(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082662
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】金属液滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及びビルドプラットフォームからの金属物体の造作及び解放を促進するための動作方法
(51)【国際特許分類】
B23K 28/00 20060101AFI20230607BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230607BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230607BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B23K28/00 Z
B33Y10/00
B33Y30/00
B23K1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176832
(22)【出願日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】17/457,346
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】コリン、アレクサンダー、ラッド
(72)【発明者】
【氏名】ポール、ジェイ.、マッコンビル
(72)【発明者】
【氏名】マリウシュ、タデウシュ、ミカ
(72)【発明者】
【氏名】カリーム、タウィル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】三次元(3D)金属物体製造装置は、金属物体の製造前に、液体ケイ酸塩をビルドプラットフォームの表面に塗布するための液体ケイ酸塩塗布システムを提供する。
【解決手段】液体ケイ酸塩層は、空気乾燥することが可能にされ、次いで、プラットフォームは、装置によって吐出された溶融金属液滴を用いて金属物体を形成するためのその動作温度範囲に加熱される。液体ケイ酸塩層は、ガラス状脆性層を形成し、その上に金属物体が形成される。この脆性層は、物体が製造され、ビルドプラットフォームが冷却された後、物体と共に比較的容易に取り外される。ケイ酸塩層は、酸化鋼などの非湿潤材料で作製されたビルドプラットフォームの表面の湿潤を改善し、一方、タングステン又はニッケルなどの湿潤材料を用いる金属間溶接を防止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を有するエジェクタヘッドであって、前記容器は、溶融金属を保持するように構成されている収容部を前記容器内に有する、エジェクタヘッドと、
平面部材と、
前記エジェクタヘッドから吐出された前記溶融金属液滴を受容するために、前記平面部材上にケイ酸塩材料を塗布するように構成されている塗布器と、
を備える、金属液滴吐出装置。
【請求項2】
前記ケイ酸塩材料が、ケイ酸塩粉末である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ケイ酸塩材料が、液体ケイ酸塩である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記塗布器が動作可能に接続された関節アームと、
溶液の体積を保持するように構成されているリザーバと、
前記関節アームに動作可能に接続されたコントローラであって、
前記関節アームを動作させて前記塗布器を前記リザーバから前記平面部材にわたって移動させて、前記液体ケイ酸塩層を前記平面部材に塗布するように構成されているコントローラと、
を更に含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記塗布器が、多孔質材料から本質的に構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記多孔質材料が、フェルト又はセラミック材料から本質的に構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記平面部材を加熱するように構成されているヒータと、
前記ヒータに動作可能に接続された前記コントローラであって、
前記塗布器を動作させて前記液体ケイ酸塩層を前記平面部材に塗布した後に、所定の期間待機し、
前記ヒータを動作させて、前記エジェクタヘッドから吐出された前記吐出された溶融金属液滴を用いて金属物体を製造するための温度範囲内で、前記平面部材の温度を上昇させ、
前記ヒータが前記金属物体を製造するための前記温度範囲内に前記ビルドプラットフォームを保持するように動作されている間に、前記エジェクタヘッドを動作させて、前記平面部材上の前記ケイ酸塩層に向かって溶融金属の液滴を吐出する、ように更に構成されている前記コントローラと、
