IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボルボトラックコーポレーションの特許一覧

特開2023-82677トランスミッション、パワートレイン、及び車両
<>
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図1
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図2
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図3
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図4
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図5
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図6
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図7
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図8
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図9
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図10
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図11
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図12
  • 特開-トランスミッション、パワートレイン、及び車両 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082677
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】トランスミッション、パワートレイン、及び車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/08 20060101AFI20230607BHJP
   F16H 37/06 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
F16H3/08
F16H37/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022189011
(22)【出願日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】21212008.3
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・フォルケソン
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ・ヘドマン
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン・ノールベリ
【テーマコード(参考)】
3J062
3J528
【Fターム(参考)】
3J062AA03
3J062AA04
3J062AB01
3J062AC02
3J062CG03
3J062CG13
3J062CG83
3J528EA21
3J528EA27
3J528EA28
3J528EB22
3J528EB28
3J528EB33
3J528EB63
3J528EB80
3J528FB05
3J528FC13
3J528FC23
3J528FC32
3J528FC42
3J528FC64
3J528GA08
3J528HA22
3J528JA01
3J528JE07
3J528JJ04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トラック、バス、及び建設機械のような大型車に適用可能な高効率のトランスミッション、パワートレインを提供する。
【解決手段】トランスミッション120は、第1の入力シャフト1、第2の入力シャフト2、カウンターシャフト3、主シャフト43、及び出力シャフト4と、第1の入力シャフトに配置された第1の入力シャフトギアホイール11と、主シャフト43に回転可能に配置された第1の主ギアホイール41と、カウンターシャフトに配置された第1のカウンターシャフトギアホイール31とを備える第1のギア面GP1であって、第1のギア面のギアホイールは、互いに駆動接続して配置される、第1のギア面と、同様の構成を有する第2のギア面GP2よりなり、高レンジギア又は低レンジギアに選択的に設定可能なレンジギアRGは、少なくとも3種のレンジギアコンポーネントを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)用トランスミッション(120)であって、
-第1の入力シャフト(1)、第2の入力シャフト(2)、カウンターシャフト(3)、主シャフト(43)、及び出力シャフト(4)と、
-前記第1の入力シャフト(1)に配置された第1の入力シャフトギアホイール(11)と、前記主シャフト(43,43’)に回転可能に配置された第1の主ギアホイール(41)と、前記カウンターシャフト(3)に配置された第1のカウンターシャフトギアホイール(31)とを備える第1のギア面(GP1)であって、前記第1のギア面(GP1)の前記ギアホイールは、互いに駆動接続して配置される、第1のギア面(GP1)と、
-前記第2の入力シャフト(2)に配置された第2の入力シャフトギアホイール(22)と、前記主シャフト(43’)又は前記出力シャフト(4)に回転可能に配置された第2の主ギアホイール(42)と、前記カウンターシャフト(3)に配置された第2のカウンターシャフトギアホイール(32)とを備える第2のギア面(GP2)であって、前記第1のカウンターシャフトギアホイール(31)は、前記第2のカウンターシャフトギアホイール(32)に選択的に駆動接続可能であり、前記第2のギア面(GP2)の前記ギアホイールは、互いに駆動接続して配置される、第2のギア面(GP2)と、
-高レンジギア又は低レンジギアに選択的に設定可能なレンジギア(RG)であって、前記レンジギアは、少なくとも第1、第2、及び第3のレンジギアコンポーネント(51,52,53)を備え、前記第1のレンジギアコンポーネント(51)は、前記出力シャフト(4)に共回転可能に接続される、レンジギア(RG)と、
-第1のギア係合装置(44a,44b)であって、
〇 前記第1の主ギアホイール(41)を前記第1のレンジギアコンポ―ネント(51)に駆動接続する第1のギア係合装置第1の状態と、
〇 第1のギア係合装置中立状態と、
〇 前記第1の主ギアホイール(41)を前記第2のレンジギアコンポ―ネント(52)に駆動接続する第1のギア係合装置第2の状態と
に選択的に設定可能な第1のギア係合装置(44a,44b)と、
-第2のギア係合装置(45,45a,45b)であって、少なくとも
〇 前記第2の主ギアホイール(42)を前記第2のレンジギアコンポネント(52)に駆動接続する第2のギア係合装置第1の状態と、
〇 第2のギア係合装置中立状態と
に選択的に設定可能な第2のギア係合装置(45,45a,45b)と、
を備える、車両(100)用トランスミッション(120)。
【請求項2】
