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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082655
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】吸湿呼吸器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/14 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
H01F27/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144265
(22)【出願日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021195848
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】脇本 聖
【テーマコード(参考)】
5E050
【Fターム(参考)】
5E050EA01
(57)【要約】
【課題】メンテナンスの削減、省エネ、CO2削減、サステナビリティを実現した吸湿呼吸器を提供する。
【解決手段】吸湿剤収納容器8は、内部に吸湿剤を収納する。吸湿剤収納容器8は、吸湿剤収納容器8内のうち外部との空気の流出入を行う流出入口40側に設けられた第1層吸湿剤室20と、吸湿剤収納容器8内のうちコンサベーター3と接続された通気管4側に設けられた第2層吸湿剤室21と、に分ける。加熱装置9は、第1層吸湿剤室20に設けられる。加熱装置9は、ソーラーパネル7で発電した電流により吸湿剤の加熱再生処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に吸湿剤を収納する吸湿剤収納容器と、
前記吸湿剤収納容器内のうち外部との空気の流出入を行う流出入口側に設けられた第1層吸湿剤室と、
前記吸湿剤収納容器内のうちコンサベーターと接続された通気管側に設けられた第2層吸湿剤室と、
ソーラーパネルと、
前記第1層吸湿剤室内に設けられ、前記ソーラーパネルで発電した電流により前記吸湿剤の加熱再生処理を行う加熱装置と、
を備えたことを特徴とする吸湿呼吸器。
【請求項2】
前記第1層吸湿剤室と前記第2層吸湿剤室との間に設けられた吸湿剤区分断熱層と、
前記第1層吸湿剤室と前記流出入口との間に設けられた空気流出入断熱層と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の吸湿呼吸器。
【請求項3】
前記吸湿剤区分断熱層と前記空気流出入断熱層は、空気の流出、流入を行う通気孔を有することを特徴とする請求項2記載の吸湿呼吸器。
【請求項4】
内部に吸湿剤を収納する吸湿剤収納容器と、
ソーラーパネルと、
前記吸湿剤収納容器内に設けられ、前記ソーラーパネルで発電した電流により前記吸湿剤の加熱再生処理を行う加熱装置と、
前記吸湿剤収納容器の上部に設けられた上部空気室と、
前記吸湿剤収納容器の下部に設けられた下部空気室と、
を備え、
外部との空気の流出入を行う流出入口を前記上部空気室に接続し、コンサベーターと接続された通気管を前記下部空気室に設けたことを特徴とする吸湿呼吸器。
【請求項5】
前記吸湿剤収納容器の内側に断熱層が設けられたことを特徴とする請求項1~4のうち何れかに記載の吸湿呼吸器。
【請求項6】
前記第2層吸湿剤室にのぞき窓が設けられたことを特徴とする請求項1~3のうち何れかに記載の吸湿呼吸器。
【請求項7】
前記吸湿剤収納容器にのぞき窓が設けられたことを特徴とする請求項4記載の吸湿呼吸器。
【請求項8】
前記ソーラーパネルに並列に接続されたLEDライトを備えたことを特徴とする請求項1または4記載の吸湿呼吸器。
【請求項9】
前記ソーラーパネルの方位角を5月の午前10時から午前11時の間で太陽光が正面となるように設置したことを特徴とする請求項1または4記載の吸湿呼吸器。
【請求項10】
前記ソーラーパネルの地表面に対する傾斜角を地表面に対し25度から30度に設置したことを特徴とする請求項9記載の吸湿呼吸器。
【請求項11】
前記ソーラーパネルは、12時以前は日陰が発生せず12時以降は日射が当たりにくい位置に設置することを特徴とする請求項10記載の吸湿呼吸器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器などの油入機器の劣化防止に用いられる吸湿呼吸器に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器などの油入機器の温度変化による油の体積変化を吸収するために、油入機器本体の上部や専用の容器に空気室が設けられている。以下、こういった空気室のことを避圧空間と称し、油の体積変化を吸収するための専用の容器をコンサベーターと称す。コンサベーターには、避圧空間と油の境界にゴム膜を設けて、空気と油が直接接することがないようにした構造の物もある。吸湿呼吸器は本体タンクやコンサベーターに付属して、避圧空間内の水分を除去することで、油の劣化を防止するための部品である。
