(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082890
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】亜鉛電池の管理方法、および亜鉛電池の管理システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20230608BHJP
G01R 31/378 20190101ALI20230608BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20230608BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230608BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/378
G01R31/3828
H01M10/48 P
H01M10/42 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196878
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】322013937
【氏名又は名称】エナジーウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100144440
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 一之
(72)【発明者】
【氏名】大沼 孟光
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA02
2G216BA26
2G216BA64
2G216BB02
2G216BB07
2G216CD04
5H030AA01
5H030AS20
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】亜鉛電池を適切に管理すること。
【解決手段】一実施形態に係る亜鉛電池の管理方法は、充電状態にある亜鉛電池についての、第1時点での第1電圧と、第1時点より後の第2時点での第2電圧とを取得する電圧取得ステップと、第1電圧と第2電圧との間の電圧変化を算出する変化算出ステップと、電圧変化に基づいて亜鉛電池の劣化の可能性を判定する判定ステップとを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電状態にある亜鉛電池についての、第1時点での第1電圧と、前記第1時点より後の第2時点での第2電圧とを取得する電圧取得ステップと、
前記第1電圧と前記第2電圧との間の電圧変化を算出する変化算出ステップと、
前記電圧変化に基づいて前記亜鉛電池の劣化の可能性を判定する判定ステップと、
を含む亜鉛電池の管理方法。
【請求項2】
前記第1時点および前記第2時点が、前記亜鉛電池の充電開始から0秒以上10秒以下の範囲内に設定される、
請求項1に記載の亜鉛電池の管理方法。
【請求項3】
前記第1時点が前記亜鉛電池の充電開始後0秒であり、
前記第2時点が前記第1時点から5秒後である、
請求項1または2に記載の亜鉛電池の管理方法。
【請求項4】
前記電圧取得ステップでは、完全放電された後に充電が開始されたことで前記充電状態にある前記亜鉛電池についての前記第1電圧および前記第2電圧を取得する、
請求項1~3のいずれか一項に記載されている亜鉛電池の管理方法。
【請求項5】
前記変化算出ステップでは、前記第1電圧と前記第2電圧との差を前記電圧変化として算出する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の亜鉛電池の管理方法。
【請求項6】
前記判定ステップでは、前記電圧変化が変化閾値以上である場合に、亜鉛電池が劣化している可能性があると判定する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の亜鉛電池の管理方法。
【請求項7】
前記変化閾値が0.07Vである、
請求項6に記載の亜鉛電池の管理方法。
【請求項8】
前記亜鉛電池が劣化している可能性があると判定された場合に、前記亜鉛電池の1サイクルにおける放電容量および充電容量を取得する容量取得ステップと、
前記放電容量に対する前記充電容量の比である充電率を算出する率算出ステップと、
前記充電率に基づいて前記亜鉛電池の劣化状態を推定する推定ステップと、
を更に含む請求項1~7のいずれか一項に記載の亜鉛電池の管理方法。
【請求項9】
前記推定ステップでは、前記充電率が率閾値以上である場合に、前記亜鉛電池が劣化状態であると推定する、
請求項8に記載の亜鉛電池の管理方法。
【請求項10】
前記推定ステップでは、
前記充電率が第1率閾値以上である場合に、前記亜鉛電池が第1劣化状態であると推定し、
前記充電率が第2率閾値以上かつ前記第1率閾値の未満である場合に、前記亜鉛電池が前記第1劣化状態よりも劣化の度合いが小さい第2劣化状態であると推定する、
請求項9に記載の亜鉛電池の管理方法。
【請求項11】
前記亜鉛電池が劣化している可能性がないと判定された場合に、前記亜鉛電池の1サイクルにおける環境温度および放電レートを取得する条件取得ステップと、