を更に備える、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記温度が、100℃を超える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記温度が、約400℃~約500℃の範囲内である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記エジェクタヘッドが、溶融アルミニウム又はアルミニウム合金の液滴を吐出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
金属液滴吐出装置を動作させる方法であって、
塗布器を動作させて、ケイ酸塩を平面部材に塗布することと、
前記液体ケイ酸塩が前記平面部材に塗布された後に、エジェクタヘッドを動作させて、溶融金属液滴を前記平面部材上に吐出することと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記ケイ酸塩を前記塗布することが、
前記平面部材に固体ケイ酸塩層を塗布することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ケイ酸塩を前記塗布することが、
前記平面部材に液体ケイ酸塩層を塗布することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
関節アームを動作させて前記塗布器を前記平面部材にわたって移動させて、前記液体ケイ酸塩層を前記平面部材に塗布することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記塗布器が、多孔質材料から本質的に構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記多孔質材料が、フェルト又はセラミック材料から本質的に構成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記塗布器を動作させて前記液体ケイ酸塩層を前記平面部材に塗布した後に、所定の期間待機することと、
ヒータを動作させて、前記エジェクタヘッドから吐出された前記吐出された溶融金属液滴を用いて、金属物体を製造するための温度範囲内で、前記平面部材の温度を上昇させることと、
前記ヒータが前記金属物体を製造するための前記温度範囲内に前記ビルドプラットフォームを保持するように動作されている間に、前記エジェクタヘッドを動作させて、前記平面部材上の前記ケイ酸塩層に向かって溶融金属の液滴を吐出することと、
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記温度範囲が、100℃を超える、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記温度範囲が、約400℃~約500℃である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記エジェクタヘッドの前記動作が、溶融アルミニウム又はアルミニウム合金の液滴を吐出する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶融金属液滴を吐出して物体を形成する三次元(three-dimensional; 3D)物体プリンタを対象とし、より具体的には、かかるプリンタのビルドプラットフォーム上での金属物体の基部層の形成を対象とする。
【背景技術】
【0002】
積層造形(additive manufacturing)としても知られる三次元印刷は、事実上あらゆる形状のデジタルモデルから三次元の固体物体を作製するプロセスである。多くの三次元印刷技術は、積層造形デバイスが、前に堆積された層の上に部品の連続層を形成する、積層プロセスを使用する。これらの技術のいくつかは、フォトポリマー又はエラストマーなどの紫外線硬化材料を吐出するエジェクタを使用するが、他の技術は、エラストマーを溶融し、熱可塑性材料を押出して物体層にする。プリンタは、典型的には、可塑性又は熱可塑性材料の連続層を形成して、様々な形状及び構造を有する三次元印刷物体を構築するように、1つ以上のエジェクタ又は押出機を動作させる。三次元被印刷物体の各層が形成された後、可塑性材料は、紫外線硬化され、固まり、その層を三次元被印刷物体の下地層に接着する。この積層造形法は、ほとんどが切断又はドリル加工などの減法プロセスによる加工物からの材料の除去に依存する従来の物体形成技術と区別可能である。
【0003】
