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特開2023-827配管漏洩試験の圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法
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  • 特開-配管漏洩試験の圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法 図1
  • 特開-配管漏洩試験の圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法 図2
  • 特開-配管漏洩試験の圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法 図3
  • 特開-配管漏洩試験の圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000827
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】配管漏洩試験の圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/124 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
F16L55/124
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101862
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】南波 孝則
(72)【発明者】
【氏名】相馬 昂平
【テーマコード(参考)】
3H025
【Fターム(参考)】
3H025DA02
3H025DB17
(57)【要約】
【課題】配管に無理な外力を加えることなく、試験対象配管と非試験対象配管の縁切りないし復旧に伴う作業を容易に行なうことが可能な配管漏洩試験の圧力保持器具を提供する。
【解決手段】施工した配管P1(試験対象配管),P2(非試験対象配管)間のパッキンPKに差し換えて、配管P1,P2を仮留めした状態で挿入した保持器具本体11に、圧縮空気注入用冶具13を介し圧縮空気CAを注入、充填することで、保持器具本体11の袋状部11Qを球状に膨張させると共にその表面を配管P1,P2それぞれの口径が向き合う隅角部ないし内壁に密着させ配管P1とP2とを縁切りする。配管P1に試験気体RTを充填しその漏洩が無いかを確認した後、保持器具本体11に充填された圧縮空気CAを排出して袋状部11Qの膨張を解いた後、保持器具本体11に差し換えてパッキンPKを挿入し、フランジF1,F2を締め付けて配管P1,P2を接続した状態に復旧させる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配管のフランジと第2配管のフランジとの間に挿し込まれて使用され、前記第1および第2配管の口径を上回る直径の弾性の袋状部を有し、外部から圧力を掛けた流体を充填することで前記袋状部が球状に膨張して前記第1配管と第2配管とを縁切りする保持器具本体を備えた配管漏洩試験の圧力保持器具。
【請求項2】
前記保持器具本体は、前記第1配管のフランジと第2配管のフランジとの間に挟み込まれたパッキンと差し換えられて使用され、前記袋状部が膨張していない平時は平板状であって、当該平時の厚さは前記パッキンの厚さよりも薄く構成される、
請求項1に記載の圧力保持器具。
【請求項3】
前記保持器具本体は、前記袋状部の周縁の一部に外向きに連続して一体形成される前記流体の導入部を有する、
請求項2に記載の圧力保持器具。
【請求項4】
前記保持器具本体の袋状部の周縁に対応する内径と、前記フランジの複数のボルト取り付け孔に囲まれる円形の範囲の直径に対応する外径とを有し、前記袋状部から一体形成された前記導入部に対応する切り欠き部を有するC字状に構成され、当該C字状の内周縁と切り欠き部に沿わせて前記袋状部と導入部とを嵌め込んで支持する保持器具補助具を備えた、
請求項3に記載の圧力保持器具。
【請求項5】
前記保持器具補助具の前記C字状を正面とする側面の厚さは、前記パッキンの厚さ以下またはそれよりも薄く且つ前記保持器具本体の厚さより厚く構成される、
請求項4に記載の圧力保持器具。
【請求項6】
前記保持器具本体の袋状部に充填する流体の圧力は、配管漏洩試験の際に前記第1配管または前記第2配管に充填される試験流体の圧力よりも大きく設定される、
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の圧力保持器具。
【請求項7】
