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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082814
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/76 20060101AFI20230608BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20230608BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20230608BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20230608BHJP
   F16J 15/40 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
F16C33/76 Z
F16C33/78 Z
F16C19/18
F16J15/3204 201
F16J15/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196768
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】大岩 尚樹
【テーマコード(参考)】
3J006
3J042
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J006AE12
3J006AE22
3J006AE34
3J006AE39
3J006AE41
3J006AE45
3J006AE49
3J006CA01
3J042AA03
3J042AA09
3J042AA12
3J042AA16
3J042BA05
3J042CA10
3J216AA02
3J216AA03
3J216AA14
3J216AB25
3J216AB26
3J216BA23
3J216BA24
3J216CA01
3J216CA02
3J216CA04
3J216CA05
3J216CB03
3J216CB06
3J216CB12
3J216CB18
3J216CB19
3J216CC18
3J216CC24
3J216CC35
3J216CC39
3J216CC68
3J216CC70
3J216DA01
3J216DA11
3J216DA18
3J701AA02
3J701AA13
3J701AA15
3J701AA33
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701EA02
3J701EA49
3J701FA13
3J701FA46
3J701GA34
3J701GA41
(57)【要約】
【課題】超大形軸受においてシールドの組付け作業を簡単にして組立工数を削減する。
【解決手段】転がり軸受10は、内輪12と外輪11と複数の転動体13、14とシールド50とを備える。内輪12及び外輪11の一方は軸方向の一方に第1側面34aを有し、内輪12及び外輪11の他方は軸方向の一方に第1側面34aより軸方向の一方に位置する第2側面17を有する。シールド50は、第1側面34aに設置され、複数のシールド部材43を複数の遮蔽部材49でつないで全体として環状に配置され、内輪12及び外輪11の他方と径方向で対向している。複数の遮蔽部材49は、シールド部材43のつなぎ部sをまたいで配置され、つなぎ部sの両側でシールド部材43と径方向に重なって組付けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に内側軌道面を有する内輪と、
内周に外側軌道面を有する外輪と、
前記内側軌道面と前記外側軌道面との間に転動可能に配置された複数の転動体と、
異物の侵入を防ぐシールドと、を備え、
前記外輪および前記内輪が中心軸を中心として相対的に回転する転がり軸受であって、
前記内輪及び前記外輪の一方は軸方向の一方に第1側面を有し、
前記内輪及び前記外輪の他方は軸方向の一方に前記第1側面より軸方向の一方に位置する第2側面を有し、
前記シールドは、前記第1側面に設置され、複数のシールド部材を複数の遮蔽部材でつないで全体として前記中心軸を中心とする環状に配置され、前記内輪及び前記外輪の他方と径方向で対向しており、
複数の前記遮蔽部材は、周方向に隣り合う前記シールド部材のつなぎ部をまたいで配置され、前記つなぎ部の両側で前記シールド部材と径方向に重なって組付けられていることを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
前記第1側面は、前記中心軸を中心とする環状で軸方向他方に向けて窪んだ溝を有し、
前記シールド部材は、軸方向に延在する第1延在部と、前記第1延在部の一端とつながり、前記内輪及び前記外輪の他方から離れる向きに径方向に延在する第2延在部と、を有し、
前記遮蔽部材は、軸方向に延在する第3延在部と、前記第3延在部の一端とつながり前記内輪及び前記外輪の他方から離れる向きに径方向に延在する第4延在部と、を有し、
複数の前記シールド部材は、前記第2延在部が前記溝にはめ合わされて、全体として環状に配置され、
