(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082586
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】主桁及びその製造方法、並びにセグメント
(51)【国際特許分類】
E21D 11/04 20060101AFI20230607BHJP
E21D 11/14 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
E21D11/04 Z
E21D11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196459
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中島 正整
(72)【発明者】
【氏名】石田 宗弘
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA01
2D155BB01
2D155CA01
2D155EB05
2D155EB10
2D155KA00
2D155KB04
2D155KB07
(57)【要約】
【課題】バウシンガー効果による軟化を抑制することができる安価な主桁を提供する。
【解決手段】トンネルを構築するセグメントに用いられる主桁2である。主桁2の長さ方向L(周方向Y)は、トンネル100の曲率に対応する円弧形状を有する。円弧形状の曲率を小さくする曲げを正曲げ、円弧形状の曲率を大きくする曲げを負曲げとした場合に、負曲げにおける初期曲げ剛性が、正曲げにおける初期曲げ剛性よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルを構築するセグメントに用いられる主桁であって、
前記主桁の長さ方向は、前記トンネルの曲率に対応する円弧形状を有し、
前記円弧形状の曲率を小さくする曲げを正曲げ、前記円弧形状の曲率を大きくする曲げを負曲げとした場合に、前記負曲げにおける初期曲げ剛性が、前記正曲げにおける初期曲げ剛性よりも小さい主桁。
【請求項2】
前記主桁の桁高方向端部に少なくとも1つのフランジ部を有する、請求項1に記載の主桁。
【請求項3】
形鋼から構成される、請求項1又は2に記載の主桁。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の主桁を備えるセグメント。
【請求項5】
前記主桁は、トンネルの軸方向の両端部に一対となるように配設される、請求項4に記載のセグメント。
【請求項6】
コンクリートを更に備える、請求項4又は5に記載のセグメント。
【請求項7】
トンネルを構築するセグメントに用いられる主桁の製造方法であって、
鋼材の長さ方向を前記トンネルの曲率よりも大きな曲率に曲げ加工する工程と、
前記鋼材の長さ方向を、前記トンネルの曲率に対応する設定曲率に曲げ戻すように曲げ加工する工程と
を含む製造方法。
【請求項8】
前記曲げ加工がロールベンダーによって行われる、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記曲げ加工がプレス曲げによって行われる、請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主桁及びその製造方法、並びにセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
地山などに掘削穴を掘削又は開削穴を開削しつつ、当該穴の内面にセグメントを当該穴の周方向及び軸方向に複数連結して筒状壁体を形成することによってトンネルを構築するシールド工法が知られている。
このシールド工法に用いられるセグメントとしては、主桁、継手板などの部材から構成される鋼殻内にコンクリートを充填したセグメントが広く知られている。このセグメントに用いられる主桁は、トンネルの軸方向の両端に一対となるように配設されることから、その長さ方向がトンネルの曲率に対応する円弧形状に曲げ加工されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、円弧形状の主桁を曲げ加工によって作製すると、バウシンガー効果によって主桁が早期に軟化してしまい、セグメントの強度が低下してしまう。なお、バウシンガー効果とは、所定の方向に応力を加えて塑性変形させた後、逆方向に応力を加えると、再び所定の応力を加えたときよりも小さい応力で塑性変形する現象のことをいう。
そのため、設計上必要な強度を確保するために、主桁の厚みを大きくすることにより、バウシンガー効果による強度の低下を抑制することが必要となる。しかしながら、主桁の厚みを大きくすると、セグメントの重量が増すため、セグメントの取扱い性が低下するとともに製造コストも増大する。
【0005】
