(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082795
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】放射線検出パネル及び放射線検出パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196732
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長井 真也
(72)【発明者】
【氏名】會田 博之
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188BB02
2G188CC15
2G188CC17
2G188CC19
2G188CC22
2G188DD05
2G188DD42
2G188DD44
(57)【要約】
【課題】 防湿カバーを容易に剥がすことのできる放射線検出パネル及び放射線検出パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】 放射線検出パネルは、複数の光電変換部を有する光電変換基板2と、シンチレータ層5と、防湿カバー7と、光電変換基板2と防湿カバー7とを接合する接合体8と、を備える。光電変換基板2、防湿カバー7、及び接合体8は、第2非検出領域NDA2側に開口し、検出領域DA側に凹んだ隙間Aを形成している。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域、前記検出領域の周囲に位置する枠状の第1非検出領域、及び前記第1非検出領域の外側の第2非検出領域に位置し、前記検出領域に位置した複数の光電変換部を有する光電変換基板と、
前記検出領域に位置し、前記光電変換基板の上に設けられたシンチレータ層と、
前記検出領域及び前記第1非検出領域に位置し、前記光電変換基板とともに前記シンチレータ層を挟み、前記シンチレータ層を覆った防湿カバーと、
前記第1非検出領域に位置し、前記光電変換基板と前記防湿カバーとの間に位置し、前記光電変換基板と前記防湿カバーとを接合する接合体と、を備え、
前記光電変換基板、前記防湿カバー、及び前記接合体は、前記第2非検出領域側に開口し前記検出領域側に凹んだ隙間を形成している、
放射線検出パネル。
【請求項2】
前記防湿カバーが前記第1非検出領域にて前記光電変換基板に最も接近する位置のうち最も前記検出領域側の位置を第1位置とすると、
前記接合体は、前記第1位置より前記検出領域側にて前記光電変換基板と前記防湿カバーとを接合している、
請求項1に記載の放射線検出パネル。
【請求項3】
前記接合体は、前記隙間と前記防湿カバーとの間に位置し前記防湿カバーに接着している第1部分を有する、
請求項1に記載の放射線検出パネル。
【請求項4】
前記接合体は、前記光電変換基板と前記隙間との間に位置し前記光電変換基板に接着している第2部分を有する、
請求項1又は3に記載の放射線検出パネル。
【請求項5】
前記第2部分は、前記防湿カバーに重なっていない突出部を含み、
前記第1非検出領域が前記検出領域及び前記第2非検出領域の各々と隣合う方向において、前記突出部の長さは2mm以内である、
請求項4に記載の放射線検出パネル。
【請求項6】
第2長さは、第1長さ以上であり、
前記第1非検出領域が前記検出領域及び前記第2非検出領域の各々と隣合う方向において、前記第1長さは第2位置から第3位置までの長さであり、前記第2長さは前記第3位置から第4位置までの長さであり、前記第2位置は前記防湿カバーの外周縁に重なる位置であり、前記第3位置は前記隙間のうち最も前記検出領域側の位置であり、前記第4位置は前記接合体が前記光電変換基板に接着している範囲内のうち最も前記検出領域側の位置である、
請求項1に記載の放射線検出パネル。
【請求項7】
第2距離は、第1距離を超え、
前記第2距離は、前記防湿カバーの外周縁に重なる第2位置における前記光電変換基板と前記防湿カバーとの間の距離であり、
前記第1距離は、前記第1非検出領域のうち前記第2位置と前記検出領域との間にて前記防湿カバーが前記光電変換基板に最も接近する第1位置における前記光電変換基板と前記防湿カバーとの間の距離である、
請求項1に記載の放射線検出パネル。
【請求項8】
前記防湿カバーは、アルミニウム、アルミニウム合金、又は積層体で形成され、
前記積層体は、樹脂層、並びにアルミニウム若しくはアルミニウム合金で形成され前記樹脂層に積層された金属層を有している、
請求項1に記載の放射線検出パネル。
【請求項9】
前記接合体は、紫外線硬化型接着剤で形成されている、
請求項1に記載の放射線検出パネル。
【請求項10】
前記シンチレータ層と対向して設けられ、前記シンチレータ層が発する光を前記複数の光電変換部側に反射する光反射層をさらに備える、
請求項1に記載の放射線検出パネル。
【請求項11】
前記光電変換基板、前記防湿カバー、及び前記接合体で囲まれた空間は、真空である、
請求項1乃至10の何れか1項に記載の放射線検出パネル。
【請求項12】
検出領域、前記検出領域の周囲に位置する枠状の第1非検出領域、及び前記第1非検出領域の外側の第2非検出領域に位置し、前記検出領域に位置した複数の光電変換部を有する光電変換基板を用意し、
前記検出領域にてシンチレータ層を前記光電変換基板の上に設け、
防湿カバーを用意し、
前記光電変換基板及び前記防湿カバーの一方に接着剤を塗布し、
前記接着剤を仮硬化し、
前記防湿カバーを、前記検出領域、前記第1非検出領域の接合領域、及び前記第1非検出領域のうち前記接合領域より前記第2非検出領域側の非接合領域に対向させ、
前記接着剤が前記接合領域に位置している状態にて、前記光電変換基板及び前記防湿カバーの他方を仮硬化した前記接着剤に接着させ、前記防湿カバー及び前記光電変換基板によって前記シンチレータ層を挟み、前記防湿カバーによって前記シンチレータ層を覆い、
前記防湿カバーによって前記シンチレータ層を覆った後に前記接着剤を本硬化し、前記光電変換基板と前記防湿カバーとの間に位置し前記光電変換基板と前記防湿カバーとを接合する接合体を形成し、
前記光電変換基板、前記防湿カバー、及び本硬化した前記接合体により、前記第2非検出領域側に開口し前記検出領域側に凹んだ隙間を形成する、
放射線検出パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出パネル及び放射線検出パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器として、例えばX線検出器(X線平面検出器)が知られている。X線検出器のX線検出パネルは、X線を蛍光に変換するシンチレータ層と、蛍光を電気信号に変換する光電変換基板と、を備えている。シンチレータ層は、例えばヨウ化セシウム(CsI)を含んでいる。また、蛍光の利用効率を高めて感度特性を改善するために、X線検出パネルは、シンチレータ層の上に設けられた光反射層をさらに備える場合もある。
【0003】
ここで、水蒸気などに起因する特性の劣化を抑制するために、シンチレータ層と光反射層は、外部雰囲気から隔離する必要がある。そこで、高い防湿性能が得られる構造として、シンチレータ層と光反射層をハット形状の防湿カバーで覆い、防湿カバーの周縁部を光電変換基板に接着する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4764407号明細書
【特許文献2】特許第6749038号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、防湿カバーを容易に剥がすことのできる放射線検出パネル及び放射線検出パネルの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る放射線検出パネルは、
検出領域、前記検出領域の周囲に位置する枠状の第1非検出領域、及び前記第1非検出領域の外側の第2非検出領域に位置し、前記検出領域に位置した複数の光電変換部を有する光電変換基板と、
前記検出領域に位置し、前記光電変換基板の上に設けられたシンチレータ層と、
前記検出領域及び前記第1非検出領域に位置し、前記光電変換基板とともに前記シンチレータ層を挟み、前記シンチレータ層を覆った防湿カバーと、
前記第1非検出領域に位置し、前記光電変換基板と前記防湿カバーとの間に位置し、前記光電変換基板と前記防湿カバーとを接合する接合体と、を備え、
前記光電変換基板、前記防湿カバー、及び前記接合体は、前記第2非検出領域側に開口し前記検出領域側に凹んだ隙間を形成している。
【0007】
また、一実施形態に係る放射線検出パネルの製造方法は、
検出領域、前記検出領域の周囲に位置する枠状の第1非検出領域、及び前記第1非検出領域の外側の第2非検出領域に位置し、前記検出領域に位置した複数の光電変換部を有する光電変換基板を用意し、
