(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082699
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】両面冷却パッケージの封入プロセス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
H01L21/56 T
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022192899
(22)【出願日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】17/540,322
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504133796
【氏名又は名称】エーエスエムピーティー・シンガポール・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】テン・ホック・クア
(72)【発明者】
【氏名】イ・リン
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィンドラ・ラガヴェンドラ
(72)【発明者】
【氏名】カー・ウェン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】アンヘリート・バローゾ・ペレス
【テーマコード(参考)】
5F061
【Fターム(参考)】
5F061AA01
5F061BA03
5F061CA21
5F061DA01
5F061DA11
5F061EA01
(57)【要約】
【課題】両面冷却パッケージの封入プロセスを提供すること。
【解決手段】1つ以上の電子デバイスに接触する少なくとも1つの冷却プレートを含む、基板上に取り付けられた1つ以上の電子デバイスが封入される。基板は、1つ以上の電子デバイスを成形するための成形キャビティを画定する第1のモールド半部と第2のモールド半部との間にクランピングされる。第1のモールド半部内に可動的に配置されたキャビティインサートは、少なくとも1つの冷却プレートに接触しそれに封止圧力を加えるために、キャビティ内へと突出される。キャビティ内に成形コンパウンドを第1の充填圧力で導入した後、キャビティ内の成形コンパウンドは、第1の充填圧力よりも高い第2の充填圧力を加えることによってパッキングされる。この時間の間、封止圧力は、第1の充填圧力および第2の充填圧力よりも高い値に維持される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の電子デバイスに接触する少なくとも1つの冷却プレートを含む、基板上に取り付けられた前記1つ以上の電子デバイスを封入する方法であって、
前記1つ以上の電子デバイスを成形するための成形キャビティを画定する第1のモールド半部と第2のモールド半部との間に前記基板を配置するステップと、
前記第1のモールド半部と前記第2のモールド半部との間に前記基板をクランピングするステップと、
前記少なくとも1つの冷却プレートに接触しそれに封止圧力を加えるために、前記第1のモールド半部内に可動的に配置されたキャビティインサートを前記キャビティ内へと突出させるステップと、
前記キャビティ内に成形コンパウンドを第1の充填圧力で導入するステップと、
その後に、
前記第1の充填圧力よりも高い第2の充填圧力を加えることによって、前記キャビティ内に前記成形コンパウンドをパッキングするステップと、
を含み、
前記封止圧力が、前記成形コンパウンドの導入およびパッキングのそれぞれの間、前記第1の充填圧力および前記第2の充填圧力よりも高い値に維持される、
方法。
【請求項2】
第1の冷却プレートが、前記基板の第1の面上に配置され、第2の冷却プレートが、前記基板の前記第1の面の反対の第2の面上に配置され、
第1のキャビティインサートが、前記第1のモールド半部内に可動的に配置され、第2のキャビティインサートが、前記第2のモールド半部内に可動的に配置され、
