(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082797
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】ダンプ材用熱硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20230608BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20230608BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20230608BHJP
C09J 133/00 20060101ALN20230608BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J163/00
C09J183/04
C09J133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196735
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】原 勇太
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DF041
4J040DF052
4J040EC001
4J040EK031
4J040HA306
4J040KA29
4J040LA06
4J040LA08
4J040NA17
4J040PA30
4J040PB05
(57)【要約】
【課題】熱硬化性及び保存安定性に優れ、弾性率の温度依存性が小さいダンプ材用熱硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、バインダー(A)及び樹脂フィラー(B)を含む、ダンプ材用熱硬化性組成物であって、バインダー(A)は、重量平均分子量が250~1,000であるバインダー(A-1)を含み、バインダー(A)の25℃での粘度が20~2,000mPa・sであり、ここで、バインダー(A)の粘度をバインダー(A)の重量平均分子量で割ったときの値が2以下であり、樹脂フィラー(B)のガラス転移温度(Tg)が85℃~115℃であり、且つ、樹脂フィラー(B)の重量平均分子量が5万~400万であるが、樹脂フィラー(B)はコアシェル型樹脂フィラーではない、ダンプ材用熱硬化性組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー(A)及び樹脂フィラー(B)を含む、ダンプ材用熱硬化性組成物であって、
バインダー(A)は、重量平均分子量が250~1,000であるバインダー(A-1)を含み、バインダー(A)の25℃での粘度が20~2,000mPa・sであり、ここで、バインダー(A)の粘度をバインダー(A)の重量平均分子量で割ったときの値が2以下であり、
樹脂フィラー(B)のガラス転移温度(Tg)が85℃~115℃であり、且つ、樹脂フィラー(B)の重量平均分子量が5万~400万であるが、樹脂フィラー(B)はコアシェル型樹脂フィラーではない、ダンプ材用熱硬化性組成物。
【請求項2】
樹脂フィラー(B)が、(メタ)アクリル樹脂フィラーである、請求項1に記載のダンプ材用熱硬化性組成物。
【請求項3】
バインダー(A)が、アクリル樹脂系バインダー、エポキシ樹脂系バインダー、シリコーン樹脂系バインダー及び可塑剤系バインダーからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1又は2に記載のダンプ材用熱硬化性組成物。
【請求項4】
バインダー(A)の25℃での粘度が20mPa・以上700mPa・s未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のダンプ材用熱硬化性組成物。
【請求項5】
更に、充填剤及び酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のダンプ材用熱硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプ材用熱硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズ、光ピックアップ、光検出センサー、パソコン等のディスプレイ等の精密光学装置において、各装置の構成部品を固定する際に、変形の大きい部位や振動がかかる部位に対して、部品の欠落を防ぐためにダンプ材(振動吸収材)が用いられており(例えば、特許文献1)、このようなダンプ材として、柔軟性を有する硬化物を与える光硬化型シリコーン組成物が使用されている(例えば、特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-310916号公報
【特許文献2】特開2001-261765号公報
【特許文献3】国際公開第2011/136170号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、光が照射できない部分は、紫外線による硬化手段を適用できなかった。よって、優れた熱硬化性を有し、且つ、保存安定性に優れる、新たなダンプ材用組成物に対する要望があった。また、幅広い温度範囲に対応可能なダンプ材とするために、ダンプ特性の指標である弾性率の温度依存性が小さなダンプ材が求められていた。
【0005】
本発明は、熱硬化性及び保存安定性に優れ、弾性率の温度依存性が小さいダンプ材用熱硬化性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に関する。
[1]バインダー(A)及び樹脂フィラー(B)を含む、ダンプ材用熱硬化性組成物であって、バインダー(A)は、重量平均分子量が250~1,000であるバインダー(A-1)を含み、バインダー(A)の25℃での粘度が20~2,000mPa・sであり、ここで、バインダー(A)の粘度をバインダー(A)の重量平均分子量で割ったときの値が2以下であり、樹脂フィラー(B)のガラス転移温度(Tg)が85℃~115℃であり、且つ、樹脂フィラー(B)の重量平均分子量が5万~400万であるが、樹脂フィラー(B)はコアシェル型樹脂フィラーではない、ダンプ材用熱硬化性組成物。
[2]樹脂フィラー(B)が、(メタ)アクリル樹脂フィラーである、[1]のダンプ材用熱硬化性組成物。
[3]バインダー(A)が、アクリル樹脂系バインダー、エポキシ樹脂系バインダー、シリコーン樹脂系バインダー及び可塑剤系バインダーからなる群より選択される1種以上を含む、[1]又は[2]のダンプ材用熱硬化性組成物。
[4]バインダー(A)の25℃での粘度が20mPa・以上700mPa・s未満である、[1]~[3]のいずれかのダンプ材用熱硬化性組成物。
