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特開2023-82810環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082810
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/06 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
A45D40/06 Z
A45D40/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196760
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000140915
【氏名又は名称】株式会社カツシカ
(72)【発明者】
【氏名】並木 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】ワラヴィット・ダムロンワッタナポキン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】構成部材を全てリサイクル可能な金属単一素材で成形した環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器を提供する。
【解決手段】側壁に螺合突部21を突設した保持筒2と、螺合突部21が貫通して保持筒1を案内するガイド溝311を設け下部側壁に係合凹溝321を周設した身筒3と、内側壁にガイド溝311を貫通した螺合突部21が螺合するラセン溝421を螺設し下部側壁に身筒3の係合凹溝321に係合する内周リブ441を突設したスリーブ4と、を同一の金属素材により成形する。保持筒2の螺合突部21は、円周2か所、対向した位置に設ける。身筒3はラセン溝421より連続して上端に開溝した切割溝314を穿設して先割れ状とし、先端をラッパ状に拡開して成形し、ラセン溝421上方の外周壁に外周リブ315を突設して、装着時、スリーブ4の内面に弾性を有して当接する事により、相対した身筒3とスリーブ4間を、隙間を有した状態で支持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化粧料(1)を保持し外側壁に螺合突部(21,210)を突設した保持筒(2,20)と、該保持筒(2,20)を上下摺動自在に内装し側壁に前記螺合突部(21,210)が貫通して保持筒(2,20)を回動不能に案内するガイド溝(311)を設け下部側壁に係合凹溝(321)を周設した身筒(3)と、該身筒(3)が回動自在に挿入され内側壁に前記ガイド溝(311)を貫通した保持筒(2,20)の螺合突部(21,210)が螺合するラセン溝(402,421)を螺設し下部側壁に前記身筒(3)の係合凹溝(321)に脱落不能に回動自在に係合する内周リブ(441)を突設したスリーブ(4,40)と、が主な構成要素となり、構成要素全てが同一の金属素材により成形した棒状化粧料繰り出し容器に於いて、
前記保持筒(2,20)の螺合突部(21,210)は円周2か所、対向した位置に設け、前記身筒(3)のガイド溝(311)上端より連続して身筒(3)の上端に開溝した切割溝(314)を穿設して先割れ状として、先端をラッパ状に拡開して成形し、ラセン溝(311)上方の外周壁に外周リブ(315)を突設し、前記身筒(3)をスリーブ(4)に装着した時、身筒(3)の外周リブ(315)がスリーブ(4)の内面に弾性を有して当接する事により、相対した身筒(3)とスリーブ(4)間を、クリアランスを有した状態で支持したことを特徴とする環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項2】
前記容器の構成要素全てが、アルミニウムの単一素材で成形されたことを特徴とする請求項1記載の環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅、リップグロス、リップクリームなどの棒状化粧料容器に関し、地球環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器の提供に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、口紅、リップグロス、リップクリームなどの棒状化粧料繰り出し容器に於いて、地球環境に配慮した容器としては、容器を構成する部材を単一の素材で成形し、廃棄時に資源ゴミとしてリサイクルさせる手法が知られている。特にアルミニウム素材は、リサイクル率も高く、リサイクル時のエネルギーが原材料(ボーキサイト)より精製する場合の3%で済むなど、リサイクルの優等生と言われていた。