前記第1および第2の冷却プレートそれぞれに封止圧力を加えるために、前記第1および第2のキャビティインサートを前記キャビティ内へと突出させるステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のモールド半部と前記少なくとも1つの冷却プレートを隔てる柔軟な保護フィルムを含み、前記柔軟な保護フィルムが、前記キャビティインサートが封止圧力を前記少なくとも1つの冷却プレートの表面に加えるとき、前記少なくとも1つの冷却プレートの前記表面上に封止構成を形成するように前記冷却プレートに接触するように働く、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キャビティ内に前記成形コンパウンドを導入するときに第1の封止圧力を及ぼすステップと、前記キャビティ内に前記成形コンパウンドをパッキングするときに第2の封止圧力を及ぼすステップと、を含み、前記第1の封止圧力が前記第2の封止圧力を下回る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記キャビティ内に前記成形コンパウンドをパッキングするとき、常に前記封止圧力を前記第2の充填圧力よりも高い値に維持するように、前記封止圧力を着実に増加させつつ、前記第2の充填圧力を着実に増加させるステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの冷却プレートにおいて第3の充填圧力よりも高い第3の封止圧力を維持しつつ、前記成形コンパウンドのパッキング後に前記成形コンパウンドが前記第3の充填圧力において加熱されている間に、前記成形コンパウンドを硬化させるステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の封止圧力が、前記キャビティへの前記成形コンパウンドの導入のとき、第1の一定値に維持され、前記第3の封止圧力が、前記成形コンパウンドが硬化されるとき、第2の一定値に維持され、前記第2の一定値が、前記第1の一定値よりも高い、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記封止圧力を加えるステップが、前記キャビティインサートが前記少なくとも1つの冷却プレートに接触しそれに前記封止圧力を加えるように、前記キャビティインサートへの空気圧を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記空気圧が、前記成形コンパウンドの導入およびパッキングのそれぞれの間、前記第1の充填圧力および前記第2の充填圧力よりも高い値に維持される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記空気圧が、前記キャビティインサートと空気圧チャンバとを隔てる隔壁上に空気圧を及ぼす前記空気圧チャンバによって生成される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記キャビティインサートが、キャビティブロック上に配置され、前記キャビティインサートが、キャビティバックプレート内に形成された貫通孔に挿入可能である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記キャビティインサートを囲繞する弾性シールを含み、前記弾性シールが、前記弾性シールを囲繞する傾斜面を有する内側ウェッジリングに対して載置されるように位置決めされ、前記内側ウェッジリングが、前記内側ウェッジリングを囲繞する外側ウェッジリングの傾斜面に対して摺動可能である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記シール、前記内側ウェッジリング、および前記外側ウェッジリングが、エアバッグブロックの溝内に収容される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記空気圧が前記キャビティインサートに加えられると、前記弾性シールが、前記空気圧によって前記内側ウェッジリングに対して押し付けられ、それによって前記内側ウェッジリングの前記傾斜面が、前記外側ウェッジリングの前記傾斜面に対して摺動する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記外側ウェッジリングに対する前記内側ウェッジリングの前記摺動によって、前記弾性シールと外部環境との間に存在する押出しギャップが閉じられ、それによって前記押出しギャップを通って前記外部環境へとガスが漏れることが防止される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1つ以上の電子デバイスに接触する少なくとも1つの冷却プレートを含む、基板上に取り付けられた前記1つ以上の電子デバイスを含む電子パッケージを製造する方法であって、
前記1つ以上の電子デバイスを成形するための成形キャビティを画定する第1のモールド半部と第2のモールド半部との間に前記基板を配置するステップと、
前記第1のモールド半部と前記第2のモールド半部との間に前記基板をクランピングするステップと、
