(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082753
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】電源制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/145 20060101AFI20230608BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
H02M3/145 C
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196651
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和智 貴嗣
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA17
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD26
5H730FG05
5H730XX04
5H730XX15
5H730XX25
5H730XX35
5H730XX43
5H730ZZ13
(57)【要約】
【課題】逆流電流における過電流を検出した場合に、安全にスイッチングを停止させる。
【解決手段】電源制御装置(1)は、逆流検出部(21)により逆流電流の過電流が検出された場合に、クロック信号のエッジ発生までハイサイドスイッチ素子(M1)をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態で維持する第1制御と、前記エッジ発生により前記ハイサイドスイッチ素子をオフ状態、前記ローサイドスイッチ素子をオン状態に切り替えてから前記逆流検出部により前記逆流電流のゼロクロスが検出された場合に前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態に切り替える第2制御と、前記第1制御および前記第2制御の繰り返しの後に前記ハイサイドスイッチ素子および前記ローサイドスイッチ素子ともにオフ状態とする第3制御と、を実行可能に構成されるスイッチング制御部(221)を有する逆流保護部(22)と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧の印加端とグランド電位の印加端との間に直列に接続されるハイサイドスイッチ素子およびローサイドスイッチ素子と、
前記ハイサイドスイッチ素子と前記ローサイドスイッチ素子とが接続されるノードに接続される第1端を有するインダクタと、
前記インダクタの第2端に接続される出力コンデンサと、を備える同期整流型降圧DC/DCコンバータに用いられる電源制御装置であって、
オン状態の前記ローサイドスイッチ素子に流れる逆流電流を検出する逆流検出部と、
前記逆流検出部により前記逆流電流の過電流が検出された場合に、クロック信号のエッジ発生まで前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態で維持する第1制御と、前記エッジ発生により前記ハイサイドスイッチ素子をオフ状態、前記ローサイドスイッチ素子をオン状態に切り替えてから前記逆流検出部により前記逆流電流のゼロクロスが検出された場合に前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態に切り替える第2制御と、前記第1制御および前記第2制御の繰り返しの後に前記ハイサイドスイッチ素子および前記ローサイドスイッチ素子ともにオフ状態とする第3制御と、を実行可能に構成されるスイッチング制御部を有する逆流保護部と、
を備える、電源制御装置。
【請求項2】
前記逆流検出部は、前記ノードに接続可能な第1入力端と、基準電圧の印加端に接続可能な第2入力端と、を含むコンパレータを有し、
前記逆流保護部は、前記基準電圧を可変制御する可変制御部を有する、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記逆流検出部は、
前記ノードに接続可能な第1入力端と、基準電圧の印加端に接続可能な第2入力端と、を含む第1コンパレータと、
前記ノードに接続可能な第1入力端と、グランド電位の印加端に接続可能な第2入力端と、を含む第2コンパレータと、
を有する、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記スイッチング制御部は、第1タイマーを有し、前記第1タイマーにより前記クロック信号を第1所定個数カウントするまで、前記第1制御および前記第2制御を繰り返し実行可能に構成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記逆流検出部は、前記ノードに接続可能な第1入力端と、基準電圧の印加端に接続可能な第2入力端と、を含むコンパレータを有し、
前記逆流保護部は、前記基準電圧を可変制御する可変制御部を有し、
前記可変制御部は、第2タイマーを有し、前記逆流電流の過電流が検出されてから、前記第2タイマーにより前記クロック信号を前記第1所定個数よりも多い第2所定個数カウントするまで前記基準電圧を0V付近に制御可能に構成される、請求項4に記載の電源制御装置。
【請求項6】
前記電源制御装置をシャットダウンさせる指示が前記逆流保護部による保護動作のときにあった場合、前記第2所定個数のカウント後にシャットダウンが行われる、請求項5に記載の電源制御装置。
【請求項7】
前記スイッチング制御部は、前記第1制御および前記第2制御を繰り返し実行しつつ、前記逆流検出部によりオン状態の前記ローサイドスイッチ素子を流れる電流の正方向から負方向へ切り替わるゼロクロスが検出されるかを監視可能に構成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電源制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電源制御装置と、
前記ハイサイドスイッチ素子および前記ローサイドスイッチ素子と、
前記インダクタと、
