(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082854
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】パレット
(51)【国際特許分類】
B65D 19/38 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
B65D19/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196827
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】590000477
【氏名又は名称】日本プラパレット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】市村 拓弥
【テーマコード(参考)】
3E063
【Fターム(参考)】
3E063AA03
3E063BA05
3E063CA10
3E063EE01
3E063FF20
(57)【要約】
【課題】ICタグをパレットに容易に取り付けることができるパレットを提供する。
【解決手段】板状のICタグを収容する収容部30を備えるパレットであって、収容部30は、パレットの側面に位置し、ICタグ100を挿入可能な挿入口31と、挿入口31から挿入されたICタグ100を収容空間29に保持する保持部と、を備え、保持部は、収容空間29において、ICタグ100の挿入方向の位置を規制する第1位置規制部と、収容空間29において、ICタグ100の上下方向の位置を規制する第2位置規制部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグを収容する収容部を備えるパレットであって、
前記収容部は、
前記パレットの側面に位置し、前記ICタグを挿入可能な挿入口と、
前記挿入口から挿入された前記ICタグを収容空間に保持する保持部と、を備え、
前記保持部は、
前記収容空間において、前記ICタグの挿入方向の位置を規制する第1位置規制部と、
前記収容空間において、前記ICタグの上下方向の位置を規制する第2位置規制部と、を備える
パレット。
【請求項2】
前記第1位置規制部は、
前記ICタグの挿入端となる前面と対向する奥部に設けられることにより前記挿入口の方向に付勢する弾性片と、
前記弾性片によって前記挿入口の方向に付勢された前記ICタグの前記前面と反対側の背面を係止する弾性係合片と、を備える
請求項1に記載のパレット。
【請求項3】
前記第2位置規制部は、
前記ICタグの上面を押圧する上側弾性押圧片と、
前記ICタグの下面を押圧する下側弾性押圧片と、を備え、
前記上側弾性押圧片及び前記下側弾性押圧片は、前記収容空間において、前記ICタグを挟み込む
請求項1または2に記載のパレット。
【請求項4】
前記弾性係合片は、
前記ICタグの上面を押圧する上側弾性係合片と、
前記ICタグの下面を押圧する下側弾性係合片と、を備え、
前記上側弾性係合片及び前記下側弾性係合片は、前記収容空間において、前記ICタグを挟み込む
請求項2に記載のパレット。
【請求項5】
前記上側弾性係合片は、前記ICタグの背面に係止される上側係止壁を備え、
前記下側弾性係合片は、前記ICタグの背面に係止される下側係止壁を備え、
前記上側係止壁及び前記下側係止壁の各々は先端に、前記奥部の方向に延びる溝を備える
請求項4に記載のパレット。
【請求項6】
前記保持部は、上下方向に貫通した貫通部を備える
請求項1ないし5のうち何れか1項に記載のパレット。
【請求項7】
前記パレットは、上側部材と下側部材とが突き合わされて構成され、
前記収容部は、上側部材と下側部材との突き合わせ位置に跨って位置している
請求項1ないし6のうち何れか1項に記載のパレット。
【請求項8】
前記パレットは二方差しパレットであって、
前記挿入口は、運搬機械が挿入される差込口を備える側面とは異なる側面に設けられている
請求項1ないし7のうち何れか1項に記載のパレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを収容可能なパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
