(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082819
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】洗浄剤セット及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 7/18 20060101AFI20230608BHJP
C11D 7/42 20060101ALI20230608BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C11D7/18
C11D7/42
B08B3/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196777
(22)【出願日】2021-12-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000131588
【氏名又は名称】株式会社ショーエイコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】森澤 裕樹
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
【Fターム(参考)】
3B201BB01
3B201BB96
4H003DA06
4H003DA08
4H003DA13
4H003DA17
4H003DA19
4H003DC02
4H003EC03
4H003EE04
4H003EE05
4H003FA12
(57)【要約】
【課題】過酸化水素を含む洗浄処理水に酵素を混合させて良いタイミングや、酵素を混合後の洗浄処理水を用いる洗浄を終えて良いタイミングが分かりやすい、洗浄剤セット及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】水の存在下で過酸化水素を発生させる無機過酸化物および過酸化水素から選ばれた1種以上の化合物である酸化剤と、過酸化水素により酸化され変色する被酸化性色素と、過酸化水素を分解するカタラーゼ活性を有する酵素と、ポリフェノール系色素と、を含み、酸化剤と被酸化性色素と酵素とポリフェノール系色素とが反応しない状態で収容されている洗浄剤セットである。酸化剤と被酸化性色素と水とを混合して調製する洗浄処理水を用いて被洗浄物を洗浄する第一洗浄ステップと、第一洗浄ステップを経た洗浄処理水を用いて過酸化水素をポリフェノール系色素の存在下で酵素により分解しつつ被洗浄物を洗浄する第二洗浄ステップとを含む、洗浄方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の存在下で過酸化水素を発生させる無機過酸化物および過酸化水素から選ばれた1種以上の化合物である酸化剤と、
過酸化水素により酸化され変色する被酸化性色素と、
過酸化水素を酸素および水に分解するカタラーゼ活性を有する酵素と、
ポリフェノール系色素と、を含み、
前記酸化剤と前記被酸化性色素と前記酵素と前記ポリフェノール系色素とが反応しない状態で収容されている、洗浄剤セット。
【請求項2】
水の存在下で過酸化水素を発生させる無機過酸化物および過酸化水素から選ばれた1種以上の化合物である酸化剤と、
ブリリアントブルーFCF、メチレンブルー、ブロモフェノールブルー、エリスロシンB、ニューコクシン、ローズベンガル、及びファストグリーンFCFから選ばれた1種以上の化合物である被酸化性色素と、
過酸化水素を酸素および水に分解するカタラーゼ活性を有する酵素と、
ポリフェノール系色素と、を含み、
前記酸化剤と前記被酸化性色素と前記酵素と前記ポリフェノール系色素とが反応しない状態で収容されている、洗浄剤セット。
【請求項3】
前記酸化剤が過炭酸ナトリウムであり、前記ポリフェノール系色素がタンニンである、請求項1又は請求項2に記載された洗浄剤セット。
【請求項4】
100質量部の前記酸化剤に対して、前記被酸化性色素を5.0×10-4質量部以上0.50質量部以下となる割合で含み、前記ポリフェノール系色素を0.0010質量部以上2.1質量部以下となる割合で含み、
100gの前記酸化剤に対する前記カタラーゼ活性が3,000U以上となる割合の量で前記酵素を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された洗浄剤セット。
【請求項5】
少なくとも前記酸化剤および前記被酸化性色素および水が混合されて調製された洗浄処理水を用いて洗浄した後に、前記洗浄処理水に前記酵素を混合させるタイミングを示す第一の色見本と、
前記洗浄処理水に前記酵素が混合された後に、前記酵素および前記ポリフェノール系色素が混合されている前記洗浄処理水を用いる洗浄を終えるタイミングを示す第二の色見本と、
をさらに含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された洗浄剤セット。
【請求項6】
1.0gの前記ポリフェノール系色素に対する前記カタラーゼ活性が5,500U以上となる割合の量で前記酵素を含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された洗浄剤セット。
【請求項7】
水の存在下で過酸化水素を発生させる無機過酸化物および過酸化水素から選ばれた1種以上の化合物である酸化剤と、過酸化水素により酸化され変色する被酸化性色素と、水とを混合させて調製する洗浄処理水を用いて、被洗浄物を洗浄する第一洗浄ステップと、
前記第一洗浄ステップを経た洗浄処理水を用いて、前記洗浄処理水に含まれる過酸化水素を、ポリフェノール系色素の存在下で酵素により分解しつつ前記被洗浄物を洗浄する第二洗浄ステップと、を含み、
前記酵素は過酸化水素を酸素および水に分解するカタラーゼ活性を有する、洗浄方法。
【請求項8】
水の存在下で過酸化水素を発生させる無機過酸化物および過酸化水素から選ばれた1種以上の化合物である酸化剤と、被酸化性色素と、水とを混合させて調製する洗浄処理水を用いて、被洗浄物を洗浄する第一洗浄ステップと、
前記第一洗浄ステップを経た洗浄処理水を用いて、前記洗浄処理水に含まれる過酸化水素を、ポリフェノール系色素の存在下で酵素により分解しつつ前記被洗浄物を洗浄する第二洗浄ステップと、を含み、
前記被酸化性色素は、ブリリアントブルーFCF、メチレンブルー、ブロモフェノールブルー、エリスロシンB、ニューコクシン、ローズベンガル、及びファストグリーンFCFから選ばれた1種以上の化合物であり、
前記酵素は過酸化水素を酸素および水に分解するカタラーゼ活性を有する、洗浄方法。
【請求項9】
前記洗浄処理水は、調製されたとき、前記第一洗浄ステップで過酸化水素により前記被酸化性色素が酸化され変色したとき、および、前記第二洗浄ステップで前記酵素により過酸化水素が分解される過程で前記ポリフェノール色素が変色したときに、それぞれ異なる色を呈する、請求項7又は請求項8に記載された洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤セット及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、洗濯槽の内側などに付着した汚れを除去できるようにした、洗浄組成物が開示されている。この洗浄組成物は2剤型であり、1剤目は過炭酸ナトリウムを含み、2剤目は酵素の一種であるカタラーゼを含む。使用時には、洗濯槽に満たされた水に1剤目(過炭酸ナトリウム)を混合させると、水に混合された過炭酸ナトリウムから過酸化水素(H2O2)が発生する。洗濯槽の内側では、発生した過酸化水素によって、カビが酸化により殺菌され除去される。また、過酸化水素と共に発生した炭酸ナトリウムにより、洗濯槽の内側で石鹸カスなどの汚物が除去される。その後、過酸化水素を含む洗浄処理水に、2剤目(酵素)が混合される。混合された酵素により、過酸化水素を酸素(O2)と水(H2O)とへ分解する反応が促進され、生じた大量の酸素の泡で洗浄処理水は発泡する。除去され沈殿した汚物は、発泡により水面に浮き上がる。使用者は、網で水面から汚物をすくい取る等により、汚物を取り除くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、使用者(一般消費者)には、水に1剤目を混合後、過酸化水素を含む洗浄処理水を目視したり、洗浄されている途中の被洗浄物を目視したりしても、2剤目(酵素)を混合して良いタイミングが分かりにくいという問題があった。また、洗浄処理水に2剤目を混合し発泡させた後、被洗浄物の洗浄を終えて良いタイミングも分かりにくいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、使用者にとって、過酸化水素を含む洗浄処理水に酵素を混合して良いタイミングや、酵素を混合後の洗浄処理水を用いる洗浄を終えて良いタイミングが分かりやすい、洗浄剤セット及び洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る洗浄剤セットは、水の存在下で過酸化水素を発生させる無機過酸化物および過酸化水素から選ばれた1種以上の化合物である酸化剤と、過酸化水素により酸化され変色する被酸化性色素と、過酸化水素を酸素および水に分解するカタラーゼ活性を有する酵素と、ポリフェノール系色素と、を含み、前記酸化剤と前記被酸化性色素と前記酵素と前記ポリフェノール系色素とが反応しない状態で収容されている、洗浄剤セットである。
