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特開2023-82635プロテクタ、破砕機、プロテクタのアウタ部及びプロテクタのメンテナンス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082635
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】プロテクタ、破砕機、プロテクタのアウタ部及びプロテクタのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 13/28 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
B02C13/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196560
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】白地 貴一
(72)【発明者】
【氏名】児島 徹也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚伸
(72)【発明者】
【氏名】田代 萌
【テーマコード(参考)】
4D065
【Fターム(参考)】
4D065AA06
4D065BB04
4D065BB07
4D065EB01
4D065EC07
4D065EC09
4D065EE12
(57)【要約】
【課題】破砕機において、打撃板の固定のためのプロテクタを安価にメンテナンス可能とする。
【解決手段】プロテクタは、破砕機において回転する回転板に取り付けられ、打撃板を支持するとともに、前記回転板を保護する。プロテクタは、ベース部と、アウタ部と、を備える。前記アウタ部は、前記ベース部よりも外周側に配置され、前記ベース部に対して着脱可能である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕機において回転する回転板に取り付けられ、打撃板を支持するとともに、前記回転板を保護するプロテクタであって、
ベース部と、
前記ベース部よりも外周側に配置され、前記ベース部に対して着脱可能なアウタ部と、
を備えることを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロテクタであって、
前記アウタ部が前記ベース部に対してスライド移動することで、前記ベース部に対する着脱が行われることを特徴とするプロテクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のプロテクタであって、
直線状に延びる溝が前記アウタ部又は前記ベース部に形成されており、
前記溝に沿って前記アウタ部が前記ベース部に対してスライド移動可能に構成されていることを特徴とするプロテクタ。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のプロテクタであって、
前記アウタ部は、前記ベース部に対してボルトレスで固定されることを特徴とするプロテクタ。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のプロテクタであって、
前記アウタ部に規制部が設けられ、
前記規制部は、前記アウタ部が前記ベース部から外れる方向の移動を、破砕機の部品に当たることで阻止することを特徴とするプロテクタ。
【請求項6】
請求項5に記載のプロテクタであって、
前記規制部は、前記回転板に固定されたロータライナに当たることで、前記アウタ部が前記ベース部から外れる方向の移動を阻止することを特徴とするプロテクタ。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のプロテクタであって、
前記打撃板に装着された締付部材を案内するテーパ案内面が形成され、
前記テーパ案内面は、前記打撃板が外周側へ移動するのに伴って前記締付部材が前記打撃板を締め付けるように形成されていることを特徴とするプロテクタ。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載のプロテクタと、
前記回転板と、
前記打撃板と、
を備えることを特徴とする破砕機。
【請求項9】
請求項8に記載の破砕機であって、
前記打撃板には、第1凸部及び第2凸部が形成され、
前記第1凸部を用いて前記打撃板を前記プロテクタに取り付けた状態で、前記第2凸部は、前記アウタ部の外周面よりも内周側に位置し、
前記打撃板の向きを反転させることにより、前記第2凸部を用いて前記打撃板を前記プロテクタに取付可能であることを特徴とする破砕機。
【請求項10】
ベース部に対して着脱可能に構成され、