前記出力コンデンサと、を備える、同期整流型降圧DC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる同期整流型降圧DC/DCコンバータが知られている(例えば特許文献1参照)。同期整流型降圧DC/DCコンバータでは、ハイサイドスイッチ素子とローサイドスイッチ素子をスイッチングすることにより、入力電圧をそれよりも低い出力電圧に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同期整流型降圧DC/DCコンバータにおいては、入力電圧の印加端とグランド電位の印加端との間にハイサイドスイッチ素子とローサイドスイッチ素子が直列に接続される。ハイサイドスイッチ素子とローサイドスイッチ素子とが接続されるノードにスイッチ電圧が発生する。上記特許文献1には、ローサイドスイッチ素子がオン状態のときに、上記ノードからグランド電位の印加端へ向けて流れる逆流電流がローサイドスイッチ素子に発生したことを検出する逆流検出部が開示されている。上記逆流検出部は、グランド電位の印加端から上記ノードへ向けて流れる正方向の電流が逆流電流に変化したことを検出するための、いわゆるゼロクロスを検出する検出部である。上記逆流検出部が逆流電流を検出した場合、ハイサイドスイッチ素子とローサイドスイッチ素子をともにターンオフさせ、上記ノードをHi-Z状態とする。
【0005】
しかしながら、上記逆流検出部はゼロクロス検出部であって、逆流電流における過電流を検出するものではない。仮に上記過電流を検出した場合に、上記のようにハイサイドスイッチ素子とローサイドスイッチ素子をともにターンオフさせると、逆流電流がハイサイドスイッチ素子に寄生されたボディダイオードを流れ、寄生動作による不具合が生じる虞がある。
【0006】
上記状況に鑑み、本開示は、同期整流型DC/DCコンバータに用いられる電源制御装置であって、逆流電流における過電流を検出した場合に、安全にスイッチングを停止させることが可能となる電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、本開示に係る電源制御装置は、
入力電圧の印加端とグランド電位の印加端との間に直列に接続されるハイサイドスイッチ素子およびローサイドスイッチ素子と、
前記ハイサイドスイッチ素子と前記ローサイドスイッチ素子とが接続されるノードに接続される第1端を有するインダクタと、
前記インダクタの第2端に接続される出力コンデンサと、を備える同期整流型降圧DC/DCコンバータに用いられる電源制御装置であって、
オン状態の前記ローサイドスイッチ素子に流れる逆流電流を検出する逆流検出部と、
前記逆流検出部により前記逆流電流の過電流が検出された場合に、クロック信号のエッジ発生まで前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態で維持する第1制御と、前記エッジ発生により前記ハイサイドスイッチ素子をオフ状態、前記ローサイドスイッチ素子をオン状態に切り替えてから前記逆流検出部により前記逆流電流のゼロクロスが検出された場合に前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態に切り替える第2制御と、前記第1制御および前記第2制御の繰り返しの後に前記ハイサイドスイッチ素子および前記ローサイドスイッチ素子ともにオフ状態とする第3制御と、を実行可能に構成されるスイッチング制御部を有する逆流保護部と、を備える構成としている。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電源制御装置によれば、逆流電流における過電流を検出した場合に、安全にスイッチングを停止させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、スイッチング電源装置の構成例を示す全体構成図である。
【
図2】
図2は、電源ICの外観の例を示す図である。
【
図3】
図3は、クロック信号の波形例を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、スロープ電圧生成部の構成例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、スロープ電圧に関与する電流および電圧の波形例を示す図である。
【
図5】
図5は、基本スイッチング制御の一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、比較例に係る逆流保護機能に関する構成を示す図である。
【
図7】
図7は、比較例に係る逆流保護機能における動作例を示すタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る逆流保護機能に関する構成を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る逆流保護機能における動作例を示すタイミングチャートである。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る逆流保護機能における動作例を示すタイミングチャートである。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る逆流保護機能に関する構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
<1.スイッチング電源装置>
図1は、スイッチング電源装置の構成例を示す全体構成図である。
図1のスイッチング電源装置AAは、入力電圧Vinから入力電圧Vinよりも低い出力電圧Voutを生成する同期整流型降圧DC/DCコンバータとして構成されている。入力電圧Vinおよび出力電圧Voutは、正の直流電圧である。スイッチング電源装置AAは、電源制御装置としての電源IC1と、電源IC1の外部に設けられたインダクタL1、出力コンデンサC1、および帰還抵抗R1,R2と、を備える。
【0012】
図2に電源IC1の外観の例を示す。電源IC1は、半導体集積回路を樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品(半導体装置)であり、電源IC1を構成する各回路が半導体にて集積化されている。電源IC1としての電子部品の筐体には、IC1の外部に対し筐体から露出した外部端子が複数設けられている。なお、
図2に示される外部端子の数は例示に過ぎない。
【0013】
電源IC1に設けられる複数の外部端子の一部として、
図1には外部端子TM1~TM4が示されている。外部端子TM1は、入力電圧Vinの印加端に接続される。外部端子TM2は、後述のノードND1に接続される。外部端子TM3は、グランド電位の印加端に接続される。外部端子TM4には後述の帰還電圧V
FBが印加される。
【0014】
