(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082622
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】冷却ファン付きトロイダルコア
(51)【国際特許分類】
H01F 17/06 20060101AFI20230607BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230607BHJP
H01F 27/08 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
H01F17/06 D
H05K7/20 J
H05K7/20 G
H01F27/08 153
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196521
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164013
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 隆一
(72)【発明者】
【氏名】野上 晴加
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 菜実
【テーマコード(参考)】
5E050
5E070
5E322
【Fターム(参考)】
5E050BA06
5E070BA16
5E070CA07
5E070DA18
5E322AB10
5E322BA03
5E322BB03
5E322BB06
(57)【要約】
【課題】電源ラインなどで発生するノイズで、特にノイズ電流が大きい場合にトロイダルコアからの発熱を効率よく冷却するための冷却ファンを設けた冷却ファン付きトロイダルコアを提供する。
【解決手段】ノイズフィルタとして用いるトロイダルコアと、このトロイダルコアに固定した温度センサーと、トロイダルコアを冷却するための冷却ファンと、温度センサーからの温度データを取り込み、冷却ファンを駆動する制御回路部とを含み構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズフィルタとして用いるトロイダルコアと、
前記トロイダルコアに固定した温度センサーと、
前記トロイダルコアを冷却するための冷却ファンと、
前記温度センサーからの温度データを取り込み、前記冷却ファンを駆動する制御回路部とを含み構成される冷却ファン付きトロイダルコア。
【請求項2】
前記制御回路部は、前記トロイダルコアの許容発熱温度を予め設定し、前記温度センサーからの温度データが前記許容発熱温度に達した場合に前記冷却ファンを駆動することを特徴とする請求項1または2に記載の冷却ファン付きトロイダルコア。
【請求項3】
前記冷却ファンの送風部はリング形状からなり、前記送風部と前記トロイダルコアの軸方向が同一に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の冷却ファン付きトロイダルコア。
【請求項4】
前記冷却ファンは、前記送風部に連通したファン台座を有し、前記ファン台座の内部に送風機が配置され、前記送風機から発生した空気流が前記送風部を介して吹き出す構成からなることを特徴とする請求項3に記載の冷却ファン付きトロイダルコア。
【請求項5】
前記冷却ファンは、リング形状の前記送風部の内部に複数の圧電ファンを配置した構成からなることを特徴とする請求項3に記載の冷却ファン付きトロイダルコア。
【請求項6】
前記温度センサーは、前記トロイダルコアの前記送風部と対向する面の反対側の面に貼り付けて固定されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の冷却ファン付きトロイダルコア。
【請求項7】
前記トロイダルコアの表面には放熱塗料を塗布してあることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の冷却ファン付きトロイダルコア。
【請求項8】
前記冷却用ファンの前記送風部から前記トロイダルコアまで風洞をさらに設けたことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の冷却ファン付きトロイダルコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ対策部品として用いられるトロイダルコアの発熱を抑制するための冷却ファンを取り付けた冷却ファン付きトロイダルコアに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーエレクトロニクス分野、例えば建設機械、産業用ロボット、工作機械、鉄道用インバータ、パワコンやポンプなどの産業機械は大容量・大電流化が進められており、これに伴いノイズ電流も大きくなっており、ノイズ防止対策が重要になっている。ノイズ防止対策の一つとして用いられるトロイダルコアは、ノイズ電流を反射と吸収によりノイズを低減させる機能を有している。ノイズ電流を吸収することで発熱が生じるが、ノイズ電流が大きくなれば発熱量も増大しトロイダルコアが高温になる場合も生じる。トロイダルコアは使われる磁性材料の材質等により磁気特性が異なるが、発熱して高温になるとその特性が低下する場合も生じる。そのために、磁気特性を安定に保持するために発熱して高温になることを抑制することが要求される。また、被覆導線等がトロイダルコアの発熱の影響を受けて被覆部が劣化する場合もあるので、トロイダルコアの発熱を抑制することが課題となっている。