[5]更に、充填剤及び酸化防止剤からなる群より選択される1種以上を含む、[1]~[4]のいずれかのダンプ材用熱硬化性組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱硬化性及び保存安定性に優れ、弾性率の温度依存性が小さいダンプ材用熱硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[定義]
本明細書において、各用語の定義は以下の通りである。
「熱硬化性に優れる」とは、80℃で1時間加熱した後に硬化物が得られることを意味する。
「保存安定性に優れる」とは、25℃で24時間保管した後の組成物の粘度変化率が10%以下であることを意味する。
「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタアクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタアクリロイル基の少なくとも一方を意味する。
「硬化」とは、ゲル化及び固化の少なくとも一方の意味を有する。
「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。
「粘度」は、25℃で、コーンプレート型粘度計を用いて測定した値である。
「バインダー(A)の25℃での粘度」とは、組成物中に含まれるバインダー成分全体の粘度である。
「バインダー(A)の重量平均分子量」とは、組成物中に含まれるバインダー成分全体の重量平均分子量である。ここで、バインダー(A)が複数存在するときは、各成分の分子量の加重平均を意味する。例えば、バインダー(A)が成分A1、成分A2及び成分A3の3種の成分の組み合わせである場合は、「バインダー(A)の分子量=(成分A1の分子量×成分A1の含有量+成分A2の分子量×成分A2の含有量+成分A3の分子量×成分A3の含有量)÷(成分A1の含有量+成分A2の含有量+成分A2の含有量)」である。
数値範囲に関して「~」とは、その両端の値を含むことを意味する。即ち、「250~1,000」は、「250以上1,000以下」を意味する。また、「以下」は「同じ又は未満」を意味し、「以上」は「同じ又は超える」を意味する。
【0009】
[ダンプ材用熱硬化性組成物]
ダンプ材用熱硬化性組成物は、バインダー(A)及び樹脂フィラー(B)を含み、バインダー(A)は、重量平均分子量が250~1,000であるバインダー(A-1)を含み、バインダー(A)の25℃での粘度が20~2,000mPa・sであり、ここで、バインダー(A)の粘度をバインダー(A)の重量平均分子量で割ったときの値が2以下であり、樹脂フィラー(B)のガラス転移温度(Tg)が85℃~115℃であり、且つ、樹脂フィラー(B)の重量平均分子量が5万~400万であるが、樹脂フィラー(B)はコアシェル型樹脂フィラーではない。
【0010】
ダンプ材用熱硬化性組成物の硬化は、樹脂フィラー(B)のバインダー(A)への膨潤によって、増粘することにより、硬化することに基づく。ダンプ材用熱硬化性組成物の硬化は、熱硬化性組成物を加熱することにより、樹脂フィラーがバインダーにより膨潤することで、フィラーの状態から、高分子鎖になり、この高分子鎖が絡まることによるものと考えられる。
【0011】
また、本発明者は、ダンプ材用熱硬化性組成物のバインダー(A)の粘度をバインダー(A)の重量平均分子量で割ったときの値を2以下とすることで、弾性率の温度依存性(特に低温側での弾性率の温度依存性)が小さくなることを見出した。ここで、弾性率の温度依存性が大きいものは、特に低温側(例えば、-20℃~25℃)の変化が大きくなる傾向があるため、低温側での弾性率の温度依存性が小さくなる場合は、幅広い温度範囲(例えば、-40~90℃、特に-20℃~80℃)において弾性率の温度依存性が小さくなるといえる。
【0012】
ダンプ材用熱硬化性組成物は、弾性率の他に、ダンプ特性の指標であるtanδの温度依存性が小さい。ダンプ材用熱硬化性組成物は、幅広い温度範囲において弾性率の温度依存性が小さいため、ダンプ材用熱硬化性組成物を、カメラアクチュエータ(VCM、OIS)や光ピックアップ等へのダンプ材(振動吸収材)として用いる際に、幅広い温度範囲でダンプ材の性能を発揮することができる。
【0013】
(バインダー(A))
バインダー(A)は、加熱時において、樹脂フィラー(B)を膨潤させることができる成分である。バインダー(A)は、重量平均分子量が250~1,000であるバインダー(A-1)を含み、バインダー(A)の25℃での粘度が20~2,000mPa・sであり、ここで、バインダー(A)の粘度をバインダー(A)の重量平均分子量で割ったときの値が2以下である。
【0014】
<バインダー(A)の粘度>
バインダー(A)の25℃での粘度は20~2,000mPa・sである。バインダー(A)の25℃での粘度が2,000mPa・sを超える場合、弾性率の温度依存性が小さくならない。バインダー(A)の25℃での粘度が20mPa・s未満である場合、バインダー(A)が、樹脂フィラー(B)を溶解してしまい、保存安定性に劣る。バインダー(A)の粘度は20mPa・以上700mPa・s未満であってもよい。
【0015】
<バインダー(A-1)>
バインダー(A-1)は、重量平均分子量が250~1,000である。バインダー(A)が重量平均分子量250未満の成分のみを含む場合、保存安定性が劣る。バインダー(A)が重量平均分子量1,000を超える成分のみを含む場合、熱硬化性が劣る。バインダー(A-1)の重量平均分子量は、熱硬化性の観点から、350~1,000であることが好ましく、450~750であることが特に好ましい。
【0016】
<バインダー(A-1)の粘度>
バインダー(A-1)の25℃の粘度としては、バインダー(A)の25℃での粘度が20~2,000mPa・sであり、バインダー(A)の粘度をバインダー(A)の重量平均分子量で割ったときの値が2以下である範囲を満足する範囲内であれば、特に限定されない。よって、バインダー(A-1)としては、以下のバインダー(A-1’)及びバインダー(A-1”)が挙げられる。なお、バインダー(A-1’)及びバインダー(A-1”)の重量平均分子量は250~1,000であり、その好ましい値はバインダー(A-1)で前記したとおりである。
【0017】
≪バインダー(A-1’)≫
バインダー(A-1’)は、25℃での粘度が20mPa・s以上2000mPa・s以下であり、且つ、バインダー(A-1’)の粘度をバインダー(A-1’)の重量平均分子量で割ったときの値が2以下である。バインダー(A-1’)の25℃での粘度は、20mPa・s以上350mPa・s未満であることが好ましい。
【0018】
≪バインダー(A-1”)≫