電源IC1は、出力トランジスタとしてのハイサイドスイッチ素子M1と、同期整流トランジスタとしてのローサイドスイッチ素子M2と、制御部10と、内部電源回路30と、を備えている。制御部10に属さず且つ内部電源回路30と異なるブロック(リセット回路、保護回路等)がさらに電源IC1に含まれうるが、ここでは、必要の無い限り、当該ブロックの図示および機能説明を省略する。ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2は、NMOSトランジスタ(Nチャネル型MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor))として構成されている。ただし、ハイサイドスイッチ素子M1をPMOSトランジスタ(Pチャネル型MOSFET)として構成する変形も可能である。なお、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2は、電源IC1の外部に設けてもよい。
【0015】
スイッチング電源装置AAは、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2を用いて同期整流方式にて直流-直流変換を行う。なお、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2を含む任意のトランジスタについて、当該トランジスタがオン状態となっている区間をオン区間と称することがあり、当該トランジスタがオフ状態となっている区間をオフ区間と称することがある。
【0016】
ハイサイドスイッチ素子M1のドレインは外部端子TM1に接続され、従って入力電圧Vinの入力を受ける。ハイサイドスイッチ素子M1のソースとローサイドスイッチ素子M2のドレインはノードND1にて接続される。ローサイドスイッチ素子M2のソースは外部端子TM3を介してグランド電位の印加端に接続される。ノードND1に生じる電圧をスイッチ電圧と称し、符号“Vsw”にて表す。インダクタL1の一端は外部端子TM2を介してノードND1に接続され、インダクタL1の他端はノードND2に接続される。ノードND2に出力電圧Voutが生じる。ノードND2とグランド電位の印加端との間に出力コンデンサC1が接続される。また、ノードND2とグランド電位の印加端との間に帰還抵抗R1,R2の直列回路が設けられる。従って、帰還抵抗R1およびR2間の接続ノードには出力電圧Voutの分圧である帰還電圧Vfbが生じる。帰還抵抗R1およびR2間の接続ノードが外部端子TM4に接続されることで、外部端子TM4に帰還電圧Vfbが印加される。なお、ハイサイドスイッチ素子M1をPMOSトランジスタとして構成する場合にあってはトランジスタのソースおよびドレインの関係が逆になる(即ち、ハイサイドスイッチ素子M1のソース、ドレインが、夫々、外部端子TM1、ノードND1に接続されることになる)。
【0017】
図1において、“LD”は、ノードND2とグランド電位の印加端との間に接続される負荷を表している。負荷LDは出力電圧Voutに基づき駆動される任意の負荷(マイクロコンピュータ等)である。ノードND2から負荷LDに流れる、負荷LDの消費電流を負荷電流と称し、記号“I
LD”にて表す。また、インダクタL1に流れる電流をインダクタ電流と称し、記号“I
L”にて表す。
【0018】
制御部10は、帰還電圧Vfbと、ハイサイドスイッチ素子M1に流れる電流に応じた後述のスロープ電圧Vslpとに基づき、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2のゲート電圧を制御することを通じてハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2のオン/オフを制御し、これによって出力電圧Voutを所定の目標電圧(例えば5V)に安定化させる。
図1の制御部10では、いわゆるカレントモード制御方式にてハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2を駆動することが可能となっている。内部電源回路30は、入力電圧Vinから所定の内部電源電圧Vregを生成する。制御部10内の各回路は内部電源電圧Vregに基づいて駆動される。
【0019】
制御部10の内部構成を説明する。制御部10は、エラーアンプ11、基準電圧源12、抵抗13、コンデンサ14、スロープ電圧生成部15、メインコンパレータ16、制御ロジック部17、ハイサイドプリドライバ18、ローサイドプリドライバ19、クロック生成部20、逆流検出部21、および逆流保護部22を備える。
【0020】
エラーアンプ11は、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプである。エラーアンプ11の反転入力端子(-)には外部端子TM4に加わる帰還電圧Vfbが供給される。基準電圧源12は所定の正の直流電圧である基準電圧Vrefを生成する。基準電圧Vrefはエラーアンプ11の非反転入力端子(+)に入力される。エラーアンプ11の出力端子は電源IC1内の配線であるラインLN1に接続される。なお、電源IC1にソフトスタート機能が設けられる場合には、エラーアンプ11に対しソフトスタート電圧も入力されるが、当該機能については後述するものとし、ここでは当該機能を無視する。
【0021】
エラーアンプ11は、負側対象電圧と正側対象電圧との差分に応じた誤差電圧Vcmpを生成する。ソフトスタート機能を無視した場合、負側対象電圧、正側対象電圧は、夫々、帰還電圧Vfb、基準電圧Vrefである。エラーアンプ11は、負側対象電圧と正側対象電圧との差分に応じた誤差電流信号による電荷をラインLN1に対して入出力することで、ラインLN1に誤差電圧Vcmpを生じさせる。具体的にはエラーアンプ11は、正側対象電圧が負側対象電圧よりも高いときには誤差電圧Vcmpが高くなるようにラインLN1に向けて誤差電流信号による電流を出力し、負側対象電圧が正側対象電圧よりも高いときには誤差電圧Vcmpが低くなるようにラインLN1からエラーアンプ11に向けて誤差電流信号による電流を引き込む。負側対象電圧と正側対象電圧との差分の絶対値が増大するにつれて、誤差電流信号による電流の大きさも増大する。
【0022】
ラインLN1とグランド電位の印加端との間には抵抗13およびコンデンサ14の直列回路が接続される。当該直列回路は位相補償部として機能し、エラーアンプ11と協働してラインLN1に誤差電圧Vcmpを生じさせる。具体的には抵抗13の一端がラインLN1に接続され、抵抗13の他端がコンデンサ14を介してグランド電位の印加端に接続される。抵抗13の抵抗値およびコンデンサ14の静電容量値を適切に設定することにより誤差電圧Vcmpの信号位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。なお、抵抗13およびコンデンサ14の双方または一方は、電源IC1の外部に設けられて、電源IC1に対して外付け接続されるものであってもよい。
