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  • 特開-納豆の製造方法 図1
  • 特開-納豆の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008277
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】納豆の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/50 20210101AFI20230112BHJP
【FI】
A23L11/50 209Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111709
(22)【出願日】2021-07-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】399109838
【氏名又は名称】株式会社丸美屋
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 健
【テーマコード(参考)】
4B020
【Fターム(参考)】
4B020LB14
4B020LP10
4B020LP15
4B020LY03
4B020LY05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】納豆にたれを加えて撹拌する際に気泡や糸引きを生じさせず、品質劣化を抑制し、納豆を容器に充填する際に計量が不安定とならないようにし、及び撹拌した納豆の食感や味が大きく変化しないようにした、納豆の製造方法を提供する。
【解決手段】発酵工程終了後の納豆約10kgに対して、表面へ水蒸気を20秒~5分間当てる加熱工程と、たれを約1.5kg添加し、撹拌釜の内部を10kPa程度に減圧した上で、加熱した納豆と添加したたれを約2分間撹拌する撹拌工程と、撹拌工程によって得られた納豆製品を常圧下で容器に詰める容器詰め工程とを有する納豆の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵工程終了後の納豆に水蒸気を当てて加熱する加熱工程と、
加熱した納豆を0.1Pa~50kPaの低圧下においてたれと共に撹拌する撹拌工程と、
撹拌した納豆とたれを常圧下において容器に詰める容器詰め工程と、を有する
ことを特徴とする納豆の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程において、水蒸気を当てる時間は1kgあたり2秒~2分間であり、
前記撹拌工程において、納豆とたれを撹拌する時間は1kgあたり2秒~2分間である
ことを特徴とする請求項1に記載の納豆の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程及び前記撹拌工程は、いずれも真空撹拌装置の内部において行われ、
前記容器詰め工程は、前記真空撹拌装置内部の低圧状態を解いてから行われる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の納豆の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵工程終了後の納豆にたれを添加、混合した状態で容器に収容し、消費者に供することを可能とする納豆の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、納豆にたれを添加、混合した状態で消費者に供することや、納豆を機械的に粉砕、撹拌したペースト状の納豆を容器に収容して消費者に供することが行われている。
例えば、特許文献1(特公昭63-52871号公報)には、納豆500gを熱風乾燥機に入れ、85℃の熱風で3時間乾燥し、これに卵白粉末9g、水9g、しょう油7.5gを混ぜた液をからめ、棚温度85℃、真空度15トールの条件下で2時間真空乾燥を行い、さらに同じ組成の卵白混合液をからめ、再び同条件で3時間真空乾燥を行って、納豆加工食品239gを得ることが記載されている(特に第4頁左欄の実施例3を参照)。
また、特許文献2(特開2005-151955号公報)には、ジューサーに水30gと塩化カルシウム(2水和物)1.27g を加えて溶解した後に納豆50gを加え、約10分間、粉砕、撹拌してペースト状態の納豆約81gを調製する点(特に段落0071を参照)及び調製した納豆ペーストを瓶やフィルムを用いて密封包装した後に加熱処理する点(特に段落0066を参照)等が記載されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載されている納豆の製造方法は、納豆にしょう油等をからめた後に真空乾燥を行っているため、納豆にしょう油等をからめる際に気泡が生じ、品質劣化や納豆加工食品の計量が不安定となる等の問題がある。
また、特許文献2に記載されている納豆の製造方法は、段落0024に記載されているように、納豆の糸引き、粘りが著しく減少するか殆ど無い状態にすることができるが、食品添加物である塩化カルシウムを相当量添加し、ペースト状態にして包装した新たな加工品であり、本来の納豆とは食感や味が変化してしまう等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63-52871号公報
