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特開2023-82712拡散スペックルコントラスト解析を用いた深部組織流量測定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082712
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】拡散スペックルコントラスト解析を用いた深部組織流量測定
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0285 20060101AFI20230607BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
A61B5/0285 H
A61B5/026 120
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023035619
(22)【出願日】2023-03-08
(62)【分割の表示】P 2021011548の分割
【原出願日】2014-01-15
(31)【優先権主張番号】61/830,256
(32)【優先日】2013-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/755,700
(32)【優先日】2013-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520269514
【氏名又は名称】ペドラ、テクノロジー、プライベート、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PEDRA TECHNOLOGY PTE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キジョン、リー
(72)【発明者】
【氏名】レンゼ、ビ
(72)【発明者】
【氏名】ジン、ドン
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AB10
4C017AC28
4C017BC11
4C017BD04
4C017FF05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】患者において血流量を決定するための方法。
【解決手段】血流速度は、空間領域および時間領域における拡散スペックルコントラスト解析を用いて計算することができる。空間領域解析では、マルチピクセルイメージセンサーを使用して、サンプル内の散乱体の運動(例えば、組織サンプル内の赤血球運動)が原因で不鮮明である、コヒーレント光源からの光の拡散によって起こるサンプル中でのスペックルの空間分布を検出することができる。その空間分布の統計解析を用いて、血流量を計算することができる。時間領域解析では、低速カウンターを使用して、散乱体の運動が原因で滑らかになっている、サンプル中の光の拡散によって起こるサンプルにおける光強度の時系列変動を得ることができる。その時系列データの統計解析を用いて、血流量を計算することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において血流量を決定するための方法であって、
前記患者の組織の第1の位置にコヒーレント光を向ける工程;
前記患者の組織の第2の位置を画像化する工程であって、前記コヒーレント光の一部が
、前記患者の組織の下の血流によって散乱され、その結果、その散乱光が前記第2の位置
で少なくとも部分的に検出可能である、工程;および
前記第2の位置の画像に基づいて血流量を計算する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記計算が、スペックルコントラストを計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スペックルコントラストの計算が、強度の標準偏差を前記第2の位置の画像の平均
強度で割ることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記血流が、前記患者の皮膚の表面から少なくとも5mm下にある、請求項1に記載の
方法。
【請求項5】
前記第1の位置および前記第2の位置が、患者の体肢上にある、請求項1に記載の方法
【請求項6】
前記第1の位置および前記第2の位置が、患者の足上にある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の位置の画像化が、CCDカメラで画像を撮影することを含む、請求項1に記
