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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082601
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】角背成形装置
(51)【国際特許分類】
   B42C 13/00 20060101AFI20230607BHJP
   B42B 5/00 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B42C13/00
B42B5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196479
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000109727
【氏名又は名称】株式会社デュプロ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 政幸
(57)【要約】
【課題】角背成形に要する時間を短縮できる角背成形装置を提供する。
【解決手段】角背成形装置は、所定の方向に移動可能な角背ローラ306と、背の長手方向が角背ローラ306の移動方向に一致し、角背ローラ306が所定の方向に移動したときに背が押圧されるように冊子を把持するクランパ304と、クランパ304が冊子を把持した状態において、角背ローラ306を開始位置から終了位置まで移動させる制御部と、を備える。開始位置および終了位置の少なくとも一方は、冊子の背の長さに応じた位置である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に移動可能なローラと、
背の長手方向が前記ローラの移動方向に一致し、前記ローラが前記所定の方向に移動したときに背が押圧されるように冊子を把持するクランパと、
前記クランパが冊子を把持した状態において、前記ローラを開始位置から終了位置まで移動させる制御部と、を備え、
前記開始位置および前記終了位置の少なくとも一方は、冊子の背の長さに応じた位置である、角背成形装置。
【請求項2】
搬入されてくる冊子の背を当接させて冊子を所定の位置に停止させるストッパを備え、
前記開始位置は、冊子の背の長さに応じた位置、かつ、前記ストッパと干渉しない位置である、請求項1に記載の角背成形装置。
【請求項3】
前記ストッパを前記所定の方向に移動させる駆動機構を備え、
前記制御部は、前記駆動機構を制御し、前記ストッパを冊子の背の長さに応じた位置に移動させる、請求項2に記載の角背成形装置。
【請求項4】
前記開始位置は、前記所定の方向に並ぶ複数の前記ストッパの間の位置を含む、請求項2または3に記載の角背成形装置。
【請求項5】
前記終了位置は、次の冊子の成形における前記開始位置となる、請求項1から4のいずれかに記載の角背成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角背成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シート束を綴じた箇所で2つ折りして冊子を作成し、冊子の背にローラを圧接させ、それを移動させて角背に仕上げる装置が開示されている。この装置では、背を先頭にして搬送されてくる冊子の背をストッパに当接させて停止し、クランパで把持し、その後ストッパを退避させ、角背ローラを移動させて角背に成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-260564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、角背ローラとストッパが干渉しないように、角背成形が終わると、クランピングジョーの一端の不作用位置に角背ローラを待機させる。したがって、次の冊子を角背成形する場合、冊子の背の長さによらず、角背ローラはこの不作用位置から移動を開始する。冊子の背の長さが短い場合、角背ローラが移動を開始してから冊子の背に圧接するまでの移動距離が長くなる、言い換えると、角背ローラの移動中において角背ローラが冊子の背に圧接しない無駄な移動の距離が長くなる。これは、角背成形に要する時間の短縮の妨げになる。