【特許文献2】特開2005-151955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、納豆にたれを加えて撹拌する際に気泡や糸引きを生じさせず、品質劣化を抑制すること及び撹拌後の納豆を容器に充填する際に泡噛みが起こりにくく、計量が不安定とならないようにすることを第1の課題とする。
また、納豆を撹拌する際に相当量の塩化カルシウムを添加することなく気泡や糸引きを抑制し、食感や味が大きく変化しないようにすることを第2の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、納豆の製造方法において、
発酵工程終了後の納豆に水蒸気を当てて加熱する加熱工程と、
加熱した納豆を0.1Pa~50kPaの低圧下においてたれと共に撹拌する撹拌工程と、
撹拌した納豆とたれを常圧下において容器に詰める容器詰め工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の納豆の製造方法であって、
前記加熱工程において、水蒸気を当てる時間は1kgあたり2秒~2分間であり、
前記撹拌工程において、納豆とたれを撹拌する時間は1kgあたり2秒~2分間であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の納豆の製造方法であって、
前記加熱工程及び前記撹拌工程は、いずれも真空撹拌装置の内部において行われ、
前記容器詰め工程は、前記真空撹拌装置内部の低圧状態を解いてから行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1又は2に係る発明の納豆の製造方法によれば、発酵工程終了後の納豆に水蒸気を当てて加熱する加熱工程と、加熱した納豆を0.1Pa~50kPaの低圧下においてたれと共に撹拌する撹拌工程を有しているため、加熱によって雑菌の繁殖を抑制でき、かつ、低圧下において撹拌することによって気泡の混入を防ぐことができるので、品質劣化を抑制できる。
また、低圧下における撹拌は糸引きも緩和するので、納豆を容器に充填する際の泡噛みを抑制でき、計量が不安定とならないようにすることができる。
さらに、加熱工程において適度の水分を補給でき、かつ、撹拌工程において納豆の糸引きや粘りを減少させる添加剤(塩化カルシウム)を添加せずに納豆を撹拌するので、納豆の食感や味が大きく変化しないという効果がある。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は2に係る発明による効果に加えて、加熱工程及び撹拌工程が、いずれも真空撹拌装置の内部において行われるので衛生的であり、かつ、均質な納豆を製造することができる。
また、加熱工程と撹拌工程を連続して行えるので生産性を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1に係る納豆の製造方法の概要を示すフロー図。
図2】実施例2に係る納豆の製造方法において利用する真空撹拌装置の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例0013】
図1は実施例1に係る納豆の製造方法の概要を示すフロー図である。
以下、実施例1に係る納豆の製造方法の製造方法について順を追って説明する。
(1)加熱工程
発酵工程終了後の納豆(約10kg)を適宜のトレイ等に移し、常圧下で納豆の表面へ水蒸気を20秒~5分間当てる。
(2)撹拌工程
水蒸気を当てて加熱した納豆を減圧可能な撹拌釜に移し、たれ(しょうゆ又はしょうゆに塩、酢、砂糖、果汁、調味料及び酸味料のうち少なくとも1つを混合したもの)を約1.5kg添加した後、釜の内部を10kPa程度に減圧した上で、加熱した納豆と添加したたれを約2分間撹拌する。
(3)容器詰め工程
撹拌終了後に、蓋を開けて撹拌釜を開放し、常圧下で撹拌した納豆とたれからなる納豆製品を計量しながら袋状又は箱状の容器に詰める。
上記の3つの工程により、実施例1に係る納豆は完成し、納豆製品を詰めた容器は、段ボール製の箱等に箱詰めして出荷先に搬送される。
【実施例0014】
図2は実施例2に係る納豆の製造方法において利用する真空撹拌装置の概要図である。
同真空撹拌装置は、図2に示すように、下方は閉塞し上方に円形状の開口部を有する缶体容器1、缶体容器1の開口部を塞ぎ内部を密閉することのできる蓋体2、缶体容器1の側面の対向する部分に設置されている軸支部3、4、上端部に軸支部3、4を回動可能に固定する固定部5、6を有する支持体7、8及び軸支部3の外側に設置され缶体容器1の向きを上向きと横向きとの間の任意の位置に動かすためのハンドル9等を備えている。
そして、缶体容器1の内部には、缶体容器1に収容された納豆等を撹拌するために、撹拌翼10が設けられている。この撹拌翼10は軸支部3、4の中心軸線と同軸に設置されているシャフト11に取付けられており、支持体8側に回転速度を制御可能なモータ(図示せず)を設け、固定部6側から同モータの駆動力をネジ機構又はベルト機構でシャフト11に伝達することによって撹拌翼10を回転させ、缶体容器1に収容された納豆等を撹拌することができるようになっている。