載の方法。
【請求項8】
前記コヒーレント光が、レーザーからの光を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の位置および前記第2の位置が、少なくとも10mm離れている、請求項1に
記載の方法。
【請求項10】
オペレーターに前記血流量を信号通信することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
患者において血流量を決定するための方法であって、
前記患者の皮膚の第1の位置にコヒーレント光を向ける工程;
前記患者の皮膚の第2の位置での光強度の時系列測定値を得る工程であって、前記コヒ
ーレント光の一部が、前記患者の皮膚の下の血流によって散乱され、その結果、その散乱
光が前記第2の位置で少なくとも部分的に検出可能である、工程;および
前記時系列測定値に基づいて血流量を計算する工程
を含む、方法。
【請求項12】
前記計算が、時間的スペックルコントラストを計算することを含む、請求項11に記載
の方法。
【請求項13】
前記時間的スペックルコントラストの計算が、強度の時間標準偏差を前記第2の位置で
の時間平均強度で割ることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記血流が、前記患者の皮膚の表面から少なくとも5mm下にある、請求項11に記載
の方法。
【請求項15】
前記第1の位置および前記第2の位置が、患者の足上にある、請求項11に記載の方法
【請求項16】
前記第1の位置および前記第2の位置が、少なくとも10mm離れている、請求項11
に記載の方法。
【請求項17】
オペレーターに前記血流量を信号通信することをさらに含む、請求項11に記載の方法
【請求項18】
前記信号通信が、血流の聴覚的、視覚的、または触覚的特徴を提供することを含む、請
求項11に記載の方法。
【請求項19】
組織における血流の評価のためのシステムであって、
前記組織に光を照射するように構成されたコヒーレント光源と;
前記組織を通って透過した少なくともある量の光を含む光情報を捕捉するように構成さ
れたマルチピクセルイメージセンサーであって、前記光が、前記血流によって、少なくと
も部分的に、散乱される、マルチピクセルイメージセンサーと;
前記光情報を解析して、前記組織における血流量を決定するように構成されたアナライ
ザーと;
前記アナライザーによって決定された血流量を示す信号を提供するように構成されたフ
ィードバックデバイスと
を含んでなる、システム。
【請求項20】
前記マルチピクセルイメージセンサーが、CCDカメラを含んでなる、請求項19に記
載のシステム。
【請求項21】
前記アナライザーが、強度の空間標準偏差を強度の空間平均値で割ることによって空間
的スペックルコントラストを計算するように構成された、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
実質的にリアルタイムで前記血流量を示す信号を提供するように構成された、請求項1
9に記載のシステム。
【請求項23】
前記アナライザーが、強度の時間標準偏差を強度の時間平均値で割ることによって時間
的スペックルコントラストを計算するように構成された、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本開示は、深部組織流量を測定するためのシステムおよび方法、特に、非侵襲性光学的
アプローチによるものに関する。
【背景技術】
【0002】
拡散相関分光法(DCS)は、深部組織流量を精査するための非侵襲性光学的方法であ
る。DCSの原理は、十分に小さい面積で測定された透過光の強度が、拡散光伝搬の過程
で、主に、散乱体(例えば、赤血球)の運動によって変動するという事実に基づいている
。従って、自己相関関数が、変動する透過光強度から計算される場合、流速が上昇するに
つれて、自己相関の減衰率は比例的に高くなる。
【0003】
深部組織における平均的な微小循環のモニタリングには成功したが、DCSには、いく
つかの欠点があり、欠点としては、高性能なハードウェア要件(例えば、コヒーレンス長
の長いレーザー、光子計数用アバランシフォトダイオード、高速カウンターなど)、非自
明なデータ解析(例えば、高速自己相関計算、最適化によるモデルフィッティングなど)
、低サンプリングレート、およびマルチチャネル測定を困難にする低チャネル数が挙げら
れる。これらの制約は、安定した、リアルタイムの臨床モニタリングデバイスとしてDC