前記遮蔽部材は、前記つなぎ部の両側で、前記第1延在部と前記第3延在部とが径方向に重なる向きで組付けられていることを特徴とする請求項1に記載する転がり軸受。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、前記第2延在部より軸方向一方に配置され、前記遮蔽部材の少なくとも一部が前記第2延在部と軸方向に重なる位置で前記内輪及び前記外輪の一方に固定されていることを特徴とする請求項2に記載する転がり軸受。
【請求項4】
前記遮蔽部材と周方向の異なる位置において、少なくとも一部が前記第2延在部と軸方向に重なるように前記内輪及び前記外輪の一方に固定されたシールド固定部材を更に備えたことを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載する転がり軸受。
【請求項5】
前記シールドと前記内輪及び前記外輪の他方とで径方向に挟まれた領域に設置され、前記内輪及び前記外輪の一方に固定されるとともに前記内輪及び前記外輪の他方と摺接して、前記外輪と前記内輪とのすきまを塞ぐゴム製のシール部材を更に備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載する転がり軸受。
【請求項6】
前記シールドと前記内輪及び前記外輪の他方とで径方向に囲まれた空間にグリースが充填され、前記シール部材が前記グリースで覆われていることを特徴とする請求項5に記載する転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受、特に超大形軸受の異物侵入防止に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼設備で溶融した鋼材を搬送するレードルターレットや港湾作業に使用されるスタッカ・リクレーマなどの大型設備では、旋回する部分が、超大形軸受(呼び軸受外径が約800mmを超える軸受:JISB0104-1991)である旋回座軸受で支持されている。このような大形の転がり軸受においても一般産業用の転がり軸受と同様に、長期にわたって円滑な回転を維持するために軸受内部に異物が侵入するのを防止する必要がある。特許文献1に記載されている大形の転がり軸受では、外輪にゴム製のシール部材を固定し、リップの先端を内輪に接触させて、外輪と内輪とのすきまから異物が侵入するのを防止する構成が開示されている。
【0003】
しかしながら、鉄鋼設備で使用される旋回座軸受90では、飛散した高温のスケール等がシール部材を直撃して、ゴムが焼けて穴があく等の不具合が生じるおそれがある。そこで、図11に示すように内輪91の側面から突出して環状に配置されたシールド94を設置するとともに、グリースGでシール部材93の全面を覆うことにより、軸受内部に異物が侵入するのを防止した対策が施される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010-508471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
旋回座軸受90は、呼び軸受外径が4m~5m程度であり、シールド94の周長は10mを超えるので、一体物のシールド94を製作することは極めて困難である。そこで、従来のシールド94は、周方向に分割されており、複数のシールド部材94aを周方向に並べて配置し、全体として環状に組み合わされた形態で設置されている。周方向に隣り合うシールド部材94aは互いに溶接接合されており、シールド部材94aのつなぎ部からシール部材93を覆うグリースGが漏出するのを防止している。
【0006】
しかしながら、各シールド部材94aの周長が必要な寸法に対して短いときは、複数のシールド部材94aを互いに周方向に密接させて組付けると、最初に組付けたシールド部材94aと最後に組付けたシールド部材94aとの周方向のすきまが大きくなって、溶接接合をすることができない場合がある。このため、従来、シールド部材94aの周長を長めに製作して、最後に組付けるシールド部材94aについて周方向の幅を削って、すべてのシールド部材94aが互いに接するように調整する作業を行っている。
このように、超大形軸受では、シールド94を組み付けるときに多くの手間がかかるとともに、特殊作業である溶接の技能を有する人材を必要とするため、転がり軸受の組み立てに多大な工数を必要としている。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明は、軸受内部にスケールなどの異物が侵入するのを防ぐシールドの組付け作業を簡単にして、超大形軸受の組立工数を削減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態は、外周に内側軌道面を有する内輪と、内周に外側軌道面を有する外輪と、前記内側軌道面と前記外側軌道面との間に転動可能に配置された複数の転動体と、異物の侵入を防ぐシールドと、を備え、前記外輪および前記内輪が中心軸を中心として相対的に回転する転がり軸受であって、前記内輪及び前記外輪の一方は軸方向の一方に第1側面を有し、前記内輪及び前記外輪の他方は軸方向の一方に前記第1側面より軸方向の一方に位置する第2側面を有し、前記シールドは、前記第1側面に設置され、複数のシールド部材を複数の遮蔽部材でつないで全体として前記中心軸を中心とする環状に配置され、前記内輪及び前記外輪の他方と径方向で対向しており、複数の前記遮蔽部材は、周方向に隣り合う前記シールド部材のつなぎ部をまたいで配置され、前記つなぎ部の両側で前記シールド部材と径方向に重なって組付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、超大形軸受においてスケールなどの異物の侵入を防ぐシールドの組付作業が簡単になるので、超大形軸受の組立工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態である転がり軸受の軸方向断面の形状を示す断面図である。