第1配管のフランジと第2配管のフランジとの間に挿し込まれて使用され、前記第1および第2配管の口径を上回る直径の弾性の袋状部を有し、外部から圧力を掛けた流体を充填することで前記袋状部が球状に膨張して前記第1配管と第2配管とを縁切りする保持器具本体と、
前記保持器具本体の袋状部に接続され、当該袋状部に圧縮された流体を注入するための流体吐出部と、前記袋状部に注入した流体の逆流を防止する逆流防止部と、前記袋状部に注入した流体の圧力を測定して表示する圧力計とを有する流体注入用冶具と、
を備えた配管漏洩試験の圧力保持装置。
【請求項8】
接続される第1および第2配管の口径を上回る直径の弾性の袋状部を有し、外部から圧力を掛けた流体を充填することで前記袋状部が球状に膨張する保持器具本体を、前記袋状部を膨張させていない状態で前記第1配管のフランジと前記第2配管のフランジとの間に挿し込み、前記袋状部を膨張させて前記第1配管と第2配管とを縁切りする配管漏洩試験の圧力保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、配管漏洩試験の圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、上下水道やその設備に関して配管の工事を実施した場合、施工した配管の溶接部や接続部などから液体もしくは気体(流体)の漏れが生じないかを、当該施工した状態において確認し、配管工事の施工品質を担保する必要がある。
【0003】
このため、施工した配管に対しては配管漏洩試験が行われている。配管漏洩試験は、施工した配管(試験対象配管)に窒素ガスなどの試験気体を高圧の試験圧力で充填し、その漏れが無いかを確認するものである。
【0004】
図4は、施工した配管に対する従来の配管漏洩試験の構成を示す側断面図であり、同図(A)は、試験対象配管である配管P1のフランジF1を矢印b方向から見て示す正面図、同図(B)は、配管P1とP2との接続に伴いフランジF1とF2との間に挟み込まれるパッキンPKの平面図、同図(C)は、配管漏洩試験のためにパッキンPKと配管P2のフランジF2との間に挟み込まれて配管P1と配管P2(非試験対象配管)とを縁切りする閉止板DBの平面図である。
【0005】
配管P2(非試験対象配管)は、例えば設備機器に接続されている。パッキンPKは弾性体からなり、閉止板DBは鋼板製である。また、パッキンPKと閉止板DBの厚さは、配管P1,P2の口径により異なるが、ここでは例えば、パッキンPKの厚さ3mm、閉止板DBの厚さ1mm~3mmとして説明する。
【0006】
配管漏洩試験を行なう場合、
(作業1)施工した配管P1,P2のフランジF1とF2とを複数箇所で締め付けているボルトBとナットNを外したり緩めたりすると共に、配管P1とP2の位置を調整してパッキンPKとフランジF2との間に隙間を作り、
(作業2)作った隙間に閉止板DBを挿入すると共に、ボルトBとナットNによりフランジF1とF2とを再び締め付けてフランジF1~パッキンPK~閉止板DB~フランジF2間を密着させることで配管P1と配管P2(非試験対象配管)とを縁切りし、
(作業3)配管P1(試験対象配管)に試験気体RTを充填して当該試験気体RTに漏れが無いかを確認する。
【0007】
この後、(作業1)と(作業2)の手順を逆に行なうことで、配管漏洩試験は終了し、配管の施工が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-194020号公報
【特許文献2】特開2003-322289号公報
【特許文献3】特開2006-250684号公報
【特許文献4】特開昭61-65991号公報
【特許文献5】実開昭58-184642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、従来の配管漏洩試験では、(作業1)すなわち配管P1とP2の位置を調整してパッキンPKとフランジF2との間に閉止板DBを挿入するための隙間を作る必要があるが、配管P1,P2,…の設備は、各配管Pnの長さとパッキンPKの厚さに基づいて緻密に設計され、振動などの外力に耐え得るように配管サポートなどを使用して強固に固定され施工される。そして配管P1,P2,…の設備の設計には、閉止板DBの厚さは見込んでいない。
【0010】
このため、(作業1)を行なうには、関係する配管Pnに外力を加えて閉止板DBを挿入するための隙間を確保する必要があり、無理な外力が加わると、試験対象配管P1を含む設備の損傷などによる品質トラブルを引き起こす恐れがある。
【0011】
