IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベルコ建機株式会社の特許一覧

特開2023-82876建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム
<>
  • 特開-建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム 図1
  • 特開-建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム 図2
  • 特開-建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム 図3
  • 特開-建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム 図4
  • 特開-建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム 図5
  • 特開-建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム 図6
  • 特開-建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム 図7
  • 特開-建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム 図8
  • 特開-建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム 図9
  • 特開-建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム 図10
  • 特開-建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082876
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
E02F9/22 Q
E02F9/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196857
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】吉原 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】小岩井 一茂
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋一郎
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA01
2D003BA02
2D003BB04
2D003DB02
2D003DB03
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】オペレータの意思を介入させながら、作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するためのオペレータによる操作をアシストすることができる建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システムを提供する。
【解決手段】駆動装置のコントローラ50は、作業装置の姿勢に関連する目標物理量を設定し、作業装置の実際の姿勢に関連する現在物理量を演算し、目標物理量と現在物理量との物理量偏差を演算し、オペレータの操作をアシストするためのアシスト操作値を演算し、物理量偏差が大きいときに比べて物理量偏差が小さいときに小さな値になるようにオペレータ操作値をオペレータ補正値に補正し、物理量偏差が大きいときに比べて物理量偏差が小さいときに大きな値になるようにアシスト操作値をアシスト補正値に補正し、オペレータ補正値とアシスト補正値とを足した合計値を用いて作業装置の姿勢を制御する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に対して作業装置を動かすためのオペレータによる操作が与えられる操作装置と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記作業装置の姿勢に関連する物理量の目標である目標物理量を設定し、
前記作業装置の実際の姿勢に関連する物理量である現在物理量を演算し、
前記目標物理量と前記現在物理量との偏差である物理量偏差を演算し、
前記オペレータの前記操作をアシストするためのアシスト操作値を演算し、
前記物理量偏差が大きいときに比べて前記物理量偏差が小さいときに小さな値になるように、前記操作に対応するオペレータ操作値をオペレータ補正値に補正し、
前記物理量偏差が大きいときに比べて前記物理量偏差が小さいときに大きな値になるように、前記アシスト操作値をアシスト補正値に補正し、
前記オペレータ補正値と前記アシスト補正値とを足した合計値を用いて前記作業装置の前記姿勢を制御する、建設機械の駆動装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記物理量偏差が大きいときに比べて前記物理量偏差が小さいときに大きなアシスト率を設定し、
前記アシスト操作値に前記アシスト率をかけることにより前記アシスト補正値を演算し、
前記オペレータ操作値に、予め設定された設定値から前記アシスト率を引いた値をかけることにより前記オペレータ補正値を演算する、請求項1に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項3】
前記アシスト率を補正するための前記オペレータによる入力を受ける入力装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記オペレータによる前記入力に基づいて前記アシスト率を補正する、請求項2に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項4】
前記コントローラによる制御の状況を前記オペレータに知らせるための報知装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記アシスト率に応じて前記報知装置からの出力が変化するように前記報知装置の動作を制御する、請求項2又は3に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項5】
前記コントローラによる制御の状況を前記オペレータに知らせるための報知装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記物理量偏差に応じて前記報知装置からの出力が変化するように前記報知装置の動作を制御する、請求項1~3の何れか1項に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記物理量偏差がゼロに近づくように前記物理量偏差に基づいて前記アシスト操作値を演算する、請求項1~5の何れか1項に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項7】
コントローラは、
前記目標物理量を含む複数の目標物理量を設定し、
前記建設機械により行われている作業を判定し、
前記複数の目標物理量のうち、判定された作業に応じた目標物理量を選択する、請求項1~6の何れか1項に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項8】
前記コントローラは、
当該コントローラによるアシストの対象として予め設定されている作業である対象作業が行われているか否かを判定し、
前記対象作業が行われている場合、前記合計値を用いて前記作業装置の前記姿勢を制御し、
前記対象作業が行われていない場合、前記オペレータ操作値を用いて前記作業装置の前記姿勢を制御する、請求項1~6の何れか1項に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項9】
前記作業装置は、バケットを含み、
前記物理量偏差は、前記バケットの先端と施工面との距離に対応する値である、請求項1~8の何れか1項に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項10】
表示装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記表示装置において、前記作業装置の実際の姿勢に関する映像である実姿勢映像と、前記作業装置の目標の姿勢に関する映像である目標姿勢映像と、を表示させる、請求項1~9の何れか1項に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項11】
前記コントローラは、前記表示装置において、前記実際の姿勢と前記目標の姿勢との間の中間姿勢に関する映像である中間姿勢映像をさらに表示させる、請求項10に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項12】
前記コントローラは、前記作業装置の動作速度に関連する情報に基づいて前記中間姿勢を演算する、請求項11に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項13】
前記コントローラは、前記合計値を用いて前記作業装置の前記姿勢を制御するアシスト制御を行っているときに、予め定められた条件である非アシスト条件が満たされた場合には、前記アシスト制御から、前記操作装置に与えられる操作に基づく制御に切り替える、請求項1~12の何れか1項に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項14】
前記非アシスト条件は、前記アシスト制御において前記操作装置に与えられる前記操作から、予め設定された別の操作に切り替わることを含む、請求項13に記載の建設機械の駆動装置。
【請求項15】
前記機体と、前記作業装置と、請求項1~14の何れか1項に記載の駆動装置と、を備えた建設機械。
【請求項16】
請求項1~14の何れか1項に記載の駆動装置を備え、
前記操作装置は、前記建設機械から離れた場所に配置された遠隔操作装置である、建設機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設機械は、機体と、機体に対する姿勢を変えることが可能な作業装置と、を備える。建設機械が例えば油圧ショベルである場合、機体は下部走行体により構成され、作業装置は、上部旋回体、ブーム、アーム及びバケットを含む。建設機械は、作業現場において様々な作業を行う。オペレータは、作業の内容に応じて作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するためのレバー操作を頻繁に行う。しかし、このような操作を効率よく行うことは、非熟練者にとって容易ではない。従って、建設機械のコントローラがオペレータによる操作をアシストする技術が提案されている。
【0003】
特許文献1は、作業要素が個々の作業における目標値に確実に到達できるようにオペレータをアシストすることを目的とする建設機械を開示している。この建設機械では、制御装置は、作業要素が第1の所定の位置まで移動する前の第2の所定の位置まで移動した時点において、パイロット圧が最大値未満の場合に、操作装置から出力されるパイロット圧の値を最大値に変更し、変更した最大値に基づいて作業要素を加速させる。また、制御装置は、速度検出器が検出した作業要素の速度に基づいて複数の減速パターンのうちから選択した一つの減速パターンを用いて作業要素を減速して停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-157789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1のアシスト技術では、作業要素の加速時には、オペレータによる操作の大きさであるレバー操作量にかかわらずパイロット圧が最大値に変更され、作業要素の停止時には、予め設定された何れかの減速パターンに従って作業要素が減速して停止する。すなわち、特許文献1のアシスト制御では、作業要素の加速時及び停止時の何れにおいてもオペレータの意思が介入しないので、オペレータの操作技術が向上しにくいという問題がある。
【0006】
本開示は、オペレータの意思を介入させながら、作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するためのオペレータによる操作をアシストすることができる建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
提供される建設機械の駆動装置は、機体に対して作業装置を動かすためのオペレータによる操作が与えられる操作装置と、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記作業装置の姿勢に関連する物理量の目標である目標物理量を設定し、前記作業装置の実際の姿勢に関連する物理量である現在物理量を演算し、前記目標物理量と前記現在物理量との偏差である物理量偏差を演算し、前記オペレータの前記操作をアシストするためのアシスト操作値を演算し、前記物理量偏差が大きいときに比べて前記物理量偏差が小さいときに小さな値になるように、前記操作に対応するオペレータ操作値をオペレータ補正値に補正し、前記物理量偏差が大きいときに比べて前記物理量偏差が小さいときに大きな値になるように、前記アシスト操作値をアシスト補正値に補正し、前記オペレータ補正値と前記アシスト補正値とを足した合計値を用いて前記作業装置の前記姿勢を制御する。
【0008】