物品の運搬や保管などに用いられるパレットには、パレット自体の管理やパレットに載置された物品の管理のためのICタグが取り付けられる。ICタグは、例えば、パレットまたはパレットに載置された物品を特定可能な情報を記憶する。ICタグに記憶された情報は、例えば、管理装置と接続されたリーダライタを用いた無線通信によって読み取られる。パレットにICタグを取り付ける方法の一例は、ICタグを取り付けたタグホルダをパレットに収容する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タグホルダを用いてICタグをパレットに取り付ける場合、ICタグをタグホルダに取り付け、さらに、タグホルダをパレットに取り付ける作業が必要となる。そこで、ICタグのパレットへの取付け作業の更なる簡略化が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するパレットはICタグを収容する収容部を備えるパレットであって、前記収容部は、前記パレットの側面に位置し、前記ICタグを挿入可能な挿入口と、前記挿入口から挿入された前記ICタグを収容空間に保持する保持部と、を備え、前記保持部は、前記収容空間において、前記ICタグの挿入方向の位置を規制する第1位置規制部と、前記収容空間において、前記ICタグの上下方向の位置を規制する第2位置規制部と、を備える。
【0006】
上記構成によれば、第1位置規制部によってICタグの挿入方向の位置が規制されるとともに、第2位置規制部によってICタグの上下方向の位置が規制される。これにより、ICタグは、収容空間にがたつくことなく収容される。タグホルダを使用せずともICタグをパレットに取り付けることができるため、パレットへのICタグの取付に要する作業を簡略化できる。
【0007】
上記パレットにおいて、前記第1位置規制部は、前記ICタグの挿入端となる前面と対向する奥部に設けられることにより前記挿入口の方向に付勢する弾性片と、前記弾性片によって前記挿入口の方向に付勢されたICタグの前記前面と反対側の背面を係止する弾性係合片と、を備える構成としてもよい。
【0008】
上記構成によれば、弾性片によってICタグが反挿入方向に付勢されることで、弾性片とは反対側に位置する弾性係合片に確実に係合される。これにより、挿入方向におけるがたつきを抑えられ、収容空間での位置が規制される。
【0009】
上記パレットにおいて、前記第2位置規制部は、前記ICタグの上面を押圧する上側弾性押圧片と、前記ICタグの下面を押圧する下側弾性押圧片と、を備え、前記上側弾性押圧片及び前記下側弾性押圧片は、前記収容空間において、前記ICタグを挟み込む構成としてもよい。
【0010】
上記構成によれば、ICタグが上側弾性押圧片及び下側弾性押圧片で挟み込まれることによって、挿入方向のがたつきに加え、上下方向におけるがたつきが抑えられる。これにより、ICタグは、収容空間での位置が規制される。
【0011】
上記パレットにおいて、前記弾性係合片は、前記ICタグの上面を押圧する上側弾性係合片と、前記ICタグの下面を押圧する下側弾性係合片と、を備え、前記上側弾性係合片及び前記下側弾性係合片は、前記収容空間において、前記ICタグを挟み込む構成としてもよい。上記構成によれば、弾性係合片は、ICタグの挿入方向のがたつきを抑える機能と、ICタグの上下方向におけるがたつきを抑える機能とを兼ね備えることができる。
【0012】
上記パレットにおいて、前記上側弾性係合片は、前記ICタグの背面に係止される上側係止壁を備え、前記下側弾性係合片は、前記ICタグの背面に係止される下側係止壁を備え、前記上側係止壁及び前記下側係止壁の各々は先端に、前記奥部の方向に延びる溝を備える構成としてもよい。
【0013】
上記構成によれば、上側弾性係合片及び下側弾性係合片の中でICタグの挿入方向のがたつきを抑えるために設けられた上側係止壁及び下側係止壁に溝を設けることで、溝から取出ピンを挿入し、第2位置規制部を退避させることで、ICタグを弾性片の付勢力を利用して取り出すことができる。
【0014】
上記パレットにおいて、前記保持部は、上下方向に貫通した貫通部を備える構成としてもよい。上記構成によれば、収容空間内の水分は貫通部を通じて外部に放出できる。
上記パレットにおいて、前記パレットは、上側部材と下側部材とが突き合わされて構成され、前記収容部は、上側部材と下側部材との突き合わせ位置に跨って位置している構成としてもよい。
【0015】
上記構成によれば、上側部材及び下側部材の各々を射出成形するときに、同時に、上側部材に収容部の上側半分を成形し、下側部材に収容部の下側半分を成形することができる。