【0005】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、角背成形に要する時間を短縮できる角背成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の、角背成形装置は、所定の方向に移動可能なローラと、背の長手方向がローラの移動方向に一致し、ローラが所定の方向に移動したときに背が押圧されるように冊子を把持するクランパと、クランパが冊子を把持した状態において、ローラを開始位置から終了位置まで移動させる制御部と、を備える。開始位置および終了位置の少なくとも一方は、冊子の背の長さに応じた位置である。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、角背成形に要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る製本システムの全体構成を示す図である。
図2図1の中綴じ折り装置および角背成形装置の側面図である。
図3】実施の形態に係る製本システムの制御装置を中心とする機能構成を示すブロック図である。
図4図4(a)~(b)は、角背成形装置による角背成形シーンの一例を示す図である。
図5図5(a)~(b)は、角背成形装置による角背成形シーンの一例を示す図である。
図6図6(a)~(b)は、角背成形装置による角背成形シーンの一例を示す図である。
図7図7(a)~(b)は、角背成形装置による角背成形シーンの一例を示す図である。
図8】変形例に係る角背成形装置の角背ストッパおよび角背ローラを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る製本システム10の全体構成を示すブロック図である。製本システム10は、文字や画像が印刷されたシートに後処理を施すシステムであり、シート供給装置100と、中綴じ折り装置200と、角背成形装置300と、断裁装置400と、スタッカ500と、制御装置600と、を備える。シートは、特に限定されないが、典型的には紙である。
【0012】
シート供給装置100は、シートを1枚ずつ供給する。中綴じ折り装置200は、シート供給装置100から供給されたシートに中綴じ折り処理を施す。具体的には中綴じ折り装置200は、シート供給装置100から1枚ずつ供給されるシートを重ねてシート束を作成し、シート束を例えば中央で綴じ、綴じた箇所で2つ折りして冊子を作成する。角背成形装置300は、中綴じ折り装置200が作成した冊子の背を角形に成形する。断裁装置400は、冊子の小口、天、地を断裁して切り揃えて冊子を完成させる。完成した冊子は、スタッカ500に積載される。制御装置600は、例えばPCなどの情報処理端末であり、製本システム10を統括的に制御する。
【0013】
図2は、中綴じ折り装置200および角背成形装置300を模式的に示す側面図である。シートは、中綴じ折り装置200および角背成形装置300の並び方向に搬送される。以降、シートが搬送される方向(図1において右から左に向かう方向)を搬送方向Y、搬送方向Yと直交する方向(図1において紙面に直交する方向)を幅方向Xと呼ぶ。また、幅方向Xについて、上流側から搬送方向Yに見て右側を幅方向Xにおける右側、左側を幅方向Xにおける左側と呼ぶ。また、シートおよび冊子について、搬送方向Yにおける下流側の端縁を先端、上流側の端縁を後端と呼ぶ。
【0014】
中綴じ折り装置200は、シート束を作成してシート束を綴じる綴じ部202と、綴じられたシート束を綴じた箇所で折りたたむ折り部204と、折りたたまれたシート束を角背成形装置300に排出する排出部206と、を備える。
【0015】
綴じ部202は、シートを下流側へ搬送する搬送機構210と、綴じストッパ212と、一対のサイドガイド214と、バックジョガー216と、綴じユニット218と、を含む。シート供給装置100から供給されるシートは、綴じストッパ212に当接して停止し、この位置でシートが積載されてシート束が作成される。
【0016】
一対のサイドガイド214は、シートひいてはシート束を幅方向Xに位置決めする。詳しくは、一対のサイドガイド214は、幅方向Xの間隔が調整可能であり、あらかじめシートの幅に応じた(例えばシート幅に等しい)間隔に調整される。シートは、一対のサイドガイド214の間を搬送されることで、綴じストッパ212に当接するまでに、一対のサイドガイド214によって幅方向Xに位置決めされる。
【0017】
バックジョガー216は、シート束の後端から上流側に少し離れた位置と、シート束に当接する位置との間を複数回往復させることにより、シート束を綴じストッパ212に複数回押し付ける。これにより、シート束の前後の端面が揃えられるとともに、シート束が前後方向に位置決めされる。
【0018】