最近、1つ以上のエジェクタから、溶融金属の液滴を吐出して3D物体を形成するいくつかの3D物体プリンタが開発されている。これらのプリンタは、ワイヤのロール又はペレットなどの固体金属源を有し、この固体金属源は、固体金属が溶融されるプリンタ内の容器の加熱された収容部に固体金属を供給し、溶融金属が収容部を充填する。収容部は、周囲に電気ワイヤが巻き付けられてコイルを形成する非導電性材料で作製されている。電流がコイルを通過することにより、電磁場を生成し、その電磁場により、収容部のノズルにおいて溶融金属のメニスカスが収容部内の溶融金属から分離し、ノズルから推進する。ビルドプラットフォームは、エジェクタのノズルから吐出された溶融金属液滴を受容するように位置付けられ、このプラットフォームは、コントローラ動作アクチュエータによって、プラットフォームの平面に平行なX-Y平面内を移動する。これらの吐出された金属液滴は、プラットフォーム上に物体の金属層を形成し、別のアクチュエータは、コントローラによって動作されて、エジェクタとプラットフォームとの間の距離を変化させて、エジェクタと、形成される金属物体の直近に印刷された層との間で適切な距離を維持する。このタイプの金属液滴吐出プリンタは、磁気流体力学(magnetohydrodynamic; MHD)プリンタとしても知られている。
【0004】
MHDプリンタで行われる印刷プロセス中に、物体の第1の層は、ビルドプラットフォームの表面に確実に接着しなければならない。この接着がなければ、物体のサイズが増加するにつれて、物体の基部が安定しなくなる。ビルドプラットフォームの高い表面温度は、ビルドプラットフォームの表面を非常に高く酸化させ得る。この酸化層は、物体基部層のビルドプラットフォームへの接着に干渉する場合があり、印刷中に、物体がビルドプラットフォームの表面から尚早に離れ得る。加えて、酸化層は、物体の基部層を一様に形成させ、基部層が、安定した物体層の印刷に必要とされるよりも高い多孔性を有する場合がある。
【0005】
しかしながら、ビルドプラットフォーム表面の酸化は、物体のビルドプラットフォームへの適切な接着に影響を及ぼす唯一の問題ではない。比較的きれいなビルドプラットフォーム表面は、物体の基部層のビルドプラットフォーム表面への接着が過度になる場合がある。物体の基部が非常に安定しているので、物体の製造が良好に進行するが、プロセスの終了時に物体の取り外しが非常に困難になる場合がある。場合によっては、物体の取り外しが物体、ビルドプラットフォーム、又は両方に損傷を生じさせる程度にまで、ビルドプラットフォームへの物体の取り付けが固定される。その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、基部層をビルドプラットフォームに十分に接着させて、その層を一様に、かつ適切な有孔性と共に形成することができることが有益である。
【発明の概要】
【0006】
3D金属物体プリンタを動作させる新しい方法は、その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、金属物体の基部層をビルドプラットフォームに十分に接着させて、その層を一様に、かつ適切な有孔性と共に形成する。この方法は、塗布器を動作させて、ケイ酸塩を平面部材に塗布することと、液体ケイ酸塩が平面部材に塗布された後に、エジェクタヘッドを動作させて、溶融金属液滴を平面部材上に吐出することと、を含む。
【0007】
新しい3D金属物体プリンタは、その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、金属物体の基部層をビルドプラットフォームに十分に接着させて、その層を一様に、かつ適切な有孔性と共に形成する。新しい3D金属物体プリンタは、容器を有するエジェクタヘッドであって、容器は、溶融金属を保持するように構成されている収容部を容器内に有する、エジェクタヘッドと、エジェクタヘッドから吐出された溶融金属液滴を受容するために、平面部材上にケイ酸塩材料を塗布するように構成されている塗布器と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、金属物体の基部層をビルドプラットフォームに十分に接着させて、その層を一様に、かつ適切な有孔性と共に形成する3D金属物体プリンタを動作させるための方法、及び方法を実施する3D金属物体プリンタの前述の態様及び他の特徴を、添付図面と併せて、以下の記述において説明する。
【0009】
【
図1】その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、金属物体の基部層をビルドプラットフォーム上の金属箔層に十分に接着させて、その層を一様に、かつ適切な有孔性と共に形成する、新しい3D金属物体プリンタを表す。
【
図2】その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、部品を造作するための信頼性の高い基盤のために、造作材料のビルドプラットフォームへの十分な接着を提供するプロセスの概略図である。