【0016】
上記パレットにおいて、前記パレットは二方差しパレットであって、前記挿入口は、運搬機械が挿入される差込口を備える側面とは異なる側面に設けられている構成としてもよい。
【0017】
上記構成によれば、差込口を備える側面とは異なる側面に臨むように収容部を設けることで、誤って運搬機械が衝突して、収容部が破損することを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ICタグをパレットに容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】収容部にICタグが収容されていない状態の断面斜視図である。
【
図5】収容部にICタグが収容された状態の断面図である。
【
図6】収容部にICタグが収容された状態の挿入口を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1~
図6を用いて、パレットについて、図面を参照して説明する。なお、
図1~
図6に示すX軸、Y軸、及び、Z軸は、互いに直交する軸である。
[パレット]
図1に示すように、パレット1は、二方差しの両面パレットである。パレット1は、パレット1の上部を構成する上側部材10と、パレット1の下部を構成する下側部材20とが、Z軸に沿って重なった状態で溶着されて略直方体状に構成される。
【0021】
上側部材10及び下側部材20は、射出成形の一例であるガスアシスト成形法によって製造される部材である。すなわち、上側部材10及び下側部材20は、樹脂部分の内部に中空部を備え軽量化が図られている。上側部材10を構成する合成樹脂の一例は、ポリプロピレンである。パレット1は、桁2を備えている。各桁2は、上側部材10が備える上側桁部と、下側部材20が備える下側桁部とが突き合わされることによって構成される。上側部材10及び下側部材20は、対向する上部桁部と下側桁部とが相互に溶着されてパレット1を構成する。
【0022】
桁2は、X軸に沿うX軸方向に延び、かつ、Y軸に沿うY軸方向において両端に位置する端桁2A,2Bと、端桁2A,2Bの間に位置する中央桁2Cとを備えている。端桁2Aと中央桁2Cとの間及び端桁2Bと中央桁2Cとの間に差込口3が構成されている。差込口3には、運搬機械のフォークなどが挿入される。端桁2A,2Bの各々は、パレット1のX軸方向に延びる側面を構成する。端桁2A,2Bの少なくとも1つの端桁、本実施形態では端桁2Bには、ICタグ100を収容する収容部30を備えている。収容部30は、ICタグ100が挿入される開口である挿入口31と、挿入口31に連続して内部にICタグ100を保持する保持部32とを備える。
【0023】
[ICタグ]
ここで、
図2を参照してパレット1に収容されるICタグ100について説明する。
ICタグ100は、直方体形状のハウジングと、ハウジングに収容されるICチップ、小型のアンテナなどを備える。ICタグ100は、無線電波を利用して非接触でICチップの中のデータを読み書きするRFID(Radio Frequency Identification)技術を利用したものである。ICチップには、パレット1自体の管理やパレット1に載置された物品の管理のための管理情報がICチップに設けられたメモリ素子に格納される。ICタグ100は、一例として、電源が内蔵されたアクティブ型である。ICタグ100は、リーダライタが発振する電波を受信することで、管理情報をメモリ素子に情報を記録する。また、リーダライタに対して電波を発信することで管理情報を送信する。
【0024】
ICタグ100は、ハウジングを構成する上半体と下半体とを突き合わせ結合し、内部にICチップや電源を内蔵している。ICタグ100は、電源を持たないパッシブ型に比べて、電源などを備えている点で大型である。
【0025】
このような、ICタグ100は、一方の短辺側の面が前面100Aであり、他方の短辺側の側面が背面100Bである。また、ICタグ100は、相対する2つの短辺と長辺と囲まれた主面の一方が上面100Cであり、他方の主面が下面100Dである。さらに、挿入方向と平行な相対する2つの長辺側の面が側面100Eである。
【0026】
次に、
図2~
図6を参照して収容部30の各部について説明する。
[挿入口]
挿入口31は、一例として、端桁2B側の側面において、上側部材10と下側部材20との境界部分に設けられる。また、当該側面において、X軸方向において中央位置に挿入口31が配置されている。