前記ベース部とともに破砕機のプロテクタを構成し、
前記プロテクタは、破砕機において回転する回転板に取り付けられ、打撃板を支持するとともに、前記回転板を保護し、
前記プロテクタが前記回転板に取り付けられた状態で、前記ベース部に対して外周側に配置されることを特徴とするプロテクタのアウタ部。
【請求項11】
破砕機において回転する回転板に取り付けられ、打撃板を支持するとともに、前記回転板を保護するプロテクタのメンテナンス方法であって、
前記プロテクタは、ベース部と、前記ベース部よりも外周側に配置され、前記ベース部に対して着脱可能なアウタ部を備えており、
前記ベース部からアウタ部を取り外し、
前記アウタ部とは別のアウタ部を前記ベース部に装着することを特徴とするプロテクタのメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、破砕機におけるプロテクタのメンテナンスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ケーシングの上部の供給口から投入された岩石などの破砕対象物に対し、ロータとともに高速回転する打撃板によって打撃を与えるとともに、破砕対象物を衝突板に衝突させて破砕する衝撃式破砕機が知られている。
【0003】
このような破砕機は、使用に伴って打撃板の先端部(ロータから外周に突出した部分)が摩耗し、やがて破砕効率が低下してしまう。そこで、ロータに対して打撃板を着脱可能に構成し、打撃板の摩耗が進行した場合に、新たな打撃板に交換できる破砕機が知られている。また、打撃板を対称的な形状とし、摩耗後に打撃板を取り外して、当該打撃板の向きを反転させてロータに再び装着し、これによって打撃板の寿命を大幅に延ばすことも行われている。
【0004】
特許文献1の衝撃式破砕機は、ローター本体の外周に打撃板押さえ部が設けられている。打撃板押さえ部は、2つの凸部を有し、その間に穴を有する対称形である。打撃板押さえ部の外側に、打撃板とローター保護のための1対の保護部材が取り付けられる。打撃板は、1対の保護部材を介して挟持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-83101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の保護部材も、打撃板と同様に摩耗していくため、交換する必要がある。破砕対象物を大量に破砕する破砕機においては、保護部材の交換に要するコストを低減することが求められる。
【0007】
本開示は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、破砕機において、打撃板の固定のためのプロテクタを安価に交換可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本開示の第1の観点によれば、以下の構成のプロテクタが提供される。即ち、このプロテクタは、破砕機において回転する回転板に取り付けられ、打撃板を支持するとともに、前記回転板を保護する。プロテクタは、ベース部と、アウタ部と、を備える。前記アウタ部は、前記ベース部よりも外周側に配置され、前記ベース部に対して着脱可能である。
【0010】
本開示の第2の観点によれば、以下の構成のプロテクタのアウタ部が提供される。即ち、このアウタ部は、ベース部に対して着脱可能に構成される。前記アウタ部は、前記ベース部とともに破砕機のプロテクタを構成する。前記プロテクタは、破砕機において回転する回転板に取り付けられ、打撃板を支持するとともに、前記回転板を保護する。前記アウタ部は、前記プロテクタが前記回転板に取り付けられた状態で、前記ベース部に対して外周側に配置される。
【0011】
これにより、破砕機の使用によってプロテクタの外周部分が摩耗した場合でも、アウタ部を交換するだけでメンテナンスを完了することができる。従って、低コストでのメンテナンスを実現できる。
【0012】
本開示の第3の観点によれば、以下のプロテクタのメンテナンス方法が提供される。即ち、このメンテナンス方法は、破砕機において回転する回転板に取り付けられ、打撃板を支持するとともに、前記回転板を保護するプロテクタに適用される。前記プロテクタは、ベース部と、アウタ部と、を備える。前記アウタ部は、前記ベース部よりも外周側に配置され、前記ベース部に対して着脱可能である。このメンテンナンス方法では、前記ベース部からアウタ部を取り外す。前記アウタ部とは別のアウタ部を前記ベース部に装着する。
【0013】
これにより、破砕機の使用によってプロテクタの外周部分が摩耗した場合に、低コストでのメンテナンスを実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、破砕機において、打撃板の固定のためのプロテクタを安価にメンテナンスすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る破砕機の全体的な構成を模式的に示す断面図。
