(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082649
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】編レース、衣服、及び編レースの製造方法
(51)【国際特許分類】
D04B 21/12 20060101AFI20230607BHJP
D04B 21/18 20060101ALI20230607BHJP
D04B 21/00 20060101ALI20230607BHJP
D02G 3/40 20060101ALI20230607BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20230607BHJP
A41B 17/00 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
D04B21/12
D04B21/18
D04B21/00 A
D02G3/40
A41D31/00 502D
A41B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101341
(22)【出願日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021196020
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】597027305
【氏名又は名称】株式会社クロダレース
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 茂男
【テーマコード(参考)】
3B128
4L002
4L036
【Fターム(参考)】
3B128SA01
3B128SA03
3B128SB07
4L002AA05
4L002AB02
4L002AB04
4L002AC01
4L002AC05
4L002CA00
4L002CA01
4L002CA03
4L002CA04
4L002CB02
4L002DA01
4L002EA00
4L002FA01
4L036MA04
4L036MA37
4L036PA09
4L036PA10
4L036PA18
4L036PA46
4L036RA03
4L036RA13
4L036RA25
(57)【要約】
【課題】 伸縮性を向上させた編レースを提供することを目的とする。
【解決手段】 本実施形態における編レースは、複数の編み目が連続した基本組織12と、基本組織12の複数の編み目が連続する方向に挿入された、糸の長さ方向に伸縮する弾性糸20と、基本組織12の複数の編み目が連続する方向に挿入された、熱融着性のある材料を糸状に形成した接着糸30と、編み目に挿入された接着糸30の少なくとも一部が迂曲した迂曲部31とを有し、接着糸30は、複数の編み目が連続する方向に引き伸ばす前の状態で、弾性糸20より曲がり、かつ、少なくとも一部が弾性糸30に接着している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の編み目が連続した基本組織と、
前記基本組織の複数の編み目が連続する方向に挿入された、糸の長さ方向に伸縮する弾性糸と、
前記基本組織の複数の編み目が連続する方向に挿入された、接着性のある接着糸と、
前記編み目に挿入された前記接着糸の少なくとも一部が迂曲した迂曲部と
を有し、
前記接着糸は、複数の編み目が連続する方向に前記基本組織を引き伸ばす前の状態で、前記弾性糸より曲がり、かつ、少なくとも一部が当該弾性糸に接着している
編レース。
【請求項2】
前記基本組織は、鎖編み目が連続した組織であり、
前記基本組織を形成する糸により、隣り合う2つの前記基本組織を横渡りして連結する連結部
をさらに有し、
前記連結部は、前記基本組織のコース方向において、隣り合う2つの前記基本組織を連結する
請求項1に記載の編レース。
【請求項3】
前記基本組織は、機能性若しくは熱融着性のある単独素材糸、又は、機能性若しくは熱融着性のある繊維を含む複合糸により、鎖編み目を形成される
請求項1又は2に記載の編レース。
【請求項4】
前記基本組織の鎖編み目に挿入され、隣り合う2つの前記基本組織を連結する挿入糸をさらに有し、
前記挿入糸は、機能性若しくは熱融着性のある単独素材糸、又は、機能性若しくは熱融着性のある繊維を含む複合糸である
請求項3に記載の編レース。
【請求項5】
前記接着糸は、単独素材、又は、長さ方向に伸縮する糸を含む複合糸である
請求項4に記載の編レース。
【請求項6】
前記接着糸は、熱融着糸であり、熱融着糸の一部が破断した破断片、及び、当該接着糸の一部が盛り上がった節部の少なくとも一方を含む
請求項1に記載の編レース。
【請求項7】
前記接着糸は、熱合着糸であり、当該接着糸に接触する糸の形状に合わせて、当該接着糸の表面形状が変形し、変形した形状を保持している
請求項1に記載の編レース。