綴じユニット218は、シート束を綴じる。綴じユニット218は、ステッチャ220と、クリンチャ222と、を含む。ステッチャ220がシート束に綴じ針を打ち込み、打ち込まれた針の針先をクリンチャ222が折り曲げる。シート束が綴じられると、綴じストッパ212が下降し、シート束は折り部204に搬送される。
【0019】
折り部204は、シート束を下流側へ搬送する搬送機構230,231と、折りストッパ232と、図2では図示しない一対のサイドガイドと、バックストッパ236と、一対の折りローラ238と、折りナイフ240と、を含む。綴じ部202から搬送されてきたシート束は、折りストッパ232に当接して停止する。
【0020】
一対のサイドガイドは、シート束を幅方向Xに位置決めする。詳しくは、一対のサイドガイドは、幅方向Xの間隔が調整可能であり、あらかじめシートの幅に応じた(例えばシート幅に等しい)間隔に調整される。シート束は、一対のサイドガイドの間を搬送されることで、折りストッパ232に当接するまでに、一対のサイドガイドによって幅方向Xに位置決めされる。バックストッパ236は、シート束の後端に当接してシート束を折りストッパ232に押し付け、シート束を搬送方向Yに位置決めする。
【0021】
一対の折りローラ238は、軸方向が幅方向Xを向くように搬送方向Yに並設される。折りストッパ232およびバックストッパ236によって搬送方向Yに位置決めされた状態で折りナイフ240を一対の折りローラ238の間に上昇させると、シート束が一対の折りローラ238の間に巻き込まれる。一対の折りローラ238は、巻き込まれたシート束を、2つ折りして冊子の形にするとともに、排出部206に送る。
【0022】
排出部206は、上流側搬送機構242と、下流側搬送機構244と、を含む。つまり、排出部206は、2つの搬送機構を備える。下流側搬送機構244は、上流側搬送機構242の下流側に設けられる。上流側搬送機構242は、折り部204から送り込まれた冊子の形のシート束を下流側搬送機構244に搬送する。下流側搬送機構244は、上流側搬送機構242から送り込まれた冊子を、角背成形装置300において角背成形するための位置である角背成形位置まで搬送する。角背成形位置では、冊子の先端(すなわち背)は角背成形装置300に位置し、冊子の後端は中綴じ折り装置200に位置する。つまり、角背成形のために角背成形位置に停止している冊子の後端側は、下流側搬送機構244のベルトによって支持される。下流側搬送機構244は、角背成形が終了すると、角背成形位置にある冊子をさらに下流へ搬送する。
【0023】
上流側搬送機構242は、中綴じ折り装置200の図示しないメインモータから駆動を取得し、ベルトを常時周回駆動する。下流側搬送機構244は、上流側搬送機構242とは異なる駆動源、すなわち中綴じ折り装置200のメインモータとは異なる駆動源から駆動を取得し、あるいは中綴じ折り装置200のメインモータから電磁クラッチ等を介して駆動を取得し、ベルトを周回駆動する。したがって、上述のように上流側搬送機構242ではベルトを常時周回駆動させつつも、下流側搬送機構244では、角背成形のために冊子を停止させる間、ベルトを停止させることができる。
【0024】
角背成形装置300は、角背ストッパ302と、一対のクランパ304と、角背ローラ306と、下面ガイド308と、を含む。背を先端側にして、かつ、背の長手方向が幅方向Xに一致した状態で、中綴じ折り装置200から搬送されてくる。冊子は、背が角背ストッパ302に当接して停止する。一対のクランパ304は、停止した冊子の背の近傍を把持する。
【0025】
角背ローラ306は、鉛直軸まわりに回転可能、かつ、幅方向Xに移動可能に構成される。角背ストッパ302が角背ローラ306の移動に干渉しない退避位置に退避し、一対のクランパ304が冊子を把持した状態において、角背ローラ306を幅方向Xに移動させると、角背ローラ306に冊子の背が押圧され、冊子は角背に仕上げられる。冊子が角背に仕上げられた後、一対のクランパ304による把持が解除され、角背に仕上げられた冊子は断裁装置400に搬送される。
【0026】
下面ガイド308は、板状の部材であり、軸方向に延在する回動軸310を中心に回動可能である。この回動軸310は、角背ストッパ302や角背ローラ306の下流側に配置された一対の搬送ローラ320の下側の搬送ローラ320のローラ軸を兼ねる。下面ガイド308は、角背成形する際には、角背ローラ306に接触しないように角背ローラ306が移動する空間から退避した姿勢(実線の姿勢)をとる。また、下面ガイド308は、冊子を搬送する際には、主表面308aによって冊子の下面を支持するために、当該空間に進入した姿勢(破線の姿勢)をとる。これにより、角背ローラ306が移動するための空間に冊子が引っかかって詰まるのを抑止できる