【0027】
[保持部]
保持部32は、ICタグ100の挿入方向の位置を規制する第1位置規制部と、ICタグ100の上下方向の位置を規制する第2位置規制部とを備えている。更に、ICタグ100の左右方向の位置を規制する第3位置規制部を備えている。
【0028】
図3及び
図4に示すように、収容部30は、上側部材10の主面において、挿入口31の上の位置から、3つの第1上側開口32Aと第2上側開口32Bと第3上側開口32CがY軸方向に一列に並んで設けられている。
図4に示すように、上側開口32A~32Cは、互いに平行であって、かつ、X軸方向に延びる第1上側リブ33A、第2上側リブ33B、第3上側リブ33C及び第4上側リブ33Dによって区画されている。また、上側開口32A~32Cは、互いに平行であって、かつ、Y軸方向に延びる第5上側リブ33E及び第6上側リブ33Fによって区画されている。上側開口32A~32Cの各々は、矩形形状を有している。なお、第1上側リブ33Aは、パレット1の側面を構成する壁である。
【0029】
図4中、26は、上側部材10と下側部材20とが突き合わされ溶着された分割ラインである。第1上側リブ33Aの挿入口31を構成する部分、第2上側リブ33B及び第3上側リブ33Cの下端は、分割ライン26まで延びていない。第1上側リブ33Aの挿入口31を構成しない部分、第4上側リブ33Dの下端、第5上側リブ33Eの下端、及び、第6上側リブ33Fの下端は、分割ライン26まで延びている。
【0030】
収容部30は、下側部材20の主面において、挿入口31の下の位置から、3つの第1下側開口34Aと第2下側開口34Bと第3下側開口34CがY軸方向に一列に並んで設けられている。下側開口34A~34Cは、互いに平行であって、かつ、X軸方向に延びる第1下側リブ35A、第2下側リブ35B、第3下側リブ35C及び第4下側リブ35Dによって区画されている。下側開口34A~34Cは、互いに平行であって、かつ、Y軸方向に延びる第5下側リブ35E及び第6下側リブ35Fによって区画されている。下側開口34A~34Cの各々は、矩形形状を有している。
【0031】
第1下側リブ35Aの挿入口31を構成する部分、第2下側リブ35B及び第3下側リブ35Cの上端は、分割ライン26まで延びていない。第1下側リブ35Aの挿入口31を構成しない部分、第4下側リブ35Dの上端、第5下側リブ35Eの上端、及び、第6下側リブ35Fの上端は、分割ライン26まで延びている。
【0032】
第1上側リブ33Aの挿入口31を構成する部分、第2上側リブ33B及び第3上側リブ33Cの下端と第1下側リブ35Aの挿入口31を構成する部分、第2下側リブ35B及び第3下側リブ35Cの上端との間は、ICタグ100を収容する収容空間29を構成する。
【0033】
第4上側リブ33Dの下端には、挿入口31の方向に延びる上根元部36Aと、上根元部36Aの先端から上側部材10の主面の方向に延びる上側弾性片36Bとを備えている。第4下側リブ35Dの上端には、挿入口31の方向に延びる下根元部37Aと、下根元部37Aの先端から下側部材20の主面の方向に延びる下側弾性片37Bとを備えている。上側弾性片36B及び下側弾性片37Bは、第1位置規制部の一部を構成する。
【0034】
弾性片36B,37Bは、分割ライン26を介して線対称に配置されている。収容空間29において、挿入口31と反対側の奥部に位置し、挿入口31から挿入されたICタグ100の挿入端となる前面100Aと対向する。弾性片36B,37Bは、収容空間29に挿入されたICタグ100を挿入口31の方向に弾性付勢する。
【0035】
第2上側リブ33Bの下端及び第3上側リブ33Cの下端との間は、これら端部を繋ぐ下側板38で塞がれている。すなわち、第2上側開口32Bの底面が下側板38によって構成されている。第2下側リブ35Bの上端及び第3下側リブ35Cの上端との間は、これら端部を繋ぐ上側板39で塞がれている。すなわち、第2下側開口34Bの上面が上側板39によって構成されている。下側板38及び上側板39の中央部には、窓部40が設けられている。
【0036】