前記環境温度および前記放電レートを含む稼働条件下で、前記亜鉛電池の充電および放電の少なくとも一方を実行する充放電ステップと、
を更に含む請求項1~10のいずれか一項に記載の亜鉛電池の管理方法。
【請求項12】
25℃より大きくかつ60℃以下である環境温度と、1/3Cより大きくかつ10C以下である放電レートとを含む稼働条件下で、亜鉛電池の充電および放電の少なくとも一方を実行する充放電ステップを含む亜鉛電池の管理方法。
【請求項13】
前記亜鉛電池がニッケル亜鉛電池である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の亜鉛電池の管理方法。
【請求項14】
充電状態にある亜鉛電池についての、第1時点での第1電圧と、前記第1時点より後の第2時点での第2電圧とを取得する電圧取得部と、
前記第1電圧と前記第2電圧との間の電圧変化を算出する変化算出部と、
前記電圧変化に基づいて前記亜鉛電池の劣化の可能性を判定する判定部と、
を備える亜鉛電池の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、亜鉛電池の管理方法および亜鉛電池の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二次電池を管理する手法が知られている。例えば、特許文献1には、二次電池の内部状態を検知する手法が記載されている。この方法は、劣化していない正常な二次電池を各種温度下、各種電流で充放電したときに計測されるべき電池電圧、および蓄電量もしくは放電量のデータである基礎データを予め取得した上で、使用している二次電池の電圧値等を計測し、該計測値と該基礎データとを比較することで、検知対象の二次電池が(a)短絡、(b)内部抵抗増加、(c)蓄電容量低下、(d)蓄電容量低下かつ内部抵抗増加、(e)正常、のいずれかであることを判定する。二次電池は例えば亜鉛電池を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
亜鉛電池を適切に管理する方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る亜鉛電池の管理方法は、充電状態にある亜鉛電池についての、第1時点での第1電圧と、第1時点より後の第2時点での第2電圧とを取得する電圧取得ステップと、第1電圧と第2電圧との間の電圧変化を算出する変化算出ステップと、電圧変化に基づいて亜鉛電池の劣化の可能性を判定する判定ステップとを含む。
【0006】
このような側面においては、充電状態にある亜鉛電池についての或る時間幅における電圧変化が算出され、この電圧変化に基づいて、亜鉛電池の劣化の可能性が判定される。この簡易な手法により亜鉛電池を適切に管理することができる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面によれば、亜鉛電池を適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】蓄電システムおよびその周辺の構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】実施形態に係る統括コントローラの機能構成の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る統括コントローラの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】推定処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図5】各サイクルにおける試験条件の一例を示す表である。
【
図6】各試験条件における電圧変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
[蓄電システムの全体構成]
蓄電システム1は、生成された電気を蓄え、その蓄えた電気を必要に応じて供給するシステムである。例えば、蓄電システム1は不動産にも動産にも適用可能である。不動産への適用の例として、蓄電システム1は、再生可能エネルギを利用して生成された電気を管理してもよく、例えば家庭、オフィス、工場、農場等の様々な場所で利用され得る。動産への適用の例として、蓄電システム1は自動車等の移動体に動力源として掲載されてもよい。
【0011】
図1を参照しながら、蓄電システム1を含む電力システムの全体像を説明する。
図1は、蓄電システム1およびその周辺の構成の一例を模式的に示す図である。蓄電システム1は、蓄電システム1に電力を供給可能な供給要素2と、蓄電システム1から電力を受け取ることが可能な需要要素4との間に設けられる。蓄電システム1および供給要素2を含む直流系統と、需要要素を含む交流要素とは、PCS(パワーコンディショニングシステム)3を介して電気的に接続される。蓄電システム1、供給要素2、およびPCS3は、直流電流が流れるDC(Direct Current)バス6を介して電気的に接続される。需要要素4およびPCS3は、交流電流が流れるAC(Alternating Current)バス7を介して電気的に接続される。供給要素2により生成された電気、または蓄電システム1に蓄えられた電気は需要要素4に供給される。蓄電システム1は、蓄電池をクッションのように利用することで供給要素2から需要要素4への電力供給の変動を緩和する役割を担ってもよい。