【0027】
下面ガイド308に代えて、角背ローラ306の幅方向Xにおける両サイドに、搬送される冊子の下面と平行なガイド面を有するガイド板を設けてもよい。このガイド板は角背ローラ306に対する相対位置が固定されており、したがって角背ローラ306とともに幅方向Xに移動可能である。また、ガイド板は、幅方向Xの寸法が冊子よりも短く構成され、角背ローラ306の位置に関わらず装置の外側にはみ出すことがない。ガイド板は、冊子を搬送する際には、冊子の下面の幅方向Xの一部を支持する。
【0028】
図3は、製本システム10の制御装置600を中心とする機能構成を示すブロック図である。制御装置600の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0029】
制御装置600は、メイン制御部602と、シート供給制御部604と、綴じ制御部606と、折り制御部608と、排出制御部610と、角背制御部612と、断裁制御部614と、を備える。
【0030】
メイン制御部602は、製本システム10を統括的に制御する。メイン制御部602は、例えば、製本処理のジョブの定義について入力を受け付ける。メイン制御部602は、所定のジョブ管理画面を所定のディスプレイに表示し、ジョブ管理画面を介してジョブの定義についての入力を受け付けてもよい。ジョブの定義には、例えば、製本する冊子数、冊子に含まれるシートのサイズ(冊子の背のサイズ)が含まれる。シート供給制御部604、綴じ制御部606、折り制御部608、排出制御部610、角背制御部612、断裁制御部614はそれぞれ、ジョブの定義に基づいて、シート供給装置100、中綴じ折り装置200の綴じ部202、折り部204、角背成形装置300、断裁装置400を制御する。
【0031】
角背成形装置300は、角背ストッパ302を幅方向Xに移動させたり鉛直方向に移動させたりする角背ストッパ駆動機構312と、角背ローラ306を幅方向Xに移動させたり停止させたりするストッパ駆動機構316と、一対のクランパ304に冊子を把持させたりクランパによる把持を解除させたりするクランパ駆動機構314と、下面ガイド308の姿勢を切り替える下面ガイド駆動機構318と、をさらに備える。各駆動機構は、例えばモータを含んで構成され、角背制御部612によって制御される。
【0032】
以上が製本システム10の基本構成である。
【0033】
変形例として、製本システム10は、シート供給装置100に代えて、シートに文字や画像を印刷するプリンタを備え、プリンタから1枚ずつシートを給紙してもよい。
【0034】
つづいて、角背成形装置300による角背成形について詳細に説明する。図4(a)~(b)、図5(a)~(b)、図6(a)~(b)、図7(a)~(b)は、角背成形装置300による角背成形シーンの一例を示す図である。図4(a)~b)、図5(a)~(b)、図6(a)~(b)、図7(a)~(b)のそれぞれにおいて、上側の図は平面図であり、下側の図は幅方向Xに見た側面図である。この例では、角背成形装置300は一対の角背ストッパ302を備える。
【0035】
図4(a)では、角背ローラ306は、移動可能な幅方向Xの範囲R(以下、「可動範囲R」という)の右端に位置している。
【0036】
図4(b)では、角背ストッパ302が停止位置に移動している。「停止位置」は、搬送されてくる冊子を停止可能な位置であって、冊子の背の長さに応じた位置である。角背ストッパ302における「冊子の背の長さに応じた位置」は、幅方向Xにおける冊子の背の両端の近傍に当接可能な位置であってもよい。「冊子の背の両端の近傍」は、例えば、角背ストッパ302の少なくとも一部が、冊子の背を幅方向Xに4等分した場合の両端の部分に当接する位置であってもよい。「冊子の背の長さ」は、ジョブの定義として入力されたシートのサイズに基づいて特定してもよいし、適宜の位置に設けられたセンサにより取得したシートのサイズに基づいて特定してもよいし、適宜の位置に設けられたセンサにより取得された冊子の背の長さであってもよい。
【0037】
この例では冊子S1が搬送されてくるため、角背ストッパ302は冊子S1の背の長さに応じた停止位置に移動している。仮に、冊子S1よりも背の長さが長い冊子S2が搬送されてくる場合、角背ストッパ302は冊子S2の背の長さに応じた停止位置(点線で示した角背ストッパ302の位置)に移動する。つまり、角背ストッパ302は、搬送されてくる冊子の背の長さに応じた停止位置であって、冊子の背の長さが長いほど幅方向Xにおける外側に位置(幅方向Xにおける中央から遠い側に位置)する停止位置に移動する。
【0038】