図2】単体の第1内輪を第1背面の側から軸方向に見た正面図である。
図3図2のA-Aにおける軸方向断面図である。
図4】保護部材が組込まれた領域を拡大して示す部分断面図である。
図5】単体のシールド部材の形態を示す斜視図である。
図6】遮蔽部材が組付けられた状態を示す部分斜視図である。
図7】第2ねじ穴の位置での軸方向断面図である。
図8】第2実施形態の転がり軸受の軸方向断面図である
図9】第2実施形態の保護部材が組込まれた領域を拡大して示す部分断面図である。
図10】シールド組み込み状態の変形例を示す部分断面図である。
図11】従来の転がり軸受の軸方向断面の形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図を用いて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態である転がり軸受10の軸方向断面の形状を示す断面図である。この転がり軸受10は、連続鋳造設備におけるレードルターレットの回転支持部に使用される旋回座軸受であって、呼び軸受外径が4m~5m程度の超大形軸受である。超大形軸受とは、呼び軸受外径が約800mmを超える軸受をいう(JISB0104-1991)。図1では、レードルターレットの架台98及びアーム99を、それぞれ二点鎖線で模式的に示している。
【0012】
レードルターレットは、転炉で加熱されて溶融した鋼を、鋳型に向けて搬送する装置である。レードルターレットは、固定的に設置された架台98と、鉛直方向の中心軸mを中心として水平面内で旋回するアーム99とを備えており、アーム99の両端に溶鋼を搬送する取鍋(図示を省略する)が組付けられている。アーム99は、転がり軸受10によって支持されており、自在に旋回することができる。
連続鋳造時には、一方の取鍋に転炉から溶鋼が注入された後、アーム99が180度旋回して、中心軸mの反対側に設置された鋳型に向けて溶鋼が搬送される。同時に他方の取鍋が転炉の側に位置して溶鋼が注入される。その後再びアーム99が180度旋回して他方の取鍋の溶鋼が鋳型に向けて搬送される。こうして、二つの取鍋で交互に溶鋼を搬送することによって、転炉の溶鋼が連続的に鋳型に向けて搬送される。
【0013】
転がり軸受10は、環状の外輪11と環状の内輪12とが、転動体である複数の玉13、14を介して、中心軸を共通にして組み合わされており、外輪11と内輪12は、中心軸mを中心として相対的に回転することができる。
以下の説明では、中心軸mと平行となる方向を軸方向、中心軸mと直交する方向を径方向、中心軸mの周りを周回する方向を周方向として説明する。レードルターレットでは、転がり軸受10は、中心軸mを鉛直方向に向けて組み込まれており、鉛直方向の上方を軸方向一方、鉛直方向の下方を軸方向他方という場合がある。
【0014】
図1を参照する。外輪11は、SNCMなどの軸受用合金鋼で製造されている。軸方向両側の側面17、18はそれぞれ中心軸mと直交する向きに形成されていて、互いに平行である。
外輪11の外周には、外歯のギア19が形成されている。ギア19は、電動機のギア(図示を省略する)とかみ合っており、電動機で駆動されて外輪11が周方向に回転するようになっている。
外輪11の内周には、第1外側軌道面21と第2外側軌道面22が、軸方向で互いに逆の方向に向けて並列に形成されている。第1外側軌道面21と第2外側軌道面22はそれぞれ玉13、14が転動する面であって、軸方向断面が円弧形状である。第2外側軌道面22の曲率半径は、第1外側軌道面21の曲率半径より大きい。第1外側軌道面21は、第2外側軌道面22より軸方向一方に形成されている。
第1外側軌道面21は、外輪11の軸方向一方の側面17(第2側面)から軸方向他方に離れた位置に形成されており、第1外側軌道面21と側面17との間にシール摺接面23が形成されている。シール摺接面23は、中心軸mを中心として軸方向に延在する円筒面で、側面17の内周端とつながって軸方向の他方に延在し、第1外側軌道面21の外周端とつながっている。また、第1外側軌道面21の内周端と第2外側軌道面22の内周端は、中心軸mと平行な向きに延在する内周面24でつながっている。
シール摺接面23には、第2シール部材28を保持する第2シール保持溝31が形成されており、外輪11の軸方向他方の側面18には、第3シール部材29を保持する第3シール保持溝32が形成されている。
【0015】
内輪12は、軸方向に分割されており、第1内輪12aと第2内輪12bとが組み合わされた形態となっている。第1内輪12aと第2内輪12bは、それぞれSNCMなどの軸受用炭素鋼で製造されている。