前記少なくとも1つの冷却プレートに接触しそれに封止圧力を加えるために、前記第1のモールド半部内に可動的に配置されたキャビティインサートを前記キャビティ内へと突出させるステップと、
成形コンパウンドを第1の充填圧力で前記キャビティに導入することによって前記1つ以上の電子デバイスを封入するステップと、その後に、
前記第1の充填圧力よりも高い第2の充填圧力を加えることによって、前記キャビティ内に前記成形コンパウンドをパッキングするステップと、
を含み、
前記封止圧力が、前記成形コンパウンドの導入およびパッキングのそれぞれの間、前記第1の充填圧力および前記第2の充填圧力よりも高い値に維持される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスの封入に関し、詳細には、電子パッケージの両面における冷却を促進する電子パッケージの封入に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車市場は、近年、好調であり、自動車産業に見られる飛躍的な成長につながっている。その結果、より広範な車両が電化され、それによって、インバータで使用されるパワー半導体モジュールの生産の需要が高まっている。「DSC」と一般的に呼ばれる両面冷却パッケージ(Double-Sided Cooled package)は、より高い出力密度、拡張性およびスペースの有利性による性能の向上を提供する。
【0003】
DSCパッケージは、酸化アルミニウムから作られた直接接合銅(DBC)絶縁セラミック基板を含むことができる。これは大型金属スペーサとして使用され、機械的な支持を提供し、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(「IGBT」)およびダイオードなどの電子部品からのより良好な熱放散を提供する。当業界で既知の1つのそのようなDSCパッケージは、750Vの阻止電圧能力、および800Aの連続コレクタ電流を有する。このDSCパッケージの最高連続接合部温度は、約175℃であり得る。これは、DSCパッケージが従来のシリコーンゲル充填設計を有するのではなく、硬質エポキシ成形コンパウンド(molding compound)を使用し、それがワイヤボンドを含まないという事実のために、可能である。DBC基板などの冷却用ヒートシンクは、そのようなDSCパッケージの両面に配置される。これらの両面ヒートシンクは、DSCパッケージの上面および下面上のピンフィン構造により構成され、それによって、DSCパッケージの熱的性能が大幅に向上する。DSCパッケージは、より良好な熱的性能がより少ないシリコン量で達成され得るので、費用効果の高い解決策である。
【0004】
DSCパッケージは、異なる封入プロセスを用いて成形しなければならない。従来、市場におけるDSCパッケージについては、オーバーモールドプロセスが一般的な封入のアプローチである。このアプローチを用いると、成形中に下部冷却プレートは露出されるが、成形コンパウンドによってDSCパッケージの上部冷却プレートは覆われる。しかし、このアプローチは、前記オーバーモールド後に上部冷却プレートを露出させるために追加の研削および研磨プロセスが必要である。
【0005】
図1は、従来のモールドDSCパッケージ(molded DSC package)100の断面図である。モールドDSCパッケージ100は、成形コンパウンドにより、上部ダイ102と下部ダイ104とを備える成形システムを用いて封入されている。上部ダイ102および下部ダイ104は、協働して、基板106上に取り付けられた電子デバイス108が上部ダイ102と下部ダイ104内に形成されたキャビティ内に配置されるように、基板106をクランピングする。電子デバイス108の上面および下面上にはそれぞれ上部冷却プレート110および下部冷却プレート112がある。各冷却プレート110、112は、DBC絶縁セラミック基板を備えることができる。
【0006】
成形コンパウンド114は、電子デバイス108ならびに上部および下部冷却プレート110、112を封入するために、上部ダイ102および下部ダイ104のキャビティに導入される。
図1は、下部冷却プレート112が下部ダイ104のキャビティ表面と相対的に同一平面であることを示しているが、上部冷却プレート110と上部ダイ102のキャビティ表面との間には空隙があり、したがって、余分な成形コンパウンド114が、上部冷却プレート110と上部ダイ102のキャビティ表面との間に入り込んでしまっている。モールドDSCパッケージ100からの熱を奪う上部冷却プレート110の有効性を確実にするために、上部冷却プレート110の上面上に成形されるそのような余分な成形コンパウンド114は除去しなければならない。