【0012】
供給要素2は、蓄電システム1に電力を供給可能な装置または設備である。例えば、供給要素2、再生可能エネルギを利用して発電を行う発電装置であってもよい。発電装置は太陽光発電装置でもよいし風力発電でもよい。あるいは、供給要素2は、移動体に搭載されたモータであってもよい。
【0013】
需要要素4は、蓄電システム1から電力を受け取ることが可能な装置または設備である。例えば、需要要素4は、発電、変電、送電、および配電を結合した商用電源の設備である外部の電力系統であってもよい。外部の電力系統は電力会社により提供され得る。あるいは、需要要素4は、電力を消費する1以上の機器または装置の集合である負荷であってもよい。負荷の例として、1以上の家庭用または業務用の様々な電気機器の集合と、任意の装置に任意の構成要素とが挙げられる。
【0014】
PCS3は、直流の電気を交流に変換する装置であり、電力変換器の一種である。PCS3は、DCバス6に接続するDC端子とACバス7に接続するAC端子とを有する。
【0015】
一例では、蓄電システム1は、蓄電装置10、電力変換器20、および統括コントローラ30を備える。一つの蓄電装置10には一つの電力変換器20が対応し、これら二つの装置はDCバス6を介して電気的に接続する。対応し合う蓄電装置10および電力変換器20の組を蓄電ユニットということもできる。
図1の例では蓄電システム1は3組の蓄電装置10および電力変換器20、すなわち、3個の蓄電ユニットを備える。蓄電装置10および電力変換器20の組数は1でも2でも4以上でもよい。複数の蓄電ユニットが存在する場合に、蓄電装置10の性能および電力変換器20の性能は統一されてもよいし、統一されなくてもよい。蓄電装置10の性能は、例えば、定格容量または応答速度を含む。電力変換器20の性能は、例えば、定格出力または応答速度を含む。統括コントローラ30は、通信線40を介して各蓄電装置10および各電力変換器20と通信可能に接続される。
【0016】
蓄電装置10は、供給要素2から提供される電気を化学エネルギに変えて蓄える装置であり、充放電が可能である。蓄電装置10は、供給要素2から提供された直流電力の変動を緩和または平準化するために用いられ得る。蓄電装置10は、直列に接続された複数のセルを含んで構成される亜鉛電池(亜鉛二次電池)11を備える。亜鉛電池11は、例えば、ニッケル亜鉛電池または酸化銀・亜鉛電池であってもよい。一例では、亜鉛電池11は、電解液に界面活性剤および糖類のうち少なくとも一方を含むニッケル亜鉛電池であってもよい。亜鉛電池11を構成するセルの個数は、例えば、7個または8個でもよい。蓄電装置10はさらに、バッテリ・コントロール・ユニット(Battery Control Unit:BCU)等の制御機能を含み、この制御機能により、蓄電装置10に関するデータを統括コントローラ30に送信することができる。
【0017】
電力変換器20は、蓄電装置10の充放電を制御する装置である。電力変換器20は、統括コントローラ30から指示信号を受信し、その指示信号に基づいて蓄電装置10の充放電を制御する。電力変換器20は、充電モードでは、供給要素2から流れてきた電気を蓄電装置10に蓄え、放電モードでは、蓄電装置10を放電させて外部に電力を供給し、停止状態では充放電を行わない。電力変換器20は、例えばDC/DCコンバータを含む。
【0018】
統括コントローラ30は蓄電装置10および電力変換器20を制御するコンピュータである。コンピュータは、例えばマイクロコンピュータである。
図2は、統括コントローラ30の機能構成の一例を示す図である。
図2に示すように、統括コントローラ30はハードウェア装置としてプロセッサ101、メモリ102、および通信インタフェース103を備える。プロセッサ101は例えばCPUであり、メモリ102は例えばフラッシュメモリで構成されるが、統括コントローラ30を構成するハードウェア装置の種類はこれらに限定されず、任意に選択されてもよい。統括コントローラ30の各機能は、プロセッサ101が、メモリ102に格納されているプログラムを実行することで実現される。例えば、プロセッサ101は、メモリ102から読み出したデータまたは通信インタフェース103を介して受信したデータに対して所定の演算を実行し、その演算結果を他の装置に出力することで、該他の装置を制御する。あるいは、プロセッサ101は受信したデータまたは演算結果をメモリ102に格納する。統括コントローラ30は1台のコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータの集合である分散システムで構成されてもよい。
【0019】
統括コントローラ30は、通信ネットワーク41を介して監視コンピュータ8と接続してもよい。通信ネットワーク41は、例えば、インターネットおよびイントラネットのうちの少なくとも一方を用いて構築されてもよい。監視コンピュータ8は、蓄電システム1の状況を監視するコンピュータである。例えば、監視コンピュータ8は携帯型または据置型のパーソナルコンピュータであってもよい。あるいは、監視コンピュータ8は、高機能携帯電話機(スマートフォン)、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)、タブレットを含む携帯端末でもよい。監視コンピュータ8は、蓄電システム1の一部でもよいし、蓄電システム1とは別のコンピュータシステムに設けられてもよい。