また配管Pnの口径が大きくなればなるほど、その重量も相俟って、数ミリの隙間を確保するのも困難になり、閉止板DBの挿入および取り外し後の復旧に長い作業時間を要する問題がある。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、配管に無理な外力を加えることなく、試験対象配管と非試験対象配管の縁切りないし復旧に伴う作業を容易に行なうことが可能になる配管漏洩試験の圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の配管漏洩試験の圧力保持器具は、第1配管のフランジと第2配管のフランジとの間に挿し込まれて使用され、前記第1および第2配管の口径を上回る直径の弾性の袋状部を有し、外部から圧力を掛けた流体を充填することで前記袋状部が球状に膨張して前記第1配管と第2配管とを縁切りする保持器具本体を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の配管漏洩試験の圧力保持器具10(11,12)、圧力保持装置(10,13)を使用した配管漏洩試験(準備段階)の構成を示す図であり、同図(A)は、試験対象配管である配管P1と非試験対象配管である配管P2との接続部を側面から見て示す部分断面図、同図(B)は、同図(A)のa-a線矢視図。
図2図1の圧力保持器具10(11,12)、圧力保持装置(10,13)を使用した配管漏洩試験(実施段階)の構成を示す部分断面図。
図3図2の配管漏洩試験(実施段階)の構成のうち範囲Dを拡大して示す断面図。
図4】施工した配管に対する従来の配管漏洩試験の構成を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態の配管漏洩試験の圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、実施形態の配管漏洩試験の圧力保持器具10(11,12)、圧力保持装置(10,13)を使用した配管漏洩試験(準備段階)の構成を示す図であり、同図(A)は、試験対象配管である配管P1と非試験対象配管である配管P2との接続部を側面から見て示す部分断面図、同図(B)は、同図(A)のa-a線矢視図である。
【0017】
図2は、図1の圧力保持器具10(11,12)、圧力保持装置(10,13)を使用した配管漏洩試験(実施段階)の構成を示す部分断面図である。
【0018】
図3は、図2の配管漏洩試験(実施段階)の構成のうち範囲Dを拡大して示す断面図である。
【0019】
図1図3において、図4と同じ配管P1,P2の構成に関する部分には同じ符号を付して説明する。
【0020】
圧力保持器具10は、保持器具本体11と保持器具補助具12を含んで構成される。
【0021】
圧力保持装置は、圧力保持器具10と圧縮空気注入用冶具13を含んで構成される。
【0022】
保持器具本体11は、図1に示すように平時は平板状で、図2図3に示すように圧縮空気CAの注入時は膨張して球状になる円形の袋状部11Qを有し、図1(B)に示すように袋状部11Qの直径11Dは、配管P1,P2の口径Pdよりも大きく且つフランジF1,F2の複数(ここでは8つ)のボルト取り付け孔Bに囲まれる円形の範囲の直径Bdよりも小さく構成される。
【0023】
また、保持器具本体11は、袋状部11Qの周縁の一部に外向きに連続して一体形成される、当該袋状部11Qに圧縮空気CAを導入するための導入部11aと、注入部11bと、注入口11cとを有し、図1(A)に示すように当該導入部11a、注入部11b、注入口11cを含む保持器具本体11の平時の厚さ11Tは、配管P1とP2との接続に伴いフランジF1とF2との間に挟み込まれて使用されるパッキンPK(図4参照)の厚さよりも薄く構成される。
【0024】
保持器具本体11は、少なくともその袋状部11Qが球状に膨張して変形しまた平板状に戻る伸縮機能と、高圧の試験気体RTに対しその表皮が変形しない耐圧機能とを併せ持つ弾性素材(天然ゴム(NR)など)により構成する。
【0025】
保持器具補助具12は、図1(B)に示すように保持器具本体11の袋状部11Qの周縁に対応する内径(11D)と、フランジF1,F2の複数(ここでは8つ)のボルト取り付け孔Bhに囲まれる円形の範囲の直径に対応する外径(Bd)とを有し、袋状部11Qから外向きに一体形成された導入部11aの幅11Wに対応する切り欠き部12aを有する平面C字のリング状の平板により構成される。
【0026】
保持器具補助具12は、そのC字状の内周縁と切り欠き部12aに沿わせて保持器具本体11の袋状部11Qと導入部11aとを嵌め込んで支持する機能を持ち、図1(A)に示すようにその厚さ12Tは、配管P1とP2との接続、施工に伴いフランジF1とF2との間に挟み込まれて使用されるパッキンPK(図4参照)の厚さ以下またはそれよりも薄く且つ保持器具本体11の厚さ11Tよりも厚く構成される。
【0027】
保持器具補助具12は、弾性のある保持器具本体11を、その内側に嵌め込んで支持しつつ、パッキンPK(図4参照)と挿し換えてフランジF1とF2との間に配置させるための機能と、フランジF1とF2とをボルトBとナットNにより仮留め(配管P1とP2とを仮接続)して保持器具本体11に圧縮空気CAを注入する際に、当該フランジF1とF2との間に導入部11aの膨らみを阻害しない隙間を確保するための機能とを併せ持つ硬質素材(「テフロン(登録商標)素材」「鋼板」など)により構成する。