【0007】
図2は、DSCパッケージを製造する従来のプロセスフローを示すフローチャートである。成形プロセス120は、まず、基板106上に電子デバイス108を封入するように実施される。続いて、成形後硬化122が実施され、それによって成形コンパウンド114の十分なセットおよび固化が確実になる。上部冷却プレート110の上面から余分な成形コンパウンド114を除去するために、モールドDSCパッケージ100において上面研削124が実施され、次いで、モールドDSCパッケージ100の表面品質の向上のために上面研磨126が実施されなければならない。
【0008】
下部冷却プレート112の下面上にも余分な成形コンパウンド114がある場合、下面研削128および下面研磨130も必要になる。パッケージングプロセスを完了するために、複数のモールドDSCパッケージ100を含む基板106上に配置された各モールドDSCパッケージ100を、前記モールドDSCパッケージ100のそれぞれをトリミング、形成または個別化132することによって分離しなければならない。
【0009】
上述のオーバーモールドアプローチからのいくつかの欠点に直面する。典型的にはオーバーモールド後に余分なばり(mold flash)が存在し、それが、モールドDSCパッケージ内における亀裂の伝播により信頼性の欠如のリスクの高まりにつながる。上述したような追加の処理によって、結果的に、生産サイクル時間がより長くなり、生産、労働力および機器費用などの費用がより高くなる。さらに、パッケージ厚が、許容できる仕様の範囲を外れる傾向があり、それを再加工するための追加のリソースが必要となる。したがって、品質が不合格になる場合がより多くなるので、歩留まり率が低減する。
【0010】
上述した従来技術の欠点の少なくともいくつかを回避するDSCパッケージの封入プロセスを提供することが有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、DSCパッケージの欠陥のリスクを回避するために、封入プロセスの間における強固なばりのコントロールを確実にする封入プロセスの提供を求めること、および封入プロセス後に引き続き行われる研削および研磨の必要性を取り去ること、によってプロセスフローを簡単にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、1つ以上の電子デバイスに接触する少なくとも1つの冷却プレートを含む、基板上に取り付けられた1つ以上の電子デバイスを封入する方法であって、1つ以上の電子デバイスを成形するための成形キャビティを画定する第1のモールド半部と第2のモールド半部との間に基板を配置するステップと、第1のモールド半部と第2のモールド半部との間に基板をクランピングするステップと、少なくとも1つの冷却プレートに接触しそれに封止圧力を加えるために、第1のモールド半部内に可動的に配置されたキャビティインサートをキャビティ内へと突出させるステップと、キャビティ内に成形コンパウンドを第1の充填圧力で導入するステップと、その後に、第1の充填圧力よりも高い第2の充填圧力を加えることによって、キャビティ内に成形コンパウンドをパッキングする(pack)ステップと、を含み、封止圧力が、成形コンパウンドの導入およびパッキングのそれぞれの間、第1の充填圧力および第2の充填圧力よりも高い値に維持される、方法が提供される。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、1つ以上の電子デバイスに接触する少なくとも1つの冷却プレートを含む、基板上に取り付けられた1つ以上の電子デバイスを含む電子パッケージを製造する方法であって、1つ以上の電子デバイスを成形するための成形キャビティを画定する第1のモールド半部と第2のモールド半部との間に基板を配置するステップと、第1のモールド半部と第2のモールド半部との間に基板をクランピングするステップと、少なくとも1つの冷却プレートに接触しそれに封止圧力を加えるために、第1のモールド半部内に可動的に配置されたキャビティインサートをキャビティ内へと突出させるステップと、成形コンパウンドを第1の充填圧力でキャビティに導入することによって1つ以上の電子デバイスを封入するステップと、その後に、第1の充填圧力よりも高い第2の充填圧力を加えることによって、キャビティ内に成形コンパウンドをパッキングするステップと、を含み、封止圧力が、成形コンパウンドの導入およびパッキングのそれぞれの間、第1の充填圧力および第2の充填圧力よりも高い値に維持される、方法が提供される。
【0014】