前記検出領域にてシンチレータ層を前記光電変換基板の上に設け、
防湿カバーを用意し、
前記光電変換基板及び前記防湿カバーの一方に接着剤を塗布し、
前記接着剤を仮硬化し、
前記防湿カバーを、前記検出領域、前記第1非検出領域の接合領域、及び前記第1非検出領域のうち前記接合領域より前記第2非検出領域側の非接合領域に対向させ、
前記接着剤が前記接合領域に位置している状態にて、前記光電変換基板及び前記防湿カバーの他方を仮硬化した前記接着剤に接着させ、前記防湿カバー及び前記光電変換基板によって前記シンチレータ層を挟み、前記防湿カバーによって前記シンチレータ層を覆い、
前記防湿カバーによって前記シンチレータ層を覆った後に前記接着剤を本硬化し、前記光電変換基板と前記防湿カバーとの間に位置し前記光電変換基板と前記防湿カバーとを接合する接合体を形成し、
前記光電変換基板、前記防湿カバー、及び本硬化した前記接合体により、前記第2非検出領域側に開口し前記検出領域側に凹んだ隙間を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、比較例に係るX線検出器を示す断面図である。
【
図2】
図2は、上記X線検出器の支持基板、X線検出パネル、回路基板、及び複数のFPCを示す斜視図であり、画像伝送部を併せて示す図である。
【
図3】
図3は、上記X線検出パネルの一部を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、上記X線検出パネル、回路基板、及び複数のFPCを示す回路図である。
【
図5】
図5は、上記X線検出パネルを示す平面図である。
【
図6】
図6は、上記X線検出パネルを線VI-VIに沿って示す断面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係るX線検出パネルを示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図7のX線検出パネルを線VIII-VIIIに沿って示す断面図であり、FPCを併せて示す図である。
【
図9】
図9は、
図8のX線検出パネルの一部を示す拡大断面図である。
【
図10】
図10は、上記第1の実施形態に係るX線検出パネルの製造方法を説明するための図であり、光電変換基板、シンチレータ層、及び接着剤を示す断面図であり、光電変換基板の上に接着剤が塗布された状態を示す図である。
【
図11】
図11は、
図10に続き、上記第1の実施形態に係るX線検出パネルの製造方法を説明するための図であり、光電変換基板、シンチレータ層、接着剤、及び防湿カバーを示す断面図であり、光電変換基板及び接着剤に防湿カバーが対向している状態を示す図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係るX線検出パネルを示す断面図であり、FPCを併せて示す図である。
【
図14】
図14は、上記第2の実施形態に係るX線検出パネルの製造方法を説明するための図であり、光電変換基板、シンチレータ層、及び接着剤を示す断面図であり、光電変換基板の上に接着剤が塗布された状態を示す図である。
【
図15】
図15は、
図14に続き、上記第2の実施形態に係るX線検出パネルの製造方法を説明するための図であり、光電変換基板、シンチレータ層、接着剤、及び防湿カバーを示す断面図であり、真空の雰囲気中において接着剤に防湿カバーを接着している状態を示す図である。
【
図16】
図16は、
図15に続き、上記第2の実施形態に係るX線検出パネルの製造方法を説明するための図であり、光電変換基板、シンチレータ層、接着剤、及び防湿カバーを示す断面図であり、光電変換基板、シンチレータ層、接着剤、及び防湿カバーの周りの雰囲気を真空から大気圧に置換している状態を示す図である。
【
図17】
図17は、上記第2の実施形態の変形例1に係るX線検出パネルの一部を示す拡大断面図である。
【
図18】
図18は、上記第2の実施形態の変形例2に係るX線検出パネルの一部を示す拡大断面図である。
【
図19】
図19は、第3の実施形態に係るX線検出パネルを示す断面図であり、FPCを併せて示す図である。
【
図20】
図20は、第4の実施形態に係るX線検出パネルの一部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施形態及び比較例について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
(比較例)
まず、比較例に係るX線検出器1の構成について説明する。
図1は、比較例に係るX線検出器1を示す断面図である。X線検出器1は、X線画像検出器であり、X線検出パネルを利用するX線平面検出器である。また、X線検出器1は、放射線像であるX線画像を検出するX線平面センサでもある。X線検出器1は、例えば、一般医療用途等に用いられている。
【0011】
図1に示すように、X線検出器1は、X線検出モジュール10、支持基板12、回路基板11、スペーサ9a,9b,9c,9d、筐体51、入射窓52等を備えている。X線検出モジュール10は、X線検出パネルPNL、FPC(フレキシブルプリント基板)2e1等を備えている。X線検出パネルPNLは、支持基板12と入射窓52との間に位置している。X線検出パネルPNLは、入射窓52と対向した防湿カバー7を備えている。
【0012】
入射窓52は、筐体51の開口に取付けられている。入射窓52はX線を透過させる。そのため、X線は入射窓52を透過してX線検出パネルPNLに入射される。入射窓52は、板状に形成され、筐体51内部を保護する機能を有している。入射窓52は、X線吸収率の低い材料で薄く形成することが望ましい。これにより、入射窓52で生じる、X線の散乱と、X線量の減衰とを低減することができる。そして、薄くて軽いX線検出器1を実現することができる。
X線検出モジュール10、支持基板12、回路基板11等は、筐体51及び入射窓52で囲まれた空間の内部に収容されている。
【0013】
X線検出パネルPNLは、薄い部材を積層して構成されているため、軽く機械的強度の低いものである。このため、X線検出パネルPNLは、粘着シートを介して支持基板12の平坦な一面に固定されている。支持基板12は、例えばアルミニウム合金で板状に形成され、X線検出パネルPNLを安定して保持するために必要な強度を有している。これにより、X線検出器1に外部から振動や衝撃が加わった際におけるX線検出パネルPNLの破損を抑制することができる。
【0014】
支持基板12の他面には、スペーサ9a,9bを介して回路基板11が固定されている。スペーサ9a,9bを使用することで、主に金属から構成される支持基板12から回路基板11までの電気的絶縁距離を保持することができる。
筐体51の内面には、スペーサ9c,9dを介して回路基板11が固定されている。スペーサ9c,9dを使用することで、主に金属から構成される筐体51から回路基板11までの電気的絶縁距離を保持することができる。筐体51は、回路基板11及びスペーサ9a,9b,9c,9dを介して支持基板12等を支持している。
【0015】
回路基板11にはFPC2e1に対応するコネクタが実装され、FPC2e1はコネクタを介して回路基板11に電気的に接続されている。FPC2e1とX線検出パネルPNLとの接続には、ACF(異方性導電フィルム)を利用した熱圧着法が用いられる。この方法により、X線検出パネルPNLの複数の微細なパッドと、FPC2e1の複数の微細なパッドとの電気的接続が確保され、FPC2e1がX線検出パネルPNLに物理的に固定される。なお、X線検出パネルPNLのパッドに関しては後述する。
【0016】
上記のように、回路基板11は、上記コネクタ、FPC2e1等を介してX線検出パネルPNLに電気的に接続されている。回路基板11は、X線検出パネルPNLを電気的に駆動し、かつ、X線検出パネルPNLからの出力信号を電気的に処理するものである。
【0017】
図2は、比較例に係るX線検出器1の支持基板12、X線検出パネルPNL、回路基板11、複数のFPC2e1,2e2、及び画像伝送部4を示す斜視図である。なお、
図2には、X線検出器1の全ての部材を示していない。後述する接合体等、X線検出器1のいくつかの部材の図示は、
図2において省略している。
【0018】
図2に示すように、X線検出パネルPNLは、光電変換基板2、シンチレータ層5等を備えている。光電変換基板2は、基板(基材)2a、複数の光電変換部2b、複数の制御ライン(又はゲートライン)2c1、複数のデータライン(又はシグナルライン)2c2等を有している。なお、光電変換部2b、制御ライン2c1、及びデータライン2c2の数、配置等は
図2の例に限定されるものではない。
【0019】
