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特開2023-82721木とポリ乳酸樹脂との混合物の製造方法及び木とポリ乳酸樹脂との混合物を射出する射出装置
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  • 特開-木とポリ乳酸樹脂との混合物の製造方法及び木とポリ乳酸樹脂との混合物を射出する射出装置 図1
  • 特開-木とポリ乳酸樹脂との混合物の製造方法及び木とポリ乳酸樹脂との混合物を射出する射出装置 図2
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  • 特開-木とポリ乳酸樹脂との混合物の製造方法及び木とポリ乳酸樹脂との混合物を射出する射出装置 図5
  • 特開-木とポリ乳酸樹脂との混合物の製造方法及び木とポリ乳酸樹脂との混合物を射出する射出装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082721
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】木とポリ乳酸樹脂との混合物の製造方法及び木とポリ乳酸樹脂との混合物を射出する射出装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20230608BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20230608BHJP
   B02C 18/12 20060101ALN20230608BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L97/00
B02C18/12
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196578
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】依田 穂積
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸彦
【テーマコード(参考)】
4D065
4J002
【Fターム(参考)】
4D065CA06
4D065CB03
4D065CC04
4D065DD12
4D065ED06
4D065ED14
4D065ED16
4D065ED24
4D065EE02
4D065EE15
4J002AH00X
4J002CF19W
(57)【要約】
【課題】ポリ乳酸樹脂と木粉を均一に混合することができる技術を提供する。
【解決手段】図3(a)にポリ乳酸樹脂粒55を示す。ポリ乳酸樹脂粒55の粒径は、任意であるが、3mm程度が好ましい。図3(b)に示すように、適温に加熱するとポリ乳酸樹脂粒55は、表面が軟化する。そこへ1~50μmの木粒25又は木粒25の破片25Bが接触すると、好ましく付着する。結果、図3(c)に示すように、ポリ乳酸樹脂粒55をコアとして、表面に木粒25又は木粒25の破片25Bが密に付着した混合物57が得られる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木片と、粉砕刃を備える粉砕機と、ポリ乳酸樹脂粒と、ヒータ及び攪拌羽根を備える混合機とを準備する工程と、
前記木片を前記粉砕機へ供給し、前記粉砕刃で粉砕して、粒径が1~50μmの木粉を得る工程と、
前記木粉と前記ポリ乳酸樹脂粒を前記混合機へ供給し、前記ヒータで加熱することで前記ポリ乳酸樹脂粒の表面を軟化し、前記攪拌羽根で攪拌することで前記ポリ乳酸樹脂粒の表面に前記木粒又は前記木粒の破片が付着した混合物を得る工程とからなる木とポリ乳酸樹脂との混合物の製造方法。
【請求項2】
混合機を搭載した射出装置であって、
前記混合機は、ポリ乳酸樹脂粒の表面が軟化する温度まで加熱すると共に木粒を乾燥するヒータと、軟化した前記ポリ乳酸樹脂粒に粒径が1~50μmであって乾燥した木粉又はこの木片の破片を付着させる攪拌羽根とを備えていることを特徴とする木とポリ乳酸樹脂との混合物を射出する射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木とポリ乳酸樹脂との混合物の製造方法及び射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックが、海洋へ流出し、ミクロンサイズに微細化し、魚などの海洋生物に害をなすことが知られている。
