(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082796
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】イメージ管及びイメージ管の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 31/50 20060101AFI20230608BHJP
H01J 29/84 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
H01J31/50 A
H01J29/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196734
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 渉
(57)【要約】
【課題】 画像の質の劣化を抑制できるイメージ管及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 イメージ管1は、外囲器2と、入力部3と、第1集束電極(40)と、陽極5と、出力部6と、第1異物吸着部(9a)と、を備える。外囲器2は、筒部23と、入力窓21と、出力窓(22)とを有し、内部が減圧されている。上記第1異物吸着部は、外囲器2の内部に設けられ、異物を吸着する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸方向に延出し筒状に形成された筒部と、前記管軸方向における前記筒部の一端部に設けられている入力窓と、前記管軸方向における前記筒部の他端部に設けられている出力窓とを有し、内部が減圧されている外囲器と、
前記外囲器の内部に設けられ、陰極として機能し、前記入力窓を透過した放射線を電子線に変換する入力部と、
前記外囲器の内部に設けられ、前記電子線を集束させる第1集束電極と、
前記外囲器の内部に設けられ、前記電子線を加速させる陽極と、
集束及び加速された前記電子線を可視光に変換し、前記可視光を前記出力窓側に出射する出力部と、
前記外囲器の内部に設けられ、異物を吸着する第1異物吸着部と、を備える、
イメージ管。
【請求項2】
前記第1異物吸着部は、前記管軸方向に直交する直交方向において前記第1集束電極の外側に位置している、
請求項1に記載のイメージ管。
【請求項3】
前記第1異物吸着部は、前記直交方向において前記第1集束電極と対向している、
請求項2に記載のイメージ管。
【請求項4】
前記第1異物吸着部は、前記管軸方向に直交する直交方向において前記陽極の外側に位置し、前記陽極と対向している、
請求項1に記載のイメージ管。
【請求項5】
前記第1異物吸着部は、前記第1集束電極及び前記陽極から電気的に独立した異物吸着電極である、
請求項1~4の何れか1項に記載のイメージ管。
【請求項6】
前記異物吸着電極に印加される電圧の絶対値は、20kV以上である、
請求項5に記載のイメージ管。
【請求項7】
前記異物吸着電極に電気的に接続され絶対値が20kV以上である前記電圧を前記異物吸着電極に印加可能な電源をさらに備える、
請求項6に記載のイメージ管。
【請求項8】
前記外囲器の内部に設けられ、前記管軸方向において前記第1集束電極と前記陽極との間に位置し、前記電子線を集束させる第2集束電極と、
前記外囲器の内部に設けられ、異物を吸着する第2異物吸着部と、をさらに備え、
前記第1異物吸着部は、前記管軸方向に直交する直交方向において前記第1集束電極の外側に位置し、
前記第2異物吸着部は、前記直交方向において前記陽極の外側に位置し、前記陽極と対向している、
請求項1に記載のイメージ管。
【請求項9】
管軸方向に延出し筒状に形成された筒部と、前記管軸方向における前記筒部の一端部に設けられている入力窓と、前記管軸方向における前記筒部の他端部に設けられている出力窓とを有する外囲器と、
前記外囲器の内部に設けられ、陰極として機能し、前記入力窓を透過した放射線を電子線に変換する入力部と、
前記外囲器の内部に設けられ、前記電子線を集束させる集束電極と、
前記外囲器の内部に設けられ、前記電子線を加速させる陽極と、
集束及び加速された前記電子線を可視光に変換し、前記可視光を前記出力窓側に出射する出力部と、を備えるイメージ管の製造方法において、
前記入力部、前記集束電極、前記陽極、前記出力部、及び異物吸着部を前記外囲器の内部に設け、
前記外囲器の内部を気密に閉塞し、
前記外囲器の内部を気密に閉塞した後、前記異物吸着部を稼働させ、前記異物吸着部により前記外囲器の内部の異物を吸着する、