第1上側リブ33Aの下端と第2上側リブ33Bの下端との間は、上側弾性係合片41Aを備えている。上側弾性係合片41Aは、第2上側リブ33Bから第1上側リブ33Aの方向に延出する弾性片である。上側弾性係合片41Aは、第5上側リブ33E、第6上側リブ33F及び第1上側リブ33Aに沿うC字形状の第1上側貫通部41Dを設けることで構成されている。上側弾性係合片41Aは、先端にICタグ100の背面100Bが突き当てられる上側係止壁41Bと、ICタグ100の背面側の上面100Cを押圧する上側押圧壁41Cとを備えている。上側弾性係合片41Aは、Y軸方向に延びる片であり、上側係止壁41Bは、Z軸に沿うZ軸方向に延びる壁である。上側押圧壁41Cは、Y軸方向に延びる壁であり、上側係止壁41Bの基端から延びている。
【0037】
第1下側リブ35Aの下端と第2下側リブ35Bの上端との間は、下側弾性係合片42Aを備えている。下側弾性係合片42Aは、第2下側リブ35Bから第1下側リブ35Aの方向に延出する弾性片である。下側弾性係合片42Aは、第5下側リブ35E、第6下側リブ35F及び第1下側リブ35Aに沿うC字形状の第1下側貫通部42Dを設けることで構成されている。下側弾性係合片42Aは、先端にICタグ100の背面100Bが突き当てられる下側係止壁42Bと、ICタグ100の背面側の下面100Dを押圧する下側押圧壁42Cとを備えている。下側弾性係合片42Aは、Y軸方向に延びる片であり、下側係止壁42Bは、Z軸方向に延びる壁である。下側押圧壁42Cは、Y軸方向に延びる壁であり、下側係止壁42Bの基端から延びている。
【0038】
弾性係合片41A,42Aは、弾性片36B,37Bと共に第1位置規制部を構成する。弾性係合片41A,42Aは、分割ライン26を介して線対称に配置されている。収容空間29において、係止壁41B,42Bは、収容空間29の方向に突出し、弾性片36B,37Bによって挿入口31の方向に押圧付勢されたICタグ100の背面100Bが突き当てられる。これにより、ICタグ100のY軸方向のがたつきを抑制する。押圧壁41C,42Cは、Y軸方向とほぼ平行であり、挿入口31の近くにおいて、ICタグ100の上面100C及び下面100Dを押圧することにより挟み込む。これにより、ICタグ100のZ軸方向のがたつきを抑制する。そして、押圧壁41C,42Cは、第2位置規制部としても機能することができる。
【0039】
係止壁41B,42Bには、その頂部に溝41E,42Eが設けられている。溝41E,42Eは、ICタグ100の挿入方向に貫通した微小な凹部である。溝41E,42Eは、挿入されたICタグ100を取り出すときに用いられる取出ピンが挿入される。取出ピンは、剛性を有した撓みにくい直線形状を有した線状部材である。
【0040】
第3上側リブ33Cの下端及び第4上側リブ33Dの下端との間は、上側弾性押圧片43Aを備えている。上側弾性押圧片43Aは、第3上側リブ33Cから第4上側リブ33Dの方向に延出する弾性片である。上側弾性押圧片43Aは、第5上側リブ33E、第6上側リブ33F及び第4上側リブ33Dに沿うC字形状の第2上側貫通部43Bを設けることで構成されている。上側弾性押圧片43Aは、先端にICタグ100の前面側の上面100Cを押圧する上側押圧突部43Cとを備えている。上側弾性押圧片43Aは、Y軸方向に延びる片である。
【0041】
第3下側リブ35Cの上端及び第4下側リブ35Dの下端との間は、下側弾性押圧片44Aを備えている。下側弾性押圧片44Aは、第3下側リブ35Cから第4下側リブ35Dの方向に延出する弾性片である。下側弾性押圧片44Aは、第5下側リブ35E、第6下側リブ35F及び第4下側リブ35Dに沿うC字形状の第2下側貫通部44Bを設けることで構成されている。下側弾性押圧片44Aは、先端にICタグ100の前面側の下面100Dを押圧する下側押圧突部44Cとを備えている。下側弾性押圧片44Aは、Y軸方向に延びる片である。
【0042】
弾性押圧片43A,44Aは、第2位置規制部を構成する。弾性押圧片43A,44Aは、分割ライン26を介して線対称に配置されている。収容空間29において、押圧突部43C,44Cは、Y軸方向とほぼ平行であり、挿入口31とは反対側の奥部において、ICタグ100の上面100C及び下面100Dを押圧することにより挟み込む。これにより、ICタグ100のZ軸方向のがたつきを抑制する。
【0043】
弾性片36B,37Bは、収容空間29の奥部に位置している。弾性係合片41A,42Aは、挿入口31の近くに位置している。弾性片36B,37B及び弾性係合片41A,42Aは、弾性片36B,37Bが弾性係合片41A,42Aの係止壁41B,42Bに押圧することで、ICタグ100のY軸方向のがたつきを抑制する。この点で、弾性片36B,37B及び弾性係合片41A,42Aは、ICタグ100の挿入方向となるY軸方向の位置を規制する第1位置規制部となる。
