(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082632
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20230607BHJP
【FI】
H01L33/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196554
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】神原 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】重枝 裕司
(72)【発明者】
【氏名】市川 幸治
(72)【発明者】
【氏名】石河 裕之
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA32
5F142AA58
5F142BA02
5F142BA24
5F142CA03
5F142CC14
5F142CC26
5F142CE04
5F142CE16
5F142CG03
5F142CG24
5F142DA14
5F142DA73
5F142DB24
5F142FA01
(57)【要約】
【課題】樹脂製の枠体と金属製のリードフレームとの密着性に優れた半導体発光装置を提供する。
【解決手段】半導体発光装置10は、開口部20を有する樹脂製の枠体11と、開口部20内に露出しているリード12a,12bを有しているリードフレーム12と、開口部20内に載置されてリード12a,12bに接続されているLED28と、を備えている。リード12aの上面23aには、立設部18aが立設されている。立設部18aは、枠体11の樹脂内に埋設されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリードを有し、少なくとも1つのリードが上面に立設された立設部を有しているリードフレームと、
前記複数のリードを露出する開口部を有し、前記立設部を埋設しつつ、前記開口部を囲うように設けられた樹脂製の枠体と、
前記開口部内に載置され、前記複数のリードに接続された発光素子と、
を有することを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記立設部は、前記リードフレームの縁部に沿って延在していることを特徴とする請求項1記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記立設部は、前記複数のリードの各リードの縁部に沿って延在していることを特徴とする請求項2記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記リードフレームは、矩形の板状金属からなり、
前記複数のリードは、前記矩形の一辺に平行に形成されているスリットにより相互に分離されており、
前記立設部は、各リードにおいて前記スリットに対して直交する方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記リードフレームは、矩形の板状金属からなり、
前記複数のリードは、前記矩形の一辺に平行に形成されているスリットにより相互に分離されており、
前記立設部は、前記リードにおいて前記スリットに対して平行に形成されていることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記立設部は、前記リードの一部を折り曲げて形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記立設部は、前記リードの肉厚を薄くする曲げ誘導溝に沿って折り曲げて形成されていることを特徴とする請求項6記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記曲げ誘導溝の両端の角部には、湾曲凹面が逃げ部として形成されていることを特徴とする請求項7記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記立設部は、前記リードの前記上面から垂直に立設されていることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、特に発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子を有する半