【0020】
蓄電システム1の特徴の一つは亜鉛電池の管理方法にあり、この特徴は特に統括コントローラ30により実現される。以下では、その管理処理に関する統括コントローラ30の機能および構成を説明する。統括コントローラ30は、本開示に係る亜鉛電池の管理システムの一例である。
【0021】
一例では、プロセッサ101は、電圧取得部31、変化算出部32、判定部33、容量取得部34、率算出部35、推定部36、条件取得部37、および出力部38として機能する。
【0022】
電圧取得部31は、充電状態にある亜鉛電池11についての、第1時点での第1電圧と、第1時点より後の第2時点での第2電圧とを取得する機能要素である。変化算出部32は、第1電圧と第2電圧との間の電圧変化を算出する機能要素である。本開示において、「充電状態にある亜鉛電池」とは、外部から流れてきた電気を取得および蓄積している途中の状態にある亜鉛電池をいう。判定部33は、その電圧変化に基づいて亜鉛電池11の劣化の可能性を判定する機能要素である。「亜鉛電池11の劣化の可能性」とは、亜鉛電池11がすでに劣化状態にあること、または今後劣化状態となる兆候があることを示す概念である。「劣化状態」とは、製造時の状態である初期状態から亜鉛電池11の性能がどのくらい低下していることを示す概念である。亜鉛電池11の劣化の典型は、負極(亜鉛電極)の表面から成長する針状または樹枝状の結晶であるデンドライトがセパレータを突き破って正極まで達することで発生する内部短絡である。亜鉛電池11の劣化の程度は、デンドライトの成長の程度に左右される。
【0023】
容量取得部34は、亜鉛電池11の1サイクルにおける放電容量および充電容量を取得する機能要素である。一例では、容量取得部34は、判定部33により亜鉛電池11が劣化している可能性があると判定された場合に、その放電容量および充電容量を取得する。本開示では、或る時間にわたって行われる一回の充電と、該充電の前または後において、或る時間にわたって行われる一回の放電との組合せである充放電サイクルのことを単に「サイクル」ともいう。率算出部35は、該放電容量に対する該充電容量の比である充電率を算出する機能要素である。推定部36は、その充電率に基づいて亜鉛電池11の劣化状態を推定する機能要素である。
【0024】
条件取得部37は、亜鉛電池11の充電および放電の少なくとも一方を実行するための稼働条件を取得する機能要素である。一例では、条件取得部37は、判定部33により亜鉛電池11が劣化している可能性がないと判定された場合にその稼働条件を取得する。例えば、条件取得部37は、亜鉛電池11の1サイクルでの環境温度および放電レートを稼働条件の少なくとも一部として取得する。「環境温度」とは、亜鉛電池11が設置されている環境における温度である。「放電レート」とは、単位時間当たりの放電量であり、一般には1時間当たりの放電量である。放電レートは、放電される電流をI[A]とし、電池容量をC[Ah]としたときに、I/Cで表され、単位は[C]である。例えば、1Cは電池の全容量を1時間で放電する電流量を表し、1/3Cは電池の全容量を3時間で放電する電流量を表し、2Cは電池の全容量を0.5時間(30分)で放電する電流量を表す。
【0025】
出力部38は処理結果を出力する機能要素である。一例では、出力部38は、亜鉛電池11の劣化の可能性、亜鉛電池11の劣化状態、および亜鉛電池11の稼働条件のうちの少なくとも一つを処理結果として出力する。
【0026】
メモリ102はプロセッサ101の動作に必要な情報を記憶する。例えば、メモリ102は判定規則33aおよび推定規則36aを記憶する。判定規則33aは、亜鉛電池11に劣化の可能性があるか否かの判定に用いられる情報である。推定規則36aは、亜鉛電池11の劣化状態の推定に用いられる情報である。例えば、判定規則33aおよび推定規則36aは数式、閾値、アルゴリズム、および対応表のいずれかで表されてもよいし、数式、閾値、アルゴリズム、および対応表のうちの任意の2以上の組合せで表されてもよい。あるいは、判定規則33aおよび推定規則36aは、プロセッサ101により実行されるプログラムの一部であってもよい。
【0027】
判定規則33aおよび推定規則36aは書き換え可能であってもよい。例えば、蓄電装置10または亜鉛電池11が別の型のものに交換されたり新しい型の蓄電装置10または亜鉛電池11が追加されたりした場合には、管理者がその構成の変更に応じてメモリ102内の判定規則33aおよび推定規則36aを書き換える。この場合、管理者は不図示の所定の通信ネットワークを介して、不図示の管理用のコンピュータで統括コントローラ30にアクセスし、構成の変更を反映した新たな判定規則33aおよび推定規則36aを統括コントローラ30に転送してもよい。この転送により、メモリ102内の判定規則33aおよび推定規則36aが書き換えられる。
【0028】
通信インタフェース103はプロセッサ101と連携してデータの送受信を実行する。例えば、通信インタフェース103は電圧取得部31、容量取得部34、および条件取得部37と連携して、亜鉛電池11に関するデータを受信する。また、通信インタフェース103は出力部38と連携して、処理結果を送信する。