【0023】
スロープ電圧生成部15は、ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間(すなわち、ハイサイドスイッチ素子M1がオン状態となっている区間)においてハイサイドスイッチ素子M1に流れる電流に応じたスロープ電圧Vslpを生成する。
【0024】
メインコンパレータ16は、スロープ電圧Vslpと誤差電圧Vcmpとを比較して比較結果を示す信号RSTを出力する。メインコンパレータ16の出力信号RSTの内、ハイレベルの信号RSTのみがリセット信号として機能し、ローレベルの信号RSTはリセット信号に該当しない。以下、メインコンパレータ16からハイレベルの信号RSTが出力されることを、リセット信号の発行または出力と表現することがある。メインコンパレータ16は、スロープ電圧Vslpおよび誤差電圧Vcmpに基づきリセット信号を発行するリセット信号生成部として機能する。
【0025】
クロック生成部20は、所定周波数のクロック信号CLKを生成する。クロック信号CLKは、制御ロジック部17および逆流保護部22の夫々に対して出力される。
【0026】
図3に、クロック信号CLKを示す。クロック信号CLKは、ローレベルからハイレベルへ立ち上がるアップエッジから次のアップエッジまでの期間Tclkを1周期として有する。期間Tclkの内、クロック信号CLKがハイレベルとなる期間Thは、クロック信号CLKがローレベルとなる期間Tlよりも長い。
【0027】
制御ロジック部17は、フリップフロップなどのロジック回路にて構成され、クロック生成部20からのクロック信号CLKとメインコンパレータ16からの信号RSTとに基づいて、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2の夫々のオン/オフ状態を指定する制御信号CNT1,CNT2を生成および出力する。ハイサイドプリドライバ18は、制御信号CNT1に基づいてハイサイドスイッチ素子M1のゲート信号G1を生成および出力する。ローサイドプリドライバ19は、制御信号CNT2に基づいてローサイドスイッチ素子M2のゲート信号G2を生成および出力する。
【0028】
ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2から成るブロックを、便宜上、出力段と称する。出力段の状態(すなわちスイッチ電圧Vswの状態)は、出力ハイ状態と、出力ロー状態と、Hi-Z状態の何れかとなる。出力ハイ状態では、M1、M2が夫々、オン状態、オフ状態である。出力ロー状態では、M1、M2が夫々、オフ状態、オン状態である。Hi-Z状態では、M1、M2が共にオフ状態である。制御ロジック部17は、ゲート信号G1、G2を、夫々、ハイレベル、ローレベルとすることで、出力段を出力ハイ状態とし、ゲート信号G1、G2を、夫々、ローレベル、ハイレベルとすることで、出力段を出力ロー状態とする。また、制御ロジック部17は、ゲート信号G1、G2をともにローレベルとすることで、出力段をHi-Z状態とする。
【0029】
上述のように構成された制御部10は、帰還電圧Vfbおよびスロープ電圧Vslpに基づき、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2を交互にオン、オフとする(即ち、出力段を出力ハイ状態と出力ロー状態間で切り替える)スイッチング動作を行うことで、基準電圧Vrefに応じた目標電圧に出力電圧Voutを安定化させることができ、スロープ電圧Vslpによる電流情報を用いることで負荷応答性を高めることができる。出力電圧Voutの情報に加えて(すなわち帰還電圧Vfbに加えて)電流情報を用いてハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2を制御する方式はカレントモード制御方式と称され、その制御はカレントモード制御と称される。
【0030】
なお、スイッチング動作において、出力段の状態を出力ハイ状態および出力ロー状態間で切り替える際、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2を通じた貫通電流の発生を抑止すべく、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2が同時にオフとされるデッドタイムが挿入されてもよい。
【0031】
スイッチング動作により、実質的に入力電圧Vinのレベルとグランド電位のレベルとでレベルが変動する矩形波状の電圧がスイッチ電圧Vswとして現れるが、当該スイッチ電圧VswがインダクタL1および出力コンデンサC1にて平滑化されることで直流の出力電圧Voutが得られる。
【0032】
スロープ電圧Vslpについて説明を補足する。ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中においてハイサイドスイッチ素子M1に流れる電流は、ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中におけるインダクタ電流ILに等しいため、スロープ電圧Vslpはハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中におけるインダクタ電流ILの情報を示している。すなわち、スロープ電圧Vslpは、ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中におけるハイサイドスイッチ素子M1またはインダクタL1の電流情報を含んでいる。当該電流情報を含むスロープ電圧Vslpの生成方法として公知の任意の方法を利用できる。
【0033】
図4Aにスロープ電圧生成部15の構成の例を示し、
図4Bにスロープ電圧Vslpに関与する電流および電圧の波形を示す。
図4Aのスロープ電圧生成部15は、IV変換部15Aと、ランプ電圧生成部15Bと、加算部15Cと、備える。IV変換部15Aは、ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中にハイサイドスイッチ素子M1に流れる電流(即ちハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中におけるインダクタ電流I