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インサート成形によって樹脂体をリードフレームに設け、ダイサーで切断して形成される発光装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、切り欠き部を設けたリードフレームに枠状の樹脂成形体を形成し、切り欠き部に沿って樹脂成形体とリードフレームとを切断して発光装置を形成する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、発光素子を載置するための第1のリードと、当該第1のリードに電気的に接続されている第2のリードとを一体成形してなる枠状の第1の樹脂成形体と、発光素子を被覆しつつ下側において第1のリードと第2のリードとに接合する第2の樹脂成形体とを有する表面実装型発光装置が開示されている。この表面実装型発光装置の第1の樹脂成形体と第2の樹脂成形体とは、共に、熱硬化性樹脂からなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-62272号公報
【特許文献2】特開2006-156704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発光装置は、樹脂成形体の樹脂が、リードフレームの切欠き部内に充填されていることにより、樹脂成形体とリードフレームとの密着性が高まる。しかしながら、樹脂と切欠き部との接触面の高さは、せいぜいリードフレームの厚さであり、接触面積の増大は限定的である。
【0007】
特許文献2の表面実装型発光装置では、第2の樹脂成形体とリードフレームとの密着性が向上し、それに伴い、第2の樹脂形成体と熱硬化性樹脂同士で密着している第1の樹脂形成体が、第2の樹脂形成体を介してリードフレームとの密着性が高まる可能性がある。
【0008】
しかしながら、従来技術においては、樹脂成形体とリードフレームとの密着性について十分な改善の余地がある。
【0009】
本発明は、上記した観点に鑑みてなされたもので、樹脂製の枠体と金属製のリードフレームとの密着性に優れ、その結果として、枠体の樹脂とリードフレームとの剥離が防止されるとともに、断線不良等が生じ難い構造を有する半導体発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態による半導体発光装置は、
複数のリードを有し、少なくとも1つのリードが上面に立設された立設部を有しているリードフレームと、
前記複数のリードを露出する開口部を有し、前記立設部を埋設しつつ、前記開口部を囲うように設けられた樹脂製の枠体と、
前記開口部内に載置され、前記複数のリードに接続された半導体発光素子と、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態における第1実施例の半導体発光装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】第1実施例のリードフレームの上面図である。
【
図3】半導体発光装置の内部を模式的に示す上面図である。
【
図4B】半導体発光装置を
図4Aの矢印IVBで示す方向から見たときの側面図である。
【
図6】
図5の右側半部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図7】立設部の形成前及び形成後のリードの断面(それぞれ上段及び下段)を模式的に示す図である。
【
図8】半導体発光装置におけるリードを横切る断面を示す断面図である。
【
図9】ボンディングワイヤによるLEDの詳細な接続図である。
【
図10A】変形例1のリードフレームにおける立設部の構成を示す図である。
【
図10B】変形例1のリードフレームにおける立設部の形成前及び形成後のリードの断面を模式的に示す図である。
【
図11A】変形例2のリードフレームにおける立設部の構成図である。
【
図11B】変形例2のリードフレームにおける立設部の構成図である。
【
図12A】半導体発光装置の製造方法のSTEP1を示す図である。
【
図12B】半導体発光装置の製造方法のSTEP2を示す図である。
【
図12C】半導体発光装置の製造方法のSTEP3を示す図である。
【
図12D】半導体発光装置の製造方法のSTEP4を示す図である。
【
図12E】半導体発光装置の製造方法のSTEP5を示す図である。
【
図12F】半導体発光装置の製造方法のSTEP6を示す図である。
【
