(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082754
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】電源制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
H02M3/155 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196652
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和智 貴嗣
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB57
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD26
5H730FG05
5H730XX04
5H730XX15
5H730XX26
5H730XX35
5H730XX43
5H730ZZ13
(57)【要約】
【課題】回路規模の増加を抑制しつつ、ハイサイドスイッチ素子に流れる過電流に対する保護機能の高精度化を行うことができる電源制御装置を提供する。
【解決手段】ハイサイド過電流保護部(22)は、オン状態のハイサイドスイッチ素子(M1)に流れる過電流を検出可能に構成される過電流検出部(22A)と、前記過電流検出部から出力される検出信号(HDET)に基づき保護制御を実行可能に構成される保護制御部(22B)と、を有し、通常動作において前記過電流検出部により前記過電流が検出された場合、スイッチング制御部(17,18)は、前記ハイサイドスイッチ素子をオフ状態、ローサイドスイッチ素子(M2)をオン状態へ切り替え、前記保護制御部による制御に基づき第1オントリガー信号(SET1)のオントリガーを少なくとも1回無視する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧の印加端とグランド電位の印加端との間に直列に接続されるハイサイドスイッチ素子およびローサイドスイッチ素子と、
前記ローサイドスイッチ素子に接続される第1端を有するインダクタと、
前記インダクタの第2端に接続される出力コンデンサと、を備える同期整流型降圧DC/DCコンバータに用いられる電源制御装置であって、
前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態へ切り替える契機であるオントリガーを含む第1オントリガー信号を生成可能に構成される第1信号生成回路と、
通常動作において、前記第1オントリガー信号の前記オントリガーごとに前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態へ切り替え可能に構成されるスイッチング制御部と、
ハイサイド過電流保護部と、
を備え、
前記ハイサイド過電流保護部は、
オン状態の前記ハイサイドスイッチ素子に流れる過電流を検出可能に構成される過電流検出部と、
前記過電流検出部から出力される検出信号に基づき保護制御を実行可能に構成される保護制御部と、
を有し、
前記過電流検出部により前記過電流が検出された場合、前記スイッチング制御部は、前記ハイサイドスイッチ素子をオフ状態、前記ローサイドスイッチ素子をオン状態へ切り替え、前記保護制御部による制御に基づき前記第1オントリガー信号の前記オントリガーを少なくとも1回無視する、電源制御装置。
【請求項2】
前記第1オントリガー信号よりも周波数が低い第2オントリガー信号を生成可能に構成される第2信号生成部と、
前記保護制御部から出力される選択信号に応じて、前記第1オントリガー信号と前記第2オントリガー信号のうち一方を選択して前記スイッチング制御部に対して出力可能に構成されるセレクタと、
をさらに備える、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
クロック信号を生成するクロック生成部をさらに備え、
前記第1信号生成部は、前記クロック信号のダウンエッジに対するアップエッジを含む前記第1オントリガー信号を生成し、
前記第2信号生成部は、前記クロック信号のダウンエッジに対するアップエッジを含む前記第2オントリガー信号を生成する、請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記第1オントリガー信号および前記第2オントリガー信号は、クロック信号であり、
前記オントリガーは、前記クロック信号のアップエッジである、請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記保護制御部は、前記過電流検出部により前記過電流が検出された場合、所定時間だけレベルを変化させたワンショットパルスを出力可能に構成されるワンショットパルス生成部として構成され、
当該電源制御装置は、前記ワンショットパルスに基づき前記第1オントリガー信号をマスクするか否かを切り替えるマスク部をさらに備える、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電源制御装置と、
前記ハイサイドスイッチ素子および前記ローサイドスイッチ素子と、
前記インダクタと、
前記出力コンデンサと、を備える、同期整流型降圧DC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる同期整流型降圧DC/DCコンバータが知られている(例えば特許文献1参照)。同期整流型降圧DC/DCコンバータでは、ハイサイドスイッチ素子とローサイドスイッチ素子をスイッチングすることにより、入力電圧をそれよりも低い出力電圧に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同期整流型降圧DC/DCコンバータにおいては、入力電圧の印加端とグランド電位の印加端との間にハイサイドスイッチ素子とローサイドスイッチ素子が直列に接続される。ハイサイドスイッチ素子とローサイドスイッチ素子とが接続されるノードには、インダクタの一端が接続される。従来、同期整流型降圧DC/DCコンバータに用いられる電源ICにおいて、ハイサイドスイッチ素子に流れる過電流に対して保護を行う保護機能を有するものがある。
【0005】
近年、電源ICに対する外付け部品であるインダクタに安価なものを用いる傾向があり、この場合、電源IC側における過電流検出レベルの高精度化が要求され、補正回路またはトリミング機能の追加など、IC内部の回路規模が増加する傾向となっている。
【0006】
上記状況に鑑み、本開示は、同期整流型降圧DC/DCコンバータに用いられる電源制御装置であって、回路規模の増加を抑制しつつ、ハイサイドスイッチ素子に流れる過電流に対する保護機能の高精度化を行うことができる電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、本開示に係る電源制御装置は、
入力電圧の印加端とグランド電位の印加端との間に直列に接続されるハイサイドスイッチ素子およびローサイドスイッチ素子と、
前記ローサイドスイッチ素子に接続される第1端を有するインダクタと、
前記インダクタの第2端に接続される出力コンデンサと、を備える同期整流型降圧DC/DCコンバータに用いられる電源制御装置であって、
前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態へ切り替える契機であるオントリガーを含む第1オントリガー信号を生成可能に構成される第1信号生成回路と、