また、図4(b)では、角背ローラ306が開始位置に移動している。「開始位置」は、角背成形を開始するときの角背ローラ306の位置であり、詳しくは、角背成形位置に到達した冊子がクランパ304に把持されたことと、角背ストッパ302が角背ローラ306の移動に干渉しない退避位置に退避したこと、の両方が満たされたときの角背ローラ306の位置である。
【0039】
開始位置を幅方向Xのどの位置とするかは、角背制御部612が決定すればよい。この例における開始位置は、搬送されてくる冊子の背の長さに応じた位置であり、かつ、停止位置にある角背ストッパ302と干渉しない位置である。開始位置における「冊子の背の長さに応じた位置」は、冊子が搬送されてきたときに角背ローラ306が冊子に接触しない位置であり、かつ、可動範囲Rの最も端の位置を避けた位置(すなわち可動範囲Rの端に位置するときよりも冊子に近い位置)である。
【0040】
好ましくは、「冊子の背の長さに応じた位置」は、幅方向Xにおいて角背ローラ306が冊子に近接する位置である。「近接した位置」は、例えば、後述の図5(a)に示されるように、幅方向Xにおける角背ローラ306と冊子との距離Lが角背ローラ306の半径以下の位置であってもよいし、幅方向Xにおける角背ローラ306と冊子との距離Lが10mm以下の位置であってもよい。この例では冊子S1が搬送されてくるため、角背ローラ306は冊子S1に近接する開始位置に移動している。仮に、S1よりも背の長さが長い冊子S2が搬送されてくる場合、角背ローラ306は冊子S2に近接する開始位置(点線で示した角背ローラ306の位置)に移動する。つまり、好ましくは角背ローラ306は、搬送されてくる冊子の背の長さに応じた開始位置であって、冊子の背の長さが長いほど幅方向Xにおける外側に位置(幅方向Xにおける中央から遠い側に位置)する開始位置に移動する。
【0041】
図5(a)では、搬送されてきた冊子S1が角背ストッパ302に当接して停止している。このときの冊子S1の位置が、角背成形するための位置である角背成形位置である。
【0042】
図5(b)では、一対のクランパ304が冊子S1の背の近傍を把持し、角背ストッパ302は退避位置に退避している。この例では、退避位置は、停止位置から上昇した位置である。好ましくは、一対のクランパ304に冊子S1を把持させてから角背ストッパ302を退避位置に退避させるが、角背ストッパ302を退避させてからクランパ304に冊子S1を把持させてもよいし、角背ストッパ302の退避とクランパ304による冊子S1の把持が実質的に同時に実行されてもよい。
【0043】
クランパ304が冊子S1を把持した状態において、角背ローラ306を開始位置から後述の終了位置まで移動させる。図6(a)は、その移動途中を示している。角背ローラ306が冊子S1に沿って幅方向Xに移動すると、角背ローラ306によって冊子S1の背が押圧される。
【0044】
図6(b)では、角背ローラ306が終了位置まで移動して停止している。冊子S1の背の全体は角背に仕上げられている。「終了位置」は、角背成形を開始するときの角背ローラ306の位置であり、詳しくは、冊子を断裁装置400に向けて搬送するためにクランパ304による冊子の把持を解除したときの冊子の位置である。この例における「終了位置」は、冊子S1の背の長さに応じた位置であり、かつ、角背ストッパ302が退避位置から停止位置に移動した場合に角背ストッパ302と干渉しない位置である。終了位置についての「冊子の背の長さに応じた位置」は、開始位置と同様に、角背ローラ306が冊子に接触しない位置であり、かつ、幅方向Xにおける角背ローラ306と冊子との距離が近接した位置である。
【0045】
図7(a)では、一対のクランパ304による把持が解除され、角背に仕上げられた冊子S1は断裁装置400に向けて搬送されている。
【0046】
図7(b)では、次の冊子に備えて停止位置に移動している。この例では、次の冊子の背の長さはその前の冊子の背の長さと同じであり、前の冊子の角背成形における終了位置は、次の冊子の角背成形における開始位置となる。この場合、角背ローラ306を移動させなくても開始位置は冊子の背の長さに応じた位置になる。
【0047】