斯かる構成によれば、使用者は、酸化剤と被酸化性色素と水とを混合して調製する洗浄処理水を用いて、被洗浄物を洗浄する第一洗浄ステップを行うことができる。水と酸化剤と混合された被酸化性色素は、洗浄処理水中で過酸化水素により酸化されて変色する。その後、使用者は、第一洗浄ステップを経た洗浄処理水を用いて、この洗浄処理水に含まれる過酸化水素を、ポリフェノール系色素の存在下で酵素により分解しつつ被洗浄物を洗浄する第二洗浄ステップを行うことができる。このため、使用者は、過酸化水素による酸化に伴う色素の変色を指標として、第一洗浄ステップを終えて洗浄処理水に酵素を混合させて良いタイミングを判断できる。また、ポリフェノール系色素は、過酸化水素が酵素により分解されるに伴い変色するため、使用者は、ポリフェノール系色素の変色を指標として、第二洗浄ステップを終えて良いタイミングを判断できる。したがって、使用者にとって、過酸化水素を含む洗浄処理水に酵素を混合させて良いタイミングや、酵素を混合後の洗浄処理水を用いる洗浄を終えて良いタイミングが分かりやすい。
【0007】
または、本発明の他の実施形態に係る洗浄剤セットは、水の存在下で過酸化水素を発生させる無機過酸化物および過酸化水素から選ばれた1種以上の化合物である酸化剤と、ブリリアントブルーFCF、メチレンブルー、ブロモフェノールブルー、エリスロシンB、ニューコクシン、ローズベンガル、及びファストグリーンFCFから選ばれた1種以上の化合物である被酸化性色素と、過酸化水素を酸素および水に分解するカタラーゼ活性を有する酵素と、ポリフェノール系色素と、を含み、前記酸化剤と前記被酸化性色素と前記酵素と前記ポリフェノール系色素とが反応しない状態で収容されている、洗浄剤セットである。
斯かる構成によれば、ここで挙げた被酸化性色素は、前述した第一洗浄ステップで過酸化水素により酸化され変色しやすい。このため、使用者にとって、過酸化水素を含む洗浄処理水に酵素を混合させて良いタイミングが更に分かりやすい。その他の点において、ここで挙げた他の実施形態は、前述した一実施形態に係る洗浄剤セットと同様に構成されており、同様の作用効果を奏する。
【0008】
本発明に係る洗浄剤セットでは、前記酸化剤が過炭酸ナトリウムであり、前記ポリフェノール系色素がタンニンであり得る。
斯かる構成によれば、前述した第一洗浄ステップにおいて、水と混合された過炭酸ナトリウムからは、過酸化水素が効率良く発生しやすい。このため、第一洗浄ステップにおいては、過炭酸ナトリウムから発生した過酸化水素により、被洗浄物の洗浄が更に効率良く進みやすい。第二洗浄ステップにおいては、タンニンを含む洗浄処理水の変色が更に分かりやすい。また、タンニンは、前述した第二洗浄ステップにおいて、酵素により過酸化水素が分解されるに伴い変色しやすい。このため、第二洗浄ステップにおいては、タンニンを含んでいる洗浄処理水の変色が分かりやすいため、使用者にとって、酵素を混合後の洗浄処理水を用いる洗浄を終えて良いタイミングが更に分かりやすい。
【0009】
本発明に係る洗浄剤セットは、100質量部の前記酸化剤に対して、前記被酸化性色素を5.0×10-4質量部以上0.50質量部以下となる割合で含み、前記ポリフェノール系色素を0.0010質量部以上2.1質量部以下となる割合で含み、100gの前記酸化剤に対する前記カタラーゼ活性が3,000U以上となる割合の量で前記酵素を含むものであり得る。
斯かる構成によれば、被酸化性色素の含有量が上記の範囲内にあるため、前述した第一洗浄ステップにおいて、過酸化水素により被酸化性色素が酸化され変色したことが分かりやすい。また、ポリフェノール系色素の含有量が上記の範囲内にあるため、前述した第二洗浄ステップにおいて、酵素による過酸化水素の分解が進むに伴い、ポリフェノール系色素が変色したことが分かりやすい。したがって、使用者にとって、過酸化水素を含む洗浄処理水に酵素を混合して良いタイミングや、酵素を混合後の洗浄処理水を用いる洗浄を終えて良いタイミングが更に分かりやすい。
【0010】
本発明に係る洗浄剤セットは、少なくとも前記酸化剤および前記被酸化性色素および水が混合されて調製された洗浄処理水を用いて洗浄した後に、前記洗浄処理水に前記酵素を混合させるタイミングを示す第一の色見本と、前記洗浄処理水に前記酵素が混合された後に、前記酵素および前記ポリフェノール系色素が混合されている前記洗浄処理水を用いる洗浄を終えるタイミングを示す第二の色見本と、をさらに含むものであり得る。
斯かる構成によれば、第一の色見本には、過酸化水素を含む洗浄処理水に酵素を混合させるのに適したタイミングで洗浄処理水が呈する色の見本が示されている。また、第二の色見本には、酵素およびポリフェノール系色素が混合されている洗浄処理水を用いる洗浄を終えるのに適したタイミングで洗浄処理水が呈する色の見本が示されている。このため、使用者にとっては、洗浄処理水と第一の色見本とを見比べたり、洗浄処理水と第二の色見本とを見比べたりすれば、洗浄処理水に酵素を混合して良いタイミングや、洗浄を終えて良いタイミングが更に分かりやすい。
【0011】
本発明に係る洗浄剤セットは、1.0gの前記ポリフェノール系色素に対する前記カタラーゼ活性が5,500U以上となる割合の量で前記酵素を含むものであり得る。斯かる構成によれば、酵素の含有量が上記の範囲内にあるため、前述した第二洗浄ステップにおいて、酵素による過酸化水素の分解が進むに伴い、ポリフェノール系色素が変色したことが更に分かりやすい。したがって、使用者にとって、酵素を混合後の洗浄処理水を用いる洗浄を終えて良いタイミングが更に分かりやすい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る洗浄方法は、水の存在下で過酸化水素を発生させる無機過酸化物および過酸化水素から選ばれた1種以上の化合物である酸化剤と、過酸化水素により酸化され変色する被酸化性色素と、水とを混合させて調製する洗浄処理水を用いて、被洗浄物を洗浄する第一洗浄ステップと、前記第一洗浄ステップを経た洗浄処理水を用いて、前記洗浄処理水に含まれる過酸化水素を、ポリフェノール系色素の存在下で酵素により分解しつつ前記被洗浄物を洗浄する第二洗浄ステップと、を含み、前記酵素は過酸化水素を酸素および水に分解するカタラーゼ活性を有する、洗浄方法である。斯かる構成によれば、過酸化水素による酸化に伴う被酸化性色素の変色を指標として、第一洗浄ステップを終えて洗浄処理水に酵素を混合させて良いタイミングを判断できる。また、酵素による過酸化水素の分解が進むに伴うポリフェノール系色素の変色を指標として、第二洗浄ステップを終えて良いタイミングを判断できる。このため、過酸化水素を含んでいる洗浄処理水に酵素を混合させて良いタイミングや、酵素を混合後の洗浄処理水を用いる洗浄を終えて良いタイミングが分かりやすい。
【0013】