軸方向一方に配置された第1内輪12aについて説明する。第1内輪12aの軸方向一方の第1背面34a(第1側面)と軸方向他方の第1正面35aは、それぞれ中心軸mと直交する向きに形成されており互いに平行である。第1背面34aは第1正面35aより大径である。また、外周面(第1外周面36a)と内周面(第1内周面37a)はいずれも、中心軸mを中心とする円筒面である。
第1外周面36aと第1正面35aとの間に、軸方向断面が円弧形状の第1内側軌道面39aが形成されている。また、第1正面35aと第1内周面37aとがつながる角部に、全周にわたって軸方向に突出する凸部40が形成されている。
【0016】
図2は、単体の第1内輪12aを第1背面34aの側から軸方向に見た正面図で、図3は、図2のA-Aにおける軸方向断面図である。
第1背面34aには第1シール部材27を保持する第1シール保持溝30と、シールド部材43が組み込まれるシールド保持溝46が形成されている。第1シール保持溝30とシールド保持溝46は、それぞれ中心軸mを中心とする環状で、互いに同心に形成されている。シールド保持溝46は、第1シール保持溝30より径方向の内側に形成されている。
第1シール保持溝30は、全周にわたって第1背面34aから軸方向に窪んだ溝で、断面が略矩形形状となっている。シールド保持溝46は、全周にわたって第1背面34aから軸方向に窪んでおり、第1背面34aと平行な溝底面46aと、溝底面46aの径方向外周端と第1背面34aとを軸方向につなぐ外側壁面46bと、溝底面46aの径方向内周端と第1背面34aとを軸方向につなぐ内側壁面46cとで画定される。外側壁面46bと内側壁面46cは、いずれも中心軸mを中心とする円筒面である。
【0017】
第1背面34aには、シールド保持溝46の径方向内側に、1対の雌ねじで形成される第1ねじ穴47が、周方向に等間隔で6組形成されている。また、周方向に隣り合う第1ねじ穴47、47の中央に、第2ねじ穴48が設けられている。第1ねじ穴47と第2ねじ穴48は、それぞれ遮蔽部材49とシールド部材43を固定するために使用される。シールド部材43、遮蔽部材49、及び各ねじ穴の形態及び用途については後述する。
【0018】
図1によって、軸方向他方の第2内輪12bについて説明する。第2内輪12bの軸方向両側の側面は、それぞれ中心軸mと直交する向きに形成されており互いに平行である。軸方向他方の側面である第2背面34bは、軸方向一方の側面である第2正面35bより大径である。また、外周面(第2外周面36b)と内周面(第2内周面37b)はいずれも、中心軸mを中心とする円筒面である。
第2外周面36bと第2正面35bとの間に、軸方向断面が円弧形状の第2内側軌道面39bが形成されている。第2内側軌道面39bの曲率半径は第1内側軌道面39aの曲率半径より大径である。また、第2正面35bと第2内周面37bとがつながる角部に、全周にわたって軸方向に窪んだ凹部41が形成されている。
第1内輪12aと第2内輪12bは、第1正面35aと第2正面35bとが接する向きで凹部41と凸部40とが軸方向にはめ合わされて、中心軸が互いに一致するように組み合わされる。その後、ボルト孔20にボルト(図示を省略)を挿通して、互いに強固に組み合わされる。
【0019】
複数の第1の玉13が第1外側軌道面21と第1内側軌道面39aとの間に周方向に一列に並べて配置されて第1軸受が構成される。また、複数の第2の玉14が第2外側軌道面22と第2内側軌道面39bとの間に周方向に一列に並べて配置されて第2軸受が構成されている。第2の玉14の直径は第1の玉13の直径より大径である。各列の玉13、14の数はそれぞれ概ね200個程度である。
また、各列の玉13、14が互いに直接接触するのを避けるため、周方向で隣り合う玉13、13(又は玉14、14)の間には、鋼又は樹脂で製造されたセパレータ42が組み込まれている。図示を省略するが、セパレータ42は略円筒形状で、その中心軸を隣り合う玉13、13(又は玉14、14)を結ぶ方向に合わせて組み込まれており、玉13、14と接する面がそれぞれ玉13、14の表面と同等の曲率を持った球状の凹面となっている。
【0020】
こうして、外輪11と内輪12とが、中心軸mの周りで相対的に回転することができる。転がり軸受10では、第1軸受の軌道面21、39a及び第2軸受の軌道面22、39bは、中心軸mに対してθだけ傾いて互いに対向しており(図1参照)、第1軸受と第2軸受は、それぞれ軸方向及び径方向に作用する荷重を支持することができる。
転がり軸受10では、外輪11の軸方向一方の側面17は、第1内輪12aの第1背面34aより軸方向一方にずれた位置に配置されている。また、第1内輪12aの第1外周面36aは、外輪11のシール摺接面23とわずかなすきまをもって径方向に対向している。
【0021】
転がり軸受10をレードルターレットに組み付けたときには、図1に示すように、第2内輪12bの第2背面34bがレードルターレットの架台98に搭載され、外輪11にレードルターレットのアーム99が固定される。転がり軸受10は中心軸mを鉛直方向に向けて組み込まれているので、アーム99は水平面内で旋回することができる。
転がり軸受10には、アーム99の重量及び搬送する溶鋼等の重量が鉛直方向下方に向けて作用しており、これらの軸方向荷重は第2軸受で支持されている。また、取鍋に溶鋼が注入、排出等されることにより、レードルターレットのアーム99に偏荷重が作用する。この偏荷重は、第1軸受によって支持されている。
【0022】