イメージ管の製造方法。
【請求項10】
前記外囲器の内部を減圧した後、前記外囲器の内部を気密に閉塞し、
前記外囲器の内部を気密に閉塞した後、前記異物吸着部を稼働させる、
請求項9に記載のイメージ管の製造方法。
【請求項11】
前記異物吸着部は、前記集束電極及び前記陽極から電気的に独立した異物吸着電極であり、
前記異物吸着部を稼働させる際、前記異物吸着電極に絶対値が20kV以上である電圧を印加する、
請求項9に記載のイメージ管の製造方法。
【請求項12】
前記異物吸着部を稼働させる際、
第1期間に前記異物吸着電極に印加する前記電圧の値は正であり、
前記第1期間から独立した第2期間に前記異物吸着電極に印加する前記電圧の値は負である、
請求項11に記載のイメージ管の製造方法。
【請求項13】
前記異物吸着部を前記外囲器の内部に設ける際、前記異物吸着部を前記管軸方向に直交する直交方向において前記集束電極の外側に設ける、
請求項9に記載のイメージ管の製造方法。
【請求項14】
前記異物吸着部を前記外囲器の内部に設ける際、前記異物吸着部を前記管軸方向に直交する直交方向において前記陽極の外側に設け、かつ前記異物吸着部を前記陽極と対向させる、
請求項9に記載のイメージ管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、イメージ管及びイメージ管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線、γ線、中性子線などの放射線による画像情報を光学像に変換するイメージ管がある。
イメージ管は、いわゆるイメージインテンシファイア(Image Intensifier)として、医療用診断装置や工業用非破壊検査装置などに広く用いられている。
【0003】
イメージ管は、外囲器、入力部、電極、陽極、絶縁部及び出力部などを備えている。
【0004】
例えば、このようなX線イメージ管においては、入力部にてX線を暗い可視光に変換する。続いてこの暗い可視光を電子に変換する。電極及び陽極に電圧を与えて発生する電界を利用し、電子を加速して出力部に集束する。出力部では加速集束した電子を明るい可視光に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021―9771号公報
【特許文献2】特開平11-120946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態は、画像の質の劣化を抑制できるイメージ管及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るイメージ管は、
管軸方向に延出し筒状に形成された筒部と、前記管軸方向における前記筒部の一端部に設けられている入力窓と、前記管軸方向における前記筒部の他端部に設けられている出力窓とを有し、内部が減圧されている外囲器と、
前記外囲器の内部に設けられ、陰極として機能し、前記入力窓を透過した放射線を電子線に変換する入力部と、
前記外囲器の内部に設けられ、前記電子線を集束させる第1集束電極と、
前記外囲器の内部に設けられ、前記電子線を加速させる陽極と、
集束及び加速された前記電子線を可視光に変換し、前記可視光を前記出力窓側に出射する出力部と、
前記外囲器の内部に設けられ、異物を吸着する第1異物吸着部と、を備える。
【0008】
また、一実施形態に係るイメージ管の製造方法は、
管軸方向に延出し筒状に形成された筒部と、前記管軸方向における前記筒部の一端部に設けられている入力窓と、前記管軸方向における前記筒部の他端部に設けられている出力窓とを有する外囲器と、
前記外囲器の内部に設けられ、陰極として機能し、前記入力窓を透過した放射線を電子線に変換する入力部と、
前記外囲器の内部に設けられ、前記電子線を集束させる集束電極と、
前記外囲器の内部に設けられ、前記電子線を加速させる陽極と、
集束及び加速された前記電子線を可視光に変換し、前記可視光を前記出力窓側に出射する出力部と、を備えるイメージ管の製造方法において、
前記入力部、前記集束電極、前記陽極、前記出力部、及び異物吸着部を前記外囲器の内部に設け、
前記外囲器の内部を気密に閉塞し、