複数の制御ライン2c1は、行方向Xに延在し、列方向Yに所定の間隔をあけて並べられている。複数のデータライン2c2は、列方向Yに延在し、複数の制御ライン2c1と交差し、行方向Xに所定の間隔をあけて並べられている。なお、行方向X及び列方向Yは、互いに直交している。
【0020】
光電変換部2bは、基板2aの一方の面側に複数設けられている。光電変換部2bは、制御ライン2c1とデータライン2c2とにより区画された四角形状の領域に設けられている。1つの光電変換部2bは、X線画像の1つの画素に対応する。複数の光電変換部2bは、行方向X及び列方向Yにマトリクス状に並べられている。上記のことから、光電変換基板2は、アレイ基板である。
【0021】
各々の光電変換部2bは、光電変換素子2b1と、スイッチング素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)2b2と、を有している。TFT2b2は、対応する一の制御ライン2c1と、対応する一のデータライン2c2とに接続されている。光電変換素子2b1はTFT2b2に電気的に接続されている。
【0022】
制御ライン2c1は、FPC2e1を介して回路基板11に電気的に接続されている。回路基板11は、FPC2e1を介して複数の制御ライン2c1に制御信号S1を与える。データライン2c2は、FPC2e2を介して回路基板11に電気的に接続されている。光電変換素子2b1によって変換された画像データ信号S2(光電変換部2bに蓄積された電荷)は、TFT2b2、データライン2c2、及びFPC2e2を介して回路基板11に伝送される。
【0023】
X線検出器1は、画像伝送部4を備えている。画像伝送部4は、配線4aを介して回路基板11に接続されている。なお、画像伝送部4は、回路基板11に組込まれてもよい。画像伝送部4は、図示しない複数のアナログ-デジタル変換器によりデジタル信号に変換された画像データの信号に基づいて、X線画像を生成する。生成されたX線画像のデータは、画像伝送部4から外部の機器に向けて出力される。
【0024】
図3は、比較例に係るX線検出パネルPNLの一部を示す拡大断面図である。
図3に示すように、光電変換基板2は、基板2a、複数の光電変換部2b、絶縁層21,22,23,24,25を有している。複数の光電変換部2bは、検出領域DAに位置している。各々の光電変換部2bは、光電変換素子2b1と、TFT2b2と、を備えている。
【0025】
TFT2b2は、ゲート電極GE、半導体層SC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEを有している。光電変換素子2b1は、フォトダイオードで構成されている。なお、光電変換素子2b1は、光を電荷に変換するように構成されていればよい。
【0026】
基板2aは、板状の形状を有し、絶縁材料で形成されている。上記絶縁材料としては、無アルカリガラスなどのガラスを挙げることができる。比較例において、基板2aは、ガラスで形成されているが、樹脂等の有機絶縁材料で形成されてもよい。基板2aの平面形状は、例えば四角形である。基板2aの厚みは、例えば0.5乃至0.7mmである。絶縁層21は、基板2aの上に設けられている。
【0027】
絶縁層21の上に、ゲート電極GEが形成されている。ゲート電極GEは、上記制御ライン2c1に電気的に接続されている。絶縁層22は、絶縁層21及びゲート電極GEの上に設けられている。半導体層SCは、絶縁層22の上に設けられ、ゲート電極GEに対向している。半導体層SCは、非晶質半導体としての非晶質シリコン、多結晶半導体としての多結晶シリコン等の半導体材料で形成されている。
【0028】
絶縁層22及び半導体層SCの上に、ソース電極SE及びドレイン電極DEが設けられている。ゲート電極GE、ソース電極SE、ドレイン電極DE、上記制御ライン2c1、及び上記データライン2c2は、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成されている。
【0029】
ソース電極SEは、半導体層SCのソース領域に電気的に接続されている。また、ソース電極SEは、上記データライン2c2に電気的に接続されている。ドレイン電極DEは、半導体層SCのドレイン領域に電気的に接続されている。
【0030】
絶縁層23は、絶縁層22、半導体層SC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEの上に設けられている。光電変換素子2b1は、ドレイン電極DEに電気的に接続されている。絶縁層24は、絶縁層23及び光電変換素子2b1の上に設けられている。バイアス線BLは、絶縁層24の上に設けられ、絶縁層24に形成されたコンタクトホールを通り光電変換素子2b1に接続されている。絶縁層25は、絶縁層24及びバイアス線BLの上に設けられている。
【0031】
絶縁層21,22,23,24,25は、無機絶縁材料、有機絶縁材料等の絶縁材料で形成されている。無機絶縁材料としては、酸化物絶縁材料、窒化物絶縁材料、及び酸窒化物絶縁材料を挙げることができる。有機絶縁材料としては樹脂を挙げることができる。
【0032】
シンチレータ層5は、光電変換基板2(複数の光電変換部2b)の上に設けられている。シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置し、複数の光電変換部2bの上方を覆っている。シンチレータ層5は、入射されるX線を光(蛍光)に変換するように構成されている。
【0033】
なお、光電変換素子2b1は、シンチレータ層5から入射される光を電荷に変換する。変換された電荷は光電変換素子2b1に蓄積される。TFT2b2は、光電変換素子2b1への蓄電及び光電変換素子2b1からの放電を切替えることができる。なお、光電変換素子2b1の自己容量が不十分である場合、光電変換基板2はコンデンサ(蓄積キャパシタ)をさらに有し、光電変換素子2b1で変換された電荷をコンデンサに蓄積してもよい。
【0034】
シンチレータ層5は、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)で形成されている。真空蒸着法を用いてシンチレータ層5を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ層5が得られる。シンチレータ層5の厚みは、例えば、600μmである。シンチレータ層5の最表面において、シンチレータ層5の柱状結晶の太さは、8乃至12μmである。
【0035】
シンチレータ層5を形成する材料は、CsI:Tlに限定されるものではない。シンチレータ層5は、タリウム賦活ヨウ化ナトリウム(NaI:Tl)、ナトリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Na)、ユーロピウム賦活臭化セシウム(CsBr:Eu)、ヨウ化ナトリウム(NaI)等で形成されてもよい。
【0036】
なお、真空蒸着法を用いてシンチレータ層5を形成する際には、開口を有するマスクが用いられる。この場合、光電変換基板2上の開口に対峙する領域にシンチレータ層5が形成される。また、蒸着によるシンチレータ材は、マスクの表面にも堆積する。そして、シンチレータ材は、マスクの開口の近傍にも堆積し、開口の内部に徐々に張り出すように結晶が成長する。マスクから開口の内部に結晶が張り出すと、開口の近傍において、光電変換基板2へのシンチレータ材の蒸着が抑制される。そのため、
図2に示したように、シンチレータ層5の周縁近傍は、外側になるに従い厚みが漸減している。
【0037】
又は、シンチレータ層5は、マトリクス状に並べられ、光電変換部2bに一対一で設けられ、それぞれ四角柱状の形状を有する複数のシンチレータ部を有してもよい。そのようなシンチレータ層5を形成する際、酸硫化ガドリニウム(Gd2O2S)蛍光体粒子をバインダ材と混合したシンチレータ材を、光電変換基板2上に塗布し、シンチレータ材を焼成して硬化させる。その後、ダイサによりダイシングするなどし、シンチレータ材に格子状の溝部を形成する。上記の場合、複数のシンチレータ部の間には、空気又は酸化防止用の窒素(N2)等の不活性ガスが封入される。又は、複数のシンチレータ部の間の空間は、大気圧より減圧された空間に設定されてもよい。
【0038】
比較例において、X線検出パネルPNLは、光反射層6をさらに備えている。光反射層6は、シンチレータ層5のX線の入射側に設けられている。光反射層6は、少なくとも検出領域DAに位置し、シンチレータ層5の上面を覆っている。光反射層6は、光(蛍光)の利用効率を高めて感度特性の向上を図るために設けられている。すなわち、光反射層6は、シンチレータ層5において生じた光のうち、光電変換部2bが設けられた側とは反対側に向かう光を反射して、光電変換部2bに向かうようにする。ただし、光反射層6は、必ずしも必要ではなく、X線検出パネルPNLに求められる感度特性などに応じて設ければよい。
【0039】