【請求項8】
前記接着糸は、単独素材、又は、長さ方向に伸縮する糸を含む複合糸である
請求項1、2、6又は7に記載の編レース。
【請求項9】
少なくとも一部が編レースにより形成され、
前記編レースは、
複数の編み目が連続した基本組織と、
前記基本組織の複数の編み目が連続する方向に挿入された、糸の長さ方向に伸縮する弾性糸と、
前記基本組織の複数の編み目が連続する方向に挿入された、接着性のある接着糸と、
前記編み目に挿入された前記接着糸の少なくとも一部が迂曲した迂曲部と
を有し、
前記接着糸は、複数の編み目が連続する方向に前記基本組織を引き伸ばす前の状態で、前記弾性糸より曲がり、かつ、少なくとも一部が当該弾性糸に接着している
衣服。
【請求項10】
複数の編み目が連続した基本組織に対して、複数の編み目が連続する方向に、糸の長さ方向に伸縮する弾性糸と、接着性のある接着糸を挿入するときに、当該弾性糸の送り出し量より、当該接着糸の送り出し量を多くする条件で、当該弾性糸および当該接着糸を挿入する工程と、
前記接着糸が熱融解する温度で加熱し、前記弾性糸に対して当該弾性糸より曲がった状態の前記接着糸を接着する工程と
を有する編レースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編レース、衣服、及び編レースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、鎖編組織をベースに鎖編糸よりも融点の低い熱接着糸と、模様を形成する糸が、レース表面より第2ループ状部分、模様形成糸、熱接着糸、第1ループ状部分の順に編成し、加熱工程で接着糸のみを溶融接着させて、レース全体の美観の維持と鎖編糸のホツレを防止させるレース編地が開示されている。
また、特許文献2には、鎖編組織をベースに鎖編糸よりも融点の低い熱接着糸を編み込み、加熱工程で接着糸のみを溶融接着させて、続く破断工程にて張力を加えて熱融着糸を複数に破断し鎖編糸より突出する部分を設け、その突出部分に鎖編糸が引っ掛かり、鎖編糸のホツレを防止させる編レースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-146310号公報
【特許文献2】特開2009-13554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、伸縮性を向上させた編レースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る編レースは、複数の編み目が連続した基本組織と、前記基本組織の複数の編み目が連続する方向に挿入された、糸の長さ方向に伸縮する弾性糸と、前記基本組織の複数の編み目が連続する方向に挿入された、接着性のある接着糸と、前記編み目に挿入された前記接着糸の少なくとも一部が迂曲した迂曲部とを有し、前記接着糸は、複数の編み目が連続する方向に前記基本組織を引き伸ばす前の状態で、前記弾性糸より曲がり、かつ、少なくとも一部が当該弾性糸に接着している。
【0006】
好適には、前記基本組織は、鎖編み目が連続した組織であり、前記基本組織を形成する糸により、隣り合う2つの前記基本組織を横渡りして連結する連結部をさらに有し、前記連結部は、前記基本組織のコース方向において、隣り合う2つの前記基本組織を連結する。
【0007】
好適には、前記基本組織は、機能性若しくは熱融着性のある単独素材糸、又は、機能性若しくは熱融着性のある繊維を含む複合糸により、鎖編み目を形成される。
【0008】
好適には、前記基本組織の鎖編み目に挿入され、隣り合う2つの前記基本組織を連結する挿入糸をさらに有し、前記挿入糸は、機能性若しくは熱融着性のある単独素材糸、又は、機能性若しくは熱融着性のある繊維を含む複合糸である。
【0009】
好適には、前記接着糸は、単独素材、又は、長さ方向に伸縮する糸を含む複合糸である。
【0010】
好適には、前記接着糸は、熱融着糸であり、熱融着糸の一部が破断した破断片、及び、当該接着糸の一部が盛り上がった節部の少なくとも一方を含む。
【0011】
好適には、前記接着糸は、熱合着糸であり、当該接着糸に接触する糸の形状に合わせて、当該接着糸の表面形状が変形し、変形した形状を保持している。
【0012】
好適には、前記接着糸は、単独素材、又は、長さ方向に伸縮する糸を含む複合糸である。
【0013】
また、本発明に係る衣服は、少なくとも一部が編レースにより形成され、前記編レースは、複数の編み目が連続した基本組織と、前記基本組織の複数の編み目が連続する方向に挿入された、糸の長さ方向に伸縮する弾性糸と、前記基本組織の複数の編み目が連続する方向に挿入された、接着性のある接着糸と、前記編み目に挿入された前記接着糸の少なくとも一部が迂曲した迂曲部とを有し、前記接着糸は、複数の編み目が連続する方向に前記基本組織を引き伸ばす前の状態で、前記弾性糸より曲がり、かつ、少なくとも一部が当該弾性糸に接着している。