通常動作において、前記第1オントリガー信号の前記オントリガーごとに前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態へ切り替え可能に構成されるスイッチング制御部と、
ハイサイド過電流保護部と、
を備え、
前記ハイサイド過電流保護部は、
オン状態の前記ハイサイドスイッチ素子に流れる過電流を検出可能に構成される過電流検出部と、
前記過電流検出部から出力される検出信号に基づき保護制御を実行可能に構成される保護制御部と、
を有し、
前記過電流検出部により前記過電流が検出された場合、前記スイッチング制御部は、前記ハイサイドスイッチ素子をオフ状態、前記ローサイドスイッチ素子をオン状態へ切り替え、前記保護制御部による制御に基づき前記第1オントリガー信号の前記オントリガーを少なくとも1回無視する構成としている。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電源制御装置によれば、回路規模の増加を抑制しつつ、ハイサイドスイッチ素子に流れる過電流に対する保護機能の高精度化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、比較例に係るスイッチング電源装置の構成を示す全体構成図である。
【
図2】
図2は、電源ICの外観の例を示す図である。
【
図3】
図3は、信号SET、RST、CNT、G1およびG2の関係を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、スロープ電圧生成部の構成例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、スロープ電圧に関与する電流および電圧の波形例を示す図である。
【
図5】
図5は、クロック信号とセット信号の波形例を示す図である。
【
図6】
図6は、基本スイッチング制御の一例を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、比較例に係る過電流保護機能に関する構成を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の第1実施形態に係るスイッチング電源装置の全体構成を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る過電流保護機能に関する構成を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る過電流保護機能の動作例を示すタイミングチャートである。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る過電流保護機能に関する構成を示す図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る過電流保護機能の動作例を示すタイミングチャートである。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る過電流保護機能に関する構成を示す図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係る過電流保護機能の動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
<1.比較例>
ここでは、後に説明する本開示に係る実施形態との対比をするための比較例について説明する。当該比較例との対比において、本開示の有用な点が明らかになる。
<<比較例に係るスイッチング電源装置の構成>>
図1は、比較例に係るスイッチング電源装置の構成を示す全体構成図である。
図1のスイッチング電源装置AAは、入力電圧Vinから入力電圧Vinよりも低い出力電圧Voutを生成する同期整流型降圧DC/DCコンバータとして構成されている。入力電圧Vinおよび出力電圧Voutは、正の直流電圧である。スイッチング電源装置AAは、電源制御装置としての電源IC1と、電源IC1の外部に設けられたインダクタL1、出力コンデンサC1、および帰還抵抗R1,R2と、を備える。
【0012】
図2に電源IC1の外観の例を示す。電源IC1は、半導体集積回路を樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品(半導体装置)であり、電源IC1を構成する各回路が半導体にて集積化されている。電源IC1としての電子部品の筐体には、IC1の外部に対し筐体から露出した外部端子が複数設けられている。なお、
図2に示される外部端子の数は例示に過ぎない。
【0013】
電源IC1に設けられる複数の外部端子の一部として、
図1には外部端子TM1~TM4が示されている。外部端子TM1は、入力電圧Vinの印加端に接続される。外部端子TM2は、後述のノードND1に接続される。外部端子TM3は、グランド電位の印加端に接続される。外部端子TM4には後述の帰還電圧Vfbが印加される。
【0014】
電源IC1は、出力トランジスタとしてのハイサイドスイッチ素子M1と、同期整流トランジスタとしてのローサイドスイッチ素子M2と、制御部10と、内部電源回路30と、を備えている。制御部10に属さず且つ内部電源回路30と異なるブロック(リセット回路、保護回路等)がさらに電源IC1に含まれうるが、ここでは、必要の無い限り、当該ブロックの図示および機能説明を省略する。ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2は、NMOSトランジスタ(Nチャネル型MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor))として構成されている。ただし、ハイサイドスイッチ素子M1をPMOSトランジスタ(Pチャネル型MOSFET)として構成する変形も可能である。なお、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2は、電源IC1の外部に設けてもよい。
【0015】
スイッチング電源装置AAは、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2を用いて同期整流方式にて直流-直流変換を行う。なお、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2を含む任意のトランジスタについて、当該トランジスタがオン状態となっている区間をオン区間と称することがあり、当該トランジスタがオフ状態となっている区間をオフ区間と称することがある。
【0016】
ハイサイドスイッチ素子M1のドレインは外部端子TM1に接続され、従って入力電圧Vinの入力を受ける。ハイサイドスイッチ素子M1のソースとローサイドスイッチ素子M2のドレインはノードND1にて接続される。ローサイドスイッチ素子M2のソースは外部端子TM3を介してグランド電位の印加端に接続される。ノードND1に生じる電圧をスイッチ電圧と称し、符号“Vsw”にて表す。インダクタL1の一端は外部端子TM2を介してノードND1に接続され、インダクタL1の他端はノードND2に接続される。ノードND2に出力電圧Voutが生じる。ノードND2とグランド電位の印加端との間に出力コンデンサC1が接続される。また、ノードND2とグランド電位の印加端との間に帰還抵抗R1,R2の直列回路が設けられる。従って、帰還抵抗R1およびR2間の接続ノードには出力電圧Voutの分圧である帰還電圧Vfbが生じる。帰還抵抗R1およびR2間の接続ノードが外部端子TM4に接続されることで、外部端子TM4に帰還電圧Vfbが印加される。なお、ハイサイドスイッチ素子M1をPMOSトランジスタとして構成する場合にあってはトランジスタのソースおよびドレインの関係が逆になる(即ち、ハイサイドスイッチ素子M1のソース、ドレインが、夫々、外部端子TM1、ノードND1に接続されることになる)。