図2】ロータ及び打撃板の全体的な構成を示す斜視図。
図3】ロータに取り付けられている状態の打撃板を詳細に示す斜視図。
図4】プロテクタ、締付部材及び打撃板の構成を示す分解斜視図。
図5】プロテクタにおいてベース部にアウタ部を装着する作業を説明する斜視図。
図6】突起及び溝の形状を模式的に示す断面図。
図7】突起及び溝の形状の第1変形例を示す断面図。
図8】突起及び溝の形状の第2変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して、開示される実施の形態を説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る破砕機100の全体的な構成を模式的に示す断面図である。なお、図1には、ロータ2の軸(後述の回転軸2c)に垂直な平面で破砕機100を切った断面が示されている。図2は、ロータ2及び打撃板1の全体的な構成を示す斜視図である。図3は、ロータ2に取り付けられている状態の打撃板1を詳細に示す斜視図である。図4は、プロテクタ3、締付部材4及び打撃板1の構成を示す分解斜視図である。
【0017】
図1に示す破砕機100は、例えば岩石等の原料(破砕対象物)70に対し、打撃及び衝撃等を加えることにより破砕する機械である。破砕機100は、主として、ケーシング90と、伝達軸21と、ロータ2と、打撃板1と、衝突板80と、マールバーン81と、を備える。
【0018】
ケーシング90は中空状に構成されており、その内部にロータ2、打撃板1、衝突板80及びマールバーン81が収容されている。また、ケーシング90の内部空間を貫通するように伝達軸21が水平に配置され、回転可能に支持されている。伝達軸21は、図略の電動機等から駆動力が伝達されることにより回転する。
【0019】
ケーシング90の上面中央には、原料70を上から投入する開口である供給口91が形成されている。ケーシング90の底面には、破砕された原料である破砕物71を排出する開口である排出口92が形成されている。ケーシング90の内部には、供給口91から排出口92に至る原料70の経路が形成されている。ケーシング90にはヒンジ機構が設けられており、メンテナンス作業等のために一部を開放できるように構成されている。
【0020】
衝突板80は、ロータ2と、その真上に配置された供給口91と、の間の空間を挟むように1対で設けられている。この衝突板80は、打撃板1の打撃により飛ばされた原料70がぶつかることで、原料70に衝撃力を与え、原料70をより効果的に破砕させる。
【0021】
マールバーン81は、衝突板80の下方の位置でロータ2を挟むように1対で設けられている。高速回転する打撃板1の先端がマールバーン81の近くを通ることにより、原料70は、打撃板1と当該マールバーン81との間の隙間を通過できる大きさになるまで細かく砕かれる。なお、マールバーン81の代わりに、衝突板80とは別の衝突板が配置されても良い。
【0022】
ロータ2は、ケーシング90の内部空間の中央略下側に配置され、伝達軸21に固定されている。従って、ロータ2は、伝達軸21とともに一体的に回転することができる。図2に示すように、ロータ2の回転軸2cは、伝達軸21の軸線と一致する。以下の説明では、ロータ2の回転中心となる軸を、単に回転軸2cと呼ぶことがある。また、以下では、回転軸2cの方向を軸方向と呼ぶことがある。
【0023】
本実施形態の破砕機100は可逆回転式破砕機として構成されているので、図1に矢印で示す方向にロータ2を回転する正回転運転によっても、反対の方向に回転する逆回転運転によっても、原料70を破砕することができる。ロータ2をどちらに回転させても同等の破砕性能が得られるように、破砕機100は、上記の回転軸2cを含む垂直な平面に対して対称となるように構成されている。このため、供給口91は、回転軸2cの真上に配置されている。
【0024】
図3に示すように、ロータ2は、4つの回転ディスク22を備える。ただし、回転ディスク22の数は1~3つであっても良く、5つ以上であっても良い。
【0025】
4つの回転ディスク22は、間隔をあけて軸方向に並べて伝達軸21に取り付けられている。回転ディスク22は、伝達軸21と一体的に回転する。従って、回転ディスク22の回転中心となる軸は、回転軸2cと一致する。
【0026】
それぞれの回転ディスク22の外周には、図2に示すように、打撃板1の一部を収容可能な収容凹部23が形成されている。当該収容凹部23は、回転ディスク22の周方向に等間隔で複数(本実施形態においては、4つ)形成されている。4つの収容凹部23の形状は、互いに同一となっている。