【0014】
また、本発明に係る編レースの製造方法は、複数の編み目が連続した基本組織に対して、複数の編み目が連続する方向に、糸の長さ方向に伸縮する弾性糸と、接着性のある接着糸を挿入するときに、当該弾性糸の送り出し量より、当該接着糸の送り出し量を多くする条件で、当該弾性糸および当該接着糸を挿入する工程と、前記接着糸が熱融解する温度で加熱し、前記弾性糸に対して当該弾性糸より曲がった状態の前記接着糸を接着する工程とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レース強度やポリウレタン抜け等の物性面を向上させつつ、所望のフィット感や高い伸縮性、も合わせて向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態における柄模様入り編レース1を例示する図である。
【
図2】柄模様入り編レース1の編成組織を説明するための図示例である。
【
図3】柄模様入り編レース1の編成組織の詳細を説明する図である。
【
図4】実施例の編レースを拡大した写真、及び、従来の編レースを拡大した写真である。
【
図5】柄模様入り編レース1の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
【
図6】本実施形態の柄模様入り編レース1における変形例1を例示する編成組織の詳細図である。
【
図7】本実施形態の柄模様入り編レース1における変形例2を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は、図示例に限定されるものではない。
まず、
図1~
図3を参照し、柄模様入り編レース1の構成を説明する。
図1は、本実施形態における柄模様入り編レース1を例示する図である。
図1に例示するように、柄模様入り編レース1(以下、編レース1)は、衣服の少なくとも一部に使用される編レースである。例えば、編レース1は、女性用のインナーウエア(下着)の全部又は一部に使用される。なお、女性用インナーウエアには、ファンデーション(基礎下着)、ランジェリー(装飾下着)、及びアンダーウエア(肌着)が含まれる。
この編レース1は、例えば、ラッセル機などの経編機によって編成された経編地のラッセルレースであり、複数の透孔が形成され、各透孔の形状および配置の組合せによりレース模様が形成される。編レース1は、地編み組織2と、地編み組織2に編み込まれた柄部6とを有する。また、編レース1は、仕上密度において、コース密度が90コース/インチ以上130コース/インチ以下、好ましくは95コース/インチ以上120コース/インチ以下である。
【0018】
地編み組織2は、隣り合う2つの基本となる組織(後述する基本組織12)を互いに連結して形成された地編み組織である。地編み組織2は、例えば、鎖編組織、チュール組織、アトラス組織、又はパワーネット組織等である。なお、本例の地編み組織2は、鎖編組織であり、ラン止め(ほつれ防止)機能を有する。
また、地編み組織2は、透かし部4と、地模様5とを含む。
透かし部4は、単位面積あたりに配置される糸の量が疎な領域であり、様々な複数のネット目である透孔が配置される。
地模様5は、単位面積あたりに配置される糸の量が密な領域であり、所定の模様に形成される。
柄部6は、地編み組織2に柄糸が編み込まれ、地編み組織2を装飾する領域である。柄部6は、編み込まれた柄糸の太さや疎密度合いにより、花柄模様(以下、柄モチーフと称呼することもある)の輪郭、濃淡、或いは凹凸を現出させる。
【0019】
図2は、柄模様入り編レース1の編成組織を説明するための図示例である。なお、説明の便宜上、各糸同士に間隔を設けているが、実際に各糸同士は密着している。
図2に例示するように、編レース1は、鎖編糸10、鎖編糸10により形成された基本組織12、弾性糸20、接着糸30、ジャカード糸(不図示)、及び、柄部6を形成する柄糸(不図示)とを有する。
【0020】
鎖編糸10は、地編み組織2の基礎となる基本組織12を形成する編糸であり、換言すると、挿入糸を挿入する編み目を複数形成する編糸である。鎖編糸10は、化学繊維のうち合成繊維で形成した糸であり、単独素材糸又は複合糸である。例えば、鎖編糸10が単独素材糸(例えばフィラメント糸)である場合、ポリアミドナイロン(ナイロン)、アクリル、又は、ポリエステル等で形成される。また、鎖編糸10が複合糸である場合、例えば、熱により材料が融解することで他の糸と接着する弾性糸である熱融着性弾性糸を芯糸にして、ナイロン糸を被覆した複合糸である。また、鎖編糸10は、接触温感、接触冷感又は抗菌防臭等の機能性繊維を含む糸でもよく、単独素材糸又は複合糸でもよい。温感機能性繊維糸として例えばアクリル繊維糸や、冷感機能性繊維糸として例えばキュプラ繊維糸、その他抗菌や防臭など、追加する目的や効果に応じた素材の選択や、複合素材の組み合わせも適宜選択できる。複合糸の複合方法は、例えばカバーリング加工、エア交絡加工、又は合撚加工の他、既知の複合加工法を適宜選択できる。なお、本例の鎖編糸10は、ナイロンで形成したマルチフィラメント糸である。