前記外囲器の内部を気密に閉塞した後、前記異物吸着部を稼働させ、前記異物吸着部により前記外囲器の内部の異物を吸着する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るイメージ管を示す断面図であり、X線発生装置を併せて示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のイメージ管のうちA領域を示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、上記実施形態に係るイメージ管を示す断面図であり、第2電源を併せて示す図であり、上記イメージ管の製造方法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、上記実施形態の変形例1に係るイメージ管を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4のイメージ管のうちB領域を示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、上記実施形態の変形例2に係るイメージ管を示す断面図である。
【
図7】
図7は、上記実施形態の変形例3に係るイメージ管を示す断面図である。
【
図8】
図8は、上記実施形態の変形例4に係るイメージ管を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
また、以下においては、一例として、放射線の中の代表的なものとしてX線に係る場合を例にとり説明する。
したがって、以下の実施形態の「X線」を「他の放射線」に置き換えることにより、他の放射線にも適用させることができる。
【0012】
始めに、本発明の実施形態の基本構想について説明する。
イメージ管の外囲器の内部に1mm以下の異物の混入を完全に防ぐことは困難である。ここで言う異物とは、外囲器の内部に取り付ける部品のバリ、外囲器の内部に部品を溶接することにより発生する金属の飛沫、組立作業時に混入する有形物である。
【0013】
一方で、外囲器内に異物が混入しても必ず不具合が発生するわけではない。X線を電子に変換する入力部(光電面の表面)や、可視光を出力する出力部(メタルバック膜の表面)に、異物が付着すると、出力画像に異物が影として映り、画像の質の劣化につながる。しかし、外囲器内の大多数を占める電極に、異物が付着しても、大抵の場合問題は発生しない。ただし、高い電圧を印加する電極(例えば陽極)が周辺にある場合は、放電の原因となる場合もある。
【0014】
上述したことから、入力部や出力部に異物が付着することを防止するため、イメージ管は、外囲器の内部に混入した異物を吸着する手段を備えている方が望ましい。また、イメージ管の内部には複数の電極を配置し、電子レンズを形成している。そのため、電子レンズに悪影響を及ぼさないように、異物を吸着する手段が外囲器の内部に設けられている方がより望ましい。
【0015】
本発明の実施の形態においては、上述した問題を改善するものであり、画像の質の劣化を抑制できるイメージ管及びその製造方法を得ることができるものである。次に、上記問題を改善するための手段及び手法について説明する。
【0016】
(一実施形態)
一実施形態に係るイメージ管1及びその製造方法について説明する。
図1は、一実施形態に係るイメージ管1を示す断面図であり、X線発生装置10を併せて示す図である。始めに、イメージ管1の構成について説明する。
図1に示すように、イメージ管1は、外囲器2、入力部3、電極群4、陽極5、出力部6、及び第1電源101を備えている。
なお、
図1中のLはX線を、Mは電子線を、Nは可視光像を、Oは被写体を、それぞれ表している。
【0017】
外囲器2は、筒部23と、入力窓21と、出力窓としてのフェースプレート22と、絶縁部7と、接続板8と、を有している。
筒部23は、イメージ管1の管軸1aに沿った方向である管軸方向d1に延出し、筒状に形成されている。入力窓21は、管軸方向d1における筒部23の一端部に設けられ、筒部23の一端部を気密に閉塞している。フェースプレート22、絶縁部7、及び接続板8は、管軸方向d1における筒部23の他端部に設けられ、筒部23の他端部を気密に閉塞している。
外囲器2は、内部の雰囲気を大気圧よりも減圧された状態に維持する。この場合、外囲器2の内部は、高真空(例えば、10-4Pa程度以下)とされる。
【0018】
筒部23は、複数の部分として第1部分2a及び第2部分2bを有している。なお、本実施形態では、筒部23は、2個の部分を有するが、3個以上の部分を有してもよい。
第1部分2a及び第2部分2bは、管軸方向d1に並べて設けられている。第1部分2a及び第2部分2bの材料は、例えば、金属である。
【0019】
第1部分2aは、筒状を呈している。第1部分2aの第2部分2b側の端部のサイズは、第1部分2aの第2部分2b側とは反対側の端部のサイズより小さい。第1部分2aは、例えば、漏斗状を呈している。
第1部分2aの第2部分2b側とは反対側の端部には、入力窓21の周縁部が気密に取り付けられている。
