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特開2023-82840バタフライバルブの弁体とバタフライバルブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082840
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】バタフライバルブの弁体とバタフライバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/22 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
F16K1/22 Q
F16K1/22 R
F16K1/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196809
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】宗吉 孝統
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA02
3H052BA02
3H052BA12
3H052BA25
3H052BA26
3H052BA35
3H052CA01
3H052CD02
(57)【要約】
【課題】大口径に設けた場合にも軽量化して操作性の向上や材料の削減を図りつつ、弁閉時には弁翼部付近を含む全体の強度を確保して封止性を向上し、弁開時には流量抵抗を低減して高い流量特性を発揮する組立性、メンテナンス性に優れたバタフライバルブの弁体を提供する。
【解決手段】円筒状のボデー3内に上下ステム4、5を介して回転自在に設けた。円板状のジスク20の上下にステム挿入孔26、27を備えた円筒状のボス部21、22が形成され、上下ボス部の間にステムの回転軸Pに沿ってリブ部23が設けられる。リブ部は、弁翼部24との境界領域において弁翼部に向けて高さ減少率が徐々に小さくなるなだらかな表面形状に設けられ、その内部にはステム挿入孔に連通する空隙室25が設けられる。空隙室は、リブ部の長手方向に交差する断面において弁体本体2の厚み方向よりも幅方向のほうが大きく且つ厚み方向の中央付近が最も広がった形状を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のボデー内に上下ステムを介して回転自在に設けたバタフライバルブの弁体であって、円板状のジスクの上下にステム挿入孔を備えた円筒状のボス部が形成され、これら上下ボス部の間に前記ステムの回転軸に沿ってリブ部が設けられ、このリブ部は、当該リブ部と弁翼部との境界領域において前記弁翼部に向けて高さ減少率が徐々に小さくなるなだらかな表面形状に設けられると共に、前記リブ部の内部には前記ステム挿入孔に連通する空隙室が設けられ、この空隙室は、前記リブ部の長手方向に交差する断面において、弁体本体の厚み方向よりも幅方向のほうが大きく且つ厚み方向の中央付近が最も広がった形状を有することを特徴とするバタフライバルブの弁体。
【請求項2】
前記空隙室の外壁が前記リブ部の表面に沿った形状に形成された請求項1に記載のバタフライバルブの弁体。
【請求項3】
前記リブ部の表面が、頂部付近が面取りされた平面部と、前記弁翼部に向けて傾斜する平面或いは曲面からなる傾斜面部とを有する断面略六角形状に設けられると共に、前記空隙室の外壁が前記平面部、前記傾斜面部とそれぞれ略平行な面により設けられた請求項2に記載のバタフライバルブの弁体。
【請求項4】
前記リブ部の長手方向に交差する断面において、前記リブ部は、前記弁翼部方向が厚み方向よりも長い断面略扁平状に形成された請求項1乃至3の何れか1項に記載のバタフライバルブの弁体。
【請求項5】
前記リブ部の長手方向に交差する断面において、前記リブ部の肉厚は、前記弁翼部との接続部分を除き全周にわたって略均一である請求項1乃至4の何れか1項に記載のバタフライバルブの弁体。
【請求項6】
前記リブ部の長手方向に交差する断面において、前記リブ部の前記空隙室部分の肉厚は、上下の前記ボス部に近づくにつれて徐々に小さくなる請求項1乃至5の何れか1項に記載のバタフライバルブの弁体。
【請求項7】