前記第2の主ギアホイール(42)は、前記出力シャフト(4)に回転可能に配置され、前記第2のギア係合装置(45a,45b)は、前記第2の主ギアホイール(42)を前記出力シャフト(4)に共回転可能に接続する第2のギア係合装置第2の状態に更に選択的に設定可能である、請求項1に記載のトランスミッション。
【請求項3】
前記主シャフト(43)は、前記出力シャフト(4)と同軸になるように前記出力シャフト(4)の周りに回転可能に配置される中空シャフト(43)である、請求項1又は2に記載のトランスミッション。
【請求項4】
前記第2の主ギアホイール(42)は、前記主シャフト(43’)に回転可能に配置され、前記主シャフト(43’)及び前記出力シャフト(4)は、共通の長軸(A)に沿って一列に配置される、請求項1に記載のトランスミッション。
【請求項5】
前記レンジギア(RG)は、遊星ギア組から構成される、請求項1から4のいずれか1つに記載のトランスミッション。
【請求項6】
前記第3のレンジギアコンポーネント(53)をトランスミッションハウジング(6)に係止することによって、前記レンジギアを前記低レンジギアに設定し、前記第1、第2、及び第3のレンジギアコンポーネント(51,52,53)の少なくとも2つを共回転可能に接続することによって、前記レンジギア(RG)を前記高レンジギアに設定するように構成されたレンジギアセレクタを更に備える、請求項1から5のいずれか1つに記載のトランスミッション。
【請求項7】
前記第3のレンジギアコンポーネント(53)は、前記遊星ギア組のリングギアホイールである、請求項5に従属する請求項6に記載のトランスミッション。
【請求項8】
前記第2のカウンターシャフトギアホイール(32)を前記カウンターシャフト(3)に選択的に共回転可能に接続させ、これによって、前記第1のカンターシャフトギアホイール(31)を前記第1のカウンターシャフトギアホイール(32)に選択的に駆動接続するためのカンターシャフトギア係合装置(33)を更に備える、請求項1から7のいずれか1つに記載のトランスミッション。
【請求項9】
前記第1のギア面(GP1)の前記第1の入力シャフトギアホイール(11)と前記第1の主ギアホイール(41)とのギア比は、前記第2のギア面(GP2)の前記第2の入力シャフトギアホイール(22)と前記第2の主ギアホイール(42)とのギア比よりも大きい、請求項1から8のいずれか1つに記載のトランスミッション。
【請求項10】
前記第1の主ギアホイール(41)は、前記第1の入力シャフトギアホイール(11)及び前記第1のカウンターシャフトギアホイール(31)の各々と噛合って配置され、前記第2の主ギアホイール(42)は、前記第2の入力シャフトギアホイール(22)及び前記第1のカウンターシャフトギアホイール(32)の各々と噛合って配置される、請求項1から9のいずれか1つに記載のトランスミッション。
【請求項11】
前記主シャフト(43,43’)は、前記第2のレンジギアコンポ―ネント(52)に共回転可能に固定される、請求項1から10のいずれか1つに記載のトランスミッション。
【請求項12】
前記第2のギア係合装置(45,45a,45b)は、前記第2のギア係合装置第1の状態において前記第2の主ギアホイール(42)を前記主シャフト(43,43’)に駆動接続するように構成される、請求項1から11のいずれか1つに記載のトランスミッション。
【請求項13】
前記第1のギア係合装置(44a,44b)は、前記第1のギア係合装置第2の状態において前記第1の主ギアホイール(41)を前記主シャフト(43,43’)に駆動接続するように構成される、請求項1から12のいずれか1つに記載のトランスミッション。
【請求項14】
前記第2のギア面(GP2)は、前記第1の入力シャフト(1)に回転可能に配置された第1の入力シャフト第2のギアホイール(12)を更に備え、前記トランスミッション(120)は、前記第1の入力シャフト第2のギアホイール(12)を前記第1の入力シャフト(1)に選択的に共回転可能に接続するための第3のギア係合装置(13)を更に備える、請求項1から13のいずれか1つに記載のトランスミッション。
【請求項15】
第1のパワーユニット(130)、第2のパワーユニット(140)、及び請求項1から14のいずれか1つに記載のトラスミッション(120)を備えるパワートレイン(110)であって、前記トランスミッション(120)の前記第1の入力シャフト(1)は、前記第1のパワーユニット(130)に駆動接続され、前記トランスミッション(120)の前記第2の入力シャフト(2)は、前記第2のパワーユニット(140)に駆動接続される、パワートレイン(110)。
【請求項16】
前記第1のパワーユニット(130)及び前記第2のパワーユニット(140)の少なくとも1つは、電気機械である、請求項15に記載のパワートレイン(110)。
【請求項17】
前記カウンターシャフト(3)に駆動接続された又は駆動接続可能な動力取出し装置(190)を更に備える、請求項15又は16に記載のパワートレイン。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか1つに記載のパワートレイン(110)を備える車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッション、パワートレイン、及び車両に関する。
【0002】
本発明は、トラック、バス、及び建設機械のような大型車に適用可能である。本発明は、トラックに関して説明されるが、この種の車両に制限されず、バス、トレーラー、ホイールローダ、掘削機等のような他の車両に用いられてもよい。
【背景技術】
【0003】
電動式又は部分的に電動式の大型車は、ますます普及してきている。大型車の場合、車両の推進のために2つ以上の電気機械を備えることが望ましく、また電力を動力取出しのために補助システムに供給することが望ましい。2つの推進ユニットを備えるこのようなパワートレインにおいて、電気機械の各々から車両の被駆動軸を推進するために用いられる共通の出力シャフトにトルクを伝達する共通のトランスミッションが設けられるとよい。
【0004】
特許文献1は、2つの電気機械と、これらの電気機械の各々から車両を駆動するための共通の出力シャフトにトルクを伝達するための共通のトランスミッションと、を備えるパワートレインを開示している。各電気機械は、対応する入力シャフトに接続され、この入力シャフトの周りに複数の入力ギアホイールが設けられ、これらの入力ギアホイールは、共通の出力シャフトの周りに設けられた対応する出力ギアホイールを介してトルクを選択的に伝達するようになっている。
【0005】
電動車のパワートレインを改良し、パワートレインの効率を広い出力範囲と組合わせるための継続的な努力がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0019967号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主目的は、少なくとも一部の態様では、2つのパワーユニット、例えば、2つの電気機械を備えるパワートレインに適する改良されたトランスミッションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、上記の目的は、請求項1に記載の車両用トランスミッションによって達成される。このトランスミッションは、
-第1の入力シャフト、第2の入力シャフト、カウンターシャフト、主シャフト、及び出力シャフトと、