この建設機械のコントローラは、物理量偏差が大きいときに比べて物理量偏差が小さいときに小さな値になるように補正されたオペレータ補正値と物理量偏差が大きいときに比べて物理量偏差が小さいときに大きな値になるように補正されたアシスト補正値とを足した合計値を用いて作業装置の姿勢を制御する。従って、この建設機械のコントローラは、オペレータの意思を介入させながら、作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するためのオペレータによる操作をアシストすることができる。具体的には、物理量偏差が大きいときには、合計値のうちオペレータ操作値が寄与する割合を大きくすることができ、物理量偏差が小さいときには、合計値のうちアシスト操作値が寄与する割合を大きくすることができる。従って、物理量偏差が大きいときにはオペレータの意思を大きく介入させることができ、物理量偏差が小さいとき、すなわち、作業装置の姿勢が目標の姿勢に近づいて作業装置の姿勢を微調整するときには、オペレータの意思の介入を物理量偏差が大きいときに比べて小さくし、コントローラによるアシストによって作業装置の姿勢を目標の姿勢に容易に調整することができる。これにより、オペレータの意思の介入と作業装置の姿勢の容易な調整とを両立させることができる。
【0009】
前記コントローラは、前記物理量偏差が大きいときに比べて前記物理量偏差が小さいときに大きなアシスト率を設定し、前記アシスト操作値に前記アシスト率をかけることにより前記アシスト補正値を演算し、前記オペレータ操作値に、予め設定された設定値から前記アシスト率を引いた値をかけることにより前記オペレータ補正値を演算することが好ましい。この構成では、物理量偏差が小さくなるにつれて、すなわち、作業装置の姿勢が目標の姿勢に近づくにつれて、オペレータ補正値を連続的に小さくするとともにアシスト補正値を連続的に大きくすることができる。このことは、作業装置の姿勢が目標の姿勢に近づく過程において、オペレータによる操作が主体となる状態からコントローラによるアシストが主体となる状態へスムーズに移行させることを可能にする。
【0010】
前記駆動装置は、前記アシスト率を補正するための前記オペレータによる入力を受ける入力装置をさらに備え、前記コントローラは、前記オペレータによる前記入力に基づいて前記アシスト率を補正してもよい。この構成では、オペレータがアシスト率を補正できるので、オペレータの意思の介入の度合いをオペレータの好みに応じて調整することができる。
【0011】
前記駆動装置は、前記コントローラによる制御の状況を前記オペレータに知らせるための報知装置をさらに備え、前記コントローラは、前記アシスト率に応じて前記報知装置からの出力が変化するように前記報知装置の動作を制御することが好ましい。この構成では、オペレータは、作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するための作業を、アシスト率に基づいたコントローラによる制御の状況をおおまかに把握しながら行うことができる。
【0012】
前記駆動装置は、前記コントローラによる制御の状況を前記オペレータに知らせるための報知装置をさらに備え、前記コントローラは、前記物理量偏差に応じて前記報知装置からの出力が変化するように前記報知装置の動作を制御してもよい。この構成では、オペレータは、作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するための作業を、物理量偏差に基づいたコントローラによる制御の状況をおおまかに把握しながら行うことができる。
【0013】
前記コントローラは、前記物理量偏差がゼロに近づくように前記物理量偏差に基づいて前記アシスト操作値を演算してもよい。この構成では、コントローラは、作業装置の姿勢を目標の姿勢に近づけるためのアシストを効果的に行うことができる。
【0014】
コントローラは、前記目標物理量を含む複数の目標物理量を設定し、前記建設機械により行われている作業を判定し、前記複数の目標物理量のうち、判定された作業に応じた目標物理量を選択してもよい。この構成では、コントローラが作業ごとに適切な目標物理量を選択することができる。従って、この構成では、例えば複数の異なる作業が連続して行われるような場合に、オペレータは作業ごとに目標物理量を選択する必要がないので、オペレータの負担が軽減される。
【0015】
前記コントローラは、当該コントローラによるアシストの対象として予め設定されている作業である対象作業が行われているか否かを判定し、前記対象作業が行われている場合、前記合計値を用いて前記作業装置の前記姿勢を制御し、前記対象作業が行われていない場合、前記オペレータ操作値を用いて前記作業装置の前記姿勢を制御することが好ましい。この構成では、コントローラは、対象作業が行われているか否かの判定結果に応じた制御を行うことができる。これにより、オペレータは、対象作業とそれ以外の作業を含む複数の一連の作業を円滑に行うことができる。
【0016】
前記作業装置は、バケットを含み、前記物理量偏差は、前記バケットの先端と施工面との距離に対応する値であってもよい。この構成では、オペレータは、例えば掘削作業を行う場合に、コントローラによるアシストを受けながら、バケットの先端を施工面の掘削開始位置である所望の位置に容易に配置することができる。
【0017】
前記駆動装置は、表示装置をさらに備え、前記コントローラは、前記表示装置において、前記作業装置の実際の姿勢に関する映像である実姿勢映像と、前記作業装置の目標の姿勢に関する映像である目標姿勢映像と、を表示させてもよい。これにより、オペレータは、作業装置の目標の姿勢と実際の姿勢とのギャップを、表示装置に表示される映像を通じて認識することができる。特にオペレータが非熟練者である場合には、当該非熟練者が表示装置に表示される映像を通じて前記ギャップを認識しながら操作装置を操作することで操作技術の効果的な向上が見込まれる。
【0018】
前記コントローラは、前記表示装置において、前記実際の姿勢と前記目標の姿勢との間の中間姿勢に関する映像である中間姿勢映像をさらに表示させてもよい。これにより、オペレータは、作業装置が実際の姿勢から目標の姿勢に到達するまでにどのような中間姿勢を経るのかについて、表示装置に表示される映像を通じて認識することができる。
【0019】
前記コントローラは、前記作業装置の動作速度に関連する情報に基づいて前記中間姿勢を演算してもよい。これにより、コントローラは、前記中間姿勢を比較的正確に予測することができる。
【0020】
前記コントローラは、前記合計値を用いて前記作業装置の前記姿勢を制御するアシスト制御を行っているときに、予め定められた条件である非アシスト条件が満たされた場合には、前記アシスト制御から、前記操作装置に与えられる操作に基づく制御(通常制御)に切り替えることが好ましい。この構成では、アシスト制御が行われているときに前記非アシスト条件が満たされた場合、コントローラは、前記アシスト制御から前記通常制御に切り替えるので、コントローラによるアシストが解除され、前記作業装置は、オペレータが操作装置に与える前記操作に対応する動作を行う。これにより、アシスト制御がそのまま継続されることが好ましくない状況が生じた場合にアシストを解除して作業装置をオペレータの意思通りに適切に動作させることができる。
【0021】
前記非アシスト条件は、前記アシスト制御において前記操作装置に与えられる前記操作から、予め設定された別の操作に切り替わることを含むことが好ましい。上記のような状況が生じた場合、オペレータは、アシスト制御において操作装置に与える操作から別の操作に切り替えることが多い。従って、前記アシスト制御において前記操作装置に与えられる前記操作から予め設定された別の操作に切り替わることは、アシスト制御がそのまま継続されることが好ましくない状況が生じたことを判定する指標となる。
【0022】
提供される建設機械は、前記機体と、前記作業装置と、上述した駆動装置と、を備える。この建設機械は、オペレータの意思を介入させながら、作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するためのオペレータによる操作をアシストすることができる。
【0023】
提供される建設機械システムは、上述した駆動装置を備え、前記操作装置は、前記建設機械から離れた場所に配置された遠隔操作装置である。この建設機械システムでは、オペレータが遠隔地において遠隔操作装置を操作することによって作業現場において建設機械に作業を行わせる場合、コントローラは、オペレータの意思を介入させながらオペレータによる操作をアシストすることができる。具体的には、遠隔地において遠隔操作装置を操作する場合には、建設機械(実機)に搭乗して操作装置を操作する場合に比べて、オペレータは、作業現場の遠近感などの作業現場の状況を把握し難くなる。従って、このような遠隔操作のためのシステムに本開示に係る駆動装置が適用されることで、作業装置を所定の姿勢に調整する作業において前記駆動装置のアシストによるオペレータの負担軽減効果がより顕著になる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、オペレータの意思を介入させながら、作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するためのオペレータによる操作をアシストすることができる建設機械の駆動装置、これを備えた建設機械及び建設機械システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の実施形態に係る駆動装置を備える建設機械の一例を示す側面図である。
図2】前記建設機械の油圧回路及びコントローラを示す図である。
図3】、前記建設機械の作業装置の目標物理量と前記作業装置の現在物理量との偏差である物理量偏差と、アシスト率との関係を示すマップの一例である。
図4】前記コントローラによる制御の流れを示すブロック線図の一例である。
図5】前記コントローラによる演算処理の一例を示すフローチャートである。
図6】前記建設機械が行う作業の一例である排土作業において作業装置の動作を説明するための側面図である。
図7】バケットの先端高さ及びアシスト率の経時変化の一例を示すグラフである。
図8】前記コントローラによる制御の流れを示すブロック線図の他の例である。
図9】前記コントローラによる制御の流れを示すブロック線図のさらに他の例である。
図10】前記駆動装置の表示装置の一例を示す図である。
図11】前記表示装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施形態に係る建設機械の駆動装置及びこれを備えた建設機械について図面を参照して説明する。
【0027】
[第1実施形態]
図1及び図2に示すように、建設機械100は、下部走行体1と、上下に延びるZ軸回りに下部走行体1に対して旋回可能なように下部走行体1に支持される上部旋回体2と、上部旋回体2に支持されるアタッチメント3と、複数の油圧アクチュエータと、複数の油圧ポンプと、姿勢情報取得部と、複数の操作装置と、複数の制御弁と、複数の比例弁と、コントローラ50と、を備える。図1に示す本実施形態に係る建設機械100は油圧ショベルである。アタッチメント3は、ブーム4、アーム5及び先端アタッチメントを含む。先端アタッチメントは、図1に示す具体例ではバケット6であるが、フォーク、グラップル、ブレーカ、圧砕機(破砕機)などの他の先端アタッチメントであってもよい。前記駆動装置は、前記複数の操作装置と、前記コントローラ50と、を含む。
【0028】
下部走行体1は機体の一例であり、上部旋回体2、ブーム4、アーム5及び先端アタッチメント(例えばバケット6)のそれぞれは、作業装置の一例である。これらの作業装置のそれぞれは、下部走行体1に対する相対的な姿勢が変わるように動作可能な装置である。
【0029】
建設機械100は、作業現場において種々の作業を行うことができる。種々の作業は、例えば、掘削作業、土砂保持旋回作業、排土作業、及び戻り旋回作業を含む。掘削作業は、バケット6を地盤、盛り土などの掘削対象に沿って移動させることにより前記掘削対象を掘削して土砂をバケット6に保持する作業である。土砂保持旋回作業は、掘削された土砂をバケット6に保持しながら上部旋回体2を旋回させてダンプトラックの荷台の近くまでバケット6を移動させる作業である。排土作業は、荷台の近くに移動したバケット6に保持された土砂をバケット6から解放してダンプトラックの荷台に落下させ、当該土砂を荷台に積み込む作業である。戻り旋回作業は、排土作業の後に、上部旋回体2を旋回させるとともにアタッチメント3の姿勢を調節することにより前記掘削対象のところまでバケット6を移動させる作業である。
【0030】
下部走行体1は、建設機械100を走行させるための左右一対の走行装置と、これらの走行装置を連結する下部フレームと、を備える。上部旋回体2は、下部フレームに対して旋回可能なように下部フレームに支持される上部フレームと、上部フレームに支持されるキャビン及び機械室と、を備える。キャビンには、オペレータが座る運転席などが配置され、機械室には、油圧回路を構成する種々の機器が配置されている。
【0031】
ブーム4は、上部旋回体2に対してブーム4が水平軸(ブーム回動軸)回りに回動可能となるように上部旋回体2の上部フレームの前部に支持される基端部と、その反対側の先端部と、を有する。アーム5は、ブーム4に対してアーム5が水平軸(アーム回動軸)回りに回動可能となるようにブーム4の先端部に取り付けられる基端部と、その反対側の先端部と、を有する。バケット6は、アーム5に対してバケット6が水平軸(バケット回動軸)回りに回動可能となるようにアーム5の先端部に取り付けられる基端部と、土砂を収容して保持可能な部分である収容部と、バケット6の先端と、を有する。本実施形態では、バケット6の先端は、掘削用のツースの少なくとも一部により構成される。
【0032】
複数の油圧ポンプは、メインポンプ21と、パイロットポンプ22と、を含む。メインポンプ21及びパイロットポンプ22は、例えば図略のエンジンによって駆動される。メインポンプ21及びパイロットポンプ22のそれぞれは、エンジンにより駆動されることで作動油を吐出する。パイロットポンプ22は、エンジンにより駆動されることで複数の制御弁のそれぞれにパイロット圧を供給する。
【0033】
複数の油圧アクチュエータは、複数の油圧シリンダと、旋回モータ11と、を含む。複数の油圧シリンダは、ブーム4を動かすための少なくとも一つのブームシリンダ7と、アーム5を動かすためのアームシリンダ8と、バケット6を動かすためのバケットシリンダ9と、を含む。図2では、1つのメインポンプ21のみが図示されているが、建設機械100は、複数のメインポンプ21を備えていてもよい。
【0034】
少なくとも一つのブームシリンダ7は、上部旋回体2に接続された一端部と、ブーム4に接続された他端部と、を有する。少なくとも一つのブームシリンダ7は、メインポンプ21から吐出される作動油の供給を受けることにより伸長又は収縮し、これにより、ブーム4をブーム上げ方向又はブーム下げ方向に回動させる。ブーム上げ方向は、ブーム4の先端部が地盤から遠ざかる方向であり、ブーム下げ方向は、ブーム4の先端部が地盤に近づく方向である。