バインダー(A-1”)は、25℃での粘度が20mPa・s以上2000mPa・s以下であり、且つ、バインダー(A-1”-1)の粘度をバインダー(A-1”-1)の重量平均分子量で割ったときの値が2を超えるバインダー(A-1”-1)であるか、25℃での粘度が20mPa・s未満であるバインダー(A-1”-2)であるか、又は、25℃での粘度が2,000mPa・s超であるバインダー(A-1”-3)である。バインダー(A-1”)が、バインダー(A-1”-3)である場合、バインダー(A-1”-3)の25℃での粘度は、100,000mPa・s以下であることが好ましく、50,000mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0019】
<(A-1)以外のバインダー>
バインダー(A)は、バインダー(A)の粘度や重量平均分子量の調整等を目的として、更なるバインダーとして、バインダー(A-1)以外のバインダーを含むことができる。更なるバインダーとしては、重量平均分子量が250未満であるバインダー(A-2)、重量平均分子量が1,000を超えるバインダー(A-3)が挙げられる。
【0020】
≪バインダー(A-2)≫
バインダー(A-2)の重量平均分子量は、熱硬化性、保存安定性の観点から、100以上250未満であることが好ましい。バインダー(A-2)の25℃での粘度は、範囲内であれば特に限定されないが、1mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上50mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0021】
≪バインダー(A-3)≫
バインダー(A-3)の重量平均分子量は、熱硬化性、保存安定性の観点から、1,000超50,000以下であることが好ましく、1,500~10,000であることが特に好ましい。バインダー(A-3)の25℃での粘度は、バインダー(A)の25℃での粘度、及びバインダー(A)の粘度と重量平均分子量との関係が前記範囲を満足する範囲内であれば特に限定されないが、400mPa・s以上100,000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以上50,000mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0022】
<バインダー(A)の種類>
バインダー(A)の種類としては、バインダー(A-1)の重量平均分子量、バインダー(A)の25℃での粘度、並びに、バインダー(A)の粘度とバインダー(A)の重量平均分子量との関係を満足する限り、特に限定されない。このようなバインダー(A)としては、(メタ)アクリル樹脂系バインダー、エポキシ樹脂系バインダー等の反応性官能基を有するバインダーや、シリコーン樹脂系バインダー、可塑剤系バインダー等の反応性官能基を有さないバインダーが挙げられる。ここで、反応性官能基は、加熱により硬化反応を生じさせる基であり、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基等が挙げられる。
【0023】
≪(メタ)アクリル樹脂系バインダー≫
(メタ)アクリル樹脂系バインダーは、分子中に1以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂であれば特に限定されない。(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。また、(メタ)アクリレートモノマーとしては、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートモノマー、その他の(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。これらは、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0024】
・ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、脂肪族系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリエステル系又はこれらの組合せのポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。これらは、1種でも、2種以上の組合せでもよい。これらの中でも脂肪族系が好ましい。
【0025】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、特開2008-260898号公報に記載されているような方法で、有機ジイソシアネートとヒドロキシル基を有する樹脂とを反応させた後、更にヒドロキシル基を有する1~5官能の(メタ)アクリレートとを反応して製造することができる。
【0026】
有機ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族系、脂肪族系、脂環式系等のジイソシアネートが挙げられ、具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ジイソシアネート類が挙げられる。これらの中でも脂環式系のジイソシアネートが好ましい。
【0027】
ヒドロキシル基を有する樹脂としては、例えば両末端水酸基ポリアルキレン、両末端水酸基水素化ポリアルキレン、両末端水酸基ポリオール、両末端水酸基ポリカーボネート、両末端水酸基ポリエステル等が挙げられ、両末端水酸基水素化ポリアルキレンが好ましく、両末端水酸基水素化ポリブタジエン、両末端水酸基水素化ポリイソプレンがより好ましい。
【0028】
ヒドロキシル基を有する1~5官能の(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシアルキレン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、それらのアルキルオキサイド変性物等が挙げられる。
【0029】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品としては、EBECRYL4858(ダイセル・オルネクス社製)、UN-2301(根上化学社製)、EBECRYL4859(ダイセル・オルネクス社製)、EBECRYL4738(ダイセル・オルネクス社製)、EBECRYL8402(ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
【0030】
・エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ樹脂中の全てのエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応しているオリゴマーである。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ樹脂中の一部のエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応しているオリゴマー、すなわち、樹脂中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを含んでいてもよい。ここで、エポキシ樹脂として、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及びその他のエポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、芳香族エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種でも、2種以上の組合せでもよい。
【0031】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品としては、EB3700(ダイセル・オルネクス製)、EB3708(ダイセル・オルネクス製)等が挙げられる。
【0032】
・環構造を有するメタクリレートモノマー
環構造を有するメタクリレートモノマーとしては、脂環式メタクリレートモノマー及び芳香族メタクリレートモノマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0033】
脂環式メタクリレートモノマーは、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ノルボルネンメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0034】
芳香族メタクリレートモノマーは、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノールメタクリレート、フェノキシベンジルメタクリレート、ナフタレンメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、変性ビスフェノールAジメタクリレート(ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物ジグリシジルエーテルのメタクリル酸付加物、9,9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン)等が挙げられる。
【0035】
・カルボキシル基を含有する(メタ)アクリレートモノマー
カルボキシル基を含有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、脂肪族系、芳香族系、脂環式系のカルボキシル基を含有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
カルボキシル基を含有する(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0036】
・多官能(メタ)アクリレートモノマー
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、脂肪族系の多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物、脂肪族系の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、エトキシ化1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールアクリル酸多量体エステル、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO(プロピレンオキシド)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、アルコキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
【0037】
・更なる(メタ)アクリレートモノマー
更なる(メタ)アクリレートモノマーとしては、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
この他に、(メタ)アクリル樹脂としては、特開2019-129279号公報に記載された樹脂が挙げられる。
【0038】
≪エポキシ樹脂系バインダー≫
エポキシ樹脂系バインダーは、分子中に1以上のエポキシ基を有する樹脂(ただし、分子中に1以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂を除く)であれば特に限定されない。芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及び脂肪族系エポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0039】
芳香族エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、DIC株式会社製のエピクロン850、エピクロンEXA-850CRP、エピクロン860又はエピクロンEXA-8067(エピクロンEXA-8067は、高分子量型である。))、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(例えば、DIC株式会社製のエピクロンEXA-830LVP、エピクロン830-S)、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、DIC株式会社製のエピクロンN-730A)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ポリブタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
脂環式エポキシ樹脂としては、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン(例えば、株式会社ダイセル製CEL2000)、1,2:8,9ジエポキシリモネン(例えば、株式会社ダイセル製CEL3000)、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(例えば、株式会社ダイセル製CEL2021P)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、株式会社ダイセル製EHPE3150)、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂及び水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0041】