【
図3】その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、部品を造作するための信頼性の高い基盤のために、造作材料のビルドプラットフォームへの十分な接着を提供する、
図1のシステムを動作させるためのプロセスのフロー図である。
【
図4】ビルドプラットフォーム上に金属物体の基部層を形成する前に、ビルドプラットフォームの表面にケイ酸塩層を塗布するための塗布器を含まない、先行技術の3D金属プリンタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に開示された3D金属物体プリンタ及びその動作のための環境、並びにプリンタ及びその動作の詳細の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号は、同様の要素を表す。
【0011】
図4は、溶融金属の液滴を吐出してビルドプラットフォーム上に金属物体を直接形成する、既知の3D金属物体プリンタ100の一実施形態を示す。
図4のプリンタでは、溶融バルク金属の液滴は、単一のノズル108を有する取り外し可能な容器104の収容部から吐出され、ノズルからの液滴が、ビルドプラットフォーム112に直接塗布されたスワスによって物体の基部層を形成する。本文書で使用されるとき、「取り外し可能な容器」という用語は、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味し、コンテナは全体として、3D金属物体プリンタ内の設置及び取り外しのために構成されている。本文書で使用されるとき、「容器」という用語は、3D物体金属プリンタに対して設置及び取り外しを行うように構成され得る、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味する。本文書で使用されるとき、「バルク金属」という用語は、一般に利用可能な標準規格のワイヤ、マクロサイズの比率のペレット、及び金属粉末などの、集合形態で入手可能な導電性金属を意味する。
【0012】
図4を更に参照すると、金属ワイヤ120などのバルク金属源116が、エジェクタヘッド140内の上部ハウジング122を通って延在するワイヤガイド124に供給され、取り外し可能な容器104の収容部内で溶融されて、エジェクタヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110を通してノズル108から吐出するための溶融金属を提供する。本文書で使用されるとき、「ノズル」という用語は、容器内の収容部から溶融金属液滴を排出するように構成されている、溶融金属を含む容器の収容部内の体積に流体的に接続されたオリフィスを意味する。本文書で使用されるとき、「エジェクタヘッド」という用語は、金属物体の製造のための溶融金属液滴の溶融、吐出、及び吐出の調整を行う3D金属物体プリンタのハウジング及び構成要素を意味する。溶融金属レベルセンサ184は、レーザー及び反射センサを含む。溶融金属レベルからのレーザーの反射は、反射センサによって検出され、溶融金属レベルまでの距離を示す信号を生成する。コントローラは、この信号を受信し、取り外し可能な容器の収容部内の適切なレベル118に維持することができるように、取り外し可能な容器104内の溶融金属の体積のレベルを求める。取り外し可能な容器104がヒータ160内へと摺動するため、ヒータの内径が取り外し可能な容器に接触し、取り外し可能な容器の収容部内の固体金属を、固体金属を溶融させるのに十分な温度まで加熱することができる。本文書で使用されるとき、「固体金属」という用語は、元素の周期表で定義されている金属、又は液体若しくは気体ではなく固体の形態でこれらの金属によって形成される合金を意味する。ヒータは、取り外し可能な容器から分離されて、ヒータと取り外し可能な容器104との間に体積を形成する。不活性ガス供給部128は、ガス供給管132を通してエジェクタヘッドにアルゴンなどの不活性ガスの圧力調整された供給源を提供する。ガスは、ヒータと取り外し可能な容器との間の体積を通って流れ、ノズル108の周りのエジェクタヘッド及びベースプレート114内のオリフィス110から出ていく。ノズルに近接するこの不活性ガスの流れは、溶融金属の吐出された液滴をベースプレート114の周囲空気から絶縁して、吐出された液滴の飛行中に金属酸化物が形成されるのを防止する。ノズルと、吐出された金属液滴が着地する表面との間の隙間は、不活性ガス流内の液滴が着地する前に、ノズルの周りから出るこの不活性ガスが放散しない程度に意図的に十分に小さく保たれる。
【0013】