L)を電圧に変換することにより、当該電流に比例したセンス電圧Vsnsを生成する。ランプ電圧生成部15Bは、ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中において0Vを起点に徐々に増加する鋸波状のランプ電圧Vrmpを生成する。加算部15Cは、センス電圧Vsnsとランプ電圧Vrmpの和の電圧をスロープ電圧Vslpとして生成する。ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間以外の区間においてスロープ電圧Vslpは0Vである(但し、所定のバイアス電圧値を有していても良い)。周知の如く、ランプ電圧Vrmpの加算により、カレントモード制御における出力帰還ループの発振を抑制することができる。
【0034】
<2.基本スイッチング制御>
次に、負荷電流ILDが比較的大きい場合に制御部10にて実行可能な基本スイッチング制御について説明する。
【0035】
図5に基本スイッチング制御のタイミングチャートを示す。出力段が出力ロー状態であって且つクロック信号CLKがハイレベルであるタイミングt
A0を起点にして基本スイッチング制御を説明する。基本スイッチング制御において、タイミングt
A0ではスロープ電圧Vslpは0Vであり、その後、タイミングt
A1にてクロック信号CLKにアップエッジが生じると、制御ロジック部17が制御信号CNT1,CNT2を切り替えることで出力段は出力ロー状態から出力ハイ状態に切り替わる。出力段が出力ハイ状態である区間では、インダクタ電流I
Lが徐々に増大してゆき、これに連動してスロープ電圧Vslpも徐々に上昇してゆく。そして、誤差電圧Vcmp未満であったスロープ電圧Vslpがタイミングt
A2にて誤差電圧Vcmpにまで達すると、メインコンパレータ16の出力信号RSTがローレベルからハイレベルに切り替わる、即ちリセット信号が発行される。リセット信号の発行を受けてロジック制御部17により制御信号CNT1,CNT2が切り替わることで出力段は出力ハイ状態から出力ロー状態に切り替わる。出力段が出力ロー状態となると、速やかにスロープ電圧Vslpが0Vまで低下するため、信号RSTはローレベルに戻る。以後、同様の動作が繰り返される。
【0036】
このように、基本スイッチング制御では、基準周波数fCLK(期間Tclkの逆数)を有するクロック信号CLKのアップエッジに応答して出力段が出力ロー状態から出力ハイ状態に切り替わるため、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2は基準周波数fCLKにてPWM制御されることになる。即ち、基本スイッチング制御では、入力電圧Vinが基準周波数fCLKにてパルス幅変調されることで出力電圧Voutが得られる。“PWM”はパルス幅変調の略語である。
【0037】
<3.比較例に係る逆流保護機能>
ここでは、後に説明する本開示に係る逆流保護機能との対比としての比較例に係る逆流保護機能について説明する。すなわち、
図1に示す逆流検出部21および逆流保護部22について詳述する。
【0038】
図6には、比較例に係る逆流保護機能に関する構成を示す。
図6に示す逆流検出部21は、コンパレータ21Aから構成される。コンパレータ21の非反転入力端は、ノードND1に接続される。コンパレータ21の反転入力端は、逆流検出用の基準電圧RCrefの印加端に接続される。
【0039】
ここで、
図6に示すように、ノードND1から出力コンデンサC1側へのインダクタ電流I
Lの流れる方向を正方向(
図6の実線矢印)とし、出力コンデンサC1からノードND1側へのインダクタ電流I
Lの流れる方向を負方向(
図6の破線矢印)とする。負方向が逆流方向である。コンパレータ21Aは、ローサイドスイッチM2がオン状態のときに、ローサイドスイッチM2を負方向に流れるインダクタ電流I
L(逆流電流I
L1)を検出する。逆流電流I
L1とローサイドスイッチ素子M2のオン抵抗によりノードND1に生じる電圧が基準電圧RCrefを上回った場合、逆流電流I
L1が所定の逆流検出閾値電流(0Aよりも大きさが大きい閾値電流)を上回ったとして、コンパレータ21Aは、ハイレベルのコンパレータ出力信号CPOUTを出力する。これにより、逆流検出部21は、ローサイドスイッチ素子M2に流れる逆流電流I
L1の過電流を検出する。従って、逆流検出部21は、逆流のいわゆるゼロクロスを検出するものとは異なる。なお、コンパレータ21Aは、ローサイドスイッチM2がオフ状態の場合は、コンパレータ出力信号CPOUTをローレベルとする。
【0040】
比較例に係る逆流保護機能の動作について、
図7に示すタイミングチャートを参照して説明する。
図7においては、上段から順に、クロック信号CLK、スイッチ電圧Vsw、コンパレータ出力信号CPOUT、インダクタ電流I
L、および、負荷電流I
LDの波形例を示す。
図7において、0Aの電流レベルと、逆流検出閾値電流RCthを示している。0Aレベルよりも下方の電流は、負方向の電流を示し、0Aレベルよりも上方の電流は、正方向の電流を示し、0Aレベルより離れるほど、電流の大きさは大きくなる。逆流検出閾値電流RCthは、負方向の0Aよりも大きさが大きい閾値電流である。また、負荷電流I
LDの負方向とは、負荷LDから出力コンデンサC1側へ流れる方向である。
【0041】
まず、通常動作として、タイミングt1でクロック信号CLKのアップエッジが発生すると、ハイサイドスイッチ素子M1がオン状態、ローサイドスイッチ素子M2がオフ状態とされる。これにより、負方向のインダクタ電流I
Lは、逆流電流I
L2(
図6)としてオン状態のハイサイドスイッチ素子M1を流れ、インダクタ電流I
Lの大きさは時間とともに減少する。
【0042】
そして、タイミングt2でリセット信号が発行されると、ハイサイドスイッチ素子M1がオフ状態、ローサイドスイッチ素子M2がオン状態とされる。これにより、負方向のインダクタ電流I
Lは、逆流電流I
L1(
図6)としてオン状態のローサイドスイッチ素子M2を流れ、インダクタ電流I
Lの大きさは時間とともに増加する。そして、タイミングt3でクロック信号CLKのアップエッジが発生すると、再びハイサイドスイッチ素子M1がオン状態、ローサイドスイッチ素子M2がオフ状態とされ、インダクタ電流I
Lの大きさが減少を開始する。以降、同様の動作が繰り返される。
【0043】
図7の例では、負方向の負荷電流I
LDにより、負方向のインダクタ電流I
Lの大きさが徐々に大きくなり、タイミングt4において、ローサイドスイッチ素子M2がオン状態でのインダクタ電流I
Lが逆流検出閾値電流RCthに到達する。すると、逆流検出部21におけるコンパレータ21Aのコンパレータ出力信号CPOUTがハイレベルとなり、逆流保護部22はこれを受けてシャットダウンが行われる。ここでは、逆流保護部22は、ハイサイドスイッチ素子M1とローサイドスイッチ素子M2ともにオフ状態とする。これにより、逆流電流I
L2がハイサイドスイッチ素子M1のボディダイオードBDを介して流れ、0Aまで逆流電流I