前記空隙室の少なくとも前記弁翼部側にアール面が形成された請求項1乃至6の何れか1項に記載のバタフライバルブの弁体。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のバタフライバルブの弁体が、前記上下ステムを介して前記ボデー内に開閉自在に装着されたバタフライバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライバルブの弁体に関し、特に、大口径に設けた場合にも軽量化や操作性の向上を図りつつ、弁閉時の封止性や、弁開時の高い流量特性を確保したバタフライバルブの弁体とバタフライバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、バタフライバルブの弁体は、ボデー内にステムにより回転自在に取付けられ、その軽量化を図って操作トルクの上昇を防ぐことで操作性を向上しつつ大流量を確保することが要求される。また、材料の削減や組立性・メンテナンス性が求められることも多い。そのため、ステムが上下に分割されて弁体の上下側を支持する構造が知られており、この種のステム取付け構造の場合、弁体を上下方向に貫通するように取り付けられた一体形のステムの場合に比較して、弁体内部を中空化して軽量化を図ることが可能になり、これにより大口径化した場合にも、操作性の向上が可能になっている。
このように分割構造のステムで弁体を支持する場合であっても、弁体を貫通するステムと同様に、弁閉時には流体圧に対する強度を確保して封止性の向上を図り、一方、弁開時には流量抵抗を低減して高い流量特性を確保することが要求されている。
【0003】
これらの要求に対して、例えば、本出願人は、特許文献1を出願している。同文献1のバタフライ弁の弁体は分割した上下ステムを介してボデーに取り付けており、円板状のジスクの上下のボス部が縦リブで繋がれ、ジスクの表裏面に縦リブに交差する水平リブが形成され、この水平リブには扁平円弧部が設けられている。縦リブの内部には、上下ボス部の内部のステム挿入孔と連通するように丸孔状の中空部が設けられ、この中空部の形成とジスクを薄肉化することにより、弁体の軽量化を図って操作性を向上しつつ、縦リブと水平リブとによる剛性の向上と、弁開時の物理的抵抗の低減によるスムーズな流れとを両立している。
【0004】
一方、特許文献2においては、弁体を構成する基板における弁棒の挿入方向に円筒部が隆起して形成され、この円筒部と交差して基板の表裏面側に複数の円形リブが同心円状に隆起して形成されている。上下の円筒部の間には円筒状の芯部が設けられ、また、円筒部の内部には上下の弁棒挿入用の弁棒挿入孔が形成されている。芯部は、その外径が弁棒挿入孔の外径よりも大きく、かつ、その内径が弁棒挿入孔の内径よりも大きく形成されており、その結果、上下ステム挿入孔の間の中空部分(芯部の内側)がより拡径した構成となっている。
【0005】
ところで、一般にバタフライバルブでは、弁閉時において弁体に流体圧が加わるときには、この弁体がステム軸により支持されていることから、ステム軸から離れた位置に加わる流体圧力により、ステム軸を中心に弁体の表面付近にたわみ方向(曲げ方向)の力が加わり、この力によって弁体の一次側(流体圧を受ける側)には引張り応力、二次側(流体圧を受けない側)には圧縮応力がそれぞれ働こうとする。この場合、弁翼側で受けた流体圧により、弁体にはステム軸の中心軸付近に最も大きい力が働き、この力は弁翼側になるにしたがって小さくなる。
そのため、上述した特許文献1、2を含むバタフライバルブのように、ステム軸付近を中心に補強し、流体圧による撓み変形を防ぐようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6546377号公報
【特許文献2】特許第4659927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のバタフライバルブの弁体においては、流路の大口径化に対応したり、弁翼部側の強度をより高めようとするために水平リブの平面方向の大きさを増加したり厚みを増加すると、弁体全体の重量が増加し、操作トルクも増加して操作性も低下するおそれがある。これに対し、中空部を設けていることで軽量化を図っている。弁体の大型化(大口径化)や水平リブの大型化、厚肉化による重量増を考慮すると、より一層の軽量化ができることが望まれている。