【0003】
この課題に対して、例えばトロイダルコアである磁性体コアでのヒステリシス損によって発生した熱を効率良く放熱することが可能なチョークコイルが開示されている。そのチョークコイルはバスバーと磁性体コアと放熱部とを備え、磁性体コアはバスバーを取り囲んでチョークコイルを形成し、コアの磁路にはギャップを有し、放熱部は熱伝導が良好で磁性体コアに比して透磁率が小さな材料で成形され、その一端がギャップにおいて磁性体コアと接触し、他端がギャップから外方に延伸した構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、磁気部品を効果的に空冷できる構成が開示されている。その磁気コアは、巻線が巻き回される柱状の中脚部と、この中脚部を挟んで巻線の外側に一対をなして配置され、中脚部と相互に一体として連結されている外脚部とを有するものであって、外脚部の少なくとも1つには、巻線の外周面と対向する面に貫通孔が設けられ、貫通孔が設けられた面には、巻線の周方向に沿うように空隙部が設けられ、その空隙部は貫通孔と通じている構成からなる(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、開放型シリンドリカルリアクトル方式のリアクトルの一端側に通風用冷却ブロアを設け、リアクトルとブロアとの間に多数の通風孔を有した非磁性の遮蔽板を設けた構成も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-063041号公報
【特許文献2】特開2012-156351号公報
【特許文献3】特開昭61-285703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明は、磁性体コアの発熱は磁性体コアのギャップに接触している放熱部を介して外部に放散される構成が特徴である。しかし、磁性体コアの周囲環境の温度が高くなってしまうと放熱効果が減少するという課題を有する。
【0008】
特許文献2に記載の発明は、インダクタやトランス等の巻線を有した電気機器用の磁気コアに適用されるものであり、電源ラインなどで発生するノイズ対策に用いられるトロイダルコアに適用することは難しい。
【0009】
特許文献3に記載の発明は、コイルからの磁界が大きいリアクトルに対して用いられるものであり、ノイズ対策のために用いられるトロイダルコアの発熱抑制対策としては使えない。
【0010】
本発明は、電源ラインなどで発生するノイズで、特にノイズ電流が大きい場合にトロイダルコアからの発熱を効率よく冷却するための冷却ファン付きトロイダルコアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明の冷却ファン付きトロイダルコアは、ノイズフィルタとして用いるトロイダルコアと、このトロイダルコアに固定した温度センサーと、トロイダルコアを冷却するための冷却ファンと、温度センサーからの温度データを取り込み、冷却ファンを駆動する制御回路部とを含み構成されている。
【0012】
このような構成とすることにより、例えば大きなノイズ電流のためにトロイダルコアが発熱して高温になっても、冷却ファンにより温度を下げることができる。この結果、発熱による磁気特性の低下や導線の被覆材の劣化が生じるのを防止できる。
【0013】
上記構成において、制御回路部は、トロイダルコアの許容発熱温度を予め設定し、温度センサーからの温度データがこの許容発熱温度に達した場合に冷却ファンを駆動するようにしてもよい。このようにすることにより、許容発熱温度に達したら冷却ファンを駆動して温度を低下させ、許容発熱温度以下になったら冷却ファンを停止するようにすれば、省電力にできるだけでなく冷却ファンの寿命を延ばすこともできる。
【0014】
上記構成において、冷却ファンの送風部はリング形状からなり、送風部とトロイダルコアの軸方向が同一に配置されているようにしてもよい。このような構成とすることにより、例えば電源ラインなどで発生するノイズ除去のためにトロイダルコアの内周部に電源ラインを通すときに送風部も同様に電源ラインを通すことができ、かつ、送風部から出る風がトロイダルコアのリング面に均一にあたるので冷却効果を高めることができる。
【0015】
上記構成において、冷却ファンは送風部と連通したファン台座を有し、ファン台座の内部に送風機が配置され、送風機から発生した空気流が送風部を介して吹き出す構成であってもよい。または、冷却ファンはリング形状の送風部の内部に複数の圧電ファンを配置した構成であってもよい。
【0016】
このような構成とすることにより、ノイズ電流が発生する電源ラインなどの導線をトロイダルコアの内周部に通すときに、冷却ファンのリング形状の内部にも通すことができる。したがって、冷却ファンからの空気流をトロイダルコアの全面に均一にあてることができ冷却効果を高めることができる。
【0017】
上記構成において、温度センサーは、トロイダルコアの送風部と対向するリング面の反対側のリング面に貼り付けて固定するようにしてもよい。このような構成とすることにより、冷却風があたらないリング面の表面温度を測定することになり、トロイダルコアの最も高い発熱温度を測定することができる。
【0018】