エジェクタヘッド140は、プラットフォーム112に対するエジェクタヘッドの移動に対応するように、Z軸軌道内に移動可能に装着される。1つ以上のアクチュエータ144は、エジェクタヘッドをZ軸に沿って移動させるためにエジェクタヘッド140に動作可能に接続され、プラットフォームをエジェクタヘッド140の下のX-Y平面内で移動させるために、プラットフォーム112に動作可能に接続される。アクチュエータ144は、エジェクタヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の表面との間の適切な距離を維持するように、コントローラ148によって動作される。システム100のいくつかの変形例におけるビルドプラットフォームは、本質的に酸化鋼からなり、他の場合では、酸化鋼は、タングステン又はニッケルの上面コーティングを有する。プラットフォームの酸化鋼バージョンは、溶融アルミニウムによって容易に湿潤されないため、溶融アルミニウムの基部層にそれほど強く結合する可能性は低い。このプラットフォームは、製造後に物体を取り外すに有利であるが、プロセス全体中に物体の形成を支持するのに十分なほど適切に強くはない場合がある。この問題に対処するために、プラットフォームの他のバージョンは、プラットフォームにタングステン又はニッケル表面を追加して、溶融アルミニウムを用いてのビルド面の湿潤を改善する。しかしながら、これらのプラットフォームのバージョンは、金属物体の基部層にしっかりと接着することができ、物体が取り外されたときに物体、ビルドプラットフォームの表面、又はその両方に損傷を与える金属間溶接をもたらし得る。
【0014】
溶融金属の液滴がプラットフォーム112に向かって吐出されるように、X-Y平面内でプラットフォーム112を移動させることにより、形成される物体上に溶融金属液滴のスワスが形成される。コントローラ148はまた、アクチュエータ144を動作させ、エジェクタヘッド140と、基材上に最も近時に形成された層との間の距離を調節して、物体上の他の構造の形成を容易にする。溶融金属3D物体プリンタ100は、垂直配向で動作されるものとして
図4に表されているが、他の代替配向を採用することができる。また、
図4に示される実施形態は、X-Y平面内を移動するプラットフォームを有し、エジェクタヘッドがZ軸に沿って移動するが、他の配置も可能である。例えば、アクチュエータ144は、エジェクタヘッド140をX-Y平面内で、Z軸に沿って移動させるように構成されることができるか、又はX-Y平面及びZ軸の両方でプラットフォーム112を移動させるように構成されることができる。
【0015】
コントローラ148は、スイッチ152を動作させる。1つのスイッチ152は、供給源156からヒータ160に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得、別のスイッチ152は、ノズル108から液滴を吐出する電場を生成するために別の電源156からコイル164に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得る。ヒータ160は高温で大量の熱を生成するため、コイル164は、エジェクタヘッド140の1つ(円形)以上の壁(直線形状)によって形成されたチャンバ168内に位置決めされる。本文書で使用されるとき、「チャンバ」という用語は、3D金属物体プリンタのヒータ、コイル、及び取り外し可能な容器が位置する、金属液滴吐出プリンタ内の1つ以上の壁内に収容された体積を意味する。取り外し可能な容器104及びヒータ160は、かかるチャンバ内に位置している。チャンバは、ポンプ176を介して流体源172に流体的に接続され、また熱交換器180に流体的に接続される。本文書で使用されるとき、「流体源」という用語は、熱を吸収するのに有用な特性を有する液体のコンテナを指す。熱交換器180は、流体源172への戻りを介して接続される。供給源172からの流体は、チャンバを通って流れて、コイル164から熱を吸収し、流体は、交換器180を通して吸収された熱を搬送し、熱は、既知の方法によって除去される。冷却された流体は、適切な動作範囲内のコイルの温度を維持する際に更に使用するために、流体源172に戻される。
【0016】
3D金属物体プリンタ100のコントローラ148は、金属物体製造のためにプリンタを制御するために、外部供給源からのデータを必要とする。一般に、形成されるべき物体の三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラ148に動作可能に接続されたメモリ内に記憶される。コントローラは、サーバなどを通してデジタルデータモデルに、デジタルデータモデルが記憶されたリモートデータベースに、又はデジタルデータモデルが記憶されているコンピュータ可読媒体に、選択的にアクセスすることができる。この三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラと共に実装されるスライサによって処理され、既知の方法でコントローラ148が実行するマシン対応命令を生成して、プリンタ100の構成要素を動作させ、そのモデルに対応する金属物体を形成する。