【0017】
図1において、“LD”は、ノードND2とグランド電位の印加端との間に接続される負荷を表している。負荷LDは出力電圧Voutに基づき駆動される任意の負荷(マイクロコンピュータ等)である。ノードND2から負荷LDに流れる、負荷LDの消費電流を負荷電流と称し、記号“I
LD”にて表す。また、インダクタL1に流れる電流をインダクタ電流と称し、記号“I
L”にて表す。
【0018】
制御部10は、帰還電圧Vfbと、ハイサイドスイッチ素子M1に流れる電流に応じた後述のスロープ電圧Vslpとに基づき、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2のゲート電圧を制御することを通じてハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2のオン/オフを制御し、これによって出力電圧Voutを所定の目標電圧(例えば5V)に安定化させる。
図1の制御部10では、いわゆるカレントモード制御方式にてハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2を駆動することが可能となっている。内部電源回路30は、入力電圧Vinから所定の内部電源電圧Vregを生成する。制御部10内の各回路は内部電源電圧Vregに基づいて駆動される。
【0019】
制御部10の内部構成を説明する。制御部10は、エラーアンプ11、基準電圧源12、抵抗13、コンデンサ14、スロープ電圧生成部15、メインコンパレータ16、制御信号生成部17、ゲートドライバ18、クロック生成部19、セット信号生成部20、マスク部21、ハイサイド過電流保護部22、およびローサイド過電流保護部23を備えている。なお、制御信号生成部17とゲートドライバ18とから、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2のスイッチングを行うスイッチング制御部が構成される。
【0020】
エラーアンプ11は、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプである。エラーアンプ11の反転入力端子(-)には外部端子TM4に加わる帰還電圧Vfbが供給される。基準電圧源12は所定の正の直流電圧である基準電圧Vrefを生成する。基準電圧Vrefはエラーアンプ11の非反転入力端子(+)に入力される。エラーアンプ11の出力端子は電源IC1内の配線であるラインLN1に接続される。なお、電源IC1にソフトスタート機能が設けられる場合には、エラーアンプ11に対しソフトスタート電圧も入力されるが、当該機能については後述するものとし、ここでは当該機能を無視する。
【0021】
エラーアンプ11は、負側対象電圧と正側対象電圧との差分に応じた誤差電圧Vcmpを生成する。ソフトスタート機能を無視した場合、負側対象電圧、正側対象電圧は、夫々、帰還電圧Vfb、基準電圧Vrefである。エラーアンプ11は、負側対象電圧と正側対象電圧との差分に応じた誤差電流信号による電荷をラインLN1に対して入出力することで、ラインLN1に誤差電圧Vcmpを生じさせる。具体的にはエラーアンプ11は、正側対象電圧が負側対象電圧よりも高いときには誤差電圧Vcmpが高くなるようにラインLN1に向けて誤差電流信号による電流を出力し、負側対象電圧が正側対象電圧よりも高いときには誤差電圧Vcmpが低くなるようにラインLN1からエラーアンプ11に向けて誤差電流信号による電流を引き込む。負側対象電圧と正側対象電圧との差分の絶対値が増大するにつれて、誤差電流信号による電流の大きさも増大する。
【0022】
ラインLN1とグランド電位の印加端との間には抵抗13およびコンデンサ14の直列回路が接続される。当該直列回路は位相補償部として機能し、エラーアンプ11と協働してラインLN1に誤差電圧Vcmpを生じさせる。具体的には抵抗13の一端がラインLN1に接続され、抵抗13の他端がコンデンサ14を介してグランド電位の印加端に接続される。抵抗13の抵抗値およびコンデンサ14の静電容量値を適切に設定することにより誤差電圧Vcmpの信号位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。なお、抵抗13およびコンデンサ14の双方または一方は、電源IC1の外部に設けられて、電源IC1に対して外付け接続されるものであってもよい。
【0023】
スロープ電圧生成部15は、ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間(すなわち、ハイサイドスイッチ素子M1がオン状態となっている区間)においてハイサイドスイッチ素子M1に流れる電流に応じたスロープ電圧Vslpを生成する。
【0024】
メインコンパレータ16は、スロープ電圧Vslpと誤差電圧Vcmpとを比較して比較結果を示す信号RSTを出力する。メインコンパレータ16の出力信号RSTの内、ハイレベルの信号RSTのみがリセット信号として機能し、ローレベルの信号RSTはリセット信号に該当しない。以下、メインコンパレータ16からハイレベルの信号RSTが出力されることを、リセット信号の発行または出力と表現することがある。メインコンパレータ16は、スロープ電圧Vslpおよび誤差電圧Vcmpに基づきリセット信号を発行するリセット信号生成部として機能する。
【0025】
セット信号生成部20は、クロック生成部19により生成されるクロック信号CLKに基づき信号SET1をマスク部21に対して出力する。マスク部21は、通常動作においては信号SET1をマスクせずにそのまま信号SETとして制御信号生成部17に出力する。信号SETの内、ハイレベルの信号SETのみがセット信号として機能し、ローレベルの信号SETはセット信号に該当しない。以下、マスク部21からハイレベルの信号SETが出力されることを、セット信号の発行または出力と表現することがある。セット信号生成部20は周期的にセット信号SET1を出力できるが、詳細は後述される。
【0026】
制御信号生成部17は、フリップフロップなどのロジック回路にて構成され、マスク部21からの信号SETとメインコンパレータ16からの信号RSTとに基づいて、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2のオン/オフ状態を指定する制御信号CNTを生成および出力する。ゲートドライバ18は、制御信号CNTに基づいてハイサイドスイッチ素子M1のゲート信号G1およびローサイドスイッチ素子M2のゲート信号G2を生成および出力する。
【0027】
図3に、信号SET、RST、CNT、G1およびG2の関係を示す。信号SET、RST、CNT、G1およびG2の夫々は、ハイレベルとローレベルの何れかをとる二値信号である。
【0028】
信号RSTがローレベルである状態でハイレベルの信号SETが制御信号生成部17に入力されたとき(すなわちセット信号が発行されたとき)、制御信号CNTはハイレベルとなり、以後、ハイレベルの信号RSTが制御信号生成部17に入力されるまで(すなわちリセット信号が発行されるまで)制御信号CNTはハイレベルに保持される。