【0003】
図5に、コンサベーターを備えた変圧器の一般的な装置構成の概略図を示す。この図5に示すように、変圧器中身を収容するタンク1と、タンク1の上部から連結管2を通して連結されたコンサベーター3と、コンサベーター3のさらに上部に延設された通気管4と、通気管4の途中に設置された吸湿呼吸器5と、を備える。変圧器中身を収容したタンク1内は、絶縁油6が充填されている。コンサベーター3には、絶縁油6が充填された空間と絶縁油6が充填されていない避圧空間65がある。
【0004】
この絶縁油6の温度変化に伴う膨張収縮量を、このコンサベーター3を用いて調整している。変圧器の絶縁油6は、一般的に昼間の負荷増大と外気温度の上昇に伴い絶縁油が高温となり膨張し、夜間には負荷減少と外気温低下により低温となり体積が収縮する。
【0005】
この外気温変化や変圧器負荷による温度上昇や温度低下による絶縁油の膨張収縮により、タンク1内やコンサベーター3内の油面および避圧空間65の容積が変化する。この油面および容積の変化に伴い、避圧空間65内の空気が吸湿呼吸器5を通して、コンサベーター3内の空気と外部の空気との出入り(いわゆる呼吸作用)を行う。
【0006】
図6は、従来の吸湿呼吸器の一構成例(特許文献1)を示している。
【0007】
収納容器71に吸湿剤となるシリカゲル72を収納した吸湿器73の下に、油74を入れたガラス製の呼吸器75を取付けた構造をなしている。
【0008】
これは外気が油つぼホルダー76と油つぼ77との間から流入し、油つぼ77内の油74を通って、ここでゴミなどを除去した後、呼吸筒78から上部の収納容器71に入る。次に、この収納容器71内に詰めたシリカゲル72と接触して水分が除去され、乾燥した空気がフランジ79を通ってタンク内のコンサベーターに流れるようになっている。
【0009】
吸湿呼吸器5内部に収容されている吸湿剤としては、従来からシリカゲル72が多用されている。このシリカゲル72は、通気孔から流入する外気の水分を吸着する。これは、変圧器および絶縁油の劣化の主要原因である水分を除去し、変圧器中身絶縁物や絶縁油の劣化を抑制する作用を有している。
【0010】
また、収納容器71に収納されているシリカゲル72が、常時大気と接することで本来の呼吸動作とは関係ない水分を吸湿しないようにするため、吸湿器73の下部には油74を入れた呼吸器75を設けて、呼吸の際には油層を介するようになっている。この油層には、油中の水分を除去するための吸着剤も入れられている。
【0011】
この吸湿呼吸器の動作状態を確認するため、呼吸器75はガラスで作られ、油つぼ77に入れた油74に発生する気泡の状態を外部から目視して確認している。しかしながら、空気中に浮遊しているゴミなどを捕集した油74は次第に汚れてくるため、気泡の発生状態が確認しにくくなり、この場合には油74を新しいものに交換する必要がある。
【0012】
また、収納容器71に詰めたシリカゲル72は、優れた吸湿性を備える粒状物であるが、吸湿量の増加とともに吸湿性能が低下し、湿度を吸収してくると青色からピンク色等に元の色が変化する。これを収納容器71の側面に設けた覗き窓80から確認して、その劣化状態を観察して交換している。
【0013】
従来の吸湿呼吸器において、万が一吸湿剤の色相の変化に気が付かずそのまま放置すると、吸湿機能が低下して湿気を含む空気が避圧空間65内に入り込み、変圧器の絶縁油6の劣化を促進する。また、コンサベーター3がゴム膜を有している場合においても、水分はゴム膜を透過するため、絶縁油6の劣化は進行する。そのため、このシリカゲル72の色を日常点検で監視し、定期的にこれを交換することが重要な保全作業となり、通常半年程度で行われる。この交換作業では、吸湿呼吸器5内の変色したシリカゲル72をすべて取り出し、新しい吸湿剤に交換する。また、呼吸器75の油層の油やその中の吸着剤の交換も必要となる。
【0014】
交換作業時には湿気を含む空気(外気)が避圧空間65内に流入しない措置を講じることも必要になる。
【0015】
シリカゲル72を交換する場合、収納容器71の底部に取付けた取出しキャップ81を外して内部のシリカゲル72を落下させる。次に、この取出しキャップ81を嵌めてから収納容器71の上部に取付けた充填キャップ82を外して、ここから新しいシリカゲル72や湿度を除去して再生したシリカゲル72を充填する。
【0016】
また、呼吸器75の油74が汚れてきたときには、油つぼホルダー76から油つぼ77を取外して汚れた油74を新しいものに交換する。
【0017】
しかしながら、従来の吸湿呼吸器は、シリカゲル72の定期的な点検と交換作業が必要であり、しかも雨の中で交換すると、作業中に新しいシリカゲル72が吸湿して劣化してしまう問題がある。
【0018】
