IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社明電舎の特許一覧

特開2023-82722双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置および制御方法
<>
  • 特開-双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置および制御方法 図1
  • 特開-双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置および制御方法 図2
  • 特開-双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置および制御方法 図3
  • 特開-双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置および制御方法 図4
  • 特開-双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置および制御方法 図5
  • 特開-双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置および制御方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082722
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196586
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 隼
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS01
5H730AS08
5H730BB27
5H730BB66
5H730BB81
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】複数台のコンバータ間の通信負荷を軽減させる。
【解決手段】複数台のDABコンバータを備えた双方向絶縁型DC-DCコンバータにおいて、入出力電圧、電力指令値、絶縁型変圧器の巻き数比に基づいて、各コンバータの半導体スイッチング素子のパルス幅W1(n),W2(n)と位相差θFF(n)を計算する位相差・パルス幅計算部41と、前記パルス幅と、前記位相差θFF(n)からフィードバック制御により決定された位相指令値θFB(n)を減算した位相差指令値θ(n)とから、前記各半導体スイッチング素子のゲート信号を生成するゲート信号生成部43とを備え、1台目のDABコンバータのゲート信号は電流制御成分をフィードバックして求めた位相差指令値θ(n)に基づいて生成し、2台目以降のDABコンバータのゲート信号はコンデンサ電圧バランス制御成分をフィードバックして求めた位相差指令値θ(n)に基づいて生成する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁型変圧器の1次巻線に交流側が接続された1次側単相インバータと、前記絶縁型変圧器の2次巻線に交流側が接続された2次側単相インバータと、前記1次側単相インバータの直流側の正、負極端間に接続された1次側コンデンサと、前記2次側単相インバータの直流側の正、負極端間に接続された2次側コンデンサとを備えたDAB(Dual Active Bridge)コンバータを複数台設け、
前記複数台のDABコンバータの各1次側単相インバータの正、負極端を、第1の直流電源の正、負極端間に直列接続し、前記複数台のDABコンバータの各2次側単相インバータの正、負極端を、第2の直流電源の正、負極端間に並列接続して構成した双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置において、
前記制御装置は、
前記第1の直流電源又は第2の直流電源に流れる電流を、設定した電流指令値に追従させる位相差指令値を出力する電流制御部と、
前記1台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧、又は第1の直流電源の電圧をDABコンバータの設置台数で割った平均電圧値と、n台目(nは2以上の正数)のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧とを入力とし、n台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧の偏差を低減する位相指令値を出力するコンデンサ電圧バランス制御部と、
前記複数台のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧、2次側コンデンサの電圧、絶縁型変圧器の1次巻線と2次巻線の巻き数比および電力指令値から決定した、複数台のDABコンバータの1次側単相インバータおよび2次側単相インバータのゲートパルス幅の指令値と、フィードバック制御により決定された位相指令値に基づいて、前記1次側単相インバータおよび2次側単相インバータのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備え、
前記ゲート信号生成部は、前記電流制御部からフィードバックされる位相差指令値と前記ゲートパルス幅の指令値によって1台目のDABコンバータ用のゲート信号を生成し、前記コンデンサ電圧バランス制御部からフィードバックされる位相指令値と前記ゲートパルス幅の指令値によってn台目のDABコンバータ用のゲート信号を生成することを特徴とする双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置。
【請求項2】
絶縁型変圧器の1次巻線に交流側が接続された1次側単相インバータと、前記絶縁型変圧器の2次巻線に交流側が接続された2次側単相インバータと、前記1次側単相インバータの直流側の正、負極端間に接続された1次側コンデンサと、前記2次側単相インバータの直流側の正、負極端間に接続された2次側コンデンサとを備えたDAB(Dual Active Bridge)コンバータを複数台設け、