図13A】第2実施例のリードフレームの上面図である。
【
図13B】第2実施例のリードフレームの上面図である。
【
図13C】変形例3のリードフレームの立設部の拡大図である。
【
図14A】第3実施例のリードフレームの上面図である。
【
図14B】第3実施例のリードフレームの上面図である。
【
図14C】
図14Aのリードフレームを備える半導体発光装置を、スリットに平行な平面であって、LEDを横切る断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下においては、本発明の好適な実施形態について複数の実施例、及びその変形例を基に説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【0013】
(第1実施例)
図1は、本発明の実施形態における第1実施例の半導体発光装置10(以下において「発光装置」とも言う)を模式的に示す斜視図である。なお、複数の図間で対応方向を示す便宜のために、3軸座標系を付記している。Z軸方向は、発光装置10の上下方向に対応し、X軸方向及びY軸方向は、それぞれリードフレーム12の横方向及び縦方向に対応している。
【0014】
図1において、発光装置10は、矩形形状を有し、相互に同一の矩形形状である上側の枠体11と下側のリードフレーム12とからなる基板15を有している。枠体11の内側には被覆部材13が設けられ、被覆部材13から蛍光体板14が露出している。
【0015】
枠体11は、例えば熱硬化性樹脂の材料からなり、開口部20を有している。基板15は、枠体11とリードフレーム12とがトランスファモールドによって一体成形されて形成されている。
【0016】
図2は、第1実施例のリードフレーム12の上面図である。このリードフレーム12は、横方向(X軸方向)に延在するスリット39により縦方向(Y軸方向)にリード12a,12bに分離されている。リード12a,12bは、それぞれ上面23a,23bを有している。なお、リード12a,12bは、それぞれ上面23a,23bとは反対側に下面24a,24b(
図1)を有している。なお、リード12a,12bの下面24a,24bは発光装置10の実装電極として機能する。
【0017】
リード12a,12bの上面23a,23b上に、発光素子及び保護素子の載置位置としてのダイパッド53,54が設定されている。
図2において、開口部20の破線は、開口部20の下端側開口の周縁が位置する周線を示している。開口部20は、矩形形状を有し、ダイパッド53,54は、破線の開口部20の内側に位置して、開口部20に露出している。
【0018】
リード12a、12bから連続してリード12a、12bの上面23a、23bの上方側(Z軸方向)に延在する立設部18a,18bは、それぞれリード12a,12bにおいて、スリット39側の1辺を除く他の3辺の各辺に沿って1つずつ設けられている。また、リード12a、12bの上面23a、23bから下面24a、24bまで貫通している孔である透孔36は、立設部18a,18bに沿ってかつ立設部18a,18bに隣接してリード12a,12bにそれぞれ形成されている。
図2に示す第1実施例のリードフレーム12では、全部の透孔36が、立設部18a,18bに対してリードフレーム12の周縁側に位置している。
【0019】
なお、立設部18a,18bは、縦方向の中心線に対して対称の位置に設けられ、リードフレーム12が左右対称の構造を有していることが好ましい。また、立設部18a,18b及び透孔36は、発光装置10の外側面に対して平行な構造を有していることが好ましい。詳細は後述するが、立設部18a,18bは、枠体11内に埋設されている。また透孔36及びスリット39は、枠体11を形成する樹脂で埋設されている。
【0020】
図3は、発光装置10の内部を模式的に示す上面図である。
図3には、開口部20を被覆している被覆部材13(
図1参照)は、図示されていない。リード12aの上面23a及びリード12bの上面23bは、枠体11の開口部20に露出している。枠体11の熱硬化性樹脂は、立設部18a、18bを包含し、スリット39内に充填されており、枠体11とリードフレーム12との密着性を高めている。
【0021】
LED28と保護素子41とは、それぞれリード12a,12bが開口部20に露出している部分に載置されている。保護素子41は、例えばツェナーダイオード、バリスタ、又はコンデンサからなり、LED28に過電流が流れるのを防止する。
【0022】
LED28及び保護素子41は、開口部20内においてそれぞれダイパッド53,54(