第1部分2aの第2部分2b側の端部には、フランジ部2a1が設けられている。
フランジ部2a1は、管軸方向d1に直交する直交方向d2において、第1部分2aの外方に向けて突出している。平面視におけるフランジ部2a1の形状は、円環状である。なお、本願明細書において平面視とは、イメージ管1を管軸方向d1にみることを言う。
【0020】
第2部分2bは、筒状を呈している。第2部分2bは、例えば、円筒状を呈している。第2部分2bの第1部分2a側の端部には、フランジ部2b1が設けられている。第2部分2bの第1部分2a側とは反対側の端部は、ガラスからなる絶縁部7に融着されている。
【0021】
フランジ部2b1は、管軸1aに直交する方向において、第2部分2bの外方に向けて突出している。平面視におけるフランジ部2b1の形状は、円環状とすることができる。フランジ部2b1の大きさは、フランジ部2a1の大きさと同じとすることができる。
第2部分2bのフランジ部2b1は、第1部分2aのフランジ部2a1と対峙している。第1部分2aと第2部分2bは、互いに溶接されている。
この場合、フランジ部2a1の外周端面と、フランジ部2b1の外周端面と、支持部43の外周端面とが溶接されている。
【0022】
入力部3は、外囲器2の内部に設けられ、入力窓21と対峙させて設けられている。
入力部3は、入力窓21側に設けられた入射基板と、入射基板の入力窓21側とは反対側に設けられた入射側蛍光膜と、入射側蛍光膜の入射基板側とは反対側に設けられた光電変換膜とを有している。
【0023】
入射基板の入力窓21側の面は、入射面となっている。入射基板には、放射線であるX線Lが入射する。また、入射基板は、陰極として機能する。入射基板は、例えば、アルミニウム等で形成されている。入射基板の厚み寸法は、例えば、1mm程度である。
【0024】
入射側蛍光膜は、入力窓21及び入射基板を介して入射したX線Lを蛍光(可視光)に変換する。入射側蛍光膜は、例えば、ヨウ化セシウム(CsI)を含んでいる。光電変換膜には、入射側蛍光膜により変換された蛍光が入射する。光電変換膜は、入射した蛍光を電子線Mに変換する。上記のことから、入力部3は、入力窓21を透過したX線を電子線Mに変換するように構成されている。
【0025】
電極群4は、外囲器2の内部に設けられ、入力部3と陽極5との間に設けられている。電極群4は、管軸方向d1に並べて設けられた集束電極40、集束電極41、及び集束電極42を有している。本実施形態において、集束電極40は第1集束電極として機能し、集束電極41は第2集束電極として機能している。
集束電極40、集束電極41、及び集束電極42は、入力部3から放射された電子線Mを集束させる。
集束電極41は、管軸方向d1において集束電極40と陽極5との間に位置している。集束電極41は、入力部3から放射された電子線Mの焦点位置を制御する。集束電極41は、例えば、フォーカス調整用の集束電極である。
【0026】
集束電極42は、管軸方向d1において集束電極41と陽極5との間に位置している。集束電極42は、電極群4のうち最も出力部6側に位置している。
図1に例示をしたイメージ管1の場合には、1つの集束電極40と、1つの集束電極41と、1つの集束電極42とが設けられているが、電極群4の備える集束電極の数は適宜変更することができる。
【0027】
集束電極42は、入力部3から放射された電子線Mの出力部6における照射領域を制御する。集束電極42は、絶縁部材44及び支持部43を介して筒部23(外囲器2)に固定されている。集束電極42は、例えば、視野可変用の集束電極とすることができる。
集束電極40及び集束電極41は、集束電極42と同様にして筒部23に取り付けることができる。例えば、筒部23をさらに分割するなどし、集束電極40及び集束電極41を筒部23に取り付けることができる。
【0028】
陽極5は、外囲器2の内部に設けられ、集束電極42と出力部6との間に設けられている。陽極5は、集束電極41、42により集束させた電子線Mを加速させる。
出力部6は、外囲器2の内部のうち、入力部3が設けられる側とは反対側に設けられている。出力部6は、フェースプレート22のうち、入力窓21側の面に形成されている。
【0029】
ここで、フェースプレート22は、板状を呈し、ガラスなどの光透過性を有する材料で形成されている。
接続板8の平面視における形状は環状を呈している。接続板8の内周縁側は、ガラスからなるフェースプレート22に融着されている。接続板8の外周縁側は、ガラスからなる絶縁部7に融着されている。また、接続板8には、陽極5を電気的に接続することができる。