脂肪族エポキシ樹脂としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、阪本薬品工業株式会社製のSR-14BJ)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリイソプレン型エポキシ樹脂、及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のケイ素含有エポキシ化合物が挙げられる。
【0042】
≪可塑剤系バインダー≫
可塑剤系バインダーは、加熱によりそれ自身は硬化しない成分である。ダンプ材用熱硬化性組成物が可塑剤系バインダーを含む場合、貯蔵弾性率が小さく、柔軟な硬化物を得ることができる。このような可塑剤系バインダーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)構造、エステル構造等を有する可塑剤が挙げられ、キシレン樹脂系可塑剤、アクリルポリマー系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸アルキルエステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤等、セバシン酸エステル系可塑剤、ポリブタジエン系可塑剤、ポリイソプレン系可塑剤、ポリブテン系可塑剤、テルペン系可塑剤、ロジンエステル系樹脂及びその他の可塑剤が挙げられる。
【0043】
キシレン樹脂系可塑剤は、m-キシレンを基本とした芳香族オリゴマーであり、市販品として、ニカノールLL、ニカノールL(フドー社製)等が挙げられる。
アクリルポリマー系可塑剤は、予め重合させたアクリルポリマー(ただし、反応性基を含有していても、含有していなくてもよい)であり、市販品として、UP1061、UP1010(東亞合成社製)等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等が挙げられる。
多価カルボン酸アルキルエステル系可塑剤としては、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル等の多価カルボン酸のC3~C12アルキルエステル等が挙げられる。
アジピン酸エステル系可塑剤としては、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸ジエステルが挙げられる。
セバシン酸エステル系可塑剤としては、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジイソノニル等が挙げられる。
ポリブタジエン系可塑剤としては、ポリブタジエン、又はこれらの水素化物、これらの両末端に水酸基を導入した誘導体もしくはこれらの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体等が挙げられる。
ポリイソプレン系可塑剤としては、ポリイソプレン、又はこれらの水素化物、これらの両末端に水酸基を導入した誘導体もしくはこれらの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体等が挙げられる。
ポリブテン系可塑剤としては、ポリブテン、又はこれらの水素化物、これらの両末端に水酸基を導入した誘導体もしくはこれらの水素化物の両末端に水酸基を導入した誘導体等が挙げられる。
テルペン系可塑剤としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂等が挙げられる。
ロジンエステル系樹脂としては、不均化ロジンエステル系樹脂、重合ロジンエステル系樹脂、水添(水素化)ロジンエステル系樹脂等が挙げられる。
その他の可塑剤としては、トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル;トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル;アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル;トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)等のポリオキシアルキレングリコールのアルキルエステル(例えば、ジ、トリ又はテトラエチレングリコールのC3~C12アルキルエステル等);アジピン酸系ポリエステル等のポリエステル系可塑剤(但し、アジピン酸ジエステルを除く);エポキシ系エステル系可塑剤;安息香酸エステル系可塑剤;ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリール、ポリカーボネートポリオール等のポリオール系可塑剤;熱可塑性エラストマー;石油樹脂;脂環族飽和炭化水素樹脂;ロジンフェノール等のロジン系樹脂等が挙げられる。
【0044】
≪シリコーン樹脂系バインダー≫
シリコーン樹脂系バインダーは、いわゆる非反応性のジオルガノポリシロキサンとも呼ばれるシリコーン樹脂である。シリコーン樹脂としては、トリメチルシリル基で末端封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンや環状のジオルガノポリシロキサンが挙げられる。シリコーン樹脂系バインダーは、トリメチルシリル基で末端封鎖されたメチルフェニルポリシロキサン、及びトリメチルシリル基で末端封鎖されたジメチルポリシロキサン等が好ましい。シリコーン樹脂の市販品としては、KF-56(信越化学社製)等が挙げられる。この他に、シリコーン樹脂としては、特開2001-261765号公報において、(b)成分として記載されたオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0045】
<好ましい態様>
バインダー(A)は、樹脂フィラーとの相溶性の観点から、(メタ)アクリル樹脂系バインダー、エポキシ樹脂系バインダー及び可塑剤系バインダーからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。また、バインダー(A)は、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂系バインダー、アクリルポリマー系可塑剤及び安息香酸エステル系可塑剤からなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。また、低温側での弾性率の温度依存性がより小さくなる観点から、バインダー(A)は、反応性官能基を有するバインダーを含むことも好ましい。
【0046】