他方、曲げ加工の代わりに、厚板材から円弧形状の主桁を切り出す方法を用いることが考えられる。しかしながら、この方法は、主桁を切り出した後の厚板材の無駄が多いため、歩留まりが低く、製造コストが増大する。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、バウシンガー効果による軟化を抑制することができる安価な主桁及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、強度低下が起こり難い安価なセグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、鋼材をトンネルの曲率よりも大きな曲率に曲げ加工した後に、トンネルの曲率に対応する設定曲率に曲げ戻すように曲げ加工することにより、バウシンガー効果による主桁の軟化を抑制し得るという知見を得た。また、本発明者らは、このようにして製造された主桁が、従来の主桁とは異なる特徴を有しているという知見を得た。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、トンネルを構築するセグメントに用いられる主桁であって、
前記主桁の長さ方向は、前記トンネルの曲率に対応する円弧形状を有し、
前記円弧形状の曲率を小さくする曲げを正曲げ、前記円弧形状の曲率を大きくする曲げを負曲げとした場合に、前記負曲げにおける初期曲げ剛性が、前記正曲げにおける初期曲げ剛性よりも小さい主桁である。
【0009】
また、本発明は、前記主桁を備えるセグメントである。
【0010】
さらに、本発明は、トンネルを構築するセグメントに用いられる主桁の製造方法であって、
鋼材の長さ方向を前記トンネルの曲率よりも大きな曲率に曲げ加工する工程と、
前記鋼材の長さ方向を、前記トンネルの曲率に対応する設定曲率に曲げ戻すように曲げ加工する工程と
を含む製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バウシンガー効果による軟化を抑制することができる安価な主桁及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、強度低下が起こり難い安価なセグメントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る主桁を備えるセグメントから構築されるトンネルの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る主桁を備えるセグメントの斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る主桁の製造工程を説明するための概略図である。
【
図4】2段階の曲げ加工によって製造された本発明の実施形態に係る主桁の曲率と曲げモーメントとの関係を表すグラフである。
【
図5】1段階の曲げ加工によって製造された従来の主桁の曲率と曲げモーメントとの関係を表すグラフである。
【
図6】2段階の曲げ加工によって製造された本発明の実施形態に係る主桁を備えるセグメントの曲率と曲げモーメントとの関係を表すグラフである。
【
図7】1段階の曲げ加工によって製造された従来の主桁を備えるセグメントの曲率と曲げモーメントとの関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る主桁を備えるセグメントから構築されるトンネルの斜視図である。
図1に示されるように、トンネル100は、複数のセグメント1がトンネル100の軸方向X及び周方向Yで連結されることで構築される。すなわち、トンネル100は、複数のセグメント1を組み合わせることによって構築される。
【0015】
トンネル100は、シールド工法などにより地山などを掘削して形成された掘削穴、又は地山などを開削して形成された開削穴に設けられる。トンネル100は、例えば、軸方向Xで略円筒形状に形成されるものであるが、その形状はこれに限定されず、略角筒形状などに形成されてもよい。
【0016】
トンネル100は、複数のセグメント1が周方向Yに連結され、セグメントリング50を形成することによって構築される。また、トンネル100は、複数のセグメントリング50が軸方向Xに連結されることで、トンネル100の延長方向となる軸方向Xで略円筒形状などに形成される。
【0017】
トンネル100は、複数のセグメントリング50が軸方向Xに連結されることにより、トンネル100の半径方向となる法線方向Zで、地山側Z1と内空側Z2とを隔てるように構築され、法線方向Zの内空側Z2に所定の内部空間Sが確保される。
【0018】
セグメント1は、本発明の実施形態に係る主桁を備える。セグメント1において、主桁は、トンネル100の軸方向Xの両端部に一対となるように配設することができる。セグメント1はコンクリートを更に備えることができる。
【0019】
ここで、典型的なセグメント1の斜視図を
図2に示す。
図2に示されるように、セグメント1は、軸方向Xの両端部に配設される一対の主桁2と、周方向Yの両端部に配設される一対の継手板3とを備える。一対の主桁2は、軸方向Xに所定の間隔を空けて、互いに略平行に配設される。一対の継手板3は、周方向Yに所定の間隔を空けて、互いに傾斜などするように配設される。主桁2の周方向Yの両端部が、継手板3の軸方向Xの両端部と互いに接合されることで、軸方向X及び周方向Yに所定の間隔を空けた一対の主桁2及び一対の継手板3に四方を取り囲まれた略箱状の鋼殻4が形成される。
【0020】