【0027】
図2に示すように、4つの回転ディスク22は実質的に同一の形状とされ、互いに位相が一致する状態で伝達軸21に固定されている。従って、各回転ディスク22の収容凹部23は、回転軸2cと平行な方向に直線状に並んでいる。
【0028】
回転ディスク22は、回転板24と、ロータライナ25と、プロテクタ3と、を備える。
【0029】
回転板24は、板状に形成されており、伝達軸21に固定されている。前述の収容凹部23は、この回転板24に凹部を形成することで構成されている。
【0030】
ロータライナ25は、回転板24に形成されたそれぞれの収容凹部23を挟むように1対ずつ配置されている。それぞれのロータライナ25は、回転板24の外周面を覆うように配置され、例えばボルト等の固定部材によって回転板24に固定されている。これにより、回転板24を摩耗から保護することができる。また、ロータライナ25は、プロテクタ3を引っ掛けるための爪部26を有しており、これにより、プロテクタ3を回転板24に固定することができる。ロータライナ25の詳細な構成については後述する。
【0031】
プロテクタ3は、回転板24に形成されたそれぞれの収容凹部23に1対ずつ、互いに対向するように配置される。
【0032】
図4に示すように、プロテクタ3には、傾斜して形成されたテーパ案内面31と、テーパ案内面31の両端に形成された第1突起33及び第2突起34と、が形成されている。なお、以下の説明においては、この1対のプロテクタ3のそれぞれを区別するために、符号3a,3bを用いる場合がある。また、それぞれのプロテクタ3a,3bに形成されたテーパ案内面31を区別するために、符号31a,31bを用いる場合がある。
【0033】
それぞれのプロテクタ3a,3bにおいて、テーパ案内面31a,31bと反対側には、差込凹部35と、固定凹部36と、が形成されている。差込凹部35には、回転板24に形成された突起を差し込むことができる。固定凹部36には、ロータライナ25に形成された爪部26を引っ掛けることができる。これにより、プロテクタ3a,3bを、ロータライナ25によって回転板24に固定することができる。
【0034】
プロテクタ3a,3bを互いに対向するように収容凹部23に配置したとき、プロテクタ3a,3bのそれぞれに形成されたテーパ案内面31a,31bは、図4に示すように互いに向かい合うように位置する。また、2つのテーパ案内面31a,31bは、回転軸2cに近づくにつれて互いに離れるように傾斜して形成されている。言い換えれば、この2つのテーパ案内面31a,31bは対称的に傾斜していて、回転軸2cと平行な向きで見たときにテーパ形状となっている。
【0035】
プロテクタ3a,3bのテーパ案内面31a,31bに対して接触又は隙間をあけて対面するように、後述する締付部材4a,4bのテーパ面41a,41bが配置される。締付部材4a,4bのテーパ面41a,41bは、プロテクタ3a,3bのテーパ案内面31a,31bに対応した形状となっている。
【0036】
テーパ案内面31a,31bが上記のように傾斜して配置されているので、当該テーパ案内面31a,31bは、締付部材4a,4bの位置が回転軸2cから離れるに従って、対の締付部材4a,4bの間の距離が小さくなるように案内する。
【0037】
第1突起33は、テーパ案内面31の、ロータ2の軸から遠い側に位置する端部において、反対側のプロテクタ3に近づく向きに突出して設けられている。
【0038】
第2突起34は、テーパ案内面31の、ロータ2の軸に近い側に位置する端部において、反対側のプロテクタ3に近づく向きに突出して設けられている。
【0039】
図1に示すように、本実施形態の破砕機100は、打撃板1を挟んで互いに向かい合うように対をなして設けられた締付部材(固定部材)4を備える。なお、以下の説明においては、この1対の締付部材4のそれぞれを区別するために、図4に示すように、符号4a,4bを用いる場合がある。また、それぞれの締付部材4a,4bに形成されたテーパ面41を区別するために、符号41a,41bを用いる場合がある。
【0040】
この締付部材4はブロック状に形成されており、プロテクタ3と、収容凹部23に収容される打撃板1と、の間に配置されている。
【0041】
締付部材4には、テーパ面41と、溝部42と、が形成されている。溝部42は、締付部材4においてテーパ面41が形成されている側と反対側に配置されている。
【0042】
それぞれの締付部材4a,4bに形成されたテーパ面41a,41bは、図4に示すように、テーパ案内面31a,31bの形状に対応する傾斜面となるように形成されている。このテーパ面41a,41bは、回転軸2cに近づくにつれて互いに離れるように傾斜して形成されている。
【0043】
この締付部材4は、プロテクタ3のテーパ案内面31に沿って、回転軸2cに近づく又は離れる方向にスライド可能に設けられている。