【0029】
信号SETがローレベルである状態でハイレベルの信号RSTが制御信号生成部17に入力されたとき(すなわちリセット信号が発行されたとき)、制御信号CNTはローレベルとなり、以後、ハイレベルの信号SETが制御信号生成部17に入力されるまで(すなわちセット信号が発行されるまで)制御信号CNTはローレベルに保持される。
【0030】
信号SETおよびRSTが共にローレベルである区間では、制御信号CNTは保持されたレベルにて維持される。制御部10において信号SETおよびRSTが同時にハイレベルとなることは無い。
【0031】
ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2から成るブロックを、便宜上、出力段と称する。出力段の状態(すなわちスイッチ電圧Vswの状態)は、出力ハイ状態と、出力ロー状態と、Hi-Z状態の何れかとなる。出力ハイ状態では、M1、M2が夫々、オン状態、オフ状態である。出力ロー状態では、M1、M2が夫々、オフ状態、オン状態である。Hi-Z状態では、M1、M2が共にオフ状態である。ゲートドライバ18は、制御信号CNTがハイレベルである区間では、ゲート信号G1、G2を、夫々、ハイレベル、ローレベルとすることで、出力段を出力ハイ状態とし、制御信号CNTがローレベルである区間では、ゲート信号G1、G2を、夫々、ローレベル、ハイレベルとすることで、出力段を出力ロー状態とする。
【0032】
ただし、制御信号CNTがハイレベルとなっている区間(すなわちハイサイドスイッチ素子M1がオン状態)において、ハイサイド過電流保護部22によりハイサイドスイッチ素子M1に生じる過電流が検出された場合、ハイサイド過電流保護部22により制御信号生成部17がリセットされ、制御信号CNTはローレベルとされる。これにより、ハイサイドスイッチ素子M1がオフ状態、ローサイドスイッチ素子M2がオン状態となり、ハイサイドスイッチ素子M1が保護される。
【0033】
ローサイド過電流保護部23は、後述するようにハイサイド過電流保護部22により過電流が検出された場合に保護動作を行う。ハイサイド過電流保護部22およびローサイド過電流保護部23の詳細については後述する。
【0034】
上述のように構成された制御部10は、帰還電圧Vfbおよびスロープ電圧Vslpに基づき、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2を交互にオン、オフとする(即ち、出力段を出力ハイ状態と出力ロー状態間で切り替える)スイッチング動作を行うことで、基準電圧Vrefに応じた目標電圧に出力電圧Voutを安定化させることができ、スロープ電圧Vslpによる電流情報を用いることで負荷応答性を高めることができる。出力電圧Voutの情報に加えて(すなわち帰還電圧Vfbに加えて)電流情報を用いてハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2を制御する方式はカレントモード制御方式と称され、その制御はカレントモード制御と称される。
【0035】
なお、スイッチング動作において、出力段の状態を出力ハイ状態および出力ロー状態間で切り替える際、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2を通じた貫通電流の発生を抑止すべく、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2が同時にオフとされるデッドタイムが挿入されてもよい。
【0036】
スイッチング動作により、実質的に入力電圧Vinのレベルとグランド電位のレベルとでレベルが変動する矩形波状の電圧がスイッチ電圧Vswとして現れるが、当該スイッチ電圧VswがインダクタL1および出力コンデンサC1にて平滑化されることで直流の出力電圧Voutが得られる。
【0037】
スロープ電圧Vslpについて説明を補足する。ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中においてハイサイドスイッチ素子M1に流れる電流は、ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中におけるインダクタ電流ILに等しいため、スロープ電圧Vslpはハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中におけるインダクタ電流ILの情報を示している。すなわち、スロープ電圧Vslpは、ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中におけるハイサイドスイッチ素子M1またはインダクタL1の電流情報を含んでいる。当該電流情報を含むスロープ電圧Vslpの生成方法として公知の任意の方法を利用できる。
【0038】
図4Aにスロープ電圧生成部15の構成の例を示し、
図4Bにスロープ電圧Vslpに関与する電流および電圧の波形を示す。
図4Aのスロープ電圧生成部15は、IV変換部15Aと、ランプ電圧生成部15Bと、加算部15Cと、備える。IV変換部15Aは、ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中にハイサイドスイッチ素子M1に流れる電流(即ちハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中におけるインダクタ電流I
L)を電圧に変換することにより、当該電流に比例したセンス電圧Vsnsを生成する。ランプ電圧生成部15Bは、ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間中において0Vを起点に徐々に増加する鋸波状のランプ電圧Vrmpを生成する。加算部15Cは、センス電圧Vsnsとランプ電圧Vrmpの和の電圧をスロープ電圧Vslpとして生成する。ハイサイドスイッチ素子M1のオン区間以外の区間においてスロープ電圧Vslpは0Vである(但し、所定のバイアス電圧値を有していても良い)。周知の如く、ランプ電圧Vrmpの加算により、カレントモード制御における出力帰還ループの発振を抑制することができる。
【0039】
<<基本スイッチング制御>>
次に、負荷電流ILDが比較的大きい場合に制御部10にて実行可能な基本スイッチング制御について説明する。
【0040】
図1に示すように、制御部10は、所定の基準周波数f
CLKを有するクロック信号CLKを生成するクロック生成部19を備え、セット信号生成部20は、クロック信号CLKに基づき信号SET1を生成および出力することができる。
図5に示すように、クロック信号CLKは、基準周波数f
CLKにてパルスが生じる信号であり、クロック信号CLKの周期ごとに微小時間だけハイレベルとなるパルスがクロック信号CLKに生じる。クロック信号CLKにおいて、ハイレベルとなる区間の間隔は、クロック信号CLKの1周期分の時間T
P1、即ち基準周波数f
CLKの逆数と一致する。クロック信号CLKに基づき信号SET1が生成される場合、クロック信号CLKのダウンエッジを契機にして信号SET1が所定の微小時間だけハイレベルとなる。即ち、クロック信号CLKに基づき信号SET1が生成される場合、信号SET1はクロック信号CLKを上記微小時間だけ時間の遅れ方向にシフトした信号となる。
【0041】