【0008】
一方、特許文献2のバタフライバルブの弁体では、芯部の内径が弁棒挿入孔の内径よりも大きく、この芯部の中空部分がより拡径していることで、弁体の軽量化を図ることは可能になる。
【0009】
しかしながら、弁体の大型化に伴う重量増においては、この構造では十分な重量低減を行うことが困難である。そして、この弁体は、弁翼側の弁体強度を高めるために複数の同心円状の円形リブを設けているため、特許文献1のような水平リブを設ける場合に比較して結果的に全体の重量が増加しやすくなり、弁体を成形する材料の増加にもつながる可能性もある。
【0010】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、大口径に設けた場合にも全体の軽量化や操作性の向上、並びに材料の削減を図りつつ、弁閉時には弁翼部を含むジスク全体の強度を確保して封止性を向上し、弁開時には流路抵抗を低減して高い流量特性を発揮でき、組立性やメンテナンス性にも優れたバタフライバルブの弁体とバタフライバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、円筒状のボデー内に上下ステムを介して回転自在に設けたバタフライバルブの弁体であって、円板状のジスクの上下にステム挿入孔を備えた円筒状のボス部が形成され、これら上下ボス部の間にステムの回転軸に沿ってリブ部が設けられ、このリブ部は、当該リブ部と弁翼部との境界領域において弁翼部に向けて高さ減少率が徐々に小さくなるなだらかな表面形状に設けられると共に、リブ部の内部にはステム挿入孔に連通する空隙室が設けられ、この空隙室は、リブ部の長手方向に交差する断面において、弁体本体の厚み方向よりも幅方向のほうが大きく且つ厚み方向の中央付近が最も広がった形状を有するバタフライバルブの弁体である。
【0012】
請求項2に係る発明は、空隙室の外壁がリブ部の表面に沿った形状に形成されたバタフライバルブの弁体である。
【0013】
請求項3に係る発明は、リブ部の表面が、頂部付近が面取りされた平面部と、弁翼部に向けて傾斜する平面或いは曲面からなる傾斜面部とを有する断面略六角形状に設けられると共に、空隙室の外壁が平面部、傾斜面部とそれぞれ略平行な面により設けられたバタフライバルブの弁体である。
【0014】
請求項4に係る発明は、リブ部の長手方向に交差する断面において、リブ部は、弁翼部方向が厚み方向よりも長い断面略扁平状に形成されたバタフライバルブの弁体である。
【0015】
請求項5に係る発明は、リブ部の長手方向に交差する断面において、リブ部の肉厚は、弁翼部との接続部分を除き全周にわたって略均一であるバタフライバルブの弁体である。
【0016】
請求項6に係る発明は、リブ部の長手方向に交差する断面において、リブ部の空隙室部分の肉厚は、上下のボス部に近づくにつれて徐々に小さくなるバタフライバルブの弁体である。
【0017】
請求項7に係る発明は、空隙室の少なくとも弁翼部側にアール面が形成されたバタフライバルブの弁体である。
【0018】
請求項8に係る発明は、バタフライバルブの弁体が、上下ステムを介してボデー内に開閉自在に装着されたバタフライバルブである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によると、リブ部の内部に空隙室を設け、この空隙室を弁体本体の厚み方向よりも幅方向を大きく且つ厚み方向の中央付近を最も広がった形状に設けていることにより、大口径に設けた場合にも全体を軽量化して操作性を向上でき、必要な材料の削減を図ることもできる。しかも、上下ボス部の間に設けたリブ部の内部に空隙室を設けていることで応力に対する必要な強度を失うことがなく、弁閉時には、そのなだらかな表面形状により弁翼部を含むジスク全体の強度を確保して封止性を向上できる。リブ部や上下ボス部の高さを低く抑えることができるため、弁開時には、流路抵抗を低減して流体の流れをスムーズにできると共にキャビテーションの発生を抑制し、高い流量特性を発揮する。また、上下ステムを用いて弁体本体を取り付ける構造であるから、組立性やメンテナンス性にも優れている。
【0020】