または、本発明の他の実施形態に係る洗浄方法は、水の存在下で過酸化水素を発生させる無機過酸化物および過酸化水素から選ばれた1種以上の化合物である酸化剤と、被酸化性色素と、水とを混合させて調製する洗浄処理水を用いて、被洗浄物を洗浄する第一洗浄ステップと、前記第一洗浄ステップを経た洗浄処理水を用いて、前記洗浄処理水に含まれる過酸化水素を、ポリフェノール系色素の存在下で酵素により分解しつつ前記被洗浄物を洗浄する第二洗浄ステップと、を含み、前記被酸化性色素は、ブリリアントブルーFCF、メチレンブルー、ブロモフェノールブルー、エリスロシンB、ニューコクシン、ローズベンガル、及びファストグリーンFCFから選ばれた1種以上の化合物であり、前記酵素は過酸化水素を酸素および水に分解するカタラーゼ活性を有する、洗浄方法である。斯かる構成によれば、ここで挙げた被酸化性色素は、第一洗浄ステップで過酸化水素により酸化され変色しやすい。このため、使用者にとって、過酸化水素を含む洗浄処理水に酵素を混合させて良いタイミングが更に分かりやすい。その他の点において、ここで挙げた他の実施形態は、前述した一実施形態に係る洗浄方法と同様に構成されており、同様の作用効果を奏する。
【0014】
本発明に係る洗浄方法において、前記洗浄処理水は、調製されたとき、前記第一洗浄ステップで過酸化水素により前記被酸化性色素が酸化され変色したとき、および、前記第二洗浄ステップで前記酵素により過酸化水素が分解される過程で前記ポリフェノール色素が変色したときに、それぞれ異なる色を呈し得る。斯かる構成によれば、この3つのときでそれぞれ洗浄処理水が異なる色を呈するため、使用者は、これら異なる色を指標として、過酸化水素を含む洗浄処理水に酵素を混合して良いタイミングや、酵素を混合後の洗浄処理水を用いる洗浄を終えて良いタイミングが更に分かりやすい。
【発明の効果】
【0015】
以上に説明したように本発明によれば、使用者にとって、過酸化水素を含む洗浄処理水に酵素を混合して良いタイミングや、酵素を混合後の洗浄処理水を用いる洗浄を終えて良いタイミングが分かりやすい、洗浄剤セット及び洗浄方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る洗浄剤セットの第一例を示す構成図。
【
図2】本発明の実施形態に係る洗浄剤セットの第二例を示す構成図。
【
図3】本発明の実施形態に係る洗浄方法の一例を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を用いて、本発明の実施形態を説明する。例えば、
図1に示す一実施形態に係る洗浄剤セット1aは、酸化剤および被酸化性色素を含む第一の洗浄剤2aと、酵素を含む第二の洗浄剤4と、ポリフェノール系色素を含む第三の洗浄剤6と、を備える三剤型である。
【0018】
洗浄剤セット1aで洗浄する被洗浄物は、過酸化水素水溶液である洗浄処理水を接触させることにより洗浄可能なものであれば、本発明の目的に反しない限り特に限定されない。被洗浄物として例えば、風呂釜、洗濯槽、水筒、ヒートポンプ給湯器、食器洗い機、流し台の排水溝、便器、又は排水ピットなどが挙げられる。
【0019】
第一の洗浄剤2aに含まれる酸化剤は、水の存在下で過酸化水素を発生させる無機過酸化物から選ばれた1種以上の化合物である。酸化剤は、取り扱いを容易にする観点では、過ホウ酸塩および過炭酸塩から選ばれた1種以上の無機過酸化物でもよい。酸化剤は、取り扱い容易で析出しにくい観点から、過ホウ酸アルカリ金属塩および過炭酸アルカリ金属塩から選ばれた1種以上の化合物でもよく、過炭酸アルカリ金属塩でもよく、好ましくは過炭酸ナトリウムである。過炭酸ナトリウムは、炭酸ナトリウムと過酸化水素とを2:3のモル比で含む化合物(2Na2CO3・3H2O2)であり、別名で、炭酸ナトリウム過酸化水素付加物、炭酸ナトリウム過酸化水素化物、又は過炭酸ソーダともいわれる。
【0020】
第一の洗浄剤2aに含まれる被酸化性色素は、水と過酸化水素との存在下で、過酸化水素により酸化されると変色する色素であればよい。例えば、染料用の色素および生体に由来する色素のうち、過酸化水素により酸化され変色し得る1種以上の化合物または組成物でもよい。染料用の色素として例えば、アゾ染料、アクリジン、アニリン染料、インダンスレン、エオシン、コンゴーレッド、メチレンブルー、ニュートラルレッド、フェノールフタレイン、フクシン、フルオレセイン、及びモーブ等の化合物または組成物のうちから、過酸化水素により酸化され変色し得るものを選定し用いればよい。生体に由来する色素として例えば、カロチノイド、ポルフィリン、フィコビリン、アントラキニン、インディゴ、アリザリン、アントラキノン、ウロビリン、クルクミン、クロセチン、クロリン、クロロクルオリン、ビキシン、ベルベリン、ラミナラン、リトマス、及びロドプシン等の化合物のうちから、過酸化水素により酸化され変色し得るものを選定し用いればよい。被酸化性色素は、過酸化水素により酸化され変色し得る、タール色素でもよく、安全性に優れる観点から食用タール色素でもよい。食用タール色素として例えば、アマランス(赤色2号)、エリスロシン(赤色3号)、アルラレッドAC(赤色40号)、ニューコクシン(赤色102号)、フロキシン(赤色104号)、ローズベンガル(赤色105号)、アシッドレッド(赤色106号)、ファストグリーンFCF(緑色3号)、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、又はインジゴカルミン(青色2号)等の化合物が挙げられる。被酸化性色素は、安全性に優れ、市場で容易に入手可能で、過酸化水素により酸化されると無色に変色するため洗浄後の被洗浄物にシミを生じさせにくい観点から、ブリリアントブルーFCF、メチレンブルー、ブロモフェノールブルー、エリスロシンB、ニューコクシン、ローズベンガル、及びファストグリーンFCFから選ばれた1種以上の化合物であるのが好ましく、更に好ましくはブリリアントブルーFCF(青色1号)である。
【0021】
第一の洗浄剤2aで酸化剤と被酸化性色素とは、反応しない状態で含まれている。このためには、酸化剤と被酸化性色素とが固形の状態で反応しない性状のものであれば両者が接触し得る状態で固形化された形態でもよく、または、両者が直に接触しないように分離した状態で固形化された形態でもよい。例えば、第一の洗浄剤2aは、無機過酸化物が賦形剤、結合剤、又は滑沢剤などと混合されて押し固められた錠剤と、この錠剤の表面の少なくとも一部に付着した被酸化性色素を含む粉体と、を有する組成物でもよい。吸湿を避ける観点から、第一の洗浄剤2aは、非透湿性の容器3に収容されるのがよい。
図1では、容器3として、第一の洗浄剤2aを分包している合成樹脂製の複数の小袋を示している。本発明の目的に反しない限り、容器3の形態や材質などは特に限定されず、このことは後述する容器5や容器7でも同様である。
【0022】
洗浄剤セット1aを使用する際、水と第一の洗浄剤2aとを混合すると、第一の洗浄剤2aに含まれる酸化剤と被酸化性色素とが水と混合される。水中で酸化剤から過酸化水素が発生するため、被酸化性色素で染色された過酸化水素水溶液、つまり染色された洗浄処理水が調製される。洗浄処理水を被洗浄物に接触させていると、被洗浄物に付着したカビ等の汚れは、洗浄処理水に含まれる過酸化水素により次第に酸化され除去される。洗浄処理水を染色している被酸化性色素は、過酸化水素により酸化されて変色する。このため、被酸化性色素で染色された洗浄処理水は、被洗浄物を洗浄している間、時間経過に伴い変色する。
【0023】
本明細書で変色とは、使用者が染色された水溶液を目視するときに、この水溶液で色の変化を認識可能な程度に変化があればよい。変色は、色の三属性(色相、彩度、及び明度)いずれの変化でもよい。変色には、透明度が高まり無色化することも含まれる。使用者にとって変色したことが更に分かりやすい観点から、変色とは、色覚異常を認められていない健常者が、調製直後の時点で洗浄処理水が呈している色と、この洗浄処理水が調製直後から15分経過した時点で呈している色とを、それぞれ市販の24色のカラーチェッカーと目視で見比べた場合に、調製直後の時点とその15分後の時点とで24色のうち最も近い(最も似ている)と認識可能な色が異なる程度に、色の変化が生じているのが好ましい。ここでのカラーチェッカーとして例えば、株式会社ユナイテッド・カラー・システムズ製の24色のColor Checker(登録商標)が挙げられる。この24色をそれぞれCIE Lab(L*a*b*表色系)で示すと、次の表1のとおりである。変色の判定の際に目視した洗浄処理水の外観が透明である場合は、24色のうち白色に最も近いもの判定とする。