【0035】
アームシリンダ8は、ブーム4に接続された一端部と、アーム5に接続された他端部と、を有する。アームシリンダ8は、メインポンプ21から吐出される作動油の供給を受けることにより伸長又は収縮し、これにより、アーム5をアーム引き方向又はアーム押し方向に回動させる。アーム押し方向は、アーム5の先端部がブーム4から遠ざかる方向であり、アーム引き方向は、アーム5の先端部がブーム4に近づく方向である。
【0036】
バケットシリンダ9は、アーム5に接続された一端部と、バケット6にリンク部材を介して接続された他端部と、を有する。バケットシリンダ9は、メインポンプ21から吐出される作動油の供給を受けることにより伸長又は収縮し、これにより、バケット6をバケット引き方向又はバケット押し方向に回動させる。バケット引き方向は、バケット6の先端が下部走行体1に近づく方向であり、バケット押し方向は、バケット6の先端が下部走行体1から遠ざかる方向である。
【0037】
旋回モータ11は、メインポンプ21から吐出される作動油の供給を受けることにより下部走行体1に対して上部旋回体2を右方向又は左方向に旋回させるように作動する油圧モータである。旋回モータ11は、前記作動油の供給を受けて回転する図略の出力部を有し、当該出力部は上部旋回体2を左右双方向に旋回させるように上部旋回体2に駆動力を伝達する。具体的に、旋回モータ11は、一対のポートを有し、これらのうちの一方のポートへの作動油の供給を受けることにより当該一方のポートに対応する方向に前記出力部が回転するとともに他方のポートから作動油を排出する。
【0038】
姿勢情報取得部は、上部旋回体2、ブーム4、アーム5及びバケット6を含む複数の作業装置の姿勢に関する情報である姿勢情報を取得する。姿勢情報取得部は、取得した姿勢情報をコントローラ50に入力する。本実施形態では、姿勢情報取得部は、ブーム姿勢検出器31と、アーム姿勢検出器32と、バケット姿勢検出器33と、旋回体姿勢検出器34と、を含む。
【0039】
ブーム姿勢検出器31は、ブーム4の姿勢に関する情報であるブーム姿勢情報を検出する。ブーム姿勢検出器31は、検出したブーム姿勢情報に対応する検出信号をコントローラ50に入力する。具体的には、ブーム姿勢検出器31は、予め設定された基準に対するブーム4の角度(ブーム姿勢情報の一例)を検出するブーム角度センサであってもよい。この場合、前記基準は、例えば、上部旋回体2であってもよく、水平面であってもよく、旋回中心軸(図1のZ軸)に垂直な直線又は平面であってもよい。また、ブーム姿勢検出器31は、ブームシリンダ7のシリンダ長さを検出するシリンダストロークセンサであってもよい。ブームシリンダ7のシリンダ長さは、上部旋回体2に対するブーム4の姿勢に対応する。ブームシリンダ7のシリンダ長さは、ブーム姿勢情報の一例である。
【0040】
アーム姿勢検出器32は、アーム5の姿勢に関する情報であるアーム姿勢情報を検出する。アーム姿勢検出器32は、検出したアーム姿勢情報に対応する検出信号をコントローラ50に入力する。具体的に、アーム姿勢検出器32は、予め設定された基準に対するアーム5の角度(アーム姿勢情報の一例)を検出するアーム角度センサであってもよい。この場合、前記基準は、例えば、ブーム4であってもよく、水平面であってもよく、旋回中心軸(図1のZ軸)に垂直な直線又は平面であってもよい。また、アーム姿勢検出器32は、アームシリンダ8のシリンダ長さを検出するシリンダストロークセンサであってもよい。アームシリンダ8のシリンダ長さは、ブーム4に対するアーム5の姿勢に対応する。アームシリンダ8のシリンダ長さは、アーム姿勢情報の一例である。
【0041】
バケット姿勢検出器33は、バケット6の姿勢に関する情報であるバケット姿勢情報を検出する。バケット姿勢検出器33は、検出したバケット姿勢情報に対応する検出信号をコントローラ50に入力する。具体的には、バケット姿勢検出器33は、予め設定された基準に対するバケット6の角度(バケット姿勢情報の一例)を検出するバケット角度センサであってもよい。この場合、前記基準は、例えば、アーム5であってもよく、水平面であってもよく、旋回中心軸(図1のZ軸)に垂直な直線又は平面であってもよい。また、バケット姿勢検出器33は、バケットシリンダ9のシリンダ長さを検出するシリンダストロークセンサであってもよい。バケットシリンダ9のシリンダ長さは、アーム5に対するバケット6の姿勢に対応する。バケットシリンダ9のシリンダ長さは、バケット姿勢情報の一例である。
【0042】
旋回体姿勢検出器34は、上部旋回体2の姿勢に関する情報である旋回体姿勢情報を検出する。旋回体姿勢検出器34は、検出した旋回体姿勢情報に対応する検出信号をコントローラ50に入力する。具体的には、旋回体姿勢検出器34は、例えば、水平面に対する上部旋回体2の傾斜角度(旋回体姿勢情報の一例)を検出する傾斜角度センサであってもよく、下部走行体1に対する上部旋回体2の回転角度(旋回体姿勢情報の一例)を検出する回転角度センサであってもよい。また、旋回体姿勢検出器34は、傾斜角度センサ及び回転角度センサの両方を含んでいてもよい。
【0043】
ブーム角度センサ、アーム角度センサ、バケット角度センサ、及び回転角度センサのそれぞれは、例えば、レゾルバであってもよく、ロータリーエンコーダであってもよく、ポテンショメータであってもよく、IMU(Inertial Measurement Unit)であってもよく、他のセンサであってもよい。傾斜角度センサは、例えば、IMUであってもよい。
【0044】
コントローラ50は、建設機械100の機種に応じた複数の作業装置のそれぞれのサイズを予め記憶している。また、コントローラ50は、例えば、旋回中心軸とブーム回動軸との相対的な位置関係、ブーム回動軸、アーム回動軸及びバケット回動軸と、対応する作業装置との相対的な位置関係など、を予め記憶していてもよい。これにより、コントローラ50は、検出器31~34のそれぞれから入力される検出信号に基づいて、上部旋回体2、ブーム4、アーム5及びバケット6を含む複数の作業装置のそれぞれの姿勢を幾何学的に演算することができ、また、複数の作業装置のうちの何れかの作業装置において予め設定された部位である特定部位SPの座標を演算することができる。特定部位SPは、例えば図1に示すようにバケット6の先端に設定されていてもよい。
【0045】
図2に示すように、複数の操作装置は、ブーム操作装置61と、アーム操作装置62と、バケット操作装置63と、旋回操作装置64と、を含む。これらの操作装置61~64は、オペレータの操作を受ける操作レバー61A~64Aをそれぞれ有する。操作装置61~64のそれぞれは、オペレータによって操作レバーに与えられる操作に対応する操作値であるオペレータ操作値(電気信号)がコントローラ50に入力されるように構成された電気式の操作装置により構成されていてもよい。図2は、前記操作装置61~64が電気式の操作装置により構成される場合の回路構成を示している。また、操作装置61~64のそれぞれは、リモコン弁を備えた操作装置(図示省略)により構成されていてもよい。
【0046】
一つの操作レバーが複数の操作レバーの機能を兼ねるようなレバー構造を有していてもよい。例えば、オペレータが着座する運転席の右側前方に配置された右側操作レバーは、前後方向に操作された場合にブーム操作レバー61Aとして機能し、左右方向に操作された場合にバケット操作レバー63Aとして機能してもよい。また、運転席の左側前方に配置された左側操作レバーは、前後方向に操作された場合にアーム操作レバー62Aとして機能し、左右方向に操作された場合に旋回操作レバー64Aとして機能してもよい。レバー構造は、複数の操作レバーを兼ねる組み合わせをオペレータの指示によって任意に変更可能なように構成されていてもよい。
【0047】
ブーム操作装置61の操作レバー61Aは、ブーム上げ方向にブーム4を動作させるためのオペレータによる操作であるブーム上げ操作と、ブーム下げ方向にブーム4を動作させるためのオペレータによる操作であるブーム下げ操作と、を受けることが可能なように構成される。ブーム操作装置61は、操作レバー61Aにブーム上げ操作又はブーム下げ操作が与えられると、当該操作の大きさ及び当該操作の方向に対応するオペレータ操作値(Lo)をコントローラ50に入力する。
【0048】
アーム操作装置62の操作レバー62Aは、アーム押し方向にアーム5を動作させるためのオペレータによる操作であるアーム押し操作と、アーム引き方向にアーム5を動作させるためのオペレータによる操作であるアーム引き操作と、を受けることが可能なように構成される。アーム操作装置62は、操作レバー62Aにアーム押し操作又はアーム引き操作が与えられると、当該操作の大きさ及び当該操作の方向に対応するオペレータ操作値(Lo)をコントローラ50に入力する。
【0049】
バケット操作装置63の操作レバー63Aは、バケット引き方向にバケット6を動作させるためのオペレータによる操作であるバケット引き操作と、バケット押し方向にバケット6を動作させるためのオペレータによる操作であるバケット押し操作と、を受けることが可能なように構成される。バケット操作装置63は、操作レバー63Aにバケット引き操作又はバケット押し操作が与えられると、当該操作の大きさ及び当該操作の方向に対応するオペレータ操作値(Lo)をコントローラ50に入力する。
【0050】
旋回操作装置64の操作レバー64Aは、右方向に上部旋回体2を旋回動作させるためのオペレータによる操作である右旋回操作と、左方向に上部旋回体2を旋回動作させるためのオペレータによる操作である左旋回操作と、を受けることが可能なように構成される。旋回操作装置64は、操作レバー64Aに右旋回操作又は左旋回操作が与えられると、当該操作の大きさ及び当該操作の方向に対応するオペレータ操作値(Lo)をコントローラ50に入力する。
【0051】
複数の制御弁は、ブーム制御弁41と、アーム制御弁42と、バケット制御弁43と、旋回制御弁44と、を含む。複数の制御弁のそれぞれは、一対のパイロットポートを有する。
【0052】
ブーム制御弁41は、メインポンプ21とブームシリンダ7との間に介在し、ブーム上げ操作及びブーム下げ操作の何れか一方に対応するパイロットポートに供給されるパイロット圧に応じて、ブームシリンダ7に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉作動する。
【0053】
アーム制御弁42は、メインポンプ21とアームシリンダ8との間に介在し、アーム押し操作及びアーム引き操作の何れか一方に対応するパイロットポートに供給されるパイロット圧に応じて、アームシリンダ8に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉作動する。
【0054】
バケット制御弁43は、メインポンプ21とバケットシリンダ9との間に介在し、バケット引き操作及びバケット押し操作の何れか一方に対応するパイロットポートに供給されるパイロット圧に応じて、バケットシリンダ9に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉作動する。
【0055】
旋回制御弁44は、メインポンプ21と旋回モータ11との間に介在し、右旋回操作及び左旋回操作の何れか一方に対応するパイロットポートに供給されるパイロット圧に応じて、旋回モータ11に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉作動する。
【0056】
複数の比例弁は、一対のブーム電磁比例弁45,45と、一対のアーム電磁比例弁46,46と、一対のバケット電磁比例弁47,47と、一対の旋回電磁比例弁48,48と、を含む。複数の比例弁のそれぞれは、パイロットポンプ22が吐出するパイロット油(作動油)の圧力をコントローラ50から入力される制御指令に応じて減圧するとともに、減圧された圧力であるパイロット圧が当該比例弁に対応する制御弁のパイロットポートに供給されるように開閉作動する。これにより、当該制御弁は、パイロット圧が供給されるパイロットポートに対応する方向に、前記パイロット圧の大きさに対応するストロークで開弁する。その結果、メインポンプ21からの作動油が、前記ストロークに対応する流量で当該制御弁に対応する油圧アクチュエータに供給される。
【0057】
コントローラ50は、例えば、MPUなどの演算処理装置と、メモリと、を含むコンピュータを備える。コントローラ50は、動作指令部51と、目標物理量設定部52と、現在物理量演算部53と、物理量偏差演算部54と、アシスト率設定部55と、アシスト操作値演算部56と、オペレータ操作値補正部57と、アシスト操作値補正部58と、作業判定部59と、を備える。動作指令部51、目標物理量設定部52、現在物理量演算部53、物理量偏差演算部54、アシスト率設定部55、アシスト操作値演算部56、オペレータ操作値補正部57、アシスト操作値補正部58、及び作業判定部59のそれぞれは、前記演算処理装置がプログラムを実行することにより実現される。
【0058】
動作指令部51は、複数の比例弁のそれぞれに前記制御指令を入力する。具体的には、動作指令部51は、ブーム操作装置61の操作レバー61Aにブーム上げ操作又はブーム下げ操作が与えられると、一対のブーム電磁比例弁45,45のうち当該操作に対応するブーム電磁比例弁45に制御指令を入力する。動作指令部51は、アーム操作装置62の操作レバー62Aにアーム押し操作又はアーム引き操作が与えられると、一対のアーム電磁比例弁46,46のうち当該操作に対応するアーム電磁比例弁46に制御指令を入力する。動作指令部51は、バケット操作装置63の操作レバー63Aにバケット引き操作又はバケット押し操作が与えられると、一対のバケット電磁比例弁47,47のうち当該操作に対応するバケット電磁比例弁47に制御指令を入力する。動作指令部51は、旋回操作装置64の操作レバー64Aに右旋回操作又は左旋回操作が与えられると、一対の旋回電磁比例弁48,48のうち当該操作に対応する旋回電磁比例弁48に制御指令を入力する。
【0059】