前記複数台のDABコンバータの各1次側単相インバータの正、負極端を、第1の直流電源の正、負極端間に直列接続し、前記複数台のDABコンバータの各2次側単相インバータの正、負極端を、第2の直流電源の正、負極端間に並列接続して構成した双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置において、
前記制御装置は、
前記第1の直流電源又は第2の直流電源に流れる電流を、設定した電流指令値に追従させる位相差指令値を出力する電流制御部と、
前記1台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧、又は第1の直流電源の電圧をDABコンバータの設置台数で割った平均電圧値と、n台目(nは2以上の正数)のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧とを入力とし、n台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧の偏差を低減する位相指令値を出力するコンデンサ電圧バランス制御部と、
前記1台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧、2次側コンデンサの電圧、絶縁型変圧器の1次巻線と2次巻線の巻き数比および電力指令値から、複数台のDABコンバータの1次側単相インバータおよび2次側単相インバータのゲートパルス幅の指令値と、位相差を計算する位相差・パルス幅計算部と、
前記位相差・パルス幅計算部で計算されたゲートパルス幅の指令値と、位相差・パルス幅計算部で計算された位相差からフィードバック制御により決定された位相指令値を減算した位相差指令値とに基づいて、前記複数台のDABコンバータの1次側単相インバータおよび2次側単相インバータのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備え、
前記ゲート信号生成部は、前記電流制御部からフィードバックされる位相差指令値と前記位相差・パルス幅計算部で計算された位相差の差分である位相差指令値と前記ゲートパルス幅の指令値によって1台目のDABコンバータ用のゲート信号を生成し、前記コンデンサ電圧バランス制御部からフィードバックされる位相指令値と前記位相差・パルス幅計算部で計算された位相差の差分である位相差指令値と前記ゲートパルス幅の指令値によってn台目のDABコンバータ用のゲート信号を生成することを特徴とする双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置。
【請求項3】
絶縁型変圧器の1次巻線に交流側が接続された1次側単相インバータと、前記絶縁型変圧器の2次巻線に交流側が接続された2次側単相インバータと、前記1次側単相インバータの直流側の正、負極端間に接続された1次側コンデンサと、前記2次側単相インバータの直流側の正、負極端間に接続された2次側コンデンサとを備えたDAB(Dual Active Bridge)コンバータを複数台設け、
前記複数台のDABコンバータの各1次側単相インバータの正、負極端を、第1の直流電源の正、負極端間に直列接続し、前記複数台のDABコンバータの各2次側単相インバータの正、負極端を、第2の直流電源の正、負極端間に並列接続して構成した双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置において、
前記制御装置は、
前記第1の直流電源又は第2の直流電源に流れる電流を、設定した電流指令値に追従させる位相差指令値を出力する電流制御部と、
前記1台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧、又は第1の直流電源の電圧をDABコンバータの設置台数で割った平均電圧値と、n台目(nは2以上の正数)のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧とを入力とし、n台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧の偏差を低減する位相指令値を出力するコンデンサ電圧バランス制御部と、
前記第1の直流電源の電圧をDABコンバータの設置台数で割った平均電圧値、前記第2の直流電源の電圧、絶縁型変圧器の1次巻線と2次巻線の巻き数比および電力指令値から、1台目のDABコンバータの1次側単相インバータおよび2次側単相インバータのゲートパルス幅の指令値と、位相差を計算する位相差・パルス幅計算部と、
前記位相差・パルス幅計算部で計算されたゲートパルス幅の指令値と、位相差・パルス幅計算部で計算された位相差からフィードバック制御により決定された位相指令値を減算した位相差指令値とに基づいて、前記複数台のDABコンバータの1次側単相インバータおよび2次側単相インバータのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備え、
前記ゲート信号生成部は、前記電流制御部からフィードバックされる1台目のDABコンバータの位相差指令値と前記位相差・パルス幅計算部で計算された位相差の差分である位相差指令値と、前記ゲートパルス幅の指令値によって1台目のDABコンバータ用のゲート信号を生成し、前記コンデンサ電圧バランス制御部からフィードバックされるn台目のDABコンバータの位相指令値と前記位相差・パルス幅計算部で計算された位相差の差分である位相差指令値と、前記ゲートパルス幅の指令値によってn台目のDABコンバータ用のゲート信号を生成することを特徴とする双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置。
【請求項4】
前記第1の直流電源と前記複数台のDABコンバータの各1次側単相インバータの直流側との間であって、第1の直流電源に対して直列に接続されるか、又は前記第2の直流電源と前記複数台のDABコンバータの各2次側単相インバータの直流側との間であって、第2の直流電源に対して直列に接続されたインダクタと、