上記構成において、トロイダルコアの表面には放熱塗料を塗布してあってもよい。輻射放熱性の高い塗料を塗布することにより、冷却効果をさらに高めることができる。
【0019】
上記構成において、冷却用ファンの送風部からトロイダルコアまで風洞をさらに設けてもよい。風洞を設けることにより冷却ファンからの風が拡散しないのでトロイダルコアへの冷却効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の冷却ファン付きトロイダルコアは、ノイズ電流の大きい場合にトロイダルコアの発熱により高温になることを抑制し、安定な動作をさせることができ、種々の産業用機器分野のノイズ対策部品として使用する場合に大きな効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコアを電源ラインのノイズフィルタとして用いた構成の概略斜視図である。
【
図2】同実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコアについて、15分経過後の発熱温度とインピーダンス変化率を示す図である。
【
図3】同実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコアについて、冷却ファンの風量を変化させたときのトロイダルコアの発熱温度とインピーダンス変化率とを調べた結果である。
【
図4】本発明の第2の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコアの構成を示す概略斜視図である。
【
図5】同実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコアについて、
図4に示す概略斜視図の縦断面図である。
【
図6】本発明の第3の実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコアの構成を示す概略斜視図である。
【
図7】同実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコアについて、
図6に示す概略斜視図の縦断面図である。
【
図8】本発明の第4の実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコアの構成を示す概略斜視図である。
【
図9】同実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコアについて、
図8に示す概略斜視図の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施の形態)
【0023】
本発明の第1の実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコアについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコアを電源ラインなどの導線のノイズフィルタとして用いた構成の概略斜視図である。
【0024】
本実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア1は、ノイズフィルタとして用いるトロイダルコア2と、このトロイダルコア2に固定した温度センサーと、トロイダルコア2を冷却するための冷却ファン3と、温度センサーからの温度データを取り込み、冷却ファンを駆動する制御回路部5とを含み構成されている。なお、温度センサーは、本実施の形態ではトロイダルコア2の送風部3aに対向するリング面2aの反対側のリング面に貼り付けて固定されているので、
図1ではセンサー配線4aのみが見えるだけである。
【0025】
制御回路部5は、トロイダルコア2の許容発熱温度を予め設定し、温度センサーからの温度データが許容発熱温度に達した場合に冷却ファン3を駆動するように設定されている。制御回路部5には、センサー配線4aと冷却ファン3を駆動するためのファン配線3cとが接続され、制御回路部5への電力を供給するための電源配線5aが接続され、電源(図示せず)に接続されている。
【0026】
冷却ファン3は、回転羽根をモータ駆動する送風機3bが配置された送風部3aとファン配線3cとを有する構造であり、トロイダルコア2とほぼ同じ外形寸法としている。ただし、外形寸法はトロイダルコア2と同じ程度であることに限定されず、トロイダルコア2よりも大きくても、あるいは小さくてもよい。
【0027】
本実施の形態では、トロイダルコア2と冷却ファン3とは送風部3aとトロイダルコア2の軸方向がほぼ同一になるように配置し、固定板6上に固定されている。このために、電源ラインなどの導線7はトロイダルコア2の内周部を貫通するが、冷却ファン3にあたらないように折り曲げている。この配置により、冷却ファン3の送風部3aからの風がトロイダルコア2の対向するリング面2aにあたり、発熱を抑える効果を高めることができる。
(実施例)
【0028】
本実施の形態の冷却ファン付きトロイダルコア1の冷却効果を確認するために、冷却をする場合としない場合との発熱温度とインピーダンス変化率の比較および冷却ファンの風量の違いによる発熱温度とインピーダンス変化率とを調べた。なお、この実施例においては、制御回路部3はあらかじめ設定した許容発熱温度の設定をせずに、時間の経過による温度上昇を測定した。
【0029】
トロイダルコア2としては、マンガン系のフェライト(型番:E04RMX201010、外形/内径/長さ=20/10/10mm、初透磁率=10000)を用いた。