【0029】
[統括コントローラの動作]
図3~
図6を参照しながら、統括コントローラ30の動作を説明するとともに本実施形態に係る亜鉛電池の管理方法について説明する。
図3は統括コントローラ30の動作の例を示すフローチャートであり、具体的には、一つの蓄電装置10に対する処理を示す。
図4は推定処理の具体例を示すフローチャートである。
図5は各サイクルにおける試験条件の一例を示す表である。
図6は各試験条件における電圧変化の一例を示すグラフである。
【0030】
ステップS11では、電圧取得部31が、充電状態にある亜鉛電池11について、第1時点での第1電圧と、第1時点より後の第2時点での第2電圧とを取得する。亜鉛電池11は電気が全く蓄積されていない完全放電の状態から充電されてもよく、何らかの量の電気が蓄積されている状態から充電されてもよい。例えば、電圧取得部31は、完全放電された後に充電が開始されたことで充電状態にある亜鉛電池11について、第1時点での第1電圧と、第2時点での第2電圧とを取得してもよい。第1時点および第2時点は、充電開始時から0秒以上10秒以下の範囲内に設定される時点であってもよい。例えば、第1時点は亜鉛電池11の充電が開始された時点、すなわち、充電開始後0秒でもよく、亜鉛電池11の充電が開始された時点より後の時点でもよい。第2時点は、第1時点よりも後に設定される時点であり、第1時点から予め定められた時間が経過した時点である。予め定められた時間は、例えば、0.1秒、5秒、または、10秒でもよい。例えば、電圧取得部31は、亜鉛電池11の充電開始後0秒での第1電圧と、第1時点から5秒経過した第2時点での第2電圧とを取得してもよい。
【0031】
ステップS12では、変化算出部32が第1電圧と第2電圧との間の電圧変化を算出する。例えば、変化算出部32は第1電圧と第2電圧との差に基づいて電圧変化を算出してもよい。あるいは、変化算出部32は第1電圧と第2電圧との比に基づいて電圧変化を算出してもよい。一例では、変化算出部32はその差または比を電圧変化として算出する。
【0032】
ステップS13では、判定部33が、電圧変化に基づいて亜鉛電池11の劣化の可能性を判定する。亜鉛電池11の劣化の可能性を判定する具体的な手法は一つに限定されず、判定部33は様々な手法を用いて劣化の可能性を判定してもよい。一例では、判定部33は電圧変化と変化閾値Taとを比較する。電圧変化が変化閾値Ta以上であれば、判定部33は亜鉛電池11が劣化している可能性があると判定し(ステップS14でYES)、処理はステップS15に進む。一方で、電圧変化が変化閾値Ta未満であれば、判定部33は亜鉛電池11が劣化している可能性がないと判定し(ステップS14でNO)、処理はステップS18に進む。
【0033】
ステップS15では、容量取得部34が亜鉛電池11の1サイクルにおける放電容量および充電容量を取得する。1サイクルにおける放電容量および充電容量とは、或る時間にわたって行われる一回の放電における放電容量と、その放電の前にまたは後において、或る時間にわたって行われる一回の充電における充電容量との組合せである。例えば、容量取得部34は、現サイクルの一つ前のサイクルにおける放電容量および充電容量を取得してもよいし、現サイクルの2以上前のサイクルにおける放電容量および充電容量を取得してもよい。容量取得部34は充電容量および放電容量を蓄電装置10から取得してもよいし他の装置から取得してもよい。
【0034】
ステップS16では、率算出部35が、放電容量に対する充電容量の比である充電率を算出する。本実施形態では充電率を百分率で示すが、百分率による表現は必須ではない。充電率[%]をRとし、放電容量[Ah]をCdとし、充電容量[Ah]をCcとすると、充電率は下記の式(1)で表される。
R=Cc/Cd*100 …(1)
【0035】
ステップS17では、推定部36が充電率に基づいて亜鉛電池11の劣化状態を推定する。劣化状態を推定する具体的な手法は一つに限定されず、推定部36は様々な手法を用いて劣化状態を推定してもよい。
【0036】
図4を参照しながら推定処理の一例を説明する。ステップS171では、推定部36が充電率を第1率閾値Tbと比較する。充電率が第1率閾値Tb未満であれば(ステップS171においてNO)、処理はステップS172へと進み、推定部36は亜鉛電池11が正常状態であると推定する。正常状態とは、亜鉛電池が劣化していないか、または劣化の度合いが無視できる程度に小さいことを意味する。一方、充電率が第1率閾値Tb以上であれば(ステップS171においてYES)、処理はステップS173に進み、推定部36はさらに充電率を第2率閾値Tcと比較する。この第2率閾値Tcは第1率閾値Tbよりも大きい値である。
【0037】
充電率が第2率閾値Tc以上であれば(ステップS173においてYES)、処理はステップS174に進み、推定部36は亜鉛電池11が第1劣化状態であると判定する。第1劣化状態は、亜鉛電池11の劣化の度合いが比較的大きい状態のことをいう。一方、充電率が第2率閾値Tc未満であれば(ステップS173においてNO)、すなわち、充電率が第1率閾値Tb以上かつ第2率閾値Tc未満であれば、処理はステップS175に進み、推定部36は亜鉛電池11が第2劣化状態であると判定する。第2劣化状態は、亜鉛電池11の劣化の度合いが第1劣化状態よりも小さい状態のことをいう。この関係を維持する限り、第1劣化状態および第2劣化状態のそれぞれの具体的な意味は限定されない。例えば、第1劣化状態は、比較的近い将来に内部短絡が生ずる蓋然性が高い程にデンドライトが成長していると見込まれる状態に対応してもよい。第2劣化状態は、デンドライトは存在するものの、亜鉛電極の放電によるデンドライトの溶解により亜鉛電池11の性能が改善する可能性がある状態に対応してもよい。