-第1の入力シャフトに配置された第1の入力シャフトギアホイールと、主シャフトに回転可能に配置された第1の主ギアホイールと、カウンターシャフトに配置された第1のカウンターシャフトギアホイールとを備える第1のギア面であって、第1のギア面のギアホイールは、互いに駆動接続して配置される、第1のギア面と、
-第2の入力シャフトに配置された第2の入力シャフトギアホイールと、主シャフト又は出力シャフトに回転可能に配置された第2の主ギアホイールと、カウンターシャフトに配置された第2のカウンターシャフトギアホイールとを備える第2のギア面であって、第1のカウンターシャフトギアホイールは、第2のカウンターシャフトギアホイールに選択的に駆動接続可能であり、第2のギア面のギアホイールは、互いに駆動接続して配置される、第2のギア面と、
-高レンジギア又は低レンジギアに選択的に設定可能なレンジギアであって、レンジギアは、少なくとも第1、第2、及び第3のレンジギアコンポーネントを備え、第1のレンジギアコンポーネントは、出力シャフトに共回転可能に接続される、レンジギアと、
-第1のギア係合装置であって、
〇 第1の主ギアホイールを第1のレンジギアコンポ―ネントに駆動接続する第1のギア係合装置第1の状態と、
〇 第1のギア係合装置中立状態と、
〇 第1の主ギアホイールを第2のレンジギアコンポ―ネントに駆動接続する第1のギア係合装置第2の状態と
に選択的に設定可能な第1のギア係合装置と、
-第2のギア係合装置であって、少なくとも
〇 第2の主ギアホイールを第2のレンジギアコンポネントに駆動接続する第2のギア係合装置第1の状態と、
〇 第2のギア係合装置中立状態と
に選択的に設定可能な第2のギア係合装置と、
を備える、車両用トランスミッション。
【0009】
本明細書に開示されるトランスミッションは、2つのギア面及びレンジギアのみを用いて少なくとも8つの異なるギア比をもたらすことができる。これによって、このトランスミッションは、頑丈かつコンパクトになると共に、トルク能力及び効率に対する高い要求を満たすことになる。更に、このトランスミッションを用いることによって、2つの異なるパワーユニットから、一度に1つのパワーユニットから又は両方のパワーユニットから同時に、トルクを車両の被駆動輪に伝達することができる。また、このトランスミッションによれば、車両の加速又は減速中に2つのパワーユニットを用いて連続的なトルク伝達を行うことが可能になる。何故なら、入力シャフトの一方を常にトルク伝達に用いてその間に他方の入力シャフトをギアチェンジのために遮断することができるからである。
【0010】
トランスミッションは、2つの個別のギア面及び選択的に駆動接続可能なカウンターシャフトギアホイールを備えるので、ギア噛合負荷を低減することができる。特に、車両の始動時及び/又は巡行中、第1のギア係合装置を第1のギア係合装置第2の状態に設定し、第2のギア係合装置を第2のギア係合装置中立状態に設定することによって、ギア噛合負荷を低減することができる。選択的に駆動接続可能なカウンターシャフトギアホイールによって、曲がりくねった動力流れが更に可能になる。
【0011】
各ギア面のギアホイールは、互いに駆動接続して配置される。例えば、各ギア面において、入力シャフトギアホイールは、該当する主ギアホイールと噛み合って配置され、この主ギアホイールは、該当するカウンターシャフトギアホイールと噛み合って配置される。また、中間シャフトは、駆動接続が噛合によって得られるギアホイールを備えることが可能である。
【0012】
第1のカウンターシャフトギアホイールは、例えば、第2のカウンターシャフトギアホイールをカウンターシャフトに選択的に共回転可能に接続することによって、第2のカウンターシャフトギアホイールに選択的に駆動接続可能である。この場合、第1のカウンターシャフトギアホイールは、カウンターシャフトに共回転するように恒久的に固定されるとよく、第2のカウンターシャフトギアホイールは、カウンターシャフトの周りに回転可能に配置され、カウンターシャフトギア係合装置によって選択的に共回転するように接続可能であるとよい。
【0013】
「~に共回転するように接続する(rotationallly connect to)」という用語は、「~に一緒に回転するように接続する(connect for common rotation with)」を意味する。例えば、第1のギア係合装置第1の状態では、第1のギア係合装置は、第1の主ギアホイールを第1のレンジギアコンポーネントに共通の回転軸を中心として一緒に回転するように接続する。
【0014】
2つの回転部品間の「駆動接続(driving connection)」という用語は、本明細書において、トルクがそれらの部品間に伝達可能であること、及びそれらの部品のそれぞれの回転速度が比例することを意味する。2つのギアホイールが駆動接続されると、トルクをそれらのギアホイール間に伝達することができる。これは、それらのギアホイールを噛合させることによって、又は第1のギアホイールを第2のギアホイールに噛み合わせ、第2のギアホイールを第3のギアホイールに噛み合わせることによって、又は第1のギアホイールを第2のギアホイールに噛み合わせ、第2のギアホイールを第3のギアホイールに共回転可能に接続させ、第3のギアホイールを第4のギアホイールに噛み合わせることによって、達成される。従って、駆動接続を達成するために、必ずしも2つのギアホイールを噛合わせる必要がない。ギアホイールの一方の回転が必然的にギアホイールの他方の回転をもたらせば十分である。
【0015】
「噛合(meshing engagement)」という用語は、もし何も言及されないなら、恒久的な噛合を意味する。
【0016】
本明細書に記載される実施形態では、レンジギアは、好ましくは、第2のギア面よりも第1のギア面の近くに配置される。第1のギア面は、長軸に沿ってレンジギアから第1の距離だけ離れて配置され、第2のギア面は、長軸に沿ってレンジギアから第2の距離だけ離れて配置され、第2の距離は、第1の距離よりも大きいとよい。
【0017】
任意選択的に、第2の主ギアホイールは、出力シャフトに回転可能に配置され、第2のギア係合装置は、第2の主ギアホイールを出力シャフトに共回転可能に接続する第2のギア係合装置第2の状態に更に選択的に設定可能である。第2のギア係合装置第2の状態では、第2の入力シャフトに接続された第2のパワーユニットからのトルクは、これによって、第2の入力シャフト、第2の入力シャフトギアホイール、及び第2の主ギアホイールのみを介して出力シャフトに伝達可能である。これによって、第2のパワーユニットからのトルクがレンジギアを迂回することが可能になる。これは、特に第2のレンジギアコンポネントが遊星ギア組の太陽ギアホイールであるレンジギアの疑似ブリネル圧痕を防ぐのに有利である。
【0018】
任意選択的に、主シャフトは、出力シャフトと同軸になるように出力シャフトの周りに回転可能に配置された中空シャフトである。これは、特に出力シャフトに回転可能に配置された第2の主ギアホイールと組合わせて適用されるとよい。第1のギア面において、第1の主ギアホイールは、本明細書では、主シャフトに回転可能に配置され、主シャフトは、出力シャフトの周りに回転可能に配置される。本明細書では、第2のギア面は、長軸に沿って主シャフトから位置ずれしている。
【0019】