例えば、酸化チタン(TiO2)等からなる光散乱性粒子と、樹脂と、溶媒とを混合した塗布材料をシンチレータ層5上に塗布し、続いて塗布材料を乾燥することで光反射層6を形成することができる。
【0040】
なお、光反射層6の構造及び光反射層6の製造方法は、上記の例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、銀合金やアルミニウムなどの光反射率の高い金属からなる層をシンチレータ層5上に成膜することで光反射層6を形成してもよい。又は、表面が銀合金やアルミニウムなどの光反射率の高い金属層を含むシートや、光散乱性粒子を含む樹脂シート等をシンチレータ層5の上に設けることで光反射層6を形成してもよい。
【0041】
なお、ペースト状の塗布材料をシンチレータ層5の上に塗布し、上記塗布材料を乾燥する場合は、乾燥に伴い塗布材料が収縮するので、シンチレータ層5に引っ張り応力が加わり、シンチレータ層5が光電変換基板2から剥離する場合がある。そのため、シート状の光反射層6を、シンチレータ層5の上に設けることが好ましい。この場合、光反射層6を、例えば、両面テープなどを用いて、シンチレータ層5の上に接合することもできるが、光反射層6をシンチレータ層5の上に載置する方が好ましい。シート状の光反射層6をシンチレータ層5の上に載置すれば、光反射層6の膨張または収縮に起因した、光電変換基板2からシンチレータ層5の剥離を容易に抑制することができる。
【0042】
防湿カバー(防湿体)7は、シンチレータ層5及び光反射層6を覆っている。防湿カバー7は、空気中に含まれる水分により、光反射層6の特性やシンチレータ層5の特性が劣化するのを抑制するために設けられている。防湿カバー7は、シンチレータ層5の露出部分を完全に覆っている。防湿カバー7は光反射層6等との間に隙間を空けてもよいし、防湿カバー7は光反射層6等と接触してもよい。
【0043】
防湿カバー7は、金属を含むシートで形成されている。上記金属としては、アルミニウムを含む金属、銅を含む金属、マグネシウムを含む金属、タングステンを含む金属、ステンレス、コバール等を挙げることができる。防湿カバー7が金属を含んでいる場合、防湿カバー7は、水分の透過を、防止したり、大幅に抑制したりすることができる。
【0044】
図4は、比較例に係るX線検出パネルPNL、回路基板11、及び複数のFPC2e1,2e2を示す回路図である。
図2乃至
図4に示すように、回路基板11には、読み出し回路11aおよび信号検出回路11bが設けられている。なお、これらの回路を1つの基板に設けることもできるし、これらの回路を複数の基板に分けて設けることもできる。FPC2e1に設けられた複数の配線の他端は、読み出し回路11aとそれぞれ電気的に接続されている。FPC2e2に設けられた複数の配線の他端は、信号検出回路11bとそれぞれ電気的に接続されている。
【0045】
読み出し回路11aは、TFT2b2のオン状態とオフ状態を切り替える。読み出し回路11aは、複数のゲートドライバ11aaと行選択回路11abとを有する。行選択回路11abには、X線検出器1の外部に設けられた図示しない画像処理部などから制御信号S1が入力される。行選択回路11abは、X線画像の走査方向に従って、対応するゲートドライバ11aaに制御信号S1を入力する。ゲートドライバ11aaは、対応する制御ライン2c1に制御信号S1を入力する。
【0046】
例えば、読み出し回路11aは、FPC2e1を介して、制御信号S1を複数の制御ライン2c1に順に入力する。制御ライン2c1に入力された制御信号S1によりTFT2b2がオン又はオフされ、TFT2b2がオン状態となることで、光電変換素子2b1からの電荷(画像データ信号S2)がFPC2e2に出力される。
【0047】
信号検出回路11bは、複数の積分回路11ba、複数の選択回路11bb、及び複数のADコンバータ11bcを有している。1つの積分回路11baは、1つのデータライン2c2と電気的に接続されている。積分回路11baは、複数の光電変換部2bからの画像データ信号S2を順に受信する。そして、積分回路11baは、一定時間内に流れる電流を積分し、その積分値に対応した電圧を選択回路11bbへ出力する。この様にすれば、所定の時間内にデータライン2c2を流れる電流の値(電荷量)を電圧値に変換することが可能となる。すなわち、積分回路11baは、シンチレータ層5において発生した蛍光の強弱分布に対応した画像データ情報を、電位情報へと変換する。
【0048】
選択回路11bbは、読み出しを行う積分回路11baを選択し、電位情報へと変換された画像データ信号S2を順に読み出す。ADコンバータ11bcは、読み出された画像データ信号S2をデジタル信号に順に変換する。デジタル信号に変換された画像データ信号S2は、配線を介して画像処理部に入力される。なお、デジタル信号に変換された画像データ信号S2は、無線により画像処理部に送信されてもよい。画像処理部は、デジタル信号に変換された画像データ信号S2に基づいてX線画像を構成する。なお、画像処理部は、回路基板11と一体化することもできる。
【0049】
図5は、X線検出パネルPNLを示す平面図である。
図5において、シンチレータ層5には右上がりの斜線を付し、接合体8には右下がりの斜線を付している。
図6は、X線検出パネルPNLを線VI-VIに沿って示す断面図である。
【0050】
図5及び
図6に示すように、光電変換基板2は、検出領域DAと、検出領域DAの周囲に位置する枠状の第1非検出領域NDA1と、第1非検出領域NDA1の外側の第2非検出領域NDA2と、に位置している。本実施形態において、第2非検出領域NDA2は枠状の形状を有している。
【0051】
シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置している。光電変換基板2は、さらに複数のパッド2d1及び複数のパッド2d2を有している。パッド2d1及びパッド2d2は、第2非検出領域NDA2に位置している。本実施形態において、複数のパッド2d1は基板2aの左辺に沿って並べられ、複数のパッド2d2は基板2aの下辺に沿って並べられている。なお、
図5には複数のパッドを模式的に示しており、複数のパッドの個数、形状、サイズ、位置、及びピッチは、
図5に示す例に限定されるものではない。
【0052】
1つの制御ライン2c1は、検出領域DA、第1非検出領域NDA1、及び第2非検出領域NDA2を延在し、複数のパッド2d1のうちの1つと電気的に接続されている。1つのデータライン2c2は、検出領域DA、第1非検出領域NDA1、及び第2非検出領域NDA2を延在し、複数のパッド2d2のうちの1つと電気的に接続されている。
1つのパッド2d1にはFPC2e1に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続され、1つのパッド2d2にはFPC2e2に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続されている(
図2)。
【0053】
X線検出パネルPNLは、接合体8をさらに備えている。接合体8は、シンチレータ層5の周囲に設けられている。接合体8は、第1非検出領域NDA1に位置し、枠状の形状を有し、シンチレータ層5の周囲を連続的に延在している。接合体8は、光電変換基板2(例えば、上記絶縁層25)に接合されている。
【0054】
防湿カバー7は、
図5に示す平面図において、シンチレータ層5を完全に覆っている。
図6に示すように、シンチレータ層5のうち光電変換基板2及び接合体8で覆われていない部分は、防湿カバー7で完全に覆われている。防湿カバー7は、接合体8に接合されている。例えば、大気圧よりも減圧された環境において防湿カバー7と接合体8とを接合すれば、防湿カバー7を光反射層6等に接触させることができる。また、一般的に、シンチレータ層5には、その体積の10乃至40%程度の空隙が存在する。そのため、空隙にガスが含まれていると、X線検出器1を航空機などで輸送した場合にガスが膨張して防湿カバー7が破損する恐れがある。大気圧よりも減圧された環境において防湿カバー7と接合体8とを接合すれば、X線検出器1が航空機などで輸送された場合であっても防湿カバー7の破損を抑制することができる。上記のことから、接合体8と防湿カバー7とにより画された空間の圧力は、大気圧よりも低くした方が好ましい。
【0055】
接合体8は、光電変換基板2と防湿カバー7との間に位置し、紫外線硬化型接着剤で形成されている。紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射することで、紫外線硬化型接着剤からなる接合体8は、光電変換基板2と防湿カバー7とを接合する。
【0056】
図5に示すように、平面視において、接合体8は防湿カバー7の外周縁より外側に位置している。
