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特開2023-82828設備情報検索システム、設備情報検索方法、および制御性能診断システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082828
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】設備情報検索システム、設備情報検索方法、および制御性能診断システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230608BHJP
   G06F 16/242 20190101ALI20230608BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
G06F16/242
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196790
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 嘉成
【テーマコード(参考)】
3C223
5B175
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EA07
3C223EB02
3C223FF03
3C223FF25
3C223FF42
3C223GG01
3C223HH13
5B175DA10
5B175HA01
5B175HB03
(57)【要約】
【課題】検索事例の特性に応じて適切な検索条件を設定できる設備情報検索システムおよび設備情報検索方法を提供する。
【解決手段】本発明の対象事例1の設備に類似する設備を検索する設備情報検索システムは、設備情報と各種の評価指標の関係を示す情報である評価指標関係データ2の記憶部と、対象事例の設備の評価指標に対して評価指標が所定範囲になる設備情報を評価指標関係データから検索条件として求める検索条件作成部3と、検索条件に基づいて設備情報DB6から対象事例に類似する設備を検索する検索部5と、を備えるようにした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象事例の設備に類似する設備を検索する設備情報検索システムであって、
設備情報と各種の評価指標の関係を示す情報である評価指標関係データの記憶部と、
対象事例の設備の評価指標に対して評価指標が所定範囲になる設備情報を前記評価指標関係データから検索条件として求める検索条件作成部と、
前記検索条件に基づいて設備情報DBから対象事例に類似する設備を検索する検索部と、
を備えることを特徴とする設備情報検索システム。
【請求項2】
請求項1に記載の設備情報検索システムにおいて、
前記検索条件作成部は、
前記対象事例の設備情報から評価指標を求め、
前記対象事例の評価指標と同程度とみなせる評価指標の範囲を決め、
前記評価指標関係データに基づいて、前記評価指標の範囲に対応する設備情報の範囲を求めて検索条件とする
ことを特徴とする設備情報検索システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の設備情報検索システムにおいて、さらに、
前記検索部が検索した設備に関する評価指標関係データを更新する評価指標更新部
を備えることを特徴とする設備情報検索システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の設備情報検索システムにおいて、
前記評価指標は、配管の内部流体の温度の設備情報に関係する配管の減肉速度である
ことを特徴とする設備情報検索システム。
【請求項5】
請求項1に記載の設備情報検索システムにおいて、
前記評価指標関係データは故障リスクを評価指標として設備情報と故障リスクの関係を示し、
前記検索条件作成部は、故障リスクを有する対象事例の設備の故障リスクに対して故障リスクが同程度になる設備情報を前記評価指標関係データから検索条件として求め、
前記検索部は、前記設備情報DBから対象事例と同程度の故障リスクを有する設備を検索する
ことを特徴とする設備情報検索システム。
【請求項6】
対象事例の設備に類似する設備を検索する設備情報検索方法であって、
設備情報と各種の評価指標の関係を示す情報を評価指標関係データに記憶し、
前記評価指標関係データから対象事例の設備の評価指標に対して評価指標が所定範囲になる設備情報を検索条件として求め、