任意選択的に、第2の主ギアホイールは、主シャフトに回転可能に配置され、主シャフト及び出力シャフトは、共通の長軸に沿って一列に配置される。従って、この構成では、主シャフトは、出力シャフトの周りに回転可能に配置される中空シャフトではない。代わって、主シャフト及び出力シャフトは、長軸に沿って連続的に配置され、第1及び第2の主ギアホイールの両方が主シャフトに配置される。これによって、特に出力シャフトがパワーユニットと同じ側に配置されない時の主シャフト及び出力シャフトのより簡素化された構成が達成される。この実施形態では、第2の主ギアホイールを出力シャフトに共回転可能に接続するために、第2のギア係合装置を用いることができない。
【0020】
任意選択的に、第1の入力シャフトギアホイールは、第1の入力シャフトに恒久的に固定されるとよく、第2の入力シャフトギアホイールは、第2の入力シャフトに恒久的に固定されるとよい。これによって、トランスミッションの堅牢性が改良される。何故なら、第1及び/又は第2のギアホイールをそれぞれの入力シャフトに固定するためにどのようなクラッチ等も必要としないからである。
【0021】
任意選択的に、レンジギアは、遊星ギア組、すなわち、リングギアホイール,複数のギアホイールを支持する遊星ギアホイールキャリア、及び太陽ギアホイールを備えるギア組を備える。これによって、トランスミッションのコンパクトな構成を達成することができる。
【0022】
任意選択的に、トランスミッションは、第3のレンジギアコンポーネントをトランスミッションハウジングに係止することによってレンジギアを低レンジギアに設定し、第1、第2、及び第3のレンジギアコンポーネントの少なくとも2つを共回転可能に接続することによってレンジギアを高レンジグギアに設定するように構成された、レンジギアセレクタを更に備える。これによって、低レンジギアでは、それぞれのレンジギアコンポーネントは、互いに対して回転することが可能である。高レンジギアでは、それぞれのレンジギアコンポーネントは、ハウジングに対して回転することが可能であるが、互いに対して回転することができない。本明細書では、レンジギアは、好ましくは、遊星ギア組から構成される。
【0023】
任意選択的に、第3のレンジギアコンポーネントは、遊星ギア組のリングギアホイールである。リングギアホイールは、レンジギアセレクタによってトランスミッションハウジングに容易に係止可能であるとよい。好ましくは、第1のレンジギアコンポーネントは、遊星ギアホイールキャリアであり、第2のレンジギアコンポ―ネントは、遊星ギア組の太陽ギアホイールである。これによって、頑丈かつ空間効率のよい構成が得られる。
【0024】
任意選択的に、トランスミッションは、カウンターシャフトギア係合装置を更に備える。カウンターシャフトギア係合装置は、第2のカウンターシャフトギアホイールをカウンターシャフトに選択的に共回転可能に接続し、これによって、第1のカウンターシャフトギアホイールを第2のカウンターシャフトギアホイールに選択的に駆動接続する。本明細書では、第1のカウンターシャフトギアホイールは、カウンターシャフトに恒久的に固定され、第2のカウンターシャフトギアホイールは、カウンターシャフトに回転可能に配置され、カウンターシャフトギア係合装置によってカウンターシャフトに選択的に共回転可能に接続されるとよい。これは、第2のカウンターシャフトギアホイールが第1のカウンターシャフトギアホイールの直径よりも大きい直径を有する時に、特に有用である。勿論、代替的に、第1のカウンターシャフトギアホイールをカウンターシャフトに選択的に共回転可能に接続させ、第2のカウンターシャフトギアホイールをカウンターシャフトに恒久的に固定することも可能である。
【0025】
任意選択的に、第1のギア面の第1の入力シャフトギアホイールと第1の主ギアホイールとのギア比は、第2のギア面の第2の入力シャフトギアホイールと第2の主ギアホイールとのギア比よりも大きい。これによって、車両を停止から加速する時にトルクを連続的に伝達しながら効率のよいギアシフトシーケンスを行うことが可能である。トランスミッションが2つのパワーユニットに接続される時、第2のギア面は、好ましくは、第1のギア面よりもパワーユニットの近くに配置され、第1のギア面は、第2のギア面よりもレンジギアの近くに配置される。
【0026】
任意選択的に、第1の主ギアホイールは、第1の入力シャフトギアホイール及び第1のカウンターシャフトギアホイールの各々に噛合って配置され、第2の主ギアホイールは、第2の入力シャフトギアホイール及び第1のカウンターシャフトギアホイールの各々に噛合って配置される。これによって、追加的なシャフトを有しない、従って、摩擦損失の低減されたコンパクトな構成が得られる。
【0027】
任意選択的に、主シャフトは、第2のレンジギアコンポーネントに共回転可能に固定される。従って、第1及び/又は第2の主ギアホイールを主シャフトに共回転可能に接続することによって、トルクは、主シャフト及びレンジギアの少なくとも第2のレンジギアコンポーネントを介して出力シャフトに伝達可能である。主シャフトは、この構成では、中空又は非中空のいずれであってもよい。
【0028】
任意選択的に、第2のギア係合装置は、第2のギア係合装置第1の状態において第2の主ギアホイールを主シャフトに駆動接続するように構成される。
【0029】
任意選択的に、第1のギア係合装置は、第1のギア係合装置第2の状態において第1の主ギアホイールを主シャフトに駆動接続するように構成される。
【0030】
任意選択的に、第2のギア面は、第1の入力シャフトに回転可能に配置された第1の入力シャフト第2のギアホイールを更に備え、トランスミッションは、第1の入力シャフト第2のギアホイールを第1の入力シャフトに選択的に共回転可能に接続するための第3のギア係合装置を更に備える。第1の入力シャフト第2のギアホイールは、本明細書では、第2の主ギアホイールと噛合って配置されるとよい。追加的な第1の入力シャフト第2のギアホイールによって、効率損失を低減させることができる。これは、特に車両の高速運転に有用であり、トルクは、レンジギアを用いることなく、両パワーユニットから第2のギア面を介して出力シャフトに伝達可能である。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、少なくとも主目的は、請求項15に記載のパワートレインによっても達成される。パワートレインは、第1のパワーユニット、第2のパワーユニット、及び本発明の第1の態様によるトランスミッションを備え、トランスミッションの第1の入力シャフトは、第1のパワーユニットに駆動接続され、トランスミッションの第2の入力シャフトは、第2のパワーユニットに駆動接続される。本発明によるパワートレインの利点及び有利な特徴は、本発明の第1の態様の前述の記載から明らかである。
【0032】
任意選択的に、第1のパワーユニット及び第2のパワーユニットの少なくとも一方は、電気機械である。両方のパワーユニットは、同じ形式の電気機械であってもよいし、又は異なる形式の電気機械であってもよい。パワーユニットの少なくとも一方は、代替的に内燃エンジンであってもよい。
【0033】
任意選択的に、パワートレインは、カウンターシャフトに駆動接続された又は駆動接続可能な動力取出し(PTO)装置を更に備える。PTO装置は、本明細書では車速と無関係に駆動される。何故なら、第1のパワーユニットからの動力をPTO装置を駆動するために用いながら、第2のパワーユニットからの動力を車両の推進のために用いることができるからである。これは、第1のギア係合装置を第1のギア係合装置中立状態に設定し、第2のギア係合装置を第2のギア係合装置第1の状態、又は適用可能であれば、第2のギア係合装置第2の状態に設定し、カウンターシャフトギア係合装置を(カウンターシャフトギアホイールが駆動接続されない)離脱状態に設定することによって、達成されるとよい。