次に転がり軸受10の軌道面にスケールなどの異物が侵入するのを防止する保護部材について説明する。図4は、図1において保護部材が組込まれた領域を拡大して示す部分断面図である。保護部材は、第1軸受の第1背面34aに設置された第1シール部材27及びシールド50と、外輪11のシール摺接面23に設置された第2シール部材28とを備えている。
【0023】
第1シール部材27は、ゴム製で、ニトリルブタジエンゴムなどのゴム材を加硫成形して製造されている。第1シール部材27は、軸方向他方に向けて突出する保持部27aと、軸方向上方に延在するに従って径方向外方に傾斜するリップ部27bと、を備えている。第1シール保持溝30の軸方向断面は略矩形形状で、保持部27aの軸方向断面よりわずかに小さくなっている。第1シール部材27は、長手方向に一様な断面を有するひも状に形成されており、始端部より順次保持部27aを第1シール保持溝30に押し込むようにして組みつけられる。全周に組み込まれた後、始端部と重なる位置で切断され、始端部と終端部とを接着して第1シール部材27が組付けられている。
リップ部27bの先端はシール摺接面23に対して所定の弾性力をもって押し付けられており、外輪11と内輪12とのすきまを通って異物が転がり軸受10の内部へ侵入するのを防止している。「内部」とは、外輪11と内輪12とで囲まれた環状の空間で玉13、14が組み込まれている領域をいう。
【0024】
シールド50は、6個のシールド部材43と、6個の遮蔽部材49と、を備えている。第1実施形態の転がり軸受10では、6個のシールド部材43が中心軸mを中心に全体として環状に配置され、周方向で隣り合うシールド部材43のつなぎ部sにそれぞれ遮蔽部材49が1個ずつ組付けられている。
【0025】
図5は、単体のシールド部材43の形態を示す斜視図である。
シールド部材43は、低炭素鋼材を切削加工することによって製造されている。シールド部材43は、互いに略直角につながる第1延在部44と第2延在部45とを有しており、長手方向と直交する向きの断面がL字形状である。断面の形態は、長手方向に一様である。第1延在部44は、径方向から見た形態が矩形の平板であって、長手方向に進むにしたがって板厚の向きに湾曲している。第2延在部45は、第1延在部44の長辺である軸方向他方の端部から曲率中心の側(外輪11から離れる向きである)に延在している。
【0026】
第1延在部44の外周面44aの曲率は、シールド保持溝46の外側壁面46bの曲率と同等である。第2延在部45の径方向の幅寸法w1は、シールド保持溝46の径方向の幅寸法w0よりわずかに小さい寸法となっている。また、第2延在部45の厚さt1(図5参照)は、シールド保持溝46の深さh(図3参照)よりわずかに大きく設定されている。
【0027】
図6は、遮蔽部材49が組付けられた状態を示す部分斜視図である。
遮蔽部材49は、低炭素鋼材を切削加工することによって製造されている。遮蔽部材49は、第3延在部51と第4延在部52とが互いに直交する向きにつながっており、長手方向と直交する向きの断面がL字形状である。
第3延在部51は、径方向から見た形状が矩形であって、外周面51aが、長手方向に進むにしたがって板厚の向きに湾曲している。第3延在部51の外周面51aの曲率は、第1延在部44の内周面44bの曲率と同等であって、遮蔽部材49をシールド部材43の内周面44bと密着させて組み付けができるようになっている。
第4延在部52は、第3延在部51の長辺である軸方向他方の端部から曲率中心の側(外輪11から離れる向きである)に延在している。第4延在部52には、板厚の方向に貫通するボルト挿入孔が2カ所に形成されている。
【0028】
遮蔽部材49は、周方向に隣り合うシールド部材43同士のつなぎ部s(図6参照)を周方向にまたぐ位置で、シールド部材43の第1延在部44と径方向に接触し、かつ、第4延在部52の外周側の軸方向の他方の面が第2延在部45と軸方向に重なるように、第1内輪12aに組付けられる。
【0029】
同様にして、すべてのつなぎ部sに遮蔽部材49を固定すると、6個のシールド部材43が、全体として中心軸mを中心とする環状に保持される。なお、第3延在部51の内周面51bは、外周面51aに沿って湾曲した曲面で形成されてもよく、平面で形成されていてもよい。
【0030】
図4によって、第2シール部材28について説明する。
第2シール部材28は、外輪11のシール摺接面23に設置されている。第2シール部材28は、ゴム製で、第1シール部材27と同様にニトリルブタジエンゴムなどのゴム材を加硫成形して製造されており、径方向外方に突出する保持部28aと、径方向内方に延在するに従って軸方向他方に傾斜するリップ部28bと、を備えている。第2シール部材28は、第1シール部材27と同様にして、保持部28aを第2シール保持溝31に押し込んで外輪11に固定されている。第2シール部材28は、第1シール部材27の軸方向一方で、全周にわたって第1シール部材27のリップ部27bを覆うように配置されており、スケール等が第1シール部材27に向けて直接飛散するのを防止している。
【0031】
シール摺接面23とシールド50とで径方向に挟まれた空間Kに、グリースGが充填されている。グリースGは、シールド50の高さを超えない程度(図4に二点鎖線で示すレベル)まで充填されている。グリースGは、ちょう度265~355程度のもの(例えば、昭和シェル石油製アルバニアEP2や、協同油脂製エマルーブLを例示できる)が好適に使用されるが、転がり軸受10に封入されるグリースと同等のグリースを使用してもよい。