前記インダクタに流れる電流に基づくか、又はインダクタが第2の直流電源に対して直列に接続されている場合は1台目のDABコンバータの2次側コンデンサの電圧に、インダクタが第1の直流電源に対して直列に接続されている場合は、第1の直流電源の電圧、又は1台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧に基づいて、ダンピング制御を行ってインダクタおよびコンデンサによって発生する共振を抑制する位相差を出力するダンピング制御部とを備え、
前記ゲート信号生成部は、前記電流制御部からフィードバックされる位相差指令値に代えて、前記電流制御部より出力される位相差指令値から前記ダンピング制御部より出力される位相差を減算してフィードバックされる位相指令値を用いてゲート信号を生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置の各部の動作を実行するステップを備えたことを特徴とする双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置に係り、入出力を絶縁しながら、双方向に電力伝送を行うDual Active Bridge(以下、DABと称する)コンバータにおいて、複数のDABコンバータを直並列接続する方式の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
複数台のDABコンバータを直並列接続して制御する場合、直列接続側のコンデンサ電圧バランス制御が必要になる。電流制御や電圧制御、直流電圧の振動と別途リアクトルが接続された際の共振を抑制するためのダンピング制御を追加する場合もある。
【0003】
特許文献1では2台のDABの一方を直列、他方を並列接続し、位相差を制御して直列接続側のコンデンサ電圧バランス制御を実現している。
【0004】
また、非特許文献1、2では、3台以上のDABを直並列接続した構成において、コンデンサ電圧バランス制御と出力電圧制御に関して検討している。
【0005】
複数台のDABコンバータを備えたDC-DCコンバータにおいて、各コンバータ内の半導体スイッチング素子のパルス幅を決定する従来の技術は例えば非特許文献3に記載され、パルス幅指令値、位相指令値などから前記半導体スイッチング素子のゲート信号を生成する従来の技術は例えば特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】P.Zumel et al.,“Modular Dual-Active Bridge Converter Architecture,”in IEEE Transactions on Industry Applcations,vol, 52,no.3,pp.2444-2455.2016
【非特許文献2】F.Deng.X.Znang.X.Li,T.Lei and T.Wang,“Decoupling Control Strategy for Input-Series Output-Parallel Systems Based on Dual Active Bridge dc-dc Converters,“2018 9th IEEE International Symposium on Power Electronics for Distributed Generation Systems (PEDG),2018,PP.1-8
【非特許文献3】B.Zhao,Q.Song,W.Liu and Y.Sun.“Overview of Dual-Active-Bridge Isolated Bidirectional DC-DC Converter for High-Frequency-Link Power-Conversion System”in IEEE Transactions on Power Electronics.vol.29.no.8.pp.4091-4106.Aug.2014
【非特許文献4】坪井、辻、山田、「入力LCフィルタ付きチョッパ系の不安定現象とその対策」、電学論D,Vol.120、No.10、PP.1171-1181(2000)
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6674171号公報
【特許文献2】特許第6785304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1で検討されているコンデンサ電圧バランス制御は3台以上に適用できない。また、コンバータ台数が増加した場合、制御系をどのように変更するかが不明確である。
【0009】
また、非特許文献1、2において、電流制御を適用する場合、単純に各DABコンバータに搭載されている電圧制御をそのまま電流制御に置換すると、電流検出値の急変時でも高応答の電流制御を行おうとするため、電流検出値の情報をDABコンバータ間で高速に通信する必要がある。電流制御の応答速度が低くてもよい適用先でも、電流リプルを低減する必要がある場合は高速通信あるいは大型のフィルタが必要となる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、複数台のコンバータ間の通信負荷軽減とコンバータの台数変更時における制御変更点の簡易化を実現する双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1に記載の双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置は、
絶縁型変圧器の1次巻線に交流側が接続された1次側単相インバータと、前記絶縁型変圧器の2次巻線に交流側が接続された2次側単相インバータと、前記1次側単相インバータの直流側の正、負極端間に接続された1次側コンデンサと、前記2次側単相インバータの直流側の正、負極端間に接続された2次側コンデンサとを備えたDAB(Dual Active Bridge)コンバータを複数台設け、