より具体的には、動作指令部51は、建設機械100が行うことが可能な複数の作業のうち、予め定められた対象作業が行われている場合には、後述するように、オペレータ補正値(Lo’)とアシスト補正値(La’)を用いて演算された制御指令を、対象作業において行われている操作に対応する比例弁に入力する。対象作業は、オペレータの操作に対するコントローラ50によるアシストの対象として予め設定された作業である。
【0060】
一方、動作指令部51は、前記複数の作業のうち、前記対象作業が行われていない場合、すなわち前記対象作業以外の作業である非対象作業が行われている場合には、複数の操作装置61~64のうち非対象作業において操作されている操作装置からコントローラ50に入力されるオペレータ操作値(Lo)を、前記制御指令として当該操作に対応する比例弁に入力する。
【0061】
目標物理量設定部52は、少なくとも一つの作業装置の姿勢に関連する物理量の目標である目標物理量を設定する。本実施形態では、作業装置の姿勢に関連する物理量は、特定部位の座標であり、目標物理量は、特定部位の目標座標である。本実施形態では、特定部位はバケット6の先端である。目標物理量設定部52は、例えば次のように目標座標を設定してもよい。
【0062】
本実施形態では、建設機械100は、オペレータが操作可能な記憶スイッチ80をさらに備える。記憶スイッチ80は、例えばキャビンにおいてオペレータが操作可能な位置(例えば運転席の近くの位置)に配置されている。記憶スイッチ80は、オペレータが操作可能なボタンであってもよい。また、記憶スイッチ80は、ディスプレイの画面上に形成され、オペレータが操作可能な領域であってもよい。オペレータは、複数の操作装置61~64の操作レバー61A~64Aの少なくとも一つを操作することによりバケット6の先端を所望の位置に配置する。バケット6の先端が所望の位置に配置された状態で、オペレータは、記憶スイッチ80に対して入力操作(例えばボタン操作)を行う。目標物理量設定部52は、記憶スイッチ80に対して入力操作が行われた時点でバケット6の先端(特定部位)が配置されている座標を目標座標に設定する。目標座標の基準となる座標系は、例えば、作業現場における予め設定された位置を原点とする座標系であってもよく、建設機械100における予め設定された部位を原点とする座標系であってもよく、他の位置を原点とする座標系であってもよい。また、座標系は、三次元座標系であってもよく、二次元座標系であってもよい。
【0063】
なお、目標座標の設定方法は、上記の具体例に限られない。例えば、建設機械100が作業現場の映像を取得するカメラと、当該カメラからコントローラ50に入力される映像データに基づいて作業現場の映像(例えば三次元映像)を表示可能なディスプレイと、を備える場合において、オペレータがディスプレイに表示されている映像における所望の部位を指定すると(具体的には、例えばオペレータが画面上の前記所望の部位をタッチすると)、目標物理量設定部52は、指定された部位に対応する座標を目標座標に設定してもよい。また、目標物理量設定部52は、オペレータにより入力された座標(複数の数値)を目標座標に設定してもよい。
【0064】
現在物理量演算部53は、少なくとも一つの作業装置の実際の姿勢に関連する物理量である現在物理量を演算する。本実施形態では、現在物理量は、バケット6の先端の実際の座標、すなわちその時点での座標である現在座標である。従って、現在物理量演算部53は、バケット6の先端(特定部位)の座標である現在座標を演算する。現在物理量演算部53は、姿勢情報取得部から入力される姿勢情報に基づいてバケット6の先端の現在座標を演算する。具体的には、現在物理量演算部53は、例えば検出器31~33が検出するブーム姿勢情報、アーム姿勢情報及びバケット姿勢情報に基づいてブーム4の姿勢、アーム5の姿勢及びバケット6の姿勢を演算し、これらの姿勢に基づいてバケット6の先端の現在座標を演算してもよい。また、現在物理量演算部53は、検出器34が検出する旋回体姿勢情報をさらに考慮してバケット6の先端の現在座標を演算してもよい。
【0065】
図1に示すように、ブーム4の姿勢は、ブーム4の角度であるブーム角度θ1で表され、アーム5の姿勢は、アーム5の角度であるアーム角度θ2で表され、バケット6の姿勢は、バケット6の角度であるバケット角度θ3で表されていてもよい。ブーム角度θ1は、例えば、ブーム4の基端部におけるブーム4の回動中心とアーム5の基端部におけるアーム5の回動中心とを結ぶ直線と、基準面と、のなす角度であってもよい。基準面は、水平面であってもよく、旋回中心軸(図1のZ軸)に直交する平面であってもよい。アーム角度θ2は、ブーム4の前記回動中心とアーム5の前記回動中心とを結ぶ前記直線と、アーム5の前記回動中心とバケット6の回動中心とを結ぶ直線と、のなす角度であってもよい。バケット角度θ3は、アーム5の前記回動中心とバケット6の前記回動中心とを結ぶ直線と、バケット6の前記回動中心とバケット6の先端とを結ぶ直線と、のなす角度であってもよい。
【0066】
物理量偏差演算部54は、前記目標物理量と前記現在物理量との偏差である物理量偏差を演算する。本実施形態では、物理量偏差演算部54は、前記目標座標と前記現在座標との偏差である座標偏差(e)を演算する。具体的には、物理量偏差演算部54は、例えば式「座標偏差(e)=目標座標-現在座標」を用いて座標偏差(e)を演算する。上記の式により演算される座標偏差(e)は、現在座標から目標座標への方向と現在座標から目標座標までの距離とを示している。
【0067】
アシスト率設定部55は、前記物理量偏差が大きいときに比べて前記物理量偏差が小さいときに大きなアシスト率を設定する。本実施形態では、アシスト率設定部55は、前記座標偏差(e)が大きいときに比べて前記座標偏差(e)が小さいときに大きなアシスト率(r)を設定する。具体的には、アシスト率設定部55は、例えば図3に示すように座標偏差(e)とアシスト率(r)との関係が予め設定されたマップ(グラフ)と、物理量偏差演算部54により演算された座標偏差(e)と、に基づいて、アシスト率(r)を設定する。
【0068】
図3に示すグラフでは、横軸は、座標偏差(e)の大きさ、すなわち、現在座標から目標座標までの距離であり、縦軸は、アシスト率(r)である。図3に示すように、座標偏差(e)が小さい領域である小領域では、アシスト率(r)は最大値(図3の具体例では「1」)に設定され、座標偏差(e)が大きい領域である大領域では、アシスト率(r)は最小値(図3の具体例では「0」)に設定され、小領域と大領域との中間の領域である中領域では、アシスト率(r)は、座標偏差(e)が小さくなるほどアシスト率(r)が大きくなるように設定される。ただし、図3に示すマップは、座標偏差(e)が大きいときに比べて座標偏差(e)が小さいときに大きなアシスト率(r)を設定するために予め作成されたマップの一例であり、座標偏差(e)とアシスト率(r)との関係を表すマップは、図3に示す具体例に限られない。当該マップは、例えば、中領域の少なくとも一部が曲線によって表されていてもよく、小領域及び大領域の少なくとも一方が省略されたものであってもよい。また、アシスト率(r)の最大値は、「1」より大きな値又は「1」より小さな値であってもよく、アシスト率(r)の最小値は、「0」より大きな値又は「0」より小さな値であってもよい。
【0069】
アシスト操作値演算部56は、前記オペレータの操作をアシストするための操作値であるアシスト操作値(La)を演算する。本実施形態では、アシスト操作値演算部56は、前記オペレータの操作をアシストするためのアシスト操作値(La)を、前記座標偏差(e)に基づいて演算する。具体的には、コントローラ50は、フィードバック制御を行うための例えば下記のような式(1)を予め記憶している。例えば図4に示すように、アシスト操作値演算部56(PIDコントローラ)は、下記の式(1)と、座標偏差(e)と、を用いてアシスト操作値(La)を演算する。なお、下記式(1)において、「u」は、アシスト操作値(La)であり、「Kp」、「Ki」、「Kd」は、PIDゲイン(比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲイン)であり、「e」は、座標偏差である。
【0070】
【数1】
【0071】
アシスト操作値(La)は、座標偏差(e)をゼロに近づけるための操作値、すなわち、バケット6の先端(特定部位)を目標座標に近づけるための操作値である。コントローラ50は、座標偏差(e)をゼロに近づけるためのアシスト操作値(La)を用いたフィードバック制御を行う。例えば、アシスト操作値(La)は、バケット6の先端が移動する方向を目標座標に近づけることと、座標偏差(e)の大きさ(距離)が小さくなるにつれてバケット6の先端が移動する速さを小さくすること、の少なくとも一方を実現するような操作値であってもよい。アシスト操作値(La)は、バケット6の先端が目標座標に向かって移動するようにオペレータの操作をアシストするような操作値であってもよい。また、アシスト操作値(La)は、座標偏差(e)が大きいときにはバケット6の先端が目標座標に向かって移動する速さを大きくし、座標偏差(e)が小さいときにはバケット6の先端が目標座標に向かって移動する速さを小さくするような操作値であってもよい。
【0072】
オペレータ操作値補正部57は、前記物理量偏差が大きいときに比べて前記物理量偏差が小さいときに小さな値になるように、前記オペレータ操作値(Lo)をオペレータ補正値(Lo’)に補正する。本実施形態では、オペレータ操作値補正部57は、オペレータ操作値(Lo)を、アシスト率(r)が大きいほど値が小さくなるように補正する。オペレータ操作値補正部57は、例えば、オペレータ操作値(Lo)に、予め設定された設定値(例えば「1」)からアシスト率(r)を引いた値をかけることによりオペレータ補正値(Lo’)を演算してもよい。具体的には、例えば、オペレータ操作値補正部57は、式(2)「Lo’=Lo×(1-r)」を用いて、オペレータ補正値(Lo’)を演算する。この式(2)において、アシスト率(r)は、ゼロ以上1以下の値(0≦r≦1)である。従って、オペレータ補正値(Lo’)は、アシスト率(r)が大きいほど小さくなる。
【0073】
アシスト操作値補正部58は、前記物理量偏差が大きいときに比べて前記物理量偏差が小さいときに大きな値になるように、アシスト操作値(La)をアシスト補正値(La’)に補正する。本実施形態では、アシスト操作値補正部58は、アシスト操作値(La)を、アシスト率(r)が大きいほど値が大きくなるように補正する。アシスト操作値補正部58は、例えば、アシスト操作値(La)にアシスト率(r)をかけることによりアシスト補正値(La’)を演算する。具体的には、例えば、アシスト操作値補正部58は、次の式(3)「La’=La×r」を用いて、アシスト補正値(La’)を演算する。この式(3)において、アシスト率(r)は、上記と同様に、ゼロ以上1以下の値(0≦r≦1)である。従って、アシスト補正値(La’)は、アシスト率(r)が大きいほど大きくなる。
【0074】
上述したように、動作指令部51は、前記複数の作業のうち、対象作業が行われている場合には、オペレータ補正値(Lo’)とアシスト補正値(La’)を用いて演算された制御指令を、対象作業において行われている操作に対応する比例弁に入力する。具体的には、動作指令部51は、対象作業が行われている場合には、オペレータ補正値(Lo’)とアシスト補正値(La’)とを足した合計値を、最終的な操作値である制御指令Y(Y=Lo×(1-r)+La×r)として出力する。出力された制御指令Yは、対象作業において操作されている操作装置のうちの少なくとも一つの操作装置に対応する比例弁に入力される。
【0075】
作業判定部59は、建設機械100が行う作業を判定する。作業判定部59は、複数の検出器31~34からコントローラ50に入力される検出信号に基づいて、ブーム姿勢、アーム姿勢、バケット姿勢及び旋回体姿勢を取得することができる。例えば、掘削作業、土砂保持旋回作業、排土作業、及び戻り旋回作業のそれぞれでは、ブーム4の姿勢、アーム5の姿勢、バケット6の姿勢及び上部旋回体2の姿勢の少なくとも一つが特徴的に経時変化するので、作業判定部59は、ブーム4の姿勢、アーム5の姿勢、バケット6の姿勢及び上部旋回体2の姿勢の少なくとも一つの経時変化のデータに基づいて、建設機械100の作業を判定することができる。
【0076】
具体的には、例えば、前記経時変化のデータが予め定められた掘削作業に関する条件を満たす場合、作業判定部59は、建設機械100が掘削作業を行っていると判定する。同様に、前記経時変化のデータが予め定められた土砂保持旋回作業に関する条件を満たす場合、作業判定部59は、建設機械100が土砂保持旋回作業を行っていると判定し、前記経時変化のデータが予め定められた排土作業に関する条件を満たす場合、作業判定部59は、建設機械100が排土作業を行っていると判定し、前記経時変化のデータが予め定められた戻り旋回作業に関する条件を満たす場合、作業判定部59は、建設機械100が戻り旋回作業を行っていると判定する。
【0077】
作業判定部59は、ブーム4の姿勢、アーム5の姿勢、バケット6の姿勢及び上部旋回体2の姿勢の少なくとも一つの経時変化のデータに代えて、又は当該経時変化のデータとともに、前記オペレータ操作値(Lo)に基づいて、建設機械100による作業を判定してもよい。また、作業判定部59は、ブーム4の姿勢、アーム5の姿勢、バケット6の姿勢及び上部旋回体2の姿勢の少なくとも一つの経時変化のデータに代えて、又は当該経時変化のデータとともに、作業装置に加わる荷重に基づいて、建設機械100による作業を判定してもよい。この場合、作業判定部59は、例えば、作業装置を構成する複数の可動部の少なくとも一つに取り付けられた荷重センサの検出結果(検出信号)を、建設機械100の作業の判定に用いてもよい。
【0078】
また、建設機械100の駆動装置が、オペレータが作業の種類を入力することが可能な入力装置90(図2参照)を備える場合には、作業判定部59は、オペレータによって入力された作業内容に基づいて建設機械100が行う作業を判定してもよい。
【0079】
以下、図5に示すフローチャートを参照しながら、コントローラ50による演算処理の一例について説明する。以下の具体例では、作業現場において、掘削作業、土砂保持旋回作業、排土作業、及び戻り旋回作業を含む一連の作業を含む土砂積込作業が繰り返し行われる。これらの作業のうち、排土作業は、上述した対象作業に設定されており、掘削作業、土砂保持旋回作業、及び戻り旋回作業は、非対象作業に設定されている。特定部位は、バケット6の先端に設定されている。