【0034】
動力取出し装置は、動力取出し装置をカウンターシャフトに駆動接続するための選択的に係合可能なクラッチを備えるとよい。このクラッチによって、PTO装置をカウンターシャフトから離脱させることによって、パワーユニットからの両方のトルクをPTO装置を駆動せずにプロペラシャフトを駆動するために用いることが可能である。
【0035】
任意選択的に、このクラッチは、歯付きクラッチである。移動中の車両が第2のパワーユニットのみによって推進されている時、第1のパワーニットを低回転速度又はゼロ回転速度に制御することによって、この歯付きクラッチを係合させることができる。
【0036】
本発明の第3の態様によれば、少なくとも主目的は、第2の態様によるパワートレインを備える車両によっても達成される。車両は、例えば、完全電動車であってもよいし、又は第1及び第2の電気機械に加えて少なくとも1つの内燃エンジンを備えるハイブリッド車であってもよい。本発明による車両の利点及び有利な特徴は、本発明の第1及び第2の態様の前述の記載から明らかである。
【0037】
本発明の更なる利点及び有利な特徴は、以下の記載及び従属請求項に開示される。
【0038】
以下、添付の図面を参照して、本発明の例示的な実施形態を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施形態による車両を概略的に示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態によるトランスミッションを概略的に示す図である。
図3】第1の状態にある図2のトランスミッションを通る動力流れを示す図である。
図4】第2の状態にある図2のトランスミッションを通る動力流れを示す図である。
図5】第3の状態にある図2のトランスミッションを通る動力流れを示す図である。
図6】第4の状態にある図2のトランスミッションを通る動力流れを示す図である。
図7】第5の状態にある図2のトランスミッションを通る動力流れを示す図である。
図8】第6の状態にある図2のトランスミッションを通る動力流れを示す図である。
図9】第7の状態にある図2のトランスミッションを通る動力流れを示す図である。
図10】操作モードにある図2のトランスミッションを通る動力流れを示す図である。
図11】本発明の第2の実施形態によるトランスミッションを概略的に示す図である。
図12】本発明の第3の実施形態によるトランスミッションを概略的に示す図である。
図13】本発明の第4の実施形態によるトランスミッションを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図面は、本発明の例示的な実施形態を図式的に示し、必ずしも縮尺通りに描かれていない。図示かつ記載される実施形態が例示にすぎないこと及び本発明がこれらの実施形態に制限されないことを理解されたい。また、図面におけるいくつかの細部は、本発明を良好に図示かつ記載するために誇張されていることがあることに留意されたい。特に明記されない限り、図面の全体を通して同様の参照符号は、同様の要素を指すものとする。
【0041】
本発明の実施形態によるトラックの形態にある車両100が、図1に概略的に示される。車両100は、車両100を推進するためのパワーユニットアセンブリ150を有するパワートレイン110を備える。パワーユニットアセンブリ150は、少なくとも2つの電気機械130,140の形態にあるパワーユニット130,140を備える。電気機械130,140は、トランスミッション120に接続され、車両の(図示されない)電気エネルギー貯蔵システムによって電力供給されるように構成される。トランスミッション120は、トルクをパワーユニットアセンブリ150からプロペラシャフト160に伝達するように構成される。プロペラシャフト160は、トランスミッション120を車両100の被駆動輪180を駆動する被駆動軸170に接続するものである。車両は、動力取出し(PTO)装置(図示せず)を更に備えてもよい。
【0042】
従って、図示される実施形態では、車両100は、パワーユニットアセンブリ150によってのみ駆動されるように構成された完全電動車である。車両100は、1つより多い被駆動軸、例えば、2つ以上の被駆動軸を有するように構成されるとよい。車両100のパワーユニットアセンブリ150は、3つ以上の電気機械、例えば、3つ又は4つの電気機械を備えてもよい。また、車両は、電気機械130,140に加えて内燃エンジンを備えるハイブリッド車であってもよい。電気機械130,140は、電気モータ/発電機の形態にあってもよい。
【0043】
勿論、車両及びパワートレインは、多くの異なる構成を有してもよい。例えば、電気機械アセンブリ150及びトランスミッション120は、必ずしも車両の前部に設けられる必要がなく、例えば、車両の後車軸と組合わせて設けられてもよい。
【0044】
図2は、本発明の第1の実施形態によるトランスミッション120を備えるパワートレイン110の一部を示す。パワートレイン110は、第1の電気機械130、第2の電気機械140、及び任意選択的な動力取出し(PTO)装置190を更に備える。トランスミッション120は、第1の電気機械130に駆動接続された第1の入力シャフト1と、第2の電気機械140に駆動接続された第2の入力シャフト2とを備える。トランスミッション120は、車両100のプロペラシャフト160に駆動接続されるように構成された出力シャフト4と、中空主シャフト43と、カウンターシャフト3とを更に備える。カウンターシャフト3は、ここでは、クラッチ60を介してPTO装置190に駆動接続可能である。シャフト1,2,3,4,43は、図にドット領域として示される軸受を用いてトランスミッションハウジング6に取り付けられる。シャフト1,2,3,4,43は、ここでは、平行シャフトであり、出力シャフト4及び主シャフト43は、長軸Aに沿って延びている。主シャフト43は、ここでは、出力シャフト4と同軸になるように出力シャフト4の周りに回転可能に配置される。第1の入力シャフト1は、長軸Bに沿って延び、第2の入力シャフト2は、長軸Cに沿って延び、カウンターシャフト3は、長軸Dに沿って延びている。例えば、軸Aに沿って位置する視点から見た時、例示される実施形態では、軸A,B,Cは、仮想三角形のコーナを形成する。但し、これは、必ずしも必要ではない。電気機械、従って、入力シャフトは、代替的に同軸に配置されてもよい。また、軸A,B,Cは、共通面上に互いに位置ずれして延びてもよい。
【0045】
トランスミッション120の第1のギア面GP1は、第1の入力シャフト1に配置された第1の入力シャフトギアホイール11と、主シャフト43に回転可能に配置された第1の主ギアホイール41と、カウンターシャフト3に配置された第1のカウンターシャフトギアホイール31とを備える。図にドット領域として示される軸受が、中空主シャフト43と出力シャフト4との間、及び第1の主ギアホイール41と主シャフト43との間に設けられる。第1のギア面GP1のギアホイール11,31,41は、互いに駆動接続して配置される。すなわち、第1の主ギアホイール41は、第1の入力シャフトギアホイール11及び第1のカウンターシャフトギアホイール31の各々と噛合って配置される。第1の入力シャフトギアホイール11は、ここでは、第1の入力シャフト1に共回転するように恒久的に固定され、第1のカウンターシャフトギアホイール31は、カウンターシャフト3に共回転するように恒久的に固定される。第1のギア面GP1は、軸A,B,C,Dに対して直角に延びている。
【0046】