図6に基本スイッチング制御のタイミングチャートを示す。なお、マスク部21によるマスクは行われないため、信号SET1はそのまま信号SETとして制御信号生成部17に出力される(
図6に信号SETを示す)。出力段が出力ロー状態であって且つクロック信号CLKがローレベルであるタイミングt
A0を起点にして基本スイッチング制御を説明する。基本スイッチング制御において、タイミングt
A0ではスロープ電圧Vslpは0Vであり、その後、タイミングt
A1にてクロック信号CLKにパルスが生じるとクロック信号CLKのダウンエッジを契機として信号SETが微小時間だけハイレベルとなる、即ちセット信号が発行される。セット信号の発行を受けて制御信号CNTがローレベルからハイレベルに切り替わることで出力段は出力ロー状態から出力ハイ状態に切り替わる。出力段が出力ハイ状態である区間では、インダクタ電流I
Lが徐々に増大してゆき、これに連動してスロープ電圧Vslpも徐々に上昇してゆく。そして、誤差電圧Vcmp未満であったスロープ電圧Vslpがタイミングt
A2にて誤差電圧Vcmpにまで達すると、メインコンパレータ16の出力信号RSTがローレベルからハイレベルに切り替わる、即ちリセット信号が発行される。リセット信号の発行を受けて制御信号CNTがハイレベルからローレベルに切り替わることで出力段は出力ハイ状態から出力ロー状態に切り替わる。出力段が出力ロー状態となると、速やかにスロープ電圧Vslpが0Vまで低下するため、信号RSTはローレベルに戻る。以後、同様の動作が繰り返される。
【0042】
このように、基本スイッチング制御では、基準周波数fCLKを有するクロック信号CLKのダウンエッジに応答してセット信号が発行されることになるため、ハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2は基準周波数fCLKにてPWM制御されることになる。即ち、基本スイッチング制御では、入力電圧Vinが基準周波数fCLKにてパルス幅変調されることで出力電圧Voutが得られる。“PWM”はパルス幅変調の略語である。
【0043】
<<比較例に係る過電流保護機能>>
次に、上述した比較例に係る電源IC1における過電流保護機能について、より具体的に説明する。
図7は、当該過電流保護機能に関する構成を示す図である。当該過電流保護機能は、ハイサイドスイッチ素子M1に流れる過電流に対する保護機能である。なお、以下、ノードND1から出力コンデンサC1側へのインダクタ電流I
Lが流れる方向を正方向とする。
【0044】
図7に示すように、ハイサイド過電流保護部22は、ハイサイドスイッチ素子M1に流れる過電流を検出するためのコンパレータ22Aを有する。コンパレータ22Aの非反転入力端(+)は、ハイサイドスイッチ素子M1のドレインに接続される。コンパレータ22Aの反転入力端(-)は、ハイサイドスイッチ素子M1のソースを基準とする基準電圧HREFの印加端に接続される。オン状態のハイサイドスイッチ素子M1に正方向に流れるインダクタ電流IL1と、ハイサイドスイッチ素子M1のオン抵抗により、ハイサイドスイッチ素子M1のドレイン・ソース間電圧が生じる。当該ドレイン・ソース間電圧が基準電圧HREFを上回った場合、過電流が発生したとして、コンパレータ22Aからハイレベルの検出信号HDETが出力される。すなわち、コンパレータ22Aは、ハイサイドスイッチ素子M1に流れるインダクタ電流IL1が基準電圧HREFに対応するハイサイド過電流検出閾値を上回ったことを検出すると、ハイレベルの検出信号HDETを出力する。検出信号HDETは、制御信号生成部17に対して出力される。
【0045】
また、
図7に示すように、ローサイド過電流保護部23は、コンパレータ23Aと、保護制御部23Bと、を有する。コンパレータ23Aの反転入力端(-)は、ローサイドスイッチ素子M2のドレインを基準とする基準電圧LREFの印加端に接続される。コンパレータ23Aの非反転入力端(+)は、ローサイドスイッチ素子M2のソース(グランド電位の印加端)に接続される。オン状態のローサイドスイッチ素子M2に正方向に流れるインダクタ電流IL2と、ローサイドスイッチ素子M2のオン抵抗により、ローサイドスイッチ素子M2のドレイン・ソース間電圧は負の電圧となる。上記ドレイン・ソース間電圧の負の電圧の大きさが基準電圧LREFを上回る場合、過電流が発生したとして、コンパレータ23Aからハイレベルの検出信号LDETが出力される。すなわち、コンパレータ23Aは、ローサイドスイッチ素子M2に流れるインダクタ電流IL2が基準電圧LREFに対応するローサイド過電流検出閾値を上回ったことを検出すると、ハイレベルの検出信号LDETを出力する。検出信号LDETは、保護制御部23Bに対して出力される。
【0046】
保護制御部23は、検出信号LDETを受けて、マスク部21によるマスクの制御を行う。マスク部21は、AND回路21Aにより構成される。AND回路21Aの一方の入力端にセット信号生成部20から出力される信号SET1が入力され、他方の入力端に保護制御部23Bから出力される制御信号LCNTが入力される。制御信号LCNTがローレベルとされることで、AND回路21Aは、信号SET1のレベルに依らず、ローレベルの信号SETを出力し、信号SET1のマスクが行われる。
【0047】
上述したような
図7に示す構成における保護動作について説明する。まず、マスク部21による信号SET1のマスクがされず、信号SETと信号RSTによりスイッチングが行われる通常動作がされているとする。ここで、ハイサイドスイッチ素子M1がオン状態、ローサイドスイッチ素子M2がオフ状態のときに、コンパレータ22Aによりハイサイドスイッチ素子M1に流れるインダクタ電流IL1に過電流が発生したことが検出されると、ハイレベルの検出信号HDETが制御信号生成部17に対して出力される。これを受けて、制御信号生成部17は、リセットされ、ローレベルの制御信号CNTをゲートドライバ18に対して出力する。これにより、ハイサイドスイッチ素子M1はオフ状態、ローサイドスイッチ素子M2はオン状態に切り替えられる。
【0048】
このとき、保護制御部23Bは、コンパレータ23Aから出力される検出信号LDETの監視を開始する。上述のようにハイサイドスイッチ素子M1はオフ状態、ローサイドスイッチ素子M2はオン状態に切り替えられたときには、検出信号LDETがハイレベルの状態(すなわちローサイドスイッチ素子M2に流れるインダクタ電流IL2に過電流が発生している状態)であるため、保護制御部23Bは、ローレベルの制御信号LCNTをAND回路21A(マスク部21)に対して出力する。これにより、信号SET1はマスクされて信号SETとして制御信号生成部17に出力される。従って、通常動作では制御信号CNTをハイレベルに切り替える契機となる信号SET1のアップエッジによらず、信号SETはローレベルを維持され、制御信号CNTはローレベルに維持される。よって、ハイサイドスイッチ素子M1のオフ状態、ローサイドスイッチ素子M2のオン状態は維持される。
【0049】
これにより、ローサイドスイッチ素子M2に流れるインダクタ電流IL2の大きさは徐々に減少し、インダクタ電流IL2がローサイド過電流検出閾値を下回ると、ローレベルの検出信号LDETが保護制御部23Bに対して出力される。これを受け、保護制御部23Bは、制御信号LCNTをハイレベルに切り替え、AND回路21Aによる信号SET1のマスクが解除される。これにより、信号SET1のアップエッジが発生したときに、信号SETのアップエッジが発生し、制御信号生成部17は、制御信号CNTをハイレベルに切り替える。従って、ハイサイドスイッチ素子M1がオン状態、ローサイドスイッチ素子M2がオフ状態に切り替えられ、通常動作に戻る。