前記複数台のDABコンバータの各1次側単相インバータの正、負極端を、第1の直流電源の正、負極端間に直列接続し、前記複数台のDABコンバータの各2次側単相インバータの正、負極端を、第2の直流電源の正、負極端間に並列接続して構成した双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置において、
前記制御装置は、
前記第1の直流電源又は第2の直流電源に流れる電流を、設定した電流指令値に追従させる位相差指令値を出力する電流制御部と、
前記1台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧、又は第1の直流電源の電圧をDABコンバータの設置台数で割った平均電圧値と、n台目(nは2以上の正数)のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧とを入力とし、n台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧の偏差を低減する位相指令値を出力するコンデンサ電圧バランス制御部と、
前記複数台のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧、2次側コンデンサの電圧、絶縁型変圧器の1次巻線と2次巻線の巻き数比および電力指令値から決定した、複数台のDABコンバータの1次側単相インバータおよび2次側単相インバータのゲートパルス幅の指令値と、フィードバック制御により決定された位相指令値に基づいて、前記1次側単相インバータおよび2次側単相インバータのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備え、
前記ゲート信号生成部は、前記電流制御部からフィードバックされる位相差指令値と前記ゲートパルス幅の指令値によって1台目のDABコンバータ用のゲート信号を生成し、前記コンデンサ電圧バランス制御部からフィードバックされる位相指令値と前記ゲートパルス幅の指令値によってn台目のDABコンバータ用のゲート信号を生成することを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置は、
絶縁型変圧器の1次巻線に交流側が接続された1次側単相インバータと、前記絶縁型変圧器の2次巻線に交流側が接続された2次側単相インバータと、前記1次側単相インバータの直流側の正、負極端間に接続された1次側コンデンサと、前記2次側単相インバータの直流側の正、負極端間に接続された2次側コンデンサとを備えたDAB(Dual Active Bridge)コンバータを複数台設け、
前記複数台のDABコンバータの各1次側単相インバータの正、負極端を、第1の直流電源の正、負極端間に直列接続し、前記複数台のDABコンバータの各2次側単相インバータの正、負極端を、第2の直流電源の正、負極端間に並列接続して構成した双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置において、
前記制御装置は、
前記第1の直流電源又は第2の直流電源に流れる電流を、設定した電流指令値に追従させる位相差指令値を出力する電流制御部と、
前記1台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧、又は第1の直流電源の電圧をDABコンバータの設置台数で割った平均電圧値と、n台目(nは2以上の正数)のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧とを入力とし、n台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧の偏差を低減する位相指令値を出力するコンデンサ電圧バランス制御部と、
前記1台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧、2次側コンデンサの電圧、絶縁型変圧器の1次巻線と2次巻線の巻き数比および電力指令値から、複数台のDABコンバータの1次側単相インバータおよび2次側単相インバータのゲートパルス幅の指令値と、位相差を計算する位相差・パルス幅計算部と、
前記位相差・パルス幅計算部で計算されたゲートパルス幅の指令値と、位相差・パルス幅計算部で計算された位相差からフィードバック制御により決定された位相指令値を減算した位相差指令値とに基づいて、前記複数台のDABコンバータの1次側単相インバータおよび2次側単相インバータのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備え、
前記ゲート信号生成部は、前記電流制御部からフィードバックされる位相差指令値と前記位相差・パルス幅計算部で計算された位相差の差分である位相差指令値と前記ゲートパルス幅の指令値によって1台目のDABコンバータ用のゲート信号を生成し、前記コンデンサ電圧バランス制御部からフィードバックされる位相指令値と前記位相差・パルス幅計算部で計算された位相差の差分である位相差指令値と前記ゲートパルス幅の指令値によってn台目のDABコンバータ用のゲート信号を生成することを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置は、
絶縁型変圧器の1次巻線に交流側が接続された1次側単相インバータと、前記絶縁型変圧器の2次巻線に交流側が接続された2次側単相インバータと、前記1次側単相インバータの直流側の正、負極端間に接続された1次側コンデンサと、前記2次側単相インバータの直流側の正、負極端間に接続された2次側コンデンサとを備えたDAB(Dual Active Bridge)コンバータを複数台設け、
前記複数台のDABコンバータの各1次側単相インバータの正、負極端を、第1の直流電源の正、負極端間に直列接続し、前記複数台のDABコンバータの各2次側単相インバータの正、負極端を、第2の直流電源の正、負極端間に並列接続して構成した双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置において、
前記制御装置は、
前記第1の直流電源又は第2の直流電源に流れる電流を、設定した電流指令値に追従させる位相差指令値を出力する電流制御部と、