また、鎖編糸10の太さは、例えば20dtex(デジテックス)以上78dtex以下の範囲であり、好ましくは、33dtex以上44dtex以下である。なお、本例の鎖編糸10の太さは33dtexである。
【0021】
基本組織12は、鎖編糸10により複数の鎖編み目が連続した編み組織である。複数の基本組織12は、
図2に例示したように、基本組織12A~12Dを含み、等間隔に並列して配置されている。なお、説明の便宜上、基本組織12A~12Dは、とりわけ区別する必要のない場合に基本組織12と称呼する。隣り合う2つの基本組織12は、複数の基本組織12が並ぶ方向、又は、複数の鎖編み目が連続する方向(コース方向)と直交する方向(ウェール方向)において、それぞれの鎖編み目が隣り合う位置に配置されている。
また、基本組織12は、隣り合う2つの基本組織12を連結するラン止め部15を有する。ラン止め部15は、基本組織12を形成する鎖編糸10により、隣り合う2つの基本組織12のうち、一方の基本組織12の鎖編み目から他方の基本組織12の鎖編み目に横渡りし、隣り合う2つの基本組織12を連結する。ラン止め部15の周期は、基本組織12のコース方向において、例えば3コース以上の周期であり、好ましくは3コース以上20コース以下の周期であり、より好ましくは3コース以上9コース以下の周期あり、さらに好ましくは3コース以上7コース以下の周期である。なお、本例のラン止め部15は、3コースの周期で、隣り合う2つの基本組織12を連結する。なお、ラン止め部15は、本発明に係る連結部の一例である。
【0022】
弾性糸20は、糸の長さ方向に伸縮する、弾性を有する糸である。弾性糸20は、例えば、ポリウレタン弾性糸(いわゆるスパンデックス)であり、熱融着性を有さないポリウレタン弾性糸である(なお、熱融着性を有さないポリウレタン弾性糸は、ポリウレタン伸縮糸と称呼する場合もある)。
弾性糸20は、基本組織12の複数の編み目に挿入される挿入糸であり、本例の弾性糸20は、各基本組織12(
図2中では、12A~12D)に挿入され、複数の鎖編み目が連続する方向(コース方向)に挿入し配置される。これにより、弾性糸20は、基本組織12をコース方向に伸縮させることができる。その結果、弾性糸20は、編レース1に伸縮性を付与し、ストレッチレースとすることができる。
また、弾性糸20は、送り出し量を調節して張力を加えた状態で、基本組織12の複数の鎖編み目に挿入される。
また、弾性糸20の太さは、伸度や伸縮力により太さを適宜変更可能であり、例えば44dtex(デジテックス)以上466dtex以下の範囲であり、好ましくは、78dtex以上311dtex以下である。なお、本例の弾性糸20の太さは234dtex以上311dtex以下である。
【0023】
接着糸30は、接着性のある材料、具体的には熱融着性のある材料を糸状に形成した糸である。接着糸は、熱により材料が融解することで他の糸との接着機能を発揮する。例えば、接着糸30は、熱融着性のあるポリウレタン弾性糸(熱融着ポリウレタン弾性繊維)である。また、接着糸30は、糸の長さ方向に伸縮する弾性のある糸を含む複合糸であってもよい。例えば、接着糸30は、弾性のある芯糸に被覆糸を被覆した複合糸であってもよい。
接着糸30は、基本組織12の複数の編み目に挿入される挿入糸であり、本例の接着糸30は、各基本組織12(
図2中では、12A~12D)に挿入され、複数の鎖編み目が連続する方向(コース方向)に挿入し配置される。
また、接着糸30の太さは、例えば20dtex(デジテックス)以上155dtex以下の範囲であり、好ましくは、22dtex以上78dtex以下であり、本例の接着糸30の太さは44dtexである。
【0024】
ジャカード糸は、本発明に係る挿入糸の一例であり、基本組織12の鎖編み目に挿入する挿入糸である。ジャカード糸は、隣り合う2つの基本組織12を連結し、レース模様のある地編み組織2を形成する。ジャカード糸は、単独素材の糸、又は複合糸であり、本例では単独素材糸である。
また、ジャカード糸は、単独素材糸である場合、例えば合成繊維または再生繊維である。また、ジャカード糸は、複合糸である場合、例えば天然繊維若しくは再生繊維と合成繊維との複合糸、若しくは、合成繊維同士との複合糸である。ここで、天然繊維とは、例えば、綿、麻、シルク、又はウール等であり、再生繊維とは、例えば、レーヨン、キュプラ、又はポリノジック等である。また、合成繊維とは、例えば、アクリル、ポリエステル、ナイロン、又はポリウレタン等である。
また、ジャカード糸は、熱融着する接着糸であってもよく、例えば、熱融着性弾性糸であるポリウレタン、又は、ポリウレタン伸縮糸を芯糸にして、ナイロン糸を被覆した複合糸であってもよい。これにより、地編み組織2のホツレや裂けを防止できる。ジャカード糸の複合方法は、例えばカバーリング加工、エア交絡加工、又は合撚加工等の既知の複合方法を適宜選択でき、条件に適した上記複合方法で製造された複合糸である。