図6に示すように、光電変換基板2と防湿カバー7との間に隙間(空間)は存在していない。防湿カバー7は、光電変換基板2と対向する側の下面7aと、下面7aとは反対側の上面7bと、下面7aと上面7bとをつなぐ側面7cと、を有している。接合体8は、防湿カバー7の端部の下面7a、上面7b、及び側面7cに接着し、防湿カバー7の端部を包んでいる。
比較例に係るX線検出器1は、上記のように構成されている。
【0057】
上記のように構成された比較例に係るX線検出器1によれば、防湿カバー7を接合体8に一度接着すると、防湿カバー7を接合体8から剥がすことが非常に困難になってしまう。何故なら、防湿カバー7を接合体8から剥がす基点が存在しないためである。言い換えると、防湿カバー7の端部は接合体8で包まれており、例えばX線検出パネルPNLの外側から防湿カバー7の端部をピンセットで摘むことができないためである。
【0058】
接合体8に異物が噛み込んだ場合、防湿カバー7に孔が開いていた場合等、接合体8及び防湿カバー7に異常があった場合に、防湿カバー7を接合体8から剥がすことができなくなってしまう。ひいては、光電変換基板2、シンチレータ層5等を含むX線検出パネルPNLが不良品となり、光電変換基板2及びシンチレータ層5を再利用することができなくなってしまう。
【0059】
(第1の実施形態)
次に、第1の実施形態に係るX線検出器1の構成及びX線検出器1の製造方法について説明する。X線検出器1は、本実施形態で説明する構成以外、上記比較例と同様に構成されている。
図7は、第1の実施形態に係るX線検出パネルPNLを示す平面図である。
図7において、シンチレータ層5には右上がりの斜線を付し、接合体8には右下がりの斜線を付している。
図8は、
図7のX線検出パネルPNLを線VIII-VIIIに沿って示す断面図であり、FPC2e1を併せて示す図である。
【0060】
図7及び
図8に示すように、X線検出パネルPNLは、光電変換基板2、シンチレータ層5、防湿カバー(又は、防湿体)7、及び接合体8を備えている。X線検出パネルPNLは、上述した光反射層6無しに形成されている。光電変換基板2は、検出領域DA、第1非検出領域NDA1、及び第2非検出領域NDA2に位置している。光電変換基板2は、検出領域DAに位置した複数の光電変換部2b等を有している(
図2及び
図3)。シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置し、光電変換基板2の上に設けられている。
【0061】
防湿カバー7は、検出領域DA及び第1非検出領域NDA1に位置している。平面視において、防湿カバー7は、接合体8の外周縁より外側に位置している。防湿カバー7は、光電変換基板2とともにシンチレータ層5を挟み、シンチレータ層5を覆っている。防湿カバー7は、外部からシンチレータ層5への水蒸気の浸入を防止することができる。防湿カバー7は、防湿材として、例えばアルミニウムで形成されている。なお、防湿カバー7は、アルミニウム以外の防湿材で形成されてもよく、例えばアルミニウム合金で形成されてもよい。
【0062】
接合体8は、第1非検出領域NDA1に位置し、枠状の形状を有し、シンチレータ層5の周囲を連続的に延在している。接合体8は、光電変換基板2と防湿カバー7との間に位置し、光電変換基板2と防湿カバー7とを接合している。接合体8は、紫外線硬化型接着剤で形成されている。
【0063】
防湿カバー7は、シンチレータ層5の外側において全周にわたって接合体8に接着している。防湿カバー7は、光電変換基板2及び接合体8とともにシンチレータ層5を密閉した空間を形成している。そのため、X線検出パネルPNLの外部からシンチレータ層5への水蒸気の浸入は抑制される。光電変換基板2、防湿カバー7、及び接合体8で囲まれた空間は、大気圧より減圧された空間であり、真空である。上記空間は、0.7気圧以下に減圧された空間である方が望ましい。本実施形態において、防湿カバー7は、シンチレータ層5の表面に接している。
【0064】
FPC2e1は、光電変換基板2の第2非検出領域NDA2に重なっている。FPC2e1は、光電変換基板2の第1非検出領域NDA1に重なっていない。FPC2e1は、接続材ADにより光電変換基板2(X線検出パネルPNL)に固定され、パッド2d1に電気的に接続されている。接続材ADはACFで形成されている。
【0065】
図9は、
図8のX線検出パネルPNLの一部を示す拡大断面図である。
図9に示すように、光電変換基板2、防湿カバー7、及び接合体8は、第1非検出領域NDA1に隙間Aを形成している。隙間Aは、空間である。隙間Aは、第2非検出領域NDA2側に開口し、検出領域DA側に凹んでいる。
【0066】
防湿カバー7の端部は接合体8で包まれていない。そのため、例えばピンセットの一片をX線検出パネルPNLの外側から隙間Aに差し込み、防湿カバー7の端部をピンセットで摘むことができる。これにより、防湿カバー7を接合体8から良好に剥がすことができる。接合体8及び防湿カバー7に異常があった場合、不良品のX線検出パネルPNLを廃棄するのではなく、不良品のX線検出パネルPNLを修理することができる。修理する場合、不良品のX線検出パネルPNLのうち、不良の防湿カバー7や接合体8のみを廃棄することができる。不良品のX線検出パネルPNLのうち、良品の光電変換基板2及びシンチレータ層5に関しては再利用することができる。そのため、製造コストの低減や、製造時間の低減を図ることができる。また、仕損費を最小に抑えることができ、必要資源を削減する効果を得ることができる。
【0067】
防湿カバー7が第1非検出領域NDA1にて光電変換基板2に最も接近する位置のうち最も検出領域DA側の位置を第1位置P1とする。接合体8は、第1位置P1より検出領域DA側に位置し、かつ、第1位置P1より第2非検出領域NDA2側に位置している。接合体8は、第1位置P1より検出領域DA側にて、光電変換基板2と防湿カバー7とを接合している。
【0068】
このため、接合体8が第1位置P1より検出領域DA側にて光電変換基板2と防湿カバー7とを接合していない場合と比較し、隙間Aを検出領域DA側に一層凹ませることができる。何故なら、第1位置P1より検出領域DA側にて、接合体8と光電変換基板2とが接合される面積、及び接合体8と防湿カバー7とが接合される面積を、それぞれ確保することができるためである。例えば、ピンセットの一片を隙間Aに深く挿入することができるため、防湿カバー7の端部をピンセットで良好に摘むことができる。
【0069】
ここで、防湿カバー7の外周縁に重なる位置を第2位置P2とする。隙間Aのうち最も検出領域DA側の位置を第3位置P3とする。接合体8が光電変換基板2に接着している範囲内のうち最も検出領域DA側の位置を第4位置P4とする。また、第1非検出領域NDA1が検出領域DA及び第2非検出領域NDA2の各々と隣合う方向において、第2位置P2から第3位置P3までの長さを第1長さL1とし、第3位置P3から第4位置P4までの長さを第2長さL2とする。
図9において、第1非検出領域NDA1が検出領域DA及び第2非検出領域NDA2の各々と隣合う方向は、行方向Xである。
【0070】
すると、本実施形態において、第2長さL2は、第1長さL1以上である(L2≧L1)。
そのため、光電変換基板2、防湿カバー7、及び接合体8が隙間Aを形成しても、接合体8と光電変換基板2とが接合される面積、及び接合体8と防湿カバー7とが接合される面積を、それぞれ確保することができる。
また、第2長さL2は、第1長さL1を超えている方が望ましい(L2>L1)。接合体8を介した透湿経路を十分に長くとることができるため、製品信頼性の高いX線検出器1を得ることができる。
【0071】
なお、第2位置P2から第1位置P1までの範囲内において、光電変換基板2のシンチレータ層5側の面と防湿カバー7の下面7aとは平行である。そのため、上記範囲内において、防湿カバー7は光電変換基板2に最も接近している。
本実施形態のX線検出器1は、上述したように構成されている。
【0072】
次に、本実施形態のX線検出器1の製造方法について説明する。ここでは、X線検出器1の製造方法のうち、X線検出パネルPNLの製造方法について説明する。
図10は、本第1の実施形態に係るX線検出パネルPNLの製造方法を説明するための図であり、光電変換基板2、シンチレータ層5、及び接着剤80を示す断面図であり、光電変換基板2の上に接着剤80が塗布された状態を示す図である。
図11は、
図10に続き、本第1の実施形態に係るX線検出パネルPNLの製造方法を説明するための図であり、光電変換基板2、シンチレータ層5、接着剤80、及び防湿カバー7を示す断面図であり、光電変換基板2及び接着剤80に防湿カバー7が対向している状態を示す図である。
【0073】
図10に示すように、X線検出パネルPNLの製造が開始されると、まず、光電変換基板2を用意する。光電変換基板2は、検出領域DA、第1非検出領域NDA1、及び第2非検出領域NDA2に位置し、検出領域DAに位置した複数の光電変換部2bを有している(