前記検索条件に基づいて設備情報DBから対象事例に類似する設備を検索する
ことを特徴とする設備情報検索方法。
【請求項7】
対象となる設備の制御性能を評価する制御性能診断システムであって、
設備の制御ループに関係する特性を設備の運転データから求めて設備情報DBに格納するシステム特性評価部と、
前記設備の制御に関する特性と設備の制御性能を示す評価指標との関係を示す評価指標関係データの記憶部と、
前記対象となる設備の制御性能と同程度の制御性能となる制御に関する特性を前記評価指標関係データから求めて検索条件とし、設備情報DBから前記検索条件に基づいて設備の制御ループを検索し、前記対象となる設備の制御性能と検索した設備の制御性能を比較する制御性能比較部と、
を備えることを特徴とする制御性能診断システム。
【請求項8】
請求項7に記載の制御性能診断システムにおいて、
前記システム特性評価部は、前記対象となる設備の制御ループの時定数と外乱を運転データから求めて設備情報DBに格納し、
前記評価指標関係データは、制御ループの整定時間と減衰特性とに基づく制御性能の評価指標と、制御ループの時定数または外乱との関係を示し、
前記制御性能比較部は、
前記対象となる設備の前記制御性能の評価指標と同程度の制御性能の評価指標となる制御ループの時定数または外乱を前記評価指標関係データから求めて検索条件とし、
設備情報DBから前記検索条件に基づいて設備の制御ループを検索し、
検索した制御ループの制御性能の頻度分布における前記対象となる設備の制御ループの位置を示す
ことを特徴とする制御性能診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備情報検索システムおよび設備情報検索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラントや工場等の設備(アセットとも呼ぶ)の老朽化が進む中で、設備の運用・保守のよりいっそうの効率化が求められている。
設備の運用・保守を効率化するには、他の設備で得られた運用・保守のノウハウを活用することが求められる。例えば、化学プラントの設備で異常が発生した場合、類似の運用条件、設備条件を持つ箇所等の事例を特定し、検査・対策を横展開することで効率的な保守が実現できる。
【0003】
類似の事例を効率よく検索する技術としては、例えば、特許文献1や特許文献2に開示される技術がある。
特許文献1には、拡張品詞定義辞書を活用し、類似性の高いテキストを抽出し、表示することで効率よく情報を検索することが記載されている。また、特許文献2には、過去に開発したプログラムを効率よく検索するため、実行意図と設計意図の分布を活用して類似のプログラムを検索することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4940267号公報
【特許文献2】特許第6150059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の先行技術によれば、単純な検索手法に比べて効率よく情報を検索することができる。しかしながら、類似の事例を検索する場合に、類似する事例とみなせる条件を決定することが難しいケースがある。
【0006】
例えば、配管腐食の事例の場合、運用条件の1つとして配管の内部を流れる流体の温度を用いるが、温度帯によって腐食速度に与える影響が異なることが知られている。
図1は、この問題を模式的に示した図である。図1では、温度がAの領域では、温度の変化が腐食速度の変化に与える影響は小さく、Bの領域では、温度の変化が腐食速度の変化に与える影響が大きい。このため、検索条件として同じ温度範囲を設定した場合、Aの領域では範囲を過少評価し、類似事例として検索できない可能性がある。逆に、Bの領域では、同一とみなせない条件も合わせて検索してしまう可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、検索事例の特性に応じて適切な検索条件を設定できる設備情報検索システムおよび設備情報検索方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の設備情報検索システムは、対象事例の設備に類似する設備を検索する設備情報検索システムであって、設備情報と各種の評価指標の関係を示す情報である評価指標関係データの記憶部と、対象事例の設備の評価指標に対して評価指標が所定範囲になる設備情報を前記評価指標関係データから検索条件として求める検索条件作成部と、前記検索条件に基づいて設備情報DBから対象事例に類似する設備を検索する検索部と、を備えるようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検索事例の特性に応じて適切な検索条件を設定できるため、効率的な事例検索ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】温度帯によって腐食速度に与える影響が異なることの模式図である。