Sを応用するための課題をもたらす。従って、計算の複雑性が低減され、費用が軽減され
た、高サンプリングレート、およびマルチチャネル性能を有する、血液潅流の非侵襲的リ
アルタイム測定のための改良方法が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において開示するのは、患者において血流量を決定するための方法であって、
前記患者の皮膚の第1の位置にコヒーレント光を向ける工程;前記患者の皮膚の第2の位
置を画像化する工程であって、前記コヒーレント光の一部が、前記患者の皮膚の下の血流
によって散乱され、その結果、その散乱光が前記第2の位置で少なくとも部分的に検出可
能である、工程;および前記第2の位置の画像に基づいて血流量を計算する工程を含む、
方法である。
【0005】
いくつかの実施形態では、計算は、スペックルコントラストを計算することを含み得る
。いくつかの実施形態では、スペックルコントラストの計算は、強度の標準偏差を第2の
位置の画像の平均強度で割ることを含む。いくつかの実施形態では、血流は患者の皮膚の
表面から少なくとも5mm下にあり得る。いくつかの実施形態では、第1の位置および第
2の位置は患者の体肢上にあり得る。いくつかの実施形態では、第1の位置および第2の
位置は患者の足上にあり得る。いくつかの実施形態では、第2の位置の画像化はマルチピ
クセルイメージセンサーで画像を撮影することを含み得る。いくつかの実施形態では、コ
ヒーレント光はレーザーからの光を含んでなり得る。いくつかの実施形態では、第1の位
置および第2の位置は少なくとも10mm離れていてよい。いくつかの実施形態では、前
記方法は、オペレーターに血流量を信号通信することをさらに含み得る。
【0006】
また、本明細書において開示するのは、患者において血流量を決定するための方法であ
って、前記患者の皮膚の第1の位置にコヒーレント光を向ける工程;前記患者の皮膚の第
2の位置での光強度の時系列測定値を検出する工程であって、前記コヒーレント光の一部
が、前記患者の皮膚の下の血流によって散乱され、その結果、その散乱光が前記第2の位
置で少なくとも部分的に検出可能である、工程;および前記時系列測定値に基づいて血流
量を計算する工程を含む、方法である。
【0007】
いくつかの実施形態では、計算は、空間的および時間的コントラストを計算することを
含み得る。いくつかの実施形態では、時間的スペックルコントラストの計算は、強度の時
間標準偏差を前記第2の位置での時間平均強度で割ることを含み得る。いくつかの実施形
態では、血流は患者の皮膚の表面から少なくとも5mm下にあり得る。いくつかの実施形
態では、第1の位置および第2の位置は患者の足上にあり得る。いくつかの実施形態では
、第1の位置および第2の位置は10mmまで離れていてよい。いくつかの実施形態では
、第1の位置および第2の位置は少なくとも10mm離れていてよい。いくつかの実施形
態では、前記方法は、オペレーターに血流量を信号通信することをさらに含み得る。いく
つかの実施形態では、信号通信は血流の聴覚的、視覚的、または触覚的特徴を提供するこ
とを含み得る。
【0008】
さらに、本明細書において開示するのは、組織における血流の評価のためのシステムで
あって、前記組織に光を照射するように構成されたコヒーレント光源と;前記組織を通っ
て透過した少なくともある量の光を含む画像を捕捉するように構成されたマルチピクセル
イメージセンサー検出器であって、前記光が、前記血流によって、少なくとも部分的に、
散乱される、マルチピクセルイメージセンサー検出器と;前記画像を解析して、前記組織
における血流量を決定するように構成されたアナライザーと;前記アナライザーによって
決定された血流量を示す信号を提供するように構成されたフィードバックデバイスとを含
んでなる、システムである。
【0009】
いくつかの実施形態では、マルチピクセルイメージセンサーはCCDカメラを含んでな
り得る。いくつかの実施形態では、アナライザーは強度の標準偏差を平均強度で割ること
によって空間的スペックルコントラストを計算するように構成され得る。いくつかの実施
形態では、システムは実質的にリアルタイムで前記血流量を示す信号を提供するように構
成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】混濁媒質のフローを測定するためのシステムのブロック図である。
図2】拡散光の透過および多層組織中での検出についての概略図である
図3A】拡散相関分光(DCS)システムの概略図である。
