(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082875
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】アキシャルギャップ回転電機のステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20230608BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20230608BHJP
H02K 1/06 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
H02K1/18 C
H02K21/24 M
H02K1/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196856
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】ゴンボジャブ ナンディンツェツェグ
(72)【発明者】
【氏名】筒井 昭
(72)【発明者】
【氏名】小紫 祐太
(72)【発明者】
【氏名】武智 順也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩行
【テーマコード(参考)】
5H601
5H621
【Fターム(参考)】
5H601AA05
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD12
5H601EE03
5H601EE12
5H601GA12
5H601GD02
5H601GD08
5H601GD12
5H621BB01
5H621BB05
5H621BB07
5H621BB10
5H621GA04
5H621GA12
5H621GA16
(57)【要約】
【課題】複数のコイルをテープ線材で構成するとともに周方向に高密度で配列することが可能なアキシャルギャップ回転電機のステータを提供する。
【解決手段】ステータ100Sは、環状のステータコア7Sと、複数のコイル8と、複数の電極部とを有する。ステータコア7Sは、複数の分割コア7によって構成される。各分割コア7のコイル支持軸70Sには、テープ線材からなるコイル8が配置される。電極部は、コイル8の最内周面に接続される内側電極80と、コイル8の最外周面に接続される外側電極90とを有する。内側電極80は、外側コア71に外嵌される円環部81と、コイル8と分割コア7との間に挟まれる平板部82と、リード線接続部83とを有する。平板部82の形状によって、隣接する分割コア7間のギャップを小さくすることができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のステータコアであって、複数の分割コアが中心軸回りに環状に配置されることで構成されるステータコアと、
トロイダル巻線構造を有する複数のコイルと、
前記複数のコイルに電流を供給する複数の電極部と、
を備え、
前記複数の分割コアは、本体部と、当該本体部から前記中心軸を中心とする周方向に突設され、前記コイルを支持する円柱状のコイル支持軸とをそれぞれ有し、
前記複数のコイルは、前記コイル支持軸回りに巻かれたテープ線材からそれぞれ構成され、前記コイル支持軸に最も近い位置に配置される一端部と前記コイル支持軸から最も遠い位置に配置される他端部とをそれぞれ有し、
前記複数の電極部は、
前記コイルの前記一端部に導通する第1導通部を有し前記コイル支持軸に外嵌されるとともに前記コイルを支持する円環部と、前記円環部に接続され前記コイルの側面および前記本体部にそれぞれ対向する一対の対向面を有する平板部と、前記平板部と一の電線とを接続する第1接続部とを含む内側電極と、
前記コイルの前記他端部に導通する第2導通部と、他の電線に接続される第2接続部とを含む外側電極と、
をそれぞれ有する、アキシャルギャップ回転電機のステータ。
【請求項2】
前記テープ線材は、酸化物超電導線材である、請求項1に記載のアキシャルギャップ回転電機のステータ。
【請求項3】
前記第1導通部は、前記円環部の外周面である、請求項1または2に記載のアキシャルギャップ回転電機のステータ。
【請求項4】
前記外側電極の前記第2導通部は、前記コイルの前記他端部に前記コイルの周方向に沿って接触する曲面部からなる、請求項1乃至3の何れか1項に記載のアキシャルギャップ回転電機のステータ。
【請求項5】
前記外側電極は、前記本体部に固定される固定部を有する、請求項1乃至4の何れか1項に記載のアキシャルギャップ回転電機のステータ。
【請求項6】
前記複数の分割コアは、
前記周方向を向くとともに前記コイル支持軸を支持する第1側面と、