図2】実施形態の設備情報検索システムの構成図である。
図3】配管減肉を例とした対象事例を示す図である。
図4A】温度と減肉速度の評価指標関係データを曲線表示した一例の図である。
図4B】温度と減肉速度の評価指標関係データをプロットした一例の図である。
図4C】温度と減肉速度の評価指標関係データを曲線表示した他例の図である。
図5】検索条件作成部の処理フローを説明するための評価指標関係データの図である。
図6】検索条件作成部の検索条件を作成する処理フロー図である。
図7】検索条件作成部の処理フローを説明するための他の評価指標関係データの図である。
図8】設備情報DBの一例を示す図である。
図9】他の実施形態の設備情報検索システムの構成図である。
図10A】評価指標関係データの一例を示す図である。
図10B】評価指標関係データの他例を示す図である。
図11】実施形態の制御性能診断システムの構成図である。
図12】本実施形態における設備情報DBの構成を示す図である。
図13】制御量の時間変化を示した図である。
図14A】評価指標で示される制御性能と外乱の関係を示す評価指標関係データの図である。
図14B】評価指標で示される制御性能と時定数の関係を示す評価指標関係データの図である。
図15】制御性能比較部の評価結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の設備情報検索システムを、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例0012】
図2は、本実施形態の設備情報検索システムの構成図である。
設備情報検索システムは、評価指標関係データ2の記憶部、検索条件作成部3、検索部5、設備情報DB6の記憶部とから構成される。
【0013】
検索条件作成部3は類似事例を検索する元になる対象事例1が入力され、設備情報(検索条件)と各種の評価指標の関係を表した情報である評価指標関係データ2を用いて、検索条件に対する評価指標の感度などに基づいて具体的な検索条件4を作成する。即ち、評価指標が所定範囲になる設備情報を評価指標関係データから検索条件として求める。
【0014】
検索部5は、検索条件作成部3で作成した検索条件4に基づいて、設備の各部位の名称やその部位での運用条件を保存する設備情報DB6を検索し、設備の部位や名称を検索結果7として運用条件とともに出力する。
【0015】
以下に、プラントの配管減肉(腐食)を対象事例とし類似する配管を検索する場合について、より具体的に本実施形態の設備情報検索システムを説明する。プラントの配管は本数が多く、点検の工数も大きい。したがって、本実施形態に従い、配管の減肉が進んだ事例から類似事例を検索することで、効率よく点検を実施することができる。
【0016】
図3は、配管減肉を例とした対象事例1を示す図である。
対象事例1は、配管の番号と内部流体の種類、外径、肉厚、材質、流速などの設備情報が示され、点検により腐食が進んでいたことが判った例である。本実施形態では、この対象事例と同様の腐食状態の配管を検索する。
【0017】
図4A図4B図4Cは、評価指標関係データ2の一例を示す図であり、配管の内部流体が水の場合における温度(設備情報)と減肉速度(評価指標)の関係を示している。
図4Aは、流速が1.5m/sにおける温度と減肉速度の評価指標関係データ21を示し、図4Bは、流速が2.5m/sにおける温度と減肉速度の評価指標関係データ22を示し、図4Cは、流速が3.5m/sにおける温度と減肉速度の評価指標関係データ23を示している。
【0018】
いずれも、配管の設備情報である温度と腐食速度の関係を示したグラフであるが、温度に対する腐食速度の特性はそれぞれで異なっている。
また、腐食速度と温度の関係は、図4A図4Cのように、曲線で示されていてもよいし、図4Bのように、点がプロットされる離散的な関係であってもよい。
【0019】
検索条件作成部3は、図4A図4B図4Cに示した評価指標関係データ2(評価指標関係データ21、22、23)を用いて、対象事例1の条件近傍での検索条件に対する評価指標の感度から、「温度範囲が60度から65度」のような具体的な検索条件4を作成する。