【0038】
図4に示す例では推定部36が第1劣化状態および第2劣化状態という2段階で亜鉛電池11の劣化を判定するが、推定部36は、その第1劣化状態および第2劣化状態を含む3以上の段階で亜鉛電池の劣化を判定してもよい。
【0039】
第1率閾値Tbおよび第2率閾値Tcの具体的な値は限定されない。本発明者らは、亜鉛電池11の特性を考慮してそれらの閾値を以下のように設定できることを見出した。すなわち、充電率が101%または102%である場合には、亜鉛電池11は正常であるといえる。充電率がそれよりも高い値、例えば105%を超えると、亜鉛電池11内でデンドライトが成長している可能性があり、したがって、内部短絡の可能性を意識し始める必要が生ずる。充電率がさらに高い場合、例えば110%を超える場合には、デンドライトがだいぶ成長している可能性があり、比較的近い将来に内部短絡が生ずる蓋然性が高いと見込まれる。
【0040】
上記の知見に基づき、第1率閾値Tbは、例えば、103%~109%の間でもあってもよく、例えば、103%、104%、105%、106%、107%、108%、または109%でもよい。第2率閾値Tcは例えば110%以上であってもよく、例えば110%、111%、112%、または113%でもよい。
【0041】
図3に戻る。ステップS18では、条件取得部37が亜鉛電池11の稼働条件を取得する。例えば、条件取得部37は亜鉛電池11の1サイクルにおける環境温度および放電レートを取得してもよい。あるいは、条件取得部37は、亜鉛電池11におけるメモリ効果の有無を取得してもよい。「メモリ効果」は放電中に電池の電圧が一時的に低下する現象であり、電池に電気が蓄えられている状態で充放電を繰り返すことにより発生する。あるいは、条件取得部37は、亜鉛電池11の休止時間を取得してもよい。「休止時間」は、亜鉛電池11の充電と放電との間の待ち時間である。例えば、休止時間が1時間であることは、充電から放電までの間および放電から充電までの間に、それぞれ1時間の待ち時間が設けられることを示す。あるいは、条件取得部37は、亜鉛電池11の充電レートを取得してもよい。「充電レート」とは、単位時間当たりの充電量である。充電レートは、放電レート同様に、充電される電流をI[A]とし、電池容量をC[Ah]としたときに、I/Cで表され、単位は[C]である。あるいは、条件取得部37は、亜鉛電池11の充電状態(State Of Charge:SOC)の上限値および下限値の少なくとも一方を取得してもよい。その上限値および下限値をそれぞれ、「上限SOC」および「下限SOC」ともいう。
【0042】
ステップS19では、出力部38が処理結果を出力する。例えば、出力部38は判定結果、推定結果、および稼働条件のうちの少なくとも一つを処理結果として出力する。判定結果は、例えば、亜鉛電池11が劣化している可能性があるか否かを示す。推定結果は、例えば、正常状態、第1劣化状態、または第2劣化状態を示す。稼働条件は、例えば、環境温度および放電レートを含む。
【0043】
出力部38は処理結果を通信ネットワーク41を介して監視コンピュータ8に出力してもよい。監視コンピュータ8はその処理結果を不図示のモニタ上に表示したり、不図示のデータベースに格納したりする等の任意の処理を実行してもよい。
【0044】
あるいは、出力部38は推定結果が第1劣化状態である場合に停止指示を生成し、対応する蓄電装置10に向けてその停止指示を送信してもよい。「蓄電装置に向けて停止指示を送信する」とは、亜鉛電池11に充放電をさせないために、該蓄電装置10に、または該蓄電装置10に対応する他の装置に、停止指示を送信することをいう。例えば、出力部38は、蓄電装置10に対応する電力変換器20に通信線40を介して停止指示を送信してもよい。停止させられた蓄電装置10の亜鉛電池11は、例えば人手により、新しいものに交換される。
【0045】
あるいは、亜鉛電池11が劣化している可能性がないと判定された場合に、出力部38は稼働条件の下での亜鉛電池11の充電および放電の少なくとも一方を提示する充放電指示を出力してもよい。例えば、出力部38は稼働条件に基づく指示信号を電力変換器20に送信して、電力変換器20に亜鉛電池11の充電または放電を実行させてもよい。あるいは、出力部38はその充放電指示を不図示のモニタ上に表示してもよい。この場合には、例えば、作業者がその稼働条件を参照して亜鉛電池11の充電および放電のうち少なくとも一方を実行する。あるいは、出力部38は、サイクル毎に取得された稼働条件のうち少なくとも一つの稼働条件を選択し、該稼働条件下での亜鉛電池11の充電および放電の少なくとも一方を提示する充放電指示を出力してもよい。
【0046】
蓄電システム1が複数の蓄電装置10を備える場合には、統括コントローラ30はすべての蓄電装置10についてステップS11~S19の処理を実行してもよい。一つの蓄電装置10について、ステップS11~S19の処理は繰り返し実行されてもよく、例えば、個々の充電サイクルにおいて実行されてもよい。