前記周方向において前記第1側面とは反対側の第2側面であって、前記コイル支持軸の先端部が係合可能な凹部が形成された第2側面と、
をそれぞれ有する、請求項1乃至5の何れか1項に記載のアキシャルギャップ回転電機のステータ。
【請求項7】
前記複数の分割コアは、前記凹部に連通する受入部であって、前記中心軸を中心とする径方向に沿って前記コイル支持軸の前記先端部を受入可能な受入部をそれぞれ有し、
前記複数の分割コアのうちの一の分割コアの前記コイル支持軸に前記コイルが支持された状態で、当該一の分割コアの前記コイル支持軸の前記先端部が他の分割コアの前記受入部を通じて前記凹部に挿入されるように、前記複数の分割コアが前記径方向に沿ってそれぞれ連結されることで前記環状の前記ステータコアが構成される、請求項6に記載のアキシャルギャップ回転電機のステータ。
【請求項8】
前記複数の分割コアは、前記受入部とは反対側で前記凹部を画定し、前記コイル支持軸の前記先端部と嵌合することで前記本体部を前記径方向において位置決めする嵌合部を更に有する、請求項7に記載のアキシャルギャップ回転電機のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータや発電機等の回転電機に関し、特にアキシャルギャップ回転電機のステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トロイダルコイル方式のステータを含む回転電機が知られている。トロイダルコイル方式では、トロイダル状のコアにコイルが巻かれているため、磁束がすべて磁性体中を通る「閉磁路」から構成され効率的に磁界を取り込むことができる。
【0003】
特許文献1には、このようなトロイダルコイル方式のラジアルギャップ型回転電機およびアキシャルギャップ型回転電機がそれぞれ開示されている。アキシャルギャップ型の回転電機は、ラジアルギャップ型のものに比べて、薄型化が可能であり、大トルクを得やすいといった利点がある。特許文献1に記載されたアキシャルギャップ型回転電機では、複数の分割コアが周方向に配列されることでステータコアが構成される。また、隣接する分割コア同士の間のヨーク部にコイル線が巻かれることでコイルが構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、回転電機の小型化、高出力化のためには、コイルを超電導化して高い電流密度で運転する必要がある。一般的に、液体窒素の温度以上で動作する超電導線材としては酸化物超電導線材しかなく、特に商業的に流通している線材はテープ線材に限られてしまう。特許文献1に記載されたアキシャルギャップ型回転電機のように隣接する分割コア同士の間にコイルが配設されるような回転電機ではスペースが限られているため、上記のようなテープ線材を用いたコイルを配設することや、更に当該コイルに電流を出入りさせることが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、複数のコイルをテープ線材で構成しながら周方向に高密度で配列することが可能なアキシャルギャップ回転電機のステータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供されるのは、アキシャルギャップ型回転電機のステータである。当該ステータは、環状のステータコアであって複数の分割コアが中心軸回りに環状に配置されることで構成されるステータコアと、トロイダル巻線構造を有する複数のコイルと、前記複数のコイルに電流を供給する複数の電極部と、を備える。前記複数の分割コアは、本体部と、当該本体部から前記中心軸を中心とする周方向に突設され、前記コイルを支持する円柱状のコイル支持軸とをそれぞれ有する。前記複数のコイルは、前記コイル支持軸回りに巻かれたテープ線材からそれぞれ構成され、前記コイル支持軸に最も近い位置に配置される一端部と前記コイル支持軸から最も遠い位置に配置される他端部とをそれぞれ有する。前記複数の電極部は、内側電極と外側電極とをそれぞれ有する。内側電極は、前記コイルの前記一端部に導通する第1導通部を有し前記コイル支持軸に外嵌されるとともに前記コイルを支持する円環部と、前記円環部に接続され前記コイルの側面および前記本体部にそれぞれ対向する一対の対向面を有する平板部と、前記平板部と一の電線とを接続する第1接続部とを含む。外側電極は、前記コイルの前記他端部に導通する第2導通部と、他の電線に接続される第2接続部とを含む。
【0008】