前記1台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧、又は第1の直流電源の電圧をDABコンバータの設置台数で割った平均電圧値と、n台目(nは2以上の正数)のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧とを入力とし、n台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧の偏差を低減する位相指令値を出力するコンデンサ電圧バランス制御部と、
前記第1の直流電源の電圧をDABコンバータの設置台数で割った平均電圧値、前記第2の直流電源の電圧、絶縁型変圧器の1次巻線と2次巻線の巻き数比および電力指令値から、1台目のDABコンバータの1次側単相インバータおよび2次側単相インバータのゲートパルス幅の指令値と、位相差を計算する位相差・パルス幅計算部と、
前記位相差・パルス幅計算部で計算されたゲートパルス幅の指令値と、位相差・パルス幅計算部で計算された位相差からフィードバック制御により決定された位相指令値を減算した位相差指令値とに基づいて、前記複数台のDABコンバータの1次側単相インバータおよび2次側単相インバータのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備え、
前記ゲート信号生成部は、前記電流制御部からフィードバックされる1台目のDABコンバータの位相差指令値と前記位相差・パルス幅計算部で計算された位相差の差分である位相差指令値と、前記ゲートパルス幅の指令値によって1台目のDABコンバータ用のゲート信号を生成し、前記コンデンサ電圧バランス制御部からフィードバックされるn台目のDABコンバータの位相指令値と前記位相差・パルス幅計算部で計算された位相差の差分である位相差指令値と、前記ゲートパルス幅の指令値によってn台目のDABコンバータ用のゲート信号を生成することを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置は、請求項1から3のいずれか1項において、
前記第1の直流電源と前記複数台のDABコンバータの各1次側単相インバータの直流側との間であって、第1の直流電源に対して直列に接続されるか、又は前記第2の直流電源と前記複数台のDABコンバータの各2次側単相インバータの直流側との間であって、第2の直流電源に対して直列に接続されたインダクタと、
前記インダクタに流れる電流に基づくか、又はインダクタが第2の直流電源に対して直列に接続されている場合は1台目のDABコンバータの2次側コンデンサの電圧に、インダクタが第1の直流電源に対して直列に接続されている場合は、第1の直流電源の電圧、又は1台目のDABコンバータの1次側コンデンサの電圧に基づいて、ダンピング制御を行ってインダクタおよびコンデンサによって発生する共振を抑制する位相差を出力するダンピング制御部とを備え、
前記ゲート信号生成部は、前記電流制御部からフィードバックされる位相差指令値に代えて、前記電流制御部より出力される位相差指令値から前記ダンピング制御部より出力される位相差を減算してフィードバックされる位相指令値を用いてゲート信号を生成することを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御方法は、
請求項1から4のいずれか1項に記載の双方向絶縁型DC-DCコンバータの制御装置の各部の動作を実行するステップを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
(1)請求項1~5に記載の発明によれば、複数台のDABコンバータで制御を分割しているため、各DABコンバータ間で必要な通信負荷が削減される。また、DABコンバータの設置台数変更時の変更点が少なく、設計時間の短縮が可能である。
(2)請求項2に記載の発明によれば、位相差・パルス幅計算部を設けたので、電力制御の応答性が向上する。
(3)請求項3に記載の発明によれば、位相差、パルス幅の計算に第1の直流電源電圧の平均値(入力電圧平均値)を用いているので、コンデンサ電圧のアンバランス率に関係なく全DABコンバータの制御系で同じ位相差、パルス幅を使用することができ、これによってコンデンサ電圧の変動によるコンデンサ電圧バランス制御部への外乱が低減され、応答性が改善される。
(4)請求項4に記載の発明によれば、ダンピング制御部を設けたので、インダクタと1次側コンデンサ又は2次側コンデンサによるLC共振を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の双方向絶縁型DC-DCコンバータを表し、(a)は2次側にインダクタを接続した構成図、(b)は1次側にインダクタを接続した構成図。
図2図1の1次側単相インバータ、2次側単相インバータの半導体スイッチング素子のパルス幅制御方式の動作波形図。
図3】本発明の実施例1における制御ブロック図。
図4】本発明の実施例2における各制御系の構成図。
図5】本発明の実施例3における各制御系の構成を示し(a)は1台目のDABコンバータの制御ブロック図、(b)は2台目以降のDABコンバータの制御ブロック図。
図6】本発明の各実施例における制御部の構成を示し(a)はインダクタを2次側に接続した場合の構成図、(b)はインダクタを1次側に接続した場合の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。図1は本実施形態例による双方向絶縁型DC-DCコンバータの構成を示している。
【0019】
2次側にインダクタ(L)を接続した構成を示す図1(a)において、1は半導体スイッチング素子S11,S21,S31,S41をブリッジ接続した1次側単相インバータであり、2は半導体スイッチング素子S51,S61,S71,S81をブリッジ接続した2次側単相インバータである。
【0020】
半導体スイッチング素子S11およびS21の共通接続点は、リアクトルL1および絶縁型変圧器3の1次巻線31を介して半導体スイッチング素子S31およびS41の共通接続点に接続されている。
【0021】