【0080】
コントローラ50の目標物理量設定部52は、記憶スイッチ80(本実施形態では座標記憶スイッチ)に対する入力操作が行われたか否かを判定する(ステップS1)。
【0081】
オペレータは、土砂積込作業を開始する時点において、例えば図6における上図(A)に示すように、操作装置61~64の操作レバー61A~64Aの少なくとも一つを操作することにより、所望の位置TP(星印の位置)までバケット6の先端を移動させる。この星印の位置TPは、排土作業においてバケット6に保持された土砂をバケット6からダンプトラックの荷台に落下させるのに適した目標の位置である。オペレータは、バケット6の先端を所望の位置TP(星印の位置)に停止させた後、記憶スイッチ80を押す。
【0082】
記憶スイッチ80が押されたことを示す信号がコントローラ50に入力されると、目標物理量設定部52は、記憶スイッチ80に対する入力操作が行われたと判定し(ステップS1においてYES)、その時点でバケット6の先端が位置する座標を目標座標(目標物理量)に設定する(ステップS2)。一方、目標物理量設定部52は、記憶スイッチ80に対する入力操作が行われていないと判定すると(ステップS1においてNO)、目標座標(目標物理量)をデフォルト値に設定する(ステップS3)。デフォルト値は、目標座標として予め設定されてメモリに記憶された座標であってもよく、前回に設定された目標座標であってもよい。
【0083】
次に、コントローラ50の作業判定部59は、対象作業として設定されている排土作業が行われているか否かを判定する(ステップS4)。作業判定部59は、複数の検出器31~34からコントローラ50に入力される検出信号に基づいて、例えばアーム5の姿勢及びバケット6の姿勢の経時変化のデータが予め定められた排土作業に関する条件を満たす場合、作業判定部59は、建設機械100が排土作業を行っていると判定する(ステップS4においてYES)。具体的には次の通りである。
【0084】
排土作業の前に行われる土砂保持旋回作業が終了し、排土作業が開始される時点の作業装置は、例えば図6における2つ目の図(B)に示されるような姿勢(排土作業開始姿勢)で配置される。図6における3つ目の図(C)は、排土作業の中間段階における作業装置の姿勢であり、図6における下図(D)は、排土作業が終了する時点の作業装置の姿勢である。これらの図(B)~(D)に示されるように、排土作業では、アーム5がアーム押し方向に移動するようにアーム操作装置62の操作レバー62Aに対してアーム押し操作が与えられるとともに、バケット6がバケット押し方向に移動するようにバケット操作装置63の操作レバー63Aに対してバケット押し操作が与えられる。すなわち、排土作業では、上記のようにアーム5の姿勢及びバケット6の姿勢が特徴的に経時変化する。従って、排土作業に関する条件は、上記のようなアーム5の姿勢及びバケット6の姿勢の特徴的な経時変化を判定可能な条件に予め設定される。
【0085】
排土作業が行われていると作業判定部59が判定すると(ステップS4においてYES)、現在物理量演算部53は、姿勢情報取得部(検出器31~34)から入力される姿勢情報に基づいてバケット6の先端のその時点での座標である現在座標を演算し、物理量偏差演算部54は、例えば上記の式(座標偏差(e)=目標座標-現在座標)を用いて座標偏差(e)を演算する(ステップS5)。
【0086】
次に、アシスト率設定部55は、例えば図3に示すマップと、物理量偏差演算部54により演算された座標偏差(e)と、に基づいて、アシスト率(r)を設定する(ステップS6)。
【0087】
次に、その時点におけるオペレータ操作値(Lo)がコントローラ50に入力される。具体的には、アーム操作装置62は、操作レバー62Aにアーム押し操作が与えられると、当該アーム押し操作の大きさに対応する電気信号であるオペレータ操作値(Lo)をコントローラ50に入力し、バケット操作装置63は、操作レバー63Aにバケット押し操作が与えられると、当該バケット押し操作の大きさに対応する電気信号であるオペレータ操作値(Lo)をコントローラ50に入力する。
【0088】
また、アシスト操作値演算部56(PIDコントローラ)は、上記の式(1)と、座標偏差(e)と、を用いて、バケット押し操作をアシストするためのアシスト操作値(La)と、を演算する。
【0089】
オペレータ操作値補正部57は、上記の式(2)と、バケット押し操作におけるオペレータ操作値(Lo)と、アシスト率(r)と、を用いて、オペレータ補正値(Lo’)を演算する。
【0090】
アシスト操作値補正部58は、上記の式(3)と、バケット押し操作におけるアシスト操作値(La)と、アシスト率(r)と、を用いて、アシスト補正値(La’)を演算する。
【0091】
動作指令部51は、動作指令部51は、バケット押し操作に関し、オペレータ補正値(Lo’)とアシスト補正値(La’)とを足した合計値を、最終的な操作値である制御指令Y(Y=Lo×(1-r)+La×r)として出力する(ステップS7)。出力された制御指令Yは、バケット押し操作に対応する比例弁47に入力される。
【0092】
一方、排土作業が行われていないと作業判定部59が判定すると(ステップS4においてNO)、動作指令部51は、複数の操作装置61~64の少なくとも一つから入力される操作に対応するオペレータ操作値(Lo)を、最終的な操作値である制御指令として出力する(ステップS8)。
【0093】
以上説明したように、この建設機械では、コントローラ50は、座標偏差(e)が大きいときに比べて座標偏差(e)が小さいときに小さな値になるように補正されたオペレータ補正値(Lo’)と座標偏差(e)が大きいときに比べて座標偏差(e)が小さいときに大きな値になるように補正されたアシスト補正値(La’)とを足した合計値を用いて少なくとも一つの作業装置の姿勢を制御する。すなわち、コントローラ50は、図4に示すように座標偏差(e)をゼロに近づけるためのアシスト操作値(La)を用いたフィードバック制御を行うとともに、図5のフローチャートのステップS1~S8に示すような演算処理を繰り返し行う。このことは、オペレータの意思を介入させながら、少なくとも一つの作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するためのオペレータによる操作をアシストすることを可能にする。
【0094】
コントローラ50は、座標偏差(e)が大きいときに比べて座標偏差(e)が小さいときに大きなアシスト率(r)を設定し、アシスト操作値(La)にアシスト率(r)をかけることによりアシスト補正値(La’)を演算し、オペレータ操作値(Lo)に、予め設定された設定値である「1」からアシスト率(r)を引いた値をかけることによりオペレータ補正値(Lo’)を演算する。従って、座標偏差(e)が小さくなるにつれて、すなわち、バケット6の先端が目標座標に近づくにつれて、オペレータ補正値(Lo’)を連続的に小さくするとともにアシスト補正値(La’)を連続的に大きくすることができる。このことは、バケット6の先端が目標座標に近づく過程において、オペレータによる操作が主体となる状態からコントローラ50によるアシストが主体となる状態へスムーズに移行させることを可能にする。
【0095】
[第2実施形態]
前記第1実施形態では、作業装置の姿勢に関連する物理量は、バケット6の先端(特定部位)の座標であるが、第2実施形態では前記ストロークセンサにより検出されるシリンダ長さである。第2実施形態では、目標物理量は、目標シリンダ長さであり、現在物理量は、ストロークセンサにより検出される実際のシリンダ長さ(現在シリンダ長さ)である。物理量偏差は、目標シリンダ長さと現在シリンダ長さとの偏差である長さ偏差である。
【0096】
この第2実施形態では、ブーム姿勢検出器31は、ブームシリンダ7のシリンダ長さを検出するシリンダストロークセンサであり、アーム姿勢検出器32は、アームシリンダ8のシリンダ長さを検出するシリンダストロークセンサであり、バケット姿勢検出器33は、バケットシリンダ9のシリンダ長さを検出するシリンダストロークセンサである。
【0097】
この第2実施形態では、オペレータは、複数の操作装置61~64の操作レバー61A~64Aの少なくとも一つを操作することによりブーム4、アーム5及びバケット6を所望の姿勢に配置する。所望の姿勢は、対象作業に応じて異なる。
【0098】
第2実施形態に係る駆動装置のコントローラ50は、第1実施形態と同様に例えば図5に示すフローチャートに沿って演算処理を行ってもよい。以下、図5に示すフローチャートを参照しながら、第2実施形態に係るコントローラ50による演算処理の一例について説明する。以下の具体例においても、対象作業は、排土作業に設定されており、掘削作業、土砂保持旋回作業、及び戻り旋回作業は、非対象作業には設定されている。
【0099】
コントローラ50の目標物理量設定部52は、記憶スイッチ80に対する入力操作が行われたか否かを判定する(ステップS1)。
【0100】
オペレータは、土砂積込作業を開始する時点において、操作装置61~64の操作レバー61A~64Aの少なくとも一つを操作することにより、アーム5及びバケット6を例えば図6における上図(A)に示すような所望の姿勢に配置した状態で記憶スイッチ80を押す。
【0101】
記憶スイッチ80が押されたことを示す信号がコントローラ50に入力されると、目標物理量設定部52は、記憶スイッチ80に対する入力操作が行われたと判定し(ステップS1においてYES)、その時点におけるアームシリンダ8のシリンダ長さを目標シリンダ長さ(第1目標シリンダ長さ)に設定し、その時点におけるバケットシリンダ9のシリンダ長さを目標シリンダ長さ(第2目標シリンダ長さ)に設定する(ステップS2)。一方、目標物理量設定部52は、記憶スイッチ80に対する入力操作が行われていないと判定すると(ステップS1においてNO)、目標シリンダ長さをデフォルト値に設定する(ステップS3)。デフォルト値は、第1目標シリンダ長さ及び第2目標シリンダ長さとして予め設定されてメモリに記憶された値であってもよく、前回に設定された第1目標シリンダ長さ及び第2目標シリンダ長さであってもよい。
【0102】
次に、コントローラ50の作業判定部59は、排土作業が行われているか否かを判定する(ステップS4)。作業判定部59は、複数の検出器31~34からコントローラ50に入力される検出信号に基づいて、例えばアーム5の姿勢及びバケット6の姿勢の経時変化のデータが予め定められた排土作業に関する条件を満たす場合、作業判定部59は、建設機械100が排土作業を行っていると判定する(ステップS4においてYES)。
【0103】
排土作業が行われていると作業判定部59が判定すると(ステップS4においてYES)、現在物理量演算部53は、アーム姿勢検出器32から入力される検出信号に基づいてその時点でのアームシリンダ8のシリンダ長さである現在シリンダ長さ(第1現在シリンダ長さ)を演算し、バケット姿勢検出器33から入力される検出信号に基づいてその時点でのバケットシリンダ9のシリンダ長さである現在シリンダ長さ(第2現在シリンダ長さ)を演算する。そして、物理量偏差演算部54は、例えば式(第1長さ偏差=第1目標シリンダ長さ-第1現在シリンダ長さ)を用いてアーム5の姿勢に関連する第1長さ偏差(e)を演算し、例えば式(第2長さ偏差=第2目標シリンダ長さ-第2現在シリンダ長さ)を用いてバケット6の姿勢に関連する第2長さ偏差(e)を演算する(ステップS5)。
【0104】
コントローラ50は、アーム5の姿勢を制御するために予め設定された例えば図3に示すようなマップ(アーム用マップ)を予め記憶し、バケット6の姿勢を制御するために予め設定された例えば図3に示すようなマップ(バケット用マップ)を予め記憶している。これら2つのマップは、排土作業においてアーム5及びバケット6のそれぞれが適した動作を行うように予め個別に設定されたものである。第2実施形態では、図3に示すグラフにおいて、横軸は、長さ偏差(第1長さ偏差又は第2長さ偏差)であり、縦軸は、アシスト率(r)である。
【0105】
次に、アシスト率設定部55は、前記アーム用マップと、物理量偏差演算部54により演算された第1長さ偏差(e)と、に基づいて、アーム5のためのアシスト率である第1アシスト率(r)を設定し、前記バケット用マップと、物理量偏差演算部54により演算された第2長さ偏差(e)と、に基づいて、バケット6のためのアシスト率である第2アシスト率(r)を設定する(ステップS6)。
【0106】
次に、その時点におけるオペレータ操作値(Lo)がコントローラ50に入力される。具体的には、アーム操作装置62は、操作レバー62Aにアーム押し操作が与えられると、当該アーム押し操作の大きさに対応する電気信号であるオペレータ操作値である第1オペレータ操作値(Lo)をコントローラ50に入力する。バケット操作装置63は、操作レバー63Aにバケット押し操作が与えられると、当該バケット押し操作の大きさに対応する電気信号であるオペレータ操作値である第2オペレータ操作値(Lo)をコントローラ50に入力する。
【0107】
コントローラ50は、アーム5の姿勢をフィードバック制御するために予め設定された例えば上記式(1)に示すような式(アーム用演算式)を予め記憶し、バケット6の姿勢をフィードバック制御するために予め設定された例えば上記式(1)に示すような式(バケット用演算式)を予め記憶している。これら2つの式は、排土作業においてアーム5及びバケット6のそれぞれが適した動作を行うように予め個別に設定されたものである。
【0108】
アシスト操作値演算部56(PIDコントローラ)は、前記アーム用演算式と、第1長さ偏差(e)と、を用いて、アーム押し操作をアシストするためのアシスト操作値である第1アシスト操作値(La)を演算する。同様に、アシスト操作値演算部56(PIDコントローラ)は、前記バケット用演算式と、第2長さ偏差(e)と、を用いて、バケット押し操作をアシストするためのアシスト操作値である第2アシスト操作値(La)を演算する。
【0109】
オペレータ操作値補正部57は、上記の式(2)と、アーム押し操作における第1オペレータ操作値(Lo)と、第1アシスト率(r)と、を用いて、第1オペレータ補正値(Lo’)を演算し、上記の式(2)と、バケット押し操作における第2オペレータ操作値(Lo)と、第2アシスト率(r)と、を用いて、第2オペレータ補正値(Lo’)を演算する。
【0110】