転がり軸受10では、図1に示すように、第1内輪12aにグリース供給通路53が形成されている。グリース供給通路53は、周方向の複数個所に形成されており、それぞれ第1内輪12aの第1内周面37aに開口するとともに、第1シール部材27とシールド50との間で第1背面34aに開口している。これにより、第1内輪12aの内周から空間KにグリースGを供給して、第1シール部材27をグリースGで覆うことができる。注入されたグリースGは、外輪11が回転するのに伴って周方向に均等に分散される。
こうして、第1シール部材27をグリースGで覆うことによって、第1シール部材27のリップ部27bにスケール等が直接飛散するのを防止できる。
【0032】
シールド50の組付手順及び作用効果について説明する。
上記で述べたように、転がり軸受10では、6個のシールド部材43がシールド保持溝46に組付けられて、全体として中心軸を中心とする環状に配置される。
【0033】
転がり軸受10は、更にシールド固定部材54を備えている。図7は、第2ねじ穴48の位置における軸方向断面図で、シールド固定部材54の構成を説明する説明図である。シールド固定部材54は、第2ねじ穴48と螺合するボルト54aと平座金54bとで構成される。シールド部材43をシールド保持溝46に組み付けるときに、シールド固定部材54を使用することにより、シールド部材43の組付作業を更に簡単に行うことができる。
【0034】
ボルト54aの首下には円形の平座金54bがはめあわされている。第2ねじ穴48は、ボルト54aを螺合したときに、平座金54bの外周の少なくとも一部がシールド部材43の第2延在部45と軸方向に重なるように配置されている。第2延在部45の厚さt1が、シールド保持溝46の深さhより大きいので、ボルト54aを締め込むと、第2延在部45が溝底面46aと平座金54bとで軸方向に挟持されて、シールド部材43を第1内輪12aに固定することができる。
【0035】
このように、第2ねじ穴48を使用すると、1本のボルト54aを締め付けるだけでシールド部材43を固定することができるので、複数のシールド部材43をシールド保持溝46に沿って配置する作業を容易にすることができる。例えば、すべてのシールド部材43を取り付けたときにつなぎ部sのすきまの大きさが不揃いであっても、ボルト54aを緩めるだけでシールド部材43の位置を容易にずらせることができるので、すきまの大きさが均等になるように容易に調整することができる。
なお、互いに隣り合うシールド部材43のつなぎ部sの周方向の位置が、第1ねじ穴47の周方向の位置と一致するように組付けられる。
【0036】
シールド部材43をシールド保持溝46に沿って配置した後、図6に示すように遮蔽部材49が組付けられる。遮蔽部材49は、周方向に隣り合うシールド部材43同士のつなぎ部sを周方向にまたぐ位置で、シールド部材43の第1延在部44と径方向に接触し、かつ、第4延在部52の外周側の軸方向の他方の面が第2延在部45と軸方向に重なるように、第1内輪12aに組付けられる。
第2延在部45の厚さt1が、シールド保持溝46の深さhより大きいので、第4延在部52のボルト挿入孔と第1ねじ穴47の位置を合わせてボルト25を締め込むことによって、第2延在部45が遮蔽部材49と溝底面46aとで軸方向に挟持されるので、シールド部材43が第1内輪12aに対して変位不能に保持される。
【0037】
遮蔽部材49を組み付けるときは、シールド部材43に対して径方向外方に押し付けるようにしながら組付けるのが好ましい。こうすることによって、シールド部材43の外周面44aがシールド保持溝46の外側壁面46bに沿って配置されるので、複数のシールド部材43を環状に整列させることができる。更に、シールド部材43の第1延在部44の内周面44bと遮蔽部材49の第3延在部51の外周面51aとが互いに同等の曲率で形成されているので、遮蔽部材49の外周面51aとシールド部材43の内周面44bとが密着するように組み付けることができる。
【0038】
同様にして、すべてのつなぎ部sに遮蔽部材49を固定すると、6個のシールド部材43が、中心軸mを中心とする環状に保持される。
【0039】
遮蔽部材49は、シールド部材43のつなぎ部sを周方向にまたいで組付けられているので、つなぎ部sの周方向の両側で、シールド部材43の第1延在部44と遮蔽部材49の第3延在部51とが径方向に重なって組付けられる。これにより、グリースGが、第1延在部44と第3延在部51との合わせ部を通過しないので、外輪11のシール摺接面23とシールド50との間の空間Kに充填したグリースGがシールド部材43のつなぎ部sを通って流出するのを確実に防止することができる。
【0040】
このように第1実施形態の転がり軸受10では、シールド部材43を溶接接合する必要がないので、つなぎ部sでシールド部材43が互いに接するように組み合わせる必要がない。