【0024】
【0025】
使用者にとって変色したことが更に分かりやすい観点から、被酸化性色素は、次の判定方法で変色したと判定される色素であるのが好ましい。判定方法として、まず、室温23℃±2℃に保たれた室内において照度200lux±50luxに保たれた白色または黒色のテーブル上で、水温23℃±2℃である1.0Lの蒸留水と、純分で約1.0gの過炭酸ナトリウムと、判定しようとする色素を純分で約1.0mgと、を1.0L容の透明ガラス製ビーカー内で混合することにより、判定用の洗浄処理水を調製する。次に、この洗浄処理水を、その調製直後から1時間経過した時点まで、前述した室内のテーブル上のビーカー内に静置する。このように1時間にわたり静置した後に、色覚異常を認められていない健常者が、洗浄処理水の呈している色を前述した24色のカラーチェッカーと見比べて、調製直後の時点とその1時間後の時点とで24色のうち最も近いと認識可能な色が異なる場合に、洗浄処理水の調製時に使用した色素が「過酸化水素により酸化され変色した」と判定されるものであるのが好ましい。
【0026】
洗浄剤セット1aで酵素は、第二の洗浄剤4に含まれるため、第一の洗浄剤2aに含まれる酸化剤や被酸化性色素とは反応しないように分離されている。また、洗浄剤セット1aの使用時に、酸化剤と被酸化性色素と水とを混合して調製する洗浄処理水は、被酸化性色素で染色されている。この洗浄処理水を用いて、洗浄処理水に含まれる過酸化水素により被洗浄物を洗浄する過程で、被酸化性色素は過酸化水素により酸化され変色する。この被酸化性色素の変色を指標として、酵素は、変色した洗浄処理水に更に混合される。
【0027】
酵素は、過酸化水素を酸素および水に分解する反応を触媒可能な酵素、つまり、カタラーゼ活性を有する酵素であれば、本発明の目的に反しない限り特に限定されない。酵素は、カタラーゼ(EC1.11.1.6)及びペルオキシダーゼ(EC1.11.1.7)から選ばれた1種以上でもよく、好ましくはカタラーゼである。ペルオキシダーゼ(EC1.11.1.7)は、過酸化水素を酸素および水に変える反応を触媒可能であるため、カタラーゼ活性を有する酵素の一種といえる。カタラーゼとして例えば、動物の肝臓、腎臓もしくは赤血球など、植物、または微生物から抽出され精製された市販の食品用または工業用のカタラーゼ製剤を、第二の洗浄剤4としてそのまま転用してもよい。酵素は、洗浄処理水が比較的に高温な場合でも酵素を使用可能な観点では、洗浄処理水の水温が20℃以上70℃以下の範囲内でもカタラーゼ活性を発揮可能な酵素であるのが好ましい。または、例えば室温の洗浄処理水中で酵素を使用可能とする観点では、酵素は、4℃以上40℃以下の範囲内に至適温度を有する酵素でもよい。洗浄処理水中で過酸化水素を効率良く分解可能な観点から、酵素は、pH5.0以上かつpH7.0以下の範囲内に至適pHを有する酵素でもよい。酵素(第二の洗浄剤4)を混合された洗浄処理水は、過酸化水素が分解され生じる酸素の泡で発泡し、沈殿していた汚物を水面に浮き上がらせる。使用者は、網で水面から汚物をすくい取る等して汚物を除去しやすい。
【0028】
第二の洗浄剤4は、変色した洗浄処理水に直ちに混合可能な観点では、酵素を含む液体状でもよい。第二の洗浄剤4は、例えば、液体状であり夾雑酵素としてカタラーゼ活性を有する酵素を含む酵素製剤(例えば副活性としてカタラーゼ活性を有するグルコースオキシダーゼ製剤)を転用したものでもよいが、効率良く洗浄する観点から、市販の液体状であるカタラーゼ製剤を第二の洗浄剤4として転用するのが好ましい。第二の洗浄剤4は、軽量でかさばらない観点では、カタラーゼ活性を有する酵素を含む粉末状、顆粒状、若しくは小塊状の粉体でもよい。第二の洗浄剤4が粉末製剤もしくは顆粒剤である場合、酵素は、酵素活性の発現を阻害しない担体に保持され得る。担体として例えば、デンプン、ショ糖、トレハロース、又はデキストリン等が挙げられる。使用前の変質を避ける観点から、第二の洗浄剤4は、非透湿性の容器5に収容されるのがよい。
【0029】
本明細書でのカタラーゼ活性の値は、以下に説明する滴定法に従う。
<1.滴定法での試薬・試液>
(1)0.05mol/Lリン酸塩緩衝液:次の試液aと試液bとをa:b=3:2となる質量比で混合し、pH7.0に調整する。有効期限3月間。冷蔵保存。
試液a(0.05mol/Lリン酸水素二ナトリウム試液):リン酸水素二ナトリウム12水和物(Na2HPO4・12H2O)35.8gに水を加えて2,000mLとする。
試液b(0.05mol/Lリン酸二水素カリウム試液):リン酸二水素カリウム(無水)(KH2PO4)6.8gに水を加えて、1,000mLとする。
(2)10質量%ヨウ化カリウム溶液:ヨウ化カリウム10gに水を加えて正確に100mLとする。有効期限2週間。室温保存。
(3)リブデン酸アンモニウム試液:七モリブデン酸六アンモニウム四水和物1.00gに水を加えて正確に100mLとする。有効期限3月間。褐色瓶に入れ室温保存。
(4)0.5mol/L硫酸溶液:市販の定量用の0.5mol/L硫酸溶液を準備する。
(5)デンプン試液:90mLの沸騰水に可溶性デンプン1.0gを加え、かき混ぜながら2分から3分ほど煮沸し、室温まで放冷した後、水を加えて正確に100mLとする。有効期限10日間。冷蔵保存。
(6)0.005mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液:市販の定量用の0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液を超純水で20倍希釈する。用事調製。
(7)pH7.0の過酸化水素溶液:pH7.0の0.05mol/Lリン酸緩衝液約160mLに、30質量%過酸化水素を0.21mLから0.24mLの範囲内で量り、pH7.0の0.05mol/Lリン酸緩衝液で正確に200mLとする。用事調製。
<2.滴定法での試料溶液>
カタラーゼ活性を測定しようとする試料を、カタラーゼ活性の測定値が8U/mL以上9U/mL以下の範囲内となるように、pH7.0の0.05mol/Lリン酸緩衝液で希釈して、試料溶液とする。
<3.滴定法での操作方法>
(1)平底試験管(φ約30mm×高さ約120mm)にpH7.0の過酸化水素水溶液を5mL量り取り、30℃に設定可能な恒温槽(例えばADVANTEC LS-306)に入れ、10分間予熱する。このとき、試料溶液も同時に予熱する。
(2)予熱したpH7.0の過酸化水素水溶液に試料溶液1mLを加えて直ちに攪拌し、30℃で正確に5分間、酵素反応(2H2O2→2H2O+O2)させる。ブランクでは、試料溶液の代わりにpH7.0の0.05mol/Lリン酸緩衝液1mLを加え、同様に操作する。
(3)0.5mol/L硫酸2mLを加え攪拌し、酵素反応を停止させた後、直ちに冷水中に放置する。
(4)10質量%ヨウ化カリウム溶液1mL、及びモリブデン酸アンモニウム試液1滴を加え、25mLシリンジ(最小表示0.1mL)を用いて0.005mol/Lチオ硫酸ナトリウムで滴定を開始する。黄色が消失したところで、指示薬としてデンプン試液を2滴から3滴加え、遊離したヨウ素を滴定し、ブランクの滴定値T0及び試料の滴定値TS(mL)を得る。
<4.滴定法でのカタラーゼ活性の算出>
上記操作方法にしたがって測定する際、1分間に1μmolのH2O2を分解する酵素量を1単位(1U)として、次の計算式により試料のカタラーゼ活性を算出する。
カタラーゼ活性(U/mL又はU/g)=(T0-TS)×2.5×f/5/試料濃度(g/mL)
T0 ブランクの滴定値(mL)
TS 試料の滴定値(mL)
2.5 単位換算
5 反応時間(5分間)
【0030】
洗浄剤セット1aでのポリフェノール系色素は、第三の洗浄剤6に含まれるため、第一の洗浄剤2aに含まれる酸化剤や被酸化性色素および第二の洗浄剤4に含まれる酵素とは反応しないように、分離されている。洗浄剤セット1aの使用時に、洗浄処理水に混合されたポリフェノール系色素は、洗浄処理水を染色した後、酵素による過酸化水素の分解が進むに従って次第に変色する。洗浄剤セット1aの使用者にとっては、発泡する洗浄処理水でポリフェノール系色素の変色を指標として、被洗浄物の洗浄を終えて良いタイミングが分かりやすくなる。
【0031】