また、蓋体2には、一方の側面部から挿入され他方の側面部近くに達する水蒸気導入パイプ12、上面の一部に設けられ装置内部の圧力が高まると内部の気体を逃がすように作用する水蒸気抜き用安全弁13、装置内部の圧力を表示する圧力表示器14、装置内部にたれを投入するためのホッパー15及び給排気管16が設置されており、給排気管16には排水口17及び給水口18を有する水封式真空ポンプ19が接続され、蓋体2を閉めた状態で真空撹拌装置の内部を低圧から真空に近い状態まで制御できるようになっている。
【0015】
以下、実施例2に係る納豆の製造方法の製造方法について順を追って説明する。
(1)加熱工程
発酵工程終了後の納豆(約10kg)を真空撹拌装置の缶体容器1に移し、常圧下で水蒸気導入パイプ12のノズルを開き、20秒~5分間水蒸気を送り込む。
そうすると、水蒸気導入パイプ12の下面側に設けられている多数の孔から水蒸気が噴き出し、納豆の上面に到達する。また、水蒸気の送り込みによって、真空撹拌装置の内圧が高まると、水蒸気抜き用安全弁13が開き水蒸気を含む空気が外部に排出される。
さらに、水蒸気を送り込むと同時に撹拌翼10を低速(10rpm程度)で回転させ、納豆を満遍なく加熱する。
(2)撹拌工程
水蒸気導入パイプ12のノズルを閉じた後、ホッパー15のノズルを開き、たれを約1.5kg添加する。
ホッパー15のノズルを閉じ、水封式真空ポンプ19を作動させて、真空撹拌装置の内部を10kPa程度に減圧する。
その後、減圧状態を保ちながら、撹拌翼10を低速(10rpm程度)で回転させ、加熱した納豆と添加したたれを約2分間撹拌する。
(3)容器詰め工程
撹拌終了後、水封式真空ポンプ19を停止し、真空撹拌装置の内部を常圧に戻してから、蓋体2を移動させる。
蓋体2を移動させた後に、ハンドル9を回転させ、缶体容器1の向きがほぼ横向きとなるまで缶体容器1を倒す操作を行う。
その後、撹拌した納豆とたれからなる納豆製品を計量しながら袋状又は箱状の容器に詰める。
上記の3つの工程により、実施例2に係る納豆は完成し、納豆製品を詰めた容器は、段ボール製の箱等に箱詰めして出荷先に搬送される。
【0016】
実施例1及び2に係る納豆の製造方法の変形例を列記する。
(1)実施例1及び2においては、約10kgの納豆に対して各工程の処理を施したが、処理する納豆の量は利用する設備や装置の規模に応じて変更できる。
また、加熱工程においては水蒸気を20秒~5分間当て、撹拌工程においては加熱した納豆と添加したたれを約2分間撹拌したが、これらの継続時間は適宜変更しても良い。
ただし、水蒸気を当てる時間は、納豆1kgあたり2秒~2分間の範囲で選択すれば良く、同1kgあたり2秒~30秒間の範囲で選択するのが通常である。そして、加熱した納豆と添加したたれを撹拌する時間は、納豆とたれ1kgあたり2秒~2分間の範囲で選択すれば良く、同1kgあたり6秒~1分間の範囲で選択するのが通常である。
(2)実施例1及び2においては、撹拌工程において約10kgの納豆に対してたれを約1.5kg添加したが、その添加量は、しょうゆの種類や濃さ、しょうゆに加える塩等の量に応じて適宜変更可能である。
また、実施例1の撹拌工程では撹拌釜の内部を10kPa程度に減圧し、実施例2の撹拌工程では真空撹拌装置の内部を10kPa程度に減圧したが、50kPa以下に減圧すれば気泡の混入や糸引きを相当緩和でき、0.1Paより低い圧力とするためには、水封式真空ポンプや真空撹拌装置等のコストが大きくなりすぎるので、撹拌時の圧力は0.1Pa~50kPaの範囲で選択すれば良く、1Pa~20kPaの範囲で選択するのが通常であり、減圧時間を考慮すると1kPa~20kPaの範囲で選択するのが現実的である。
さらに、撹拌開始時間を早めるため、内部圧力が10kPa程度になる前(例えば50kPaになった時点)に撹拌を開始し、脱気しながら撹拌しても良い。
【0017】
(3)実施例1及び2においては、容器詰め工程において納豆製品を袋状又は箱状の容器に詰めたが、容器はチューブであっても瓶であっても良い。
また、本発明による納豆の製造方法は、気泡の混入を防ぎ品質劣化を抑制できる効果が大きく、密閉性の高い容器、例えば、袋状の容器、密封可能な箱状の容器、チューブ又は瓶を利用すると、賞味期限を延ばすことができるので、特に適している。
(4)実施例2においては、加熱工程において撹拌翼10を10rpm程度の低速で回転させたが、処理する納豆の量が少なければ撹拌翼10を回転させる必要はない。
また、処理する納豆の量が多い場合でも、水蒸気を送り込んでいる間に数回回転させれば良いので、5分間水蒸気を送り込む場合には2rpm程度の極低速で回転させても良く、20秒間水蒸気を送り込む場合でも20rpm程度の回転数で良い。
(5)実施例2においては、撹拌工程において撹拌翼10を10rpm程度の低速で回転させたが、回転数が小さすぎると撹拌が不十分となり、大きすぎると糸引きが発生し易くなるので、撹拌翼10の回転数は5~40rpmの範囲で選択するが、5~30rpmの範囲で選択するのが好ましく、10~20rpmの範囲で選択するとより良い。
さらに、モータを正逆回転可能なものとし、撹拌翼10の回転方向を撹拌途中に反転できるようにしても良い。
【符号の説明】
【0018】
1 缶体容器 2 蓋体 3、4 軸支部 5、6 固定部
7、8 支持体 9 ハンドル 10 撹拌翼 11 シャフト
12 水蒸気導入パイプ 13 水蒸気抜き用安全弁 14 圧力表示器
15 ホッパー 16 給排気管 17 排水口
18 給水口 19 水封式真空ポンプ
図1
図2