本構成によれば、複数の分割コアが環状に配置され、各分割コアのコイル支持軸にコイルがトロイダル巻線構造で配置されることで、回転電機の出力トルク密度を高めることが可能な磁気回路構造を形成することができる。各コイル支持軸には、テープ線が巻かれることでコイルが形成され、その最内周面(一端部)および最外周面(他端部)に電極を接続する必要がある。内側電極はコイル支持軸に外嵌される円環部を有しているため、当該内側電極がコイルの最内周面と安定して導通することが可能となる。また、円環部に接続される平板部は、複数の分割コア間でコイルと本体部との間に挟まれるように配置されるため、ステータコアの分割コア間のギャップを小さくすることができる。このため、複数のコイルをテープ線材で構成するとともに、当該コイルを周方向に高密度で配列することが可能となり、回転電機の出力を増大することができる。
【0009】
上記の構成において、前記テープ線材は、酸化物超電導線材であることが望ましい。
【0010】
本構成によれば、酸化物超電導線材をコイル支持軸に巻線することによって、超電導コイルを容易に構成することができる。
【0011】
上記の構成において、前記第1導通部は、前記円環部の外周面であることが望ましい。
【0012】
本構成によれば、円環部の外周面が第1導通部を構成することによって、内側電極とコイルの最内周面とを安定して導通させることができる。
【0013】
上記の構成において、前記外側電極の前記第2導通部は、前記コイルの前記他端部に前記コイルの周方向に沿って接触する曲面部からなることが望ましい。
【0014】
本構成によれば、外側電極の曲面部が第2導通部を構成することによって、外側電極とコイルの最外周面とを安定して導通させることができる。
【0015】
上記の構成において、前記外側電極は、前記本体部に固定される固定部を有することが望ましい。
【0016】
本構成によれば、コイルへの通電中に外側電極が動くことを防止することができる。
【0017】
上記の構成において、前記複数の分割コアは、前記周方向を向くとともに前記コイル支持軸を支持する第1側面と、前記周方向において前記第1側面とは反対側の第2側面であって、前記コイル支持軸の先端部が係合可能な凹部が形成された第2側面と、をそれぞれ有することが望ましい。
【0018】
本構成によれば、隣接する分割コアのコイル支持軸と凹部とを係合させることで、環状のステータコアを安定した構造とすることができる。
【0019】
上記の構成において、前記複数の分割コアは、前記凹部に連通する受入部であって、前記中心軸を中心とする径方向に沿って前記コイル支持軸の前記先端部を受入可能な受入部をそれぞれ有し、前記複数の分割コアのうちの一の分割コアの前記コイル支持軸に前記コイルが支持された状態で、当該一の分割コアの前記コイル支持軸の前記先端部が他の分割コアの前記受入部を通じて前記凹部に挿入されるように、前記複数の分割コアが前記径方向に沿ってそれぞれ連結されることで前記環状の前記ステータコアが構成されることが望ましい。
【0020】
本構成によれば、コイル支持軸にコイルを配設した後に、各分割コアを径方向に沿って連結することで、高密度なステータを容易に組み立てることができる。
【0021】
上記の構成において、前記複数の分割コアは、前記受入部とは反対側で前記凹部を画定し、前記コイル支持軸の前記先端部と嵌合することで前記本体部を前記径方向において位置決めする嵌合部を更に有することが望ましい。
【0022】
本構成によれば、各分割コアを径方向に沿って連結する際に、コイル支持軸を嵌合部に嵌合させることで、分割コア同士の位置決めを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数のコイルをテープ線材で構成するとともに周方向に高密度で配列することが可能なアキシャルギャップ回転電機のステータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機の構造を概略的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る回転電機のステータの斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る回転電機のステータの平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る回転電機のステータの一対の分割コアの斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るステータの分割コア、超電導コイル、外側電極および内側電極の斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るステータの分割コア、外側電極および内側電極の斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るステータの一対の分割コア、外側電極および内側電極の斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るステータの内側電極の斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るステータの外側電極の斜視図である。