図3B】拡散スペックルコントラスト解析(diffuse speckle contrast analysis)(DSCA)システムの概略図である。
図4】カフ閉塞プロトコール時の経時的な血流のDCS測定およびDSCA測定についてのグラフである。
図5】空間領域DSCAの概略図である。
図6A】αDの関数としての1/K の数値シミュレーションのグラフである。
図6B】測定した流速に対してプロットした1/K のグラフである。
図6C】3つの光源・検出器間距離についての、流速の関数としての1/K のグラフである。
図6D】様々な光源・検出器間距離についてのフロー感度のグラフである。
図7】ファントムフロー実験の模式図である。
図8】空間領域DSCAを用いて流速を計算するための方法のフローチャートである。
図9】時間領域DSCAを用いて流速を計算するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
過去10年ほどの間に、DCS技術が開発され、バリデートされ、脳、筋肉、および乳
房などの深部組織血管系における血流情報を非侵襲的に精査するために使用されてきた。
いくつかの他の血流測定技術、例えば、陽電子放出型断層撮影法(PET)、単一光子放
出型コンピューター断層撮影法(SPECT)、およびキセノンコンピューター断層撮影
法(XeCT)とは対照的に、DCSでは、非電離放射線を使用し、造影剤を必要としな
い。DCSは、ペースメーカーおよび金属インプラントなどの一般的に使用される医療装
置に干渉しない。従って、DCSは、臨床環境での癌療法モニタリングおよびベッドサイ
ドモニタリングにおいて有望である。
【0012】
しかしながら、従来のDCS解析には、長い積分時間、高コスト、および同時測定の低
チャネル数という欠点がある。これらの制約をもたらす1つの要因は、非常に高感度の光
検出器とその後の自己相関計算への依存である。改良された流量測定システムは、高速時
系列データの自己相関解析に依存する必要のない統計解析を用いて費用効果の高い、リア
ルタイム測定を提供する。この統計解析は、マルチピクセルイメージセンサーを用いて空
間領域において、または低速カウンターを用いて時間領域において実施することができる
。マルチピクセルイメージセンサーはまた、単一または複数のピクセルが個々の検出器と
して作用するように、時間領域解析にも使用することができ、これは、マルチチャネル用
途に特に好適である。様々な実施形態において、このアプローチは、血流量の絶対値、相
対値、その両方を測定するためにも使用することができる。
【0013】
図1は、混濁媒質のフローを測定するためのシステムのブロック図である。サンプル1
02は、その中に不均一なマトリックスを含む。このマトリックス内には、埋め込まれた
フロー層があり、この層には、小粒子207が不規則に移動するランダム配置の微小循環
通路がある。例えば、いくつかの実施形態では、前記サンプルは、末梢細動脈および毛細
血管の複雑なネットワークを有する身体組織であり得る。光源108によって、サンプル
102に光が注入される。検出器110は、微小循環路内で動いている粒子207によっ
て散乱された光を検出することができる。検出器110は、光源からサンプル内へ入り、
そのサンプルを通過して拡散する光を受信するように配置することができる。いくつかの
実施形態では、前記検出器は、シングルモード光ファイバーによってサンプルと接続する
ことができる。いくつかの実施形態では、前記検出器は、サンプルのある領域を画像化す
るために使用される、マルチピクセルイメージセンサー、例えば、CCDカメラであり得
る。他の実施形態では、前記検出器は、光子計数用アバランシフォトダイオード(APD
)または光電子増倍管(PMT)であり得る。粒子はランダム方向に流れるため、光源1
08からの光の散乱は様々であり、検出器110によって強度変動が検出されることにな
る。
【0014】
アナライザー112は、検出器110と接続され、検出器110から信号を受信するよ
うに構成される。時間依存性強度変動は、サンプル102内の粒子207の時間依存性変
位を反映し、それに従って、検出器110からの信号は、サンプル102内の粒子207
の流速を決定するために使用され得る。
【0015】
アナライザー112によって決定された流速または他の特性は、ディスプレイ114に
出力され得る。従って、測定された量は、ディスプレイ114を介してオペレーターに提
供され得る。様々な実施形態において、オペレーターは、臨床医、診断医、外科医、外科