【0044】
このように、プロテクタ3a,3bと締付部材4a,4bとの接触面が、回転軸2cから離れるにつれて次第に窄まるテーパ状に形成されている。これにより、締付部材4a,4bが打撃板1を挟んだ状態で回転軸2cから離れる方向に移動したとき、テーパ係合により締付部材4a,4bが打撃板1を締め付け、固定することができる。
【0045】
溝部42は、回転軸2cと平行な方向に延びる溝として形成されている。この溝部42に打撃板1の一部が嵌まることにより、打撃板1に対して締付部材4が溝に垂直な方向で相対移動しないように構成されている。即ち、締付部材4が打撃板1を挟持した状態では、締付部材4は、回転軸2cに近づく又は離れる方向での打撃板1の移動に連動して移動する。
【0046】
上述のように、プロテクタ3と締付部材4とは、単にテーパ状の面同士が接触可能なように配置されるだけであり、取付け又は取外しが容易に構成されている。従って、部品の交換等のメンテナンス作業も容易である。
【0047】
テーパ案内面31は、回転板24に形成されるのではなく、回転板24に着脱可能に取り付けられたプロテクタ3に形成されている。従って、例えば長期の使用によってテーパ案内面31が摩耗した場合でも、溶接等による補修作業を必要とせず、単にプロテクタ3を交換するだけで修理を完了させることができる。この結果、作業負荷を低減できるとともに、溶接を行った場合の熱による回転板24の歪み等も防止することができる。
【0048】
プロテクタ3は、ベース部3pと、アウタ部3qと、を備える。ベース部3pは、収容凹部23において回転軸2cに近い側に配置される。アウタ部3qは、ベース部3pよりも外周側に配置される。ベース部3pには、テーパ案内面31、第2突起34、差込凹部35、及び固定凹部36が配置されている。アウタ部3qには、第1突起33が配置されている。
【0049】
ベース部3pとアウタ部3qは別の部品であり、互いに連結することによりプロテクタ3が構成される。アウタ部3qは、ベース部3pの外周面を全面にわたって覆うことが好ましい。
【0050】
プロテクタ3の外周部は、原料70等と頻繁に衝突するため、摩耗の進行が速い。本実施形態においては、プロテクタ3の全体ではなくアウタ部3qだけを交換することができるので、交換コストを低減することができる。また、プロテクタ3の全体と比較してアウタ部3qは大幅に軽量であるので、メンテナンスを行う場合の作業負担を大幅に軽減することができる。
【0051】
図5に示すように、ベース部3pの外周面には、断面がT字状の突起37が、ロータ2の外周側へ突出するように形成されている。これに対応して、アウタ部3qの内周面には、断面がT字状の溝38が、ロータ2の内周側を開放させるように形成されている。溝38を突起37に係合させることで、ベース部3pとアウタ部3qを互いに連結することができる。アウタ部3qをベース部3pに装着する方向は、図5に矢印で示されている。この装着方向は、ロータ2の回転接線方向であって、テーパ案内面31a(言い換えれば、プロテクタ3の支持対象である打撃板1)に近づく方向である。
【0052】
突起37及び溝38を、差込方向に垂直な面で切った断面は、T字状となっている。このため、溝38を突起37に係合させた状態では、アウタ部3qがベース部3pから径方向外側へ離れることを機械的に阻止することができる。従って、遠心力が作用するアウタ部3qを、ベース部3pに対して強固に連結することができる。
【0053】
上述の差込方向において、溝38は一側だけを開放させるように形成されている。これにより、突起37がロータ2の外周側へ露出することを防止できる。
【0054】
図5に示すように、固定凹部36は、ベース部3pにおいて、回転軸2cの方向の両端に1対で設けられている。それぞれの固定凹部36は、ロータ2の外周側を開放させている。これに対応して、爪部26は、ロータライナ25において、回転軸2cの方向の両端に1対で設けられている。爪部26は、ロータ2の内周側へ向けて突出している。2つの爪部26は、それぞれ固定凹部36に引っ掛けることができる。
【0055】
アウタ部3qには、規制突起(規制部)39が形成されている。規制突起39は、アウタ部3qにおいて、回転軸2cの方向の両端に1対で設けられている。アウタ部3qがベース部3pに装着され、爪部26が固定凹部36に差し込まれた状態では、アウタ部3qがベース部3pから外れる方向の移動は、規制突起39が爪部26に当たることによって阻止される。このように、ロータライナ25の爪部26は、プロテクタ3を回転板24に固定する機能に加えて、アウタ部3qの抜止め機能を有する。従って、簡単な構成で、アウタ部3qをベース部3pにボルトレスで固定することができる。
【0056】