また、呼吸器75の汚れた油74も定期的な点検と交換作業が必要である上、廃棄する油74の処理も公害上問題があった。また、吸湿呼吸器から取り出したシリカゲル72を乾燥して再生する場合は加熱処理が必要である。この加熱処理も手間がかかり、熱エネルギーを使用するため電力が必要とされることから、CO2削減の環境問題に加えて経済的でないという問題がある。さらに、取り出したシリカゲルを廃棄する場合は、産業廃棄物として取り扱うことが必要であり、廃棄費用も高額となるという問題がある。
【0019】
これらの課題を改善するため、図7に示す吸湿剤の交換を不要にするヒーター付きの吸湿呼吸器が開示されている(特許文献2)。しかし、ヒーター付き吸湿呼吸器においても、下記の課題がある。
【0020】
ヒーター付き吸湿呼吸器は、吸湿呼吸器本体内にヒーター83を設置することにより吸湿剤84を加熱乾燥し再生する機能を備えたものである。しかし、加熱乾燥時に吸湿剤84に吸着した水分がコンサベーター側に吸引されることは、本来のコンサベーター側への防湿機能を損なうこととなるため避ける必要がある。
【0021】
特許文献2は、吸湿剤を乾燥させることで生じた水分を、避圧空間65と吸湿呼吸器を繋ぐ通気管に設けた水蒸気貯留槽にため込む構造となっている。定期的に溜まった水分の排出作業と、せっかく除去したはずの水分が避圧空間65内に入り込むことや通気管内を腐食させるリスクがある。
【0022】
そのため、コンサベーター側に空気が流れている時(すなわち、外気温度の低下を温度検知した時)、ヒーター83による加熱を停止するための制御機構や弁機構を設けた機種もある。
【0023】
この制御機構は、一般に民生用の電子回路で構成されるため、30年以上の長期期待寿命製品である変圧器との関係において10年程度の短期寿命の部品となり、整合性に課題がある。また、電子回路は、落雷や送電経路の開閉に伴うサージにより故障する事象も生じている。
【0024】
また、ヒーターを加熱するために従来不要であった吸湿呼吸器のための電源工事が必要となる。この作業手間も加わり、制御が必要なこともあり経済的に高額な装置となって、保全費用との関係で投資効果にも課題がある。
【0025】
更に運転には、このヒーターの加熱エネルギー費用の問題とCO2による環境問題がある。このヒーターを加熱する電源として、図7に示すソーラーパネル85を利用した構造も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特許第3983839号
【特許文献2】実開昭58-69922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上記をまとめると、従来技術には下記の問題がある。
【0028】
(1)図6の構造では、日常の保守点検で吸湿剤の色相の変化を管理確認する作業が必要となる。毎日、吸湿呼吸器の吸湿剤の変色度合いを目視で確認することは、非常に手間と時間がかかり、負担が大きく改善が必要となっている。
【0029】
(2)図6の構造では、約6か月毎に吸湿剤を交換する作業があり、吸湿剤を再生しない場合は、産業廃棄物として適切な処分が必要となる。
【0030】
(3)図6の吸湿剤を再生する場合、加熱処理が必要であり、商用電源による処理費用も必要となる。
【0031】
(4)ヒーター付きの吸湿呼吸器は、別途、ヒーター用の電源が必要である。従来品を交換する場合、この電源配線工事が必要であるとともに商用電源での加熱のための日常的な電気費用を要する。
【0032】
(5)ヒーター付きの吸湿呼吸器は、外気温度による制御が必要となり、このための制御回路が必要で高価格となる要因となっている。
【0033】
(6)ヒーター付きの吸湿呼吸器において制御回路の期待寿命が10年程度と短期間であり、保全費用も必要となる。
【0034】
(7)図7のソーラーパネルを利用する構造では、コンサベーターに入り込まない様せっかく吸湿剤に吸着させた水分が加熱されて水蒸気となって熱で上昇し、逆にコンサベーターの避圧空間内に入り込むか、もしくは通気管内で結露して通気管を腐食させるリスクを有している。
【0035】
(8)ヒーター付きの吸湿呼吸器を制御する電子回路は、雷や送電線の開閉により生じるサージで故障しやすい。
【0036】
以上示したようなことから、メンテナンスの削減、省エネ、CO2削減、サステナビリティを実現した吸湿呼吸器を提供することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、内部に吸湿剤を収納する吸湿剤収納容器と、前記吸湿剤収納容器内のうち外部との空気の流出入を行う流出入口側に設けられた第1層吸湿剤室と、前記吸湿剤収納容器内のうちコンサベーターと接続された通気管側に設けられた第2層吸湿剤室と、ソーラーパネルと、前記第1層吸湿剤室内に設けられ、前記ソーラーパネルで発電した電流により前記吸湿剤の加熱再生処理を行う加熱装置と、を備えたことを特徴とする。
【0038】