ノイズ電流の代わりに電源ラインである導線7に100kHzで正弦波の交流電圧を印加し、15分経過後のトロイダルコア2の温度を測定した。
【0030】
図2は、15分経過後の発熱温度とインピーダンス変化率を示す。本実施の形態の冷却ファン付きトロイダルコア1の場合には、印加電圧が6.8Vの場合でも69.8℃であり、冷却無しの場合の発熱温度95.8℃にくらべて26℃低下させることができた。この温度低下に伴い、インピーダンス変化率も冷却無しの場合が-68.2%に対して冷却した場合にはー19.7%とすることができた。
【0031】
図3は、冷却ファン3の風量を変化させたときのトロイダルコア2の発熱温度とインピーダンス変化率とを調べた結果である。トロイダルコア2としては、
図1で用いたものと同じものを用いている。電源ラインである導線7には、100kHzで正弦波の6.8Vの交流電圧を印加した。
【0032】
冷却ファン3は、12400rpmと3800rpmの2種類の風量を設定した。また、この場合にトロイダルコア2の対向するリング面2aに対してほぼ直交する方向から風を当てる場合とほぼ平行方向から風を当てる場合の2種類についても測定した。
【0033】
図3において、Aは冷却無しの場合、Bはほぼ平行方向から風を3800rpmの風量であてた場合、Cはほぼ直交方向から風を3800rpmであてた場合、Dはほぼ平行方向から風を12400rpmであてた場合、および、Eはほぼ直交する方向から風を12400rpmであてた場合である。図からわかるように、直交する方向から風を当てる場合に冷却効果が高いことが確認された。また、風量を多くする方が冷却効果も高くなることも確認された。この結果により、風量により発熱温度を制御できることを確認できた。
【0034】
なお、
図3の結果からもわかるように本発明は
図1に示すような配置に限定されない。例えば、トロイダルコア2のリング面2aに対して平行方向や斜め方向から風をあてるように冷却ファン3を固定板6上に配置してもよい。
(第2の実施の形態)
【0035】
本発明の第2の実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア10について図面を参照しながら詳細に説明する。
図4は、本実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア10の構成を示す概略斜視図である。
図5は、
図4に示す概略斜視図の縦断面図である。以下、これらの図を用いて本実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア10について説明する。
【0036】
本実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア10は、ノイズフィルタとして用いるトロイダルコア11と、このトロイダルコア11に固定した温度センサー14と、トロイダルコア11を冷却するための冷却ファン12と、温度センサー14からの温度データを取り込み、冷却ファン12を駆動する制御回路部13とを含み構成されている。
【0037】
制御回路部13は、トロイダルコア11の許容発熱温度を予め設定し、温度センサー14からの温度データがこの許容発熱温度に達した場合に冷却ファン12を駆動するように構成されている。許容発熱温度は、トロイダルコア11の材質やトロイダルコア11を貫通する電源ラインなどの導線18の被覆部の耐熱性などにより設定する。そして、例えば許容発熱温度を95℃に設定した場合、電源ラインなどの導線18のノイズ電流によりトロイダルコア11が発熱していき、95℃に達したら制御回路部13は冷却ファン12を駆動してトロイダルコア11を冷却する。冷却により95℃以下になれば冷却ファン12の駆動を停止するようにしている。
【0038】
本実施の形態では、冷却ファン12は、ファン台座12bの中に配置された送風機12dが回転し、ファン台座12bの外周領域に多数設けられた孔(図示せず)から外部の空気を吸い込み、ファン台座12bと一体構成からなる送風部12aに向けて空気が流れ、送風部12aの内周面に設けられた多数の孔(図示せず)から吹き出すようにしてある。この空気流16により、トロイダルコア11の対向するリング面11aを冷却する。この空気流16に伴い、周囲の空気17が送風部12aに向かって引き寄せられるので、空気流16はこの周囲の空気の流れ17を含んだものとなる。
【0039】
送風部12aの外形寸法はトロイダルコア11の外形寸法とほぼ同じ程度が好ましいが、必ずしも同じ程度であることは必要としない。送風部12aの外形寸法のほうがトロイダルコア11の外形寸法に比べて小さくてもよいし、あるいは大きくてもよい。ただし、送風部12aの外形寸法がトロイダルコア11の外形寸法に比べて大きくなると、冷却ファン付きトロイダルコア10の設置領域を大きくする必要が生じるので、使い勝手が悪くなる場合がでてくる。また、送風部12aの内径寸法はトロイダルコア11の内径寸法とほぼ同じ程度が好ましいが、必ずしも同じ程度であることは必要としない。トロイダルコア11の内径寸法よりも小さくてもよいが、少なくとも電源ラインである導線18を通すことができる程度の大きさは必要である。また、内径寸法が小さくなると送風部12aからの送風量が減るので冷却効果が減少する場合が生じる。
【0040】