マシン対応命令の生成は、デバイスのCADモデルがSTLデータモデル、多角形メッシュ、又は他の中間表現に変換されるときなどの、中間モデルの生成を含むことができ、次いで、この中間モデルを処理して、プリンタによって物体を製造するためのGコードなどのマシン命令を生成することができる。本文書で使用されるとき、「マシン対応命令」という用語は、3D金属物体積層造形システムの構成要素を動作させて、プラットフォーム112上に金属物体を形成するために、コンピュータ、マイクロプロセッサ、又はコントローラによって実行されるコンピュータ言語コマンドを意味する。コントローラ148は、マシン対応命令を実行して、ノズル108からの溶融金属液滴の吐出、プラットフォーム112の位置付け、並びにオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の表面との間の距離の維持を制御する。
【0017】
同様の構成要素について同様の参照番号を使用し、物体をプラットフォーム112に過度に堅固に取り付けることなく、形成中に物体を安定させるために使用されない構成要素の一部を除去する、新しい3D金属物体プリンタ100’が
図1に示されている。プリンタ100’は、ケイ酸塩層塗布システム200、並びに、コントローラに接続された非一時的なメモリに記憶されたプログラムされた命令で構成されているコントローラ148’を含む。コントローラ148’は、以下に記載されるような塗布システム200を動作させるプログラムされた命令を実行して、システムによる金属物体の生成を支持するのに適切な脆性層を形成するように加熱されるケイ酸塩層を形成する。ケイ酸塩層は、液体溶液又は粉末であり得る。物体の生成後、物体、及び物体を支持する脆性層の部分は、物体又はプラットフォームに損傷を与えることなく、ビルドプラットフォーム112から取り外すことができる。
【0018】
塗布システム200は、リザーバ212内に存在する塗布器208を保持する関節アーム204を含む。一実施形態では、リザーバ212は、ケイ酸ナトリウムの溶液を含有する。塗布器208は、フェルト又はセラミック材料などの多孔質材料であり、リザーバ内の溶液を吸収する。更に、ブラシ又は噴霧器を使用して、溶液又は粉末を塗布することができる。関節アームは、コントローラ148’に動作可能に接続されているため、コントローラはアームを動作させて、塗布器をリザーバから持ち上げ、液体ケイ酸塩の層をプラットフォーム112に塗布した後に塗布器をリザーバに戻すことができる(工程1、
図2)。本明細書で使用されるとき、「液体ケイ酸塩」という用語は、任意の水溶性ケイ酸の共役塩の水溶液を意味する。一実施形態では、液体ケイ酸塩は、純粋なケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、又はケイ酸カリウムの1~40重量%の範囲のケイ酸ナトリウムの水溶液である。液体ケイ酸塩の水溶液は、湿潤用のドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤を含み得る。液体ケイ酸塩層を周囲空気中で乾燥させて、固体ケイ酸塩水和物層を残す(工程2、
図2)。コントローラ148’は、抵抗ヒータ212を動作させて、ビルドプラットフォームの温度を100℃を超える温度に上昇させて、溶融アルミニウム滴の吐出のためにプラットフォームを準備する。一実施形態では、ビルドプラットフォームは、約400℃~約500℃の範囲内の温度まで上昇される。この温度範囲はまた、ケイ酸塩層中の残りの水を放出させ、ケイ酸塩を不溶性ガラス状層に凝縮させる(工程3、
図2)。溶融アルミニウム又はアルミニウム合金の液滴は、約660℃の温度を有する。これらの溶融アルミニウム滴がガラス状層に遭遇すると、それらは層を反応的に湿潤させ、部分的な酸化還元反応を介して脆性ケイ酸塩層に結合する(工程4、
図2)。金属物体の製造、及びビルドプラットフォームへのアクティブな熱の除去後、物体及びプラットフォームは、約500℃以下の温度まで冷却し、その結果、物体及び脆性ケイ酸塩層の部分は、物体又はプラットフォーム112に損傷を与えることなく、ビルドプラットフォームから機械的に分離され得る(工程5、
図2)。
【0019】
図1及び
図2を参照して説明したシステム及び方法では、ケイ酸塩層は、前述のように、酸化鋼などの非湿潤性及び強度が低い結合基材に対する溶融アルミニウム湿潤性及び接着性を促進する。また、前述のように、溶融アルミニウムと、ニッケル又はタングステンなどの強力な結合基材との間の結合の程度も低減する。したがって、ケイ酸塩剥離層は、より高い湿潤性及び接着性を必要とするビルドプラットフォームとの湿潤性及び接着性を促進し、かつより低い湿潤性及び接着性を必要とするビルドプラットフォームとの湿潤性及び接着性を弱める。両方のタイプのビルドプラットフォームでは、ケイ酸塩層は、ほとんどのビルドプラットフォームからの金属物体の取り外しを容易にするために効果的な破砕面を生成する。