アシスト操作値補正部58は、上記の式(3)と、アーム押し操作における第1アシスト操作値(La)と、第1アシスト率(r)と、を用いて、第1アシスト補正値(La’)を演算し、上記の式(3)と、バケット押し操作における第2アシスト操作値(La)と、第2アシスト率(r)と、を用いて、第2アシスト補正値(La’)を演算する。
【0111】
動作指令部51は、アーム押し操作に関し、第1オペレータ補正値(Lo’)と第1アシスト補正値(La’)とを足した合計値である第1合計値を、最終的な操作値である第1制御指令Y(Y=Lo×(1-r)+La×r)として出力する。また、動作指令部51は、バケット押し操作に関し、第2オペレータ補正値(Lo’)と第2アシスト補正値(La’)とを足した合計値である第2合計値を、最終的な操作値である第2制御指令Y(Y=Lo×(1-r)+La×r)として出力する(ステップS7)。出力された第1制御指令Yは、アーム押し操作に対応する比例弁46に入力され、出力された第2制御指令Yは、バケット押し操作に対応する比例弁47に入力される。
【0112】
一方、排土作業が行われていないと作業判定部59が判定すると(ステップS4においてNO)、動作指令部51は、複数の操作装置61~64の少なくとも一つから入力される操作に対応するオペレータ操作値(Lo)を、最終的な操作値である制御指令として出力する(ステップS8)。
【0113】
以上のように、コントローラ50は、図4に示すように長さ偏差(e)をゼロに近づけるためのアシスト操作値(La)を用いたフィードバック制御を、アーム5及びバケット6のそれぞれについて行うとともに、図5のフローチャートのステップS1~S8に示すような演算処理を、アーム5及びバケット6のそれぞれについて繰り返し行う。このことは、オペレータの意思を介入させながら、アーム5の姿勢及びバケット6の姿勢を所望の姿勢に調整するためのオペレータによる操作をアシストすることを可能にする。
【0114】
[第3実施形態]
前記実施形態に係る駆動装置では、対象作業が排土作業であるが、本開示に係る駆動装置は、前記実施形態に限られない。対象作業は、例えば前記戻り旋回作業であってもよい。この場合、特定部位は、例えばバケット6の先端であり、作業装置の姿勢に関連する物理量は、バケット6の先端の高さであり、目標物理量は、例えばバケット6の先端の目標高さ(掘削開始高さ)であり、現在物理量は、例えばバケット6の先端の実際の高さである現在高さであり、物理量偏差は、目標高さ(掘削開始高さ)と現在高さとの偏差である高さ偏差である(例えばバケット6の先端と施工面との距離)。掘削開始高さ及び現在高さは、例えば地面を基準とする値であってもよく、地面よりも下方又は上方の位置を基準とする値であってもよい。図7は、この第3実施形態におけるバケットの先端高さ及びアシスト率の経時変化の一例を示すグラフであり、図8は、この第3実施形態におけるコントローラ50による制御の流れを示すブロック線図の例である。
【0115】
この第3実施形態では、オペレータは、複数の操作装置61~64の操作レバー61A~64Aの少なくとも一つを操作することによりバケット6の先端を所望の位置に配置する。所望の位置は、例えば掘削を開始するときのバケット6の先端の位置である。バケット6の先端が所望の位置に配置された状態でオペレータが記憶スイッチ80に対して入力操作を行うと、目標物理量設定部52は、その時点でバケット6の先端が配置されている高さを掘削開始高さ(目標高さ)に設定する。
【0116】
現在物理量演算部53は、姿勢情報取得部から入力される姿勢情報に基づいてバケット6の先端の現在高さ(アタッチメント先端高さ)を演算する。現在物理量演算部53は、例えば、検出器31~33により検出されるブーム角度θ1、アーム角度θ2及びバケット角度θ3と、旋回体姿勢検出器34により検出される水平面に対する上部旋回体2の傾斜角度と、に基づいて、前記現在高さを演算してもよい。具体的には、例えば、現在物理量演算部53は、下部走行体1が配置されている地面とバケット6の下方に位置する地面とが同一平面に含まれると仮定した場合には、検出器31~34から入力される検出信号に基づいて、地面からのバケット6の先端の高さを幾何学的に演算することができる。
【0117】
物理量偏差演算部54は、例えば式「高さ偏差=掘削開始高さ-現在高さ」を用いて、前記掘削開始高さと前記現在高さとの偏差である前記高さ偏差を演算する。
【0118】
アシスト率設定部55は、前記高さ偏差が大きいときに比べて前記高さ偏差が小さいときに大きなアシスト率(r)を設定する。具体的には、アシスト率設定部55は、例えば図8に示すように高さ偏差(e)とアシスト率(r)との関係が予め設定されたマップと、物理量偏差演算部54により演算された高さ偏差と、に基づいて、アシスト率(r)を設定する。
【0119】
アシスト操作値演算部56は、前記オペレータの操作をアシストするためのアシスト操作値(La)を演算する。具体的には、この第3実施形態では、アシスト操作値演算部56は、目標バケット角度と実際のバケット角度θ3との偏差である角度偏差をゼロに近づけるための操作値であるアシスト操作値(La)を演算する。
【0120】
図1において、角度θ4は、地面に対するアーム5の角度であるアーム対地角度であり、角度θ5は、地面に対するバケット6の角度であるバケット対地角度である。アーム対地角度θ4は、例えば図1に示すように、ブーム4に対するアーム5の回動中心とアーム5に対するバケット6の回動中心とを結ぶ直線と、地面との角度であってもよい。バケット対地角度θ5は、例えば図1に示すように、アーム5に対するバケット6の回動中心とバケット6の先端とを結ぶ直線と、地面との角度であってもよい。
【0121】
アシスト操作値演算部56は、例えば図8の左端に描かれたグラフのようなアーム対地角度θ4とバケット6の目標の角度(目標バケット角度)との関係が予め設定されたマップと、その時の実際のアーム対地角度θ4と、に基づいて、目標バケット角度を設定する。次に、アシスト操作値演算部56(PIDコントローラ)は、例えば上述したような式(1)と、前記角度偏差と、を用いてアシスト操作値(La)を演算する。
【0122】
オペレータ操作値補正部57は、上記と同様の式(2)「Lo’=Lo×(1-r)」を用いて、オペレータ補正値(Lo’)を演算する。演算されたオペレータ補正値(Lo’)は、アシスト率(r)が大きいほど小さくなる。
【0123】
アシスト操作値補正部58は、上記と同様の式(3)「La’=La×r」を用いて、アシスト補正値(La’)を演算する。演算されたアシスト補正値(La’)は、アシスト率(r)が大きいほど大きくなる。
【0124】
動作指令部51は、対象作業(この第3実施形態では戻り旋回作業)が行われている場合には、オペレータ補正値(Lo’)とアシスト補正値(La’)とを足した合計値を、最終的な操作値である制御指令Y(Y=Lo×(1-r)+La×r)として出力する。出力された制御指令Yは、戻り旋回作業において操作されている操作装置のうちの少なくとも一つの操作装置に対応する比例弁に入力される。
【0125】
この第3実施形態では、バケット6の掘削開始高さとバケット6の先端の現在高さとの偏差である高さ偏差を用いてアシスト率が設定される。従って、高さ偏差が大きいときにはオペレータの意思を大きく介入させることができる。一方で、高さ偏差が小さいとき、すなわち、バケット6の先端が掘削開始高さ(目標高さ)に近づいて作業装置の姿勢を微調整するときには、オペレータの意思の介入を高さ偏差が大きいときに比べて小さくし、コントローラ50によるアシストによってバケット6の先端を掘削開始高さに容易に調整することができる。これにより、オペレータの意思の介入と作業装置の姿勢の容易な調整とを両立させることができる。
【0126】
また、この第3実施形態では、目標バケット角度と実際のバケット角度θ3との偏差である角度偏差を用いてアシスト操作値(La)が演算される。このアシスト操作値(La)は、前記角度偏差をゼロに近づけるために例えば上記の式(1)を用いて演算される操作値である。従って、この第3実施形態では、コントローラ50は、図8に示すように前記角度偏差をゼロに近づけるためのアシスト操作値(La)を用いたフィードバック制御を行うとともに、例えば図5のフローチャートのステップS1~S8に示すような演算処理を繰り返し行うことで、オペレータの意思を介入させながら、掘削開始時のバケット対地角度θ5を所望の角度に近づけることができる。所望の角度は、バケット6の先端がアーム5に対するバケット6の回動中心の真下に位置するような角度(例えば90度程度の角度)であることが好ましい。
【0127】
[第4実施形態]
図9は、第4実施形態に係るコントローラ50による制御の流れを示すブロック線図の一例である。この第4実施形態では、作業装置の姿勢に関連する物理量は、角度センサにより検出される角度であり、目標物理量は、作業装置の角度の目標である目標角度であり、現在物理量は、角度センサにより検出される実際の角度である現在角度である。具体的には、第4実施形態では、ブーム4の姿勢、アーム5の姿勢及びバケット6の姿勢がブーム4の角度、アーム5の角度及びバケット6の角度を用いて制御される。第4実施形態では、ブーム姿勢検出器31は、ブーム角度センサであり、アーム姿勢検出器32は、アーム角度センサであり、バケット姿勢検出器33は、バケット角度センサである。
【0128】
この第4実施形態では、目標物理量は、第1~第3目標物理量を含み、現在物理量は、第1~第3現在物理量を含み、物理量偏差は、第1~第3物理量偏差を含む。具体的には、第1目標物理量は、ブーム4の角度の目標である第1目標角度(ブーム目標角度)であり、第2目標物理量は、アーム5の角度の目標である第2目標角度(アーム目標角度)であり、第3目標物理量は、バケット6の角度の目標である第3目標角度(バケット目標角度)である。第1現在物理量は、ブーム姿勢検出器31により検出される実際のブーム4の角度である第1現在角度であり、第2現在物理量は、アーム姿勢検出器32により検出される実際のアーム5の角度である第2現在角度であり、第3現在物理量は、バケット姿勢検出器33により検出される実際のバケット6の角度である第3現在角度である。第1物理量偏差は、第1目標角度と第1現在角度との偏差である第1角度偏差であり、第2物理量偏差は、第2目標角度と第2現在角度との偏差である第2角度偏差であり、第3物理量偏差は、第3目標角度と第3現在角度との偏差である第3角度偏差である。
【0129】
第4実施形態に係る駆動装置のコントローラ50は、第1実施形態と同様に例えば図5に示すフローチャートに沿って演算処理を行ってもよい。以下、図5に示すフローチャートを参照しながら、第4実施形態に係るコントローラ50による演算処理の一例について説明する。第4実施形態では、対象作業は、排土作業に設定されており、掘削作業、土砂保持旋回作業、及び戻り旋回作業は、非対象作業には設定されている。
【0130】
オペレータは、土砂積込作業を開始する時点において、操作装置61~64の操作レバー61A~64Aの少なくとも一つを操作することにより、ブーム4、アーム5及びバケット6を例えば図6における上図(A)に示すような所望の姿勢に配置した状態で、記憶スイッチ80を押す。
【0131】
記憶スイッチ80が押されたことを示す信号がコントローラ50に入力されると、目標物理量設定部52(図9における目標姿勢設定装置)は、記憶スイッチ80に対する入力操作が行われたと判定し(ステップS1においてYES)、その時点におけるブーム4の角度を第1目標角度に設定し、その時点におけるアーム5の角度を第2目標角度に設定し、その時点におけるバケット6の角度を第3目標角度に設定する(ステップS2)。一方、目標物理量設定部52は、記憶スイッチ80に対する入力操作が行われていないと判定すると(ステップS1においてNO)、第1~第3目標角度をデフォルト値に設定する(ステップS3)。デフォルト値は、第1~第3目標角度として予め設定されてメモリに記憶された値であってもよく、前回に設定された第1~第3目標角度であってもよい。
【0132】
次に、コントローラ50の作業判定部59は、上述したように排土作業が行われているか否かを判定する(ステップS4)。排土作業が行われていると作業判定部59が判定すると(ステップS4においてYES)、現在物理量演算部53は、ブーム姿勢検出器31から入力される検出信号に基づいてその時点でのブーム4の角度である第1現在角度を演算し、アーム姿勢検出器32から入力される検出信号に基づいてその時点でのアーム5の角度である第2現在角度を演算し、バケット姿勢検出器33から入力される検出信号に基づいてその時点でのバケット6の角度である第3現在角度を演算する。そして、物理量偏差演算部54は、例えば式(第1角度偏差=第1目標角度-第1現在角度)を用いて、ブーム4に関する偏差である第1角度偏差を演算し、例えば式(第2角度偏差=第2目標角度-第2現在角度)を用いて、アーム5に関する偏差である第2角度偏差を演算し、例えば式(第3角度偏差=第3目標角度-第3現在角度)を用いて、バケット6に関する偏差である第3角度偏差を演算する(ステップS5)。
【0133】
コントローラ50は、ブーム4の姿勢を制御するために予め設定された例えば図3に示すようなマップ(ブーム用マップ)を予め記憶し、アーム5の姿勢を制御するために予め設定された例えば図3に示すようなマップ(アーム用マップ)を予め記憶し、バケット6の姿勢を制御するために予め設定された例えば図3に示すようなマップ(バケット用マップ)を予め記憶している。これら3つのマップは、排土作業においてブーム4、アーム5及びバケット6のそれぞれが適した動作を行うように予め個別に設定されたものである。第4実施形態では、図3に示すグラフにおいて、横軸は、角度偏差(第1角度偏差、第2角度偏差又は第3角度偏差)であり、縦軸は、アシスト率(r)である。
【0134】
次に、アシスト率設定部55は、前記ブーム用マップと、物理量偏差演算部54により演算された第1角度偏差(e)と、に基づいて、ブーム4のためのアシスト率である第1アシスト率(r)を設定する。同様に、アシスト率設定部55は、前記アーム用マップと、物理量偏差演算部54により演算された第2角度偏差(e)と、に基づいて、アーム5のためのアシスト率である第2アシスト率(r)を設定し、前記バケット用マップと、物理量偏差演算部54により演算された第3角度偏差(e)と、に基づいて、バケット6のためのアシスト率である第3アシスト率(r)を設定する(ステップS6)。