送風機12dは、モータ(図示せず)によりファンを回転させて空気流を作る構造である。モータとしては、交流モータでもよいし直流モータでもよく、特に限定されない。
【0041】
送風部12aとトロイダルコア11の軸方向がほぼ同一になるように配置されているので、トロイダルコア11の内周部に電源ラインである導線18を通すときに、送風部12aも同様に通すことができる。このため、空気流16をトロイダルコア11の対向するリング面11aに均一にあてられるので冷却効果を高めることができる。
【0042】
温度センサ14は、トロイダルコア11の送風部12aに対向するリング面11aの反対側のリング面に貼り付けて固定している。固定方法としては、接着剤を用いるのが簡単で好ましいが、他の方法であってもよい。
【0043】
制御回路部13は、センサー配線14aおよび冷却ファン12への電力を供給するためのファン配線12cが接続されており、さらに制御回路部13に電力を供給する電源配線13aも設けられている。なお、制御回路部13の内部に電池を内蔵させる構成としてもよい。この場合には、電源配線13aは不要となる。制御回路部13は、温度センサー14からの温度データを検出し、許容発熱温度に達した時に冷却ファン12を駆動する。これにより冷却ファン12の送風部12aから空気流16が噴き出てトロイダルコア11を冷却する。
【0044】
トロイダルコア11は、リング状のベルト11bにより固定され、コア台座11cに固定されている。コア台座11cは、冷却ファン12の送風部12aとトロイダルコア11の対向するリング面11aとがほぼ平行になるように配置されている。ただし、送風部12aからの空気流16がトロイダルコア11の対向するリング面11aにあたるように設定されていれば多少の傾きがあってもよい。コア台座11cとファン台座12bとは固定板15に固定されている。制御回路部13も固定板15上に配置されている。
【0045】
トロイダルコア11としては、酸化鉄を主成分にコバルトやニッケル、マンガンなどを混合焼結したフェライトコア、ナノクリスタルを焼結して作製する磁性体コア、その他の磁性体コアで、ノイズフィルタとして用いられるものであればいずれも使用できる。
【0046】
このような冷却ファン付きトロイダルコア10を用いることにより、電源ラインなどの導線18に大きなノイズ電流が流れトロイダルコア11が発熱しても許容発熱温度内に発熱温度を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、送風部12aとトロイダルコア11のリング面11aとの間隔は、リング面11aに冷却風が効率よくあたる位置に設定すればよい。
(第3の実施の形態)
【0047】
本発明の第3の実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア25について図面を参照しながら詳細に説明する。
図6は、本実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア25の構成を示す概略斜視図である。
図7は、
図6に示す概略斜視図の縦断面図である。以下、これらの図を用いて本実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア25について説明する。
【0048】
本実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア25は、第2の実施の形態で説明した冷却ファン付きトロイダルコア10に対して、冷却用ファン12の送風部12aからトロイダルコア11まで風洞19をさらに設けた構成からなる。その他の構成については、第2の実施の形態と同じであるので以下では異なる点についてのみ説明する。
【0049】
本実施の形態では、
図6および
図7に示すように風洞19を設けている。風洞19は、送風部12aとトロイダルコア11との周囲を取り囲むように構成している。このため、送風部12aとファン台座12bとの接続部領域およびトロイダルコア11とコア台座11cとの接続部領域については、風洞19に切欠き(図示せず)を設けている。また、風洞19は図示しない固定部で固定板15に固定されている。風洞の材質としては、アルミニウムや樹脂材料などの非磁性材料を用いることが望ましい。樹脂材料を用いれば、種々の形状を容易に成形できるので好ましい。
【0050】
図7に示すように、風洞19を設けることにより送風部12aからの空気流16が発散することを防ぎ、トロイダルコア11により多くあてることができる。また、風洞19とトロイダルコア11との隙間が小さいために、この空間を流れる空気流20は速度が速くなるのでより効率的な冷却を行うことができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、送風部12aとトロイダルコア11のリング面11aとの間隔は任意に設定でき、例えばリング面11aに冷却風が効率よくあたる位置に設定することができる。
(第4の実施の形態)
【0052】
本発明の第4の実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア30について図面を参照しながら詳細に説明する。
図8は、本実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア30の構成を示す概略斜視図である。
図9は、