助手、看護師、または他の医療従事者であり得る。いくつかの実施形態では、測定値は、
実質的にリアルタイムでディスプレイ114を介して提供され得る。いくつかの実施形態
では、測定値は、ディスプレイ114を介して、測定から約1秒以内に提供され得る、す
なわち、散乱光が検出器によって検出される約1秒の時間内に、測定値は、ディスプレイ
114を介して提供され得る。様々な実施形態において、測定値は、測定から、約10分
未満で、約5分未満で、約1分未満で、約30秒未満で、約10秒未満で、または約1秒
未満で提供され得る。
【0016】
図2は、拡散光の透過および多層組織中での検出についての概略図である。図示のとお
り、光源202および検出器204はどちらも、組織206の一部に隣接して配置される
。上記のとおり、いくつかの実施形態では、光ファイバーは、光源および検出器の一方ま
たは両方を組織と接続するために使用され得る。組織206は、フローのない上層208
、およびフローのある深層210を含む多層である。複数の光散乱粒子212が、フロー
層210中の毛細血管内を流れ、それらの粒子には、例えば、赤血球が含まれ得る。光2
14が光源202から放射されると、その光は組織206を貫通するように透過する。図
示のとおり、光214の一部は、検出器204に入射するように放散される。光214は
、光源202から検出器204までのほぼ三日月形状の経路をたどり得る。検出器204
によって検出される光214の深達度は、光源・検出器の間の距離に依存する。その距離
が長くなるにつれて、深達度は一般的に高くなる。様々な実施形態において、分離距離は
、約0.5cm~約10cmの間、またはいくつかの実施形態では、約0.75cm~約
5cmの間であり得る。好ましくは、他の実施形態では、分離距離は、約1cm~約3c
mの間であり得る。様々な実施形態において、分離距離は、約10cm未満、約9cm未
満、約8cm未満、約7cm未満、約6cm未満、約5cm未満、約4cm未満、約3c
m未満、約2cm未満、約1cm未満、約0.9cm未満、約0.8cm未満、約0.7
cm未満、約0.5cm未満、約0.4cm未満、約0.3cm未満、約0.2cm未満
、または約0.1cm未満であり得る。深達度は、様々であり得、例えば、いくつかの実
施形態では、センサーの深達度は、約0.5cm~約5cmの間、またはいくつかの実施
形態では、約0.75cm~約3cmの間であり得る。好ましくは、他の実施形態では、
深達度は、約5mm~約1.5cmの間であり得る。当然、様々な層の組織光学的特性も
、光源の強度、波長、または他の特性と同様に、光の深達度と関係している。これらを変
更することによって、解析する体の部位、特定の患者、または他の考慮事項に基づいた測
定深度の調整を可能にすることができる。
【0017】
図3Aは、拡散相関分光(DCS)システム300の概略図である。図示のとおり、レ
ーザー302は、入力光ファイバー304を介してサンプル306中に光を向ける。動い
ている粒子がサンプル内に分布している。入射光308は、粒子の動きによって影響を受
け、サンプル306を通過して拡散し、出力光ファイバー310を介して検出器312に
よって検出される。DCSシステムでは、検出器は、例えば、光子計数用アバランシフォ
トダイオード(APD)または光電子増倍管(PMT)であり得る。アナライザー314
は、検出器312からの信号を受信するように構成される。DCSシステムでは、アナラ
イザー112は、検出器312によって受信された光の時間強度自己相関関数を計算する
自己相関器を含む。自己相関関数は、サンプル304中の小粒子の散乱特性および流動特
性を得るために使用することができる。時間依存性強度変動は、サンプル306の散乱体
の時間依存性変位を反映し、それに従って、自己相関関数を、サンプル306内での流速
を決定するために使用することができる。先に述べたとおり、DCSシステムは、APD
またはPMTなどの正確かつ高速の計数検出器を必要とする。加えて、自己相関関数の計
算は、計算集約的であり、DCSアプローチは、シングルチャネル測定に有利に働く。
【0018】
図3Bは、拡散スペックルコントラスト解析(DSCA)システムの概略図である。例
示するシステム301は、空間領域DSCA(sDSCA)用に構成されている。示すよ
うに、いくつかの構成要素は、図3AのDCSシステムと同様であり、それらの構成要素
には、レーザー302、入力光ファイバー304、その中に動いている粒子を有するサン
プル306、および入力ファイバー304からサンプル306を通過して拡散する光30