【0050】
このような保護動作によれば、ハイサイドスイッチ素子M1における過電流が検出された場合に、ローサイドスイッチ素子M2をオン状態とし、ローサイドスイッチ素子M2に流れるインダクタ電流IL2がローレベル過電流検出閾値を下回るまでハイサイドスイッチ素子M1のオフ状態を維持し、ハイサイドスイッチ素子M1の保護を行う。
【0051】
しかしながら、このような比較例の構成では、信号SET1をマスクするためだけにローサイド過電流保護部23を設ける必要があり、回路規模およびコストの増加の要因となる。特に近年、外付け部品であるインダクタL1として安価なものを用いる傾向にあり、電源IC1においてハイサイド側の過電流検出レベルを高精度化する要求があり、ハイサイド過電流保護部22における補正回路またはトリミング機能の追加などが必要となり、回路規模が増大する傾向にある。このような状況では、ローサイド過電流保護部23による回路面積およびコストが課題となる。
【0052】
<2.第1実施形態>
上記のような比較例における課題に鑑み、以下説明する本開示に係る実施形態が実施される。まず、本開示に係る第1実施形態について説明する。
【0053】
図8は、本開示の第1実施形態に係るスイッチング電源装置AA1の全体構成を示す図である。スイッチング電源装置AA1は、電源IC101を備えている。電源IC101に設けられる制御部10は、上述した比較例との相違として、第1セット信号生成部201、第2セット信号生成部202、およびセレクタ24を有しており、比較例におけるローサイド過電流保護部23は不要である。また、電源IC101においては、ハイサイド過電流保護部22の構成が後述のように比較例と異なる。上述のような比較例と相違する構成は、ハイサイドスイッチ素子M1における過電流に対する保護機能に関する構成である。
【0054】
図9に、上記保護機能に関する構成をより具体的に示す。
図9に示すように、電源IC101におけるハイサイド過電流保護部22は、コンパレータ22Aと、保護制御部22Bと、を有する。コンパレータ22Aは、上述した比較例(
図7)におけるものと同様であり、オン状態のハイサイドスイッチ素子M1に流れる正方向のインダクタ電流IL1の過電流を検出すると、ハイレベルの検出信号HDETを出力する。検出信号HDETは、制御信号生成部17とともに保護制御部22Bに対して出力される。
【0055】
保護制御部22Bは、選択信号SELをセレクタ24に対して出力することで、セレクタ24による選択を制御する。第1セット信号生成部201は、クロック生成部19(
図8)により生成されるクロック信号CLKに基づき第1セット信号SET1を生成する。第2セット信号生成部202は、クロック生成部19により生成されるクロック信号CLKに基づき第2セット信号SET2を生成する。第2セット信号SET2は、第1セット信号SET1よりも周波数が低い。第1セット信号SET1および第2セット信号SET2の生成方法については、後述する。セレクタ24は、選択信号SELに応じて、信号SET1,SET2のうち一方を選択して信号SETとして制御信号生成部17に対して出力する。
【0056】
図9に示す構成による保護動作について、
図10に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、
図10においては、上段から順に、クロック信号CLK、第1セット信号SET1、第2セット信号SET2、信号SET、スイッチ電圧Vsw、およびインダクタ電流I
Lの各波形例を示す。
【0057】
図10に示すように、クロック信号CLKに基づき第1セット信号SET1が生成される場合、クロック信号CLKの毎回のダウンエッジを契機にして第1セット信号SET1が所定の微小時間だけハイレベルとなる。即ち、クロック信号CLKに基づき第1セット信号SET1が生成される場合、第1セット信号SET1はクロック信号CLKを上記微小時間だけ時間の遅れ方向にシフトした信号となる。
【0058】
一方、クロック信号CLKに基づき第2セット信号SET2が生成される場合、クロック信号CLKのダウンエッジを契機にして第2セット信号SET2が所定の微小時間だけハイレベルとなり、その後、クロック信号CLKの所定個数(
図10の例では3個)のダウンエッジに依らずに第2セット信号SET2はハイレベルにならない。その後、クロック信号CLKのダウンエッジを契機にして第2セット信号SET2が所定の微小時間だけハイレベルとなり、以降同様に繰り返される。これにより、第2セット信号SET2のハイレベルのタイミングの間隔は、第1セット信号SET1のハイレベルのタイミングの間隔よりも長くなり、第2セット信号SET2の周波数は、第1セット信号SET1の周波数よりも低くなる。
【0059】
ここで、通常動作においては、選択信号SELによりセレクタ24は第1セット信号SET1を選択して信号SETとして制御信号生成部17に対して出力し、信号SETおよびRSTに基づいてハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2のスイッチングが行われる。
【0060】
通常動作において、
図10のタイミングt1で信号SETのアップエッジが発生し、セット信号が発行され、制御信号生成部17は、ハイレベルの制御信号CNTを出力する。これにより、ハイサイドスイッチ素子M1はオン状態、ローサイドスイッチ素子M2はオフ状態に切り替えられる。
【0061】
すると、ハイサイドスイッチ素子M1を正方向に流れるインダクタ電流IL(インダクタ電流IL1)が徐々に増加する。そして、タイミングt2にてリセット信号が発行されると、制御信号生成部17は、ローレベルの制御信号CNTを出力する。これにより、ハイサイドスイッチ素子M1はオフ状態、ローサイドスイッチ素子M2はオン状態に切り替えられる。すると、ローサイドスイッチ素子M2を正方向に流れるインダクタ電流IL(インダクタ電流IL2)が徐々に減少する。その後、タイミングt3にて信号SETのアップエッジが発生し、ハイサイドスイッチ素子M1はオン状態、ローサイドスイッチ素子M2はオフ状態に切り替えられる。
【0062】
以降同様の動作が繰り返され、タイミングt4でオン状態のハイサイドスイッチ素子M1に流れるインダクタ電流IL(インダクタ電流IL1)がハイサイド過電流検出閾値HOCPthを上回ると、コンパレータ22Aからハイレベルの検出信号HDETが制御信号生成部17に対して出力される。これを受けて、制御信号生成部17は、リセットされ、ローレベルの制御信号CNTを出力する。これにより、ハイサイドスイッチ素子M1はオフ状態、ローサイドスイッチ素子M2はオン状態に切り替えられる。
【0063】
また、ハイレベルの検出信号HDETは保護制御部22Bに対しても出力される。これを受けて、保護制御部22Bは、選択信号SELをセレクタ24に対して出力し、セレクタ24が第2セット信号SET2を選択して信号SETとして制御信号生成部17に対して出力するように制御する。
図10に示すように、第2セット信号SET2は第1セット信号SET1よりも周波数が低いため、ローレベルとなる区間が長く、タイミングt4の後、信号SET(第2セット信号SET2)はローレベルを維持される。