また、その一態様として、前記第1層吸湿剤室と前記第2層吸湿剤室との間に設けられた吸湿剤区分断熱層と、前記第1層吸湿剤室と前記流出入口との間に設けられた空気流出入断熱層と、を備えたことを特徴とする。
【0039】
また、その一態様として、前記吸湿剤区分断熱層と前記空気流出入断熱層は、空気の流出、流入を行う通気孔を有することを特徴とする。
【0040】
また、他の態様として、内部に吸湿剤を収納する吸湿剤収納容器と、ソーラーパネルと、前記吸湿剤収納容器内に設けられ、前記ソーラーパネルで発電した電流により前記吸湿剤の加熱再生処理を行う加熱装置と、前記吸湿剤収納容器の上部に設けられた上部空気室と、前記吸湿剤収納容器の下部に設けられた下部空気室と、を備え、外部との空気の流出入を行う流出入口を前記上部空気室に接続し、コンサベーターと接続された通気管を前記下部空気室に設けたことを特徴とする。
【0041】
また、その一態様として、前記吸湿剤収納容器の内側に断熱層が設けられたことを特徴とする。
【0042】
また、その一態様として、前記第2層吸湿剤室にのぞき窓が設けられたことを特徴とする。
【0043】
また、他の態様として、前記吸湿剤収納容器にのぞき窓が設けられたことを特徴とする。
【0044】
また、その一態様として、前記ソーラーパネルに並列に接続されたLEDライトを備えたことを特徴とする。
【0045】
また、その一態様として、前記ソーラーパネルの方位角を5月の午前10時から午前11時の間で太陽光が正面となるように設置したことを特徴とする。
【0046】
また、その一態様として、前記ソーラーパネルの地表面に対する傾斜角を地表面に対し25度から30度に設置したことを特徴とする。
【0047】
また、その一態様として、前記ソーラーパネルは、12時以前は日陰が発生せず12時以降は日射が当たりにくい位置に設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、メンテナンスの削減、省エネ、CO2削減、サステナビリティを実現した吸湿呼吸器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】実施形態1における吸湿呼吸器を示す概略図。
図2】実施形態2における吸湿呼吸器を示す概略図。
図3】想定される電力用変圧器の油温変化を示す図。
図4】実施形態3におけるソーラーパネルの方位角、傾斜角を示す図。
図5】一般的な変圧器の構成を示す概略図。
図6】従来の吸湿呼吸器の一例を示す図。
図7】従来の吸湿呼吸器の他例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本願発明における吸湿呼吸器の実施形態1~3を図1図4に基づいて詳述する。
【0051】
[実施形態1]
図1に本実施形態1における吸湿呼吸器を示す。本実施形態1の全体構成は図5と変わらず、変圧器中身を収容するタンク1と、タンク1の上部から連結管2を通して連結されたコンサベーター3と、コンサベーター3のさらに上部に延設された通気管4と、通気管4の途中に設置された吸湿呼吸器5と、タンク1内に充填された絶縁油6と、を備えているが、図1では、タンク1、連結管2、コンサベーター3、絶縁油6などは省略している。
【0052】
図1に示すように、本実施形態1の吸湿呼吸器5は、吸湿剤収納容器8と、加熱装置9と、断熱層10と、を有する。
【0053】
吸湿剤収納容器8は、内部に第1層吸湿剤室20と、第2層吸湿剤室21と、を有し、第1層吸湿剤室20と第2層吸湿剤室21の両方に吸湿剤を収納する。第1層吸湿剤室20は、吸湿剤収納容器8のうち外部との空気の流出入を行う流出入口(コンデンセーションドレイン)40側に設けられる。第2層吸湿剤室21は、吸湿剤収納容器8のうちコンサベーター3と接続された通気管4側に設けられる。
【0054】
図1では、吸湿剤収納容器8の下端にコンデンセーションドレイン40を設け、吸湿剤収納容器8の上端に通気管4を配置した例である。内部通気管等を配置してこの位置関係と構成は変更可能であるが本例により解説する。
【0055】
コンデンセーションドレイン40は、部材には上部と下部を繋ぐ穴が開いていて、部材の中を空気が移動できるが、内部にはフィルターが設けられており、部材の上部と下部で圧力差が生じない限り空気の移動が制限され、ごみの浸入も防ぐ機能を持つ市販されている部品である。
【0056】
なお、吸湿剤収納容器8に、図6に示したように、吸湿剤の投入口(充填キャップ(12))および取出口(取出しキャップ(11))を設けてもよい。
【0057】
また、各図で同一または共通の各部については同一の符号を用い、以下では重複する説明を省略する。
【0058】