ポリフェノール系色素は、植物に由来する色素のうち、分子内にフェノール性ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物か又はこの化合物を含む組成物かである。ポリフェノール系色素として、例えば、フラボノイド、アリザリン、アントシアン、カルタミン、ゲニステイン、コチニール、シコニン、タンニン、ヒペリシン、ブラジリン、又はプルプリン等の化合物が挙げられる。酵素を混合した洗浄処理水を用いる洗浄を終えて良いタイミングをより分かりやすくする観点から、ポリフェノール系色素は、フラボノイド及びタンニンから選ばれた1種以上の色素が好ましく、タンニンから選ばれた1種以上の色素が更に好ましい。フラボノイドとして例えば、アントシアニジン、アントシアニン、フラバノン、カテキン、フラボン類、又はフラボノール等が挙げられる。タンニンは、フラバノール骨格を持つ化合物が重合してなる縮合型タンニンと、芳香族化合物および糖がエステル結合してなる加水分解性タンニンとに大別される。ポリフェノール系色素として縮合型タンニンを用いる場合には、同様の観点から、例えばワインに由来するタンニンでもよいが、柿渋(カキタンニン)が更に好ましい。または、ポリフェノール系色素として加水分解型タンニンを用いる場合は、同様の観点から、例えば茶葉に由来するタンニンでもよいが、更に好ましくはタンニン酸である。タンニン酸は、従来から食品加工用の染色剤として用いられており、鉄イオン等の金属イオンとキレートを形成しやすく、酸化還元または加水分解により変色し得る色素の一種である。タンニン酸は、カタラーゼ活性を有する酵素の存在下で洗浄処理水に混合されると、まず緑色を呈するが、洗浄処理水で時間経過に伴って酵素により過酸化水素の分解が進むと、次第に黄色に変色する。使用者にとって、緑色から黄色へ変色した洗浄処理水を目視することで、被洗浄物から洗浄処理水を取り除いて良いタイミングが分かりやすい。
【0032】
第三の洗浄剤6は、洗浄処理水に直ちに混合可能な観点では、ポリフェノール系色素を含む液体状でもよい。第三の洗浄剤6は、軽量でかさばらない観点から、ポリフェノール系色素を含む粉末状、顆粒状、若しくは小塊状の粉体でもよい。使用前の変質を避ける観点から、第三の洗浄剤6は、非透湿性の容器7に収容されるのがよい。第二の洗浄剤4と第三の洗浄剤6とを洗浄処理水に混合する順序は、本発明の目的に反しない限り特に限定されず、例えば、両者を同時に混合してもよく、または、両者の一方を混合した後に残る他方を混合してもよい。例えば、第一の洗浄剤2aに含まれる被酸化性色素よりも、第三の洗浄剤6に含まれるポリフェノール色素の方が変色に長時間を要する場合、被酸化性色素で染色された洗浄処理水が過酸化水素により酸化され変色するよりも前の時点で、この時点での洗浄処理水に第三の洗浄剤6を混合してもよい。
【0033】
被洗浄物がある程度に洗浄されるまで、洗浄処理水が変色したと使用者に認識されないように留めておく観点では、100質量部の酸化剤に対して被酸化性色素が純分で、例えば5.0×10-4質量部以上、好ましくは0.0050質量部以上、更に好ましくは0.010質量部以上、洗浄剤セット1aに含まれるのが望ましい。洗浄処理水の変色に過度な長時間を要しないように抑える観点から、100質量部の酸化剤に対して被酸化性色素が純分で、例えば0.50質量部以下、好ましくは0.20質量部以下、更に好ましくは0.10質量部以下、洗浄剤セット1aに含まれるのが望ましい。
【0034】
洗浄剤セット1aでは、家庭内での取り扱いを容易にする観点と、過酸化水素を効率良く発生させて被洗浄物の洗浄を進める観点と、酵素を混合後の洗浄処理水において変色が分かりやすい観点とから、酸化剤が過炭酸ナトリウムであり且つポリフェノール系色素がタンニンであるのが好ましく、この場合にポリフェノール系色素がタンニン酸であるのが更に好ましい。ここで例示した場合、酵素により過酸化水素がある程度に分解されるまで、酵素を混合後の洗浄処理水が変色したと使用者に認識されないように留めておく観点では、100質量部の酸化剤に対してポリフェノール系色素が純分で、例えば0.0010質量部以上、又は0.010質量部以上でもよく、好ましくは0.050質量部以上、更に好ましくは0.20質量部以上、洗浄剤セット1aに含まれるのが望ましい。ここで例示した場合、変色に過度な長時間を要しないように抑える観点から、100質量部の酸化剤に対してポリフェノール系色素が純分で、例えば2.1質量部以下又は1.7質量部以下でもよく、好ましくは1.0質量部以下、更に好ましくは0.50質量部以下、洗浄剤セット1aに含まれるのが望ましい。
【0035】
沈殿した汚物を酸素の泡により水面に浮き上げやすい観点では、純分100gの酸化剤に対するカタラーゼ活性が、例えば3,000U以上または5,000U以上となる割合の量でもよく、好ましくは10,000U以上、更に好ましくは15,000U以上となる割合の量で、酵素が洗浄剤セット1aに含まれるのが望ましい。酸素の泡が過剰に生じて被洗浄物からあふれ出すのを避ける観点では、純分100gの酸化剤に対するカタラーゼ活性が、例えば500,000U以下又は100,000U以下、好ましくは50,000U以下、更に好ましくは30,000U以下となる割合の量で、酵素が洗浄剤セット1aに含まれるのが望ましい。
【0036】
ポリフェノール系色素(好ましくはタンニン、更に好ましくはタンニン酸)で染色された洗浄処理水の変色に過度な長時間を要しないようにする観点では、純分1.0gのポリフェノール系色素に対するカタラーゼ活性が、例えば2,000U以上または5,500U以上となる割合の量でもよく、好ましくは6,000U以上、更に好ましくは15,000U以上となる割合の量で、酵素が洗浄剤セット1aに含まれるのが望ましい。被洗浄物がある程度に洗浄されるまで、洗浄処理水が変色したと使用者に認識されないように留めておく観点では、純分1.0gのポリフェノール系色素に対するカタラーゼ活性が、例えば50,000,000U以下又は10,000,000U以下、好ましくは2,000,000U以下、更に好ましくは500,000U以下、更により好ましくは100,000U以下となる割合の量で、酵素が洗浄剤セット1aに含まれるのが望ましい。
【0037】
洗浄効果を増強させる観点では、洗浄剤セット1aは既に述べた「酸化剤、被酸化性色素、酵素、及びポリフェノール系色素」に加えて更に、界面活性剤およびキレート剤から選ばれた1種以上を含んでもよい。この場合、界面活性剤および/またはキレート剤は、第一の洗浄剤2a、第二の洗浄剤4、及び第三の洗浄剤6のうち少なくとも1種の洗浄剤に含まれてもよい。あるいは、界面活性剤および/またはキレート剤は、これら3種の洗浄剤(2a、4、6)とは別に、洗浄処理水か又は洗浄処理水を調製するための水かに任意のタイミングで混合する他の剤(図示せず)に含まれてもよい。界面活性剤やキレート剤は、カタラーゼ活性を損ねにくい性状のものがよい。
【0038】
以上に説明した洗浄剤セット1aによれば、使用者は、被酸化性色素で染色されて被洗浄物を洗浄している洗浄処理水を目視すれば、被酸化性色素の変色を指標として、洗浄処理水に酵素を混合して良いタイミングを直感的に把握しやすい。また、ポリフェノール系色素は、洗浄処理水で過酸化水素が酵素により分解されるに伴い変色するため、使用者は、ポリフェノール系色素の変色を指標として、被洗浄物の洗浄を終えて良いタイミングを直感的に把握しやすい。なお、洗浄処理水で過酸化水素の分解が進むに伴いポリフェノール系色素が変色する作用機構は、正確には明らかでないが、酸化剤の一種である過酸化水素の減少に伴い変色するため、ポリフェノール系色素は還元により変色しているものと推定される。
【0039】
図2に示す洗浄剤セット1bは、酸化剤および被酸化性色素およびポリフェノール系色素を含む第一の洗浄剤2bと、酵素を含む第二の洗浄剤4と、を備える二剤型である。
【0040】
第一の洗浄剤2bで、酸化剤と被酸化性色素とポリフェノール系色素とは、反応しない状態で含まれている。この三者が固形の状態で反応しない性状のものであれば三者が接触し得る状態で固形化された形態でもよいし、または、三者が直に接触しないように分離された状態で固形化された形態でもよい。例えば、第一の洗浄剤2bは、無機過酸化物が賦形剤、結合剤、又は滑沢剤などと混合され押し固められた錠剤と、ポリフェノール系色素が同様に賦形剤などと混合され押し固められた錠剤と、これら錠剤の表面の少なくとも一部に付着した被酸化性色素を含む粉体と、を有する組成物でもよい。