次に、図1から図4までを参照して、本実施形態の破砕機100に用いる打撃板1の構成を説明する。
【0057】
図1に示すように、打撃板1は、ロータ2の外周において、周方向に等間隔で、回転軸2cを中心として径方向外側に放射状に取り付けられている。
【0058】
図3等に示すように、打撃板1は、厚みを有し、互いに向かい合う2つの辺を有する板状(具体的には、矩形の板状)に形成されている。打撃板1の矩形は、互いに向かい合う2つの辺を2組有するが、そのうち1つの組に属する2つの辺に、打撃部10a,10bが形成されている。以下の説明では、打撃板1に関して、打撃部10a,10bが配置されている辺に沿う方向を幅方向と呼ぶことがある。また、厚み方向及び幅方向の何れにも垂直な方向(言い換えれば、打撃部10a,10bが向かい合う方向)を、高さ方向と呼ぶことがある。ただし、この方向の呼び方は、打撃板1の向きを限定するものではない。
【0059】
打撃部10a,10bは、高さ方向で互いに向かい合うように配置されている。打撃板1は、その高さ方向とロータ2の径方向とが一致するように、かつ、厚み方向とロータ2の周方向とが一致するように向けられ、高さ方向の一端がロータ2の外周に突出した状態でロータ2に取り付けられている。この結果、幅方向は、ロータ2の回転軸2cと平行な方向に向けられる。打撃板1は、幅方向で、2つの回転ディスク22に跨ることが可能な寸法を有している。
【0060】
新品の打撃板1をロータ2に取り付けるとき、2つの打撃部10a,10bのうち何れを用いて破砕を行うか、任意に選択される。そして、打撃板1は、選択された側の打撃部10aが回転ディスク22から外側に突出する一方、反対側の打撃部10bは回転ディスク22の収容凹部23に挿入されるようにして、ロータ2に装着される。
【0061】
打撃板1は、図3に示すように、引掛け部11を備える。図4に示すように、引掛け部11は、打撃板1の厚み方向における両側の面のそれぞれに、互いに位置を対応させるように形成されている。引掛け部11は、厚み方向で凸となるように形成されている。
【0062】
引掛け部11は、図3に示すように、2つの打撃部10a,10bの間であって、打撃板1の高さ方向中央部に配置されている。引掛け部11は、打撃板1の厚み方向一側の面につき、2つ(即ち、当該打撃板1が固定される対象の回転ディスク22の数)だけ形成されている。それぞれの引掛け部11は、打撃板1の幅方向に延びる2つの凸部11a,11bを有する。
【0063】
打撃板1の厚み方向で見ると、凸部11a,11bは図3に示すように、打撃板1の高さを2等分する直線を軸として対称に形成されている。以下の説明では、この軸を対称軸1aと呼ぶことがある。対称軸1aは、打撃板1の幅方向と平行に向けられている。凸部11a,11bの長手方向は、対称軸1aと平行である。
【0064】
当該凸部11a,11bは、何れも締付部材4の溝部42に嵌め込むことができる。締付部材4を対称軸1a(回転軸2c)と平行な方向にスライドさせることで、締付部材4が当該引掛け部11に対して噛み合う状態と、当該噛合いを解除する状態と、の間で切り換えることができる。
【0065】
打撃板1の厚み方向両側に配置された締付部材4が引掛け部11(図3においては凸部11b)に嵌合している状態において、打撃板1及び締付部材4a,4bが遠心力によって回転軸2cから離れる方向に移動すると、プロテクタ3a,3bと締付部材4a,4bと間でテーパ係合が生じて、打撃板1がロータ2に固定される。
【0066】
このように、シンプルな構成で打撃板1を回転板24に容易に固定することができるので、作業の簡素化を図ることができる。
【0067】
打撃板1を回転板24に取り付ける場合、図4に示すように、締付部材4の溝部42は、2つの凸部11a,11b(第1凸部及び第2凸部)のうち回転軸2cに近い側に装着される。こうして取り付けられた打撃板1は、ロータ2を回転させることにより、遠心力によって径方向外側へ移動する。この移動後の状態でも、アウタ部3qの外周面は図3に示すように、2つの凸部11a,11bのうち回転軸2cから遠い側に対して、外周側となるように位置する。回転軸2cから遠い側の凸部をアウタ部3qによって摩耗から効果的に保護できるので、打撃板1を反転した後に、当該凸部に締付部材4の溝部42を異常なく装着して回転板24に取り付けることができる。
【0068】
以上に説明したように、破砕機100において、プロテクタ3は、回転する回転板24に取り付けられる。プロテクタ3は、打撃板1を支持するとともに、回転板24を保護する。プロテクタ3は、ベース部3pと、アウタ部3qと、を備える。アウタ部3qは、ベース部3pよりも外周側に配置される。アウタ部3qは、ベース部3pに対して着脱可能である。
【0069】