図2)上に載置されている。蛍光体板14は、LED28の上面に配設されている。LED28は、2本のボンディングワイヤ43aを介してリード12bの上面23bと接続されている。保護素子41は、ボンディングワイヤ43bを介してリード12aの上面23aと接続されている。
【0023】
リード12a,12bは、発光装置10のそれぞれ陰極(カソード)及び陽極(アノード)であり、印加電圧が発光装置10の外から供給される。
【0024】
枠体11は、酸化チタン粒子を含むシリコーン樹脂及び/又はエポキシ樹脂で形成されている。枠体11に用いる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。さらに、樹脂添加材として、例えば、黒色酸化チタン粒子やカーボンブラック等の光吸収材、ナノシリカ等の増粘剤が含まれていてもよい。
【0025】
リードフレーム12は、リード12a,12bの上面23a,23b及び下面24a,24bにメッキ膜が形成された板状金属からなる。板状金属のコア材は、銅(Cu)である。メッキ膜は、下側のニッケル(Ni)層と上側の金(Au)層との2層構造(Ni/Au)を有する。コア材として、例えば、アルミ(Al)、鉄(Fe)-Ni-コバルト(Co)系合金などの導電性の高い金属を用いることができる。またメッキ膜として、例えば、チタン(Ti)/Au、Ni/プラチナ(Pt)などの上側が貴金属である金属を用いることができる。これにより、半田の付着性が向上する。
【0026】
図4Aは、発光装置10の上面を示す図、
図4Bは、発光装置10を
図4Aの矢印IVBで示す方向から見たときの側面図である。
【0027】
図4A及び
図4Bに示すように、第1実施例の発光装置10においては、リードフレーム12と枠体11からなる基板15は外周が直方体形状を有している。また、枠体11は、下側のリードフレーム12の上面との所定の密着面積を確保可能とする幅で発光装置10の全周にわたって延在している。
【0028】
図5は、
図4AのV-V線に沿った断面図である。枠体11の開口部20は、底面が矩形である倒立型の四角錐台の形状を有している。また、枠体11の内部において、リード12aの上面23aにはLED28が実装され、LED28上面には、波長変換体である蛍光体板14が設けられている。
【0029】
図5に示すように、開口部20は、倒立四角錐台の形状を有しているが、倒立四角錐台の形状以外の形状を有することもできる。開口部20は、例えば、円錐台(長円錐台を含む)、角柱形状又は円柱形状等の形状を有していてもよい。
【0030】
図6は、
図5の右側半部を拡大して示す拡大断面図である。なお、基板15の中心線Lcを補助線として示している。
図6を参照してより詳細に説明すると、LED28は、リード12aの上面23a上に接合層30を介して接合されている。接合層30は、Au-錫(Sn)系の半田材料からなる。蛍光体板14は、LED28が出射する光に対して透光な接着層29を介してLED28の上面に接着されている。実施例ではシリコーン樹脂を用いているが、ナノセラミック粒子の低温焼結体などを用いることもできる。
【0031】
被覆部材13は、開口部20に充填されて、蛍光体板14の上面を露出するように開口部20を封止している。被覆部材13は、例えば光反射性物質としてのφ200nm~300nmの酸化チタン粒子(白色酸化チタン粒子)を含む熱硬化性のシリコーン樹脂からなる。
【0032】
図6から分かるように、被覆部材13の熱硬化性樹脂の一部は、リードフレーム12の上面及びリード12aに形成されている枠体11に接して充填されている。また、スリット39内に充填されている枠体11から連続する樹脂(
図3)とも接して充填されているので、発光装置10の機械強度を高めることができる。
【0033】
LED28は、例えば青色の光を出射する発光素子である。LED28から上方に出射された青色の光の一部は、蛍光体板14を通過する際に、例えば黄色の光に波長変換される。この結果、発光装置10からの出射光は、蛍光体板14により波長変換されずに透過した青色の光と黄色の光との混色である白色となる。また、LED28から出射された青色の光の全部が蛍光体板14で波長変換されるように設定することもできる。この場合、発光装置10からの出射光は、蛍光体板14で変換された色、例えば緑色、黄色、赤色の光となる。
【0034】
LED28及び蛍光体板14から側方に出射され、被覆部材13に入射された光は、被覆部材13に含まれる光反射性物質に当たって、LED28及び蛍光体板14側へ反射される。