半導体スイッチング素子S51およびS61の共通接続点は、リアクトルL2および絶縁型変圧器3の2次巻線32を介して半導体スイッチング素子S71およびS81の共通接続点に接続されている。
【0022】
絶縁型変圧器3の1次巻線31と2次巻線32は互いに絶縁され、その巻き数比はN1:N2である。
【0023】
前記半導体スイッチング素子S11,S21,S31,S41,S51,S61,S71,S81は、例えばIGBTで構成され、後述する制御装置のゲート信号生成部で生成されたゲート信号によりスイッチング制御がなされる。
【0024】
acp1は半導体スイッチング素子S11およびS21の共通接続点の電圧、Vacs1は半導体スイッチング素子S51およびS61の共通接続点の電圧を各々示している。
【0025】
1次側単相インバータ1の直流側の正、負極端間には1次側コンデンサCinが接続され、2次側単相インバータ2の直流側の正、負極端間には2次側コンデンサCoutが接続されている。
【0026】
in1は1次側コンデンサCinの電圧、Voutは2次側コンデンサCoutの電圧を各々示している。
【0027】
前記1次側単相インバータ1、1次側コンデンサCin、絶縁型変圧器3、2次側単相インバータ2、2次側コンデンサCoutによって1台目のDABコンバータ101が構成され、このDABコンバータ101と同様に構成したn台のDABコンバータ101~10nが設けられている。
【0028】
11は第1の直流電源であり、その正、負極端間にはn台のDABコンバータ101~10nの各1次側単相インバータ1の正、負極端が順次直列に接続されている。
【0029】
12は、第2の直流電源であり、その正、負極端間にはn台のDABコンバータ101~10nの各2次側単相インバータ2の正、負極端が並列に接続されている。
【0030】
1台目のDABコンバータ101の2次側単相インバータ2の正極端と第2の直流電源12の正極との間にはインダクタ22(L)が接続されている。尚、第2の直流電源12には例えば図示省略の負荷が接続されている。
【0031】
ccは第1の直流電源11の電圧、Vloadは第2の直流電源12の電圧を各々示している。
【0032】
1次側にインダクタ(L)を接続した構成を示す図1(b)では、図1(a)のインダクタ22に代えて、1台目のDABコンバータ101の1次側単相インバータ1の正極端と第1の直流電源11の正極との間にインダクタ21(L)が接続されており、その他の部分は図1(a)と同様に構成されている。
【0033】
尚、前記インダクタ21、22を接続しない構成であっても良い。
【0034】
以下の明細書では、DABコンバータ(101~10n)の1台をセルと称することもある。また、図1(a),(b)の各部の電流、電圧は、図示省略の電流検出器、電圧検出器により各々検出されるものである。
【0035】
図2に、本実施形態例の制御装置におけるパルス幅制御方式の動作波形を示す。各DABコンバータ(101~10n)内のインバータ1、2の、上アーム側半導体スイッチング素子2つ(1次側を例にするとS11、S31)または下アーム側半導体スイッチング素子2つ(同じく1次側を例にするとS21、S41)を同時にON(図示パルス幅W11,W21)して出力電圧が零となる期間を設定している。このパルス幅制御を用いて1次側と2次側の直流電圧の差が大きい場合でもソフトスイッチング範囲を拡大する手法が検討されている。本実施形態例の制御は、方形波、片側もしくは両側パルス幅制御時に適用できる。
【0036】
本実施形態例の制御はDABコンバータ毎に制御系を分割しており、制御応答性および過渡動作時における効率の観点から以下に示す3つの実施例がある。
【実施例0037】
実施例1における制御装置は、図3および図6の制御ブロックを備えている。図3において、30は、n台のDABコンバータ101~10nの1次側単相インバータ1および2次側単相インバータ2のゲートパルス幅の指令値W1(n),W2(n)図2の動作波形で示した、各インバータの上アーム側半導体スイッチング素子または下アーム側半導体スイッチング素子を同時にONするパルス幅W11,W21)と、後述のフィードバック制御により決定された位相指令値θFB(n)に基づいて各DABコンバータ101~10nの1次側単相インバータ1および2次側単相インバータ2のゲート信号(S1(n),S2(n),S3(n),S4(n),S5(n),S6(n),S7(n),S8(n)を生成するゲート信号生成部である。
【0038】
前記パルス幅指令値W1(n),W2(n)は、各DABコンバータのnセル目の入力電圧(1次側コンデンサCinの電圧Vin(n))、出力電圧(2次側コンデンサCoutの電圧)Vout、絶縁型変圧器3の巻き数比N1/N2および電力指令値P*から、例えば非特許文献3に記載の方法によって決定する。
【0039】
前記フィードバック制御により決定される位相指令値θFB(n)は、図6の制御ブロックにより生成される。図6(a)はインダクタ22を2次側に接続した図1(a)の装置に適用され、図6(b)はインダクタ21を1次側に接続した図1(b)の装置に適用される。
【0040】
図6(a)において61は、インダクタ22に流れる電流(2次側直流電流))Iloadの検出値と、設定した電流指令値Iload *を入力とし、その差分に対してPI制御を行うことで前記検出値を電流指令値に追従させる位相差指令値θacrを出力する電流制御部である。
【0041】
62は、1台目のDABコンバータ101の2次側コンデンサCoutの電圧Voutを入力とし、インダクタ(22)と2次側コンデンサCoutによって発生する共振を抑制する位相差θdump1を出力するダンピング制御部である。
【0042】
尚、ダンピング制御部62の入力としては、インダクタ22に流れる電流(2次側直流電流)Iloadを用いても良い。
【0043】
ダンピング制御部62および後述のダンピング制御部66は、例えば非特許文献4の図2に記載のダンピング回路が用いられる。
【0044】
63は、電流制御部61の出力(位相差指令値θacr)からダンピング制御部62の出力(位相差θdump1)を減算して1セル目用の位相指令値θFB1を出力する減算器である。
【0045】
