぞれが、検知管理パソコン56に接続されている。制御パソコン36もしくは遠隔操作パソコン150に温度監視ソフト56aが入っており。検知管理パソコン56が省略されている場合は、警報器62は、制御パソコン36又は遠隔操作パソコン150に接続されている。
この構成において、温度監視ソフト56aがサーバにアップロードされた温度データによって異常を検知すると、警報器62は、点滅及びアラーム音によって、周囲へ異常を知らせる。
【0036】
(作用)
次に、管理システム100の作用について、図3に示すフロー図を用いて説明する。
例えば、温調器24によるモルタル112の加温に対する温度制御が不能になった場合には、温度監視ソフト56aは、温度取得器32によってサーバにアップロードされた温度データから異常を検知する。そして、ステップS100で、温度監視ソフト56aが異常事態の発生を発信する。
【0037】
例えば、加温されているモルタル112の温度が閾値から外れた場合、温度取得器32によって温度データが所定時間内にサーバにアップロードされなかった場合、制御パソコン36、温調器24の電源が遮断された場合、又はモルタル112の中央部分の温度と外側部分の温度との差が閾値差以上となった場合に、温度監視ソフト56aが異常事態の発生を発信する。
【0038】
具体的には、温度監視ソフト56aは、警報器62を稼働させて、点滅及びアラーム音等の警報によって、周囲へ異常事態の発生を発信する。さらには、温度監視ソフト56aは、管理者が所有するスマホ130に異常事態である旨のメールを管理者が気付くまで所定間隔で送付する。またスマホ130に着信を鳴らし続ける。温度監視ソフト56aが、異常事態の発生を発信すると、ステップS200へ移行する。
【0039】
ステップS200では、温度監視ソフト56aは、異常事態の発生を発信してから閾値時間内(例えば、30分以内)に管理者が警報を解除したか否かを判断する。管理者が温度監視ソフト56aを遠隔地から確認し、温度監視ソフト56aを操作して閾値時間内に警報を解除した場合には、ステップS300へ移行する。一方、管理者が閾値時間内に警報を解除しなかった場合には、ステップS310へ移行する。
【0040】
ステップS300では、管理者が、遠隔操作パソコン150を介してオンライン通信によって、温度監視ソフト56aを遠隔から確認し加温状況を確認する。その後、制御パソコン36を遠隔操作、又は現場での作業によって異常事態に対する対策を実施する。
【0041】
例えば、外気温、又は施工箇所の形状が要因となって、加温されているモルタルの温度が閾値から外れている場合には、管理者は、遠隔操作パソコン150により現場の制御パソコン36を介して温調器24を調整する。
【0042】
また、このヒーター20を覆う断熱部材、又はヒーター20が濡れている場合には、管理者は、現場へ行き、現場での補修作業を行う。さらに、断熱部材、又はヒーター20が捲れている場合には、管理者は、現場へ行き、現場での補修作業を行う。また、各部材間の配線に断線が生じた場合には、管理者は、現場へ行き、現場での補修作業を行う。
【0043】
さらに、温度取得器32の故障によって、所定時間内に温度データがサーバにアップロードされなかった場合には、管理者は、現場へ行き、温度取得器32を交換する。
【0044】
そして、閾値時間内(例えば、3時間以内)に、異常事態が解消された場合には、ステップS400へ移行する。一方、閾値時間内(例えば、3時間以内)に、異常事態が解消されなかった場合には、ステップS410へ移行する。
【0045】
ステップS400では、温度監視ソフト56aは、スイッチ28を介してヒーター20によるモルタルの加温を継続させる。
【0046】
一方、ステップS200で、異常事態の発生の発信から閾値時間内(例えば、30分以内)に管理者が警報を解除しなかった場合には、ステップS310へ移行する。ステップS310では、温度監視ソフト56aが、スイッチ28を操作してヒーター20によるモルタルの加温を停止させる。
【0047】
また、ステップS300で、閾値時間内に異常事態が解消されなかった場合は、ステップS410へ移行する。ステップS410では、温度監視ソフト56aが、スイッチ28を操作してヒーター20によるモルタルの加温を停止させる。なお、この場合に設定される閾値時間は、この時間を超えるとモルタルの温度が異常に高くなり、モルタルの品質が低下する可能性がある時間である。
【0048】
(まとめ)
以上説明したように、管理システム100においては、管理者の職場は、現場ではなく、遠隔地である。このため、管理者が常時現場に居る必要がなくなり、省人化となる。
【0049】
また、管理システム100においては、ステップS310、及びステップS410で、ヒーター20によるモルタルの加温を停止させる。これにより、養生温度の管理が不能となった場合でも、モルタルが異常に高い温度なることに起因してモルタルの品質が低下するのを抑制することができる。
【0050】
また、管理システム100においては、閾値時間内に、異常事態が解消されてステップS400へ移行した場合には、ヒーター20によるモルタルの加温を継続させる。つまり、温度監視ソフト56aがヒーター20によるモルタルの加温を停止させるのは、温度監視ソフト56aが異常事態を検知してから閾値時間を経過したときである。このように、閾値時間内に異常事態が解消された場合には、ヒーター20によるモルタルの加温を停止させないことで、モルタルの温度が低下するのを抑制し、かつ、工期が長くなるのを防止することができる。
【0051】
また、管理システム100においては、モルタルの中央部分の温度と外側部分の温度との差が閾値以上となった場合に、制御パソコン36及び検知管理パソコン56は、異常を検知する。これにより、モルタルの中央部分と外側部分とで品質差が生じるのを抑制することができる。
【0052】
なお、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、モルタル112は、一対のプレキャストコンクリート製の柱部材110を接続したが、少なくとも一方がプレキャストコンクリート製の部材であればよい。また、コンクリート部材を蒸気養生するときなど、コンクリート部材単体にも使用する事が可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、WIFIを用いてオンライン通信を可能としたが、他のオンライン通信を用いてもよく、また、有線による通信であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、温度取得器32の電池残量が低下したために異常を検知した場合には、電池を交換することで異常事態を解消することができる。温度取得器は、電池式でなくてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、スマホ130は、携帯であってもよくパソコンであってもよい、また、パソコンは、スマホであってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、検知管理パソコン56がメールや電話、ライトの点滅による発報機能を有していてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、養生管理システム100をモルタルの養生に用いたが、コンクリートの養生に用いてもよい。
【符号の説明】
【0058】
18 熱電対(検出部の一例)
20 ヒーター
24 温調器(制御部の一例)
32 温度取得器
56 検知管理パソコン(検知部の一例)
100 養生管理システム
110 柱部材(コンクリート部材の一例)
112 モルタル


図1
図2
図3