【0020】
コントローラ148’は、プログラムされた命令を実行する1つ以上の汎用又は専用のプログラマブルプロセッサを用いて実装され得る。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、先に説明し、並びに以下に説明される操作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、印刷回路カード上に提供されてもよいか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit;ASIC)内の回路として提供されてもよい。回路の各々は、別個のプロセッサで実装され得るか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装され得る。代替的に、回路は、超大規模集積(very large scale integrated;VLSI)回路内に提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。金属物体の形成中、製造される構造の画像データが、プラットフォーム112上に物体を形成するようにプリンタ100’の構成要素を動作させる信号を処理及び生成するために、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかから、コントローラ148’の1つ又は複数のプロセッサに送信される。
【0021】
ビルドプラットフォーム112上に形成されたケイ酸塩層の表面に金属物体を形成するように3D金属物体プリンタ100’を動作させるためのプロセスが
図3に示されている。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスク又は機能を実施しているという記述は、コントローラ又は汎用プロセッサが、データを動作させるために、又はプリンタ内の1つ以上の構成要素を操作してタスク若しくは機能を実施するために、コントローラ又はプロセッサに動作可能に接続された非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム命令を実行することを指す。上述したコントローラ148’は、そのようなコントローラ又はプロセッサとすることができる。代替的に、コントローラは、2つ以上のプロセッサ並びに関連する回路及び構成要素と共に実装され得、これらは各々、本明細書に記載される1つ以上のタスク又は機能を形成するように構成される。追加的に、方法の工程は、図に示される順序又は処理が記載される順序にかかわらず、任意の実行可能な時系列順序で実施され得る。
【0022】
図3は、プリンタ100’による金属物体の形成前に、ビルドプラットフォーム112上にケイ酸塩層を形成するように塗布システム200を動作させるプロセス300のためのフロー図である。コントローラ148’は、この目的のために塗布システム200を動作させるために、コントローラに動作可能に接続された非一時的なメモリに記憶されたプログラムされた命令を実行するように構成される。プリンタが初期化された後(ブロック304)、関節アームを、塗布器をリザーバからビルドプラットフォーム表面にわたって移動させ、リザーバに戻すように動作させる(ブロック308)。ケイ酸塩水和物層が残らないように、液体ケイ酸塩層が空気乾燥するのを可能にするために、適切な期間が待機される(ブロック312)。ビルドプラットフォームのヒータは、ビルドプラットフォームを、金属物体の生成に十分な範囲の温度に加熱するように動作される(ブロック316)。得られた熱は、ケイ酸塩がガラス状脆性層に凝縮するように、ケイ酸塩層から残りの水を放出させる。物体製造プロセス(ブロック320)中、溶融したアルミニウムが反応的に凝縮したケイ酸塩層を湿潤させ、かつ凝縮したケイ酸塩層に結合する。物体の形成が完了した後(ブロック324)、ビルドプラットフォームのヒータが停止され(ブロック328)、物体及びビルドプラットフォームは、約25℃~約500℃の範囲の温度に冷却し、その結果、物体及び脆性ケイ酸塩層の部分は、物体又はプラットフォーム112に損傷を与えることなく、ビルドプラットフォームから機械的に分離され得る(ブロック332)。
【0023】
上記に開示された及び他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替が、望ましくは、多くの他の異なるシステム、アプリケーション、又は方法に組み合わされ得ることが理解されるであろう。以下の特許請求の範囲によって包含されることも意図される、様々な現在予見又は予期されていない代替、修正、変形、又は改善が、その後、当業者によって行われ得る。