本明細書の以下において、本発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を参照することによって本発明をより詳細に述べることが好都合であろう。図面および関連の説明の詳細事項を特許請求の範囲に定義される本発明の広範な識別の一般性を奪うものと理解してはならない。
【0015】
次に、本発明による封入プロセスの例を、添付の図面を参照して述べる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来のモールドDSCパッケージの断面図である。
【
図2】DSCパッケージを製造する従来のプロセスフローを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の好ましい実施形態によるDSCパッケージを封入するための、開位置にある成形装置の断面図である。
【
図4】成形装置が閉位置にある、
図3の成形装置の断面図である。
【
図5】本発明の好ましい実施形態による封入プロセスの様々な段階の間の経時的な圧力のグラフである。
【
図6】成形の間に上部冷却プレートに付勢力を加える上部キャビティインサートの側面図である。
【
図7】上部冷却プレートにおける空気圧とパッキング圧力が及ぼされる領域の平面図である。
【
図8】本発明の好ましい実施形態による成形装置に使用される封止機構の分解図である。
【
図9】空気圧が上部キャビティインサートに加えられるときの封止機構の側面図である。
【
図10】
図8の封止機構によって封止される押出しギャップ(extrusion gap)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図3は、本発明の好ましい実施形態によるDSCパッケージの封入のための、開位置にある成形装置18の断面図である。DSCパッケージは、基板10と、基板10上に取り付けられた1つ以上の電子デバイス12と、基板10の上面に取り付けられた電子デバイス12の上に位置決めされそれと接触する第1のまたは上部冷却プレート14と、基板10の下面に取り付けられた電子デバイス12の下に位置決めされそれと接触する第2のまたは下部冷却プレート16と、を備える。
【0018】
電子デバイス12と上部および下部冷却プレート14、16とを含む基板10は、上部モールド半部または上部ダイ20と下部モールド半部または下部ダイ22とを有する成形装置18内に配置される。上部および下部ダイ20、22は、電子デバイス12を封入するための成形キャビティ23を画定する。上部キャビティインサート26のような第1のキャビティインサートは、上部冷却プレート14に付勢力または封止力を加えるために、上部ダイ20内の中央に位置決めされ可動的に配置される。やはりまた、下部キャビティインサート28のような第2のキャビティインサートは、下部冷却プレート16に対応する付勢力または封止力を加えるために下部ダイ22内の中央に位置決めされ可動的に配置される。上部ダイ20と上部冷却プレート14を隔てる柔軟な保護フィルム24も図示されている。下部ダイ22と下部冷却プレート16も、同様の柔軟な保護フィルムによって隔てられ得る。
【0019】
図4は、成形装置18が閉位置にある、
図3の成形装置18の断面図である。この位置において、基板10は、上部ダイ20と下部ダイ22との間にクランピングされる。上部キャビティインサート26は、上部冷却プレート14に接触しそれに上部付勢力30を加えるために、成形キャビティ内へと突出され、それによって上部キャビティインサート26と上部冷却プレート14との間の空隙が閉じられる。柔軟な保護フィルム24が上部ダイ20と上部冷却プレート14を隔てることに使用される場合、保護フィルム24は、上部付勢力30が上部キャビティインサート26によって加えられるとき、上部冷却プレート14と接触して上部冷却プレート14の上面の周りに封止構成を形成するように働く。
【0020】
それに対応して、下部キャビティインサート28は、下部冷却プレート16と下部ダイ22との間の空隙を閉じるために下部冷却プレート16に接触しそれに下部付勢圧力または付勢力32を加えるために、成形キャビティ23内へと突出される。下部キャビティインサート28は、同様に、下部冷却プレート16に封止圧力を加える。したがって、下部冷却プレート16と下部ダイ22との間の境界には成形コンパウンドもまた流入することができない。
【0021】
上部および下部キャビティインサート26、28がそれぞれ上部および下部付勢力30、32を上部および下部冷却プレート14、16に加えている間、上部および下部ダイ20、22によって作製される成形キャビティ23によって形成されるような、電子デバイス12の周りのスペースまたは空間に成形コンパウンドが導入される。上部付勢力30は、上部キャビティインサート26に作用する空気圧から生成され(