【0028】
なお、保持器具本体11と保持器具補助具12とは素材は異なるが、パッキンPK(図4参照)との挿し換えを含む配管漏洩試験の全般の作業性を考慮し、別体ではなく一体化して構成してもよい。
【0029】
圧縮空気注入用冶具13は、圧縮空気CAの発生原である図示しない外部のコンプレッサまたは圧縮ボンベを接続するプラグ(圧縮空気接続部)13aと、保持器具本体11に注入した圧縮空気CAの逆流を防止するバルブ(逆流防止部)13bと、バルブ13bを介して流入する圧縮空気CAを保持器具本体11の注入口11cへ吐出するノズル(圧縮空気吐出部)13dと、バルブ13bとノズル13dとの間を接続するレデューサ(異径継手)13cと、ノズル13dに接続した注入口11cとの接続状態を維持するホースバンド(注入口接続部材)13eと、保持器具本体11に注入しその袋状部11Qに充填した圧縮空気CAの空気圧を測定して表示する圧力計13mとを備えて構成される。
【0030】
次に、このように構成された圧力保持器具10(11,12)、圧力保持装置(10,13)を使用して配管漏洩試験を実施する作業手順について説明する。
【0031】
(手順1)
図1図3で示したように、施工した配管P1,P2を接続している各ボルトBとナットN(ここでは8組)の締め付けを緩めると共に、そのうち例えば配管P1,P2の側面の任意の一方(ここでは図示上方)に面した半数(ここでは4組)のボルトBとナットNを取り外す。そこからフランジF1とF2との間に挟み込まれているパッキンPK(図4参照)を抜き取り、代わりに圧力保持器具10を、その保持器具補助具12のC字状の円弧部を先頭にしてフランジF1とF2との間に挿入する。
【0032】
この際、保持器具補助具12の厚さ12Tは、パッキンPK(図4参照)の厚さ以下またはそれよりも薄く構成されており、また、従来の配管漏洩試験のように、配管P1,P2に外力を加えて閉止板DB(図4参照)を挿入するための隙間を確保する必要は無いので、当該配管P1,P2を含む設備に無理な外力が加わって品質トラブルを引き起こす恐れは無く、圧力保持器具10の挿入作業を容易且つ短時間に行なうことができる。
【0033】
また、保持器具補助具12は、図1(B)で示したように、フランジF1,F2の複数(ここでは8つ)のボルト取り付け孔Bに囲まれる円形の範囲の直径に対応する外径(Bd)を有するので、当該保持器具補助具12のC字状の円弧部を、緩めた状態で取り外していないボルトBの軸に接するまで挿し込むことで、必然的に、配管P1,P2の口径Pdに対し同心円に配置され、保持器具本体11の袋状部11Qも同配管P1,P2の口径Pdと同心円に配置させることができる。
【0034】
そして、取り外したボルトBとナットNを含め、各ボルトBとナットNを、フランジF1とF2との間に保持器具補助具12を軽く当接させて挟み込んだ状態で仮留めする。
【0035】
(手順2)
圧力保持器具10の保持器具本体11の注入口11cを、圧縮空気注入用冶具13のノズル13dに接続し、ホースバンド13eにより固定する。
【0036】
(手順3)
圧縮空気注入用冶具13のバルブ13bを開け、図2に示すように外部のコンプレッサまたは圧縮ボンベからプラグ13aを介して流入する圧縮空気CAを、圧力計13mでその空気圧を確認しながら保持器具本体11に注入、充填し、空気圧が予め規定された圧力値まで昇圧したときにバルブ13bを閉める。また圧力計13mにより、保持器具本体11に充填した圧縮空気CAに漏洩が無いかを確認する。
【0037】
この際、保持器具本体11の袋状部11Qは、図2および図3で示すように、圧縮空気CAの充填に伴い球状に膨張し、その表面が、配管P1,P2それぞれの口径が向き合う隅角部ないし内壁に密着することで、当該配管P1(試験対象配管)と配管P2(非試験対象配管)とを縁切りする。
【0038】
(手順4)
配管P1(試験対象配管)に高圧の試験気体RTを充填し、当該試験気体RTの漏洩が無いかを確認する。
【0039】
試験気体RTの圧力値(試験圧力値)は、配管の運用圧力を元に算出され、例えば0.2Mpa~1.0Mpa程度に定められる。
【0040】
ここで、保持器具本体11の袋状部11Qに充填する圧縮空気CAの圧力値(保持器具充填圧力値)と、配管P1(試験対象配管)に充填する試験気体RTの圧力値(試験圧力値)との関係は、以下のように設定する。
(保持器具充填圧力値)>(試験圧力値)
これにより、配管P1(試験対象配管)内に高圧の試験気体RTを充填した状態において、球状に膨張している保持器具本体11の袋状部11Qが変形すること、ならびに試験気体RTを充填した配管P1(試験対象配管)内の容積が変わることを防止し、配管P1(試験対象配管)と配管P2(非試験対象配管)とを縁切りした状態を安定して維持する。