L2の大きさが減少する。このとき、スイッチ電圧Vswは、通常動作時の値よりボディダイオードBDのVfだけ高い値となる。この場合、逆流検出部21により検出する電流分、寄生トランジスタに電流を流すことになり、寄生トランジスタを起因とする誤動作のリスクが高くなる。
【0044】
<4.逆流保護機能>
<<第1実施形態>>
上記のような比較例における課題に鑑み、以下説明する本開示の実施形態に係る逆流保護機能が実施される。
図8は、本開示の第1実施形態に係る逆流保護機能に関する構成を示す図である。
【0045】
図8に示すように、逆流検出部21は、コンパレータ21Aを有し、基本的には先述した比較例に係る構成(
図6)と同様であるが、逆流検出用の基準電圧RCrefは可変とされている。
【0046】
逆流保護部22は、スイッチング制御部221と、可変制御部222と、を有する。スイッチング制御部221は、逆流保護のためのハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2のスイッチング制御を行うように構成される。スイッチング制御部221は、ロジック制御部17、ハイサイドプリドライバ18およびローサイドプリドライバ19を介してスイッチング制御を行う。なお、スイッチング制御部221は、クロック信号CLKをカウント可能に構成される第1タイマー221Aを有する。可変制御部222は、基準電圧RCRefの可変制御を行うように構成される。可変制御部222は、クロック信号CLKをカウント可能に構成される第2タイマー222Aを有する。
【0047】
図8に示す構成による逆流保護機能の動作について、
図9に示すタイミングチャートを参照して説明する。
図9においては、上段から順に、クロック信号CLK、スイッチ電圧Vsw、コンパレータ出力信号CPOUT、および、インダクタ電流I
Lの波形例を示す。
図9において、先述した
図7と同様に、0Aの電流レベルと、逆流検出閾値電流RCthを示している。
【0048】
また、
図9において、逆流保護スイッチング制御のイネーブル状態を示すイネーブル状態ENBを示している。イネーブル状態ENBがローレベルでディセーブルを示し、イネーブル状態ENBがハイレベルでイネーブルを示している。また、
図9においては、可変制御信号Svをさらに示している。可変制御信号Svがローレベルの場合に、基準電圧RCrefは0Vよりも大きい正の所定電圧とされ、可変制御信号Svがハイレベルの場合に、基準電圧RCrefは0Vとされる。すなわち、可変制御信号Svがローレベルの場合に、逆流電流I
L1(
図8)における過電流検出が選択され、可変制御信号Svがハイレベルの場合に、逆流電流I
L1のゼロクロス検出が選択される。
【0049】
ただし、可変制御信号Svがハイレベルの場合に、基準電圧RCrefは必ずしも0Vでなく、0Vとは異なる0V付近の値としてもよい。すなわち、逆流電流IL1のゼロクロス検出は、0A付近の閾値による検出であればよい。
【0050】
図9において、タイミングt11~t13の動作は、先述した比較例におけるタイミングt1~t3(
図7)の動作と同様の通常動作であり、詳述は省く。なお、通常動作時には、逆流保護スイッチング制御はディセーブルであり(ENB=ローレベル)、可変制御信号Svは、基準電圧RCrefとして正の所定電圧を選択している。
図9の例では、このような通常動作が繰り返され、負方向のインダクタ電流I
Lの大きさが徐々に大きくなり、ローサイドスイッチ素子M2がオン状態のときに、タイミングt14にてインダクタ電流I
L(逆流電流I
L1)が逆流検出閾値電流RCthに到達する。
【0051】
このとき、ノードND1の電圧が正の電圧である基準電圧RCrefを上回り、コンパレータ21Aからハイレベルのコンパレータ出力信号CPOUTが出力される。これを受け、逆流保護部22において、逆流保護スイッチング制御がイネーブルとなり(ENB=ハイレベル)、スイッチング制御部221は、逆流保護のためのスイッチング制御を開始する。このとき、第1タイマー221Aは、クロック信号CLKのカウントを開始する。
【0052】
一方、上記のようにコンパレータ21Aからハイレベルのコンパレータ出力信号CPOUTが出力されることを受け、可変制御部222は、可変制御信号Svにより基準電圧RCrefとして0Vを選択する(Sv=ハイレベル)。このとき、第2タイマー222Aは、クロック信号CLKのカウントを開始する。
【0053】
スイッチング制御部221は、逆流保護動作を開始すると、ハイサイドスイッチ素子M1をオン状態、ローサイドスイッチ素子M2をオフ状態へ切り替え、次のクロック信号CLKのダウンエッジの発生(
図9ではタイミングt15)までその状態を維持させる。これにより、負方向のインダクタ電流I
L(逆流電流I
L2)の大きさが時間とともに減少する。
【0054】
ただし、ハイサイドスイッチ素子M1をオン状態、ローサイドスイッチ素子M2をオフ状態へ切り替えてから、所定の最小オン時間を経過する前に次のダウンエッジが発生した場合は、そのダウンエッジは無視し、さらに次のダウンエッジの発生まで状態を維持させる。これにより、クロック信号CLKのダウンエッジ直前に逆流保護動作が開始された場合などに、すぐにダウンエッジが発生してしまい、ハイサイドスイッチ素子M1のオン状態の期間が短くなりすぎることを回避できる。
【0055】
タイミングt15で次のダウンエッジが発生すると、スイッチング制御部221は、ハイサイドスイッチ素子M1をオフ状態、ローサイドスイッチ素子M2をオン状態へ切り替え、コンパレータ21Aの出力(コンパレータ出力信号CPOUT)の監視を開始する。これにより、負方向のインダクタ電流IL(逆流電流IL1)の大きさが時間とともに増加する。コンパレータ21Aの出力がハイレベルとなった場合に、スイッチング制御部221は、ハイサイドスイッチ素子M1をオン状態、ローサイドスイッチ素子M2をオフ状態へ切り替える。すなわち、可変制御信号Svにより基準電圧RCref=0Vとされているため、0A(=逆流検出閾値電流)よりも大きい逆流電流IL1が検出されると、ハイサイドスイッチ素子M1をオン状態、ローサイドスイッチ素子M2をオフ状態へ切り替える。
【0056】
図9のように、タイミングt15の時点でインダクタ電流I
Lは負方向であるため、すぐに逆流が検出され、タイミングt16にてハイサイドスイッチ素子M1がオン状態、ローサイドスイッチ素子M2がオフ状態へ切り替えられる。その後、クロック信号CLKのダウンエッジの発生までその状態が維持される。タイミングt17でダウンエッジが発生すると、スイッチング制御部221は、ハイサイドスイッチ素子M1をオフ状態、ローサイドスイッチ素子M2をオン状態へ切り替える。そして、すぐにコンパレータ21Aにより逆流が検出されるため、タイミングt18にてハイサイドスイッチ素子M1がオン状態、ローサイドスイッチ素子M2がオフ状態へ切り替えられる。