【
図10】本発明の第1変形実施形態に係るステータの分割コアの斜視図である。
【
図11】本発明の第1変形実施形態に係るステータの分割コアの斜視図である。
【
図12】本発明の第2変形実施形態に係るステータの分割コアの斜視図である。
【
図13】本発明の第2変形実施形態に係るステータの分割コアの斜視図である。
【
図14】本発明の第2変形実施形態に係るステータの分割コアにコイルが装着された状態の斜視図である。
【
図15】本発明の第2変形実施形態に係るステータの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の各実施形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機の構造を概略的に示す断面図である。
図2および
図3は、本実施形態に係る回転電機のステータの斜視図および平面図である。
【0026】
本発明において、アキシャルギャップ型回転電機は、例えばモータ又は発電機、若しくはこれらの兼用機の形態をとり得る。本実施形態では、アキシャルギャップ型回転電機の好ましい一例として、アキシャルギャップ型超電導モータ100を例示している。
【0027】
[アキシャルギャップ型回転電機の全体構造]
図1を参照して、モータ100は、シャフト1と、上下一対の軸受2と、ハウジング蓋部3と、ハウジング本体4と、上下一対のロータ100T(ロータ鉄芯5、ロータ磁石6)と、ステータコア7Sと、複数のコイル8と、複数のコア固定ボルト9と、複数の蓋固定ボルト10とを有する。シャフト1は、当該回転電機がモータ100として用いられる場合はトルクを発生する出力回転軸となり、発電機として用いられる場合は回転駆動力が入力される入力回転軸となる。ステータコア7Sおよび複数のコイル8は、本実施形態におけるステータ100Sを構成する。
【0028】
ハウジング蓋部3およびハウジング本体4は、シャフト1周りに配置された円筒状のハウジングを構成する。当該ハウジング内には、上下一対のロータ100T(ロータ鉄芯5、ロータ磁石6)と、上記のステータ100Sとが収容されている。コア固定ボルト9は、ステータ100Sをハウジング本体4に固定するためのボルトであり、蓋固定ボルト10は、ハウジング蓋部3をハウジング本体4に固定するためのボルトである。
【0029】
本実施形態では、ステータ100Sの一の円盤面に一方のロータ100Tが対向し、ステータ100Sの他の円盤面に他方のロータ100Tが対向し、これにより2個のロータ100Tの間にステータ100Sが挟まれる形態の、ダブルロータ、ダブルギャップ型の回転電機を例示している。もちろん、ロータ100Tの一の円盤面に一方のステータ100Sが対向し、ロータ100Tの他の円盤面に他方のステータ100Sが対向し、これにより2個のステータ100Sの間にロータ100Tが挟まれる形態の、シングルロータ、ダブルギャップ型の回転電機であっても良い。また、回転電機は、一のロータ100Tが一のステータ100Sと軸方向に対向配置されるシングルロータ、シングルギャップ型であっても良い。
【0030】
各ロータ100Tは、ステータ100Sに対して軸方向に間隔を空けて配置されている。当該間隔は、いわゆるアキシャルギャップであり、その長さは0.1mm~数mm程度である。シャフト1は、一対のロータ100Tに、その回転中心と芯合わせして固定されている。2つのロータ100Tは、ステータ100Sの中空部を貫通し、シャフト1によって互いに連結されている。
【0031】
図4は、本実施形態に係るモータ100のステータ100Sの一対の分割コア7の斜視図である。
図5は、本実施形態に係るステータ100Sの分割コア7、コイル8、内側電極80および外側電極90の斜視図である。
図6は、本実施形態に係るステータ100Sの分割コア7、内側電極80および外側電極90の斜視図である。
図7は、本実施形態に係るステータ100Sの一対の分割コア7、内側電極80および外側電極90の斜視図である。
図8は、本実施形態に係るステータ100Sの内側電極80の斜視図である。
図9は、本実施形態に係るステータ100Sの外側電極90の斜視図である。
【0032】
ステータ100Sは、環状のステータコア7Sと、複数のコイル8と、当該複数のコイル8に電流を供給する複数の電極部(内側電極80、外側電極90)を有する。
【0033】
ステータコア7S(