また、ジャカード糸は、鎖編糸10と同様に接触温感、接触冷感又は抗菌防臭等の機能性繊維を含む糸でもよく、単独素材糸又は複合糸でもよい。温感機能性繊維糸として例えばアクリル繊維糸や、冷感機能性繊維糸として例えばキュプラ繊維糸、その他抗菌や防臭など、追加する目的や効果に応じた素材の選択や、複合素材の組み合わせも適宜選択できる。
【0025】
柄糸は、基本組織12の鎖編み目に挿入する挿入糸である。柄糸は、編レース1の表側に位置し、所定の柄を形成する糸である。柄糸は、
図1に例示した地編み組織2に編み込まれ柄部6を形成する。編み込まれた柄糸は、太さや単位面積当たりの疎密度合いにより、地編み組織2に柄モチーフの輪郭、濃淡、或いは凹凸を現出させる。
【0026】
図3は、柄模様入り編レース1の編成組織の詳細を説明する図である。なお、説明の便宜上、各糸同士に間隔を設けているが、実際に各糸同士は密着している。
図3は、
図2のA部に着目した図である。
図3に例示するように、弾性糸20及び接着糸30は、コース方向における鎖編み目11Aから鎖編み目11Dの方向に、基本組織12の鎖編み目11A~11Dに挿入され、かつ、同じ挿入経路となっている。すなわち、弾性糸20及び接着糸30は、少なくとも一部において同じ挿入経路となっている。なお、弾性糸20及び接着糸30は、同じコース方向に挿入される場合、互いに異なる挿入経路であってもよい。
接着糸30は、鎖編み目11に挿入された状態で、接着糸30の少なくとも一部が迂曲した迂曲部31を含む。迂曲部31は、コース方向、ウエール方向又は編レース1の厚み方向に、緩やか又は急な曲がり角度で、湾曲又は屈曲した部分である。迂曲部31は、例えば、接着糸30の曲率又は曲がり具合が変化した位置にある。
また、弾性糸20は、鎖編み目11に挿入された状態で、弾性糸20の挿入経路に沿って進行する向きが転換した転換部21を含む。
鎖編み目11A及び鎖編み目11Bに着目すると、接着糸30は、編レース1をコース方向に引き伸ばす前の状態で、挿入元の鎖編み目11Aから挿入先の鎖編み目11Bの間において、弾性糸20より多くの位置で曲がっている。具体的には、接着糸30には、弾性糸20の転換部21A及び21Bの間において、1カ所以上の迂曲部31が配置される。本例の接着糸30は、迂曲部31が複数配置されるため、弾性糸20より多くの位置で曲がった状態となっている。また、接着糸30は、弾性糸20と接触している位置において全体的に接着している。
【0027】
また同様に、挿入元の鎖編み目11Bから挿入先の鎖編み目11Cの間、挿入元の鎖編み目11Cから挿入先の鎖編み目11Dの間においても、接着糸30は、弾性糸20より多くの位置で曲がっている。具体的には、接着糸30には、弾性糸20の転換部21B及び21Cの間や転換部21C及び21Dの間においても、1カ所以上の迂曲部31が配置される。本例の接着糸30は、迂曲部31が複数配置されるため、弾性糸20より多くの位置で曲がった状態となっている。また、接着糸30は、弾性糸20と接触している位置において全体的に接着している。
すなわち、接着糸30は、挿入元の編み目から挿入先の編み目の間において、複数の編み目が連続するコース方向に引き伸ばす前の状態(弾性糸20及び接着糸30が伸びておらず自然の状態(非伸長状態))で、弾性糸20より全体的に迂曲し、かつ、少なくとも一部が弾性糸20に接着している。なお、
図3では、
図2に例示した基本組織12AのA部に着目して説明したが、これに限定するものではなく、当然に、各基本組織12の鎖編み目11に挿入された弾性糸20全体に対して、接着糸30は、弾性糸20に対して迂曲して配置されている。
このように、弾性糸20は、弾性糸20の表面に対して、波打った状態またはうねった状態である接着糸30が接着されているため、弾性糸20の表面には、不規則的な凹凸形状が形成される。
【0028】
図4は、実施例の編レースを拡大した写真、及び、従来の編レースを拡大した写真である。
図4(A)は、実施例の編レースを拡大した写真であり、
図4(B)は、従来の編レースを拡大した写真である。
図4(A)に例示するように、本例の編レース1の非伸長状態において、弾性糸20は、弾性糸20の表面に対して、波打った状態またはうねった状態の接着糸30を接着されていることを確認できる。
また、
図4(B)に例示するように、従来の編レースの非伸長状態において、弾性糸は、弾性糸20の表面に対して、比較的真っ直ぐな状態の接着糸30を接着されていることを確認できる。
このように、本実施例の編レース1において、弾性糸20は、その表面に対して、迂曲した接着糸30を接着することにより、不規則的な凹凸形状のある表面となる。
【0029】
次に、
図5を参照し、編レース1の製造方法を説明する。