従来のように、シールド部材43のつなぎ部sを溶接接合することによって封止する場合には、シールド部材43を周方向で互いに接触するように組み付ける必要がある。仮に、各シールド部材43の長手方向の長さが必要な長さより短いと仮定した場合には、複数のシールド部材43を順次密接させながら組み込むと、最初に組付けたシールド部材43と最後に組付けたシールド部材43との間に大きなすきまが生じるので溶接ができなくなる。これとは逆に、各シールド部材43の長手方向の長さが必要な長さより長いと仮定した場合には、最後に組付けたシールド部材43を削って周方向の長さを調整する作業が必要となる。
【0041】
これに対して、本実施形態のシールド50では、ある程度つなぎ部sのすきまが大きくなっても、遮蔽部材49によって当該すきまを塞ぐことができるので、グリースGの漏れを防止できる。したがって、特殊技能を要する溶接作業が不要になるとともに、シールド部材43の長さのばらつきが許容されるのでシールド50の組付けを簡素化することができる。このため、超大形軸受の組立工数を大幅に削減することができる。
【0042】
以上の説明で理解されるように、本実施形態の転がり軸受10では、内輪12の第1背面34aから軸方向に突出し、中心軸mを中心とする環状に配置されたシールド50を組み込むことによって、鉄鋼設備のような厳しい環境で使用される超大形軸受において、軸受内部への異物の侵入を効果的に抑制することができる。本発明を使用することによりシールド50の組付け作業を簡素化できるので、超大形軸受である転がり軸受10の組立工数を削減することができる。
【0043】
なお、図1に示すように、転がり軸受10では、外輪11の軸方向他方の側面18に第3シール部材29が設置されており、軸方向他方から軸受内部への異物の侵入を防止している。第3シール部材29は、第1シール部材27と同様な構成であり、リップ部が軸方向下方に延在するに従って径方向内方に傾斜している点が異なるに過ぎないので、説明を省略する。
【0044】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図8は、本発明の第2実施形態である第2転がり軸受60の軸方向断面図である。転がり軸受60は、第1実施形態の転がり軸受10と比較して、シールド50を外輪11に設置した点が異なっている。軌道面等の形態は第1実施形態の転がり軸受と同様であるため、共通する構成については同一の名称及び同一の番号を付して簡単に説明し、もしくは省略する。
【0045】
転がり軸受60では、第1実施形態の転がり軸受10と同様に、内輪12は軸方向に分割されており、第1内輪12aと第2内輪12bが一体に組み合わされている。第1内輪12aの第1背面34a(第2側面)は、外輪11の軸方向一方側の側面17(第1側面)より軸方向一方にずれた位置に配置されている。
【0046】
図9は、転がり軸受60について、異物の侵入を防止する保護部材が組込まれた領域を拡大して示す部分断面図である。保護部材は、外輪11の軸方向一方側側面17に設置された第1シール部材27及びシールド50と、第1内輪12aの外周面に設置された第2シール部材28とを備えている。第2シール部材28を保持する第2シール保持溝は、第1内輪12aの外周面68に形成されている。第1シール部材27及び第2シール部材28は、第1実施形態の第1シール部材27及び第2シールに対して、リップの延在する向きが異なるにすぎないので説明を省略する。
【0047】
外輪11の軸方向一方の側面17には、第1シール部材27を保持する第1シール保持溝30と、シールド部材61が組み込まれるシールド保持溝64が形成されている。第1シール保持溝30とシールド保持溝64は、それぞれ中心軸mを中心とする環状で、互いに同心に形成されており、シールド保持溝64は、第1シール保持溝30より径方向の外側に形成されている。
【0048】
第1シール保持溝30は、全周にわたって側面17から軸方向に窪んだ溝で、断面が略矩形形状である。
シールド保持溝64は、全周にわたって側面17から軸方向に窪んでおり、側面17と平行な溝底面64aと、溝底面64aの径方向外周端と側面17とを軸方向につなぐ外側壁面64bと、溝底面64aの径方向内周端と側面17とを軸方向につなぐ内側壁面64cとで画定される。外側壁面64bと内側壁面64cは、いずれも中心軸mを中心とする円筒面である。
また、側面17には、シールド保持溝64の径方向外側に第1ねじ穴47が形成されている。
【0049】
図示を省略するが、シールド50は、第1実施形態と同様にして周方向に環状に配置された複数のシールド部材61と、複数の遮蔽部材65と、を備えている。複数のシールド部材61は、全体として中心軸mを中心とする環状に配置され、周方向で隣り合うシールド部材61のつなぎ部sにそれぞれ遮蔽部材65が1個ずつ組付けられている。
【0050】
シールド部材61は、互いに略直角につながる第1延在部62と第2延在部63とを有しており、長手方向と直交する向きの断面がL字形状である。断面の形態は、長手方向に一様である。第1延在部62は、径方向から見た形態が矩形の平板であって長手方向に進むにしたがって板厚の向きに湾曲している。第2延在部63は、第1延在部62の長辺である軸方向他方の端部から曲率中心と反対の側(第1内輪12aから離れる側)に延在している。
第1延在部62の内周面の曲率は、シールド保持溝64の内側壁面64cの曲率と同等である。また、第2延在部63の幅寸法w1は、シールド保持溝64の径方向の幅寸法w0よりわずかに小さい寸法となっている。これにより、シールド部材61は、第2延在部63をシールド保持溝64に収容して、シールド保持溝64に沿って周方向に並べて設置することができる。