【0041】
洗浄剤セット1bの使用時に、被洗浄物に接触させる水に第一の洗浄剤2bを混合すると、まずは酸化剤と被酸化性色素とが水に混合され、被酸化性色素で染色された洗浄処理水が生じる。この際、第一の洗浄剤2bに含まれるポリフェノール系色素は、酸化剤や被酸化性色素と同時に水と混合されてもよいが、ポリフェノール系色素の変色を明確にする観点では、先に酸化剤と被酸化性色素とが水と混合されて洗浄処理水が調製された後、遅れてポリフェノール系色素が洗浄処理水に更に混合されやすいように、第一の洗浄剤2bを設計するのが好ましい。このためにポリフェノール系色素は、例えば、水への溶解度が比較的に低い結合剤や賦形剤に混合され押し固められた形態で第一の洗浄剤2bに含まれてもよい。使用者は、過酸化水素により被酸化性色素が酸化されて洗浄処理水が変色したタイミングで、変色した洗浄処理水に第二の洗浄剤4を混合すればよい。第二の洗浄剤4を混合するタイミングで、洗浄処理水がポリフェノール系色素により発色していても、その後に洗浄処理水で酵素により過酸化水素が分解されるに伴いポリフェノール系色素が変色すればよい。洗浄剤セット1bによれば、
図1を用いて説明した洗浄剤セット1aと比べて、第三の洗浄剤6を要しない分、セットのコンパクト化が可能である。
【0042】
図1や
図2に示す洗浄剤セット(1a、1b)の形態に限らず、酸化剤と被酸化性色素と酵素とポリフェノール系色素とが反応しない状態で収容されていれば、本発明の目的に反しない限り、洗浄剤セットの形態は特に限定されない。例えば、酸化剤と、被酸化性色素と、酵素と、ポリフェノール系色素とが接触しないように、別々に収容されてもよい。このためには図示しないが洗浄剤セットは、酸化剤を含む第一剤と、被酸化性色素を含む第二剤と、酵素を含む第三剤と、ポリフェノール系色素を含む第四剤とを備える四剤型でもよい。この場合の第一剤は液状でもよく、第一剤に含まれる酸化剤は、水の存在下で過酸化水素を発生させる無機過酸化物、及び過酸化水素から選ばれた1種以上の化合物でもよい。例えば、被洗浄物に接触させる水に第一剤(酸化剤)と第二剤(被酸化性色素)とを混合し、被酸化性色素で染色された洗浄処理水が変色した頃に、更に第三剤(酵素)と第四剤(ポリフェノール系色素)とを混合するように使用してもよい。
【0043】
使用者にとって、過酸化水素を含む洗浄処理水に酵素を混合するタイミングが分かりやすい観点から、洗浄剤セット(1a、1b)は、少なくとも酸化剤および被酸化性色素および水が混合されて調製された洗浄処理水を用いて被洗浄物を洗浄した後に、洗浄処理水に酵素を混合させるタイミングを示す第一の色見本を、更に含むものであるのが好ましい。また、使用者にとって、酵素を混合させた後の洗浄処理水を用いて被洗浄物を洗浄することを終えて良いタイミングが分かりやすい観点から、洗浄剤セット(1a、1b)は、洗浄処理水に酵素が混合された後に、酵素およびポリフェノール系色素が混合されている洗浄処理水を用いる洗浄を終えるタイミングを示す第二の色見本を、更に含むものであるのが好ましい。第一の色見本や第二の色見本は、例えば、容器(3、5、7)に印刷された色見本でもよいし、又は、洗浄剤セット(1a、1b)を収容している包装に印刷された色見本でもよいし、又は、洗浄剤セット(1a、1b)と共に包装された説明書に印刷された色見本でもよい。
【0044】
本発明の一実施形態に係る洗浄方法は、
図3に示すように、準備ステップS1と、第一洗浄ステップS2と、第二洗浄ステップS3と、後処理ステップS4とを含み得る。
【0045】
準備ステップS1では、被洗浄物と、酸化剤と、被酸化性色素と、酵素と、ポリフェノール系色素とを準備する。これら準備物の詳細は、洗浄剤セットの説明で既に述べたとおりである。被洗浄物と、
図1又は
図2に示す洗浄剤セット(1a、1b)とを準備するのが好ましい。
【0046】
第一洗浄ステップS2では、酸化剤と被酸化性色素と水とを混合して、被酸化性色素で染色された洗浄処理水を調製し、この洗浄処理水を用いて被洗浄物を洗浄する。酸化剤と被酸化性色素と水とを混合する順序は、本発明の目的に反しない限り特に限定されない。例えば、被洗浄物に接触している水に、酸化剤と被酸化性色素とを混合してもよい。または、酸化剤と被酸化性色素と水とを混合して、調製された洗浄処理水を被洗浄物に接触させてもよい。洗浄処理水の水温やpHが、後で更に混合する酵素の至適温度や至適pHの範囲内に含まれるように、洗浄処理水を調製する際に水量や酸化剤の使用量を調整してもよい。風呂釜を被洗浄物とする場合の第一洗浄ステップS2では、例えば、浴槽の循環口よりも水位が上になるように浴槽に40℃程度の湯を入れた状態で、酸化剤と被酸化性色素(第一の洗浄剤)を循環口の付近に投入し、追い炊きを行ってもよい。洗濯槽を被洗浄物とする場合の第一洗浄ステップS2では、例えば、酸化剤と被酸化性色素(第一の洗浄剤)を槽内に投入した状態で槽内に高水位まで給水し、槽内に設けられたドラムを回転させてもよい。調製された後に被洗浄物を洗浄している洗浄処理水では、被洗浄物に付着しているカビ等が酸化されるだけでなく、被酸化性色素も酸化されるため、洗浄処理水はその調製直後から時間経過に伴って変色する。
【0047】
第二洗浄ステップS3では、先の第一洗浄ステップS2を経た洗浄処理水に含まれる過酸化水素を酵素により分解して発泡させつつ、被洗浄物を洗浄する。洗浄方法の実施者にとって分かりやすい観点から、第一洗浄ステップS2で水や酸化剤と混合された被酸化性色素の変色を指標として、第二洗浄ステップS3を開始するのがよい。このためには、第一洗浄ステップS2で調製した洗浄処理水を用いて被洗浄物を洗浄している間に、この洗浄処理水が変色したら、第二洗浄ステップS3では、変色した洗浄処理水に酵素を混合するのがよい。風呂釜を被洗浄物とする場合、例えば、先の第一洗浄ステップS2で調製した洗浄処理水が風呂釜と浴槽との間を循環している間に変色したら、第二洗浄ステップS3では、浴槽の循環口の付近で、変色した洗浄処理水に酵素(第二の洗浄剤)を混合し、追い炊きを再び行ってもよい。洗濯槽を被洗浄物とする場合、先の第一洗浄ステップS2で調製した洗浄処理水が変色したら、第二洗浄ステップS3では、例えば、洗濯槽内で変色した洗浄処理水に酵素(第二の洗浄剤)を混合し、洗濯槽のドラムを再び回転させてもよい。変色した洗浄処理水に酵素を混合後、生じる酸素の泡で洗浄処理水の水面に浮き上がった汚物は、網ですくい取る等して、被洗浄物や洗浄処理水から取り除くのがよい。
【0048】
第一洗浄ステップS2と第二洗浄ステップS3との少なくとも一方で、洗浄処理水にポリフェノール系色素も混合する。このため、少なくとも第二洗浄ステップS3での洗浄処理水では、ポリフェノール系色素の存在下で、過酸化水素を酵素により分解しつつ被洗浄物が洗浄される。例えば、第二洗浄ステップS3でポリフェノール系色素の一種であるタンニン酸を混合されている場合の洗浄処理水は、タンニン酸により黄色に染色され、酵素により過酸化水素が分解され続けるに伴い、タンニン酸が黄色から橙色へ変色する。このため、洗浄処理水も黄色から橙色へ変色する。
【0049】
後処理ステップS4では、第二洗浄ステップS3を経た洗浄処理水を、被洗浄物から取り除く。例えば、洗浄処理水を、被洗浄物から排水するか又は脱水するかする。洗浄方法の実施者にとって直感的に分かりやすい観点から、ポリフェノール系色素の変色により洗浄処理水が変色したと認識できるタイミングで、第二洗浄ステップS3を終えて後処理ステップS4に移行するのがよい。必要に応じて、洗浄処理水を排水または脱水された被洗浄物を、清浄な水ですすぐのがよい。
【0050】
本発明は、以上に説明した実施形態などに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施することができる。本発明は、同一の作用または効果を生じる範囲内で、いずれかの特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよい。
【実施例0051】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0052】