【0030】
出力部6は、集束電極40,41,42により集束され陽極5により加速させた電子線Mを蛍光(可視光)に変換し、可視光像Nとしてフェースプレート22側に出射する。出力部6は、出射側蛍光膜6c及びメタルバック膜6dを有している。
【0031】
出射側蛍光膜6cは、フェースプレート22のうち入力窓21側の面に設けられている。出射側蛍光膜6cは、メタルバック膜6dを介して入射した電子線Mを蛍光(可視光)に変換し、可視光像Nとして出射する。出射側蛍光膜6cは、例えば、アルミニウム、銅を賦活物質とするZnS:Al、Cuからなる緑色蛍光体などを含んでいる。
【0032】
メタルバック膜6dは、出射側蛍光膜6cを覆っている。メタルバック膜6dは、出射側蛍光膜6cに残る余剰な電子を接続板8を介して放出する。すなわち、メタルバック膜6dは、出射側蛍光膜6cにおける帯電を防止する。メタルバック膜6dは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金などから形成されている。メタルバック膜6dの厚みは、例えば、200nm~350nm程度である。
【0033】
絶縁部7は、筒部23と出力部6との間を絶縁する。すなわち、絶縁部7は、集束電極42と陽極5との間を絶縁している。絶縁部7は、電気絶縁性を有し、例えば、ガラスなどで形成されている。絶縁部7のうち筒部23側の端部のサイズは、絶縁部7のうち出力部6側の端部のサイズよりも大きい。絶縁部7は、例えば、段付きの筒状体とすることができる。
【0034】
イメージ管1の第1電源101は、外囲器2の外側に位置している。第1電源101は、例えば、外囲器2から離隔した位置に設けることができる。この場合、第1電源101は、配線などを介して、電極群4、陽極5、メタルバック膜6d、及び陰極である入力部3の入射基板と電気的に接続される。
【0035】
第1電源101は、電極群4、陽極5、及びメタルバック膜6dに電圧を印加する。集束電極41及び集束電極42には数百V~数千V程度の電圧が印加される。
また、陽極5に印加される電圧は、陽極電圧となる。
この場合、陽極5には、25kV~30kV程度の電圧が印加される。
メタルバック膜6dには、25kV~30kV程度の電圧が印加される。
入力部3の入射基板は、アースであるグランドに接続されている。
【0036】
例えば、イメージ管1の使用時において、集束電極40に0.2kV、集束電極41に1kV、集束電極42に3~10kV、陽極5及びメタルバック膜に30kVの電圧を印加する場合がある。その場合、集束電極42に印加する電圧を変化させることにより、視野を調整することができる。
【0037】
X線発生装置10は、X線Lを発生させ、発生させたX線Lをイメージ管1の入力窓21に向けて放射する。
X線発生装置10は、例えば、X線Lを発生させる回転陽極X線管と、回転陽極X線管に高電圧を印加する電源を備えている。
回転陽極X線管において、回転陽極X線管の陰極と陽極ターゲットとの間に印加された高電圧により加速させた電子が陽極ターゲットに衝突し、陽極ターゲットは焦点からX線Lを放出する。
【0038】
イメージ管1は、第1異物吸着部としての異物吸着部9aをさらに備えている。異物吸着部9aは、外囲器2の内部に設けられている。異物吸着部9aは、外囲器2の内部に存在し得る異物を吸着することができる。上記異物とは、例えば、直径が1mmの球体に収まる大きさを持つ有形物である。入力部3及び出力部6への異物の付着を抑制又は防止することができるため、画像の質の劣化を抑制又は回避することができる。
【0039】
異物吸着部9aは、直交方向d2において集束電極40の外側に位置している。異物吸着部9aは、連続的に延出した筒状の形状を有している。本実施形態において、異物吸着部9aは、直交方向d2において集束電極40のうち入力窓21側の端部より外側に位置している。電極群4が形成する電子レンズに悪影響を及ぼさないように、異物吸着部9aは位置している。そのため、イメージ管1の本来の機能に悪影響を及ぼさないように異物吸着部9aを設けることができる。
【0040】
なお、異物吸着部9aは、複数に分割されてもよい。又は、異物吸着部9aは、集束電極40と外囲器2との間に位置し、直交方向d2に集束電極40と対向してもよい。又は、異物吸着部9aは、集束電極41と外囲器2との間に位置し、直交方向d2に集束電極41と対向してもよい。又は、異物吸着部9aは、集束電極42と外囲器2との間に位置し、直交方向d2に集束電極42と対向してもよい。
【0041】
図2は、
図1のイメージ管1のうちA領域を示す拡大断面図である。