尚、インダクタ22が無く共振の恐れがない場合や共振を許容できる場合はダンピング制御部62を省略してもよい。
【0046】
64は、1セル目のDABコンバータ101の1次側コンデンサCinの電圧Vin1とnセル目のDABコンバータ10nの1次側コンデンサCinの電圧Vin(n)を入力とし、両者の差分を制御器により増幅し、nセル目のコンデンサ電圧の偏差を低減する位相指令値θFB(n)(=位相差θbal(n))を出力するコンデンサ電圧バランス制御部である。
【0047】
尚、前記1セル目の1次側コンデンサCinの電圧Vin1に代えて、第1の直流電源11の電圧Vccをセル数(DABコンバータの設置台数)で割った平均電圧値(Vcc/Ncell)を入力としてもよい。
【0048】
図6(b)において65は、インダクタ21に流れる電流(1次側直流電流))Iinの検出値と、設定した電流指令値Iin *を入力とし、その差分に対してPI制御を行うことで前記検出値を電流指令値に追従させる位相差指令値θacrを出力する電流制御部である。
【0049】
66は、1台目のDABコンバータ101の1次側コンデンサCinの電圧Vin1を入力とし、インダクタ(21)と1次側コンデンサCinによって発生する共振を抑制する位相差θdump1を出力するダンピング制御部である。
【0050】
尚、ダンピング制御部66の入力としては、インダクタ21に流れる電流(1次側直流電流)Iinや第1の直流電源11の電圧(入力電圧)Vccのどちらか一方又は両方を用いても良い。
【0051】
67は、電流制御部65の出力(位相差指令値θacr)からダンピング制御部66の出力(位相差θdump1)を減算して1セル目用の位相指令値θFB1を出力する減算器である。
【0052】
尚、インダクタ21が無く共振の恐れがない場合や共振を許容できる場合はダンピング制御部66を省略してもよい。
【0053】
64は、図6(a)のコンデンサ電圧バランス制御部64と同一に構成されたコンデンサ電圧バランス制御部である。
【0054】
前記減算器63、67の減算出力θFB1(位相指令値)およびコンデンサ電圧バランス制御部64の出力θFB(n)(位相指令値)は、フィードバック制御により決定された位相指令値(θFB(n))としてゲート信号生成部30に入力される。
【0055】
1セル目(DABコンバータ101)の制御では、入力電力もしくは出力電力の制御である電流制御部(本実施形態例では電源電圧を一定とみなしているため)61,65の出力と、LC共振を抑制するダンピング制御部62,66の出力とを適用する。
【0056】
すなわちゲート信号生成部30は、電流制御部61又は65より出力される位相差指令値θacrからダンピング制御部62、66より出力される位相差θdump1を、減算器63又は67で減算してフィードバックされる位相指令値θFB1と、ゲートパルス幅の指令値W1(n),W2(n)によって1セル目のDABコンバータ101用のゲート信号を生成する。
【0057】
2セル目以降(DABコンバータ102以降)の制御では各セルのコンデンサ電圧のバランス制御を適用する。すなわちゲート信号生成部30は、コンデンサ電圧バランス制御部64からフィードバックされる位相指令値θFB(n)と、ゲートパルス幅の指令値W1(n),W2(n)によってnセル目のDABコンバータ10n用のゲート信号を生成する。
【0058】
上記のように各セルで制御を分割することで、所望の制御を実現するためにセル間で必要な通信は入力電圧値およびコンデンサ電圧の検出値のみでよい。電流制御を行うのは1台目のセルのみなので、電流検出値の情報の各セル間での高速通信が不要である。また、入力が容量性の場合、入力電圧値は高速に変化しないため、セル間の通信負荷を削減できる。
【0059】
また、セルの設置台数に関わらず本発明を適用することができ、セル数変更時の制御の変更点が少なく、設計時間の短縮が可能である。さらに本発明は、並列側の電力制御に限らず、直列側の電力制御でも適用可能である。
【0060】
以上のように実施例1によれば、セル間で通信する信号は、大きく変動しない入出力電圧およびコンデンサ電圧であるため、通信負荷を削減できる。したがって、通信負荷が多いときに適用が困難な光ケーブルや無線通信で制御系を構築でき、省配線化を実現できる。
【実施例0061】
実施例2における制御装置は、図4および図6の制御ブロックを備えている。実施例2では、電力制御の応答性向上のために、パルス幅と位相差の指令値を事前に計算する点に特徴がある。
【0062】
図4において41は、複数台のDABコンバータ101~10nの入力電圧(1次側コンデンサCinの電圧)Vin(n)、出力電圧(2次側コンデンサCoutの電圧)Vout、電力指令値P*および絶縁型変圧器3の巻き数比N1/N2から、パルス幅の指令値W1(n),W2(n)図2の動作波形で示した、各インバータの上アーム側半導体スイッチング素子または下アーム側半導体スイッチング素子を同時にONするパルス幅W11,W21)と、位相差θFF(n)を計算する位相差・パルス幅計算部である。
【0063】
位相差・パルス幅計算部41は、例えば非特許文献3の技術を利用して計算を行う。
【0064】
42は、位相差・パルス幅計算部41で計算された位相差θFF(n)から、図6の各制御部のフィードバック制御により決定された位相指令値θFB(n)を減算して位相差指令値θ(n)を出力する減算器である。
【0065】
このように減算器42において、フィードバック制御の位相指令値θFBと位相差・パルス幅計算部41で計算された位相差θFFの差分をとることで、回路定数のずれや検出誤差などによる伝送電力と電力指令値P*との誤差が補正される。
【0066】
43は、位相差・パルス幅計算部41で計算されたパルス幅W1(n),W2(n)と、減算器42から出力される位相指令値θ(n)に基づいて各DABコンバータ101~10nの1次側単相インバータ1および2次側単相インバータ2のゲート信号(S1(n),S2(n),S3(n),S4(n),S5(n),S6(n),S7(n),S8(n)を生成するゲート信号生成部である。
【0067】