【0035】
LED28の発光は、青色光に限らず、赤色、緑色等の可視光帯域の光、紫外光、赤外光等の可視光帯域外の光であってもよい。また、LED28上には、波長変換体(蛍光体板14)に限らず、透光性を有するガラス又はLED28から出射された出射光の配光制御をする回折光学素子が設けられていてもよい。
【0036】
図7は、立設部18aの形成前及び形成後のリード12aの断面(それぞれ上段及び下段)を模式的に示す図である。
【0037】
立設部18aは、板状金属のリード12aの一部を折り曲げて形成されている。形成前の立設部18aは、発光装置10の外側面に沿った直線の折り曲げ辺を起点に、当該折り曲げ辺に直交する2つの短い切れ目35(図示せず)と当該折り曲げ辺に平行な長い切れ目35によって区画された矩形領域として形成されている。
【0038】
当該矩形領域は、リード12aの下面24a側から上面23a側への押圧力に対し、切れ目35のない辺(折り曲げ辺)を回転軸として回転方向Duに回転されて立設部18aになる。当該矩形領域が回転された後のリード12aに形成された孔部が透孔36である。
【0039】
図8は、発光装置10におけるリード12bを横切る断面を示す断面図である。より詳細には、スリット39に平行でリード12bに垂直な平面(XZ面)であって、立設部18bを横切る断面を示す断面図である。
【0040】
リード12bの上面23bは、その一部が開口部20に露出している。また、立設部18bは、上面23bの範囲に立設され、開口部20に露出することなく、枠体11に埋設されている。
【0041】
図9は、ボンディングワイヤ43aによるLED28の詳細な接続図である。なお、
図9は、ボンディングワイヤ43aによる電気接続を側方から見た場合を示している。ボンディングワイヤ43aは、リード12bからLED28の上面の電極パッド(図示せず)上に設けられたバンプ45を介して接続されている。
【0042】
ボンディングワイヤ43bによる保護素子41の詳細な接続図は、省略しているが、
図3に示すように、ボンディングワイヤ43bは、リード12aの上面23aと保護素子41とを、保護素子41の上面の電極パッド(図示せず)上に設けたバンプを介して接続している。
【0043】
第1実施例のリードフレーム12によれば、上面23a,23bに立設された立設部18a,18bは、樹脂製の枠体11に埋設されている。これにより、立設部18a,18bの両面の面積分だけ樹脂製の枠体11と金属製のリードフレーム12との接触面積が増大するので、枠体11とリードフレーム12との密着性が強化される。また、立設部18a、18bはリードフレーム12の上面23a、23bに対して略直交しており、枠体11との接着方向が略90°異なる接触面を有するので、リードフレーム12と枠体11とからなる基板15の機械的な強度が向上する。よって、LED28や保護素子41の外れ、ボンディングワイヤ43a、43bの断線等を抑制することができる。
【0044】
第1実施例のリードフレーム12によれば、透孔36は、リード12a,12bの枠体11で覆われた内部に形成されている。この結果、透孔36の周壁と透孔36内に充填された枠体11を形成する樹脂との接触面積が十分に確保され、枠体11とリードフレーム12との密着性(接着性)を高めることができる。
【0045】
(変形例1)
図10Aは、変形例1のリードフレーム12における立設部18a1の構成を示す図である。
図10Bは、変形例1のリードフレーム12における立設部18a1の形成前及び形成後のリード12aの断面(それぞれ上段及び下段)を模式的に示す図である。
【0046】
まず
図10Bを用いて説明する。形成前の立設部18a1は、回転方向Duに回転される前にリード12aの上面23aに発光装置10の外側面に沿った直線の折り曲げ辺(曲げ誘導溝48a)の両端を起点に、当該折り曲げ辺に直交する2つの短い切れ目(図示せず)と当該折り曲げ辺に平行な長い切れ目35とによって区画された矩形領域として形成されている。また、折り曲げ辺には、曲げ誘導溝48aが形成されている。曲げ誘導溝48aは、例えばリードフレーム12にハーフエッチングにより形成することができる。なお、曲げ誘導溝48aはリード12bの立設部にも設けられている。
【0047】
当該矩形領域は、リード12aの下面24a側から上面23a側への押圧力によって、曲げ誘導溝48aが回転軸となり、回転方向Duに回転され、立設部18a1が形成される。