廃プラスチックが、生分解性プラスチックであれば、海洋生物に害をなすことはない。
そこで、プラスチックを生分解性プラスチックに置き換えることが望まれる。
【0003】
しかし、生分解性プラスチックは、それ以外の普通のプラスチックに比べ高価である。
対策として、鋸屑などの廃木材を生分解性プラスチックに混ぜることで増量して、コストを下げることが知られており、そのための装置が提案されてきた(例えば、特許文献1(図1)参照)。
【0004】
特許文献1の技術を図6に基づいて説明する。
図6に示すように、ホッパ101に、粒径が300~780μmの木粉102と、ポリ乳酸樹脂103を投入し、攪拌羽根104で攪拌する。攪拌後の混合物105を、成形機106で混錬しつつ押出して成形品を得る。
【0005】
しかし、特許文献1の技術には、次に述べる欠点がある。
ポリ乳酸樹脂の比重は約1.24である。
杉の比重は0.38であり、赤松の比重は0.52であることから、木粉の比重は約0.5である。
重いポリ乳酸樹脂103がホッパ101の下に偏在し、軽い木粉102がホッパ101の上に偏在し、均一に混合することが困難である。
また、ポリ乳酸樹脂と木粉の比重が大きく異なるため、混ざり方にむらが生じ、成形品の品質が安定しない。
【0006】
ポリ乳酸樹脂と木粉との活用が望まれる中、ポリ乳酸樹脂と木粉を均一に混合することができる技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5321254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリ乳酸樹脂と木粉を均一に混合することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、木片と、粉砕刃を備える粉砕機と、ポリ乳酸樹脂粒と、ヒータ及び攪拌羽根を備える混合機とを準備する工程と、
前記木片を前記粉砕機へ供給し、前記粉砕刃で粉砕して、粒径が1~50μmの木粉を得る工程と、
前記木粉と前記ポリ乳酸樹脂粒を前記混合機へ供給し、前記ヒータで加熱することで前記ポリ乳酸樹脂粒の表面を軟化し、前記攪拌羽根で攪拌することで前記ポリ乳酸樹脂粒の表面に前記木粒又は前記木粒の破片が付着した混合物を得る工程とからなる木とポリ乳酸樹脂との混合物の製造方法を提供する。
【0010】
請求項2に係る発明は、混合機を搭載した射出装置であって、
前記混合機は、ポリ乳酸樹脂粒の表面が軟化する温度まで加熱すると共に木粒を乾燥するヒータと、軟化した前記ポリ乳酸樹脂粒に粒径が1~50μmであって乾燥した木粉又はこの木片の破片を付着させる攪拌羽根とを備えていることを特徴とする木とポリ乳酸樹脂との混合物を射出する射出装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、加熱することでポリ乳酸樹脂粒の表面を軟化し、攪拌することで軟化した表面に木粒又は木粒の破片を付着させる。
単に木粉をポリ乳酸樹脂粒に混ぜるだけでは、比重差により分離し、均一な混合物が得られない。
この点、本発明では、ポリ乳酸樹脂粒の表面に木粒又はこの木粒の破片を付着させるため、比重差は問題にならず、均一な混合物が得られる。
よって、本発明により、ポリ乳酸樹脂と木粉を均一に混合することができる技術が提供される。
【0012】
請求項2に係る発明では、ポリ乳酸樹脂と木粉を均一に混合してなる混合物を、直ぐに射出することで成形品を得る。
仮に、混合物を防湿性の容器や袋に詰めて保管すると、容器や袋の調達コストと保管コストとが嵩む。
その点、本発明によれば、保管は不要となり、コストダウンが図れ、成形品のコストアップを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明で用いる粉砕機の原理図である。
図2】本発明で用いる混合機の原理図である。
図3】(a)は常温のポリ乳酸樹脂粒を示す図、(b)は加熱されたポリ乳酸樹脂粒を示す図、(c)は混合物の模式図である。
図4】本発明に係る混合物の製造方法を説明するフロー図である。
図5】混合機を備える射出装置の原理図である。
図6】従来の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