【0003】
また、口紅、リップグロス、リップクリームなどの棒状化粧料繰り出し容器は、相対回転による螺合作用で棒状化粧料を保持した保持筒を上下摺動させるため、筒状の部材を組み合わせて構成していた。この種の容器は、相対回転時に筒体同士の擦れ合いが発生し、繰り出し操作感に大きな影響を与えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭53-23672号公報(実全昭53-23672)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、特許文献1の様に螺旋筒(4)を回動自在に保持する内筒(2)の外側壁に環状突条(7)を周設する事により、環状突条(7)を螺旋筒(4)の内壁に線接触させていた。この環状突条(7)が螺旋筒(4)に線接触する事によって、内筒(2)と螺旋筒(4)の面同士の擦れ合いを回避でき、繰り出し操作感の悪化を防ぐことができた。しかし、螺旋筒(4)の上下位置を決める内筒(2)の環状突条(8),(9)と、螺旋筒(4)の上下端部の擦れ合いは解消されていなかった。この擦れ合いは、筒体の端面(多くは切断して成形する)が関係した擦れ合いのため、特にザラザラ感が発生しやすく、面取りなどで端面を滑らかにしたとしても、摩耗などにより繰り出し操作感が悪化する可能性があった。
【0006】
更に、全ての構成部材(筒体)を金属で成形しているため、樹脂部材に比較して重く、表面も硬くなっており、容器を振った際などの振動で各部材が当たるカタカタ音が著しく大きくなってしまった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
棒状化粧料1を保持し外側壁に螺合突部21,210を突設した保持筒2,20と、この保持筒2,20を上下摺動自在に内装し側壁に前記螺合突部21,210が貫通して保持筒2,20を回動不能に案内するガイド溝311を設け下部側壁に係合凹溝321を周設した身筒3と、この身筒3が回動自在に挿入され内側壁に前記ガイド溝311を貫通した保持筒2,20の螺合突部21,210が螺合するラセン溝402,421を螺設し下部側壁に前記身筒3の係合凹溝321に脱落不能に回動自在に係合する内周リブ441を突設したスリーブ4,40と、を主な構成要素とする。この棒状化粧料繰り出し容器の構成要素全てを同一の金属素材により成形する。
【0008】
上記構成に於いて、保持筒2,20の螺合突部21,210は、円周2か所、対向した位置に設け、前記身筒3のガイド溝311上端より連続して身筒3の上端に開溝した切割溝314を穿設して先割れ状として、先端をラッパ状に拡開して成形し、ガイド溝311上方の外周壁に外周リブ315を突設する。前記身筒3をスリーブ4,40に装着した時、身筒3の外周リブ315がスリーブ4,40の内面に弾性を有して当接する事により、相対した身筒3とスリーブ4,40間を、クリアランスを有した状態で支持する。
【0009】
本発明の棒状化粧料繰り出し容器の構成要素全てを成形した金属素材は、アルミニウムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上のように、身筒3とスリーブ4,40は、身筒3下部に設けられた係合凹溝33に、スリーブ4,40下部に設けられた内周リブ42が回動自在に係合して、支点となっている。更にこの支点より離れた身筒3上部に設けられた外周リブ36が、スリーブ4,40内面に弾性を有して当接しているため、身筒3に対してのスリーブ4,40のガタツキはない。これにより、金属容器のカタカタ音を発生させる主な要因を解消している。従って、容器を振ったとしても、不快になるようなカタカタ音を発生する事はない。
【0011】
加えて、身筒3の外周リブ36がスリーブ4,40の内面周方向に線接触して、身筒3のガイド溝31部位とスリーブ4,40のラセン溝41部位は接触する事なく支持されている。そのため、相対回転する身筒3とスリーブ4,40間には面接触している部位はなく、金属同士の擦れ合いによる不快な感触は極めて少ない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の正面断面図である。
図2】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の、棒状化粧料繰り出し状態の正面断面図である。
図3図1に於けるA矢視部の部分拡大断面図である。
図4図1に於けるB矢視部の部分拡大断面図である。
図5】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の身筒の部分断面図である。