【0044】
また、収容空間29の奥部に位置する弾性押圧片43A,44Aは、押圧突部43C,44Cで、ICタグ100の前面側の上下面100C,100Dを挟み込む。収容空間29の挿入口31の近くに位置する弾性係合片41A,42Aは、押圧壁41C,42Cで、ICタグ100の背面側の上下面100C,100Dを挟み込む。これにより、ICタグ100のZ軸方向のがたつきを、前面側と背面側とで抑制する。この点で、弾性片36B,37B及び弾性係合片41A,42Aは、ICタグ100の上下方向となるZ軸方向の位置を規制する第2位置規制部となる。
【0045】
第5リブ33E,35E及び第6リブ33F,35Fは、収容空間29に収容されたICタグ100のX軸方向のがたつきを規制する。この点で、第5リブ33E,33E及び第6リブ33F,35Fは、ICタグ100の左右方向となるX軸方向の位置を規制する第3位置規制部となる。第5リブ33E,35E及び第6リブ33F,35Fは、突き合わせ位置に、凹条28が設けられている。凹条28は、上側部材10及び下側部材20の溶着時に生じるバリ(ビード)が収まるようにして、バリがICタグ100の挿脱の妨げにならないようにする。
【0046】
[実施形態の作用]
次に、パレット1の作用としてICタグ100の取付方法について説明する。
図2に示すように、ICタグ100は、起動状態にされる。この後、ICタグ100は、その前面100Aを挿入端とし、上面100Cを上側にし、下面100Dを下側にして、挿入口31に挿入され、そのまま収容空間29に押し込まれる。そして、ICタグ100は、挿入口31の近くの弾性係合片41A,42Aの間を通り、次いで、奥側の弾性押圧片43A,44Aの間を通り、弾性片36B,37Bに押し当てられる。すると、弾性片36B,37Bによって挿入口31の方向に押圧付勢されたICタグ100は、背面100Bが係止壁41B,42Bに突き当てられる。これにより、ICタグ100のY軸方向のがたつきが抑制される。
【0047】
これとともに、収容空間29の奥部に位置する弾性押圧片43A,44Aは、押圧突部43C,44Cで、ICタグ100の前面側の上下面100C,100Dを挟み込む。また、収容空間29の挿入口31の近くに位置する弾性係合片41A,42Aは、押圧壁41C,42Cで、ICタグ100の背面側の上下面100C,100Dを挟み込む。これにより、ICタグ100の上下方向となるZ軸方向のがたつきが抑制される。更に、収容空間29において、ICタグ100は、第5リブ33E,35E及び第6リブ33F,35FによってX軸方向のがたつきが規制される。
図6に示すように、挿入口31からは、ICタグ100の背面100Bが露出し、目視確認可能である。また、窓部40及び貫通部41D,42D,43B,44Bからは、挿入されたICタグ100の上下面100C,100Dを目視確認できる。
【0048】
以上のようにICタグ100が取り付けられたパレット1には、主面が上側を向いた上側部材10又は下側部材20の主面に載荷される。ICタグ100との情報通信は、収容部30にリーダライタを近づけることで行うことができる。
【0049】
なお、収容部30に収容されたICタグ100を取り出すには、挿入口31から外方に臨んだ上下方向に対向する溝41E,42Eに対して取出ピンが挿入される。すると、取出ピンは、挿入口31の近くの弾性係合片41A,42A及び奥側の弾性押圧片43A,44Aを互いに離間する上下方向に弾性変位させる。すると、ICタグ100の背面100Bと係止壁41B,42Bとの係止状態が解除される。そして、ICタグ100は、弾性片36B,37Bの付勢力によって、挿入口31から背面100Bを排出端として外部に突き出される。これにより、ICタグ100は、挿入口31から取り出し可能となる。
【0050】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)ICタグ100は、タグホルダを使用せずともパレット1に取り付け可能となる。したがって、パレット1へのICタグ100の取付けに要する作業を簡略化できる。
【0051】