図2及び
図3)。
【0074】
続いて、少なくとも検出領域DAにてシンチレータ層5を光電変換基板2の上に設ける。例えば、真空蒸着法を用いてシンチレータ層5を光電変換基板2の上に形成する。その後、防湿カバー7を用意する。次いで、光電変換基板2及び防湿カバー7の一方に添加剤を含有した接着剤80を塗布する。本実施形態において、光電変換基板2にディスペンサー等を用いて接着剤80を塗布する。また、従来よりも少しシンチレータ層5側に接着剤80を塗布する。
【0075】
ここで、接着剤80は、紫外線硬化型接着剤である。この場合、接着剤80としては、エポキシ系でカチオン重合型の接着剤を用いることが好ましい。また、接着剤80の透湿を抑制するため、添加剤として無機材質のフィラーを用いることが好ましい。
【0076】
その後、接着剤80を仮硬化する。接着剤80を仮硬化する際、接着剤80に照射する紫外線の光量や、紫外線を照射する時間を調整することにより、完全に硬化していない状態の接着剤80を得ることができる。紫外線は、接着剤80に直接、照射されてもよい。また、紫外線は、光電変換基板2の外側から出射され、光電変換基板2を透過して接着剤80に照射されてもよい。
【0077】
図11に示すように、次いで、防湿カバー7を、検出領域DA、接合領域NDA1a、及び非接合領域NDA1bに対向させる。なお、接合領域NDA1aは第1非検出領域NDA1に含まれている。非接合領域NDA1bは、第1非検出領域NDA1のうち接合領域NDA1aより第2非検出領域NDA2側の領域である。
【0078】
続いて、接着剤80が接合領域NDA1aに位置している状態にて、光電変換基板2及び防湿カバー7の他方を仮硬化した接着剤80に接着させる。本実施形態において、防湿カバー7を仮硬化した接着剤80に接着させる。これにより、防湿カバー7及び光電変換基板2によってシンチレータ層5を挟むことができ、防湿カバー7によってシンチレータ層5を覆うことができる。
【0079】
接着剤80は仮硬化されているため、接着剤80の粘度は高い。接着剤80は高粘度を有しているため、防湿カバー7を接着剤80に接着させても、接着剤80の広がりを抑制することができる。これにより、接着剤80が防湿カバー7の外周縁に重なる位置まで広がる事態を回避することができる。又は、隙間Aを確保することができる(
図9)。
【0080】
その後、接着剤80を本硬化する。接着剤80を本硬化する際、紫外線は、光電変換基板2の外側から接着剤80に照射した方が望ましい。これにより、光電変換基板2を透過した紫外線を接着剤80に照射することができる。なお、紫外線を防湿カバー7の外側から接着剤80に照射することは望ましくない。何故なら、アルミニウム製の防湿カバー7は、紫外線を透過させ難いためである。
【0081】
上述したように、接着剤80を本硬化することにより、接着剤80に基づいた接合体8を形成することができる。そして、接合体8は、光電変換基板2と防湿カバー7とを接合することができる。なお、接合体8は、光電変換基板2と防湿カバー7との間に位置している。
【0082】
また、光電変換基板2、防湿カバー7、及び本硬化した接合体8により、第2非検出領域NDA2側に開口し、検出領域DA側に凹んだ隙間Aが形成される。これにより、X線検出パネルPNLの製造が終了する。
【0083】
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線検出器1及びX線検出器1の製造方法によれば、X線検出パネルPNLは、光電変換基板2と、シンチレータ層5と、防湿カバー7と、接合体8と、を備えている。光電変換基板2、防湿カバー7、及び接合体8は、隙間Aを形成している。光電変換基板2と防湿カバー7との間の隙間Aにより、防湿カバー7の周縁部に接合体8が接着していない領域を設けることができる。防湿カバー7の上記領域を基点として、防湿カバー7を光電変換基板2と垂直方向(光電変換基板2のシンチレータ層5と対向する側の面の法線方向)に引っ張ることができ、防湿カバー7を接合体8から容易に剥がすことができる。
【0084】
X線検出パネルPNLの製造方法において、防湿カバー7を接着剤80に接着させる前に、接着剤80を仮硬化している。防湿カバー7を接着剤80に接着させた際の接着剤80の広がりを抑制することができるため、例えば、隙間Aを確保することができる。
上記のことから、防湿カバー7を容易に剥がすことのできるX線検出パネルPNL及びX線検出パネルPNLの製造方法を得ることができる。
【0085】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るX線検出器1の構成及びX線検出器1の製造方法について説明する。X線検出器1は、本実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
図12は、第2の実施形態に係るX線検出パネルPNLを示す断面図であり、FPC2e1を併せて示す図である。
図13は、
図12のX線検出パネルPNLの一部を示す拡大断面図である。
【0086】
図12及び
図13に示すように、本実施形態は、防湿カバー7の周縁部の形状及び接合体8の形状に関し上記第1の実施形態と相違している。接合体8は、第1部分8a及び第2部分8bを有している。第1部分8aは、隙間Aと防湿カバー7との間に位置し、防湿カバー7に接着している。第2部分8bは、光電変換基板2と隙間Aとの間に位置し、光電変換基板2に接着している。本実施形態において、隙間Aは、接合体8の第1部分8aと第2部分8bとの間に位置している。
【0087】
第2部分8bは、防湿カバー7に重なっていない突出部8b1を含んでいる。言い換えると、突出部8b1は、第2部分8bのうち第2位置P2を越えて第2非検出領域NDA2側に突出した部分である。
【0088】
突出部8b1のうち最も第2非検出領域NDA2側の位置を第5位置P5とする。突出部8b1は長さL3を有している。長さL3は、第1非検出領域NDA1が検出領域DA及び第2非検出領域NDA2の各々と隣合う方向における突出部8b1の長さである。
図13において、長さL3は、行方向Xにおける第2位置P2から第5位置P5までの突出部8b1の長さである。本実施形態において、長さL3は、実質的に1mmである。
【0089】
長さL3は、2mm以内である方が望ましい。これにより、接合体8がパッド2d1を覆ったり、接合体8がFPC2e1に接触したりする事態を回避することができる。また、行方向Xにおける防湿カバー7からパッド2d1までの距離を長くしなくとも上記事態を回避することができるため、狭額縁化を図ることができ、例えば、行方向Xにおける防湿カバー7からパッド2d1までの距離の拡大を抑制することができる。例示すると、光電変換基板2の第1非検出領域NDA1及び第2非検出領域NDA2の行方向Xの幅の拡大を抑制することができる。
【0090】
また、上記のように、接合体8は第1部分8a及び第2部分8bを有している。
図13を参照すると、接合体8が第1部分8a及び第2部分8bを有していない場合と比較し、接合体8と防湿カバー7との界面、及び接合体8と光電変換基板2との界面を、それぞれ長くすることができる。そのため、接合体8は第1部分8a及び第2部分8bを有している方が、シンチレータ層5が存在する気密空間内に、上記界面を伝った水分の浸入を抑制することができる。
さらに、接合体8と光電変換基板2とが接合される面積、及び接合体8と防湿カバー7とが接合される面積を、それぞれ大きくすることができるため、接合体8に対する光電変換基板2及び防湿カバー7のそれぞれの接着強度を高めることができる。
【0091】
ここで、防湿カバー7が第1非検出領域NDA1にて光電変換基板2に最も接近する位置(第1位置P1)における光電変換基板2と防湿カバー7との間の距離を第1距離D1とする。一方、防湿カバー7の外周縁に重なる位置(第2位置P2)における光電変換基板2と防湿カバー7との間の距離を第2距離D2とする。なお、第1位置P1は、第1非検出領域NDA1のうち第2位置P2と検出領域DAとの間の位置である。第1距離D1及び第2距離D2は、それぞれ、行方向X及び列方向Yに直交する方向の長さである。
【0092】
本実施形態において、第2距離D2は第1距離D1を超えている。例えば、第2距離D2が第1距離D1と同一である場合と比較して、ピンセットの一片を隙間Aに挿入する方向の自由度が高くなり、ピンセットの一片を隙間Aに挿入し易くなり、防湿カバー7の端部をピンセットで良好に摘むことができる。
本実施形態のX線検出器1は、上述したように構成されている。
【0093】
次に、本実施形態のX線検出器1の製造方法について説明する。ここでは、X線検出器1の製造方法のうち、X線検出パネルPNLの製造方法について説明する。