図6参照)、下部付勢力32は、下部キャビティインサート28に同様に作用し得る空気圧から生成される。したがって、電子デバイス12の周りの空間には成形コンパウンドが充填されるが、上部冷却プレート14の上面および下部冷却プレート16の下面は成形コンパウンドで覆われず、したがって、モールドDSCパッケージの熱放散を妨げることがある成形コンパウンドで上部および下部冷却プレート14、16の外面が覆われないことが確実になる。さらに、モールドDSCパッケージの上面および下面の研削および研磨という追加のステップが必要なくなり、コストの節減につながる。
【0022】
図5は、本発明の好ましい実施形態による封入プロセスの様々な段階の間の経時的な圧力のグラフである。圧力-時間グラフ40は、3つの段階、すなわち、成形コンパウンドが最初に成形装置18に導入されるときの第1の段階、成形コンパウンドが成形キャビティ内のスペースを完全に満たすことを確実にするために成形コンパウンド上にパッキング圧力が加えられるときの第2の段階、ならびに、最終的にモールドDSCパッケージを生産するように熱および圧力下で成形コンパウンドが硬化されるときの第3の段階に分割される。封止圧力を示す圧力-時間グラフ40には2本の線が描かれており、それぞれ成形装置18内に同時に及ぼされる空気圧42と充填圧力44に相関する。
【0023】
成形コンパウンドが成形キャビティ23に導入されるときの封入プロセスの第1の段階の間、第1の充填圧力44aが、成形コンパウンドが成形キャビティに導入されるときに成形コンパウンドに加えられ、第1の充填圧力44aは、ほぼ一定の値に維持され得る。この段階では、第1の空気圧42aは、第1の充填圧力44aよりも若干高い値に維持されるように設定される。
図5において、第1の空気圧42aは、やはりまたほぼ一定の第1の一定値で維持されるように、第1の充填圧力44aに対して固定増分に設定される。しかし、第1の空気圧42aは、それが第1の充填圧力44aよりも高い値に一貫して維持される限り、第1の充填圧力44aに対して変化してもよい。
【0024】
第2の段階の開始時点では、成形キャビティは充填されており、より高いパッキング圧力が成形コンパウンドに加えられなければならない。したがって、第2の充填圧力44bは、成形キャビティ23内のスペースまたは空間すべてを満たすように、成形コンパウンドに対してより大きな圧力を加えるように着実に増加される。第2の充填圧力44bが着実に増加される間、第2の空気圧42bも、それが第2の充填圧力44bよりも常に高くなるように、それに対応して着実に増加されるべきである。第2の空気圧42bと第2の充填圧力44bとの差は、一定のままである必要はなく、変化してもよいことを理解されるべきである。したがって、第2の空気圧42bと第2の充填圧力44bとの差は、
図5に示されるように狭くなり始めてもよい。グラフに示されるように、第1の封止圧力または空気圧42aは、第2の封止圧力または空気圧42bを下回る。
【0025】
充填圧力44が所定の最大値に達した後、最大の第3の充填圧力44cが、成形コンパウンドが硬化されるときのプロセスの第3の段階において維持される。それと同時に、成形コンパウンドが硬化され固化されるように、熱が加えられる。第3の段階の間、システムは、冷却プレート14、16上に及ぼされる第3の空気圧42cが第3の充填圧力44cを上回ることを確実にし続ける。この差は、第3の段階の過程で変化してもよく、または一定のままであってもよい。
図5に示されるように、第3の空気圧42cと第3の充填圧力44cとの差は、第3の段階の間中第2の一定値に維持され得、第2の一定値は、第1の一定値よりも高い。成形コンパウンドが硬化されたらDSCパッケージの封入は完了し、成形装置18はモールドDSCパッケージの取り出しのために開けられ得る。
【0026】
図6は、成形中の、DBC基板など、上部冷却プレート14上に付勢力を加える上部キャビティインサート26の側面図である。隔壁(diaphragm)52が、上部キャビティインサート26と空気圧チャンバ50とを隔てていることを見ることができ、空気圧チャンバ50は、上部付勢力30を上部冷却プレート14に加えるように、下向きの空気圧51を隔壁52、したがって上部キャビティインサート26、に及ぼすためのガスを収容する。図面には示されないが、下部キャビティインサート28も、下部キャビティインサート28と下部空気圧チャンバとの間に配置された隔壁を含まなければならず、下部空気圧チャンバは、同様に、上向きの空気圧を隔壁および下部キャビティインサート28に及ぼすためのガスを収容することが理解されよう。
【0027】