【0057】
その後、クロック信号CLKのダウンエッジの発生までその状態が維持される。タイミングt19にてダウンエッジが発生すると、第1タイマー221Aは、第1所定個数(ここでは3個)のクロック信号CLKをカウントしたとして、逆流保護スイッチング制御をディセーブルに切り替える(ENB=ローレベル)。これにより、スイッチング制御部221は、逆流保護のためのスイッチング制御を停止し、ハイサイドスイッチ素子M1をオフ状態、ローサイドスイッチ素子M2をオン状態へ切り替える。スイッチング制御部221は、コンパレータ21Aの出力を監視し、コンパレータ21Aの出力がハイレベルになると、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2ともにオフ状態として、スイッチングを停止する。すなわち、ローサイドスイッチ素子M2を流れる電流のゼロクロスが検出されると、スイッチングが停止される。
図9では、タイミングt20にてゼロクロスが検出され、スイッチングが停止される。
【0058】
このように、本実施形態では、オン状態でのローサイドスイッチ素子M2に流れる逆流電流の過電流(逆流検出閾値電流)が検出されると、スイッチング制御部221により次のクロック信号CLKのダウンエッジまでハイサイドスイッチ素子M1をオン状態に維持する制御と、逆流検出閾値電流を0Aに切り替えての逆流検出制御を繰り返すことで、負方向(逆流方向)のインダクタ電流ILの大きさを0Aに向かって減少させてゆき(デガウス動作)、インダクタ電流ILが0Aとなってからスイッチングの停止が行われる。これにより、オフ状態であるハイサイドスイッチ素子M1のボディダイオードBDに逆流電流が流れることを抑制し、寄生動作による不具合を抑制できる。従って、安全にスイッチングの停止を行うことができる。
【0059】
なお、第1タイマー221Aは、負方向のインダクタ電流I
Lの大きさを充分に低減させることができる逆流保護スイッチング制御のイネーブルの期間(ENB=ハイレベルの期間)を確保するための第1所定個数のクロック信号CLKをカウントする。第1所定個数は、
図9の例では3個としたが、3個以外でもよい。
【0060】
また、第1タイマー221Aが第1所定個数のクロック信号CLKをカウントした後に、第2タイマー222Aが第2所定個数のクロック信号CLKをカウントする。第2所定個数は、第1所定個数より多い。
図9の例では、タイミングt19の後、4個とした第2所定個数のクロックCLKがタイミングt21にてカウントされる。これにより、可変制御部222は、可変制御信号Svにより基準電圧RCrefを0Vから所定の正の電圧に切り替える(Sv=ローレベル)。これにより、逆流検出部21における検出は、ゼロクロス検出から逆流電流の過電流検出に切り替わる。第2所定個数を第1所定個数よりも多くすることで、なるべく長い期間、逆流検出部21での検出をゼロクロス検出にすることができ、より確実にインダクタ電流I
Lを0Aとした状態でスイッチングを停止できる。
【0061】
また、逆流保護状態のときにチップイネーブルOFF動作が指示された場合は、上記のように逆流検出部21の検出が切り替わってから(タイミングt21の後)、チップイネーブルOFF動作を実行すればよい。また、チップイネーブルOFF動作が指示されていない場合は、上記のように逆流検出部21の検出が切り替わってから通常動作に戻ればよい。
【0062】
<<第2実施形態>>
次に、本開示の第2実施形態に係る逆流保護機能について説明する。本実施形態での構成は、先述の
図8で示した構成(第1実施形態)において、タイマー221A,222Aを設けない構成とすればよい。
【0063】
本実施形態に係る逆流保護機能の動作について、
図10に示すタイミングチャートを参照して説明する。本実施形態では、逆流検出部21により逆流電流の過電流が検出されると(タイミングt14)、スイッチング制御部221により、次のクロック信号CLKのダウンエッジまでハイサイドスイッチ素子M1をオン状態に維持する制御と、逆流検出閾値電流を0Aに切り替えての逆流検出制御を繰り返すことで、逆流保護のためのスイッチング制御を行うことは第1実施形態と同様である。本実施形態では、上記のようなスイッチング制御を行うとともに、逆流保護部22は、ローサイドスイッチ素子M2をオン状態としている場合に、コンパレータ21Aの出力がローレベルからハイレベルへ切り替わるかを監視する。すなわち、可変制御信号Svにより基準電圧RCref=0Vとされているため、ローサイドスイッチ素子M2を流れる正方向のインダクタ電流I
Lが負方向に切り替わるゼロクロスを監視する。
【0064】
図10の例では、タイミングt19(
図9と同様)でローサイドスイッチ素子M2がオン状態へ切り替わった後、タイミングt20でインダクタ電流I
Lのゼロクロスが検出される。なお、
図10に示すように、タイミングt17などのように逆流電流I
L2(負方向のインダクタ電流I
L)が流れているときにローサイドスイッチ素子M2がオン状態に切り替えられた場合は、短い期間T1ですぐにゼロクロスが検出されるが、タイミングt19のように正方向のインダクタ電流I
Lが流れているときにローサイドスイッチ素子M2がオン状態に切り替えられた場合、期間T1よりも長い期間T2の経過後にゼロクロスが検出される。従って、ローサイドスイッチ素子M2がオン状態に切り替えられてから所定期間以上経過後にゼロクロスが検出されるかを監視する。スイッチング制御部221は、ゼロクロスが検出されると、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2ともにオフ状態とし、スイッチングを停止する。このとき、逆流保護スイッチング制御がディセーブル(ENB=ローレベル)とされ、可変制御部222は、可変制御信号Svにより基準電圧RCrefを0Vから正の電圧へ切り替える。
【0065】
このような本実施形態によっても、逆流電流の過電流が検出された場合に、インダクタ電流ILを0Aとしてからスイッチングを停止するため、安全にスイッチングを停止できる。特に、本実施形態では、第1実施形態のようなタイマー制御が不要となる。
【0066】
<<第3実施形態>>
次に、本開示の第3実施形態に係る逆流保護機能について説明する。
図11に、本実施形態に係る逆流保護機能に関する構成を示す。
【0067】