図6の前記減算器63、67の減算出力θFB1(位相指令値)およびコンデンサ電圧バランス制御部64の出力θFB(n)(位相指令値)は、フィードバック制御により決定された位相指令値(θFB(n))として図4の減算器42に入力され、位相差θFF(n)との偏差がとられる。
【0068】
1セル目(DABコンバータ101)の制御では、実施例1の場合と同様に電流制御部61,65の出力とダンピング制御部62,66の出力を適用する。
【0069】
すなわちゲート信号生成部43は、減算器63又は67の出力がフィードバックされる位相指令値θFB1と位相差・パルス幅計算部41で計算された位相差θFF(n)との偏差を減算器42でとった位相指令値θ(n)と、ゲートパルス幅の指令値W1(n),W2(n)によって1セル目のDABコンバータ101用のゲート信号を生成する。
【0070】
2セル目以降(DABコンバータ102以降)の制御では各セルのコンデンサ電圧のバランス制御を適用する。すなわちゲート信号生成部43は、コンデンサ電圧バランス制御部64からフィードバックされる位相指令値θFB(n)と位相差・パルス幅計算部41で計算された位相差θFF(n)との偏差を減算器42でとった位相指令値θ(n)と、ゲートパルス幅の指令値W1(n),W2(n)によってnセル目のDABコンバータ10n用のゲート信号を生成する。
【0071】
以上のように位相差・パルス幅計算部41においてフィードフォワード的にパルス幅および位相差を計算することで電力制御の応答性を向上できる。しかし、セルの損失、デッドタイムやゲートドライバの遅延などによって、計算値通りにパルス幅や位相差が出力されず、電力が指令値に対して偏差が発生するため、検出値と指令値との差分に対してのみフィードバック制御を行う(電流制御部61,65)。そのため、フィードバック制御の応答を高速化する必要がない。
【0072】
尚、前述の偏差は過渡条件のときのみに発生するため、電力制御の精度への影響度は低い。
【0073】
以上のように実施例2によれば、位相差・パルス幅計算部を追加したので、電力制御の応答性が向上できる。さらに、コンデンサ電圧のアンバランス率に合わせて(コンデンサ電圧バランス制御部64の出力に応じて)各セルのパルス幅を変化させるため、コンデンサ電圧バランス制御の過渡状態における電力変換効率が向上できる。
【実施例0074】
実施例3における制御装置は、図5および図6の制御ブロックを備えている。実施例3では、実施例2における位相差・パルス幅計算部41の入力パラメータの一部を変更して1セル目のパルス幅指令および位相差θFFを計算し、その1セル目のパルス幅指令および位相差θFFを2セル目以降のDABコンバータの制御に使用する。
【0075】
1セル目の制御ブロックを示す図5(a)において、51は、前記第1の直流電源11の電圧VccをDABコンバータの設置台数Ncellで割った平均電圧値Vcc/Ncell(入力電圧平均値)、第2の直流電源12の電圧Vload、電力指令値P*および絶縁型変圧器3の1次巻線と2次巻線の巻き数比N1/N2を入力とし、1セル目のDABコンバータ101のインバータ1、2のパルス幅W11,W21と位相差θFF1を計算する位相差・パルス幅計算部である。
【0076】
52は、位相差・パルス幅計算部51で計算された位相差θFF1から、図6の各制御部のフィードバック制御により決定された位相指令値θFB1を減算して位相差指令値θ1を出力する減算器である。
【0077】
53は、位相差・パルス幅計算部51で計算されたパルス幅W11,W21と、減算器52から出力される位相指令値θ1に基づいて1セル目のDABコンバータ101の1次側単相インバータ1および2次側単相インバータ2のゲート信号(S11,S21,S31,S41,S51,S61,S71,S81)を生成するゲート信号生成部である。
【0078】
2セル目以降のDABコンバータの制御ブロックを示す図5(b)において、54は、図5(a)の位相差・パルス幅計算部51で計算された1セル目の位相差θFF1から図6の各制御部のフィードバック制御により決定された2セル目以降の位相指令値θFB(n)を減算して2セル目以降の位相差指令値θ(n)を出力する減算器である。
【0079】
図5(b)のゲート信号生成部53は、位相差・パルス幅計算部51で計算された1セル目のパルス幅W11,W21と、減算器54の出力である位相差指令値θ(n)に基づいて、2セル目以降のDABコンバータ102~10nの1次側単相インバータ1および2次側単相インバータ2のゲート信号(S1(n),S2(n),S3(n),S4(n),S5(n),S6(n),S7(n),S8(n)を生成する。
【0080】
図6のコンデンサ電圧バランス制御部64の過渡動作中はコンデンサ電圧の偏差があるため、パルス幅と位相差が変化する。パルス幅の変化はコンデンサ電圧バランス制御およびダンピング制御の外乱になるため、コンデンサ電圧が大きく変動する場合、コンデンサ電圧バランス制御とダンピング制御の応答性が悪化する。
【0081】
この問題を解決するために本実施例3では位相差、パルス幅の計算には入力電圧平均値(Vcc/Ncell)を入力とし、コンデンサ電圧のアンバランス率に関係なく全セルの制御系で同じ位相差、パルス幅(θFF1,W11,W21)を使用する。これにより、コンデンサ電圧の変動によるコンデンサ電圧バランス制御部64とダンピング制御部62,66への外乱が低減できるため、応答性を改善できる。
【0082】
このように電圧バランス制御の応答性が向上するため、入力コンデンサ容量を小さくでき、装置の小型化が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…1次側単相インバータ
2…2次側単相インバータ
3…絶縁型変圧器
101~10n…DABコンバータ
11…第1の直流電源
12…第2の直流電源
21,22…インダクタ
30,43,53…ゲート信号生成部
41,51…位相差・パルス幅計算部
42,52,54,63,67…減算器
61,65…電流制御部
62,66…ダンピング制御部
64…コンデンサ電圧バランス制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6