バインダー(A)の粘度をバインダー(A)の重量平均分子量で割ったときの値は、0.010以上1.5以下であることが好ましく、0.020以上1.0以下であることが特に好ましい。また、低温側での弾性率の温度依存性がより小さくなる観点から、バインダー(A)の粘度をバインダー(A)の重量平均分子量で割ったときの値は小さいことが好ましい。バインダー(A-1)等において、当該バインダーの粘度を当該バインダーの重量平均分子量で割ったときの値が小さい材料としては、分子間相互作用が弱い材料が挙げられる。分子間相互作用が弱い材料である場合、同じ分子量であっても、粘度をより小さくすることができる。例えば、水素結合性官能基(例えばウレタン結合)を持たない成分を用いるか、又は水素結合性官能基(例えばウレタン結合)を持つ成分の含有量が少なくすることで、25℃での粘度が20mPa・s以上2000mPa・s以下であり、且つ、バインダー(A)の粘度をバインダー(A)の重量平均分子量で割ったときの値を小さくすることができる。また、π-πスタッキングを生じさせる芳香環を持たない成分を用いるか、又は芳香環を持つ成分の含有量が少なくすることで、25℃での粘度が20mPa・s以上2000mPa・s以下であり、且つ、バインダー(A)の粘度をバインダー(A)の重量平均分子量で割ったときの値を小さくすることができる。
【0047】
この他に、低粘度(25℃での粘度が20mPa・s未満)の成分、高粘度(25℃での粘度が2,000mPa・sを超える)の成分、重量平均分子量が250未満であるバインダー(A-2)、及び重量平均分子量が1,000を超えるバインダー(A-3)を用いて、バインダー(A)の25℃での粘度、及びバインダー(A)の粘度と重量平均分子量との関係を増減させることができる。ここで、低粘度の成分としては、バインダー(A-1”-2)、低粘度のバインダー(A-2)及びバインダー(A-3)等が挙げられる。また、高粘度の成分としては、バインダー(A-1”-3)、高粘度のバインダー(A-2)及びバインダー(A-3)等が挙げられる。
【0048】
また、バインダー(A-1”)が、バインダー(A-1”-1)を含む場合は、当該バインダー(A-1”-1)よりも低い粘度である、バインダー(A-1”)等を組み合わせることで、バインダー(A)の粘度と重量平均分子量との関係を2以下にすることができ得る。
【0049】
バインダー(A)は、それぞれ、1種の成分又は2種以上の組み合わせの成分であってよい。
【0050】
バインダー(A)中のバインダー(A-1)の含有量は、バインダー(A)の25℃での粘度が20~2,000mPa・sであり、分子量と粘度の関係を満足するような量であれば特に限定されないが、10~100質量%であることが好ましく、50~100質量%であることがより好ましく、70~100質量%であることが特に好ましい。よって、バインダー(A)は、(i)バインダー(A-1)のみからなってもよく、(ii)バインダー(A-1)と、バインダー(A-2)及びバインダー(A-3)からなる群より選択される1種以上との組み合わせであってもよい。
【0051】
バインダー(A-1)中のバインダー(A-1’)の含有量は、10~100質量%であることが好ましく、30~100質量%であることがより好ましく、50~100質量%であることが更に好ましく、70~100質量%であることがより更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。よって、バインダー(A-1)は、(i)バインダー(A-1’)のみからなってもよく、(ii)バインダー(A-1’)とバインダー(A-1”)との組み合わせであってもよい。
【0052】
(樹脂フィラー(B))
樹脂フィラー(B)は、ガラス転移温度(Tg)が85℃~115℃であり、且つ、重量平均分子量が5万~400万であるが、コアシェル型樹脂フィラーではない。樹脂フィラー(B)は、加熱によってバインダー(A)に膨潤して、ダンプ材用熱硬化性組成物の流動性を低下させる性質を有する。
【0053】
樹脂フィラー(B)は、特に限定されず、(メタ)アクリル樹脂フィラー、糖化合物誘導体、スチレン樹脂フィラー、(メタ)アクリル/スチレン共重合系フィラー、ポリエチレン樹脂フィラー及びポリプロピレン樹脂フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機系フィラーが挙げられる。樹脂フィラー(B)は、(メタ)アクリル樹脂フィラーであることが好ましい。
【0054】
(メタ)アクリル樹脂フィラーは、(メタ)アクリル酸エステルの単量体の共重合物であり、ブロック共重合、ランダム共重合のフィラーでもよい。(メタ)アクリル酸エステルの単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸及びその誘導体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂フィラーは、メタアクリル酸メチルとメタアクリル酸エチルの共重体であることが好ましい。
【0055】
樹脂フィラー(B)は、コアと、前記コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル型樹脂フィラーではない。樹脂フィラー(B)が、コアシェル型樹脂フィラーである場合、組成物は加熱後に硬化せず、熱硬化性に劣る。
【0056】
樹脂フィラー(B)のガラス転移温度(Tg)は、85℃~115℃である。樹脂フィラーのTgが85℃未満であると、保存安定性に劣る。また樹脂フィラーのTgが115を超える場合、熱硬化性に劣る。樹脂フィラー(B)のTgは、89℃~112℃であることが好ましく、90℃~105℃であることがより好ましく、95℃~100℃であることが特に好ましい。
【0057】
樹脂フィラー(B)の重量平均分子量は、5万~400万であり、30万~300万であることが好ましく、40万~200万であることがより好ましく、50万~150万であることが特に好ましい。樹脂フィラー(B)の重量平均分子量が5万以上である場合、熱硬化性に優れる傾向がある。また、樹脂フィラー(B)の重量平均分子量が400万以下である場合、硬化後の柔軟性に優れる傾向がある。
【0058】
樹脂フィラー(B)は、1種単独又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0059】
(その他の成分)
ダンプ材用熱硬化性組成物は、本発明の効果を奏する範囲内で、硬化剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、チキソ性付与剤、充填剤等のその他の成分を含むことができる。これらの具体的な成分は、公知の成分を使用できる。また、ダンプ材用熱硬化性組成物は、熱硬化剤及び光硬化剤を含んでいてもよい。ダンプ材用熱硬化性組成物が熱硬化剤及び光硬化剤の両方を含む場合、ダンプ材用熱硬化性組成物を、ダンプ材用の熱及び光硬化性組成物とすることができる。
【0060】
≪酸化防止剤≫
酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤は、アクリル樹脂系バインダーの重合禁止剤としても機能し得る。
【0061】
≪充填剤≫