8が含まれる。しかしながら、DCSシステムの出力ファイバーおよび検出器に対して、
sDCSAシステム301では、リレー光学系311およびCCDカメラ313を使用す
る。リレー光学系311は、任意選択であり、例えば、1つまたは複数の光ファイバー、
レンズ、ミラー、プリズム、または他の光学素子を含んでなり得る。この構成は、高速検
出器およびカウンターを必要とせず、さらに、DCSアプローチによる単一位置での測定
に対して、CCDがカバーする領域内の多くの検出器位置での同時測定を可能にする。従
って、検出器は、CCDカメラ313を使用することによって非常に単純化される。
【0019】
図3Aに示すように、従来のDCSは、2つの光ファイバー、すなわち、典型的には、
マルチモードファイバーである、光源の光を送る入力ファイバー304と、小さな領域で
透過光の変動を検出するための出力ファイバー310とを利用する。出力ファイバー31
0は、シングルモードファイバーであり、出力ファイバー310のコア径は、関連する変
動信号の検出を確実にするために、スペックルサイズと同程度でなければならない。対照
的に、図3BのDSCAシステムでは、CCD313を検出器として利用する。使用時に
は、最適化された倍率と露光時間でのCCDカメラからの単一の画像は、深部組織の流量
を推定するためにアナライザー315によって処理され得る。下により詳細に記載するよ
うに、sDSCAにおける解析技術は、DCSと著しく異なっており、複数の利点を提供
する。例えば、sDSCAは、計算集約的自己相関計算に依存しないため、データ解析は
非常に単純化される。
【0020】
この単純化された計装およびデータ解析によって、より良好な時間分解能も提供され得
る。画像処理は非常に迅速に行うことができるため、時間分解能は、CCD露光時間およ
びCCD読出し時間によってのみ制限される。図4は、カフ閉塞プロトコールを用いたi
n-vivoでのDSCA測定値と従来のDCS測定値との直接比較を例示している。ど
ちらも、カフ閉塞中の血流量の大幅な減少、およびカフ開放後の反応性充血を含む、生理
学的活性を反映するほぼ同じ傾向を示している。さらに、DSCAでは、DCSより細か
い時間データを収集し、従来のDCSでは不可能な、急速な生理学的変化、例えば、図4
のDSCAによって観察される約0.1Hzの低周波振動、の観察が可能である。いくつ
かの実施形態では、DSCAは、DCSシステムでの約1Hzに対して、約30Hzのサ
ンプリングレートを達成することができる。
【0021】
図5は、空間領域DSCAシステムの概略図である。レーザー501からの光は、入力
光ファイバー505を介してサンプル503中に注入される。レーザーは、長いコヒーレ
ンス長を提供することができる。入射光507は、サンプル503を通過して拡散し、サ
ンプル503の上面で検出可能なスペックルパターンを生み出す。任意選択のリレー光学
系511を使用したCCDカメラ509は、サンプル503上のスペックルパターンの画
像を捕捉する。リレー光学系511は、1つまたは複数の結像レンズ、プリズム、ミラー
、迷光を遮断するためのレンズチューブ、およびCCDカメラ509を用いたサンプル5
03におけるスペックルパターンの画像化を補助するように構成された他の光学素子を含
むことができる。
【0022】
取得されたCCD原画像513の表示は、100×50ピクセル使用の、計算されたK
分布515の表示と一緒に示される。スペックル原画像513は、サンプル表面から最
初に取得される。スペックル原画像は、複数のスペックル画像で平均化することができる
滑らかな強度バックグラウンドによって最初に標準化してよい。スペックルコントラスト
、Kは、多くの検出器またはピクセル間での平均強度に対する標準偏差の比率、K
σ/<I>として定義され、ここで、下付文字は、時間的な変化に対するものとして、
空間的な変化を意味する。量Kは、フィールド自己相関関数g(τ)と次のように関
係している:
【数1】
(式中、Vは、画像全体の強度分散であり、TはCCD露光時間である)。半無限媒質中
での相関拡散方程式の既知の解を用いることによって、流速とKとの形式的な関係を導
出することができる。フローと1/K との関係は、身体組織で見られるフローの範囲
では実質的に線形であることが判明し、図6Aおよび図6Bに例示するように、流速の増
加とともに1/K は増加する。図6Aは、1/K を血流指数(ブラウン運動モデ
ルでのαD)と関連付ける数値シミュレーションを示し、一方、図6Bは、1/K
と流速との関係についての実験結果を示している。図6B図6C、および図6Dに示し