第2のギア面GP2は、第2の入力シャフト2に配置された第2の入力シャフトギアホイール22と、出力シャフト4に回転可能に配置された第2の主ギアホイール42と、カウンターシャフト3に回転可能に配置された第2のカウンターシャフトギアホイール32とを備える。図にドット領域として示される軸受が、第2の主ギアホイール42と出力シャフト4との間及び第2のカウンターシャフトギアホイール32とカウンターシャフト3との間に設けられる。第1のカウンターシャフトギアホイール31は、カウンターシャフトギア係合装置33によって、第2のカウンターシャフトギアホイール32に選択的に駆動接続可能である。カウンターシャフトギア係合装置33は、この目的のために、カウンターシャフトギア係合装置33が係合した状態において第2のカウンターシャフトギアホイール32を選択的にカウンターシャフト3に共回転可能に固定するように構成される。カウンターシャフトギア係合装置33が離脱した状態では、第2のカウンターシャフトギアホイール32は、カウンターシャフト3に対して回転可能である。第2のギア面GP2のギアホイール22,32,42は、互いに駆動接続して配置される。すなわち、第2の主ギアホイール42は、第2の入力シャフトギアホイール22及び第2のカウンターシャフトギアホイール32の各々と噛合って配置される。第2の入力シャフトギアホイール22は、ここでは、第2の入力シャフト2に共回転するように恒久的に固定される。第2のギア面GP2は、軸A,B,C,Dに対して直角に延びている。
【0047】
高レンジギア又は低レンジギアに選択的に設定可能なレンジギアRGが更に設けられる。レンジギアRGは、少なくとも第1、第2、及び第3のレンジギアコンポーネント51,52,53を備え、第1のレンジギアコンポ―ネント51は、出力シャフト4に共回転可能に接続される。本実施形態では、レンジギアRGは、遊星ギア組から構成され、第1のレンジギアコンポーネント51は、複数の遊星ギアホイール54a,54bを支持する遊星ギアホイールキャリア51である。第2のレンジギアコンポーネント52は、太陽ギアホイールであり、第3のレンジギアコンポーネント53は、リングギアホイール53である。
【0048】
トランスミッション120の第1のギア係合装置44a,44bが設けられる。第1のギア係合装置は、ここでは、アクチュエータ(図示せず)によって同時に作動可能な2つのスリーブ部材44a,44bから構成される。第1のギア係合装置44a,44bは、
-第1の主ギアホイール41を第1のレンジギアコンポーネント51、すなわち、遊星ギアホイールキャリア51に駆動接続する、第1のギア係合装置第1の状態と、
-第1の主ギアホイール41が第1及び第2のレンジギアコンポーネント51,52に対して回転することを可能にする、第1のギア係合装置中立状態と、
-第1の主ギアホイール41を第2のレンジギアコンポ―ネント52に駆動接続する、第1のギア係合装置第2の状態と
の1つに選択的に設定可能である。
【0049】
第2のギア係合装置45a,45bが更に設けられる。第2のギア係合装置は、ここでは、アクチュエータ(図示せず)によって同時に作動可能な2つのスリーブ部材45a,45bから構成される。第2のギア係合装置45a,45bは、
-第2の主ギアギアホイール42を第2のレンジギアコンポ―ネント52、すなわち、太陽ギアホイール52に駆動接続する、第2のギア係合装置第1の状態と、
-第2の主ギアホイール42が出力シャフト4及び第2のレンジギアコンポーネント52に対して回転することを可能にする、第2のギア係合装置中立状態と、
-第2の主ギアホイール42を出力シャフト4に共回転可能に接続する、第2のギア係合装置第2の状態と
の1つに選択的に設定可能である。
【0050】
スリーブ部材44a,44b,45a,45bは、例えば、クラッチスリーブ、クラッチカラー、係合スリーブ等と呼ばれることもある。スリーブ部材44a,44b,45a,45bをギアチェンジのために移動させるために、シフトフォーク(図示せず)が設けられるとよい。ギアシフトは、トランスミッション制御ユニット(図示せず)によって、例えば、電気アクチュエータ、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータを用いてシフトフォークを移動させることによって、制御されるとよい。
【0051】
主シャフト43は、第2のレンジギアコンポーネント52、すなわち、太陽ギアホイール52に共回転可能に固定され、長軸Aに沿った太陽ギアホイール52の軸方向延長部と見なされることもある。従って、第2のギア係合装置第1の状態は、第2の主ギアホイール42を(第2のレンジギアコンポーネント52に恒久的に固定された)主シャフト43に共回転可能に接続することによって達成される。
【0052】
レンジギアRGは、第3のレンジギアコンポーネント53、すなわち、リングギアホイール53をトランスミッションハウジング6に係止することによって、低レンジギアに設定可能である。レンジギアRGは、第1、第2、及び第3のレンジギアコンポーネント51,52,53の少なくとも2つを共回転可能に接続し、これによって、レンジギアコンポーネント51,52,53を(互いに対してではなく)トランスミッションハウジング6に対して回転することを可能にすることによって、高レンジギアに更に設定可能である。第1、第2、及び第3のレンジギアコンポーネント51,52,53のいずれか2つは、この目的のために共回転可能に接続されるとよいが、図示の実施形態では、これは、リングギアホイール53を左側に移動させ、これによって、リングギアホイール53をトランスミッションハウジング6から離脱させ、遊星ギアホイールキャリア51に固定することによって達成される。レンジギアセレクタ(図示せず)がこの目的のために設けられる。
【0053】
トラスミッション120は、ここでは、第1のギア面GP1の第1の入力シャフトギアホイール11と第1の主ギアホイール41とのギア比が第2のギア面GP2の第2の入力シャフトギアホイール22と第2の主ギアホイール42とのギア比よりも大きくなるように、構成される。更に、第2のカウンターシャフトギアホイール32は、第1のカウンターシャフトギアホイール31よりも大きい直径を有し、第1の主ギアホイール41は、第2の主ギアホイール42よりも大きい直径を有する。これらの異なる直径は、それぞれのギアホイールの異なる歯数を示す。第2のギア面GP2は、レンジギアRGのより近くに配置された第1のギア面GP1よりも電気機械130,140のより近くに配置される。
【0054】
図3-9は、車両100を始動及び加速させるための第1の実施形態によるトランスミッション120を用いるギアシフトシーケンスにおける動力流れを示す。図示されるように、ギアシフトシーケンスの全体にわたって途切れない動力流れがもたらされる。動力流れは、図においてドット付き矢印として示される。
【0055】
図3では、トランスミッション120は、始動時の配置構成にある。この配置構成では、第1のギア係合装置44a,44bが第1のギア係合装置第2の状態に設定され、第2のギア係合装置45a,45bが第2のギア係合装置中立状態に設定される。カウンターシャフトギア係合装置33は、第2のカウンターシャフトギアホイール32をカウンターシャフト3に共回転可能に接続するように設定される。レンジギアRGは、リングギアホイール53をトランスミッションハウジング6に固定することによって、低レンジギアに設定される。これによって、第1の電気機械130は、第1のギア面GP1、太陽ギアホイール52、及び遊星ギアホイールキャリア51を介して、出力シャフト4に駆動接続される。第2の電気機械140は、カウンターシャフト3及び第1のギア面GP1を介して出力シャフト4に駆動接続される。従って、電気機械130,140の両方を用いて車両100を低速で推進することが可能である。この場合、電気機械130,140のそれぞれからのトルク伝達に種々のギア噛合が用いられ、これがギア噛合負荷の低減に役立つこととなる。