一対の主桁2及び一対の継手板3に取り囲まれた鋼殻4の内部にはコンクリート6が配置(充填)される。このようにして配置されたコンクリート6は、中詰めコンクリートと一般に称される。また、コンクリート6が配置されたセグメント1は、合成セグメントと一般に称される。
セグメント1は、必要に応じて、法線方向Zで地山側Z1及び内空側Z2のいずれか一方又は両方に、鋼殻4の内部を覆うようにスキンプレート5を設けることができる。
なお、
図2は、地山側Z1にスキンプレート5を設けた5面鋼殻を一例として示している。また、鋼殻4は、一対の主桁2から形成される2面鋼殻であってもよいし、一対の主桁2及び一対の継手板3から形成される4面鋼殻などであってもよい。さらに、
図2において、コンクリート6は、一対の主桁2の間に配置されているが、コンクリート6内に主桁2を埋設するような構成としてもよい。
【0021】
主桁2は、長さ方向(周方向Y)が、トンネル100の曲率r
Bに対応する円弧形状を有する。このような形状を有する主桁2は、
図3に示されるように、鋼材20の長さ方向Lをトンネル100の曲率r
Bよりも大きな曲率r
Aに曲げ加工する工程(以下、「第1曲げ加工工程」という)と、鋼材20の長さ方向Lを、トンネル100の曲率r
Bに対応する設定曲率に曲げ戻すように曲げ加工する工程(以下、「第2曲げ加工工程」という)とを含む方法によって製造することができる。このような2段階の曲げ加工を行うことにより、バウシンガー効果による主桁2の軟化を抑制することができる。そのため、鋼材20の厚みを必要以上に大きくする必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0022】
第1曲げ加工工程で曲げ加工される曲率rAは、トンネル100の曲率rBよりも大きければ特に限定されず、トンネル100の曲率rB、鋼材20の厚みや材質などに応じて適宜設定すればよい。この曲率rAは、トンネル100の曲率rBに対して、典型的に5%以上大きく、好ましくは7%以上大きく、より好ましくは9%以上大きい。
【0023】
第2曲げ加工工程において「トンネル100の曲率rBに対応する設定曲率」とは、トンネル100の曲率rBの±3%以内、好ましくは±2%以内の曲率のことを意味する。これは、実際の主桁2の製造においては、曲げ加工によるスプリングバック現象や、セグメント1を製造する際の主桁2の変形などを考慮する必要があるためである。したがって、第2曲げ加工工程では、トンネル100の曲率rBに曲げ戻すように曲げ加工してもよいし、上記の点を考慮してトンネル100の曲率rBよりも僅かに大きい又は小さい曲率に曲げ戻すように曲げ加工してもよい。
【0024】
第1曲げ加工工程及び第2曲げ加工工程において、曲げ加工の方法は、特に限定されず、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、曲げ加工は、ロールベンダーによって行うことができる。ロールベンダーは、曲げ加工の設定量に自由度があるため、製造コストを低減することができる。また、曲げ加工は、プレス曲げによって行うことができる。プレス曲げは、曲げ加工量を一定とすることができるため、主桁2の品質を安定化させることができる。
【0025】
ここで、2段階の曲げ加工によって製造された主桁2の曲率と曲げモーメントとの関係を表すグラフを
図4に示す。なお、主桁2は、JIS G3101:2015に規定される一般構造用圧延鋼材(厚み27mm)を用いて作製し、第1曲げ加工工程で曲げ加工される曲率r
Aは、トンネル100の曲率r
Bに対して30%大きくした。
また、1段階の曲げ加工によって製造された従来の主桁の曲率と曲げモーメントとの関係を表すグラフを
図5に示す。なお、従来の主桁に用いた鋼材は、主桁2と同じものを用いた。
【0026】
図4に示されるように、2段階の曲げ加工によって製造された主桁2は、負曲げにおける初期曲げ剛性が、正曲げにおける初期曲げ剛性よりも小さい。これに対して、1段階の曲げ加工(従来の曲げ加工)によって製造された従来の主桁は、
図5に示されるように、負曲げにおける初期曲げ剛性が、正曲げにおける初期曲げ剛性よりも大幅に大きい。
ここで、本明細書において「正曲げ」とは、主桁2の曲率を小さくする曲げを意味し、「負曲げ」とは、主桁2の曲率を大きくする曲げを意味する。
また、本明細書において「初期曲げ剛性」とは、曲率が0~φ
max(最大曲率)[m
-1]の領域の曲げモーメントの傾きのことを意味する。φ
maxは、主桁2に用いられる鋼材20の種類や主桁2の桁高に依存する。具体的には、φ
maxは、以下の式(1)によって算出される。
φ
max=2ε
y/H ・・・(1)
式(1)中、ε
yは、鋼材20の降伏応力度に達するときの歪を表し、Hは主桁2の桁高[m]を表す。また、ε
yは、以下の式(2)によって算出される。
ε
y=f
y/E ・・・(2)
式(2)中、f
yは鋼材20の降伏応力度[N/mm
2]を表し、Eは鋼材20のヤング係数[N/mm
2]を表す。
【0027】
図4及び