図14は、第2の実施形態に係るX線検出パネルPNLの製造方法を説明するための図であり、光電変換基板2、シンチレータ層5、及び接着剤80を示す断面図であり、光電変換基板2の上に接着剤80が塗布された状態を示す図である。
【0094】
図15は、
図14に続き、第2の実施形態に係るX線検出パネルPNLの製造方法を説明するための図であり、光電変換基板2、シンチレータ層5、接着剤80、及び防湿カバー7を示す断面図であり、真空の雰囲気中において接着剤80に防湿カバー7を接着している状態を示す図である。
図16は、
図15に続き、第2の実施形態に係るX線検出パネルPNLの製造方法を説明するための図であり、光電変換基板2、シンチレータ層5、接着剤80、及び防湿カバー7を示す断面図であり、光電変換基板2、シンチレータ層5、接着剤80、及び防湿カバー7の周りの雰囲気を真空から大気圧に置換している状態を示す図である。
【0095】
図14に示すように、X線検出パネルPNLの製造が開始されると、まず、光電変換基板2を用意する。続いて、少なくとも検出領域DAにてシンチレータ層5を光電変換基板2の上に設ける。その後、防湿カバー7を用意する。次いで、第1非検出領域NDA1のうち塗布領域NDA1cに接着剤80を塗布する。塗布領域NDA1cは、シンチレータ層5より第2非検出領域NDA2側の領域である。ここで、接着剤80は、紫外線硬化型接着剤である。本実施形態において、光電変換基板2にディスペンサー等を用いて接着剤80を塗布する。但し、防湿カバー7に接着剤80を塗布してもよい。
その後、接着剤80を仮硬化する。本第2の実施形態において、接着剤80の露光量を上記第1の実施形態の露光量より少なくしている。例えば、上記第1の実施形態より、接着剤80に照射する紫外線の強度を低くしたり、接着剤80に紫外線を照射する時間を短くしたり、している。これにより、接着剤80は、上記第1の実施形態より粘度が低く抑えられた状態に保持される。
【0096】
図15に示すように、次いで、真空雰囲気中にて、防湿カバー7を第1非検出領域NDA1及び検出領域DAに対向させる。引き続き、真空雰囲気中にて、防湿カバー7及び光電変換基板2を低粘度の接着剤80にて接着させる。これにより、防湿カバー7及び光電変換基板2によってシンチレータ層5を挟むことができ、防湿カバー7によってシンチレータ層5を覆うことができる。接着剤80は低粘度を有しているため、防湿カバー7及び光電変換基板2にて接着剤80を挟むと、接着剤80は広がる。例えば、図示したように、塗布領域NDA1cの外側まで広がり得る。但し、接着剤80を第2非検出領域NDA2まで広がらないようにしている。
【0097】
図16に示すように、その後、光電変換基板2、接着剤80、及び防湿カバー7の周囲の雰囲気を大気解放する。これにより、防湿カバー7は大気圧によってシンチレータ層5側に押し付けられる。言い換えると、大気圧によって力点に応力F1がかかる。この時、光電変換基板2から離れる方向に、防湿カバー7の端部(作用点)に、てこの力F2かかる。これにより、接着剤80に互いに分離された第1部分80aと第2部分80bとが形成され、隙間Aができる。
【0098】
図13に示すように、その後、接着剤80を本硬化する。接着剤80を本硬化する際、紫外線は、光電変換基板2の外側から接着剤80に照射した方が望ましい。上述したように、接着剤80を本硬化することにより、接着剤80に基づいた接合体8を形成することができる。第1部分8aは第1部分80aに基づいており、第2部分8bは第2部分80bに基づいている。そして、接合体8は、光電変換基板2と防湿カバー7とを接合することができる。なお、接合体8は、光電変換基板2と防湿カバー7との間に位置している。
【0099】
また、光電変換基板2、防湿カバー7、及び本硬化した接合体8により、第2非検出領域NDA2側に開口し、検出領域DA側に凹んだ隙間Aが保持される。これにより、X線検出パネルPNLの製造が終了する。
【0100】
上記のように構成された第2の実施形態に係るX線検出器1及びX線検出器1の製造方法によれば、本第2の実施形態は、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0101】
X線検出パネルPNLの製造方法において、防湿カバー7を低粘度の接着剤80に接着させた後、防湿カバー7等の周囲の雰囲気を大気解放している。これにより、接合体8の第1部分8a及び第2部分8bを形成したり、光電変換基板2と防湿カバー7との間に隙間Aを形成したり、することができる。
【0102】
また、てこの原理の支点Poとなる位置における第1距離D1は、第2距離D2未満である。第1位置P1において、接合体8を介した透湿経路を狭くすることができるため、製品信頼性が高く、製品寿命の長期化を図ることのできるX線検出器1を得ることができる。また、光電変換基板2と防湿カバー7との間の隙間Aが広がるため、より防湿カバー7を接合体8から剥がすことが容易になる。なお、第1位置P1と第2位置P2との間において、光電変換基板2と防湿カバー7との間の距離は第2距離D2を超えてもよく、D2>D1であれば上記効果を得ることができる。
上記のことから、防湿カバー7を容易に剥がすことのできるX線検出パネルPNL及びX線検出パネルPNLの製造方法を得ることができる。
【0103】
(評価結果)
次に、いくつかのX線検出パネルPNLについて評価する。ここで用意したX線検出パネルPNLのサンプルは、上記第1実施形態のX線検出パネルPNL及び上記第2実施形態のX線検出パネルPNLである。隙間Aについて評価すると、上記2種類のX線検出パネルPNLに、ピンセットの一片を差し込むだけの隙間Aが形成されていることを確認することができた。
【0104】
また、上記第1実施形態のX線検出パネルPNLに関しては、さらに、信頼性について評価する。上記第1実施形態のX線検出パネルPNLに関し、第1長さL1及び第2長さL2がそれぞれ1mmとなるサンプルを用意した(L1=L2=1mm)。信頼性試験は、2種類行い、それぞれ次の条件の下で行った。
【0105】
第1信頼性試験:高温高湿試験(温度が60℃であり、相対湿度が90%RHである環境下にX線検出パネルPNLを200時間置いた後にX線検出パネルPNLの品質を評価する試験。)
第2信頼性試験:冷熱サイクル試験(X線検出パネルPNLが置かれている環境の温度を、-20℃と+60℃との間で変化させ、サイクル数を30回としてX線検出パネルPNLの品質を評価する試験。一のサイクルの期間は、X線検出パネルPNLが-20℃の環境にさらされる第1期間と、第1期間に続きX線検出パネルPNLが+60℃の環境にさらされる第2期間と、を含んでいる。)
【0106】
上記2種類の信頼性試験を行った結果、X線検出パネルPNLの品質に問題が無いことを確認することができた、そのため、X線検出パネルPNLの製品信頼性が確保されていることを確認することができた。
なお、第1長さL1と第2長さL2との和を固定した場合、第1長さL1が小さくなり、第2長さL2が大きくなった方が、X線検出パネルPNLの製品信頼性は向上する。上述したように、L1=L2の関係を持つX線検出パネルPNLで製品信頼性は確保されている。そのため、L2>L1の関係を持つX線検出パネルPNLに関しては、十分な製品信頼性が確保されていると言うことができる。
【0107】
(第2の実施形態の変形例1)
次に、上記第2実施形態の変形例1に係るX線検出器1の構成について説明する。X線検出器1は、本変形例1で説明する構成以外、上記第2実施形態と同様に構成されている。
図17は、第2の実施形態の変形例1に係るX線検出パネルPNLの一部を示す拡大断面図である。
【0108】
図17に示すように、接合体8は、第2部分8bを有している。接合体8は、第1部分8a無しに構成されてもよい。本変形例1においても、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。防湿カバー7と隙間Aとの間に第1部分8a(接合体8)は存在していない。そのため、防湿カバー7を接合体8から容易に剥がすことができる。
【0109】
(第2の実施形態の変形例2)
次に、上記第2実施形態の変形例2に係るX線検出器1の構成について説明する。X線検出器1は、本変形例2で説明する構成以外、上記第2実施形態と同様に構成されている。
図18は、第2の実施形態の変形例2に係るX線検出パネルPNLの一部を示す拡大断面図である。
【0110】
図18に示すように、接合体8は、第1部分8aを有している。接合体8は、第2部分8b無しに構成されてもよい。本変形例2においても、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るX線検出器1について説明する。X線検出器1は、本実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