【0056】
車速を増大させる時、第2のギア係合装置45a,45bを第2のギア係合装置中立状態に維持しながら、カウンターシャフトギア係合装置33を離脱させるとよい。これによって、第2の電気機械140から出力シャフト4へのトルク伝達が一時的に遮断される。レンジギアRGは、依然として低レンジギアに設定されており、第1のギア係合装置44a,44bも第1のギア係合装置第2状態に維持されている。ここで、第1の電気機械130によってのみ車両100をゆっくりと駆動しながら、第2のギア係合装置45a,45bを第2のギア係合装置第1の状態にシフトする。
【0057】
図4では、第2のギア係合装置45a,45bは、第2のギア係合装置第1の状態にシフトされており、第1のギア係合装置44a,44bは、第1のギア係合装置第2の状態に維持されている。カウンターシャフトギア係合装置33は、離脱されており、レンジギアRGは、低レンジギアに設定されている。これによって、第2の電気機械140からのトルクは、ドット付き矢印によって示されるように、第2の主ギアホイール42及び主シャフト43を介してレンジギアRGに伝達される。この構成では、トルクは、カウンターシャフト3を介して伝達されない。
【0058】
車速を更に増大させる時、第1のギア係合装置44a,44bを第1のギア係合装置中立状態にシフトし、第1の電気機械130からのトルク伝達を遮断し、第2の電気機械140によって車両を駆動しながら、カウンターシャフトギア係合装置33をシフトし、第2のカウンターシャフトギアホイール32をカウンターシャフト3に共回転可能に接続する。
【0059】
図5は、第2のカウンターシャフトギアホイール32がカウンターシャフトギア係合装置33によってカウンターシャフト3に共回転可能に接続された配置構成にあるトランスミッションを示す。この配置構成では、第1のギア係合装置44a,44bが第1のギア係合装置中立状態に設定され、第2のギア係合装置45a,45bが第2のギア係合装置第1の状態に設定され、レンジギアRGが低レンジギアに設定されている。動力は、第1のギア面GP1及び第2のギア面GP2の両方を用いて、カウンターシャフト3を介する曲がりくねった動力流れに沿って第1の電気機械130から出力シャフト4に伝達される。第2の電気機械140からの動力は、第2のギア面GP2を介して主シャフト43に伝達され、これによって、レンジギアRGに伝達される。
【0060】
車速を更に増大させる時、カウンターシャフトギア係合装置33を再び離脱させ、第1の電気機械130と出力シャフト4との間のトルク伝達を遮断し、その間、車両100を第2の電気機械140を用いて駆動する。その後、図6に示されるように、第2のギア係合装置45a,45bを第2のギア係合装置第1の状態に維持しながら、第1のギア係合装置44a,44bを第1のギア係合装置第1の状態にシフトする。カウンターシャフトギア係合装置33は、離脱されており、レンジギアRGは、低レンジギアに設定されている。この場合、動力は、カウンターシャフト3を経由することなく、第1の電気機械130から第1のギア面GP1を介して直接遊星ギアホイールキャリア51を経て出力シャフト4に伝達される。第2の電気機械140からの動力は、カウンターシャフト3を経由することなく、第2のギア面GP2を介して主シャフト43に伝達され、これによって、太陽ギアホイール52に伝達される。
【0061】
車速を更に増大させるには、高レンジギアへのシフトが望ましい。第1の電気機械130からの動力が遊星ギアホイールキャリアを介して出力シャフト4に伝達される状態において、第2のギア係合装置45a,45bを第2のギア係合装置中立状態にシフトすることによって、第2の電気機械140から太陽ギアホイール52を介するトルク伝達を遮断する。その後、リングギアホイール53をトランスミッションハウジング6から離脱させ、遊星ギアホイールキャリア51に共回転可能に接続する。その間、カウンターシャフトギア係合装置33は、離脱された状態で維持される。その後、カウンターシャフトギア係合装置33を係合させ、これによって、図7に示されるように、第2の電気機械140からカウンターシャフト3を介する動力流れが可能になる。
【0062】
更に高いギア比にシフトするために、カウンターシャフトギア装置33を再び離脱させ、第2の電気機械140からの動力流れを遮断し、第1の電気機械130のみを用いて車両100を駆動する。その後、第2のギア係合装置45a,45bを第2のギア係合装置第2の状態にシフトし、これによって、第2の電気機械140からのトルクを第2の主ギアホイール42から(スリーブ部材45aによって第2の主ギアホイール42に共回転可能に接続された)出力シャフト4に伝達させる。従って、この配置構成では、太陽ギアホイール52及びカウンターシャフト3は、トルク伝達に用いられない。この配置構成は、図8に示される。
【0063】
車速を更に増大させるために、第1のギア係合装置44a,44bを第1のギア係合装置中立状態にシフトし、第1の電気機械130から出力シャフト4へのトルク伝達を遮断する。第2の電気機械140のみを用いて車両100を駆動しながら、カウンターシャフトギア係合装置33を再び係合させる。この場合、図9に示されるように電気機械130,140の両方を再び用いて、車両100を推進することができる。電気機械130,140の両方からの動力は、第2のギア面GP2のスリーブ部材45aを介して出力シャフト4に伝達される。
【0064】
図10に示されるように、PTO操作モードにおいて、第2の電気機械140を車両100の推進のために用いながら第1の電気機械130からの動力を用いてPTO装置190を駆動させるために、トランスミッション120が用いられてもよい。ここでは、レンジギアRGを低レンジギアに設定し、第1のギア係合装置44a,44bを第1のギア係合装置中立状態に設定し、第2のギア係合装置45a,45bを第2のギア係合装置第1の状態に設定し、カウンターシャフトギア係合装置33を離脱させる。クラッチ60をPTO装置に係合し、これによって、PTO装置が、(第1のギア面GP1のギアホイールを介して第1の電気機械130によって駆動される)カウンターシャフト3によって駆動される。パワートレイン110のどの部分も、この操作モードでは、第1及び第2のパワーユニット130,140の両方に駆動接続されない。また、第1及び第2のギア係合装置44a,44b,45a,45bの両方をそれらの中立状態に設定し、カウンターシャフトギア係合装置33及びクラッチ60を係合させることによって、PTO装置190を車速と無関係に駆動することが可能である。この場合、パワーユニット130,140のいずれも車両の推進のために用いることができない。勿論、他の操作モード、すなわち、電気機械130,140のいずれか1つからのトルクを出力シャフト4に伝達するためにカウンターシャフト3を用いる操作モードにおいて、クラッチ60を係合することによってPTO装置190を駆動することも可能である。このような場合、PTO装置190は、車速から独立して駆動されない。
【0065】