図10の例では、信号SETがローレベルとなる区間で、第1セット信号SET1において1回アップエッジが発生するが、当該アップエッジは無視されることになる。信号SETがローレベルとなる区間では、ローサイドスイッチ素子M2に流れるインダクタ電流I
L(インダクタ電流IL2)は徐々に減少する。
【0064】
そして、タイミングt5で第2セット信号SET2のアップエッジが発生すると、信号SETのアップエッジが発生し、制御信号生成部17は、ハイレベルの制御信号CNTを出力する。これにより、ハイサイドスイッチ素子M1はオン状態、ローサイドスイッチ素子M2はオフ状態に切り替えられる。ここで、保護制御部22Bは、検出信号HDETを確認し、検出信号HDETがローレベルの場合(すなわちハイサイドスイッチ素子M1に過電流が発生していない場合)、選択信号SELによりセレクタ24が第1セット信号SET1を選択するよう制御する。これにより、通常動作に戻る。
【0065】
このように本実施形態では、ハイサイドスイッチ素子M1での過電流を検出した場合、第1セット信号SET1から第2セット信号SET2に切り替えて信号SETを出力することで、ローサイドスイッチ素子M2のオン区間を長く確保し、ハイサイドスイッチ素子M1の過電流に対する保護を行うことができる。特に、比較例のようなローサイド過電流保護部23が不要となり、回路規模およびコストの増加を抑制しつつ、ハイサイド過電流保護部22における高精度化のための回路追加が可能となる。
【0066】
<3.第2実施形態>
次に、本開示に係る第2実施形態について説明する。
図11は、第2実施形態に係る保護機能に関する構成を示す図である。
【0067】
図11に示す構成の第1実施形態(
図9)との相違点は、電源ICにおいて、第1クロック生成部191および第2クロック生成部192が設けられることである。第1クロック生成部191は、第1クロック信号CLK1を生成する。第2クロック生成部192は、第2クロック信号CLK2を生成する。セレクタ24は、選択信号SELに応じて、第1クロック信号CLK1と第2クロック信号CLK2のうち一方を選択してクロック信号CLKとして制御信号生成部17に対して出力する。第2クロック信号CLK2は、第1クロック信号CLK1よりも周波数が低い。
【0068】
このような
図11に示す構成による保護動作について、
図12に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、
図12において、上段から順に、第1クロック信号CLK1、第2クロック信号CLK2、クロック信号CLK、スイッチ電圧Vsw、およびインダクタ電流I
Lの各波形例を示す。
【0069】
通常動作においては、選択信号SELによりセレクタ24は第1クロック信号CLK1を選択してクロック信号CLKとして制御信号生成部17に対して出力し、信号CLKおよびRSTに基づいてハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2のスイッチングが行われる。クロック信号CLKのアップエッジが上述したセット信号の発行に相当する。すなわち、クロック信号CLKのアップエッジを契機として制御信号CNTがハイレベルとされる。
【0070】
図12に示す動作は、上述した第1実施形態(
図10)の動作における信号SET1,SET2,SETを信号CLK1,CLK2,CLKに置き換えたものとなる。すなわち、本実施形態は、ハイサイドスイッチ素子M1をオン状態、ローサイドスイッチ素子M2をオフ状態へ切り替える契機となるオントリガー信号として、第1実施形態ではセット信号を用いていたものを、第2実施形態ではクロック信号を用いている。このような第2実施形態であっても、第1実施形態と同様な効果が奏される。
【0071】
<4.第3実施形態>
次に、本開示に係る第3実施形態について説明する。
図13は、第3実施形態に係る保護機能に関する構成を示す図である。
【0072】
図13に示す構成の第1実施形態(
図9)との相違点は、セット信号生成部20とマスク部25を設けていることと、ハイサイド過電流保護部22における構成である。
図13に示す構成では、ハイサイド過電流保護部22は、コンパレータ22Aと、ワンショットパルス生成部22Cと、を有する。
【0073】
コンパレータ22Aは、第1実施形態と同様であり、オン状態のハイサイドスイッチ素子M1に流れる正方向のインダクタ電流IL1の過電流を検出すると、ハイレベルの検出信号HDETを出力する。検出信号HDETは、制御信号生成部17とともにワンショットパルス生成部22Cに対して出力される。
【0074】
ワンショットパルス生成部22Cは、ハイレベルの検出信号HDETを契機に所定時間だけハイレベルからローレベルに切り替えたワンショットパルスOSHを生成する。ワンショットパルスOSHは、マスク部25を構成するAND回路25Aの一方の入力端に入力される。セット信号生成部20は、比較例と同様に、クロック信号CLKに基づきセット信号SET1を生成する(
図5)。セット信号SET1は、AND回路25Aの他方の入力端に入力される。AND回路25Aは、ワンショットパルスOSHとセット信号SET1に基づき、セット信号SETを制御信号生成部17に対して出力する。ワンショットパルスOSHがローレベルとされることで、AND回路25Aは、セット信号SET1のレベルに依らずにローレベルのセット信号SETを出力し、セット信号SET1のマスクを行う。
【0075】
図13に示す構成による保護動作について、
図14に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、
図14においては、上段から順に、クロック信号CLK、セット信号SET1、ワンショットパルスOSH、セット信号SET、スイッチ電圧Vsw、およびインダクタ電流I
Lの各波形例を示す。
【0076】
ここで、通常動作においては、ハイレベルのワンショットパルスOSHによりAND回路25Aは、セット信号SET1をそのままセット信号SETとして制御信号生成部17に対して出力し、信号SETおよびRSTに基づいてハイサイドスイッチ素子M1およびローサイドスイッチ素子M2のスイッチングが行われる。
【0077】
通常動作において、
図14のタイミングt11で信号SETのアップエッジが発生し、セット信号が発行され、制御信号生成部17は、ハイレベルの制御信号CNTを出力する。これにより、ハイサイドスイッチ素子M1はオン状態、ローサイドスイッチ素子M2はオフ状態に切り替えられる。
【0078】
すると、ハイサイドスイッチ素子M1を正方向に流れるインダクタ電流IL(インダクタ電流IL1)が徐々に増加する。そして、タイミングt12にてリセット信号が発行されると、制御信号生成部17は、ローレベルの制御信号CNTを出力する。これにより、ハイサイドスイッチ素子M1はオフ状態、ローサイドスイッチ素子M2はオン状態に切り替えられる。すると、ローサイドスイッチ素子M2を正方向に流れるインダクタ電流IL(インダクタ電流IL2)が徐々に減少する。その後、タイミングt13にて信号SETのアップエッジが発生し、ハイサイドスイッチ素子M1はオン状態、ローサイドスイッチ素子M2はオフ状態に切り替えられる。
【0079】
以降同様の動作が繰り返され、タイミングt14でオン状態のハイサイドスイッチ素子M1に流れるインダクタ電流IL(インダクタ電流IL1)がハイサイド過電流検出閾値HOCPthを上回ると、コンパレータ22Aからハイレベルの検出信号HDETが制御信号生成部17に対して出力される。これを受けて、制御信号生成部17は、リセットされ、ローレベルの制御信号CNTを出力する。これにより、ハイサイドスイッチ素子M1はオフ状態、ローサイドスイッチ素子M2はオン状態に切り替えられる。