吸湿剤収納容器8の内側には断熱層10が設けられる。本実施形態1において断熱層10は中空円柱状の形状を有する断熱材である。また、吸湿剤収納容器8内を上下に分ける吸湿剤区分断熱層11が設けられる。ここで、吸湿剤収納容器8内のうち吸湿剤区分断熱層11よりも下部を第1層吸湿剤室20、上部を第2層吸湿剤室21とする。また、断熱層10の下端には空気流出入側断熱層12が設けられる。断熱層10、吸湿剤区分断熱層11、空気流出入側断熱層12は、グラスウールのように通気性のある断熱材で構成される。
【0059】
また、本実施形態1では、吸湿剤収納容器8内の第1層吸湿剤室20の中央部に加熱装置9が設けられる。加熱装置9は、例えば、電熱線によるヒーターで、形状は螺旋状(コイル状)に巻かれた物や、パネル状に形成された物を使用する。なお、断熱円盤板(吸湿剤区分断熱層11)により2層に区分された上部の第2層吸湿剤室21には、加熱装置9は無い構成となる。
【0060】
吸湿剤区分断熱層11、空気流出入側断熱層12は、通気が十分でない場合は、吸湿剤が通らない大きさの孔を設けることもある。
【0061】
加熱装置9の電源としてソーラーパネル7が設けられる。ソーラーパネル7は、配線50、端子箱51を介して加熱装置9に接続される。また、ソーラーパネル7に対して並列にLEDライト61が接続される。
【0062】
本実施形態1の特徴は以下の通りである。
【0063】
(1)ソーラーパネル7を電源とする加熱装置9を吸湿呼吸器5に内蔵する。加熱装置9を内蔵したことにより、吸湿剤の交換を不要とする。また、通常の電気費用も必要なくなり省エネ、脱炭素が図れる。
【0064】
(2)吸湿剤収納容器8の内側に断熱層10を設置する。これにより、加熱処理のエネルギー効率が向上し、ソーラーパネル7の選定容量を低下できる。また、従来の吸湿呼吸器5の所要容量を低減できる。
【0065】
(3)ソーラーパネル7を電源とした加熱装置9を設けたことで、太陽光が得られる日中のみ加熱装置9を加熱し、夜間の気温が低下し変圧器側に空気を吸入する時間帯は加熱処理を行わない構成により、外気温低下による温度制御回路が不要となる。また、例外的な場合であるが夜間負荷が日中より増大し、かつ引き続き日中にて負荷停止となるような事態に備えて、吸湿剤収納部を2層化して加熱されて発生した水蒸気がコンサベーター3側に入り込むのを防ぐ機構を有している。
【0066】
(4)日常的に乾燥再生処理を実施できるため、梅雨の期間や冬季の期間等の日照時間が少ない期間のみを考慮して吸湿剤容量を決定すればよく、吸湿剤容量を低減できる。即ち円筒形の場合は、円筒径を縮小し吸湿剤容量を設置環境に応じて25%から50%低減し省資源化、小型化を図る。
【0067】
〔従来のヒーター付き吸湿呼吸器の制御回路を省略する機構〕
ソーラーパネル7は、加熱装置9を通じて吸湿剤の加熱再生処理を行う。この加熱再生処理は、日中の気温上昇と負荷増加に伴い絶縁油の膨張によるコンサベーター3からの排気過程で処理される。このため、吸着水分を変圧器やコンサベーター3側に吸引することなく実施される。
【0068】
また、吸湿剤収納容器8内は、加熱装置9を有する第1層吸湿剤室20と加熱装置9を有しない第2層吸湿剤室21で2層化されている。そのため、極めて例外的な運用であるが、万一、夜間運転等で日射が無い状態のときに大きな負荷として運用されて本体温度が下がる過程で日射が生じ、加熱装置9が加熱された状態で負荷を停止させる運用があった場合でも、コンサベーター3側への水分吸入を制限できる。すなわち、第1層吸湿剤室20の加熱再生処理で発生した水蒸気を第2層吸湿剤室21にて吸着しコンサベーター3側への水分吸入を制限できる。このことにより、従来のヒーター付き吸湿呼吸器に付属している制御回路を不要にしている。
【0069】
〔ソーラーパネル容量及び従来の吸湿呼吸器容量を低減する機構〕
図1の例に示すように吸湿剤収納容器8の内側に断熱層10を設置することによりソーラーパネル7からの給電容量を効率的に低減する。また、2から3時間程度で吸湿剤の加熱再生処理を完了できるため設置環境の日照時間と日照不足期間により吸湿剤の必要容量を算出でき大幅に低減可能となる。
【0070】
一般的に従来の吸湿呼吸器の吸湿剤容量は、6か月程度の吸着水分を要する容量として設定されている。本実施形態1では、関東以南の太平洋側において、梅雨時期の1か月程度の連続した日照不足が懸念される容量にて設定可能となる。これは、設置地域の太陽光発電効率実績により判定できる。上記からは、1/6の容量とできるが2層化するためこの2倍の容量の2/6を必要容量とできる。ただし、万一の気候変動を懸念し運用としては、半減(3/6)とすることが望ましい。この場合50%の低減となる。
【0071】
また、日照時間の少ない秋田県の例では、平均日照時間は2時間/日程度となるが、昨年の冬の晴れの日数は、1日/1週間程度あり、過去に連続して日照不足が継続した期間も考慮する必要があり、1.5か月程度の日照不足期間を設定する必要があった。上記からは、1/4の容量とできるが2層化するためこの2倍の容量の2/4を必要容量とできる。ただし、万一の気候変動を懸念し運用としては、3/4とすることが望ましい。この場合25%の低減となる。
【0072】