図5は、柄模様入り編レース1の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
本実施例の編レース1は、フロントジャカードラッセル編機(以下、フロントジャカード機)により編成される。以下、本例の製造方法では、上記フロントジャカード機を使ってレース地の編成し、編成したレース地を染色し、染色したレース地を熱処理することで、編レース1を得る。
図6に例示したように、ステップ100(S100)において、作業者は、フロントジャカード機に、鎖編糸10を引き伸ばしながら、
図2に例示した基本組織12を形成させる。具体的には、フロントジャカード機は、地筬によって鎖編糸10を編針に導き経編用の鎖編み目を形成し、形成した鎖編み目をコース方向に複数連続させて基本組織12を複数形成する。形成される基本組織12は、ウェール方向に等間隔で複数並列して設けられる。また、鎖編糸10を3コースの周期で横渡りさせ、ラン止め部15を入れ、隣り合う2つの基本組織12を連結する。
【0030】
ステップ102(S102)において、作業者は、フロントジャカード機に、鎖編糸10を引き伸ばした状態で形成した基本組織12の鎖編み目に弾性糸20を挿入させる。本例のフロントジャカード機は、
図2に例示したように、所望の伸度に応じた編成時の織密度(コース方向編成密度)で、複数の鎖編み目が連続するコース方向において、鎖編糸10を引き伸ばした状態で形成した基本組織12の鎖編み目に弾性糸20を挿入する。なお、編成密度において、コース密度が25コース/インチ以上、55コース/インチ以下あり、好ましくは35コース/インチ以上、45コース/インチ以下ある。なお、本例のコース密度は、38コース/インチである。
これにより、編成時に引き伸ばした状態で編成することで、編成後に大きな伸度が得られる。編成密度と仕上り時の織密度(仕上密度)との比率が伸度となる。つまり、伸度を大きくする場合は、編成密度に対して仕上密度が高くなるよう編成する。また、伸縮比率が大きい編地は、伸縮比率が大きい分、基本組織12の各ループの締まりが弱くなるため、生地の風合い(手触り)が柔らかくなる。
さらに、弾性糸20は、接着糸30の糸送り出し量より少なく糸を送り出され、鎖編み目に挿入させる。つまり、弾性糸20は、接着糸30より糸の張りが、張った状態で鎖編み目に挿入される。これにより、レース地の目標となる伸縮度に合わせて、弾性糸20を鎖編み目に挿入する周期、太さ、及び、各々の糸送り出し量の少なくとも1つを調節することで、キックバック(伸ばした状態からの元に戻る力)を適宜調節することができる。
【0031】
ステップ104(S104)において、作業者は、フロントジャカード機に、鎖編糸10を引き伸ばした状態で形成した基本組織12の鎖編み目に接着糸30を挿入させる。本例では、
図2に例示したように、複数の鎖編み目が連続するコース方向において、鎖編み目に接着糸30を挿入する。具体的には、弾性糸20と同じ挿入経路となるよう挿入する。接着糸30は、弾性糸20の糸送り出し量より多くの糸を送り出され、鎖編み目に挿入させる。つまり、接着糸30は、弾性糸20よりも糸の張りが緩く弛んだ状態で鎖編み目に挿入される。
なお、レースの目標伸度に合わせて、接着糸30を鎖編み目に挿入する周期、及び、各々の糸送り量の少なくとも一方を調節することで、キックバックや接着後の迂曲状態を適宜調節することができる。
【0032】
ステップ106(S106)において、作業者は、フロントジャカード機に、鎖編糸10を引き伸ばした状態で形成した基本組織12の鎖編み目に、ジャカード糸及び柄糸を挿入させる。これにより、
図1に例示した透かし部4、地模様5、柄部6を形成させる。
このように上記ステップS100~S106では、フロントジャカード編機の編成動作にて同一コース上で編込み等が行われ、染色加工前のレース地が製造される。製造されたレース地は、編成後に弾性糸20の縮む力でコース方向に直線的に縮む。このとき、接着糸30は、弾性糸20の縮む比率より、接着糸30の縮む比率が少ないため、弾性糸20に沿いながら迂曲した状態となる。なお、本例では、フロントジャカード機で編成したが、これに限定するものではなく、バックジャカード機等でも実現可能である。
【0033】
ステップ108(S108)において、作業者は、編成後のレース地を染色する。なお、本例では、後染めの場合を説明するが、これに限定するものではなく、先染めあってもよいし、原着糸であれば本工程を省くことができる。
【0034】
ステップ110(S110)において、作業者は、レース地の接着糸30が融解する温度で加熱し、弾性糸20に接着糸30を接着させる、熱処理を行う(熱セット工程)。熱セット工程において、弾性糸20の表面に迂曲して配置された接着糸30を接着する。これにより、弾性糸20の外壁面に凹凸が形成される。なお、熱セット工程時の熱セット条件は、160℃以上200℃以下の温度で90秒以下であり、好ましくは180℃以上190℃以下で40秒以上80秒以下の熱処理を行う。これにより、作業者は、