図5からわかるように、1段階の曲げ加工によって製造された従来の主桁は、バウシンガー効果により、正曲げにおける初期曲げ剛性が大きく低下してしまい、負曲げにおける初期曲げ剛性が正曲げにおける初期曲げ剛性よりも大きくなっている。これに対して、2段階の曲げ加工によって製造された主桁2は、正曲げにおける初期曲げ剛性が低下せず、負曲げにおける初期曲げ剛性が正曲げにおける初期曲げ剛性よりも小さくなっているが、その差異は1段階の曲げ加工によって製造された従来の主桁における差異と比較してかなり小さい。また、2段階の曲げ加工によって製造された主桁2は、正曲げ及び負曲げにおける曲げモーメントの両方を高く維持できているため、バウシンガー効果による軟化(強度低下)を抑制できていると考えられる。
【0028】
次に、2段階の曲げ加工によって製造された主桁2を備えるセグメント1の曲率と曲げモーメントとの関係を表すグラフを
図6に示す。また、1段階の曲げ加工によって製造された従来の主桁の曲率と曲げモーメントとの関係を表すグラフを
図7に示す。なお、この評価で用いた各セグメントは、スキンプレートを除く4面鋼殻を有し、その内部にコンクリートを配置した。
【0029】
図6に示されるように、2段階の曲げ加工によって製造された主桁2を備えるセグメント1は、負曲げモーメント及び正曲げモーメントの両方のピーク値が、平板(曲げ加工していない鋼材20を用いて作製したセグメント)よりも大きい。したがって、2段階の曲げ加工によって製造された主桁2を用いることにより、正曲げ及び負曲げの両方に対する強度が良好であり、強度低下を起こり難くすることが可能となる。
これに対して、1段階の曲げ加工によって製造された従来の主桁を備えるセグメントは、
図7に示されるように、負曲げモーメントのピーク値が平板よりも大きいものの、正曲げモーメントのピーク値が平板よりも小さくなっているとともに、負曲げモーメントと正曲げモーメントとのピーク値の差も大きい。したがって、1段階の曲げ加工によって製造された従来の主桁を用いた場合、正曲げに対する強度は良好であるものの、負曲げに対する強度が十分とはいえない。
【0030】
主桁2の製造に用いられる鋼材20としては、特に限定されないが、形鋼を用いることが好ましい。形鋼を用いることにより、主桁2の製造が容易になる。
形鋼の例としては、平鋼、H形鋼、I形鋼、溝形鋼、山形鋼(L字鋼)などが挙げられる。特に、H形鋼、I形鋼、溝形鋼などを用いることにより、主桁2の桁高(幅)方向(法線方向Z)端部に少なくとも1つのフランジ部を設けることができる。フランジ部を設けることにより、厚みを増大させることなく強度を高めることができるため、主桁2の製造コストを低減することができる。例えば、鋼材20としてH形鋼、I形鋼、溝形鋼などを用いることにより、主桁2の桁高方向に2つのフランジ部を設けることができる。また、鋼材20として山形鋼(L字鋼)などを用いることにより、主桁2の桁高方向に1つのフランジ部を設けることができる。
【0031】
或いは、鋼材20として平鋼を用い、フランジ部となる鋼材を平鋼の桁高(幅)方向端部に接合することにより、主桁2の桁高方向(法線方向Z)端部にフランジ部を設けてもよい。
フランジ部は、2段階の曲げ加工が行われていてもよいし行われていなくてもよい。フランジ部に2段階の曲げ加工を行う場合、フランジ部となる鋼材を平鋼の桁高方向端部に接合した後に、2段階の曲げ加工を行えばよい。また、フランジ部に2段階の曲げ加工を行わない場合、平鋼を2段階の曲げ加工した後に、フランジ部となる鋼材を平鋼の桁高方向端部に接合すればよい。
【0032】
また、形鋼として異形形鋼を用いてもよい。なお、異形形鋼とは、非対称の断面形状を有する鋼材20のことを意味する。異形形鋼としては、特に限定されないが、例えば、
図8に示す断面形状のものが挙げられる。所定の断面形状の異形形鋼を用いることにより、所定の機能(コンクリート6と鋼殻4とのずれ止め、止水機能など)を主桁2に付与することができるため、セグメント1に必要とされる各種部品を省略化することができる。なお、異形形鋼を曲げ加工によって作製した主桁2の形状は、厚板材から当該形状を切り出すことによって作製することが難しいため、当該形状の主桁を、性能を担保しつつ低コストで作製するためには、2段階の曲げ加工を用いることが必要となる。
【0033】
主桁2に用いられる鋼材20の種類としては、特に限定されないが、構造用鋼材を用いることができる。構造用鋼材の例としては、JIS G3101:2015に規定される一般構造用圧延鋼材、JIS G3106:2008に規定される溶接構造用圧延鋼材などが挙げられる。
【0034】
主桁2(鋼材20)の厚みとしては、トンネル100の大きさなどに応じて適宜設定すればよいが、強度及び製造コストの観点から、典型的に9~60mm、好ましくは12~50mmである。
【0035】
上記のような特徴を有する主桁2は、バウシンガー効果による軟化を抑制することができ、しかも安価であるため、トンネル100を構築するセグメント1に用いるのに適している。また、主桁2を備えるセグメント1は、バウシンガー効果による主桁2の軟化が抑制されているため、強度低下が起こり難く、しかも安価である。
【符号の説明】
【0036】
1 セグメント
2 主桁
3 継手板
4 鋼殻
5 スキンプレート
6 コンクリート
20 鋼材
50 セグメントリング
100 トンネル
L 長さ方向
S 内部空間
X 軸方向
Y 周方向
Z 法線方向
Z1 地山側
Z2 内空側