【0020】
次に、検索条件作成部3の検索条件4を作成する処理フローを、図6により説明する。
なお、図6では、図5に示す横軸を条件、縦軸を評価指標した一般化した評価指標関係データ2により、検索条件作成部3の処理フローを説明する。図4A図4B図4Cの減肉速度と温度が、図5の評価指標と条件に対応する。
【0021】
ステップS31で、検索条件作成部3は、最初に、対象事例の条件C0から、評価指標関係データ2におけるその時の評価指標E0を求める。
【0022】
次に、ステップS32で、検索条件作成部3は、評価指標関係データ2において評価指標Eが同程度とみなせる範囲E0±ΔEを決定する。即ち、対象事例の評価指標と同じとみなせる評価指標の範囲を決める。ここで、ΔEは評価指標に応じて決めるもので、例えば、評価指標E0の10%の値とすればよい。
【0023】
ステップS33で、検索条件作成部3は、評価指標関係データ2の曲線より評価指標EがE0±ΔEのレンジに含まれる条件Cの値の範囲を求める。即ち、評価指標関係データに基づいて、評価指標の範囲に対応する設備情報の範囲を求めて検索条件とする。
以上から、検索条件作成部3は、条件Cの値の範囲がC1~C2を検索条件4として作成する。
【0024】
なお、評価指標関係データ2が図7に示す複雑な場合には、検索条件作成部3は、同様の処理を行い、条件Cの値の範囲がC1~C2とC3~C4を検索条件4として作成する。
【0025】
上記の例は、評価指標Eが同程度となる場合の検索条件の求め方であるが、対象事例によっては、評価指標Eが同程度以上のもの、または同程度以下のものを検索条件としたい場合もある。その場合は、ステップS32で、範囲E0-ΔE以上、または範囲E0+ΔE以下とする。図5の例では、同程度以上の条件を求める場合には、条件Cの値がC1以上となる。
【0026】
配管減肉の例では、配管の減肉が進んでいそうな場所を特定することが目的である。ここでは、流速が同程度で、減肉量が同程度以上となる検索条件を求める例について示す。図3に示した対象事例の場合、利用する評価指標関係データ2は、図4Aの評価指標関係データ21を利用し、検索条件となる温度の範囲を求めればよい。
【0027】
図3の対象事例では、温度は110℃である。図4Aの評価指標関係データ21によれば、110℃近辺では減肉速度が大きく変化しない。このことから検索条件は広くなり、検索条件は、例えば、「温度が100℃から130℃」となる。なお、100℃より温度が低い条件でも減肉速度は同程度の可能性があるが、本例では、評価指標関係データの有効範囲が100℃からであるため、検索条件も100℃以上に限定している。
【0028】
検索部5は、具体的な検索条件4として「内部流体が水」「材質が炭素鋼」「」「温度が100℃から130℃」となる条件に当てはまる配管を、設備情報DB6から検索する。
【0029】
図8は、設備情報DB6の一例を示す図である。設備情報DB6に保存されている設備情報は、図3と同様に、配管の番号と内部流体の種類、外径、肉厚、材質、流速の情報から構成され、内部流体が油や蒸気の配管などのプラントで利用される様々な種類の配管情報を記載する。
【0030】
検索部5は、設備情報DB6の中から検索条件4に合致する設備情報を検索結果7として出力する。上記の配管減肉の例では、この情報の中から検索条件に合致する情報が検索結果7として表示される。本実施形態では3行目に示した配管「PSB-02-300」が検索条件4に合致する。1行目に示した「PSB-01-350」は、温度範囲が検索範囲から逸脱するため合致しない。
【0031】
具体的には、検索部5は、図8に示した設備情報を表形式で表示し、検索条件に合致した情報を、ブリンク表示または蛍光表示等の強調表示を行う。
【0032】
本実施形態の設備情報検索システムによれば、評価指標関係データ2を用いて検索条件4を作成するため、目的に合致した設備情報を効率よく抽出することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、評価指標関係データ2として数値情報である温度の例を示したが、配管の材質のような数値情報でない情報を条件としても良い。例えば、配管の材質として、SGP(配管用炭素鋼鋼管)、STGP(圧力配管用炭素鋼鋼管)などの情報が設備情報DB6に記載されている場合、いずれも炭素鋼であるため、配管減肉に対しては同程度の影響を持つ。
【0034】