図2、
図3)は、複数の分割コア7が中心軸回りに環状に配置されることで構成される。当該中心軸は、
図1のシャフト1の中心線に合致する。
【0034】
複数の分割コア7は、コア本体70および外側コア71(いずれも本体部)(
図6)と、コイル支持軸70S(
図4)とを有する。コア本体70はステータコア7Sの径方向内側に向かって細くなる楔型形状を有している。コイル支持軸70Sは、円柱形状を有しており、コア本体70からステータコア7Sの前記中心軸を中心とする周方向に突設され、コイル8を支持する。外側コア71は、複数のボルトでコア本体70の径方向外側部分に連結される。なお、コア本体70および外側コア71は一体に構成されてもよい。また、
図4では、外側コア71の図示を省略している。このような分割コア7は、磁性鉄粉または純鉄磁性材で構成されることが望ましい。なお、分割コア7を電磁鋼板の積層によって構成してもよいが、技術的な困難性から、上記の磁性鉄粉などが適している。この場合、分割コア7(圧粉コア)は、電気絶縁膜で被覆された磁性鉄粉が強固に押し固められることによって形成されたコアである。
【0035】
複数のコイル8は、トロイダル巻線構造を有する超電導コイルである。各コイル8は、コイル支持軸70S上にパンケーキ状に巻線されたテープ線材(超電導テープ線)からそれぞれ構成される(パンケーキコイル)。本実施形態では、当該テープ線材は、酸化物超電導線材からなる。上記のように、複数の分割コア7のコイル支持軸70Sにコイル8をそれぞれ配設する場合には、自動巻線が可能となる。なお、一例として、商業的に流通しているテープ線材の幅の最小値は約4mmであるため、分割コア7間のギャップG(
図3)を小さくするには、一幅巻きのシングルパンケーキコイル形状が採用される。この場合、各コイル8は、コイル支持軸70Sに最も近い位置に配置される一端部8Aと、コイル支持軸70Sから最も遠い位置に配置される他端部8Bとをそれぞれ有し(
図5)、コイル8の最内周部から電極を引き出す必要がある。
【0036】
このようなコイル8の構造に対応すべく、本実施形態では、複数の分割コア7に備えられる複数の電極部が、内側電極80および外側電極90をそれぞれ有する。
【0037】
図8に示すように、内側電極80は、円環状の部分と当該円環状の部分から外側に延びる部分とを有しており、不図示の電源から延びるリード線L1に接続される。具体的に、内側電極80は、円環部81と、平板部82と、リード線接続部83(第1接続部)とを有する。
【0038】
円環部81は、コイル支持軸70Sに外嵌される導電性部材からなる。円環部81の内径は、コイル支持軸70Sの外径より僅かに大きく設定されている。円環部81は、コイル8の一端部8Aに導通する外周面(第1導通部)を有する。後記のように、予め円環部81がコイル支持軸70Sに外嵌された状態で、コイル8が円環部81に外嵌されることで、コイル8の一端部8Aと内側電極80とが導通する。
【0039】
平板部82は、円環部81に接続される平板状の部材である。平板部82は、ステータコア7Sの周方向において薄い厚さを有する板状部材である。平板部82は、コイル8の側面および前記本体部(コア本体70、外側コア71)にそれぞれ対向する一対の対向面を有する。
図6では、平板部82の一対の対向面のうち、後側の対向面がコイル8の側面に対向している。一方、
図6の分割コア7の手前側に他の分割コア7が配置されると、
図6の平板部82の前側の対向面が、当該他の分割コア7のコア本体70および外側コア71に対向して配置される。当該一対の対向面は、カプトンテープやFRP(繊維強化プラスチック:Fiber Reinforced Plastics)材のリングなどのような非磁性材料によって覆われることでコア本体70、外側コア71との間で絶縁されている。
【0040】
リード線接続部83は、平板部82とリード線L1(一の電線)とを接続する。本実施形態では、平板部82のうち円環部81とは反対側の部分にリード線L1がはんだ付けされることで、リード線接続部83が構成される。
【0041】
図9に示すように、外側電極90は、金属製の一体成型物から構成され、導電性を有する。外側電極90は、平板の上面部から略L字状に立設した壁部を有する形状からなる。外側電極90は、コイル接触面91(第2導通部)と、リード線固定部92(第2接続部)と、一対の固定用穴93(固定部)と、を有する。
【0042】
コイル接触面91は、コイル8の他端部8B(最外周面)に導通する部分であって、上記のL字状の壁部の側面から構成される。コイル接触面91は、他端部8Bにコイル8の周方向に沿って面接触する曲面部からなる。すなわち、コイル接触面91の曲率は、コイル8の外周面の曲率に対応して設定されている。コイル接触面91は、コイル8の外周面(一端部8A)にはんだ付けされる。この際、コイル接触面91を含む外側電極90の壁部が薄板状に形成されているため、当該はんだ付け作業を容易に行うことができる。一例として、コイル接触面91を含む壁部は、2mm前後に設定されている。