図2に示すように、異物吸着部9aは、絶縁部材INを介して外囲器2の筒部23(第1部分2a)に間接に固定されている。絶縁部材INは、電気絶縁性のセラミックス、ガラスなどの電気絶縁材料で形成されている。異物吸着部9aは、絶縁部材INにより筒部23と電気的に絶縁されている。また、異物吸着部9aは、集束電極40から電気的な絶縁距離を置いて位置している。本実施形態において、異物吸着部9aは、集束電極40,41,42及び陽極5から電気的に独立した異物吸着電極で構成されている。異物吸着部9aは、外囲器2、入力部3、及び出力部6に対しても電気的に独立している。
【0042】
異物吸着部9aは、溶接しやすい材料として、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属で形成されている。外囲器2の内部に異物が存在している場合、異物吸着部9aに高電圧を印加することで、異物を異物吸着部9aに溶接することができる。なお、異物吸着部9aへの高電圧の印加は、例えば、後述する第2電源102を使用して行うことができる。
本実施形態のイメージ管1は上記のように構成されている。
【0043】
次に、イメージ管1の製造方法について説明する。
図3は、本実施形態に係るイメージ管1を示す断面図であり、第2電源102を併せて示す図であり、イメージ管1の製造方法を説明するための図である。
図3に示すように、イメージ管1の製造が開始されると、まず、外囲器2、入力部3、集束電極40,41,42、陽極5、出力部6、及び異物吸着部9aを用意する。次いで、入力部3、集束電極40,41,42、陽極5、出力部6、及び異物吸着部9aを外囲器2の内部に設ける。なお、異物吸着部9aを外囲器2の内部に設ける際、異物吸着部9aを直交方向d2において集束電極40の外側に設ける。
【0044】
続いて、外囲器2の内部を減圧し、その後、外囲器2の内部の減圧状態を維持しながら外囲器2の内部を気密に閉塞する。なお、上記減圧により、外囲器2の内部から一以上の異物が除去される場合もある。但し、外囲器2の内部を減圧しても、外囲器2の内部に異物は存在し得るものである。次いで、第2電源102を用意し、異物吸着部9aに第2電源102を電気的に接続する。例えば、異物吸着部9aと第2電源102とは、外囲器2に気密に取付けられたコネクタ等を介して有線接続されている。
【0045】
その後、異物吸着部9aを稼働させ、異物吸着部9aにより外囲器2の内部の異物を吸着する。本実施形態において、異物吸着部9aは異物吸着電極である。異物吸着部9aを稼働させる際、第2電源102は、異物吸着部(異物吸着電極)9aに絶対値が20kV以上である電圧Vaを印加する(|Va|≧20kV)。これにより、外囲器2の内部の異物を異物吸着部9aに溶接することができる。なお、第2電源102が異物吸着部9aに印加する電圧Vaの絶対値は、30kV以上である方が望ましい(|Va|≧30kV)。これにより、異物を異物吸着部9aに溶接し易くすることができる。
【0046】
続いて、異物吸着部9aと第2電源102との電気的な接続状態を解除する。次いで、第1電源101を用意し、第1電源101を、電極群4、陽極5、メタルバック膜6d、及び入力部3の入射基板と電気的に接続する。
上述した製造工程などを経ることでイメージ管1の製造は終了する。
【0047】
ここで、外囲器2の内部に存在し得る異物は、それぞれ正又は負に帯電している。そのため、異物吸着部9aを稼働させる際、第1期間に異物吸着部(異物吸着電極)9aに正の電圧Vaを印加し(Va≧20kV)、第1期間から独立した第2期間に異物吸着部(異物吸着電極)9aに負の電圧Vaを印加する(Va≦-20kV)。異物吸着部9aを稼働させる際、上記第1期間及び上記第2期間をそれぞれ2回以上設定してもよい。例えば、上記第1期間及び上記第2期間を交互に設定してもよい。異物吸着部9aに正の電圧Vaを印加する第1期間に負に帯電した異物を異物吸着部9aに溶接することができ、異物吸着部9aに負の電圧Vaを印加する第2期間に正に帯電した異物を異物吸着部9aに溶接することができる。異物吸着部9aは、正に帯電した異物と、負に帯電した異物と、の両方を吸着することができる。
【0048】
なお、イメージ管1の製造工程において、異物吸着部9aと第2電源102との電気的な接続状態を解除しなくともよい。言い換えると、イメージ管1は、第1電源101だけではなく第2電源102を備えてもよい。その場合、イメージ管1の製造時だけではなく、イメージ管1を実際に使用する直前の期間、及びイメージ管1を実際に使用した直後の期間などに、第2電源102を用いて異物吸着部9aを稼働させることができる。又は、定期的に、第2電源102を用いて異物吸着部9aを稼働させることも可能となる。