一方で、SUS-TP(配管用ステンレス鋼鋼管)は、ステンレス鋼であり、配管減肉はおこりにくい。したがって、例えば、対象事例で配管の材質がSGPであった場合には、検索対象にSTGPも含めるが、SUS-TPは除外することになる。このように、非数値データに対しても同様の考え方で検索条件を作成することで効率よく対象事例と類似の設備情報を検索することができる。
【0035】
上記では、配管減肉を評価指標とする例を説明したが、実施形態の設備情報検索システムは、故障リスクを評価指標として、故障リスクを有する対象事例と同程度の故障リスクを有する設備を設備情報DB6から検索することもできる。
【0036】
詳しは、評価指標関係データ2は故障リスクを評価指標として設備情報と故障リスクの関係を示し、検索条件作成部3は、故障リスクを有する対象事例の設備の故障リスクに対して故障リスクが同程度になる設備情報を評価指標関係データ2から検索条件4として求め、検索部5は、設備情報DB6から対象事例と同程度の故障リスクを有する設備を設備情報に基づいて検索する。
【実施例0037】
次に、より正確な類似事例の検索が可能な設備情報検索システムの実施形態について説明する。
【0038】
図9は、実施例2の設備情報検索システムの構成図である。
実施例2の設備情報検索システムは、検索結果7に基づいて行った運用・保守(配管の点検等)の結果に基づいて評価指標関係データ2の情報を更新する評価指標更新部8を備える点が、図2の実施例1の設備情報検索システムと異なる。
【0039】
評価指標更新部8の動作を、図10A図10Bを用いて説明する。
図10Aは、評価指標関係データ2のひとつであり、流速が2.5m/sにおける温度と減肉速度の評価指標関係データ22bを示す図である。評価指標関係データ22bの●のマークは、これまでに得られていた情報であり、実線の曲線は、データから求めたグラフである。また、△のマークは、運用・保守(配管の点検等)により新たに得られた情報である。
【0040】
図10Aの評価指標関係データ22bにおける●と△のマークの減肉速度を比較すると、△のマークの減肉速度は、●のマークより大きいことが判る。評価指標関係データ2は、実際のデータや、実験で得られたデータをプロットすることで求めることが多いため、新しいデータが得られることでデータの信頼性が増す。
【0041】
評価指標更新部8は、図10Bに示すように、新たに得られた△のマークを加えたデータにより、評価指標関係データ22c示すように、破線の曲線のグラフに補正し、評価指標関係データ2を更新する。
これにより、本実施形態の設備情報検索システムは、より正確な類似事例の検索が可能となる。
【実施例0042】
次に、図2の実施形態の設備情報検索システムを用いた、プラント等の制御性能診断システムについて説明する。本実施形態は、検索条件の適用範囲を設備の制御ループの制御性能とし、より広範囲に類似事例の検索を行えるようにすると共に、性能診断を提供できるようにしている。
【0043】
図11は、実施形態の制御性能診断システムの構成図である。
制御性能診断システムは、図2の設備情報検索システムと、運転データ9と、システム特性評価部10と、制御性能比較部11と、から構成する。なお、評価指標関係データ2は、制御性能に関係するデータであるため、実施例1および実施例2とは異なる。
【0044】
以下、実施形態の制御性能診断システムを詳細に説明するが、検索条件作成部3と検索部5と設備情報DB6は、図2の設備情報検索システムと同じため、ここでは、説明を省略する。
【0045】
運転データ9は、制御性能を診断する対象システムの運転データである。対象システムを化学プラントとした場合には、運転データ9には、制御装置に取り込んだ、温度、圧力、流量などの計測データが格納される。
【0046】
システム特性評価部10は、対象となる設備の制御に関係する外乱と時定数等の特性を運転データ9から求める。化学プラントの反応器の温度を制御する場合には、反応器の入り口から物質が供給されるが、その際にその物質の流量と温度が変動すると制御の外乱となる。また、時定数は、対象システムの操作端を変更した場合に、どれくらの応答性を持つかである。
【0047】
例えば、反応器の温度を反応器のジャケットの冷却水の量で制御する場合、反応器内の反応物の量や反応器の構造によって、冷却水の量の変化に対してどれくらい時間で反応器の内部温度が変化するかという時定数が変わる。一般に外乱が小さく、時定数が小さい方が、制御が容易である。
【0048】