【0048】
変形例1のリードフレーム12によれば、
図10Aに示されるように、立設部18a1は、曲げ誘導溝48aを枠体11の外側に向けて立設されるように、リード12aの上面23aに形成されている。
【0049】
曲げ誘導溝48aの存在により、立設部18a1は、曲げ誘導溝48aの線に沿って正確に折り曲げることができる。また、曲げ誘導溝48aを設けた部分のリード12aの板厚が薄いので、立設部18a1になる矩形領域を押圧する押圧力を小さくすることができる。同時に、立設部18a1以外のリード12a部が歪むことを防止できる。また、立設部18a1の基部が薄く先端部が厚くなるので、枠体11がリード12aから外れることを防止できる。
【0050】
(変形例2)
図11Aは、変形例2のリードフレーム12における立設部18a2の構成図である。
図11Bは、変形例2のリードフレーム12における立設部18a2の形成前及び形成後のリード12aの断面(それぞれ上段及び下段)を模式的に示す図である。
【0051】
変形例2において、変形例1との相違点は、立設部18a2の折れ曲げ辺となるリード12aにおける曲げ誘導溝48bがリード12aの下面24aに形成されている点である。
【0052】
変形例2のリードフレーム12によれば、立設部18a2は、曲げ誘導溝48bを支点にリードフレーム12の上方側に向けて立設されている。曲げ誘導溝48bも、曲げ誘導溝48aと同様に、立設部18a2が曲げ誘導溝48bに沿って正確に折り曲げられるように機能する。
【0053】
また、曲げ誘導溝48bを設けた部分のリード12aの板厚が薄いので、立設部18a2になる矩形領域を押圧する押圧力を小さくできる。同時に、立設部18a2以外のリード12a部が歪むことを防止することができる。また、立設部18a2の基部が薄く先端部が厚くなるので、枠体11がリード12aから外れることを防止することができる。さらに、立設部18a2の曲げ部分がリード12aの上面23a部となり、リード12aの下面24aに曲げ部が露出しなくなる。これにより、透孔36に充填される枠体11の樹脂がリード12aの下面24aを覆うことを防止することができる。
【0054】
なお、図示は省略しているが、さらなる変形例として、リード12a又はリード12bには、曲げ誘導溝48a,48bの一方だけでなく、両方が形成されていてもよい。
【0055】
(製造方法)
図12A-
図12Fは、第1実施例の発光装置10の製造方法の各工程(STEP)を順に示している。
【0056】
リードフレーム12は、各発光装置10が個々に備えているものであって、
図12A-
図12Fに図示のリードフレーム60を個片化したものである。リードフレーム60では、複数のリードフレーム12の各々が単位区画61として格子配列された状態になっている。
図12A-
図12Fでは、リードフレーム60は、全体ではなく、全体のうちの右上隅部のみを図示している。
【0057】
図12AのSTEP(工程)1では、リードフレーム60が用意される。リードフレーム60は、格子状に配列された複数の単位区画61と、これら配列された複数の単位区画61の周囲を囲うマージン62とからなる。
【0058】
図12A-
図12Fにおいて、リードフレーム60を単位区画61に区画する横ダイシング線64及び縦ダイシング線65がそれぞれ横方向及び縦方向に延在する破線で示されている。横ダイシング線64及び縦ダイシング線65は、実際のリードフレーム60に構造として存在しているものではなく、説明の便宜上、単位区画61の境界線を仮想線として図内に付記している。
【0059】
図12Aに示すリードフレーム60は、型抜きプレス加工、レーザ切断加工、ジェット水流加工、エッチング加工によって所定の形状に加工できる。第1実施例においては型抜きプレス加工によって形成した。なお、変形例1及び2の曲げ誘導溝48a、48bを形成する場合は、型抜きプレス加工の前にハーフエッチング加工にて形成する。
【0060】
図12BのSTEP2では、リード12a,12bにそれぞれ立設部18a,18bが形成される。立設部18a,18bの形成の概略は、
図7等を参照して述べているが、詳細には、次のとおりである。
【0061】
STEP1で形成したリードフレーム60に対し、
図7及び
図10B等に示したように、リードフレーム60の各単位区画61内の3辺を切れ目35により囲われた矩形領域をリードフレーム60の下面側から上面側に押圧する。そして、矩形領域を、切れ目35が形成されていない側の長辺(折り曲げ辺)を回転軸にして上方に折り曲げることにより、立設部18a,18bが形成される。こうして、矩形領域が回転されて、立設された跡には透孔36が形成される。