図1に例示した編レース1を得ることができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の編レース1によれば、弾性糸20に対して接着糸30を迂曲した状態で接着することにより、弾性糸20の表面が不規則的な凹凸形状となる。よって、例えば、編レース1を含む下着の着用時や洗濯時において、外力が加えられ引っ張られた場合に、弾性糸20に接着された接着糸30が鎖編み目11に引っ掛かかるため、弾性糸20が基本組織12から抜けるスパン抜けや、ほつれを防止することができる。さらに、ネットのズレが少なくなりレースのヨレ防止や風合いを維持する事ができる。
また、編レース1によれば、鎖編糸10の横渡りを増やし、ラン止め部15を多く入れることで、鎖編糸10の横渡りが多い分、1本の基本組織を形成する鎖編糸は2つのウエール間を行き来する蛇腹状態となり、コース方向における伸縮性が向上する。さらに、ラン止め部15を設けない場合と比べて、編成時の編成密度と仕上密度との差を低く抑えることができるため、基本組織12のループの締まりや破裂強度も向上する。また、破裂強度が向上することで鎖編糸10に細い糸を使用することが可能となり、ラン止め部15が多くなっても鮮明な柄やネット表現が可能となる。
【0036】
また、編レース1のポリウレタン抜け防止効果やネットのズレ防止効果をさらに向上させるために、別途接着糸を挿入することで、より物性に優れた編みレースを提供することが可能となる。その場合、各糸に対する挿入方向や挿入サイクル、レース表裏に対する各糸の前後の配置状態にはとらわれない。
【0037】
また、編レース1は、弾性糸20及び接着糸30を同じコース方向に同じ挿入経路となるよう、基本組織12に挿入しているため、透け感が損なわれない。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。
【0038】
次に、各実施例を説明する。
[実施例1]
バックジャカード編機を使用し、上記製造方法により、レース地を編成した。具体的には、33dtexの太さである鎖編糸で3コースの周期でラン止め部を配置した基本組織に、311dtexの太さである弾性糸、及び、44dtexの太さである接着糸を、同じコース方向、かつ、同じ挿入経路となるよう挿入してレース地を編成した。そして、編成した編成したレース地を熱セット処理して編レースを得た。なお、編成密度において、39.5コース/インチであり、仕上密度において、110コース/インチである。
(伸度測定方法)
実施例1の編レースの伸度を計測した。具体的には、レース巾50mm(レース端の波状にカットした部分(スカラ部分)を含む)、カットレース長さ(縦方向)160mmでカットし、短冊状の試験片を採取した。試験片の巾方向を2つ折り(25mm巾)にして、長さ方向中央100mmを残し上下30mmずつを伸長率測定器にて固定し、長さ方向に22.1Nの荷重をかけて、伸び率を計測した。
(伸度測定結果)
実施例1の編レースは、長さ方向において、長さ方向中央100mmの長さが278mmに伸びた。すなわち、編レースのコース方向において伸び率178%であった。
【0039】
[実施例2]
フロントジャカード編機を使用し、上記製造方法により、レース地を編成した。具体的には、33dtexの太さである鎖編糸で3コースの周期でラン止め部を配置した基本組織に、234dtexの太さである弾性糸、及び、44dtexの太さである接着糸を、同じコース方向、かつ、同じ挿入経路となるよう挿入してレース地を編成した。そして、編成したレース地を熱セット処理して編レースを得た。なお、編成密度において、38コース/インチであり、仕上密度において、110コース/インチである。
(伸度測定方法)
実施例2の編レースの伸度を計測した。具体的には、レース巾50mm(レース端の波状にカットした部分(スカラ部分)を含む)、カットレース長さ(縦方向)160mmでカットし、短冊状の試験片を採取した。試験片の巾方向を2つ折り(25mm巾)にして、長さ方向中央100mmを残し上下30mmずつを伸長率測定器にて固定し、長さ方向に22.1Nの荷重をかけて、伸び率を計測した。
(伸度測定結果)
実施例2の編レースは、長さ方向において、長さ方向中央100mmの長さが308mmに伸びた。すなわち、編レースのコース方向において伸び率208%であった。
【0040】
[総括]
以上のように、実施例1及び実施例2で得た各編レースの伸度測定結果より、仕上密度において、コース密度が95コース/インチ以上120コース/インチ以下であり、編成密度において、35コース/インチ以上、45コース/インチ以下である編レースのコース方向における伸び率(伸度)が、150%以上であることを確認した。
【0041】
次に、上記実施形態における変形例を説明する。
なお、変形例では、上記実施例と実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[変形例1]