請求項2に係る発明によると、空隙室の外壁をリブ部の表面に沿った形状に形成していることにより、より一層の軽量化を図りつつ、弁閉時には全体にかかる応力を許容応力以下に抑えて、流体圧などによりたわみ方向に力が加わった場合に応力の集中を防いで折れ曲がり等の変形を確実に阻止する。このように、空隙室の外壁をリブ部の表面に沿った形状とすると、空隙室の周囲が弁翼部との接続部位を除いて略均一な肉厚を有するようになる。その結果、部分的に厚みが小さくて応力が集中しやすい箇所等が無くなるため、リブ部の径方向全体にわたって強度を確保しつつ空隙室を広げることが可能になるため、効率的な軽量化を図ることができる。
【0021】
請求項3に係る発明によると、リブ部の表面を平面部と傾斜面部とを有する断面略六角形状とすることで弁体本体を平面構造に形成でき、これによって弁体本体の加工やバルブの組立て時における接地性が向上する。空隙室の外壁を平面部及び傾斜面部とそれぞれ略平行な面により設けることで、リブ部の肉厚を略均一としつつ空隙室を最大限に拡大できる。全閉時に弁体本体の全体にかかる応力を略均等に分散させて許容応力以下に抑えることもでき、たわみを抑制しつつ強度を十分に確保可能となる。弁翼部側よりも厚肉状であるリブ部付近の肉厚を略均一とすることで、弁体本体を鋳造により成形する場合には、リブ部付近の冷却速度も周囲の部位と同様に略一定になるため、反りや変形、鋳巣などの鋳造欠陥も生じにくい。
【0022】
請求項4に係る発明によると、リブ部を断面略扁平状に形成することで、リブ部から弁翼部にかけての傾斜角度を緩やかな形状に形成し、弁体本体に力が加わるときの応力集中を抑えてたわみの発生を防ぐことができる。ステム挿入側の頂部付近の高さを低く抑えつつ、弁翼部方向になだらかな表面形状のリブ部を形成することで、流路抵抗を抑えて優れた流量特性を発揮する。
【0023】
請求項5に係る発明によると、リブ部の肉厚を弁翼部との接続部分を除いて全周にわたって略均一に設けることにより、空隙室を最大限に大きくして効果的な軽量化をおこないつつ、リブ部全体の強度を一定に確保できる。弁体本体を鋳造成形する場合には、リブ部の冷却速度が略一定になることで、反りや変形、鋳巣などの鋳造欠陥も発生を抑える。
【0024】
請求項6に係る発明によると、リブ部の空隙室部分の肉厚を上下のボス部に近づくにつれて徐々に小さくすることで、強度を確保しつつ、ボス部で強度が確保されている部分の余分な肉を削減して一層の軽量化や操作性の向上を図ることが可能となる。
【0025】
請求項7に係る発明によると、空隙室の少なくとも弁翼部側にアール面を設けたことにより、リブ部の強度を確保しながら弁体の一層の軽量化を図れるだけでなく、空隙室の形成する際にアール面によって中子を容易に鋳抜くことができるようになるため、弁体本体を鋳造により簡便に一体成形できるようになる。
【0026】
請求項8に係る発明によると、大口径に設けた場合にも全体を軽量化して操作性を向上し、材料の削減も図ることが可能なバタフライバルブを提供できる。しかも、空隙室を設けたことで応力に対する必要な強度を確保でき、弁閉時には、弁翼部を含むジスク全体の強度を確保して封止性を向上できる。一方、弁開時には、流路抵抗を低減して高い流量特性を発揮可能になる。また、上下ステムの着脱により容易に弁体を取り付けできるため、組立性やメンテナンス性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のバタフライバルブの弁体を用いたバタフライバルブの実施形態を示す正面図である。
図2図1の中央縦断面図である。
図3】本発明のバタフライバルブの弁体を示す正面図である。
図4】(a)は、図3の中央横拡大断面図である。(b)は、(a)の斜視図である。
図5図3の縦断面図である。
図6図5の中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明におけるバタフライバルブの弁体とバタフライバルブを実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1図2は、本発明のバタフライバルブの弁体を用いたバタフライバルブの実施形態を示し、図3図6は、バタフライバルブの弁体を示している。図において、バタフライバルブ本体1は、弁体本体2、円筒状のボデー3、上ステム4、下ステム5、シートリング6を備えている。
【0029】