【0062】
図12CのSTEP3では、リードフレーム上に樹脂製の枠体11が形成される。STEP2で立設された立設部18a、18bを設けたリードフレーム60を金型(図示せず)内へセットし、次いで枠体11になる樹脂を金型内へ注入する。その後、樹脂を加熱硬化して、リードフレーム60に樹脂製の枠体11が一体化した基板15の集合体を形成した。各単位区画61の中央部には、上方に開口する開口部20が形成される。各単位区画61において、リード12a,12bの上面23a,23bは、開口部20に露出する。
【0063】
図12DのSTEP4では、リード12a,12bの上面23a,23bにそれぞれLED28及び保護素子41を接合する。LED28の上には、さらに、蛍光体板14を接着する。その後、LED28aとリード12bの上面23bとをボンディングワイヤ43aにより接続し、保護素子41とリード12aの上面23aとをボンディングワイヤ43bにより接続する。
【0064】
図12EのSTEP5では、開口部20を反射性の被覆部材13により被覆する。こうして、共通のリードフレーム60において格子配列で一体に連結した複数の発光装置10が完成する。
【0065】
図12FのSTEP6では、STEP5の複数の発光装置10の格子配列に対して横ダイシング線64及び縦ダイシング線65に沿ってダイシングブレード68によりダイシングを行う。これにより、個々の発光装置10が、完成する。
【0066】
(第2実施例)
【0067】
図13Aは、第2実施例のリードフレーム121の上面図であり、
図13Bは、
図13AのXIIIB-XIIIB線に沿った断面図である。
図13Aにおいて、
図2と同一の要素については、同じ参照符で指示して、説明は省略する。
【0068】
図13Aに示すように、リード12a上にはLED28が載置されるダイパッド53の周囲にアライメント溝56が形成されている。計4つのアライメント溝56は、図示の例では矩形形状を有しているダイパッド53の各辺に沿ってダイパッド53の外側に形成されている。アライメント溝56は、例えばハーフエッチングによりリード12aの上面を削って、形成されている。
【0069】
LED28は、ダイパッド53に塗布されたクリーム半田上に載置され、その後、半田を加熱溶融し、次いで、冷却固化することでLED28がダイパッド53に接合層30である半田を介して接合される。
【0070】
半田は、加熱溶融状態においてダイパッド上に広がる。アライメント溝56を設けると、加熱溶融した半田は、アライメント溝56で止まるので、アライメント溝56の内側の領域に留まる。これにより、LED28は、接合層30を介してダイパッド53上にアライメントされて接合される(セルフアライメント)。
【0071】
リードフレーム121において、リード12aは、立設部18aをリードフレーム12の各長辺に沿って2つずつ有している。2つの立設部18aのうち一方の立設部18aは、透孔36に対してリード12aの周縁側に位置し、他方の立設部18aは、透孔36に対して開口部20側に位置している。本構造は、リード12aの短辺側にも設けることができる。また、リード12b側にも設けることができる。このように、立設部18aをリード12aの周縁側及び開口部20側に設けることにより、枠体11との一体性(機械強度)を向上することができる。
【0072】
第2実施例のリードフレーム12によれば、
図13Bに示すように、スリット39は、横断面が上側の幅狭部と下側の幅広部とからなる段差を有している。枠体11の樹脂は、
図3で説明したように、スリット39内にも進入して固化している(
図13Bでは枠体11の図示省略)。
【0073】
(変形例3)
図13Cは、第2実施例のリードフレーム121が備えている立設部18aの変形例3の拡大図である。変形例3の立設部18aは、例えば、
図13AのXIIICの範囲に形成されている。
図13Cは、立設部18aの形成前及び形成後のリード12aの上面23a(それぞれ左側及び右側)を模式的に示している。
【0074】
図13Cにおいて、矩形領域55の2つの長辺のうち一方の長辺に沿って切れ目35が形成され、他方の長辺に沿って曲げ誘導溝59が形成されている。ただし、曲げ誘導溝59は、リード12aの上面23aではなく、下面24a側(
図13Cの裏側)に形成されている。
【0075】