【0041】
(手順5)
圧縮空気注入用冶具13のバルブ13bを徐々に開けて、保持器具本体11に充填されている圧縮空気CAを排出し、袋状部11Qの膨張を解いた後、(手順1)と(手順2)を逆に行なうことで、圧力保持器具10(11,12)および圧縮空気注入用冶具13を撤去すると共に、配管P1のフランジF1と配管P2のフランジF2とをパッキンPK(図4参照)を介して締め付け接続した状態に復旧し、配管漏洩試験を終了する。
【0042】
(実施形態のまとめ)
以上のように、実施形態の配管漏洩試験の圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法によれば、施工した配管P1,P2のパッキンPKに差し換えて、当該配管P1とP2とを仮留めした状態で挿入した保持器具本体11に、圧縮空気注入用冶具13を使用して圧縮空気CAを注入、充填することで、保持器具本体11の袋状部11Qを球状に膨張させると共に、その表面を、配管P1,P2それぞれの口径が向き合う隅角部ないし内壁に密着させ、当該配管P1(試験対象配管)と配管P2(非試験対象配管)とを縁切りする。
【0043】
そして、配管P1(試験対象配管)に試験気体RTを充填しその漏洩が無いかを確認した後は、保持器具本体11に充填された圧縮空気CAを、圧縮空気注入用冶具13を介して排出し、袋状部11Qの膨張を解いた後、保持器具本体11に差し換えて、パッキンPKを挿入し、フランジF1とF2とを締め付けることで、配管P1,P2を接続した状態に復旧させる。
【0044】
よって、配管に無理な外力を加えることなく、試験対象配管と非試験対象配管の縁切りないし復旧に伴う作業を容易且つ短時間に行なうことが可能になる。
【0045】
また、実施形態の配管漏洩試験の圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法によれば、配管P1とP2との間のパッキンPKに差し換えて挿入する保持器具本体11は、当該保持器具本体11の袋状部11Qの周縁に対応する内径(11D)を有し、同保持器具本体11の袋状部11Qから外向きに一体形成された導入部11aの幅11Wに対応する切り欠き部12aを有する平面C字のリング状の平板により構成された、硬質の保持器具補助具12の内側に嵌め込んで挿入する。
【0046】
これにより、保持器具本体11を、より容易且つ簡単に配管P1とP2との間に挿入することができ、試験対象配管と非試験対象配管の縁切りないし復旧に伴う作業を、より容易且つ短時間に行なうことが可能になる。
【0047】
また、実施形態の配管漏洩試験の圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法によれば、保持器具補助具12は、配管P1,P2のフランジF1,F2の複数のボルト取り付け孔Bhに囲まれる円形の範囲の直径に対応する外径(Bd)を有するので、当該保持器具補助具12のC字状の円弧部を、フランジF1,F2を仮留めしたボルトBの軸に接するまで挿し込むことで、必然的に、配管P1,P2の口径Pdに対し同心円に配置させることができ、延いては保持器具本体11の袋状部11Qをも、簡単に同配管P1,P2の口径Pdと同心円に配置させることができる。
【0048】
なお、前記実施形態で説明した圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法では、保持器具本体11に圧力を掛けて充填する流体が圧縮空気CAであり、また、試験対象配管(ここでは配管P1)に圧力を掛けて充填する流体が試験気体RTである場合について説明したが、保持器具本体11に充填する流体および試験対象配管(P1)充填する流体として何れも液体を使用したり、保持器具本体11に充填する流体だけ液体を使用したりしてもよい。液体を使用する場合、気体を使用する場合に較べて、充填する規定の圧力値を低い圧力値に設定できる。
【0049】
また、前記実施形態で説明した圧力保持器具、圧力保持装置および圧力保持方法は、配管P1,P2を接続するフランジF1,F2間に使用してその縁切りを行なう場合の全般に使用可能であるのは勿論である。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10…圧力保持器具、11…保持器具本体、11Q…袋状部、11a…導入部、11b…注入部、11c…注入口、12…保持器具補助具、12a…切り欠き部、13…圧縮空気注入用冶具、13a…プラグ(圧縮空気接続部)、13b…バルブ(逆流防止部)、13c…レデューサ(異径継手)、13d…ノズル(圧縮空気吐出部)、13e…ホースバンド(注入口接続部材)、13m…圧力計、P1…配管(試験対象配管)、P2…配管(非試験対象配管)、F1,F2…フランジ、B…ボルト、N…ナット、CA…圧縮空気(流体)、RT…試験気体(流体)、PK…パッキン。
図1
図2
図3
図4