図1図2に示すボデー2は円筒状に形成され、このボデー2の上部、下部にはそれぞれ上軸装部10、下軸装部11が突出して形成され、これら上軸装部10、下軸装部11の内部には上下ステム4、5装着用の挿入孔12、13がそれぞれ形成されている。シートリング6は、ゴム材料等により円筒状に形成され、ボデー2の内周面に装着され、これによりボデー2内に流路14が設けられる。
【0030】
図3図6において、弁体本体2は、鋳造により形成され、ジスク20、上ボス部21、下ボス部22、リブ部23、弁翼部24、空隙室25を備えている。
ジスク20は、流路14を開閉可能な大きさの円板状に形成され、このジスク20の上下に円筒状の上ボス部21、下ボス部22が形成される。これら上下ボス部21、22は、その内部にステム挿入孔26、27をそれぞれ備えており、各ステム挿入孔26、27には、上ステム4、下ステム5がそれぞれ挿入可能に設けられている。
弁体本体2は、バルブ本体1において、上下ステム4、5によりシートリング6を介してボデー3内に回転自在に装着され、バルブ本体1の流路14が上ステム4の回転操作で開閉自在に設けられている。
【0031】
上下ボス部21、22の間には、ステム4、5の回転軸Pに沿ってリブ部23が突出して形成される。リブ部23は、このリブ部23と弁翼部24との境界領域において、弁翼部24に向けて高さ減少率が徐々に小さくなるなだらかな表面形状に設けられる。
【0032】
図4に示すように、リブ部23の内部には、ステム挿入孔26、27に連通するように空間状の空隙室25が設けられる。空隙室25は、リブ部23の長手方向に交差する断面において、弁体本体2の厚み方向よりも幅方向のほうが大きく、且つ厚み方向の中央付近が最も広がった形状を有している。空隙室25は、図示しない中子を利用して形成可能になっている。
【0033】
空隙室25において、その外壁28は、リブ部23の表面29に沿った形状に形成されている。
本実施形態では、空隙室25の幅方向の長さWが、図2に示すステム4(5)の外径φDの2倍以上となるようにし、この状態で、空隙室25がリブ部23と略相似形状になるように設けられている。このように空隙室25の幅方向の長さWを大きくすれば空隙室25の容積も大きくなるが、この空隙室25の大きさ(容積)は、弁体本体2のたわみによる耐久性も考慮して適切な大きさに設定する必要がある。
【0034】
図3図4において、リブ部23の表面29は、頂部付近が面取りされた平面部30と、弁翼部24に向けて傾斜する平面或は曲面からなる傾斜面部31とを有しており、これによってリブ部23が断面略六角形状に設けられている。本実施形態においては、傾斜面部31は曲面により形成されている。上記空隙室24の外壁28は、リブ部23のこれら平面部30、傾斜面部31とそれぞれ略平行な面により設けられている。
【0035】
リブ部23は、このリブ部23の長手方向に交差する断面において、弁翼部24方向が厚み方向よりも長い断面略扁平状に形成され、リブ部表面29は、弁体本体2の回転軸Pから弁翼部24方向にかけて緩やかに傾斜するように構成される。なお、本実施形態において、「リブ部の長手方向に交差する断面」とは、図3において、ジスク20の上部付近から下部付近にかけて設けられるリブ部23の長手方向に対して垂直方向に交差する断面を意味する。
【0036】
前述したように、リブ部23の平面部30、傾斜面部31に対し、空隙室25の外壁28を略平行な面により形成していることから、リブ部23の長手方向に交差する断面において、リブ部23の肉厚Tは、弁翼部24との接続部分を除き、全周にわたって略均一となるように設けられる。
【0037】
さらに、リブ部23の長手方向に交差する断面において、このリブ部23の空隙室25部分の肉厚Tは、弁体本体2を上下に二等分したときに最も大きく(厚く)なり、この位置から交差断面が上下のそれぞれのボス部21、22に近づくにつれて、徐々に肉厚Tが小さく(薄く)なるような形状に空隙室25が設けられている。
【0038】
図4(a)、図4(b)に示すように、空隙室25において、少なくとも弁翼部24側である両側にはアール面32が形成される。これらアール面32により、空隙室25は断面略六角形状に設けられている。このようなアール面32は、後述する鋳造時の製造性を考慮し、鋳造が困難とならない程度のアール面とすることが望ましい。
【0039】