図11に示す構成においては、逆流検出部21は、コンパレータ21Aに加えて、コンパレータ21Bを有する。コンパレータ21Aは、第1実施形態と同様に、ノードND1の電圧と基準電圧RCrefとを比較するが、第1実施形態と異なり、基準電圧RCrefは可変ではなく、固定である。また、コンパレータ21Bの非反転入力端は、ノードND1に接続され、コンパレータ21Bの反転入力端は、グランド電位の印加端に接続される。これにより、コンパレータ21Bは、ローサイドスイッチ素子M2を流れる電流のゼロクロスを検出する。また、
図11に示す構成においては、逆流保護部22は、可変制御部は有さず、スイッチング制御部221を有する。
【0068】
図11に示す構成による逆流保護動作では、第1実施形態または第2実施形態における制御において、基準電圧RCref=0Vとしたコンパレータ21Aに基づく制御を、ゼロクロス検出用のコンパレータ21Bに基づく制御に置き換えればよい。このような本実施形態によれば、基準電圧RCrefを可変させるための構成が不要となる。
【0069】
<5.その他>
なお、本開示に係る種々の技術的特徴は、上記実施形態の他、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0070】
<6.付記>
以上の通り、例えば、本開示に係る電源制御装置(1)は、
入力電圧(Vin)の印加端とグランド電位の印加端との間に直列に接続されるハイサイドスイッチ素子(M1)およびローサイドスイッチ素子(M2)と、
前記ハイサイドスイッチ素子と前記ローサイドスイッチ素子とが接続されるノードに接続される第1端を有するインダクタ(L1)と、
前記インダクタの第2端に接続される出力コンデンサ(C1)と、を備える同期整流型降圧DC/DCコンバータ(AA)に用いられる電源制御装置であって、
オン状態の前記ローサイドスイッチ素子に流れる逆流電流を検出する逆流検出部(21)と、
前記逆流検出部により前記逆流電流の過電流が検出された場合に、クロック信号(CLK)のエッジ発生まで前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態で維持する第1制御と、前記エッジ発生により前記ハイサイドスイッチ素子をオフ状態、前記ローサイドスイッチ素子をオン状態に切り替えてから前記逆流検出部により前記逆流電流のゼロクロスが検出された場合に前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態に切り替える第2制御と、前記第1制御および前記第2制御の繰り返しの後に前記ハイサイドスイッチ素子および前記ローサイドスイッチ素子ともにオフ状態とする第3制御と、を実行可能に構成されるスイッチング制御部(221)を有する逆流保護部(22)と、を備える(第1の構成)。
【0071】
また、上記第1の構成において、前記逆流検出部(21)は、前記ノード(ND1)に接続可能な第1入力端と、基準電圧(RCref)の印加端に接続可能な第2入力端と、を含むコンパレータ(21A)を有し、前記逆流保護部(22)は、前記基準電圧を可変制御する可変制御部(222)を有する構成としてもよい(第2の構成)。
【0072】
また、上記第1の構成において、前記逆流検出部(21)は、前記ノード(ND1)に接続可能な第1入力端と、基準電圧(RCref)の印加端に接続可能な第2入力端と、を含む第1コンパレータ(21A)と、前記ノードに接続可能な第1入力端と、グランド電位の印加端に接続可能な第2入力端と、を含む第2コンパレータ(21B)と、を有する構成としてもよい(第3の構成)。
【0073】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記スイッチング制御部(221)は、第1タイマー(221A)を有し、前記第1タイマーにより前記クロック信号(CLK)を第1所定個数カウントするまで、前記第1制御および前記第2制御を繰り返し実行可能に構成される構成としてもよい(第4の構成)。
【0074】
また、上記第4の構成において、前記逆流検出部(21)は、前記ノード(ND1)に接続可能な第1入力端と、基準電圧(RCref)の印加端に接続可能な第2入力端と、を含むコンパレータ(21A)を有し、前記逆流保護部(22)は、前記基準電圧を可変制御する可変制御部(222)を有し、前記可変制御部は、第2タイマー(222A)を有し、前記逆流電流の過電流が検出されてから、前記第2タイマーにより前記クロック信号(CLK)を前記第1所定個数よりも多い第2所定個数カウントするまで前記基準電圧を0V付近に制御可能に構成される構成としてもよい(第5の構成)。
【0075】
また、上記第5の構成において、前記電源制御装置(1)をシャットダウンさせる指示が前記逆流保護部(222)による保護動作のときにあった場合、前記第2所定個数のカウント後にシャットダウンが行われる構成としてもよい(第6の構成)。
【0076】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記スイッチング制御部(221)は、前記第1制御および前記第2制御を繰り返し実行しつつ、前記逆流検出部(21)によりオン状態の前記ローサイドスイッチ素子(M2)を流れる電流の正方向から負方向へ切り替わるゼロクロスが検出されるかを監視可能に構成される構成としてもよい(第7の構成)。
【0077】
また、本開示の別態様は、上記いずれかの構成とした電源制御装置(1)と、前記ハイサイドスイッチ素子(M1)および前記ローサイドスイッチ素子(M2)と、前記インダクタ(L1)と、前記出力コンデンサ(C1)と、を備える同期整流型降圧DC/DCコンバータ(AA)である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示は、同期整流型降圧DC/DCコンバータに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 電源IC
10 制御部
11 エラーアンプ
12 基準電圧源
13 抵抗
14 コンデンサ
15 スロープ電圧生成部
15A IV変換部
15B ランプ電圧生成部
15C 加算部
16 メインコンパレータ
17 ロジック制御部
18 ハイサイドプリドライバ
19 ローサイドプリドライバ
20 クロック生成部
21 逆流検出部
21A,21B コンパレータ
22 逆流保護部
30 内部電源回路
221 スイッチング制御部
221A 第1タイマー
222 可変制御部
222A 第2タイマー
AA スイッチング電源装置
BD ボディダイオード
C1 出力コンデンサ
L1 インダクタ
LD 負荷
M1 ハイサイドスイッチ素子
M2 ローサイドスイッチ素子
R1,R2 帰還抵抗
TM1~TM4 外部端子