〔ソーラーパネルを電源とした吸湿剤の加熱再生処理〕
吸湿剤がシリカゲルの場合を例として説明する。シリカゲル凝集体の空間はマイクロ孔、メソ孔、マクロ孔で構成されている。吸着したH2Oをヒーター加熱により気相に戻し脱着する。
【0073】
この時のヒーター最高点温度は、周囲外気温度の最高点温度(例えば40℃)のときを考慮し、シリカゲル凝縮体との直接接触温度を280℃以下とするため280-40=240Kを上限とし設計される。
【0074】
また、吸湿剤収納容器8内の温度は、供給熱量と断熱層10の適正な設定により105℃から200℃に設計される。この加熱効率を向上するため、吸湿剤収納容器8からの放熱を低減するための断熱層10を吸湿剤収納容器8の内側に配置している。吸湿剤収納容器8内の温度を適正値内に納めるための断熱層10の厚みtは、以下の式で求められる。
【0075】
G=K×A/t
G:コンダクタンス、K:熱伝導率(W/m.K)、A:断面積(m2)、t:厚み(m)。
【0076】
ΔT=Q/G
ΔT:外気との温度差、Q:ヒーターで発生する熱量(W)。
【0077】
〔保護と保全管理について〕
ソーラーパネル7にLEDライト61を並列接続する。また、図1の例では、吸湿剤収納容器8の第2層吸湿剤室21に吸湿剤の色相の変化を確認できるのぞき窓60が設けられる。LEDライト61は、万一のソーラーパネル7の発電不具合の監視のために設けられる。また、LEDライト61を設けることにより、第2層吸湿剤室21の吸湿材の色相変化によって加熱再生処理の不具合、または、異例な負荷状態の発生を検知できる。これは日常点検ではなく6か月に1度の定期点検で確認できるため、日々の保守点検は、大幅に簡素化される。
【0078】
上記で示したように、本実施形態1によれば、吸湿剤の交換を不要にするとともに、その所要量も従来品から低減し、吸湿剤の乾燥を自然エネルギーにより実施して省エネを図り、カーボンニュートラルを実現するとともに吸湿剤交換に要する手間や人件費、乾燥に要する電気代金、その他の費用を削減できる吸湿呼吸器を提供することが可能となる。以下に、各効果を具体的に説明する。
【0079】
吸湿呼吸器5は、晴天の日の昼間に太陽光エネルギーによってソーラーパネル7から加熱装置9に給電が行われ、加熱装置9により吸湿剤の乾燥再生を促進する。このことにより乾燥に要する商用エネルギーコストを不要とするとともに、吸湿剤の色相変化の日常点検管理や交換作業をなくし、その保全作業をメンテナンスフリーとすることができる。
【0080】
また、吸湿剤(シリカゲル)を常時再生処理することにより、吸湿剤の交換作業が不要になる。また、吸湿剤を産業廃棄物として廃棄処理が不要になり、その費用を削減することが可能となる。
【0081】
また、通常晴天になると気温も上昇し、変圧器本体の温度も上昇するため、加熱装置9で熱せられて生じた水蒸気は、油の膨張によりコンサベーター3から吐き出される空気と共に外部に放出され、コンサベーター3側に入り込むことは無い。
【0082】
ただ稀に、太陽が陰っている中(夜間)で本体負荷がピークに達した後に外気温も下がって油が冷えていく際に、太陽が出て加熱装置9に給電され水蒸気が生じることがある。
【0083】
この場合に生じた水蒸気をコンサベーター3側に吸い込ませないための対策として、本実施形態1では加熱装置9を内蔵する第1層吸湿剤室20と、加熱装置9を内蔵しない第2層吸湿剤室21の2層に分離する構造とする。これにより、第1層吸湿剤室20で生じた水蒸気は第2層吸湿剤室21で吸収する。
【0084】
加熱装置9で生じた水蒸気がコンサベーター3側に入り込まない構造としたことから、従来のヒーター付き吸湿呼吸器が必要としていた加熱装置9の制御回路が不要となる。
【0085】
また、断熱層10を有することで吸湿呼吸器5の必要容量を従来に比べて25%~50%小容量化することができる。また、断熱層10を有することにより、乾燥に要するエネルギーを低減することができ、ソーラーパネル7の所要容量も低減できる。
【0086】
[実施形態2]
図2に本実施形態2の吸湿呼吸器5の構造を示す。実施形態1では、吸湿剤収納容器8内を第1層吸湿剤室20と第2層吸湿剤室21に分け、第1層吸湿剤室20で吸湿剤を加熱して生じた水蒸気を第2層吸湿剤室21で吸収することにより、水蒸気がコンサベーター3側に入り込まないようにした。
【0087】
本実施形態2では、吸湿剤収納容器8内を2層に分ける代わりに、コンサベーター3と接続された通気管4を下部空気室14に設け、外部との空気の流出入を行う流出入口(コンデンセーションドレイン40)を吸排気管16を介して上部空気室15に接続したものである。
【0088】
なお、図2では、吸湿剤収納容器8の上端に設けたカバー17に端子箱51が設けられているが、実施形態1と同様に容器の下部に設けても良い。
【0089】
以下に、本実施形態2の特徴を示す。
【0090】