図19は、第3の実施形態に係るX線検出パネルPNLを示す断面図であり、FPC2e1を併せて示す図である。
図19に示すように、第3の実施形態においても、光電変換基板2、防湿カバー7、及び接合体8は、第1非検出領域NDA1に隙間Aを形成している。
【0112】
X線検出パネルPNLは、光反射層6をさらに備えている。光反射層6は、シンチレータ層5と対向して設けられている。光反射層6は、少なくとも検出領域DAに位置し、シンチレータ層5のうち防湿カバー7と対向する側の面(上面)5sを覆っている。
防湿カバー7は、シンチレータ層5及び光反射層6を覆っている。そのため、防湿カバー7は、シンチレータ層5及び光反射層6の両方を、水分から保護したり、物理的に保護したり、することができる。
【0113】
光反射層6は、シンチレータ層5が発する光を複数の光電変換部2b側に反射する(
図2及び
図3)。すなわち、光反射層6は、シンチレータ層5において生じた光のうち、光電変換部2bが設けられた側とは反対側に向かう光を反射させて、光電変換部2bに向かうようにする。光反射層6は、光(蛍光)の利用効率を高めて感度特性の向上を図るために設けられている。
【0114】
例えば、酸化チタン(TiO2)等からなる複数の光散乱性粒子(複数の光散乱性物質)と、樹脂系バインダと、溶媒とを混合した塗布材料をシンチレータ層5上に塗布し、続いて塗布材料を乾燥することで光反射層6を形成することができる。光反射層6は、複数の光散乱性粒子と、樹脂系バインダと、から成る。
【0115】
なお、光反射層6の構造及び光反射層6の製造方法は、上記の例に限定されるものではなく、種々変形可能である。
例えば、光反射層6は、金属層である。光反射層6は、シンチレータ層5の面5sに接し面5sに固定されている。又は、光反射層6は、防湿カバー7の下面7aに接し下面7aに固定されている。銀合金やアルミニウムなどの光反射率の高い金属からなる層を、面5s又は下面7aに成膜することで光反射層6を形成することができる。
又は、光反射層6は、ポリエステル樹脂に酸化チタン(TiO2)等からなる複数の光散乱性粒子(複数の光散乱性物質)が分散されたシートでもよい。
【0116】
シンチレータ層5の上にシート状の光反射層6を載置する場合、及び防湿カバー7の下面7aに光反射層6を形成した場合、光反射層6をシンチレータ層5に押し付ける形で配置することが望ましい。何故なら、シンチレータ層5と光反射層6との間に隙間があると、シンチレータ層5で生じた光が上記隙間で散乱し、X線検出器1から出力される画像の解像度の低下を招くためである。
【0117】
例えば、防湿カバー7は、光電変換基板2及び接合体8とともにシンチレータ層5及び光反射層6を密閉した空間を形成することができる。上記空間は、大気圧より減圧された空間である。光反射層6はシンチレータ層5の面5sを押圧した状態に保持されるため、光反射層6を面5sに接触させることができる。
上記のように構成された第3の実施形態に係るX線検出器1によれば、本第3の実施形態は、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0118】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るX線検出器1について説明する。X線検出器1は、本実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
図20は、第4の実施形態に係るX線検出パネルPNLの一部を示す拡大断面図である。
図20に示すように、第4の実施形態においても、光電変換基板2、防湿カバー7、及び接合体8は、第1非検出領域NDA1に隙間Aを形成している。
【0119】
防湿カバー7は、積層体で形成されている。防湿カバー7は、金属層31及び樹脂層32を有している。金属層31は樹脂層32に積層されている。金属層31は、検出領域DA及び第1非検出領域NDA1に位置している。金属層31は、大気中に含まれる水分により、シンチレータ層5の特性が劣化するのを抑制するために設けられている。金属層31は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されている。なお、金属層31は、銅を含む金属、マグネシウムを含む金属、タングステンを含む金属、ステンレス、コバール等で形成されてもよい。金属層31を含む防湿カバー7は、防湿機能を有し、水分の透過を、防止したり、大幅に抑制したりすることができる。
【0120】
また、金属層31は、光反射層として機能してもよい。金属層31の光反射機能は、光(蛍光)の利用効率を高めて感度特性の向上を図ることができる。すなわち、金属層31は、シンチレータ層5において生じた光のうち、光電変換部2bが設けられた側とは反対側に向かう光を反射させて、光電変換部2bに向かうようにする。
【0121】
樹脂層32は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、テフロン(登録商標)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、弾性ゴム等の材料で形成することができる。金属層31は、スパッタリング法、ラミネート法等を用いて形成することができる。
【0122】
金属層31は、シンチレータ層5と樹脂層32との間に位置している。樹脂層32により金属層31を覆うことができるので、外力などにより金属層31が受け得る損傷を抑制することができる。また、金属層31が樹脂層32よりもシンチレータ層5側に設けられていれば、樹脂層32を介した透湿によるシンチレータ層5の特性の劣化を抑制することができる。
【0123】
本実施形態において、金属層31だけではなく樹脂層32も、検出領域DA及び第1非検出領域NDA1に位置している。平面視において、樹脂層32は、金属層31と同一の形状及び同一の面積を有し、金属層31に完全に重なっている。樹脂層32の輪郭は、平面視にて、金属層31の輪郭と一致している。
【0124】
上記のように構成された第4の実施形態に係るX線検出器1によれば、本第4の実施形態は、上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0125】
なお、防湿カバー7において、金属層31と樹脂層32との位置関係は逆であってもよい。この場合、第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、防湿カバー7は、金属層31及び樹脂層32だけではなく第3の層をさらに備えてもよい。第3の層としては、他の金属層、他の樹脂層が挙げられる。この場合も、第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。必要に応じて、複数の実施形態及び複数の変形例の2以上を組合せることも可能である。
【0127】
例えば、接合体8は、熱可塑性樹脂を含む材料で形成されてもよい。接合体8は、熱可塑性樹脂を主成分として含む材料で形成されている。接合体8は、100%熱可塑性樹脂で形成されてもよい。又は、接合体8は、熱可塑性樹脂に添加物が混在した材料で形成されてもよい。接合体8が熱可塑性樹脂を主成分として含んでいれば、接合体8は、加熱により、光電変換基板2と防湿カバー7とを接合することができる。
【0128】
熱可塑性樹脂は、ナイロン、PET(Polyethyleneterephthalate)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、アクリル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等を利用することができる。
【0129】
上述した技術は、上記X線検出器1及び上記X線検出器1の製造方法への適用に限定されるものではない。上記技術は、他のX線検出器等の各種の放射線検出器、及び他のX線検の製造方法に適用することができる。放射線検出器は、X線検出パネルPNLの替わりに、放射線を検出する放射線検出パネルを備えていればよい。
【符号の説明】
【0130】
1…X線検出器、PNL…X線検出パネル、2…光電変換基板、2a…基板、
2b…光電変換部、2b1…光電変換素子、2b2…TFT、2d1,2d2…パッド、
5…シンチレータ層、6…光反射層、7…防湿カバー、7a…下面、7b…上面、
7c…側面、31…金属層、32…樹脂層、8…接合体、8a…第1部分、
8b…第2部分、8b1…突出部、80…接着剤、80a…第1部分、
80b…第2部分、DA…検出領域、NDA1…第1非検出領域、
NDA1a…接合領域、NDA1b…非接合領域、NDA1c…塗布領域、
NDA2…第2非検出領域、P1,P2,P3,P4,P5…位置、A…隙間、
L1,L2,L3…長さ、D1,D2…距離、X…行方向、Y…列方向。