【0043】
リード線固定部92は、リード線L2(他の電線)に接続される部分であって、
図9に示すように、L字状の壁部の外側に露出した平板の上面部に相当する。本実施形態では、
図5、
図6に示すように、リード線L2がリード線固定部92にはんだ付けされる。
【0044】
一対の固定用穴93は、一対のボルト用穴であって、
図9に示すように、平板のうちL字状の壁部で囲まれる部分に間隔をあけて開口されている。当該一対の固定用穴93に一対のボルトがそれぞれ挿通され、外側電極90が外側コア71の側面に固定される(
図6)。なお、外側コア71にも同様の一対のボルト穴が形成されている。
【0045】
なお、複数のコイル8に接続されるリード線L1およびリード線L2は、ステータ100Sの周囲に放射状に引き出されるとともに、ステータ100Sの周囲において相毎に接続される。本実施形態では、モータ100が3相モータであるため、
図2に示すように、U相、V相、W相の3つの相毎にリード線L1およびリード線L2がそれぞれ接続される。
【0046】
図6乃至
図9を参照して、リード線L1からコイル8に電流が供給される場合、リード線L1、リード線接続部83、平板部82、円環部81およびコイル8の最内周面(一端部)の順に電流が流れる。その後、コイル8内を径方向外側に向かって流れた電流は、コイル8の最外周面(他端部)から、コイル接触面91、リード線固定部92、リード線L2の順に流れ出す。このため、コイル8の最内周面と最外周面との間で、安定して電流を流すことができる。
【0047】
図4では、2つの分割コア7(7A、7B)が隣接して図示されている。複数の分割コア7のコア本体70は、第1側面70Aと、第2側面70Bとをそれぞれ有する。第1側面70Aは、ステータコア7Sの周方向(
図4の一点鎖線参照)を向くとともにコイル支持軸70Sを支持する。第2側面70Bは、前記周方向において第1側面70Aとは反対側に配置されており、当該第2側面70Bにはコイル支持軸70Sの先端部が係合可能な凹部70Tが形成されている。なお、本実施形態では、コイル支持軸70Sは、コア本体70と一体とされている。
【0048】
また、第2側面70Bには、凹部70Tに連通する挿入部70T1(受入部)が形成されている。本実施形態では、
図4に示すように、挿入部70T1は、ステータコア7Sの径方向において凹部70Tの外側に形成されている。挿入部70T1は、前記径方向の外側からコイル支持軸70Sの先端部を受け入れること(先端部が挿入されること)が可能である。
【0049】
更に、凹部70Tのうち挿入部70T1とは反対側には、凹部70Tを画定するように嵌合部70T2が形成されている。嵌合部70T2は、コイル支持軸70Sの先端部と嵌合することでコア本体70(本体部)を前記径方向において位置決めする。嵌合部70T2は、円柱状のコイル支持軸70Sの先端部の外周面に対応するように、円弧形状を有している。
【0050】
複数の分割コア7が上記のような構造を有することで、分割コア7A(複数の分割コアのうちの一の分割コア)のコイル支持軸70Sにコイル8が支持された状態で、当該分割コア7Aのコイル支持軸70Sの先端部が分割コア7B(他の分割コア)挿入部70T1を通じて凹部70Tに挿入されるように、複数の分割コア7がステータ100Sの径方向に沿ってスライド移動されながらそれぞれ連結されることで環状のステータコア7Sが構成される。
【0051】
以上のように、本実施形態では、複数の分割コア7が環状に配置され、各分割コア7のコイル支持軸70Sにコイル8がトロイダル巻線構造で配置されることで、モータ100(回転電機)の出力トルク密度を高めることが可能な磁気回路構造を形成することができる。各コイル支持軸70Sには、テープ線が巻かれることでコイル8が形成され、その最内周面(一端部8A)および最外周面(他端部8B)に電極を接続する必要がある。
【0052】
このような場合であっても、内側電極80がコイル支持軸70Sに外嵌される円環部81を有しているため、当該内側電極80がコイル8の最内周面と安定して導通することが可能となる。また、円環部81に接続される平板部82は、複数の分割コア7間でコイル8とコア本体70および外側コア71(本体部)との間に挟まれるように配置されるため、ステータコア7Sの分割コア7間のギャップG(
図3)を小さくすることができる。このため、複数のコイル8をテープ線材で構成するとともに、当該複数のコイル8を周方向に高密度で配列することが可能となり、モータ100の出力を増大することができる。