たデータを、図7に示したフローファントムにおいて測定した。図7に示したとおり、フ
ァントム702は、上面から下に1cm~3.5cmの間にある流路704を含む。複数
のガラスビーズ706が流路内に配置されている。イントラリピッド輸液708は、蠕動
モーター710を介して流路704を通って運ばれる。流路704内のガラスビーズ70
6間の間隙空間は、組織内の微小循環流路をシミュレーションし、これらの間隙内のイン
トラリピッド輸液708の移動は、細動脈または毛細血管の血流をシミュレーションして
いる。マルチモードファイバー712は、光をファントム702内に送り、シングルモー
ドファイバー714は、ガラスビーズ706によって散乱された光を検出する。
【0023】
図6Cは、フローファントムを測定した場合の、光源・検出器間距離に応じて変化する
1/K と流速との線形関係を例示している。光源・検出器間隔が小さいと、測定深さ
(名目上は、光源・検出器間隔の半分に等しい)は流路704に到達しない可能性がある
。これは、流路704内の流速に対してほとんど影響を受けていない光源・検出器間隔1
.6cmに関するデータの主な原因である。図6Cのデータの傾き増加に反映されている
ように、光源・検出器間隔が大きくなると、測定深さが流路に到達し、流速の測定感度が
増す。
【0024】
CCDカメラから取得された原画像を小区分に分割することにより、これらの小区分そ
れぞれによって、異なる光源・検出器間距離を提供することができる。単一のCCD画像
からの10の光源・検出器間距離から計算されたフロー感度を図6Dに例示している。単
一のCCD画像の使用によって、1回の写真撮影から多深度測定が可能になり、それによ
って、深部組織血流量の深度特異的な測定が可能になり得る。
【0025】
流量測定のためにこのスペックルコントラスト原理を実施する別の方法は、特定期間に
わたって積分することによって得られた時系列データでの統計解析を利用することである
。この時間領域解析は本明細書においてtDSCAと呼ぶ。tDSCAでの積分時間は、
sDSCAでのCCDカメラの露光時間と類似していると考えることができる。tDSC
Aの場合、積分回路を有する適度な感度の検出器を使用することができる。例えば、CC
Dチップの各ピクセルは、所定の露光時間の間、光電子を蓄積し続けることから、この目
的のために使用することができる。従って、複数のシングルモードファイバーを、単一の
CCDチップ上のいくつかの位置に直接配置することができ、その結果、時間分解能を失
うことなく、マルチチャネルtDSCAシステムをもたらすことができる。チャネル数は
、CCDチップサイズ、ピクセルサイズ、および各ファイバー先端の面積によってのみ制
限される。いくつかの実施形態では、tDSCAは、高感度検出器、例えば、アバランシ
フォトダイオード(APD)および/または光電子増倍管(PMT)を、低速カウンター
、例えば、USB接続型DAQカードに含まれるカウンターとともに使用することができ
るが、この実施形態のマルチチャネル機器へのスケーリングは、費用がかかり、大きく扱
いにくい。いずれかの方法によって測定される時系列データは、繰り返し測定することに
よって取得することができ、例えば、25回の測定を逐次的に行うことができ、その後、
データを統計的に解析して、流速を決定することができる。露光時間1m秒での構成では
、1フロー指数が25m秒ごとに得られ、約40Hzの操作となる。
【0026】
時系列データの統計解析は、統計値(平均強度および強度の標準偏差)が空間領域の代
わりに時間領域で計算されることを除き、sDSCAに関する上記と実質的に同じであり
得る。結果として、tDSCAは、提供する時間分解能がsDSCAより低い可能性があ
る。しかしながら、tDSCAでの検出領域は、sDSCAの場合よりも著しく小さくて
よい。空間領域対応法と同様に、tDSCAは、従来のDCS技術よりも著しく単純であ
まり計算集約的ではない計装および解析を用いたアプローチを提供する。
【0027】
図8は、空間領域DSCAを用いて流速を計算するための方法のフローチャートである
。プロセス800は、ブロック802において、コヒーレント光源をサンプルに向けるこ
とから始まる。上記のとおり、コヒーレント光源は、例えば、長いコヒーレンス長(すな
わち、約1mmより長いコヒーレンス長)のレーザーであり得る。次に、ブロック804
において、選択した露光時間でCCDカメラを使用してサンプルのスペックル画像が取得
される。画像を撮影するサンプルの位置は、深部組織流量によって散乱、検出された光の