【0051】
遮蔽部材65は、第3延在部66と第4延在部67とが互いに直交する向きにつながっており、長手方向と直交する向きの断面がL字形状である。
第3延在部66は、径方向から見た形状が矩形であって、内周面66bが、長手方向に進むにしたがって板厚の向きに湾曲している。第3延在部66の内周面66bの曲率は、第1延在部62の外周面62aの曲率と同等であって、遮蔽部材65の内周面66bがシールド部材61の外周面62aと密着するようになっている。
第4延在部67は、第3延在部66の長辺である軸方向他方の端部から曲率中心と反対の側(第1内輪12aから離れる側)に延在している。第4延在部67には、板厚の方向に貫通するボルト孔が形成されている。ボルト孔を第1ねじ穴47の位置と合わせてボルト25を締め込むことによって、遮蔽部材65を外輪11に固定することができる。
【0052】
図9に示すように、遮蔽部材65は、シールド部材61をシールド保持溝64に沿って配置した後、第2延在部63と軸方向に重なる位置で外輪11に固定されている。シールド部材61の第2延在部63の厚さt1は、シールド保持溝64の深さhよりわずかに大きく設定されている。このため、ボルト25を締め付けた時に、第2延在部63が遮蔽部材65と溝底面64aとで軸方向に挟持されるので、シールド部材61が第1内輪12aに対して変位不能に保持される。
なお、各第1ねじ穴47の周方向中央に第2ねじ穴48が設けられており(図示を省略)、第1実施形態と同様にして、シールド部材61の周方向の位置を簡単に調整することができる。
【0053】
こうして、第2実施形態の転がり軸受60においても、シールド部材61のすべてのつなぎ部sに遮蔽部材65を固定すると、複数のシールド部材61が外輪11の軸方向一方側側面17から軸方向一方に突出して、中心軸mを中心とする環状に保持される。
【0054】
第1内輪12aの外周面68とシールド50とで径方向に挟まれた空間KにグリースGが充填されている。グリースGは、図9に二点鎖線で示すように、シールド50の高さを超えない程度に充填される。
【0055】
第2実施形態のシールド50においても第1実施形態と同様に、ある程度つなぎ部sのすきまが大きくなっても、遮蔽部材65によって当該すきまを塞ぐことができるので、グリースGの漏れを防止できる。したがって、特殊技能を要する溶接作業が不要になるとともに、シールド部材43の長さのばらつきが許容されるのでシールド50の組付けを簡素化することができる。このため、超大形軸受の組立工数を大幅に削減することにより、超大形軸受である転がり軸受60の組立工数を削減することができる。
【0056】
シールド組み込み状態の変形例として、図10に示すように、第1実施形態と同様にして環状に配置したシールド50を、外輪11に近接して配置することができる。このように配置することにより、外輪11とシールド50との間にラビリンスが形成されて、異物の侵入を防止することができる。
また、図10では、シールド50が転がり軸受の軸方向一方に搭載された例を示しているが、軸方向他方に搭載されていてもよい。図示を省略するが、例えば、第1実施形態の転がり軸受の第3シール部材の位置に搭載することができる。この場合には、シールド50が外輪11の軸方向他方の側面18に搭載されて、第2内輪12bの第2外周面36bとシールド50との間にラビリンスが形成される。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
例えば、上記の実施形態では、転動体が玉であるアンギュラ形の転がり軸受について説明したが、軸受の形式はこれに限定されない。転動体は円筒ころや球面ころであってもよいし、ラジアル軸受やスラスト軸受に適用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
(第1実施形態)10:転がり軸受、11:外輪、12:内輪、12a:第1内輪、12b:第2内輪、13:玉、14:玉、17:側面(外輪一方)、18:側面(外輪他方)、19:ギア、21:第1外側軌道面、22:第2外側軌道面、23:シール摺接面、24:内周面、27:第1シール部材、28:第2シール部材、29:第3シール部材、30:第1シール保持溝、31:第2シール保持溝、32:第3シール保持溝、34a:第1背面、34b:第2背面、35a:第1正面、35b:第2正面、36a:第1外周面、36b:第2外周面、37a:第1内周面、37b:第2内周面、39a:第1内側軌道面、39b:第2内側軌道面、42:セパレータ、43:シールド部材、44:第1延在部、45:第2延在部、46:シールド保持溝、47:第1ねじ穴、48:第2ねじ穴、49:遮蔽部材、50:シールド、51:第3延在部、52:第4延在部、53:グリース供給通路、54:シールド固定部材、54a:ボルト、54b:平座金、
(第2実施形態)60:第2転がり軸受、61:シールド部材、62:第1延在部、63:第2延在部、64:シールド保持溝、65:遮蔽部材、66:第3延在部、67:第4延在部、
(従来技術)90:転がり軸受、91:内輪、92:外輪、93:シール部材、94:シールド、94a:シールド部材、98:架台、99:アーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11