これにより、プロテクタ3の外周側が摩耗した場合でも、一部の部品であるアウタ部3qを交換することで、メンテナンスを完了させることができる。従って、メンテナンスコストを低減できる。
【0070】
本実施形態のプロテクタ3において、アウタ部3qがベース部3pに対してスライド移動することで、ベース部3pに対する着脱が行われる。
【0071】
これにより、アウタ部3qの交換のためのメンテナンス作業が簡単になる。
【0072】
本実施形態のプロテクタ3において、直線状に延びる溝38がアウタ部3qに形成されている。溝38に沿ってアウタ部3qがベース部3pに対してスライド移動可能に構成されている。
【0073】
これにより、簡素な構成で、アウタ部3qをベース部3pに対して着脱することができる。
【0074】
本実施形態のプロテクタ3において、アウタ部3qは、ベース部3pに対してボルトレスで固定される。
【0075】
これにより、ボルトの取付け/取外しの手間を省略できるので、メンテナンス性を向上させることができる。
【0076】
本実施形態のプロテクタ3において、アウタ部3qに規制突起39が設けられる。規制突起39は、アウタ部3qがベース部3pから外れる方向の移動を、破砕機100の部品であるロータライナ25に当たることで阻止する。
【0077】
これにより、少ない部品点数で、アウタ部3qをベース部3pに対して実質的に固定することができる。
【0078】
本実施形態のプロテクタ3において、規制突起39は、回転板24に固定されたロータライナ25に当たることで、アウタ部3qがベース部3pから外れる方向の移動を阻止する。
【0079】
これにより、簡素な構成を実現することができる。
【0080】
本実施形態のプロテクタ3においては、打撃板1に装着された締付部材4を案内するテーパ案内面31が形成される。テーパ案内面31は、打撃板1が外周側へ移動するのに伴って締付部材4が打撃板1を締め付けるように形成されている。
【0081】
これにより、テーパ締付けによる打撃板1の固定を、メンテナンスコストを安価にしながら実現できる。
【0082】
本実施形態の破砕機100は、プロテクタ3と、回転板24と、打撃板1と、を備える。
【0083】
これにより、プロテクタ3を安価でメンテナンスすることが可能な破砕機100を提供することができる。
【0084】
本実施形態のプロテクタ3において、打撃板1には、2つの凸部11a,11bが形成される。図3のように凸部11bを用いて打撃板1をプロテクタ3に取り付けた状態で、凸部11aは、アウタ部3qの外周面よりも内周側に位置する。図3の状態から打撃板1を取り外し、打撃板1の向きを反転させることにより、凸部11aを用いて打撃板1をプロテクタ3に取付可能である。
【0085】
これにより、凸部11bを使用して打撃板1をプロテクタ3に取り付けた状態で、アウタ部3qの外周面が少し摩耗した場合でも、凸部11aが同様に摩耗することを防止することができる。従って、打撃板1を反転させた場合に、凸部11aを用いて打撃板1をプロテクタ3に良好に取り付けることができる。
【0086】
以上に本開示の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0087】
ベース部3pとアウタ部3qとを機械的に結合するための構成は任意である。例えば、突起37がアウタ部3q側に形成され、溝38がベース部3p側に形成されても良い。
【0088】
図5及び図6に示すように突起37及び溝38を断面T字状とすることに代えて、例えば、図7に示すように断面テーパ状の突起37x及び溝38xとすることができる。また、例えば、図8に示すように断面L字状の1対の突起37y及び溝38yとすることもできる。
【0089】
上記のようなボルトレスでの固定に代えて、公知のボルトを用いてアウタ部3qをベース部3pに対して固定しても良い。
【0090】
アウタ部3qの抜止めは、ロータライナ25以外の部品に規制突起39が当たることで実現されても良い。規制突起39が省略されても良い。
【0091】
差込凹部35、固定凹部36、規制突起39、及び爪部26の形状は、適宜変更することができる。
【0092】
ベース部3p及びアウタ部3qからなる分割構造のプロテクタ3に対して、締付部材4を用いることなく打撃板1を直接固定する構成に変更することもできる。
【0093】
打撃板1は、ロータ2の周方向に等間隔で3つ以下又は5つ以上取り付けることも可能である。
【0094】
第1突起33を省略することもできる。
【符号の説明】
【0095】
1 打撃板
3 プロテクタ
3p ベース部
3q アウタ部
4 締付部材
11a,11b 凸部
24 回転板
25 ロータライナ(部品)
31 テーパ案内面
37 突起
38 溝
39 規制突起(規制部)
100 破砕機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8