矩形領域55の各短辺側には、切れ目35より十分に幅広である透孔57が当該短辺に沿って形成されている。切れ目35の両端は、立設部18aの形成前にでは透孔57に接続されている。曲げ誘導溝59の両端は、立設部18aの形成前では、透孔57に接続されている。さらに、透孔57と曲げ誘導溝59との接続点には、円形形状の逃げ部58が形成されている。なお、透孔57は切れ目35であってもよい。
【0076】
逃げ部58は、曲げ誘導溝59の両端部おいてリード12aを貫通している。逃げ部58は、円形形状の貫通孔としてリード12aに形成されており、この結果、曲げ誘導溝59の両端には、逃げ部58において円弧面による湾曲凹面が形成されている。
【0077】
変形例3によれば、矩形領域55は、リード12aの下面24a側から上面23a側への押圧力に対し、曲げ誘導溝59を回転軸にして回転される。曲げ誘導溝59は、
図10Bの曲げ誘導溝48aと同様に、立設部18aが曲げ誘導溝59の直線に沿って正確に折り曲げられて形成されるようにしている。逃げ部58は、折り曲げ時に曲げ誘導溝59の両端に生じ易いき裂等の損傷の発生を防止する。また、曲げ誘導溝59の両端に生じることがあるリード12aの歪みの発生を防止できる。このような逃げ部58は、STEP1の製造工程において形成することができる。
【0078】
(第3実施例)
図14Aは、第3実施例のリードフレーム122の上面図、
図14Bは、
図14Aのリードフレーム122を備える発光装置10を縦方向にリード12a側から見た側面図、
図14Cは、
図14Aのリードフレーム122を備える発光装置10を、スリット39に平行な平面であって、LED28を横切る断面を示す断面図である。
【0079】
第3実施例のリードフレーム122では、全部の立設部18a,18bは、透孔36に対してリードフレーム122の周縁側とは反対側に形成されている。
【0080】
第3実施例のリードフレーム122によれば、立設部18a,18bは、透孔36に対してリードフレーム122の周縁側とは反対側に形成されている。その結果、発光装置10の外側面に枠体11の樹脂が配置され、リード12a、12bの露出面が減少する。すなわち、製造工程のSTEP6における発光装置10の個片化の際に、リード12a、12bの切断面を小さくできるので、個片化の工程時間を短縮することができる。
【0081】
以上、本発明について第1実施例~第3実施例、及びその変形例を示し説明してきたが、本発明の主旨の範囲において形状、寸法、材質などは自由に設定できる。例えば、第1実施例~第3実施例、及びその変形例は、適宜、発光装置の構造等に合わせ混在して設定することができる。
【0082】
また、発光素子は、LEDに限定することなく、その他の発光素子、例えば垂直共振器型レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)、フォトニック結晶レーザ素子(Photonic Crystal Surface Emitting Laser)であってもよい。
【0083】
また、発光装置10が2つのリード12a,12bを有する場合について説明したが、発光装置が有するリードは、3以上であってもよい。例えば、発光装置が複数の発光素子を備えるときには、リードが3以上となることがある。
【0084】
また、実施例においては、開口部20が1つの例を提示しが、複数の開口部20を備えた発光装置であってもよい。例えば、2つの開口を備え、その各々に同色又は異色のLEDを載置した発光装置であってもよい。その場合は、外周を囲む枠体部に加え、2つの開口を仕切る仕切り壁(枠体部)に立設部を設けることができる。
【0085】
本発明によれば、リードフレームの上面に立設部が立設されて、樹脂製の枠体に埋設されていることにより、樹脂製の枠体と金属製のリードフレームとの接触面積が、立設部の両面の面積分、増大する。こうして、枠体とリードフレームとの密着性が強化される。すなわち、本発明のリードフレームと枠体とを備える発光装置の機械強度が高まるので、断線不良等の不具合の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0086】
10・・・発光装置、11・・・枠体、12,121,122・・・リードフレーム、12a,12b・・・リード、18a,18b,18a1,18a2・・・立設部、20・・・開口部、23a,23b・・・上面、24a,24b・・・下面、28・・・LED(発光素子)、39・・・スリット、48a,48b,59・・・曲げ誘導溝、58・・・逃げ部。