【0047】
図5および
図6を参照しながら、上述した電圧変化および稼働条件に関する実際の試験結果について説明する。
【0048】
図5に示される試験条件A~Gの下で、ニッケル亜鉛電池についてサイクルを実行した。サイクルを25回実施する毎に、充電開始時の第1電圧と充電開始から5秒後の第2電圧とを取得し、第1電圧と第2電圧との間の電圧変化を算出した。本試験において、試験条件A~Gのデータ項目は、メモリ効果、休止時間、環境温度、充電レート、放電レート、上限SOC、および下限SOCである。
【0049】
図6は、
図5に示される各試験条件の下での25サイクル毎の電圧変化を示す。グラフの縦軸は電圧変化[V]を示し、横軸はサイクル数(1~150)を示す。試験条件A、C、E、およびFでは、電圧変化が0.07Vを初めて超えたサイクル以降、電圧変化は上昇を続け、試験終了後の使用においてニッケル亜鉛電池に内部短絡が生じた。一方で、試験条件B、D、およびGでは、全サイクルを通じて電圧変化は0.07V未満であり、試験終了後の使用においてニッケル亜鉛電池には内部短絡が生じなかった。
【0050】
上記の試験から得られた知見に基づき、変化閾値Taは0.07V~0.08Vの間であってもよく、例えば、0.07Vであってもよい。
【0051】
図5に戻る。試験終了後にニッケル亜鉛電池に内部短絡が生じなかった試験条件B、D、およびGでは、共通して、環境温度が40℃かつ放電レートが1/3Cより大きかった。一方で、試験終了後にニッケル亜鉛電池に内部短絡が生じた試験条件A、C、F、およびEでは、環境温度が40℃かつ放電レートが1/3Cより大きいという条件を満たしていなかった。以上のことから、本発明者らは、環境温度および放電レートが亜鉛電池の劣化に影響を及ぼす要因であることを見出した。
【0052】
試験条件から得られたこれらの知見と亜鉛電池の一般的な仕様とから、例えば、稼働条件は、25℃より大きくかつ60℃以下である環境温度と、1/3Cより大きくかつ10C以下である放電レートとを含んでもよい。このような制御により、亜鉛電池11の劣化を抑制し、亜鉛電池11を適切に管理することができる。あるいは、稼働条件として示される環境温度は25℃より大きくかつ40℃以下であってもよいし、40℃以上かつ60℃以下であってもよい。亜鉛電池11の制御に適したこのような稼働条件は、上述したように統括コントローラ30から出力され得る。あるいは、統括コントローラ30から稼働条件を取得するか否かにかかわらず、作業者が蓄電システム1の環境をその稼働条件に合わせるための管理を行った上で、該稼働条件下で亜鉛電池11の充電および放電の少なくとも一方を実行してもよい。
【0053】
[プログラム]
コンピュータを統括コントローラ30として機能させるための管理プログラムは、該コンピュータを電圧取得部31、変化算出部32、判定部33、容量取得部34、率算出部35、推定部36、条件取得部37、および出力部38として機能させるためのプログラムコードを含む。この管理プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、管理プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。提供された管理プログラムは例えばメモリ102に記憶される。プロセッサ101がメモリ102と協働してその管理プログラムを実行することで、上記の各機能要素が実現する。
【0054】
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係る亜鉛電池の管理方法は、充電状態にある亜鉛電池についての、第1時点での第1電圧と、第1時点より後の第2時点での第2電圧とを取得する電圧取得ステップと、第1電圧と第2電圧との間の電圧変化を算出する変化算出ステップと、電圧変化に基づいて亜鉛電池の劣化の可能性を判定する判定ステップとを含む。
【0055】
本開示の一側面に係る亜鉛電池の管理システムは、充電状態にある亜鉛電池についての、第1時点での第1電圧と、第1時点より後の第2時点での第2電圧とを取得する電圧取得部と、第1電圧と第2電圧との間の電圧変化を算出する変化算出部と、電圧変化に基づいて亜鉛電池の劣化の可能性を判定する判定部とを備える。
【0056】
本発明者らは、充電状態にある亜鉛電池の電圧変化が、亜鉛電池の劣化の兆候を捉えるのに有効であり得ることを見出した。上記の側面においては、充電状態にある亜鉛電池についての或る時間幅における電圧変化が算出され、この電圧変化に基づいて、亜鉛電池の劣化の可能性が判定される。この簡易な手法により亜鉛電池を適切に管理することができる。
【0057】
他の側面に係る亜鉛電池の管理方法では、第1時点および第2時点が、亜鉛電池の充電開始から0秒以上10秒以下の範囲内に設定されてもよい。この場合、電圧変化を顕著に捉えることができるので、亜鉛電池をより適切に管理することができる。
【0058】
他の側面に係る亜鉛電池の管理方法では、第1時点が前記亜鉛電池の充電開始時後0秒であってもよく、第2時点が第1時点から5秒後であってもよい。この場合、電圧変化をより顕著に捉えることができるので、亜鉛電池をより適切に管理することができる。