、サンプル中での所望の深達度に基づいて選択される。CCDは、リレー光学系を使用す
ることによるか、またはCCDチップをサンプルの表面に直接配置することによって、ス
ペックルの画像を撮影する。プロセス800は、ブロック806において、画像ピクセル
の強度の標準偏差を画像ピクセルの強度の平均値で割ることによって空間的スペックルコ
ントラスト(K)の計算を続ける。いくつかの実施形態では、複数の隣接するピクセル
を単一の強度データポイントとしてグループ化してよく、異なるピクセルグループ間の標
準偏差を計算することができる。同様に、異なるピクセルグループ間の平均強度も計算す
ることができる。プロセス800は、ブロック808において、空間的スペックルコント
ラスト(K)を用いて流速の計算を続ける。上記のとおり、1/K は、流速と実質
的に線形的に関係しており、流速のコンピューターによる自明な計算を可能にする。いく
つかの実施形態では、このアプローチは、相対血流速度を計算するためにのみ使用される
。多くの臨床用途では、相対血流量測定が手元での作業に適している場合がある。他の実
施形態では、このアプローチは、絶対血流速度を計算するために使用することができる。
【0028】
図9は、時間領域DSCAを用いて流速を計算するための方法のフローチャートである
。プロセス900は、ブロック902において、コヒーレント光源をサンプルに向けるこ
とから始まる。この工程は、空間領域DSCAと基本的に同じように実施することができ
る。次に、ブロック904において、サンプルから散乱された光の時系列データが検出さ
れる。検出器、例えば、CCDカメラ、CMOSイメージセンサー、アバランシフォトダ
イオード、または光電子増倍管は、シングルモード光ファイバーを介してサンプルと接続
され得る。強度測定値は、選択した露光時間にわたって積分され得る。いくつかの実施形
態では、選択露光時間は、約1m秒であり得る。そのような一連の測定を連続して行って
、時系列データを提供する。プロセス900は、ブロック906において、時系列データ
の標準偏差を時系列データの平均値で割ることによって時間的スペックルコントラスト(
)の計算を続ける。ブロック908において、時間的スペックルコントラスト(K
)を用いて流速を計算することができる。空間的スペックルコントラスト比と同様に、1
/K は、流速と実質的に線形的に関係しており、流速の容易な計算を可能にする。い
くつかの実施形態では、計算された血流速度は、相対流量であり得る。
【0029】
空間領域DSCAまたは時間領域DSCAのどちらが選択されるかは、様々な要因に依
存し得る。例えば、sDSCAは、シングルモードファイバーおよびフォトダイオードと
比べて比較的大きいCCDカメラまたは同様の画像化デバイスの使用に依存している。い
くつかの用途では、サイズの違いによる、その使用への障害がほとんどない場合がある。
CCDカメラのサイズが制限要因である用途では、小領域センサーを使用し、皮膚上に直
接適用してよく、または低倍率のリレー光学系を使用することもできる。しかしながら、
tDSCAは、同じ制約に直面しないことから、時間領域は、空間または曲率がsDSC
Aを実行不可能な状態にする場合により好適であり得る。先に述べたとおり、tDSCA
が提供する時間分解能は、sDSCAと比べて相対的に低いが、tDSCA時間分解能は
、典型的には、患者モニタリング用、特に、長期潅流モニタリングに適している。短期モ
ニタリングでは、時間分解能がより重要である場合には、sDSCAが好ましいアプロー
チであり得る。空間領域および時間領域の両方において、DSCAは、以前の方法よりも
高い時間分解能および低いコストの計装を用いて、正確かつ迅速に血流潅流を測定するた
めの技術を提供する。
【0030】
本出願を特定の実施形態および実施例の文脈において開示してきたが、本出願は、具体
的に開示した実施形態を超えて、他の代替実施形態および/または応用の使用ならびにそ
れらの自明な修飾物および等価物にまで及ぶことは当業者には理解されるであろう。加え
て、当業者は、上記方法のいずれかを任意の適当な装置を使用して実施することができる
ことを認識するであろう。さらに、ある実施形態に関連した任意の特定の特徴についての
本明細書における開示は、本明細書に記載する他の開示した実施形態の総てにおいて使用
することができる。従って、開示した本明細書の出願の範囲は上記の特定の開示した実施
形態によって限定されるべきではないことが意図される。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
【外国語明細書】