粉末状の酸化剤として、株式会社ADEKA製の過炭酸ソーダ(PC-3)を準備した。粉末状の被酸化性色素として、ブリリアントブルーFCF(青色1号、純分含有量85質量%)、メチレンブルー(純分含有量98.5質量%)、ブロモフェノールブルー(純分含有量100質量%)、エリスロシンB(赤色3号、純分含有量98質量%)、ニューコクシン(赤色102号、純分含有量85質量%)、ローズベンガル(赤色105号、純分含有量100質量%)、ファストグリーンFCF(緑色3号、純分含有量100質量%)、タートラジン(黄色4号、純分含有量100質量%)、サンセットイエロー(黄色5号、純分含有量85質量%)、及びチモールフタレイン(純分含有量100質量%)の各々について、試薬グレードの市販品を準備した。酵素として、株式会社サービステックジャパンが販売している液体状カタラーゼ製剤である、商品名「カタラーゼ300K」が10倍希釈された「カタラーゼ300K/C-10」を準備した。「カタラーゼ300K/C-10」は、同社から受領した分析書によれば、前述した滴定法で測定したカタラーゼ活性は17,150U/g、酵素反応に適したpHは3.0以上10.0以下(至適pH5.0以上7.0以下)、及び酵素反応に適した温度は20℃以上70℃以下(至適温度30℃以上40℃以下)であった。液体状のポリフェノール系色素として、富士化学工業株式会社製のタンニン酸S(タンニン酸含有量約80質量%)を準備した。また、以下に説明する実験例I乃至IIIは、室温約23℃に保たれた室内で、約23℃に調整した水道水と、多数の透明なガラス製ビーカーとを用いて、照度約200luxに保たれた白色のテーブル上で実施した。
【0053】
以下の実験例I乃至IVでは、洗浄処理水が呈している色の経時的な変化を目視で観察し、洗浄処理水で「三段階以上の変色」を実現できているか否か、次の基準で評価した。
× 使用者が注意して洗浄処理水を観察しても、洗浄処理水で色の変化の程度が小さすぎるため、「洗浄剤から溶出した色素により洗浄処理水で少なくとも三種類の色を呈する色の変化があった」と認識することは不可能であった。
△ 使用者が注意して洗浄処理水を観察すれば、「洗浄剤から溶出した色素により洗浄処理水で少なくとも三種類の色を呈する色の変化があった」と認識できるような色の変化は認められたが、その色の変化が小さいため、24色のColor Checkerと見比べて3種以上の異なる色に変色したと認識することは不可能であった。
〇 洗浄剤から溶出した色素により、24色のColor Checkerと見比べて3種以上の異なる色を呈する変色、つまり「少なくとも三段階の変色」を実現できていると認識できる程度に、洗浄処理水で変色を認めることができたものの、変色した洗浄処理水が呈する色が地味なため、変色したことを若干判断しにくかった。
◎ 洗浄剤から溶出した色素により上記「少なくとも三段階の変色」を実現できていると認識できる程度に、洗浄処理水で明らかな変色を認めることができ、且つ、変色した洗浄処理水が呈する色が鮮やかなため、変色したことを非常に判断しやすかった。
【0054】
[実験例I]
図1に示すような三剤型の洗浄剤セットを試作し、洗浄処理水を用いて被洗浄物を洗浄する過程において、洗浄処理水で三段階以上の変色を実現可能か、検討した。実施例1-1では、100gの過炭酸ソーダと0.050gのブリリアントブルーFCF(純分で0.0425g相当)とを反応しないように含む第一の洗浄剤を調製し、5.0gのカタラーゼ300K/C-10(カタラーゼ活性85,750U相当)をそのまま第二の洗浄剤とし、0.025gのタンニン酸S(タンニン酸の純分約0.020g相当)をそのまま第三の洗浄剤とした。洗浄剤セットの試用に際し、次の4つの時点で、それぞれ洗浄処理水が呈する色を、株式会社ユナイテッド・カラー・システムズ製の24色のColor Checker(登録商標)と目視で比べて、24色のうちで最も似ていると判断した色(最も近いと判断した色)を記録した。実験例Iで4つの時点は、第一の洗浄剤(過炭酸ソーダ、ブリリアントブルーFCF)を水道水に混合して洗浄処理水を調製直後の第1時点と、第1時点から15分後の第2時点と、第2時点後に第二の洗浄剤(カタラーゼ300K/C-10)と第三の洗浄剤(タンニン酸S)とを洗浄処理水に混合した直後の第3時点と、第3時点から15分後の第4時点とである。配合と試験結果とを、次の表2に示す。
【0055】
【0056】
表2に示すように、実施例1-1では、第1時点で調製直後の洗浄処理水がブリリアントブルーFCFで染色され、24色のうちで青空色に似た色を呈した。その15分後の第2時点では、ブリリアントブルーFCFが過酸化水素により酸化されたため、洗浄処理水の青空色は透明(24色のうち最も似ている色は白色)に変色していた。第2時点後に酵素とタンニン酸Sとを混合した第3時点で、洗浄処理水は、タンニン酸により24色のうちで黄に似た色を呈した。第3時点の15分後である第4時点では、カタラーゼによる過酸化水素の分解に伴いタンニン酸が変色したため、洗浄処理水は24色のうちで橙に似た色を呈した。このように実施例1-1では、洗浄処理水で24色のうち「青空色→透明(白色)→黄色→橙色」という異なる色を呈する四段階の変色を実現できたため、酵素やポリフェノール系色素の投与に適した第2時点や、洗浄を終えて良い第4時点が非常に分かりやすかった。第4時点の洗浄処理水が呈した橙色に似た色は、市販のビールを連想させるように鮮やかであり、変色したと判断しやすかった(三段階以上の変色◎)。
【0057】
実施例1-1と比べて、表2に示すようにブリリアントブルーFCFを他種の色素に変更した他は、同様にして実施例1-2乃至1-10の各々に係る洗浄剤セットを試作し、同様に試用して洗浄処理水の変色を評価した。その結果、実施例1-2乃至1-7では、洗浄処理水が4つの時点の各々で24色のうち異なる色を呈する四段階の変色を実現できたため、酵素やポリフェノール系色素の投与に適した第2時点や、洗浄を終えて良い第4時点が非常に分かりやすかった。また、実施例1-1同様に、第4時点で24色のうち橙色に似た色が鮮やかであり、変色したと判断しやすかった(三段階以上の変色◎)。一方、実施例1-8乃至1-10では、注意して目視観察していれば、4つの時点の各々で洗浄処理水の色が変化している様子を目視で認識可能であったから、第2時点に至ったことや第4時点に至ったことは分かったが、色の変化があまり大きくないため、24色のうち最も似ていると判断できる色は同じ色のままである場合があった(三段階以上の変色△)。例えば、実施例1-8では、第1時点から第2時点を越えて第3時点へ至る過程で、注意して観察すれば、洗浄処理水が呈している黄色の明るさや鮮やかさが経時的に少しずつ変化している様子を目視で確認できたが、24色のうち最も似ていると判断できる色は黄色のままであった。
【0058】
[実験例II]
図2に示すような二剤型の洗浄剤セットを試作し、洗浄処理水を用いて被洗浄物を洗浄する過程で、洗浄処理水で三段階の変色を実現可能か、検討した。実施例2-1では、100gの過炭酸ソーダの粉末と、0.050gのブリリアントブルーFCF(純分で0.0425g相当)と、0.025gのタンニン酸S(タンニン酸約0.023g相当)とを反応しないように含む第一の洗浄剤を調製し、5.0gのカタラーゼ300K/C-10(カタラーゼ活性85,750U相当)をそのまま第二の洗浄剤とした。洗浄剤セットの試用に際し、次の3つの時点で、それぞれ洗浄処理水が呈する色について、実験例Iと同様に24色のうち最も似ていると判断した色を記録した。実験例IIで3つの時点とは、第一の洗浄剤(過炭酸ソーダ、ブリリアントブルーFCF、タンニン酸S)を水道水に混合して洗浄処理水を調製直後の第1時点と、第1時点から15分後の第2時点と、第2時点後に第二の洗浄剤(カタラーゼK300/C-10)を洗浄処理水に混合して15分経った第4時点とである。配合と試験結果とを、次の表3に示す。
【0059】
【0060】