【0135】
次に、その時点におけるオペレータ操作値(Lo)がコントローラ50に入力される。具体的には、ブーム操作装置61は、操作レバー61Aにブーム操作(ブーム下げ操作又はブーム上げ操作)が与えられると、当該ブーム操作の方向及び大きさに対応する電気信号であるオペレータ操作値(第1オペレータ操作値(Lo))をコントローラ50に入力する。アーム操作装置62は、操作レバー62Aにアーム押し操作が与えられると、当該アーム押し操作の大きさに対応する電気信号であるオペレータ操作値(第2オペレータ操作値(Lo))をコントローラ50に入力する。バケット操作装置63は、操作レバー63Aにバケット押し操作が与えられると、当該バケット押し操作の大きさに対応する電気信号であるオペレータ操作値(第3オペレータ操作値(Lo))をコントローラ50に入力する。
【0136】
コントローラ50は、ブーム4の姿勢をフィードバック制御するために予め設定された例えば上記式(1)に示すような式(ブーム用演算式)を予め記憶し、アーム5の姿勢をフィードバック制御するために予め設定された例えば上記式(1)に示すような式(アーム用演算式)を予め記憶し、バケット6の姿勢をフィードバック制御するために予め設定された例えば上記式(1)に示すような式(バケット用演算式)を予め記憶している。これら3つの式は、排土作業においてブーム4、アーム5及びバケット6のそれぞれが適した動作を行うように予め個別に設定されたものである。
【0137】
アシスト操作値演算部56(PIDコントローラ)は、前記ブーム用演算式と、第1角度偏差(e)と、を用いて、ブーム操作をアシストするためのアシスト操作値である第1アシスト操作値(La)を演算する。同様に、アシスト操作値演算部56(PIDコントローラ)は、前記アーム用演算式と、第2角度偏差(e)と、を用いて、アーム押し操作をアシストするためのアシスト操作値である第2アシスト操作値(La)を演算し、前記バケット用演算式と、第3角度偏差(e)と、を用いて、バケット押し操作をアシストするためのアシスト操作値である第3アシスト操作値(La)を演算する。
【0138】
オペレータ操作値補正部57は、上記の式(2)と、ブーム操作における第1オペレータ操作値(Lo)と、第1アシスト率(r)と、を用いて、第1オペレータ補正値(Lo’)を演算する。同様に、オペレータ操作値補正部57は、上記の式(2)と、アーム押し操作における第2オペレータ操作値(Lo)と、第2アシスト率(r)と、を用いて、第2オペレータ補正値(Lo’)を演算し、上記の式(2)と、バケット押し操作における第3オペレータ操作値(Lo)と、第3アシスト率(r)と、を用いて、第3オペレータ補正値(Lo’)を演算する。
【0139】
アシスト操作値補正部58は、上記の式(3)と、ブーム操作における第1アシスト操作値(La)と、第1アシスト率(r)と、を用いて、第1アシスト補正値(La’)を演算する。同様に、アシスト操作値補正部58は、上記の式(3)と、アーム押し操作における第2アシスト操作値(La)と、第2アシスト率(r)と、を用いて、第2アシスト補正値(La’)を演算し、上記の式(3)と、バケット押し操作における第3アシスト操作値(La)と、第3アシスト率(r)と、を用いて、第3アシスト補正値(La’)を演算する。
【0140】
動作指令部51は、ブーム操作に関し、第1オペレータ補正値(Lo’)と第1アシスト補正値(La’)とを足した合計値である第1合計値を、最終的な操作値である第1制御指令Y(Y=Lo×(1-r)+La×r)として出力する。また、動作指令部51は、アーム押し操作に関し、第2オペレータ補正値(Lo’)と第2アシスト補正値(La’)とを足した合計値である第2合計値を、最終的な操作値である第2制御指令Y(Y=Lo×(1-r)+La×r)として出力する。また、動作指令部51は、バケット押し操作に関し、第3オペレータ補正値(Lo’)と第3アシスト補正値(La’)とを足した合計値である第3合計値を、最終的な操作値である第3制御指令Y(Y=Lo×(1-r)+La×r)として出力する(ステップS7)。出力された第1制御指令Yは、ブーム操作(ブーム下げ操作又はブーム上げ操作)に対応する比例弁45に入力され、出力された第2制御指令Yは、アーム押し操作に対応する比例弁46に入力され、出力された第3制御指令Yは、バケット押し操作に対応する比例弁47に入力される。
【0141】
一方、排土作業が行われていないと作業判定部59が判定すると(ステップS4においてNO)、動作指令部51は、複数の操作装置61~64の少なくとも一つから入力される操作に対応するオペレータ操作値(Lo)を、最終的な操作値である制御指令として出力する(ステップS8)。
【0142】
以上のように、コントローラ50は、図4に示すように角度偏差(e)をゼロに近づけるためのアシスト操作値(La)を用いたフィードバック制御を、ブーム4、アーム5及びバケット6のそれぞれについて行うとともに、図5のフローチャートのステップS1~S8に示すような演算処理を、ブーム4、アーム5及びバケット6のそれぞれについて繰り返し行う。このことは、オペレータの意思を介入させながら、ブーム4の姿勢、アーム5の姿勢及びバケット6の姿勢を所望の姿勢に調整するためのオペレータによる操作をアシストすることを可能にする。
【0143】
[変形例]
以上、本開示の実施形態に係る建設機械の駆動装置について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例を含む。
【0144】
(A)第1実施形態では、作業装置の姿勢に関連する物理量がバケット6の先端の座標であり、バケット6の先端の座標を用いてバケット6の姿勢が制御されるが、第1実施形態は、このような具体例に限られない。例えば、ブーム4における特定部位(例えばブーム4の先端)の座標、アーム5における特定部位(例えばアーム5の先端)の座標、及びバケット6における特定部位(例えばバケット6の先端)の座標の少なくとも一つを用いて作業装置の姿勢が制御されてもよい。具体的には、例えば、アーム5の先端の座標を用いてアーム5の姿勢が制御され、かつ、バケット6の先端の座標を用いてバケット6の姿勢が制御されてもよい。また、ブーム4の先端の座標を用いてブーム4の姿勢が制御され、アーム5の先端の座標を用いてアーム5の姿勢が制御され、かつ、バケット6の先端の座標を用いてバケット6の姿勢が制御されてもよい。具体的には、第1実施形態においてアーム5の先端が特定部位として設定されるとともにバケット6の先端が特定部位として設定される場合、コントローラ50は、アーム5の先端の実際の座標である現在物理量と、アーム5の先端の座標の目標である目標物理量と、これらの偏差である物理量偏差と、オペレータ操作値と、アシスト操作値と、オペレータ補正値と、アシスト補正値と、を用いて、アーム5の姿勢を制御し、バケット6の先端の実際の座標である現在物理量と、バケット6の先端の座標の目標である目標物理量と、これらの偏差である物理量偏差と、オペレータ操作値と、アシスト操作値と、オペレータ補正値と、アシスト補正値と、を用いて、バケット6の姿勢を制御することが好ましい。
【0145】
(B)第2実施形態では、作業装置の姿勢に関連する物理量がシリンダ長さであり、アームシリンダ8のシリンダ長さを用いてアーム5の姿勢が制御され、かつ、バケットシリンダ9のシリンダ長さを用いてバケット6の姿勢が制御されるが、第2実施形態は、このような具体例に限られない。例えば、ブームシリンダ7のシリンダ長さ、アームシリンダ8のシリンダ長さ、及びバケットシリンダ9のシリンダ長さの少なくとも一つを用いて作業装置の姿勢が制御されてもよい。
【0146】
(C)第3実施形態では、作業装置の姿勢に関連する物理量がバケット6の先端の高さであり、バケット6の先端の高さを用いて作業装置の姿勢が制御されるが、このような具体例に限られない。例えば、ブーム4における特定部位(例えばブーム4の先端)の高さ、アーム5における特定部位(例えばアーム5の先端)の高さ、及びバケット6における特定部位(例えばバケット6の先端)の高さの少なくとも一つを用いて作業装置の姿勢が制御されてもよい。
【0147】
(D)作業装置の姿勢に関連する物理量は、例えば、ブーム角度θ1、アーム角度θ2、バケット角度θ3、及び上部旋回体2の傾斜角度の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0148】
(E)建設機械システムについて
本開示に係る駆動装置は、建設機械システムにも適用することができる。当該建設機械システムは、前記建設機械100と、当該建設機械100に対して離れた位置に配置された操作装置61~64である遠隔操作装置61~64と、を備える。建設機械100は、コントローラ50の一部又は全部を含んでいてもよく、コントローラ50の一部又は全部は、遠隔地に配置されていてもよい。建設機械100は、遠隔操作装置61~64に与えられるオペレータによる操作に基づいて動作するように構成される。遠隔操作装置61~64から出力されるオペレータ操作値(Lo)は、無線通信又は有線通信によって建設機械100に送信される。また、建設機械100が作業を行う作業現場の像は、図略のカメラにより撮像され、撮像されたデータは、無線通信又は有線通信によって遠隔地に送信され、遠隔地に配置された表示装置は、送信されたデータを用いて作業現場の映像をリアルタイムで表示する。オペレータは、遠隔地において表示装置を見ながら遠隔操作装置61~64を操作する。このように遠隔地において遠隔操作装置61~64を操作する場合には、建設機械100(実機)に搭乗して操作装置を操作する場合に比べて、オペレータは作業現場の遠近感などの作業現場の状況を把握し難くなる。従って、このような遠隔操作のためのシステムに本開示に係る前記駆動装置が適用されることで、作業装置を所定の姿勢に調整する作業において前記駆動装置のアシストによるオペレータの負担軽減効果がより顕著になる。
【0149】
(F)操作装置について
前記操作装置61~64のそれぞれがリモコン弁を備えた操作装置により構成されている場合、建設機械100は、操作装置61~64のそれぞれの操作レバーに与えられる操作の大きさであるレバー操作量に応じて前記リモコン弁から出力されるパイロット油の圧力を検出する図略の複数のパイロット圧センサを備える。複数のパイロット圧センサのそれぞれは、検出したパイロット油の圧力に対応する信号である操作値を、オペレータ操作値としてコントローラ50に入力する。また、各リモコン弁とそれに対応する制御弁との間には電磁比例弁が配置され、当該電磁比例弁は、コントローラ50からの制御指令に基づいてパイロット油の圧力を減圧し、減圧されたパイロット圧を対応する制御弁のパイロットポートに供給する。レバー操作量に応じて前記リモコン弁から出力されるパイロット油の圧力よりも大きな圧力を制御弁のパイロットポートに対して供給する場合には、コントローラ50は、前記電磁比例弁とは異なる第2電磁比例弁の2次圧が図略のシャトル弁において高位選択されることで制御弁のパイロットポートに供給されるように第2電磁比例弁を制御してもよい。
【0150】
(G)入力装置について
前記駆動装置は、アシスト率(r)を補正するためのオペレータによる入力を受ける入力装置90(図2参照)をさらに備え、コントローラ50は、入力装置90に対するオペレータによる入力に基づいてアシスト率(r)を補正するように構成されていてもよい。この構成では、オペレータがアシスト率(r)を補正できるので、オペレータの意思の介入の度合いをオペレータの好みに応じて調整することができる。
【0151】
具体的には、例えば、オペレータは、入力装置90にアシスト率(r)を補正するための入力値(r’)を入力する。コントローラ50のオペレータ操作値補正部57は、例えば式「Lo×(1-min(r,r’))」を用いてオペレータ補正値(Lo’)を演算し、アシスト操作値補正部58は、例えば式「La×min(r,r’)」を用いて、アシスト補正値(La’)を演算してもよい。そして、動作指令部51は、オペレータ補正値(Lo’)とアシスト補正値(La’)とを足した合計値を、最終的な操作値である制御指令Y(Y=Lo×(1-min(r,r’))+La×min(r,r’))として出力してもよい。なお、上記式の「min(r,r’)」は、アシスト率(r)と入力値(r’)のうち、小さい方が演算に採用されることを意味する。
【0152】
また、コントローラ50のオペレータ操作値補正部57は、例えば式「Lo×(1-r)×(1-r’)」を用いてオペレータ補正値(Lo’)を演算し、アシスト操作値補正部58は、例えば式「La×r×r’」を用いて、アシスト補正値(La’)を演算してもよい。そして、動作指令部51は、オペレータ補正値(Lo’)とアシスト補正値(La’)とを足した合計値を、最終的な操作値である制御指令Y(Y=Lo×(1-r)×(1-r’)+La×r×r’)として出力してもよい。
【0153】
(H)報知装置について
前記駆動装置は、図2に示すようにコントローラ50による制御の状況をオペレータに知らせるための報知装置70(教示装置の一例)をさらに備え、コントローラ50は、アシスト率(r)に応じて報知装置70からの出力が変化するように報知装置の動作を制御するように構成されていてもよい。報知装置70は、例えば音、映像、振動(例えば操作レバーの振動)などの出力を行う。この構成では、オペレータは、作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するための作業を、アシスト率(r)に基づいたコントローラ50による制御の状況をおおまかに把握しながら行うことができる。これにより、オペレータはコントローラ50によるアシスト制御が行われていることを認識できるので、操作時におけるオペレータの安心感が向上する。この場合、コントローラ50は、アシスト率(r)の大きさに応じて報知装置70からの出力が変化するように報知装置の動作を制御するように構成されているのが好ましい。これにより、オペレータは、作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するための作業を、アシスト率(r)に基づいたコントローラ50による制御の状況をより正確に把握しながら行うことができる。
【0154】