システム特性評価部10で求めた外乱と時定数は、制御ループの情報として、設備情報DB6に格納する。
【0049】
図12は、本実施形態における設備情報DB6の構成を示す図である。
設備情報DB6には、IDで示される設備の制御ループ毎に、制御量と操作端と制御目標値と時定数と外乱とを、設備情報として格納する。例えば、IDが「1」の制御ループは、制御量が「反応器温度」、操作端が「冷却水量」、制御目標値が「180℃」、時定数が「30秒」、外乱が「2%」である。ここで、時定数と外乱は、システム特性評価部10で求めた値を格納する。
【0050】
図11に戻り、制御性能比較部11は、対象事例とした制御ループに対し、同程度の制御性能を持つ制御ループを抽出し、整定時間Tsと減衰特性b/aを用いた評価式で評価する制御性能を比較する。以下に、制御性能比較部11の動作を説明する。
【0051】
まず、整定時間Tsと減衰特性b/aについて、図13を用いて説明する。
図13は、縦軸が反応器温度等の制御量、横軸が時間を示し、制御量の時間変化を示した図である。ここで、整定時間Tsは、制御量が目標値±2%以内に入る時間とする。そして、減衰特性b/aは、標値に対してオーバーシュートした量aとアンダーシュートした量bとの比とする。
【0052】
制御ループの制御性能としては、整定時間Tsは短い方がよく、また、減衰特性b/aは小さい方がよい。
そこで、制御性能比較部11は、整定時間Tsの逆数である1/Tsと、減衰特性b/aの逆数a/bの線形和である(数1)を制御性能の評価指標Kとする。k1およびk2は定数である。
K = k1 × 1/Ts +k2 × a/b (数1)
【0053】
図14Aは、評価指標Kで示される制御性能と外乱の関係を示す評価指標関係データ24の図である。外乱が小さいと制御性能はよく、外乱が大きくなると制御性能は低下する。
【0054】
図14Bは、評価指標Kで示される制御性能と時定数の関係を示す評価指標関係データ25の図である。時定数が小さいと制御性能はよく、時定数が大きくなると制御性能は低下する。
【0055】
図11に戻り、制御性能比較部11は、対象事例の制御ループと類似の制御性能を持つ制御ループを、設備情報DB6から検索し、制御性能を比較することで、対象事例の制御ループの制御性能を評価する。
【0056】
詳しくは、制御性能比較部11は、評価指標関係データ24および評価指標関係データ25を参照して、対象事例の制御ループの制御性能の評価指標Kと同程度となる外乱の範囲および時定数の範囲を求め、これを検索条件にして外乱および時定数を制御ループの情報として制御ループ毎に記憶する設備情報DB6から、外乱の範囲および時定数の範囲に含まれる制御ループを検索する。
【0057】
図15は、制御性能比較部11の評価結果の一例を示す図であり、設備情報DB6から検索した制御ループの制御性能(評価指標K)の頻度分布を示す図である。
検索した制御ループは制御性能が高いものから低いものまでが分布し、図15に示すように、検索した制御ループにおける対象事例の制御ループの位置を知ることができ、対象事例の制御ループの制御性能が平均より低いことが判る。
【0058】
本実施形態の制御性能診断システムによれば、対象事例の制御ループの制御性能を比較し、制御性能が悪かった場合には、制御パラメータを調整して制御性をよくするなどの対策を講じることができる。
【0059】
上記した実施形態の設備情報検索システムおよび制御性能診断システムは、演算処理を行うCPUとメモリと通信部と操作部と表示部と不揮発性記憶媒体とから成るコンピュータにより構成する。そして、不揮発性記憶媒体に記憶するプログラムまたは通信部を介して取得したプログラムをCPUが実行することにより、検索条件作成部3、検索部5、評価指標更新部8、システム特性評価部10と制御性能比較部11の各機能を実現する。また、評価指標関係データ2、設備情報DB6、運転データ9を不揮発性記憶媒体に記憶する。
【0060】
また、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施形態は本発明で分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 対象事例
2 評価指標関係データ
3 検索条件作成部
4 検索条件
5 検索部
6 設備情報DB
7 検索結果
8 評価指標更新部
9 運転データ
10 システム特性評価部
11 制御性能比較部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15