【0053】
また、本実施形態では、酸化物超電導線材をコイル支持軸70Sに巻線することによって、超電導コイル8を容易に構成することができる。
【0054】
更に、本実施形態では、円環部81の外周面が第1導通部を構成することによって、内側電極80とコイル8の最内周面とを安定して導通させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、外側電極90のコイル接触面91(曲面部)が第2導通部を構成することによって、外側電極90とコイル8の最外周面とを安定して導通させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、外側電極90は、外側コア71(本体部)に固定される一対の固定用穴93を有するため、コイル8への通電中に外側電極90が動くことを防止することができる。なお、一つの固定用穴93が形成されてもよいが、複数の固定用穴93が形成されることで、外側電極90の回り止めとしても機能することができる。
【0057】
また、本実施形態では、隣接する分割コア7のコイル支持軸70Sと凹部70Tとを係合させることで、環状のステータコア7Sを安定した構造とすることができる。
【0058】
また、本実施形態では、コイル支持軸70Sにコイル8を配設した後に、各分割コア7を径方向に沿ってスライド移動させながら互いに連結することで、高密度なステータ100Sを容易に組み立てることができる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態に係るステータ100Sについて説明した。このような構成によれば、複数のコイル8をテープ線材で構成しながら周方向に高密度で配列することが可能なアキシャルギャップ回転電機のステータを提供することができる。なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形実施形態をとることが可能である。
【0060】
(1)
図10および
図11は、本発明の第1変形実施形態に係るステータの分割コア7Mの斜視図である。先の実施形態では、凹部70Tから見てステータコア7Sの径方向外側に挿入部70T1が配置される態様にて説明したが、
図10、
図11に示すように、凹部70Tから見て前記径方向内側に挿入部70T1が形成され、その反対側に嵌合部70T2が配置されてもよい。この場合、
図2、
図3の環状のステータ100Sを構成するために、一の分割コア7Mに対してその径方向内側から他の分割コア7Mをスライド移動させながら連結すればよい。
【0061】
(2)
図12および
図13は、本発明の第2変形実施形態に係るステータの分割コア7Nの斜視図である。
図14は、分割コア7Nにコイル8が装着された状態の斜視図である。
図15は、本発明の第2変形実施形態に係るステータの平面図である。
【0062】
先の実施形態では、コア本体70の第1側面70Aにコイル支持軸70Sが配置され、第2側面70Bに凹部70Tが形成される態様にて説明した。本変形実施形態では、分割コア7Nが、一対の第1コア70Pおよび第2コア70Qと、これらを互いに接続する円柱状のコイル支持部70Vとを有する。コイル支持部70Vには、
図14に示すように、コイル8が配置される。
【0063】
また、当該分割コア7Nにおいても、先の実施形態と同様の内側電極80および外側電極90を装着することで、コイル8に電流を流すことができる。複数の分割コア7Nに、コイル8、内側電極80および外側電極90が装着され、これらの分割コア7Nが
図15に示すように環状に配置されることで、ステータ100Sを構成することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 シャフト
10 蓋固定ボルト
100 モータ
100S ステータ
2 軸受
3 ハウジング蓋部
4 ハウジング本体
5 ロータ鉄芯
6 ロータ磁石
7、7M、7N 分割コア
70 コア本体(本体部)
70A 第1側面
70B 第2側面
70P 第1コア
70Q 第2コア
70S コイル支持軸
70T 凹部
70T1 挿入部(受入部)
70T2 嵌合部
70V コイル支持部
71 外側コア(本体部)
7S ステータコア
8 コイル
80 内側電極
81 円環部(第1導通部)
82 平板部
83 リード線接続部(第1接続部)
8A 一端部
8B 他端部
9 コア固定ボルト
90 外側電極
91 コイル接触面(第2導通部)
92 リード線固定部(第2接続部)
93 固定用穴
G ギャップ
L1 リード線(一の電線)
L2 リード線(他の電線)