【0080】
また、ハイレベルの検出信号HDETはワンショットパルス生成部22Cに対しても出力される。ワンショットパルス生成部22Cは、ハイレベルの検出信号HDETを契機として(タイミングt14)、ハイレベルからローレベルへ切り替えて所定時間Tだけローレベルを維持するワンショットパルスOSHを生成する。ワンショットパルスOSHがローレベルの区間では、AND回路25Aは、セット信号SET1にレベルに依らず、ローレベルのセット信号SETを出力する。これにより、AND回路25Aは、セット信号SET1のマスクを行う。
図14の例であれば、所定時間Tの間にセット信号SET1に1回アップエッジが発生するが、セット信号SETはローレベルを維持される(すなわち、当該アップエッジは無視される)。なお、セット信号SET1のアップエッジをマスクする回数は、2回以上であってもよい。
【0081】
タイミングt14からセット信号SETがローレベルの区間では、ローサイドスイッチ素子M2を正方向に流れるインダクタ電流IL(インダクタ電流IL2)が徐々に減少する。ワンショットパルスOSHのローレベルとなる区間が終了すると、AND回路25Aでのマスクが解除され、セット信号SET1はそのままセット信号SETとして制御信号生成部17に対して出力される。従って、タイミングt15でのセット信号SET1およびSETのアップエッジの発生により、制御信号生成部17は、ハイレベルの制御信号CNTを出力し、ハイサイドスイッチ素子M1がオン状態、ローサイドスイッチ素子M2がオフ状態に切り替えられる。これにより、通常動作に戻る。このような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様な効果が奏される。
【0082】
なお、セット信号SET1,SETの代わりにクロック信号を用いて、クロック信号のアップエッジを契機としてハイサイドスイッチ素子M1をオン状態、ローサイドスイッチ素子M2をオフ状態へ切り替えてもよい。
【0083】
<5.その他>
なお、本開示に係る種々の技術的特徴は、上記実施形態の他、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0084】
<6.付記>
以上の通り、例えば、本開示に係る電源制御装置(1)は、
入力電圧(Vin)の印加端とグランド電位の印加端との間に直列に接続されるハイサイドスイッチ素子(M1)およびローサイドスイッチ素子(M2)と、
前記ローサイドスイッチ素子に接続される第1端を有するインダクタ(L1)と、
前記インダクタの第2端に接続される出力コンデンサ(C1)と、を備える同期整流型降圧DC/DCコンバータ(AA1)に用いられる電源制御装置であって、
前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態へ切り替える契機であるオントリガーを含む第1オントリガー信号(SET1)を生成可能に構成される第1信号生成回路(201)と、
通常動作において、前記第1オントリガー信号の前記オントリガーごとに前記ハイサイドスイッチ素子をオン状態、前記ローサイドスイッチ素子をオフ状態へ切り替え可能に構成されるスイッチング制御部(17,18)と、
ハイサイド過電流保護部(22)と、
を備え、
前記ハイサイド過電流保護部は、
オン状態の前記ハイサイドスイッチ素子に流れる過電流を検出可能に構成される過電流検出部(22A)と、
前記過電流検出部から出力される検出信号(HDET)に基づき保護制御を実行可能に構成される保護制御部(22B)と、
を有し、
前記通常動作において前記過電流検出部により前記過電流が検出された場合、前記スイッチング制御部は、前記ハイサイドスイッチ素子をオフ状態、前記ローサイドスイッチ素子をオン状態へ切り替え、前記保護制御部による制御に基づき前記第1オントリガー信号の前記オントリガーを少なくとも1回無視する構成としている(第1の構成)。
【0085】
また、上記第1の構成において、前記第1オントリガー信号(SET1)よりも周波数が低い第2オントリガー信号(SET2)を生成可能に構成される第2信号生成部(202)と、前記保護制御部(22B)から出力される選択信号(SEL)に応じて、前記第1オントリガー信号と前記第2オントリガー信号のうち一方を選択して前記スイッチング制御部(17,18)に対して出力可能に構成されるセレクタ(24)と、をさらに備える構成としてもよい(第2の構成)。
【0086】
また、上記第2の構成において、クロック信号(CLK)を生成するクロック生成部(19)をさらに備え、前記第1信号生成部(201)は、前記クロック信号のダウンエッジに対するアップエッジを含む前記第1オントリガー信号(SET1)を生成し、前記第2信号生成部(202)は、前記クロック信号のダウンエッジに対するアップエッジを含む前記第2オントリガー信号(SET2)を生成する構成としてもよい(第3の構成)。
【0087】
また、上記第2の構成において、前記第1オントリガー信号(CLK1)および前記第2オントリガー信号(CLK2)は、クロック信号であり、前記オントリガーは、前記クロック信号のアップエッジである構成としてもよい(第4の構成)。
【0088】
また、上記第1の構成において、前記保護制御部は、前記過電流検出部(22A)により前記過電流が検出された場合、所定時間だけレベルを変化させたワンショットパルス(OSH)を出力可能に構成されるワンショットパルス生成部(22C)として構成され、当該電源制御装置は、前記ワンショットパルスに基づき前記第1オントリガー信号(SET1)をマスクするか否かを切り替えるマスク部(25)をさらに備える構成としてもよい(第5の構成)。
【0089】
また、本開示の一態様は、上記第1から第5のいずれかの構成とした電源制御装置(1)と、前記ハイサイドスイッチ素子(M1)および前記ローサイドスイッチ素子(M2)と、前記インダクタ(L1)と、前記出力コンデンサ(C1)と、を備える同期整流型降圧DC/DCコンバータ(AA1)としている。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示は、同期整流型降圧DC/DCコンバータに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 電源IC
10 制御部
11 エラーアンプ
12 基準電圧源
13 抵抗
14 コンデンサ
15 スロープ電圧生成部
15A IV変換部
15B ランプ電圧生成部
15C 加算部
16 メインコンパレータ
17 制御信号生成部
18 ゲートドライバ
19 クロック生成部
20 セット信号生成部
21 マスク部
21A AND回路
22 ハイサイド過電流保護部
22A コンパレータ
22B 保護制御部
22C ワンショットパルス生成部
23 ローサイド過電流保護部
23A コンパレータ
23B 保護制御部
24 セレクタ
25 マスク部
25A AND回路
30 内部電源回路
101 制御部
191 第1クロック生成部
192 第2クロック生成部
201 第1セット信号生成部
202 第2セット信号生成部
AA スイッチング電源装置
AA1 スイッチング電源装置
C1 出力コンデンサ
L1 インダクタ
LD 負荷
M1 ハイサイドスイッチ素子
M2 ローサイドスイッチ素子
R1,R2 帰還抵抗
TM1~TM4 外部端子