【0049】
但し、イメージ管1を実際に使用している期間(第1電源101が、電極群4、陽極5、メタルバック膜6d、及び入力部3の入射基板に電圧を印加している期間)に、第2電源102を用いて異物吸着部9aを稼働させることは望ましくない。なぜなら、異物吸着部9aに高電圧が印加されると、電子線Mの軌道が歪むことになるためである。
【0050】
上述したように構成された一実施形態に係るイメージ管1及びその製造方法によれば、イメージ管1は、外囲器2と、入力部3と、電極群4と、陽極5と、出力部6と、異物吸着部9aと、を備えている。異物吸着部9aは、外囲器2の内部に設けられ、異物を吸着するように構成されている。
異物吸着部9aにより、入力部3及び出力部6への異物の付着を抑制又は防止することができる。イメージ管1で検出したX線像に異物を映り難くすることができ、又は上記X線像に異物が映る事態を回避することができる。そのため、検出した画像の質の劣化を抑制又は回避することができるイメージ管1及びその製造方法を得ることができる。
【0051】
外囲器2の内部において、異物吸着部9aは電気的に独立している。異物吸着部9aに電圧Vaを印加しても、外囲器2及び異物吸着部9a以外の電極が異物吸着部として機能することはない。そのため、外囲器2及び異物吸着部9a以外の電極への異物の付着を抑制することができる。
また、集束電極40,41,42、陽極5、及び出力部6にそれぞれ印加される電圧は、異物吸着部9aに印加されない。イメージ管1を実際に使用する際に、異物吸着部9aが悪影響を及ぼすことが無いように、異物吸着部9aを電気的に制御することができる。
【0052】
(変形例1)
次に、上記実施形態の変形例1について説明する。
図4は、本変形例1に係るイメージ管1を示す断面図である。
図5は、
図4のイメージ管1のうちB領域を示す拡大断面図である。本変形例1のイメージ管1は、本変形例1で説明する構成以外、上記実施形態と同様に構成されている。また、本変形例1のイメージ管1の製造方法は、本変形例1で説明する製造工程以外、上記実施形態のイメージ管1の製造方法を適用可能である。
【0053】
図4及び
図5に示すように、イメージ管1は、異物吸着部9aの替わりに第1異物吸着部としての異物吸着部9bを備えてもよい。異物吸着部9bは、外囲器2の内部に設けられている。異物吸着部9bは、外囲器2の内部に存在し得る異物を吸着することができる。
【0054】
異物吸着部9bは、直交方向d2において、陽極5の外側に位置し、陽極5と対向している。異物吸着部9bは、絶縁部7の内周面に固定されている。異物吸着部9bは、連続的に延出した筒状の形状を有している。電極群4及び陽極5の機能に悪影響を及ぼさないように、異物吸着部9bは位置している。そのため、イメージ管1の本来の機能に悪影響を及ぼさないように異物吸着部9bを設けることができる。
なお、異物吸着部9bは、複数に分割されてもよい。又は、異物吸着部9bは、絶縁部7のうち直交方向d2を向く面ではなく、絶縁部7のうち管軸方向d1を向く面に固定されてもよい。
【0055】
また、本変形例1のイメージ管1の製造方法において、異物吸着部9aの替わりに異物吸着部9bを外囲器2の内部に設ける際、異物吸着部9bを直交方向d2において陽極5の外側に設け、かつ異物吸着部9bを陽極5と対向させればよい。
本変形例1においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
(変形例2)
次に、上記実施形態の変形例2について説明する。
図6は、本変形例2に係るイメージ管1を示す断面図である。本変形例2のイメージ管1は、本変形例2で説明する構成以外、上記実施形態と同様に構成されている。また、本変形例2のイメージ管1の製造方法は、本変形例2で説明する製造工程以外、上記実施形態のイメージ管1の製造方法を適用可能である。
【0057】
図6に示すように、イメージ管1は、第1異物吸着部としての異物吸着部9aと、第2異物吸着部としての異物吸着部9bと、の両方を備えてもよい。本変形例2の異物吸着部9aは
図1に示した異物吸着部9aに相当し、本変形例2の異物吸着部9bは
図4に示した異物吸着部9bに相当している。
また、本変形例2のイメージ管1の製造方法において、異物吸着部を外囲器2の内部に設ける際、異物吸着部9a及び異物吸着部9bの両方を外囲器2の内部に設ければよい。
異物吸着部9aに第2電源102を電気的に接続する際、異物吸着部9a及び異物吸着部9bの両方に第2電源102を電気的に接続すればよい。又は、異物吸着部9aに第2電源102を電気的に接続し、異物吸着部9bに第3の電源を電気的に接続してもよい。