充填剤は、特に限定されず、公知の無機充填剤及び有機充填剤が挙げられる。
【0062】
無機充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化ケイ素(沈降性シリカ、フュームドシリカ(煙霧質シリカ)等)、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、水酸化アルミニウム、石綿粉、酸化銅、水酸化銅、酸化鉄、酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、カーボン、マイカ、スメクタイト、カーボンブラック、ベントナイト、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素が挙げられる。密着性の観点から、無機充填剤は、二酸化ケイ素、ガラスビーズ及びタルクであることが好ましく、タルクが特に好ましい。
【0063】
有機充填剤としては、アクリル粒子、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン(ポリスチレンビーズ)、これらを構成するモノマー(即ち、メタクリル酸メチル又はスチレン)と他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体、ポリエチレン粒子、ポリシロキサン樹脂粒子、ポリアミド粒子、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、及びゴム微粒子(アクリルゴム粒子、イソプレンゴム粒子)が挙げられる。有機充填剤は、コアシェル構造を有していてもよい。密着性の観点から、有機充填剤は、ゴム微粒子であることが好ましく、コアシェル構造を有するゴム微粒子であることが特に好ましい。
【0064】
充填剤が、有機充填剤である場合、有機充填剤の重量平均分子量は、特に限定されないが、5万~400万であることが好ましく、30万~300万であることが特に好ましい。
【0065】
充填剤の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01μm以上10μm未満であることが好ましく、1μm~5μmであることが特に好ましい。充填剤の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。
【0066】
なお、充填剤は、チキソ性付与剤として機能する成分であってもよい。チキソ性付与剤は、組成物に、塗工性改善等を付与する成分である。チキソ付与剤として機能する充填剤としては、ヒュームドシリカが挙げられる。ヒュームドシリカは、表面処理されていてもよい。無機系のチキソ付与剤の表面処理剤としては、モノアルキルトリアルコキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。表面処理された又は未処理のヒュームドシリカは、市販品を用いることができる。
充填剤は、1種単独又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0067】
ダンプ材用熱硬化性組成物は、塗布形状保持のため、充填剤を含むことが好ましく、チキソ性付与剤として機能する充填剤を含むことが好ましく、ヒュームドシリカを含むことが特に好ましい。また、ダンプ材用熱硬化性組成物は、弾性率の経時変化が抑えられるため、酸化防止剤を含むことが好ましく、フェノール系酸化防止剤を含むことが特に好ましい。
【0068】
(組成及び特性)
ダンプ材用熱硬化性組成物において、各成分の含有量は以下の通りである。
バインダー(A)の100質量部に対する樹脂フィラー(B)の含有量は、1~70質量部であることが好ましく、2~50質量部であることがより好ましく、3~30質量部であることが特に好ましい。バインダー(A)の100質量部に対する樹脂フィラー(B)の含有量が1質量部以上である場合、硬化性が高まる。バインダー(A)の100質量部に対する樹脂フィラー(B)の含有量が70質量部以下である場合、バインダー(A)及び樹脂フィラー(B)を混合した後の粘度の上昇が抑えられることで作業性が高まり、また得られる硬化物の柔軟性に優れる。
【0069】
バインダー(A)の100質量部に対する無機充填剤の含有量は、塗布性、形状保持性の観点から、1~70質量部であることが好ましく、2~50質量部であることがより好ましく、3~30質量部であることが特に好ましい。
バインダー(A)の100質量部に対する酸化防止剤の含有量は、粘弾性維持の観点から、1~70質量部であることが好ましく、2~50質量部であることがより好ましく、3~30質量部であることが特に好ましい。
ダンプ材用熱硬化性組成物の100質量部に対する、バインダー(A)、樹脂フィラー(B)、並びに、存在する場合の無機充填剤及び酸化防止剤の合計の含有量は、70~100質量部であることが好ましく、80~100質量部であることが特に好ましい。
なお、上記の場合において、酸化防止剤及び重合禁止剤の両方の機能を有する成分の含有量は、酸化防止剤の含有量とする。
【0070】
(調製方法)
ダンプ材用熱硬化性組成物は、各成分を混合することにより製造できる。
【0071】
(硬化方法)
ダンプ材用熱硬化性組成物は、低温(例えば、80~100℃)で、3分~60分加熱することにより、速やかに硬化物を形成することができる。
【0072】
(用途)
ダンプ材用熱硬化性組成物は、低温で熱硬化し、且つ、硬化物が優れた柔軟性有するため、高温(例えば、100℃超)での熱ダメージを嫌う部品の多いカメラモジュール、VCM(Voice Coil Motor)、OIS(Optical Image Stabilizer)のダンプ材に適用できる。
【0073】
ダンプ材用熱硬化性組成物は、熱開始剤等の成分を含まない場合、硬化反応を伴わない。そのため、硬化反応による収縮率がなく、高い位置精度の求められるカメラのレンズ固定、及び、部材に応力を掛けることなくポッティングできる。また、ダンプ材用熱硬化性組成物は、低温(80℃~100℃)で熱硬化することにより、光の透過しない部材に熱ダメージを与えず固定できる。
【実施例0074】
実施例及び比較例の各組成物を以下の原材料を使用して製造した。なお、分子量は重量平均分子量である。また、粘度は、25℃で測定した値である。
【0075】
(1)バインダー(A)
(A-1)重量平均分子量が250~1,000であるバインダー
・アクリル樹脂系バインダー
ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート(SR259、アルケマ社製。分子量302。粘度25mPa・s。)なお、本成分は、ポリエチレングリコール繰り返し数が4である。
エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(SR454、アルケマ社製。分子量428。粘度60mPa・s。)なお、本成分は、トリメチロールプロパン1モルに対して、エチレンオキシド単位を3モル有するトリアクリレートである。
エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート(SR499、アルケマ社製。分子量560。粘度95mPa・s。)なお、本成分は、トリメチロールプロパン1モルに対して、エチレンオキシド単位を6モル有するトリアクリレートである。
エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート(SR502、アルケマ社製。分子量692。粘度130mPa・s。)なお、本成分は、トリメチロールプロパン1モルに対して、エチレンオキシド単位を9モル有するトリアクリレートである。
ウレタンアクリレート(UN-2301、根上工業株式会社製。分子量740。粘度9,300mPa・s。)
・可塑剤系バインダー
安息香酸エステル系可塑剤(PB-3A、DIC製。分子量320。粘度100mPa・s。)
(A-2)重量平均分子量が250未満のバインダー
・エポキシ系バインダー
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403、信越化学工業製。分子量236。粘度10mPa・s。)
(A-3)重量平均分子量が1,000を超えるバインダー
・可塑剤系バインダー
アクリルポリマー系可塑剤(UP1061、東亞合成株式会社製。分子量1,600。粘度550mPa・s。)
【0076】
(2)樹脂フィラー(B)
メタクリル酸メチル/メタクリル酸エチル共重合体(SD-350ME、根上工業株式会社製。分子量100万。Tg98℃。)
(3)添加剤(C)
TG-308F:ヒュームドシリカ(CABOT製)
AO80:フェノール系酸化防止剤(ADEKA製)
【0077】
下記の表に示す配合量(質量部)にて混合後、撹拌機(RW28(IKA社製)、600rpm)で撹拌して、実施例1~9及び比較例1~3の組成物を作製した。
【0078】
〔評価〕
(1)粘度、チキソ比
バインダー(A)(バインダーが複数存在する場合は、全てのバインダーを合わせたバインダー組成物)の粘度は、25℃で、粘度計:TOKI社製 RE-215S、測定条件:3°×R14ローター、10rpm、25±1℃(低粘度:3°×R24ローター、10rpm、25±1℃)を用いて測定した。表に示す粘度は、10rpmの値である。チキソ比は、前記粘度の測定を1rpmにて測定し、「チキソ比=(1rpmでの粘度/10rpmでの粘度)」で求めた値である。
【0079】
(2)熱硬化性
スライドガラス上に組成物を塗布して、オーブンを用いて、80℃で1時間の条件で加熱した。組成物の熱硬化性を触診により判断して、以下の基準で評価した。
〇:80℃で1時間の条件で硬化した
×:80℃で1時間の条件で硬化しなかった
【0080】
(3)液安定性(保存安定性)
製造後の熱硬化性組成物の粘度に対して、25℃で24時間保管した後の組成物の粘度を比較した。
〇:粘度変化率が10%以下であった
×:粘度変化率が10%超であった
【0081】
(4)形状保持性
スライドガラス上に組成物を5mg塗布して、スライドガラスを立て掛けて、1分間放置し、形状を確認した。
〇:垂れ落ちなし
×:垂れ落ちる
【0082】
(5)レオメーター
レオメーター:Thermo Scientific社製 HAAKE RheoStress6000(パラレルプレート:PP20E(φ20mm)、測定厚み:0.5mmt、25℃、1Hz)の条件を用いた。
(5-1)温度条件
(5-1-1)実施例1
(i)80℃、60分の硬化条件にて、予めステージ上に厚み:0.5mmtの組成物のゲルを作製した。
(ii)昇温速度10℃/分で、25℃から80℃まで昇温させた。1Hz
(iii)降温速度3℃/分で、80℃から-20℃まで降温させた。-20℃、25℃、80℃での貯蔵弾性率とtanδ の値を読み取った。1Hz
(5-1-2)実施例2~9及び比較例1~2
測定周波数を1Hzに固定し以下の(i)~(iii)の順番で処理を行った。
(i)昇温速度10℃/分で、25℃から80℃まで昇温させた。1Hz
(ii)80℃で60分間保持して、組成物を硬化させた。1Hz
(iii)降温速度3℃/分で、80℃から-20℃まで降温させた。
-20℃、25℃、80℃での貯蔵弾性率とtanδの値を読み取った。1Hz
【0083】
(5-2)評価
読み取った-20℃、25℃、80℃での貯蔵弾性率から、-20℃の貯蔵弾性率と25℃の貯蔵弾性率との比(-20℃の貯蔵弾性率÷25℃の貯蔵弾性率)、及び、25℃の貯蔵弾性率と80℃の貯蔵弾性率の比(25℃の貯蔵弾性率÷80℃の貯蔵弾性率)を求めた。
〇:貯蔵弾性率の比が0.1以上10未満であった
×:貯蔵弾性率の比が10以上であった
【0084】
以上の結果を表にまとめた。なお、「バインダー(A)の分子量」は、組成物中に含まれるバインダー成分の分子量の加重平均である。
【0085】
【0086】
実施例の組成物は、80℃で1時間の熱硬化条件で硬化しており、熱硬化性に優れていた。また、実施例の組成物は、25℃で24時間の粘度変化が少なく、保存安定性に優れていた。そして、実施例の組成物は、低温側での弾性率の温度依存性(即ち、-20℃の貯蔵弾性率と25℃の貯蔵弾性率との比)、及び、高温側での弾性率の温度依存性(即ち、25℃の貯蔵弾性率と80℃の貯蔵弾性率の比)の両方が小さくなり、特に、低温側での弾性率の温度依存性が小さくなった。実施例1~2の結果より、ダンプ材用熱硬化性組成物が、更に充填剤を含む場合、形状維持性に優れており、ダンプ材用熱硬化性組成物が、更に酸化防止剤を含む場合、低温側での弾性率の温度依存性がより小さくなった。また、実施例の結果より、バインダーの粘度をバインダーの重量平均分子量で割ったときの値が小さくなる場合、低温側での弾性率の温度依存性が小さくなる傾向があった。実施例4、5、7及び9等と実施例6との比較により、ダンプ材用熱硬化性組成物が、反応性官能基を有するバインダーを含む場合、低温側での弾性率の温度依存性がより小さくなる傾向があった。
【0087】
比較例1は、バインダー全体の粘度が2,000mPa・sを超えるため、低温側での弾性率の温度依存性が大きくなった。比較例2は、バインダーの粘度が20mPa・s未満であるため、保存安定性が劣っていた。比較例3は、バインダーの重量平均分子量が1,000を超えるため、熱硬化性が劣っていた。一方で、実施例7~9の結果により、比較例1で用いられた成分や、比較例2及び3で用いられた成分を含む場合であっても、重量平均分子量が250~1,000であるバインダー(A-1)を含むものとし、バインダー全体の粘度を2,000mPa・s以下とし、且つ、バインダーの粘度をバインダーの重量平均分子量で割ったときの値を2以下であるため、本発明の効果を奏していた。