第2の実施形態によるトランスミッション120が、図11に示される。トランスミッション120は、第2のギア面GP2に配置された第1の入力シャフト第2のギアホイール12及びスリーブ部材から構成される第3のギア係合装置13を備える点においてのみ、第1の実施形態と異なる。第1の入力シャフト第2のギアホイール12は、第1の入力シャフト1に回転可能に配置され、第3のギア係合装置13は、第3のギア係合装置13が係合した状態において第1の入力シャフト第2のギアホイール12を第1の入力シャフト1に選択的に共回転可能に接続するために配置される。第1の入力シャフト第2のギアホイール12は、ここでは、第2の主ギアホイール42と噛合って配置される。図11には、図9に示される配置構成と同じように車両100が高速で駆動される時のこの第1の入力シャフト第2のギアホイール12を用いるトルク伝達が示される。図9に示される構成と図11に示される構成との違いは、図9では、カウンターシャフトギア係合装置33が係合されて曲がりくねった動力流れを可能にする一方、図11では、カウンターシャフトギア係合装置33が離脱され、第3のギア係合装置13が係合される点にある。第3のギア係合装置13の係合によって、カンターシャフト3を用いることなく、第1の電気機械130から第2のギア面GP2を介して出力シャフト4に向かう動力流れが可能になる。
【0066】
いくつかの実施形態では、第3のギア係合装置13及びカウンターシャフトギア係合装置33を作動させるための共通のアクチュエータ(図示せず)を設けることができる。この場合、トランスミッション120は、カウンターシャフトギア係合装置が離脱された時に第3のギア係合装置13が係合されるように、又はその逆となるように構成される。カウンターシャフトギア係合装置33及び第3のギア係合装置13が離脱される中立位置も設けられるべきである。
【0067】
図12は、第3の実施形態によるトランスミッション120を示す。トランスミッション120は、第2のギア面GP2の配置構成において第1の実施形態と異なる。第2のギア係合装置45は、ここでは、単一スリーブ部材をから構成され、第2のギア係合装置45は、2つの状態、すなわち、第2の主ギアホイール42を主シャフト43に共回転可能に接続する第2のギア係合装置第1の状態及び第2のギア係合装置中立状態の1つにのみ選択的に設定可能である。従って、第2のギア係合装置45は、この実施形態では、第2のギアホイール42を出力シャフト4に共回転可能に接続するために用いることができない。
【0068】
図13は、第4の実施形態によるトランスミッション120を示す。トランスミッション120は、中空主シャフト43に代わって中実主シャフト43’が用いられるという点において、第3の実施形態と異なる。主シャフト43’及び出力シャフト4は、共通の長軸Aに沿って一列に並び、レンジギアRGは、2つのシャフト43’,4に接続される。第2の主ギアホイール42は、ここでは、主シャフト43’に回転可能に配置され、軸受が第2の主ギアホイール42と主シャフト43’との間及び第1の主ギアホイール41と主シャフト43’との間に設けられる。第3の実施形態と同様、第2のギア係合装置45は、単一のスリーブ部材から構成され、第2のギア係合装置45は、第2のギア係合装置第1の状態及び第2のギア係合装置中立状態の1つにのみ選択的に設定可能である。図13に示されるギア構成では、第2のギア係合装置45は、第2のギア係合装置第1の状態に設定され、第1のギア係合装置44a,44bは、第1のギア係合装置第1の状態に設定される。カウンターシャフトギア係合装置33が離脱され、これによって、カウンターシャフト3を介するトルク伝達がない。レンジギアRGは、高レンジギアに設定される。第1及び第2の電気機械130,140から出力シャフト4への動力が、ドット付き矢印によって示される。
【0069】
図示されないが、全ての実施形態において、補助ブレーキトルクを更にもたらすために、補助ブレーキが出力シャフト4に接続されてもよい。
【0070】
例えば、第1の実施形態の図10に示されるPTO操作モードにおいてパワートレイン110を制御するための方法は、以下のステップを含むとよい。
【0071】
S1:第1のギア係合装置44a,44bを第1のギア係合装置中立状態に制御し、第2のギア係合装置45a,45bを第2のギア係合装置第1の状態又は第2のギア係合装置第2の状態に制御し、カウンターシャフトギア係合装置33を離脱状態に制御し、クラッチ60を係合状態に制御し、これによって、トランスミッション120のPTO操作モードを得る。
【0072】
S2:第1のパワーユニット130を動力取出し装置190を駆動するために必要な第1の回転速度又は第1のトルクに制御する。
【0073】
S3:第2のパワーユニット140をプロペラシャフト160を駆動するために必要な 第2の回転速度又は第2のトルクに制御する。
【0074】
パワートレイン110を制御するために及び本方法を実行するために、電子パワートレイン制御装置(図示せず)が設けられるとよい。パワートレイン制御装置は、この目的のために、第1のパワーユニット130を制御するための手段と、第2のパワーユニット140を制御するための手段と、少なくともギア係合装置44a,44b,45a,45b,33及びクラッチ60を備えるトランスミッション120を制御するための手段とを備えるとよい。パワートレイン制御装置は、プロペラシャフト160を駆動するのに必要な第1のトルク要求及びPTO装置190を駆動するのに必要な第2のトルク要求に応じて、パワーユニット130,140及びトランスミッション120を制御するように構成されるとよい。
【0075】
パワートレイン制御装置は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラム化可能なデジタル信号プロセッサ、又は他のプログラム化可能な装置を備えるとよい。従って、パワートレイン制御装置は、電子回路及び配線(図示せず)並びに処理回路(図示せず)を備え、これによって、車両100の種々の部品又は車両100の種々の制御ユニット、例えば、種々のセンサ、システム、及び制御ユニット、特に、車両100内の電気システム又はサブシステムを制御する1つ又は複数の電子制御ユニット(ECU)、例えば、車両100の電気エネルギー貯蔵システム(図示せず)のエネルギー貯蔵システム制御ユニットと通信することができる。パワートレイン制御装置は、ハードウエア又はソフトウエア又は部分的にハードウエア又はソフトウエアのいずれかの形態にあるモジュールを備え、既知の伝送バス、例えば、CANバス及び/又は無線機能を用いて通信してもよい。処理回路は、汎用プロセッサであってもよいし、又は特定プロセッサであってもよい。パワートレイン制御装置は、コンピュータプログラムコード及びデータを記憶するための不揮発性メモリを備えてもよい。従って、当業者は、パワートレイン制御装置が多くの異なる構成によって実施可能であることを認識するだろう。パワートレイン制御装置は、ここでは、単一ユニットとして説明されるが、互いに通信するように構成されたいくつかの異なる制御ユニット、例えば、パワーユニット130,140を制御するための及びトランスミッション120を制御するための個別の制御ユニットから形成されてもよい。
【0076】
本発明は、図面に基づき前述した実施形態に制限されないことを理解されたい。むしろ、当業者であれば、多くの変更及び修正が添付の請求項の範囲内においてなされ得ることを認識するだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【外国語明細書】