【0058】
本変形例2においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。イメージ管1は、互いに離れて位置した複数の異物吸着部9a,9bを備えているため、複数の異物吸着部9a,9bにより、外囲器2の内部に存在し得る異物を、一層、吸着することができる。
【0059】
(変形例3)
次に、上記実施形態の変形例3について説明する。
図7は、本変形例3に係るイメージ管1を示す断面図である。本変形例3のイメージ管1は、本変形例3で説明する構成以外、上記実施形態と同様に構成されている。また、本変形例3のイメージ管1の製造方法は、本変形例3で説明する製造工程以外、上記実施形態のイメージ管1の製造方法を適用可能である。
【0060】
図7に示すように、イメージ管1は、電源装置100を備えてもよい。第1電源101及び第2電源102は、共に電源装置100に設けられている。
本変形例3のイメージ管1の製造方法において、異物吸着部9aと第2電源102とを電気的に接続した後、異物吸着部9aと第2電源102との電気的な接続状態を解除していない。言い換えると、イメージ管1は、電源装置100を備えた状態に維持されている。これにより、イメージ管1を製造する期間、イメージ管1を実際に使用する期間、及びイメージ管1を実際に使用していない期間において電源装置100を使用することができる。
本変形例3においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(変形例4)
次に、上記実施形態の変形例4について説明する。
図8は、上本変形例4に係るイメージ管1を示す断面図である。本変形例4のイメージ管1は、本変形例4で説明する構成以外、上記実施形態と同様に構成されている。また、本変形例4のイメージ管1の製造方法は、上記実施形態のイメージ管1の製造方法を類推適用可能である。
【0062】
図8に示すように、イメージ管1は、異物吸着部9aの替わりに異物吸着部9c,9d,9eを備えてもよい。異物吸着部9c,9d,9eは、外囲器2の内部に設けられている。異物吸着部9c,9d,9eは、外囲器2の内部に存在し得る異物を吸着することができる。
【0063】
異物吸着部9cは、直交方向d2において、集束電極40の外側に位置し、集束電極40と対向している。異物吸着部9dは、直交方向d2において、集束電極41の外側に位置し、集束電極41と対向している。異物吸着部9eは、直交方向d2において、集束電極42の外側に位置し、集束電極42と対向している。異物吸着部9c,9d,9eは、それぞれ連続的に延出した筒状の形状を有している。なお、異物吸着部9c,9d,9eは、それぞれ複数に分割されてもよい。電極群4が形成する電子レンズに悪影響を及ぼさないように、異物吸着部9c,9d,9eは位置している。本変形例4において、異物吸着部9c,9d,9eは、上記異物吸着部9aと同様、それぞれ異物吸着電極である。
【0064】
本変形例4においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。イメージ管1は、異物吸着部9c,9d,9eのうち少なくとも1つを備えてもよく、この場合も、上記効果を得ることができる。
なお、イメージ管1は、上述した異物吸着部9a,9b,9c,9d,9eのうち少なくとも1つを備えていればよい。
【0065】
本発明の一実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記の実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0066】
例えば、上述した実施形態及び変形例は、上述したイメージ管1及びその製造方法に限らず、各種のイメージ管及びその製造方法に適用可能である。
また、上述した実施形態及び変形例は、X線管等、イメージ管1以外の真空管及びその製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…イメージ管、1a…管軸、2…外囲器、3…入力部、4…電極群、5…陽極、
6…出力部、6c…出射側蛍光膜、6d…メタルバック膜、7…絶縁部、21…入力窓、
22…フェースプレート(出力窓)、23…筒部、40,41,42…集束電極、
9a,9b…異物吸着部、IN…絶縁部材、100…電源装置、101…第1電源、
102…第2電源、L…X線、M…電子線、N…可視光像、Va…電圧、
d1…管軸方向、d2…直交方向。