図8に示す概略斜視図の縦断面図である。以下、これらの図を用いて本実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア30について説明する。
【0053】
本実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア30は、第2の実施の形態で説明した冷却ファン付きトロイダルコア10において、冷却ファン31を圧電方式の冷却ファンに代えたものであり、トロイダルコア11などは同じである。第2の実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア10と同じものについては同じ符号を付しているので説明を省略する。
本実施の形態に係る冷却ファン付きトロイダルコア30の冷却ファン31について説明する。
【0054】
図8および
図9に示すように、冷却ファン30は送風部31aの外周領域部に圧電ファン31dが複数個設けられ、この圧電ファン31dの作用によりトロイダルコア11の対向するリング面11aに空気流があたるように構成されている。ファン台座31bは単なる台座であり、ファン配線31cは複数の圧電ファン31dに接続されている。
【0055】
制御回路部13から駆動電力が印加されれば、圧電ファン31dが駆動する。圧電ファン31dは、団扇で風を送るような動きをして空気流32を発生させる。この空気流32の発生に伴い、周囲の空気33も取り込んで混合した空気流32が形成され、対向するリング面11aにあたり冷却する。
【0056】
圧電ファン31dを使った冷却ファン31の場合も、電源ラインなどの導線18を容易に通すことができ、空気流32が対向する面11aに効率よくあたるので冷却効果を高めることができる。
【0057】
本実施の形態では、団扇で風を送るような動きをする圧電ファン31dを用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、円盤形状として、この円盤が振動することで風を発生させるような構造のものであってもよい。
【0058】
また、本実施の形態の場合にも第3の実施の形態と同じように風洞を設けてもよい。風洞を設けることによりトロイダルコア11への冷却効果を高めることができる。風洞の材質としては、アルミニウムや樹脂材料などの非磁性材料を用いることが望ましい。樹脂材料を用いれば、種々の形状を容易に成形できるので好ましい。
【0059】
なお、本実施の形態では、送風部12aとトロイダルコア11のリング面11aとの間隔は任意に設定でき、例えばリング面11aに冷却風が効率よくあたる位置に設定することができる。
【0060】
また、第2の実施の形態から第4の実施の形態までにおいて、送風部はアルミニウムや樹脂材料などの非磁性材料を用いることが望ましい。樹脂材料を用いれば、種々の形状を容易に成形できるので好ましい。
【0061】
なお、第1の実施の形態から第4の実施の形態までにおいては、トロイダルコア2、11には表面コーティングしないものを用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、トロイダルコア2、11の表面には放熱塗料を塗布して用いてもよい、放熱塗料を塗布することでさらに冷却効率を高めることができる。なお、放熱塗料としては、輻射放熱性を高める塗料があり、例えば星和電機株式会社製のスターチルドA、オキツモ株式会社製のクールテックあるいはペルノックス株式会社製のペルクールなどだけでなく、塗料としてつかえるものであれば特に制約なく使用可能である。
【0062】
また、第1の実施の形態から第4の実施の形態までにおいては、トロイダルコア2、11を固定するためのベルト11bを用いたが、本発明はこれに限定されない。フェライトなどのトロイダルコアを収納する格納カバーを設けたものを用いてもよい。この場合には格納カバーを通して風をあてるようにしてもよい。あるいは、格納カバーに多数の孔または複数の貫通溝を形成しておき、これらの孔または貫通溝を通してトロイダルコアに風をあてるようにしてもよい。
【0063】
さらに、第1の実施の形態から第4の実施の形態までにおいては、制御回路部はトロイダルコアの許容発熱温度を予め設定し、温度センサーからの温度データが許容発熱温度に達した場合に冷却ファンを駆動するように設定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、温度センサーの温度データに基づき、冷却ファンの風量を変化させるようにしてもよい。例としては、発熱温度があまり高くない場合には風量を小さくし、発熱温度が高くなると風量を大きくするように制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の冷却ファン付きトロイダルコアは、ノイズ電流が大きく発熱が生じやすい場合に有効であり、コモンモードノイズフィルタなどのノイズフィルタ分野に有用である。
【符号の説明】
【0065】
1、10、25、30 冷却ファン付きトロイダルコア
2、11 トロイダルコア
2a、11a 対向するリング面
3、12、31 冷却ファン
3a、12a、31a 送風部
3b 送風機
3c、12c、31c ファン配線
4、14 温度センサー
4a、14a センサー配線
5、13 制御回路部
5a、13a 電源配線
7、18 導線
11b ベルト
11c コア台座
12b、31b ファン台座
12d 送風機
6、15 固定板
16、20、32 空気流
17、33 周囲の空気
19 風洞
31d 圧電ファン