ここで、前述したリブ部23を設ける場合の最低条件を述べる。リブ部23は、前述したように少なくとも上下ボス部21、22の間にステム4、5の回転軸Pに沿うようにジスク20の中央領域に設けられる。これにより、弁翼部24側で受けた流体により生じる応力が最大となる回転軸Pに沿ったジスク中央領域の強度を確保している。
この場合、前述したように、流体圧により弁体本体2におけるステム回転軸P付近に最も大きい力が働こうとするため、理論上は、リブ部23の頂部付近の肉厚Tを最も大きくし、弁翼部24、24側になるにしたがって小さくなる断面円弧形状(断面略半円形状)に設けることとなる。
【0040】
しかし、断面略半円形状のリブ部を形成すると、弁体本体の中央の厚みが不必要に大きくなり、バルブの全開或は中間開度において、弁体中央付近での流体による物理的抵抗が増加したり、乱流が発生したりしやすくなったりすることで流量特性が低下するおそれがある。
これに対し、本実施形態の弁体本体2では、リブ部23の中央付近の必要最小限の強度を発揮する肉厚Tの大きさを確保しつつ、その頂部付近を面取りして平面部30を設けることで弁開時の流量特性を確保している。
【0041】
さらに、平面部30の両側付近より弁翼部24に向けて傾斜する曲面からなる前述した傾斜面部31を形成していることで、この傾斜面部31によりリブ部23から弁翼部24側にかけての強度を確保し、傾斜面部31の形状によって流体もスムーズに流れるようになっている。
このように、リブ部23を平面部30と傾斜面部31とを有する断面略六角形状に設けていることで、リブ部2の強度と流量特性の確保との双方を満足している。
【0042】
これら平面部30、傾斜面部31を備えたリブ部23の厚さは、流体圧力により弁体本体2の一次側に生じる引張り応力、及び二次側に生じる圧縮応力に耐え得る大きさとなるように設定するようにする。
この場合、断面係数は、その厚みを増やすことで強度が指数関数的に増加することが知られている。このことから、空隙室25の外壁28をリブ部表面29に沿った形状に設ける場合、弁体本体2の中央領域の厚さ方向において、リブ部23の大きさ(リブ部23の厚さ方向の寸法)から空隙室25の大きさ(空隙室25の厚さ方向の寸法)を減算して求めたリブ部23の厚さが、引張り応力及び圧縮応力に耐え得る断面係数となるように予め設計すればよい。
【0043】
本実施形態では、リブ部表面29と空隙室外壁28とを略相似形となる断面六角形状に形成し、リブ部23の平面部30から傾斜面部31にかけての肉厚Tを略均等な大きさに設け、リブ部29全体の断面係数を略一定としつつ、この断面係数が大きくなるように設けている。
【0044】
なお、上記実施形態においては、リブ部23を平面部30と傾斜面部31を有する断面略六角形状に設けているが、これ以外の多角形状や、或は楕円形状などの曲面形状により設けることもできる(図示せず)。何れの場合にも、リブ部を扁平形状に設け、このリブ部の表面に沿うように空隙室の外壁を略平行な面で形成し、リブ部の長手方向に交差する断面において、弁翼部との接続部分を除くリブ部の肉厚を略均一に設けることが望ましい。
【0045】
空隙室25の幅方向の長さWは、ステム外径φDの2倍以上となるように設定しているが、リブ部23の強度を確保可能であれば、2倍以下に設けるようにしてもよい。
【0046】
弁体本体2を鋳造成形する場合には、使用する中子の形状を変えることで空隙室25の形状を適宜変更することもできる。
【0047】
傾斜面部31は、曲面に限ることはなく、平面によって形成したり、或は平面と曲面との組み合わせにより形成するようにしてもよい。
【0048】
次いで、本発明におけるバタフライバルブの弁体とバタフライバルブの上記実施形態における作用を説明する。
弁体本体2において、上下ボス部21、22の間にリブ部23を設け、このリブ部23内部の空隙室25が、リブ部23の長手方向に交差する断面において、弁体本体2の厚み方向よりも幅方向の方が大きく、且つ厚み方向の中央付近が最も広がった形状を有しているので、リブ部23の形状に合わせて弁体本体2の中央部付近を大きく肉抜きしながら空隙室25を形成でき、リブ部23の強度を確保しつつ空隙室25を限界まで広げることができる。
【0049】