図1に示すように、粉砕機10は、床11に載せる脚12と、この脚12で支えられるメインチャンバー13と、このメインチャンバー13に内蔵される粉砕刃14と、この粉砕刃14を高速で回転するモータ15と、メインチャンバー13から上に延びる円錐筒16と、この円錐筒16から上に延びる縦筒17と、円錐筒16を囲うサブチャンバー18とからなる。
円錐筒16には、メインチャンバー13とサブチャンバー18とを繋ぐ穴19が複数個開けられており、サブチャンバー18には、出口21が設けられている。
【0016】
粉砕刃14は、毎分1000~20000回転(毎秒16.7~333回転)の速度で回される。
木片23が縦筒17に投入されると、木片23は粉砕刃14で粉砕される。粉砕された木片はメインチャンバー13に留まるうちに、粉砕刃14及び回転に伴う遠心力により繰り返し粉砕され、粒径が1~50μmの木粉25になり、この木粒25が竜巻(トルネード)状の旋回流26に載ってサブチャンバー18へ上がり、さらに出口21から排出される。
以上により、粒径が1~50μmの木粉25が得られる。
【0017】
図2に示すように、混合機30は、木粒25の投入口31並びにポリ乳酸樹脂粒55の投入口32を備えた蓋33を有するホッパ形状の容器34と、この容器34に貼り付けたヒータ35と、これらのヒータ35に被せた保温材36と、容器34の内部温度を計測するために容器34に設けた温度センサ37と、この温度センサ37で検出した温度が所定温度になるようにヒータ35の出力を制御する温度制御部38と、容器34内の材料を撹拌して混合する撹拌手段40と、からなる。
【0018】
撹拌手段40は、蓋33にモータ軸41が下向きになるように取付けた撹拌モータ42と、蓋33に設けた軸受リング43に下から挿入する回転軸44と、この回転軸44の途中に設けたボス45と、ボス45から放射方向へ突出した撹拌羽根46と、容器34の底部を撹拌する下部撹拌羽根48と、回転軸44の下端を回転自在に支持するために容器34から延ばした軸支持ブラケット47とからなる。
【0019】
好ましくは、回転軸44において、モータ軸41と攪拌羽根46との中間位置に、断熱板49を介在させる。
【0020】
以上の構成からなる混合機30の作用を次に述べる。
先ず、ヒータ35に通電し、温度制御部38で制御することで、容器34の内部温度をポリ乳酸樹脂粒55の表面が軟化する温度に保つ。
この状態で、撹拌モータ42を始動し、回転軸44、撹拌羽根46及び下部撹拌羽根48を所定の速度で連続的に回す。弁51、52、53は閉じておく。
【0021】
弁51を開いて投入口31から所定量の木粒25を投入し、弁52を開いて投入口32から所定量のポリ乳酸樹脂粒55を投入し、弁51、52を閉じる。
撹拌羽根46及び下部撹拌羽根48で撹拌しつつ、ヒータ35で加熱することで、ポリ乳酸樹脂粒55の表面が軟化し、粘着性が増す。すると、ポリ乳酸樹脂粒55の表面に木粒25又は木粒25の破片が付着して混合物57となる。必要に応じて、弁53を開けば、混合物57を落下させることができる。
【0022】
回転軸44、撹拌羽根46及び下部撹拌羽根48は、強度の点から炭素鋼やステンレス鋼などの金属部材とする。金属は熱伝導率が、セラミックスや樹脂に比較して大きいため、熱がモータ軸41を介して上方へ逃げ、その結果、容器34の中央が低温になる虞がある。
このときに、断熱板49で伝熱を遮断することができる。この結果、容器34内部の温度を均一にすることができると共に攪拌モータ42への伝熱を遮断することができる。
【0023】
図3(a)にポリ乳酸樹脂粒55を示す。ポリ乳酸樹脂粒55の粒径は、任意であるが、ポリ乳酸樹脂粒を破断もしくは、3mm以下に造粒することで表面積を増やすことができる。
【0024】
ある大径球1個の体積をV1、表面積をS1とする。大径球をn個の小径球に分割する。周知のとおり、小径球の体積V2はV2=(V1/n)となるが、小径球の表面積S2はS2>(S1/n)となる。よって、総体積が同一であれば、小径ほど総表面積が大きくなる。
【0025】
粒径を3mm以下にしてポリ乳酸樹脂粒55の表面積を増やすと、後述の図3(c)に示す木粒25又は木粒25の破片25Bを、より多くポリ乳酸樹脂粒55に付着させることができる。高価なポリ乳酸樹脂粒55に安価な木粒25又は木粒25の破片25Bを多量に付着させることで、混合物57のコストダウンを図ることができる。