上部キャビティインサート26は、上部冷却プレート14と直接接触し、上部冷却プレート14は、基板10上に載るダイオードダイ56およびトランジスタダイ58のような電子デバイスと接触する。さらに、上部冷却プレート14と基板10との間のスペーサとして機能する支柱54がある場合もある。
【0028】
図7は、空気圧およびパッキング圧力がDBCデバイス上に及ぼされる領域の平面図である。封止圧力または空気圧42は、支柱54、ダイオードダイ56およびトランジスタダイ58など、付勢力が上部冷却プレート14によって加えられる領域上に及ぼされることが理解されよう。その一方で、成形コンパウンドが充填される空間62があり、それらは、空間62全部を充填するために、上昇される充填圧力44の形態のパッキング圧力が成形コンパウンドに及ぼされる領域である。
【0029】
図8は、本発明の好ましい実施形態による成形装置において使用される封止機構の分解図である。上部キャビティインサート26は、キャビティブロック70上に配置され、キャビティバックプレート72内に形成された貫通孔に挿入可能である。Oリング78またはシリコンシールの形態であってよい弾性シールは、上部キャビティインサート26を囲繞し、Oリング78を囲繞し傾斜面を有する内側ウェッジリング74に載置されるように位置決めされる。内側ウェッジリング74は、外側ウェッジリング76の傾斜面に対して摺動可能であり、外側ウェッジリングは、内側ウェッジリング74を囲繞する。内側ウェッジリング74と外側ウェッジリング76とは、協働してOリング78の封止効果を高める。Oリング78、内側ウェッジリング74および外側ウェッジリング76は、エアバッグブロック80の溝内に収容される。
【0030】
図9は、空気圧が上部キャビティインサート26に加えられるときの封止機構の側面図である。空気圧が上部キャビティインサート26に及ぼされると、上部キャビティインサート26の方向から発せられる高い空気圧がOリング78を内側ウェッジリング74に対して押し付ける。高い空気圧によってOリング78が押されて内側ウェッジリング74に当接するとき、内側ウェッジリング74の傾斜面は、外側ウェッジリング76の対向する傾斜面を摺動する。
【0031】
図10は、
図8の封止機構によって封止されている押出しギャップの側面図である。内側ウェッジリング74が外側ウェッジリング76に対して上方に摺動すると、内側ウェッジリング74の上部が内側ウェッジリング76とキャビティバックプレート72との間(したがって、Oリング78と外側環境との間)に存在する押出しギャップ82を閉じ、押出しギャップ82を完全に封止する。この封止効果によって、押出しギャップ82を通って外部環境へガスが漏れることが防止され、望ましくないガス漏れによって空気圧42が低減されないことが確実になる。
【0032】
上述したようなDSCパッケージの封入プロセスフローは、成形キャビティ充填プロセスの所定の時点における所定の空気圧42および成形コンパウンド充填圧力44の多数の段階に適用され、それによってモールドフロー(mold flow)と可動キャビティインサート機構の動きとの間のバランスが確実になることを理解されたい。前記プロセスは、強固なばりのコントロールを維持し、DSCパッケージにおける亀裂の伝播のリスクをなくす助けとなる。さらに、プロセスフローは、DSCパッケージの封入の後にさらなる研削および研磨のプロセスの必要がないので単純になる。
【0033】
本明細書に記載の本発明は、具体的に記載されたもの以外の変形、修正および/または追加の余地があり、本発明は、それらすべての変更、修正および/または追加を含み、それらは、上述の趣旨および範囲内に入ることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0034】
10 基板
12 電子デバイス
14 上部冷却プレート
16 下部冷却プレート
18 成形装置
20 上部ダイ
22 下部ダイ
23 成形キャビティ
24 保護フィルム
26 上部キャビティインサート
28 下部キャビティインサート
30 上部付勢力
32 下部付勢力
40 圧力-時間グラフ
42 空気圧
42a 第1の空気圧
42b 第2の空気圧
42c 第3の空気圧
44 充填圧力
44a 第1の充填圧力
44b 第2の充填圧力
44c 第3の充填圧力
50 空気圧チャンバ
51 下向きの空気圧
52 隔壁
54 支柱
56 ダイオードダイ
58 トランジスタダイ
62 空間
70 キャビティブロック
72 キャビティバックプレート
74 内側ウェッジリング
76 外側ウェッジリング
78 Oリング
80 エアバッグブロック
82 押出しギャップ
【外国語明細書】