図6】本発明実施例2の棒状化粧料繰り出し容器の正面断面図である。
【実施例0013】
本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器を図1図4により説明する。本発明の棒状化粧料繰り出し容器は、構造部10と外装体11とより成っている。構造部10は、保持筒2、身筒3、及びスリーブ4より成り、棒状化粧料1を容器より繰り出す繰り出し機構を内装している。外装体11は、キャップ8、中筒7、及びハカマ筒6より成り、外部に露出して、他の商品と差別化するデザインや加飾が施されている。これら全ての部材は、アルミニウムより成形されている。
【0014】
先ず構造部10について説明する。棒状化粧料1を保持する保持筒2は、カップ状をしており、外側壁に螺合突部21を突設している。この螺合突部21は、保持筒2の円周に2か所、対向した位置に設けられている。この保持筒2は、身筒3内に摺動自在に内装している。
【0015】
身筒3の上部は、保持筒2が上下摺動自在に収納される収納部31になっている。この収納部31の側壁には、保持筒2の螺合突部21が貫通して保持筒2を回動不能の状態で上下摺動自在に案内するガイド溝311を軸線と平行に穿設している。このガイド溝311は、螺合突部21に対応した2か所に設けている。このガイド溝311の上端は、向かって左径方向に屈曲した上昇ストッパー312となっており、保持筒2の螺合突部21が係合して保持筒2の上昇限となる。同様に、ガイド溝311の下端には、向かって右径方向に屈曲した下降ストッパー313となっており、保持筒2の螺合突部21が係合して保持筒2の下降限となる。更に、上昇ストッパー312上端よりは、身筒3上端に開溝した切割溝314が設けられ、上昇ストッパー312より上方外側壁(切割溝314周壁)には、外周リブ315を径方向に突設している。
【0016】
この身筒3の収納部31下方には、外径が拡大した拡径部32を設けている。この拡径部32の外側壁には、係合凹溝321及び受け凹溝322を設けている。この拡径部32より下方は、更に外径が拡大して基部33になっている。この身筒3の収納部31及び拡径部32は、スリーブ4内に回動自在に挿入されている。
【0017】
このスリーブ4上端には、棒状化粧料1が出没する出没口41が開口している。スリーブ4の、身筒3の収納部31と相対した内壁には、螺設面42及び当接面43を設けている。この螺設面42は、身筒3のガイド溝311に相対する位置に設けられ、当接面43は、身筒3の外周リブ315に相対する位置に設けられている。この螺設面42及び当接面43は、身筒3の収納部31外径よりも僅かに大径の同一内径をしている。このうち、螺設面42には、身筒3のガイド溝311を貫通した保持筒2の螺合突部21が螺合するラセン溝421を螺設している。また、当接面43には、身筒3の外周リブ315が当接している。
【0018】
このスリーブ4の螺設面42の下方は、身筒3の拡径部32を覆う連結部44になっている。この連結部44は、前記螺設面42より内径が僅かに大径になっており、拡径部32の係合凹溝321に回動自在に脱落不能に係合する内周リブ441を突設している。この内周リブ441は、スリーブ4の外周より内方向に突出させ成形している。その結果、スリーブ4の下端より身筒3の基部33が突出した状態となっている。
【0019】
また、拡径部32の受け凹溝322には、シリコンゴム、エラストマー、NBRなどの弾性材から成るOリング5が嵌っている。このOリング5は、スリーブ4の連結部44内壁に弾性を有して当接しており、相対回転操作時に適度な摺動抵抗を生ずるようになっている。
【0020】
尚、身筒3の収納部31は、ガイド溝311及び切割溝314により先端が2つに割れた形状になっており、この先端部分を広げた状態で成形している。この収納部31の先端(外周リブ315)の広げ幅は、前記スリーブ4の当接面43内径よりも大きくなっている。その結果、身筒3にスリーブ4を組付けた時、身筒3の外周リブ315がスリーブ4の当接面43により窄められ、外周リブ315が当接面43に弾性を有して当接するようになっている。その結果、身筒3とスリーブ4の支点である、身筒3の係合凹溝321とスリーブ4の内周リブ441から離れた、身筒3の外周リブ315がスリーブ4の当接面43に弾性を有して当接して線接触し、ガタツキを吸収すると同時に、身筒3の収納部31とスリーブ4の螺設面42の間は接触する事なくある程度のクリアランスを維持している。
【0021】