表3に示すように、実施例2-1において、第1時点で調製直後の洗浄処理水では、ブリリアントブルーFCFで染色され、24色のうち青空色に似た色を呈した。タンニン酸は水道水に幾らか混ざりにくかったため、第1時点の洗浄処理水では、タンニン酸による黄色の呈色を視認することができなかった。その15分後の第2時点での洗浄処理水は、24色のうち緑に似た色を呈した。第1時点で青空色であったブリリアントブルーFCFは、時間経過と共に過酸化水素で酸化されて次第に透明(白色)へ変色して行くが、十分に透明(白色)へ変色しきれていない時点で、黄色のタンニン酸が洗浄処理水に混合されることにより、第2時点の洗浄処理水では青空色と黄色とが混ざって緑色を呈したのであろうと考えられる。第2時点後に酵素を混合して15分経った第4時点で、洗浄処理水は、市販のビールのように鮮やかな、24色のうちで橙に似た色を呈した。第2時点から第4時点へ至る過程で、ブリリアントブルーFCFが十分に透明(白色)へ変色した後、黄色のタンニン酸が酵素による過酸化水素の分解に伴い、橙色へ変色したものと考えられる。このように実施例2-1では、洗浄処理水で24色のうち「青空色→緑色→橙色」という異なる色を呈する三段階の変色が実現されたため、酵素の投与に適した第2時点や、洗浄を終えて良い第4時点が非常に分かりやすかった(三段階以上の変色◎)。
【0061】
実施例2-1と比べて、表3に示したようにブリリアントブルーFCFを他種の被酸化性色素に変更した他は、同様にして実施例2-2乃至2-10の各々に係る洗浄剤セットを試作し、同様に試用して洗浄処理水の変色を評価した。実施例2-2乃至2-7では、洗浄処理水が3つの時点の各々で24色のうち異なる色を呈する三段階の変色を実現でき、第2時点や第4時点に至ったことが非常に分かりやすかった(三段階以上の変色◎)。一方、実施例2-8乃至2-10では、第1時点から第2時点へ至る過程で、注意して目視観察すれば、洗浄処理水が呈している色の明るさや鮮やかさが経時的に少しずつ変化している様子を目視で認識できたが、色の変化の程度があまり大きくないため、24色のうちで最も似ていると判断できる色が同じ色のままであった(三段階の変色△)。
【0062】
[実験例III]
前述した実施例2-1と比べて、カタラーゼやタンニン酸の配合量を変更しても、洗浄処理水を用いて被洗浄物を洗浄する過程において、洗浄処理水で三段階の変色を実現可能か、検討した。次の表4に示す配合で洗浄剤セットを調製した他は、前述した実施例2-1と同様にして、二剤型の洗浄剤セットを試作し、3つの時点で洗浄処理水が呈する色を評価した。
【0063】
【0064】
実施例3-9の洗浄処理水では、注意して目視観察すれば、3つの時点の各々で色が変化している様子を目視で認識できたため、第2時点に至ったことが分かり、第4時点に至ったことも分かったものの、表4に示すように第2時点から第4時点へ至る過程で色の変化の程度が小さく、24色のうち最も近い色は「暗い肌色」のままであった(三段階以上の変色△)。実施例3-6及び3-7での洗浄処理水は、3つの時点の各々で24色のうち異なる色を呈する三段階の変色を実現できたため、注意しなくても、第2時点に至ったことや第4時点に至ったことが目視で分かりやすかった。ただし、第4時点での洗浄処理水の色合いが、「暗い肌色」というよりも正確には一般的な汚水を連想させる色合いであったから、第4時点に至った指標として地味であった。このため、「三段階以上の変色」の評価が〇に留まった。原因として、実施例3-6、3-7、及び3-9で「純分1.0gのポリフェノール系色素(タンニン酸)に対するカタラーゼ活性」が15,000U未満の低値であるため、第2時点から第4時点へ至る過程で、カタラーゼ活性がタンニン酸の変色に及ぼす影響が小さかったものと考えられる。つまり、カタラーゼ活性の強さが十分でなく、洗浄処理水に含まれるタンニン酸が第4時点でまだ十分に橙色へ変色しきれていないため、橙色の発色が足りず、第4時点で洗浄処理水が一般的な汚水のような色合いを呈したものと考えられる。
【0065】
一方、実施例3-1乃至3-5と3-8とでの洗浄処理水は、3つの時点で、24色のうち異なる色を呈する三段階の変色を実現できていたため、注意しなくても第2時点に至ったことや第4時点に至ったことが非常に分かりやすかった。つまり、第4時点の洗浄処理水が、一般的な汚水であり得ない橙色を呈したため、第4時点に至った指標として鮮やかな橙色が強く印象に残った(三段階以上の変色◎)。実施例3-1乃至3-5と3-8とでは、「純分1.0gのポリフェノール系色素(タンニン酸)に対するカタラーゼ活性」がある15,000U以上の高値であるから、第2時点から第4時点へ至る過程でカタラーゼ活性がタンニン酸の変色に及ぼす影響が大きいため、洗浄処理水に含まれるタンニン酸が第4時点で十分に橙色に変色しており、その結果、第4時点で洗浄処理水が鮮やかな橙色を呈したものと考えられる。
【0066】
[実験例IV]
洗浄剤セットを用いて、汚れた風呂釜を洗浄する実験を行った。このために、表3で前述した実施例2-1と比べて、次の表5に示す配合に変更した他は同様にして、実施例4-1、実施例4-2、及び比較例4-3に係る洗浄剤セットを調製した。被洗浄物として、家庭用の浴槽に付属している、内部が汚れた風呂釜を3つ準備した。各々の風呂釜は、浴槽内の循環口に取り付けられた配管を介して、浴槽と連通していた。各々の浴槽は、その内法が短辺120cm前後×長辺160cm前後であり、内容積は220L程度であった。
【0067】
【0068】
浴槽内で、循環口よりも水位が上になるように約40℃の湯を給水し、実施例4-1に係る第一の洗浄剤(過炭酸ソーダ、ブリリアントブルーFCF、及びタンニン酸S)を循環口の付近で湯に投与することにより、24色のうち青空色に近い色を呈する洗浄処理水を調製した。洗浄処理水の調製直後(第1時点)から追い炊きを行い、洗浄処理水を風呂釜内と浴槽内とで循環させ続けた。実施例4-1で青空色の洗浄処理水は、第1時点から約20分経過時に、24色のうち緑に近い色へ変色したため、第2時点に達したと判断して、循環口の付近で洗浄処理水に第二の洗浄剤(カタラーゼ300K/C-10)を投入した。第二の洗浄剤の投入直後(第3時点)から再び追い炊きを行って、発泡している洗浄処理水を風呂釜内と浴槽内とで循環させ続けた。第3時点から約15分経過時に、緑色の洗浄処理水が、24色のうち橙に近い鮮やかな色へ変色し、風呂釜の洗浄を終えて良い第4時点に達したことが直ぐに分かったため、洗浄処理水を浴槽から排水した。このように実施例4-1に係る洗浄剤セットを用いて洗浄する場合、洗浄処理水の変色が非常に分かりやすく、(三段階以上の変色◎)、風呂釜を合計約35分間で効率良く洗浄することができた。
【0069】
上記した実施例4-1同様にして、実施例4-2に係る洗浄剤セットを用いて、風呂釜を洗浄した。24色のうち青空色に近い色の洗浄処理水が調製された直後(第1時点)から、追い炊きを行い続けたところ、実施例4-2で調製された洗浄処理水は、次第に、24色のうち暗い肌色に近い色へ変化した。第1時点から約12分後、洗浄処理水が暗い肌色に近い色を十分に呈したため、第2時点に達したと判断し、第二の洗浄剤(カタラーゼ300K/C-10)を投入した。第二の洗浄剤を投入した直後(第3時点)から約10分経過時に、洗浄処理水は24色のうち暗い肌色に近い色のままであったが、注意して観察すると、第2時点と比べれば少し橙色に近い色に変化していたため、第4時点に達したと判断し、洗浄処理水を浴槽から排水した。このように実施例4-2では、洗浄処理水の色の変化に基づいて風呂釜を合計約22分間で洗浄することは可能であったものの、前述した実施例4-1と比べて、洗浄処理水で色の変化が小さくて且つ変化後の色が地味であったため、色の変化が若干分かりにくく、洗浄を終えるタイミングが早くなった(三段階以上の変色△)。
【0070】
実施例4-1と同様にして、比較例4-3に係る洗浄剤セットを用いて風呂釜を洗浄しようと試みた。実施例4-1では、第一の洗浄剤(過炭酸ソーダ、及びブリリアントブルーFCF)投与により24色のうち青空色に近い色の洗浄処理水が調製され(第1時点)、その約20分後に青空色が24色のうち透明(白色)に近い色へ変色したため、第2時点に達したと判断して第二の洗浄剤(カタラーゼ300K/C-10)を投与することはできた。しかし、その後、発泡している洗浄処理水では、汚物で少しずつ灰色が濃くなる他に目立った色の変化はなかったため、洗浄処理水を注意深く観察し続けていても、洗浄を終えて良い第4時点に達したタイミングが全く分からなかった(洗浄剤から溶出した色素による三段階以上の変色×)。このため、風呂釜の洗浄を中止した。