弁体本体2に流体圧が加わると、弁翼の外周縁部がたわむように変形する。この場合、弁体本体2のたわみに伴って、リブ部23には、一次側において引っ張られるような力が働き、二次側には圧縮されるような力が働く。これらの力は、弁体本体2の厚み方向において、表裏面付近でもっとも強く働き、回転軸P付近の中心部分は影響をほとんど受けることがない。そのため、リブ部23においては、表裏面付近の強度が保たれていれば、流体圧によるたわみの力に対向することができる。このような力の作用から、本実施形態では、空隙室25をリブ部23の内部に設け、この空隙室25で肉抜きしているにもかかわらず、弁体本体2に必要な強度を十分に確保することが可能となる。
【0050】
この場合、空隙室外壁28を、断面略六角形状のリブ部23の表面形状に沿った断面略六角形状に形成し、空隙室25とリブ部表面29との間の肉厚Tを略均一に設けているので、肉厚Tに応じた断面係数を略一定としつつ、その数値を大きく確保できる。これにより、大口径の弁体本体2を備えたバルブ本体1であっても、空隙室25とリブ部23との間のいわゆる外殻部位のみで中央領域に必要な強度を確保でき、引張り応力や圧縮応力などの応力集中を防いで弁体本体2の折れ曲がり(たわみ)を確実に低減する。そのため空隙室25を大きく確保でき、弁体本体2を軽量化しつつ十分な耐たわみ性を発揮できる。
空隙室とリブ部との間の均一な肉厚Tにより、鋳造時の冷却速度を略一定にし、鋳造欠陥を抑えた高品質の弁体本体を成形可能となる。
【0051】
特に、全閉時に流体圧による負荷が最も大きいジスク中央領域の表面付近に沿ってリブ部23を大きく形成しているので、この領域の表面強度をより高めている。さらに、リブ部23は、このリブ部23と弁翼部24との境界領域において弁翼部24に向けて高さ減少率が徐々に小さくなるなだらかな表面形状としているので、ジスク中央領域から徐々に減少する負荷に応じて、必要最小限の肉厚Tを確保して強度を確保しつつ軽量化を図ることができる。
【0052】
ここで、弁体本体2のステム回転軸P(ジスク中央領域)側を片持ち梁の支承部、弁翼部24側を自由端と考えた場合、支承部側で生じたたわみによる変位量は、自由端側では弁翼部24の長さ(半径)に応じて比例するように大きくなる。そのため、ステム回転軸P側(ジスク中央領域側)のたわみがごくわずかであっても、弁翼部24側では膨大なたわみとなってあらわれ、弁翼部24がシートリング6のシール面に対して位置ずれを起こすなどにより弁閉時に漏れを生じるおそれがある。
【0053】
これに対して、前述したように、ステム回転軸P付近を中心にリブ部23を設けていることで、リブ部23付近のごくわずかなひずみを抑制し、これによって弁翼部24側のひずみを確実に阻止して弁翼部24とシートリング6のシール面とによる高シール性を維持できる。
【0054】
バルブ本体1は、図示しないアクチュエータを用いた自動操作、又は操作ハンドルを用いた手動操作により開閉状態、又は適宜の中間開度状態に操作可能になっている。これらの操作時には、弁体本体2を軽量化していることで操作トルクを抑えて操作性が向上し、特に、自動操作の場合には、アクチュエータの小型化や内部構造の簡略化などを図ることもできる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
例えば、空隙部23の形状は、弁体本体2の厚み方向よりも幅方向の方が大きい偏平形状であれば限定されず、どのような形状であってもよい。たわみに対する対抗力だけを考慮すれば、上述したリブ部の表裏面にも共力が加わるという原則からすると、空隙部23の断面形状における両側端部は、弁体本体2の表面形状に合わせて徐々に小さくなって鋭角状の形状となっていても良い。ただし、その場合、弁体本体2を鋳造により製造しようとすると、空隙部23を形成するために配置した中子の除去が、その鋭角部分において困難となるおそれがある。これに対し、本発明のように、空隙部23の断面両側端部にアール面32を設けていることで、鋳造による製造性が良好となる。
【符号の説明】
【0056】
1 バルブ本体
2 弁体本体
3 ボデー
4 上ステム
5 下ステム
20 ジスク
21 上ボス部
22 下ボス部
23 リブ部
24 弁翼部
25 空隙室
26、27 ステム挿入孔
28 空隙室外壁
29 リブ部表面
30 平面部
31 傾斜面部
32 アール面
P ステム回転軸
T 肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6