この棒状化粧料1を繰り出す際、身筒3とスリーブ4を相対回転操作するのであるが、その繰り出し操作感は、身筒3とスリーブ4の間の擦れ合い、摺動抵抗による。つまり、相対回転する身筒3とスリーブ4間は、には面接触している部位はなく、身筒3の外周リブ315とスリーブ4の当接面43の擦れ合い、及び身筒3の拡径部32とスリーブ4の内周リブ441の擦れ合いによる。そのため、金属同士の擦れ合いによる不快な操作感を最小限にすることができる。更に、身筒3の受け凹溝322に嵌ったOリング5の摺動抵抗により、良好な操作感にすることができる。
【0022】
次に、上記構造部10を装着する外装体11について説明する。ハカマ筒6は、有底筒状をしており、上端より中筒7を挿入止着している。この中筒7は、上端がハカマ筒6上端より突出し、キャップ8が抜脱自在に嵌合する嵌合部71になっている。この中筒7の嵌合部71の上端面には、挿入口72が開口し、構造部10が挿入可能となっている。更に中筒7の下部は、構造部10の身筒3の基部33が止着される止着部73となっている。
【実施例0023】
本発明実施例2を図5により説明する。外装体110のハカマ筒60は実施例1のハカマ筒6と中筒7を一体化したものである。ハカマ筒60は上部にキャップ8が抜脱自在に嵌合する嵌合部601を連設し、ハカマ筒60内に構造部100の止着部602を設けている。更に、構造部100のスリーブ40内面の螺設面401には、保持筒20より突出した螺合突部210の太さよりも溝幅の狭いローレット状ラセン溝402が螺設面401全周に多数条、ローレット状に螺設している。螺合突部210先端の螺合面211には隣り合った複数条のローレット状ラセン溝402が螺合している。これは、保持筒2の螺合突部21の数と、スリーブ4のラセン溝421の条数が一致している実施例1の構成と異なり、螺合突部210の個数とラセン溝402の条数が一致せず、1つの螺合突部210に隣り合った複数条のラセン溝(ローレット状ラセン溝402)が螺合する構成となっている。この場合、螺合突部210とローレット状ラセン溝402の螺合のガタ付きを少なくできる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明実施例に於いて、構造部10,100と外装体11,110を取り外し不能に止着した構成を説明したが、構造部10,100と外装体11,110を取外し可能に止着して必要に応じて着脱できるカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器とすることも可能である。また、身筒3のガイド溝311の上端及び下端に径方向に屈曲した上昇ストッパー312及び下降ストッパー313を設けた構成を説明したが、少なくとも上昇ストッパー312を設ければ本発明は実施可能である。
【0025】
また、実施例1の上昇ストッパー312は、径方向に屈曲したポケット形状をしており、螺合突部21,210が上昇ストッパー312に突入して保持筒2,20の上昇を規制している。この上昇ストッパー312は、螺合突部21,210が当接して保持筒2,20の上昇を規制する構成であれば実施可能である。
【0026】
本発明実施例に於いては、スリーブ4,40の内壁に直接ラセン溝402,421を設けた構成を説明したが、内壁にラセン溝402,421を螺設した筒体をパイプ状のラセン覆い内に止着してスリーブ4,40を構成する事も可能である。その結果、筒体が繰り出し機構部材で、ラセン覆いが外部に露出する外装部材と、機能的に分割できる。この場合、身筒3の外周リブ315が当接する当接面43は、ラセン溝402,421を設けた筒体側に、身筒3の係合凹溝321に係合する内周リブ441はラセン覆いの内側壁に設ける。
【0027】
本発明実施例に於いては、身筒3とスリーブ4,40の間にOリング5を配置して、繰り出し操作感を良好なものに調整している。身筒3の外周リブ315及びスリーブ4,40の内周リブ441による線接触により、不快な金属同士の擦れ合いを極力排除しているので、Oリング5がない状態でも操作感に不快感はない。つまり、商品がコスト重視か品質重視かによって、Oリング5の有無を選択できる。
【0028】
また、本発明実施例として、各部材をアルミニウム単一素材で成形した構成を説明したが、リサイクル可能な鉄、真鍮などの銅合金、及びステンレスなどの金属単一素材であれば実施可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 棒状化粧料
2,20 保持筒
3 身筒
4,40 スリーブ
21,210 螺合突部
311 ガイド溝
314 切割溝
315 外周リブ
321 係合凹溝
402,421 ラセン溝
441 内周リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6