【0059】
他の側面に係る亜鉛電池の管理方法では、電圧取得ステップでは、完全放電された後に充電が開始されたことで充電状態にある亜鉛電池についての第1電圧および第2電圧を取得してもよい。この場合、電圧変化をより一層顕著に捉えることができるので、亜鉛電池をより適切に管理することができる。
【0060】
他の側面に係る亜鉛電池の管理方法では、変化算出ステップでは、第1電圧と第2電圧との差を電圧変化として算出してもよい。電圧変化として差を算出するという簡単な処理により、亜鉛電池を適切に管理することができる。
【0061】
他の側面に係る亜鉛電池の管理方法では、判定ステップでは、電圧変化が変化閾値以上である場合に、亜鉛電池が劣化している可能性があると判定してもよい。この閾値を用いることで、亜鉛電池をより客観的に管理することができる。
【0062】
他の側面に係る亜鉛電池の管理方法では、変化閾値が0.07Vであってもよい。この値を変化閾値として用いることで、亜鉛電池をより適切に管理することができる。
【0063】
他の側面に係る亜鉛電池の管理方法では、亜鉛電池が劣化している可能性があると判定された場合に、亜鉛電池の1サイクルにおける放電容量および充電容量を取得する容量取得ステップと、放電容量に対する充電容量の比である充電率を算出する率算出ステップと、充電率に基づいて前記亜鉛電池の劣化状態を推定する推定ステップとを更に含んでいてもよい。この場合、全ての亜鉛電池についてではなく、劣化している可能性のある亜鉛電池について、劣化状態が推定される。この結果、亜鉛電池の管理に掛かる負荷を下げつつ、亜鉛電池をより詳細に管理することができる。
【0064】
他の側面に係る亜鉛電池の管理方法では、推定ステップでは、充電率が率閾値以上である場合に、亜鉛電池が劣化状態であると推定してもよい。この閾値を用いることで、亜鉛電池をより客観的に管理することができる。
【0065】
他の側面に係る亜鉛電池の管理方法では、推定ステップでは、充電率が第1率閾値以上である場合に、亜鉛電池が第1劣化状態であると推定し、充電率が第2率閾値以上かつ第1率閾値未満である場合に、亜鉛電池が第1劣化状態よりも劣化の度合いが小さい第2劣化状態であると判定してもよい。亜鉛電池の劣化状態はデンドライトの成長の程度に左右され得る。複数の閾値を用いて劣化状態を多段階的で推定することで、亜鉛電池のそのような特性を考慮して、亜鉛電池を適切に管理することができる。
【0066】
他の側面に係る亜鉛電池の管理方法では、亜鉛電池が劣化している可能性がないと判定された場合に、亜鉛電池の1サイクルにおける環境温度および放電レートを取得する条件取得ステップと、環境温度および放電レートを含む稼働条件下で、亜鉛電池の充電および放電の少なくとも一方を実行する充放電ステップとを更に含んでいてもよい。このような処理により、亜鉛電池が劣化しないかまたは劣化しづらいと期待できる稼働条件下で亜鉛電池の充電または放電が実行されるので、亜鉛電池を適切に管理することできる。
【0067】
他の側面に係る亜鉛電池の管理方法では、25℃より大きくかつ60℃以下である環境温度と、1/3Cより大きくかつ10C以下である放電レートとを含む稼働条件下で、亜鉛電池の充電および放電の少なくとも一方を実行する充放電ステップを含んでもよい。このような制御により、亜鉛電池の劣化を抑制し、亜鉛電池を適切に管理することができる。
【0068】
他の側面に係る亜鉛電池の管理方法では、亜鉛電池がニッケル亜鉛電池であってもよい。この場合には、ニッケル亜鉛電池を適切に管理することができる。
【0069】
[変形例]
以上、本開示の実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0070】
例えば少なくとも一つのプロセッサにより実行される、亜鉛電池の管理方法は上記の例に限定されない。例えば、上述したステップまたは処理の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうち任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正または削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【0071】
蓄電システム1内で二つの数値の大小関係を比較する際には、「以上」および「より大きい」という二つの基準のどちらも用いてもよく、「以下」および「未満」の二つの基準のうちのどちらを用いてもよい。このような基準の選択は、二つの数値の大小関係を比較する処理についての技術的意義を変更するものではない。
【0072】
上記実施形態では統括コントローラ30が亜鉛電池の管理方法を実行するが、この方法の一部または全部が人手により行われもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…蓄電システム、2…供給要素、3…PCS、4…需要要素、6…DCバス、7…ACバス、8…監視コンピュータ、10…蓄電装置、11…亜鉛電池、20…電力変換器、30…統括コントローラ、31…電圧取得部、32…変化算出部、33…判定部、33a…判定規則、34…容量取得部、35…率算出部、36…推定部、36a…推定規則、37…条件取得部、38…出力部、40…通信線、41…通信ネットワーク。