図6は、本実施形態の柄模様入り編レース1における変形例1を例示する編成組織の詳細図である。
上記実施形態の編レースの接着糸30において、太さが概ね均一であり、かつ、連続した状態で弾性糸20に接着した場合を説明したがこれに限定するものではなく、太さが不均一であってもよいし、部分的に破断してもよい。
図6に例示するように、接着糸30は、接着糸30の一部が破断した破断片302、及び、接着糸30の一部が盛り上がった節部304を含む。
破断片302は、接着糸30の一部が破断した糸片である。本例の破断片302は、熱セット加工において熱融着糸が溶けて変形し破断した糸片である。なお、破断片302は、編レース1の生地張力により自然と破断した糸片も含まれる。
節部304は、接着糸30の一部が盛り上がって突出し節状となった部分である。本例の節部304は、熱セット加工により熱融着糸が溶けて変形し、部分的に盛り上がった部分である。節部304は、編レース1の伸縮時に引っ掛かるため、糸抜けを防止することができる。また、節部304は、迂曲部31のある位置に設けられるとより、迂曲部31と相まって、より効果的に糸抜けを防止することができる。
このように、接着糸30は、弾性糸20の表面に破断片302及び節部304を形成し、不規則的な凹凸形状のある弾性糸20の表面とすることができるため、糸同士の結束を強固にし、糸抜けを防止することができる。なお、変形例1の接着糸30は、熱融着性のある単独素材、又は長さ方向に伸縮する糸を含む複合糸であってもよい。
【0042】
[変形例2]
図7は、本実施形態の柄模様入り編レース1における変形例2を例示する図である。
図7(A)は、基本組織12に挿入した状態の弾性糸20および接着糸30を拡大した図示例であり、
図7(B)は、弾性糸20から解いた状態の接着糸30を拡大した図示例である。
上記実施形態の編レースにおける接着糸30は、熱融着糸である場合を説明したがこれに限定するものではなく、例えば熱合着糸であってもよい。ここで、熱合着糸とは、
例えば染色加工又は熱セット加工時の熱により、糸が軟化することで形状が変形し、冷却後にその変形形状が保持される糸である。例えば、熱合着糸は、他の糸と編み込まれた状態において、熱セット加工を行うことで表面形状が変形し、冷却後にその変形形状が保持されることで接着する。また、熱合着糸は、他の糸の表面の凹凸や糸同士の隙間等に入り込む状態で熱セット加工を行うことで形状が変形し、冷却後にその変形形状が保持されることで接着する。接着糸30は、熱合着糸である場合、例えば、低融点ポリウレタン糸であり、保持された変形形状による引っ掛かりに加えて、ポリウレタン糸自体の摩擦力が相まって、より弾性糸20の抜け防止を図ることができる。
【0043】
本例の接着糸30は、熱合着糸であり、この接着糸30に接触する他の糸の形状に合わせて、接着糸30の表面形状が変形し、変形した形状を保持している。他の糸の形状とは、他の糸の表面形状、及び、他の糸の編み目や他の糸同士の交差等である糸の配置形状を含む。具体的には、接着糸30は、鎖編糸12と接触する部分において、鎖編糸12により形成された鎖編み目による締め付けにより、熱加工後の形状において、鎖編糸12に食い込むような形状に合わせて変形して接着する。また、
図7(B)に例示したように、接着糸30は、弾性糸20と接触する部分において、弾性糸20と張力差により、熱加工後の形状において、弾性糸20の表面形状に合わせて表面形状が変形して接着する。よって、接着糸30は、弾性糸20の表面形状に対応する接着糸30の表面形状とすると共に、鎖編糸12の鎖編み目に対応する接着糸30の表面形状を備えることができるため、弾性糸20に対して不規則的な凹凸形状のある表面形状を形成することが出来る。
このように、接着糸30は、弾性糸20に対して不規則的な表面を形成することにより、糸抜けを防止することができる。すなわち、接着糸30は、少なくとも一部が弾性糸20と接着し、その結果、弾性糸20の抜け防止を図ることができる糸であれば、熱融着糸または熱合着糸でもよい。なお、接着糸30は、熱融着糸又は熱合着糸に限定するものではなく、弾性糸20と接着する糸であれば代用可能することができる。熱融着糸または熱合着糸の太さは、弾性糸20の太さと略同じ、又は、弾性糸20の太さより一回り細い。また、接着糸30を変形させる外的要因となる力として、熱融着糸または熱合着糸のように熱で変形する糸に限定するものではなく、例えば、紫外線等による光、薬品、又は外力等で変形する糸であってもよい。なお、変形例2の接着糸30は、熱融着性のある単独素材、又は長さ方向に伸縮する糸を含む複合糸であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 柄模様入り編レース
2 地編み組織
4 透かし部
5 地模様
6 柄部
10 鎖編糸
11 鎖編み目
12 基本組織
20 弾性糸
30 接着糸