(2)第1位置規制部によってICタグ100の挿入方向となるY軸方向の位置が規制されるとともに、第2位置規制部によってICタグ100の上下方向となるZ軸方向の位置が規制される。これにより、ICタグ100は、収容部30にがたつくことなく収容される。ICタグ100は、収容部30でのがたつきが抑制されることで、故障しにくくなり、また、ICタグ100とリーダライタとの通信を安定させることができる。
【0052】
(3)パレット1の側面に挿入口31が設けられている。したがって、パレット1が段積みされた場合であっても、挿入口31を通じでICタグ100が収容されているかどうかを目視で確認することができる。
【0053】
(4)弾性片36B,37BによってICタグ100が反挿入方向に付勢されることで、弾性片36B,37Bとは反対側に位置する弾性係合片41A,42Aの係止壁41B,42Bに確実に係合される。これにより、ICタグ100の挿入方向におけるがたつきを抑えられ、位置が規制される。
【0054】
(5)弾性係合片41A,42Aは、ICタグ100の挿入方向のがたつきを抑える機能と、ICタグ100の上下方向におけるがたつきを抑える機能とを兼ね備えることができる。
【0055】
(6)係止壁41B,42Bに溝41E,42Eを設けることで、溝41E,42Eから取出ピンを挿入して、弾性押圧片43A,44A及び弾性係合片41A,42Aを互いに離間しICタグ100から退避することができる。これにより、ICタグ100を弾性片36B,37Bの付勢力を利用して取り出すことができる。
【0056】
(7)挿入口31、上側開口32A~32C及び下側開口34A~34Cを通じで収容部30の水分を外部に放出できる。
(8)上側部材10及び下側部材20の各々を射出成形するときに、同時に、上側部材10に収容部30の上側半分を成形し、下側部材20に収容部30の下側半分を成形することができる。
【0057】
(9)差込口3を備える側面とは異なる側面に臨むように収容部30を設けることで、誤って運搬機械のフォークなどが衝突して、収容部30が破損することを抑制できる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
【0058】
・四方差しパレットに適用することも可能である。この場合、4つの各側面に設けられた差込口3の間の中間桁部に収容部30を設ければよい。また、コーナ部の隅桁部に設けてもよい。上述の二方差しパレット1において、収容部30は、差込口3が設けられた側面であって、差込口3の間である中間桁部に設けてもよい。パレット1は、片面パレットであってもよい。
【0059】
・パレット1は、射出成形で形成されるのであれば、ガスアシスト法に限定されるものではない。すなわち、樹脂パレットは、樹脂フレームや樹脂リブ内に中空部を備えていないものであってもよい。
【0060】
・パレット1は、上側部材10と下側部材20に分割されていなくてもよい。また、パレット1は、3つ以上に分割され、それらを突き合わせ結合したものであってもよい。
・収容部30は、貫通部43B,44Bを備えてもよい。水分は、挿入口31を通じて蒸発可能だからである。
【0061】
・溝41E,42Eは、省略してもよい。この場合、ICタグ100は、収容部30から取り出せないか、極めて取り出しにくくなる。この場合、ICタグ100は、パレット1を廃棄処分するまで使用されることになる。
【0062】
・押圧壁41C,42Cは、ICタグ100の上下面100C,100Dに点接触または線接触する三角形状であってもよいし、波面形状であってもよい。
・弾性押圧片43A,44Aを省略してもよい。この場合、弾性係合片41A,42Aの押圧壁41C,42Cが第2位置規制部として機能する。また、弾性係合片41A,42Aの押圧壁41C,42Cを省略し、弾性押圧片43A,44Aを省略しない構成であってもよい。
【0063】
・第1位置規制部としての弾性片36B,37Bは、金属製の板バネやコイルバネなどで構成してもよい。第2位置規制部としての弾性押圧片43A,44Aも、金属製の板バネやコイルバネなどで構成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…パレット
10…上側部材
20…下側部材
26…分割ライン
29…収容空間
30…収容部
31…挿入口
32…保持部
32A~32C…上側開口
33A~33F…上側リブ
34A~34C…下側開口
35A~35F…下側リブ
36B,37B…弾性片
41A,42A…弾性係合片
43A,44A…弾性押圧片
100…ICタグ