なお、上述の説明では、好ましい例として、冊子が角背成形装置300に搬送されてくる前に角背ローラ306を開始位置に移動させているが、これには限定されず、角背ローラ306の開始位置への移動前の位置が、搬送されてくる冊子と接触しない位置であれば、冊子が角背成形位置に到達した後に角背ローラ306を開始位置に移動させてもよい。例えば、一対のクランパ304に冊子を把持させてから角背ストッパ302を退避位置に退避させる場合、あるいは角背ストッパ302の退避とクランパ304による冊子の把持が実質的に同時に実行させる場合、角背ストッパ302が退避位置に退避されるまでに角背ローラ306の開始位置への移動が完了するよう角背ローラ306を移動させればよい。また例えば、角背ストッパ302を退避位置に退避させてから一対のクランパ304に冊子を把持させる場合、一対のクランパ304が冊子を把持するまでに角背ローラ306の開始位置への移動が完了するよう角背ローラ306を移動させればよい。
【0048】
また、上述の説明では、好ましい例として、開始位置および終了位置の両方が、冊子の背の長さに応じた位置である場合について説明したが、これには限定されず、開始位置および終了位置の少なくとも一方が、冊子の背の長さに応じた位置であればよい。例えば、開始位置および終了位置の一方が、角背ローラ306が移動可能な幅方向Xの範囲Rの端の位置であってもよい。
【0049】
以上の角背成形装置300の効果を説明する。
【0050】
本実施の形態によれば、開始位置および終了位置の少なくとも一方が、冊子の背の長さに応じた位置になるため、開始位置および終了位置の両方が冊子の背の長さに応じた長さでない場合に比べて、具体的には例えば、角背ローラ306が移動可能な幅方向Xの範囲Rの一端が開始位置で他端が終了位置であるような場合に比べて、冊子を角背成形する際に角背ローラ306が走行する距離が短くなり、角背成形に要する時間を短縮でき、生産性が向上する。
【0051】
また、本実施の形態によれば、好ましくは、冊子が角背成形装置300に搬送されてくる前に角背ローラ306を開始位置に移動させる。これにより、角背ローラ306が搬送されてくる冊子と接触する事態が生じるのを確実に避けることができる。
【0052】
冊子の背の中央付近に角背ストッパ302が当接すると、冊子が傾斜して停止し、正常に角背成形できない。これに対し、本実施の形態によれば、角背ストッパ302は冊子の背の長さに応じた位置に移動される。これにより、冊子の背の両端の近傍に角背ストッパ302を当接させることができ、冊子が傾斜して停止する事態が生じるのを避けられる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、好ましくは、終了位置は冊子の背の長さに応じた位置であり、かつ、終了位置は次の冊子の角背成形における開始位置となる。これにより、角背ローラ306を移動させなくても開始位置は冊子の背の長さに応じた位置になる。つまり、冊子の背の長さに応じた開始位置にわざわざ移動させなくてよいため、生産性が向上する。
【0054】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0055】
実施の形態では、角背成形装置300が2つの角背ストッパ302を備え、2つの角背ローラ306を冊子の背の長さに応じた位置に移動させる場合について説明したが、これには限定されない。例えば、角背成形装置300は、複数の角背ストッパ302を備え、それら複数の角背ストッパ302が幅方向Xに等間隔に、幅方向Xには移動不可能に設けられてもよい。
【0056】
図8は、変形例に係る角背成形装置300の角背ストッパ302を示す上面図である。この例では、角背成形装置300は、4つの角背ストッパ302を含む。4つの角背ストッパ302は、鉛直方向には移動可能であるが、幅方向Xには移動不可能(すなわち固定的)に設けられる。実線で示した冊子S1のように幅方向Xにおける背の長さが比較的短い冊子S1は、幅方向Xにおける中央側の2つの角背ストッパ302によって停止される。破線で示した冊子S2のように幅方向Xにおける背の長さが比較的長い冊子S2は、幅方向Xにおける両端側の2つの角背ストッパ302を含む4つの角背ストッパ302によって停止される。
【0057】
実線で示した冊子S1のように幅方向Xにおける背の長さが比較的短い冊子の場合、実線で示す角背ローラ306の位置を開始位置としてもよい。つまり、開始位置は、幅方向Xにおいて互いに隣接する2つの角背ストッパ302の間の位置であってもよい。
【0058】
本変形例によれば、複数の角背ストッパ302は幅方向Xには移動不可能であるため角背ストッパ駆動機構312を簡単な構成にできる。
【0059】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0060】
10 製本システム、 300 角背成形装置、 302 角背ストッパ、 304 クランパ、 306 角背ローラ、 600 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8