(1)ソーラーパネル7を電源とする加熱装置9を吸湿呼吸器5に内蔵する。このことにより、吸湿剤の交換を不要とする。また、通常の電気費用も必要なくなり省エネ、脱炭素化が図れる。
【0091】
(2)吸湿剤収納容器8の内側に断熱層10を設置する。これにより、加熱処理のエネルギー効率が向上しソーラーパネル7の選定容量を低減できる。また、従来の吸湿呼吸器5の所要容量を低減できる。
【0092】
(3)吸湿剤の上下には、吸湿剤を通過する空気がなるべく均一になる様、吸湿剤容積の10~20%程の下部空気室14、上部空気室15を設けている。下部空気室14と吸湿剤収納容器8の間には、吸湿剤が下部空気室14に落下しない様、吸湿剤の粒子よりも細かい目を持つメッシュ13を配置している。
【0093】
(4)太陽光が得られる日中のみ加熱装置9で加熱する機構とすることにより、夜間の気温が低下し変圧器側に空気を吸入する時間帯は、加熱処理なされない構成のため、外気温低下による温度制御回路が不要となる構成である。
【0094】
また、例外的な場合であるが夜間負荷が日中より増大し、かつ引き続き日中にて負荷停止となるような事態に備えて、コンサベーター3と接続された通気管4を下部空気室14に設け、外部との空気の流出入を行う流出入口(コンデンセーションドレイン40)を吸排気管16を介して上部空気室15に接続する。これにより、加熱処理で生じた水蒸気は上昇して上部空気室15に滞留し、下部空気室14の通気管4から入るには再度吸湿剤の中を通ることになって、コンサベーター3内に水分が入り難い構造となっている。
【0095】
(5)日常的に乾燥再生処理を実施できるため、梅雨の期間や冬季の期間等の日照時間が少ない期間のみを考慮した吸湿剤容量を選定すればよく、吸湿剤容量を低減できる。即ち、円筒形の場合は、円筒径を縮小し吸湿剤容量を設置環境に応じて25%から50%低減し省資源化と小型化を図ることができる。
【0096】
〔従来のヒーター付き吸湿呼吸器の制御回路を省略する機構〕
ソーラーパネル7は、加熱装置9を通じて吸湿剤の加熱再生処理を行う。これは、日中の気温増加と負荷増加に伴い絶縁油の膨張によるコンサベーターからの排気過程で処理される。このため、吸着水分を変圧器やコンサベーター3側に吸引することなく実施される。
【0097】
また、コンサベーター3と接続された通気管4を下部空気室14に設け、外部と空気の流出入を行う流出入口(コンデンセーションドレイン40)を吸排気管16を介して上部空気室15に接続したことにより、加熱処理で生じた水蒸気は上昇して上部空気室15に滞留し、下部空気室14の通気管4から入るには再度吸湿剤の中を通ることになって、コンサベーター3内に水分が入り難い構造となっている。このことにより、従来のヒーター付き吸湿呼吸器に付属している制御回路を不要にしている。
【0098】
〔ソーラーパネル容量及び従来の吸湿呼吸器容量を低減する機構〕
図2の例に示すように吸湿剤収納容器8の内側に断熱層10を設置することによりソーラーパネル7からの給電容量を効率的に低減する。また、2から3時間程度で吸湿剤を加熱再生処理完了できるため設置環境の日照時間と日照不足期間により吸湿剤の必要容量を算出でき大幅に低減可能となる。
【0099】
一般的に従来の吸湿呼吸器の吸湿剤容量は、6か月程度の吸着水分を要する容量として設定されている。本実施形態2では、関東以南の太平洋側において、梅雨時期の1か月程度の連続した日照不足が懸念される容量にて設定可能となる。これは、設置地域の太陽光発電効率実績により判定できる。上記より吸湿剤収納容器8は実施形態1よりも複雑になるものの、吸湿剤は1/6の容量にすることが出来るが、万一の気候変動を懸念し運用としては、必要量の倍を想定して2/6とする。
【0100】
〔保護と保全管理について〕
ソーラーパネル7にLEDライト61を並列接続する。また、図2の例では、吸湿剤収納容器8に吸湿剤の色相の変化を確認できるのぞき窓60が設置される。LEDライト61は、万一のソーラーパネル7の発電不具合の監視のため、また吸湿剤の色相変化により、再生乾燥処理の不具合または、異例な負荷状態の発生を検知できる。これは日常点検ではなく6か月に1度の定期点検で確認できるため、日々の保守点検は、大幅に簡素化される。
【0101】
以上示したように、本実施形態2によれば実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0102】
[実施形態3]
図3に想定される電力用変圧器の油温変化を示す。図3に示すように通常の油入変圧器では、工場やオフィスビルなどが活動する8時から17時の間に電力が消費され、日中の気温の上昇と共に負荷が増え、13時から15時の間に変圧器は最高温度となる。そして、負荷の減少や気温の低下と共に温度は下がり、日の出前に最低温度となる。
【0103】
吸湿呼吸器5ではこの動きに追随し、温度が上昇する過程の8時から13時の間に排気動作が行われ、最高温度に達すると排気動作は停止する。
【0104】