併せて、表面積を増やすことで、より均一な混合を図ることができる。
【0026】
図3(b)に示すように、適温に加熱するとポリ乳酸樹脂粒55は、表面が軟化する。そこへ木粒25又は木粒25の破片25Bが接触すると、付着する。破片25Bは、撹拌羽根46、48で木粒25が砕かれた物である。
なお、図3(b)及び図3(c)において、木粒25及び破片25Bは作図の関係で大きく描いたが、正しくは、ポリ乳酸樹脂粒55の100分の1程度の大きさである。
【0027】
従来の技術で述べた木粒の粒径は、300~780μmであり、従来の技術では300μm未満であると木粒同士がからまり分散しないと説明されている。
本発明者らは、木粒同士がからまる(塊になる)のは、木粒に含まれる水分が接着作用を発揮すると考え、木粒25を130℃以上に加熱することで、乾燥を促すことにした。乾燥を促すことで、木粒25が塊になることはなくなった。
【0028】
また、木粒25の粒径が100μmを超えると、付着した木粒25が脱落することが分かった。木粒25の粒径を1~50μmにすると、「餅」の表面に「きな粉」が付くように、ポリ乳酸樹脂粒55の表面に、木粒25又は木粒25の破片25Bが、好ましく付着し、以降脱落することは殆ど無かった。
【0029】
結果、図3(c)に示すように、ポリ乳酸樹脂粒55をコアとして、表面に木粒25又は木粒25の破片25Bが密に付着した混合物57が得られた。
なお、ポリ乳酸樹脂粒55の融点は145~175℃であるため、加熱温度は130~140℃とする。
【0030】
以上に述べた粉砕機10及び混合機30を用いて実施する混合物の製造方法を、図4に基づいて説明する。
ST(ステップ番号。以下、同じ)01で、木片と粉砕機とポリ乳酸樹脂粒と混合機とを準備する。
次に、図1で説明したように、粉砕機10で木片23を、粒径が1~50μmの木粒25にする(ST02)。
次に、図2で説明したように、混合機30へ木粒25とポリ乳酸樹脂粒55を投入し(ST03)、適温に加熱しつつ混合する(ST04)。
結果、図3(c)に示す形態の混合物57が得られる。
【0031】
木粒25又は破片25Bは、放置すると大気中の水分を吸収する。対策として、得られた混合物57は、防湿性のある容器や袋に詰めて保管し、各種の用途に備える。
【0032】
容器や袋の調達コストや保管コストが嵩む。これらのコストを削減する技術が望まれる。その技術の一例を図5に基づいて説明する。
図5に示すように、混合機30を、プリプラ式射出装置60に直接搭載する。
プリプラ式射出装置60は、予備可塑化(一般にプリプラと呼ぶ)方式の射出装置である。
【0033】
プリプラ式射出装置60は、プリプラ筒体61にプリプラスクリュー62を内蔵したプリプラ部63と、射出筒64にプランジャ65を内蔵し、このプランジャ65を射出ラム66で前後進させるようにした射出部67とからなり、予めプリプラ部63で可塑化処理した材料を、射出部67で射出することができる射出機である。
【0034】
プリプラ筒体61の基部に混合機30を搭載することで、ポリ乳酸樹脂粒55に木粒25又はその破片25Bを付着させた混合物57を、直接的に射出装置60へ供給することができる。なお、射出装置60は、プリプラ式射出装置の他、スクリュー式射出装置であってもよく、樹脂の射出成形に使用される射出装置であれば、種類は問わない。
【0035】
よって、射出装置60は、混合機30を搭載した射出装置であって、前記混合機30は、ポリ乳酸樹脂粒55の表面が軟化する温度まで加熱すると共に木粒25を乾燥するヒータ35と、軟化した前記ポリ乳酸樹脂粒55に粒径が1~50μmであって乾燥した木粉25又はその破片25Bを付着させる攪拌羽根46とを備えていることを特徴とする。
【0036】
以上により、混合物57を保管する必要がなく、保管のための容器や袋が不要となり、コストダウンが図れる。結果、得られる成形品(射出成形品)のコストアップを抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、木とポリ乳酸樹脂との混合物の製造に好適である。
【符号の説明】
【0038】
10…粉砕機、14…粉砕刃、23…木片、25…木粒、25B…木粒の破片、30…混合機、35…ヒータ、46…攪拌羽根、55…ポリ乳酸樹脂粒、57…混合物、60…射出装置(プリプラ式射出装置)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6