また、コントローラ50は、前記物理量偏差(e)に応じて報知装置70からの出力が変化するように報知装置70の動作を制御するように構成されていてもよい。この構成では、オペレータは、作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するための作業を、物理量偏差(e)に基づいたコントローラによる制御の状況をおおまかに把握しながら行うことができる。これにより、オペレータは作業装置が所望の姿勢(目標の姿勢)に到達するまでの距離感をつかみながら操作装置を操作できるので、操作時におけるオペレータの安心感が向上する。特に、オペレータが非熟練者である場合、非熟練者の距離感をつかむ能力の向上が期待できる。
【0155】
また、この場合、コントローラ50は、前記物理量偏差(例えば座標偏差、高さ偏差、距離偏差、長さ偏差、角度偏差など)の大きさに応じて報知装置70からの出力が変化するように報知装置の動作を制御するように構成されているのが好ましい。これにより、オペレータは、作業装置の姿勢を所望の姿勢に調整するための作業を、前記物理量偏差(e)、すなわち前記距離感をより正確に把握しながら行うことができる。
【0156】
図9に示す具体例では、コントローラ50は、角度偏差に応じて報知装置70としてのアラーム音発報装置からのアラーム音が変化するように報知装置70の動作を制御する。コントローラ50は、偏差(e)に応じて音の種類を変化させるように構成されていてもよい。これにより、オペレータは、作業装置が所望の姿勢(目標の姿勢)に到達するまでの距離を音の種類の変化を通じて認識することができるので、安心感が向上する。また、コントローラ50は、アシスト率(r)に応じて音の種類を変化させるように構成されていてもよい。これにより、オペレータはコントローラ50によるアシスト制御が行われていることを認識できるので、操作時におけるオペレータの安心感が向上する。
【0157】
(I)目標物理量について
コントローラ50は、複数の目標物理量を設定し、建設機械100により行われている作業を判定し、前記複数の目標物理量のうち、判定された作業に応じた目標物理量を選択するように構成されていてもよい。この構成では、例えば複数の異なる作業が連続して行われるような場合に、オペレータは作業ごとに目標物理量を選択する必要がないので、オペレータの負担が軽減される。具体的を挙げると次の通りである。
【0158】
作業現場において、掘削作業、土砂保持旋回作業、排土作業、及び戻り旋回作業を含む一連の作業である土砂積込作業が繰り返し行われる場合において、排土作業及び戻り旋回作業は、上述した対象作業に設定されており、掘削作業及び土砂保持旋回作業は、非対象作業に設定されていてもよい。この場合、前記一連の作業が開始される前に、コントローラ50は、排土作業のための目標物理量と、戻り旋回作業のための目標物理量と、を設定して記憶する。そして、前記一連の作業において、コントローラ50の作業判定部59は、建設機械100により行われている作業を判定し、動作指令部51は、排土作業又は戻り旋回作業が行われている場合には、オペレータ補正値(Lo’)とアシスト補正値(La’)とを足した合計値を、最終的な操作値である制御指令Y(Y=Lo×(1-r)+La×r)として出力する。一方、動作指令部51は、排土作業及び戻り旋回作業の何れもが行われていない場合には、複数の操作装置61~64の少なくとも一つから入力される操作に対応するオペレータ操作値(Lo)を、最終的な操作値である制御指令として出力する。
【0159】
(J)前記実施形態では、コントローラ50は、アシスト操作値(La)にアシスト率(r)をかけることによりアシスト補正値(La’)を演算し、オペレータ操作値(Lo)に、予め設定された設定値(例えば「1」)からアシスト率(r)を引いた値をかけることによりオペレータ補正値(Lo’)を演算するが、このような形態に限られない。コントローラ50は、アシスト率を用いずにアシスト補正値(La’)及びオペレータ補正値(Lo’)を演算してもよい。すなわち、コントローラ50は、物理量偏差(e)が大きいときに比べて物理量偏差(e)が小さいときにオペレータ補正値(Lo’)が小さな値になるように予め設定されたマップに基づいて、オペレータによる操作に対応するオペレータ操作値(Lo)をオペレータ補正値(Lo’)に補正してもよい。また、コントローラ50は、物理量偏差(e)が大きいときに比べて物理量偏差(e)が小さいときにアシスト補正値(La’)が大きな値になるように予め設定されたマップに基づいて、アシスト操作値(La)をアシスト補正値(La’)に補正してもよい。
【0160】
(K)映像によるアシストについて
上述した各実施形態における建設機械100の駆動装置は、表示装置(教示装置の一例)をさらに備え、コントローラ50は、前記表示装置において、前記複数の作業装置の少なくとも一つの作業装置の実際の姿勢に関する映像である実姿勢映像と、前記少なくとも一つの作業装置の目標の姿勢に関する映像である目標姿勢映像と、を表示させるように構成されていてもよい。表示装置は、例えば、上部旋回体2のキャビン内においてオペレータが見ることが可能な位置に配置されたディスプレイであってもよく、オペレータが装着可能なヘッドマウントディスプレイであってもよい。また、表示装置は、例えば、キャビンの前面ガラスに映像を表示することが可能な装置であってもよい。また、本開示に係る駆動装置が上述したような建設機械システムに適用される場合には、表示装置は、遠隔地に配置されていてもよい。すなわち、表示装置は、建設機械100に対して離れた位置に配置された遠隔操作装置61~64を操作するオペレータが見ることが可能な装置であってもよい。
【0161】
図10は、表示装置92の一例を示す図である。図10に示す具体例では、コントローラ50は、複数の作業装置を含む建設機械100全体が側面視されたような映像を表示する。図10において実線で描かれた映像は、その時点における下部走行体1、上部旋回体2、ブーム4、アーム5及びバケット6のそれぞれの実際の姿勢に関する映像である実姿勢映像を含む。実姿勢映像は、例えばカメラにより撮像された少なくとも一つの作業装置の実際の映像であってもよく、姿勢情報取得部からコントローラ50に入力された前記姿勢情報に基づいてコントローラ50が作成した映像であってもよい。
【0162】
図10において破線で描かれた映像は、ブーム4の目標の姿勢に関するブーム目標姿勢映像と、アーム5の目標の姿勢に関するアーム目標姿勢映像と、バケット6の目標の姿勢に関するバケット目標姿勢映像と、を含む。ブーム目標姿勢映像は、目標物理量設定部52により設定されたブーム4の姿勢に関連する目標物理量(ブーム目標物理量)に対応する映像である。アーム目標姿勢映像は、目標物理量設定部52により設定されたアーム5の姿勢に関連する目標物理量(アーム目標物理量)に対応する映像である。バケット目標姿勢映像は、目標物理量設定部52により設定されたバケット6の姿勢に関連する目標物理量(バケット目標物理量)に対応する映像である。
【0163】
コントローラ50は、表示装置92において、ブーム4、アーム5及びバケット6の実姿勢映像にブーム目標姿勢映像、アーム目標姿勢映像及びバケット目標姿勢映像を重ねて表示させる。これにより、オペレータは、ブーム4、アーム5及びバケット6の目標の姿勢とこれらの実際の姿勢とのギャップを、表示装置92に表示される映像を通じて認識することができる。特にオペレータが非熟練者である場合には、当該非熟練者が表示装置92に表示される映像を通じて前記ギャップを認識しながら操作装置を操作することで操作技術の効果的な向上が見込まれる。
【0164】
図11は、表示装置92の他の例を示す図である。図11に示す具体例では、コントローラ50は、キャビンの運転席に座るオペレータからの視点を想定した映像を表示する。図11において実線で描かれた左の映像は、その時点におけるアーム5及びバケット6のそれぞれの実際の姿勢に関する映像(実姿勢映像)である。実姿勢映像は、例えばカメラにより撮像された少なくとも一つの作業装置の実際の映像であってもよく、前記姿勢情報に基づいてコントローラ50が作成した映像であってもよい。また、表示装置がキャビンの前面ガラスに映像を表示することが可能な装置である場合には、実姿勢映像は、前記姿勢情報に基づいてコントローラ50が作成した映像であってもよく、前面ガラスを通して見えるアーム5及びバケット6の実際の像であってもよい。
【0165】
図11において破線で描かれた右の映像は、バケット6の目標の姿勢に関するバケット目標姿勢映像である。バケット目標姿勢映像は、目標物理量設定部52により設定されたバケット6の姿勢に関連する目標物理量に対応する映像である。図11において二点鎖線で描かれた中央の映像は、バケット6の実際の姿勢とバケット6の目標の姿勢との間の中間姿勢に関する中間姿勢映像(バケット中間姿勢映像)である。コントローラ50は、表示装置92において、アーム5及びバケット6の実姿勢映像と、バケット目標姿勢映像と、バケット中間姿勢映像と、を表示させる。これにより、オペレータは、バケット6の目標の姿勢とバケット6の実際の姿勢とのギャップを、表示装置92に表示される映像を通じて認識することができる。しかも、オペレータは、バケット6が実際の姿勢から目標の姿勢に到達するまでにどのような中間姿勢を経るのかについて、表示装置92に表示されるバケット中間姿勢映像を通じて認識することができる。
【0166】
また、コントローラ50は、表示装置92において、バケット6の実姿勢映像、バケット目標姿勢映像、及びバケット中間姿勢映像に加え、さらに、バケット6の周辺に存在する物の映像を表示させてもよい。この場合には、オペレータは、バケット6が実際の姿勢から中間姿勢を経て目標の姿勢に到達するまでの間に、バケット6が当該バケット6の周辺に存在する物に衝突するかどうかについて判断することができる。
【0167】
コントローラ50は、例えば、バケット6の動作速度に関連する情報に基づいて前記中間姿勢を演算してもよい。これにより、コントローラ50は、前記中間姿勢を比較的正確に予測することができる。具体的には、バケット6の動作速度は、バケット6が動作する方向とバケット6が動作するスピードとを含む。コントローラ50は、その時点におけるバケット6の動作速度に関連する情報と、例えば予め設定された設定時間又はオペレータの入力に基づいて設定された設定時間と、を用いて、その時点から当該設定時間経過後におけるバケット6の姿勢を前記中間姿勢として演算する。ただし、コントローラ50による前記中間姿勢の演算は、上記の具体例に限られない。例えば、コントローラ50は、バケット6の実際の姿勢と、バケット6の目標の姿勢と、の間の中央の地点における姿勢を、例えば線形補間などの手法を用いて演算してもよい。
【0168】
バケット6の動作速度に関連する情報は、複数の操作装置61~64のうちの少なくとも一つの操作装置に与えられる操作に対応するオペレータ操作値であってもよい。また、バケット6の動作速度に関連する情報は、前記オペレータ補正値(Lo’)と前記アシスト補正値(La’)とを足した合計値であってもよい。また、バケット6の動作速度に関連する情報は、図略の速度センサにより実際に検出されるバケット6の動作速度であってもよい。
【0169】
(L)アシスト制御の解除について
コントローラ50は、前記合計値を用いて前記作業装置の前記姿勢を制御するアシスト制御を行っているときに、予め定められた条件である非アシスト条件が満たされた場合には、前記アシスト制御から、操作装置に与えられる操作に基づく制御(通常制御)に切り替えるように構成されていてもよい。この変形例では、アシスト制御が行われているときに前記非アシスト条件が満たされた場合、コントローラ50は、前記アシスト制御から前記通常制御に切り替える。これにより、コントローラ50によるアシストが解除され、前記作業装置は、オペレータが操作装置に与える前記操作に対応する動作を行う。このことは、アシスト制御がそのまま継続されることが好ましくない状況が生じた場合にアシストを解除して作業装置をオペレータの意思通りに適切に動作させることを可能にする。
【0170】
アシスト制御がそのまま継続されることが好ましくない状況としては、例えば、作業装置が障害物を避ける必要がある状況、排土作業が行われているときに作業装置の姿勢が目標の姿勢に到達する前にバケットからの排土が完了したという状況、などを挙げることができる。
【0171】
前記非アシスト条件は、前記アシスト制御において前記操作装置に与えられる前記操作から、予め設定された別の操作に切り替わることを含んでいてもよい。上記のような状況が生じた場合、オペレータは、アシスト制御において操作装置に与える操作から別の操作に切り替えることが多い。具体的には、例えば、作業装置が障害物を避ける必要がある状況が生じると、オペレータは、それまで作業装置に与えていたレバー操作の方向とは別の方向(例えば逆方向)に操作を切り替えて作業装置と障害物との接触を避けようとする。このような状況下でコントローラ50によるアシストが解除されることで、作業装置と障害物との接触がより効果的に回避される。また、排土作業中にバケットからの排土が完了したという状況が生じると、オペレータは、次の作業(例えば戻り旋回作業)を行うために、それまで作業装置に与えていたアーム押し操作とは逆方向のアーム引き操作に切り替える。このような状況下でコントローラ50によるアシストが解除されることで、複数の作業の連続性がより効果的に担保される。上記のように前記アシスト制御において前記操作装置に与えられる前記操作から予め設定された別の操作に切り替わることは、アシスト制御がそのまま継続されることが好ましくない状況が生じたことを判定する指標となる。
【0172】
ただし、前記非アシスト条件は、上記の具体例に限られず、例えば、前記物理量偏差が減少する状態から前記物理量偏差が増加する状態に切り替わり、かつ、切り替わってからの経過時間が予め設定された閾値である時間閾値を超えたことを含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0173】
1 :下部走行体(機体の一例)
2 :上部旋回体
4 :ブーム
5 :アーム
6 :バケット
31 :ブーム姿勢検出器
32 :アーム姿勢検出器
33 :バケット姿勢検出器
34 :旋回体姿勢検出器
50 :コントローラ
61 :ブーム操作装置
62 :アーム操作装置
63 :バケット操作装置
64 :旋回操作装置
80 :記憶スイッチ
100 :建設機械
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11