その後、変圧器の温度低下に伴って徐々に吸気動作が始まり、最低温度となる翌日の日の出前に吸気動作が停止する。このような吸排気動作に合わせて、吸湿呼吸器に内蔵されたヒーター9を加熱する必要があり、排気動作が最も活発な10時30分頃、ヒーター9の加熱エネルギーが最大となる様ソーラーパネル7を設置するのが好ましい。
【0105】
本実施形態3では、この吸排気動作に合わせたソーラーパネル7の好適な設置方法について説明する。本実施形態3は、実施形態1、2の吸湿呼吸器に適用可能である。
【0106】
図4に示すように、太陽光がソーラーパネル7の正面となる時間帯を5月の午前10時30分(前後30分まで可)頃となるようにソーラーパネル7の方位角(地表面に対して平行方向の向き)を設定する。
【0107】
太陽光がソーラーパネル7に垂直となる時間帯を上記時間帯(5月の午前10時30分頃)となる様にするため、図4に示すように、ソーラーパネル7の地表面に対する傾斜角は25度から30度の間とする。傾斜角に幅を持たしているのは、日本の国土の緯度を考慮している。
【0108】
すなわち、ソーラーパネル7の方位角と傾斜角は、日本の緯度は、北緯20度から北緯46度の間で、日本の経度は、およそ東経122度から東経154度の間にあることにより決めたものである。
【0109】
また、ソーラーパネル7の設置場所を、午前中は日陰が発生せず日が当たり午後は日射が当たりにくい日陰となる場所とする。この場合は変圧器本体の東側側面が主となってくるが、変電所内の建屋等の東側側面でも良い。また、ソーラーパネル7の西側に遮光板を設けても良い。
【0110】
〔吸湿呼吸器内のシリカゲルを効率よく加熱乾燥させるためのソーラーパネルの方位角と傾斜角〕
一年を通じて外気の湿気が高くなるのは、梅雨の時期と秋雨前線や台風により雨量が増える時期となる。よって、この時期の前にシリカゲル2が乾燥され、吸湿力が高まっていることが好ましい。また、比較的好天になりやすく気温も高い方がシリカゲル2の加熱には適している。
【0111】
日本でそういった時期は一年を通じて5月が適切で、ソーラーパネル7の発電効率が5月に最も高くなる様に設定しておけば、秋雨前線や台風時期の前となる8月にも発電量が高くなる。またその時期に、避圧空間65からの排気流量が大きくなる10時30分頃の日本の太陽高度は60度から65度である。そのため、図3に示すようにソーラーパネル7の方位角は太陽光がソーラーパネル7の正面となる時間帯を5月の午前10時30分(前後30分まで可)頃とし、地表に対する傾斜角は25度から30度が適切となる。
【0112】
〔ソーラーパネルの設置場所〕
油入変圧器本体の温度が下がり始める午後、機器の温度低下と共に始まる避圧空間65への吸気動作によって、ヒーター9の加熱で吸湿呼吸器内のシリカゲル2から生じる水分の吸引を防ぐ必要があるため、変圧器30の温度が最高温度に達する13時以降にシリカゲル2を加熱する必要はなく、むしろ冷却されやすい方が好ましい。そのような条件を鑑み、加熱されたシリカゲル2が冷却される時間も考慮して、変圧器30が最高温度に達する1時間前の12時以降は、ソーラーパネル7に太陽光が当たらない環境が効果的となる。
【0113】
以上示したように、本実施形態3によれば、実施形態1、2の作用効果に加え、以下の作用効果を有する。
【0114】
1日の内で、避圧空間65からの排気流量が多くなる9時から12時の間において、吸湿呼吸器5のシリカゲル2に含まれる水分の蒸発量を最も多くできる。
【0115】
外気に含まれる水分が高くなる梅雨や秋雨前線や台風による雨量が増える時期の前に、シリカゲル2を乾燥させて水分を吸着しやすい状態にできることから、油入変圧器内部の絶縁油6に浸透する水分の影響を、効果的に減じることができる。
【0116】
12時以降は日陰になる様にソーラーパネル7を設置することで、避圧空間65に吸引される動作に入る時にはシリカゲル2から蒸発する水分を押さえることができ、油温が下がり始める15時以降に避圧空間65内に入り込む水分を抑制することができる。
【0117】
シリカゲル2全体が乾燥されることで、シリカゲル2の所要量を従来の吸湿呼吸器の使用量より25%~50%低減とすることが可能となり、省資源化が図れる。
【0118】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0119】
1…タンク
2…連結管
3…コンサベーター
4…通気管
5…吸湿呼吸器
6…絶縁油
7…ソーラーパネル
8…吸湿剤収納容器
9…加熱装置(ヒーター)
10…断熱層
11…吸湿剤区分断熱層
12…空気流出入側断熱層
13…メッシュ
14…下部空気室
15…上部空気室
16…吸排気管
17…カバー
20…第1層吸湿剤室
21…第2層吸湿剤室
30…変圧器
40…流出入口(コンデンセーションドレイン)
50…配線
51…端子箱
60…のぞき窓
61…LEDライト
65…避圧空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7